説明

脂質調節剤及びその用途

脂質調節剤及び脂質調節剤を含有する脂質調節用の組成物を提供することを課題とし、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有する脂質調節剤、及び、この脂質調節剤を含有する脂質調節用の組成物を提供することにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規な脂質調節剤及びその用途に関し、より詳細には、グルコースが4個、α−1,3とα−1,6結合で環状に結合した非還元性の糖質、即ち、サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される糖質(以下、単に「環状四糖」という。)、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有する新規な脂質調節剤及びその脂質調節剤を含有する脂質調節用の組成物に関するものである。
【背景技術】
近年、我が国を含め多くの国において、生活の水準が向上するのにともない、食習慣が欧米化し、従来に比して、カロリーや脂肪が過剰に摂取されるにようになり、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病、高血圧症、肥満などの生活習慣病の患者やその予備群が増加してきている。なかでも、生体内の脂質の過剰な増加に起因する肥満は、これら生活習慣病の危険因子として健康上大きな問題となっている。さらに、肥満は、高脂血症、高コレステロール血症、循環器系疾患、肝臓疾患、悪性新生物発生、糖尿病などの危険因子であり、また、痛風、胆石症などの発症や悪化にも強く関係しているといわれている。
特に、高齢化社会を目前にした日本では、予防医学の観点から、生活習慣病の危険因子である肥満の予防は、重要な課題として取り上げられている。また、特に思春期以降の女性の肥満への意識は非常に強く、そのため、誤った方法や身体に過度の負担となるダイエットが原因で、ホルモンバランスの変調や、骨粗鬆症などの重篤な症状に陥るなどの問題が生じている。
一般に、肥満や高脂血症の治療や予防の手段としては、低脂肪や低カロリーの食品を摂取して、カロリーを制限する方法や、有酸素運動による消費カロリーを増加する方法が推奨されている。しかし、食事制限によりカロリーを制限したり、運動により消費カロリーを増加させるためには、適切な指導が必要であり、その期間も長期に及ぶため、実際には、途中で断念する場合も多い。また、食事を制限することは、精神衛生上も好ましくない。薬物の服用は効果的ではあるものの、副作用やコストに問題がある。
日常の食生活において、美味しくて、毎日摂取しても安全な食事、間食、或いは健康食品を摂取しながら、同時に、効果的に肥満、高脂血症、高コレステロール血症などの予防が実践できることは、これらの疾患を持つ患者やその予備群にとっては、特に望ましいことである。そこで、食品業界では、それ単独で摂取しても、或いは、食事として摂取しても美味で、且つ、肥満、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病などの予防や治療に有効な作用効果を有する素材の開発が進められている。さらに、近年の健康ブーム、或いは、特定保健用食品などの保健機能食品制度の創設に伴い、飲食品による肥満、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病などの予防や治療に関する一般の認識も高まっていることを反映して、既に、脂質やコレステロールの体内への吸収を阻害するジアシルグリセロールや植物ステロールのような脂肪や、高甘味度甘味料や糖アルコールなどの低カロリー甘味料が食品素材として多数市販されている。また、例えば、特開平7−147934号公報(以下、特許文献1)、特開平9−224608号公報(以下、特許文献2)及び特開平11−349485号公報(以下、特許文献3)には、キシログルカンやアガロオリゴ糖などの糖質を有効成分とする脂肪の低減剤が、特開平8−280358号公報(以下、特許文献4)にはヘスペレチンやナリンゲニンなどを有効成分とする脂質代謝改善剤が記載されている。さらに、『食物繊維−基礎と臨床−』、株式会社朝倉書店(1997年出版)(以下、非特許文献1)には、セルロースやガム類などをはじめとする食物繊維が、脂質代謝、胆汁酸代謝、コレステロール代謝などに関与していることが記載されており、生活習慣病の改善効果があることが記載されている。しかしながら、これらのものの中には、飲食品の原料として使用した場合には、その飲食品の味、香り、食感等の風味の低下をきたすものや、大量に摂取しないと効果が認められないものや、体調や体質によっては、下痢などが発生するなどの問題のある食品素材も少なくない。現在の多様な食生活に対応するためには、継続的に摂取しても、摂取時の食品の味、香り、食感等の風味の低下をもたらすことなく、しかも、安全で、かつ、肥満、高脂血症、高コレステロール血症、糖尿病などの予防や治療効果を有する機能性に優れた食品素材のさらなる開発が望まれている。
一方、本出願人は、国際公開WO 01/090338号明細書(以下、特許文献5)、国際公開WO 02/010361号明細書(以下、特許文献6)及び国際公開WO 02/072594号明細書(以下、特許文献7)において、環状四糖、又は、これの糖質誘導体との混合物を含有する糖質の新規製造方法とこれらの糖質を含有する組成物を開示し、さらに、これらの糖質が、腸内細菌によって代謝され難く、食物繊維作用を有していることを開示した。しかしながら、これらの特許文献1乃至7及び非特許文献1には、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体、或いは、これらの糖質を含有する組成物に脂質の調節作用があることについては開示されていない。
【発明の開示】
本発明は、飲食品などから摂取した脂質や、生体内で合成された脂質の血中での増加や、生体の組織や器官への蓄積を防止、或いは、改善するための脂質調節剤を提供することを第一の課題とし、また、この脂質調節剤を含有する脂質調節用の組成物を提供することを第二の課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決する目的で、糖質を有効成分とする脂質調節剤について長年に渡り研究を進めてきた。その結果、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体が、脂質調節に強く働くこと、さらには、体重の増加の抑制や血中コレステロールを、健常値、或いは、より健常値に近い範囲に調節する作用を有することを見出し、新規な脂質調節剤、及び、この脂質調節剤を含有する脂質調節用の組成物を確立し、本発明を完成するに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明でいう環状四糖の糖質誘導体とは、環状四糖に1種又は2種以上のグリコシル基が1又は2個以上結合した糖質をいう。その具体例としては、例えば、α−イソマルトシルグルコ糖質生成酵素及びα−イソマルトシル転移酵素を組み合わせて澱粉に作用させて得られる糖液のように、環状四糖及び環状四糖分子の1又は2個以上のOH基に、1又は2個以上のグルコースが結合した糖質しを挙げることができる。また、これらの糖質に、例えば、本発明者らが特許文献7において開示した方法などにより、サイクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、リゾチームなどの糖転移能を有する酵素の1種又は2種以上を、該酵素の基質となる単糖、オリゴ糖及び/又は多糖の存在下で作用させて、環状四糖及び/又はこれに1個又は2個以上のグルコースの結合した糖質分子の1個又は2個以上の任意のOH基に、1個又は2個以上のα−D−グルコピラノシル基、β−D−ガラクトピラノシル基、β−D−キトサミニル基などのグリコシル基の1種又は2種以上を転移させて得られる糖質、さらには、これらの環状四糖の糖質誘導体に転移した、α−D−グルコピラノシル基、β−D−ガラクトピラノシル基及び/又はβ−D−キトサミニル基などのグリコシル基に、さらに、α−D−グルコピラノシル基、β−D−ガラクトピラノシル基、β−D−キトサミニル基などのグリコシル基の1種又は2種以上を1個又は2個以上転移した糖質であってもよい。
また、本発明で使用する環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体とは、その由来や製法は問わず、発酵法、酵素法、有機合成法などにより製造されたものでもよい。これらの方法により得られる反応液は、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体、或いは、これらを含有する糖質を含む溶液として、そのまま、或いは、イオン交換樹脂などで、部分精製して、さらには、高純度に精製して不純物を除去して使用することができる。また、環状四糖又はこれの糖質誘導体の個々の成分の1種又は2種以上を混合して使用することも随意である。環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体は、例えば、本出願人が、特許文献5に開示した、パノースをα−イソマルトシル転移酵素によって環状四糖に変換する方法、或いは、特許文献6に開示した、澱粉から直接α−イソマルトシルグルコ糖質生成酵素及びα−イソマルトシル転移酵素を組み合わせて環状四糖を製造する方法などの、澱粉質或いはそれ由来の糖質を原料とした酵素法により製造することができる。また、この環状四糖の糖質誘導体は、例えば、本出願人が特許文献7に開示した方法によっても製造することができる。これらの製造方法は、豊富で安価な澱粉質を原料とし、高効率かつ安価に環状四糖やこれの糖質誘導体を製造できることから、工業的に有利に実施できる。また、環状四糖には、無水非晶質、無水結晶、1含水結晶、5含水結晶が存在し、その何れを使用することも可能である。さらに、環状四糖のうち無水結晶、1含水結晶及び無水非晶質のものは、優れた脱水能を有していることから、不飽和化合物などの含水物を粉末、固化する場合には、該含水物に添加することにより脱水剤としても作用し、環状四糖を有効成分として含有する高品質の粉末、固型製品の製造に有利に使用できる。
本発明の脂質調節剤により調節する脂質とは、生体内に存在する、単純脂質、複合脂質、及び、誘導脂質を意味し、具体的には、トリグリセリドなどの中性脂肪などの単純脂質、グリセロリン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質などの複合脂質、高密度リポ蛋白コレステロール(HDL−コレステロール)、低密度リポ蛋白コレステロール(LDL−コレステロール)、レムナント様リポ蛋白コレステロールなど血漿リポ蛋白や細胞膜中のリポ蛋白など複合脂質、及び、ステアリン酸、パルミチン酸などの飽和脂肪酸、α−リノール酸、α−リノレン酸などの不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸などを含む遊離脂肪酸、脂肪族アルコール、ステロイド、コレステロールなどの誘導脂質をいう。なお、本明細書中では、血液中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL−コレステロール)、低密度リポ蛋白コレステロール(LDL−コレステロール)、レムナント様リポ蛋白コレステロールなど血漿リポ蛋白に含まれるコレステロール及び遊離コレステロールを併せて総コレステロールと呼ぶ場合がある。
本発明でいう脂質調節とは、生体内の脂質が代謝異常や飲食品の過剰摂取などにより、血液などの体液中に増加したり、さらに、皮下、皮内、睾丸、腎臓、心臓、肝臓、消化管やその他の臓器、組織、或いは、これらの臓器や組織の周囲に存在する脂肪細胞、腱の周囲などに過剰に蓄積されて、脂肪肝や内臓脂肪などのように組織の脂質が増加、蓄積するのを抑制し、これらの部位における脂質を、健常或いはそれに近い状態に低減及び/又は維持することをいう。また、動脈硬化などのようにコレステロールや中性脂肪が血管壁に付着したような状態の脂質を低減することも、当然、これに含まれる。
本発明でいう生活習慣病とは、脂質の過度の蓄積により引き起こされる慢性の疾患をいい、具体的には、高脂血症、動脈硬化、血管の狭窄、血管の閉塞、高血圧、血液の粘着性の増加、血栓の形成、狭心症、心筋梗塞、心不全、脳梗塞、脂肪肝、肝硬変、肥満、便秘、肝臓癌や大腸癌などの悪性新生物、糖尿病やこれらの疾患に伴って発生する各種疾患などを意味する。
本発明の脂質調節剤は、ヒトのみでなく、ウシ、豚などの家畜、鶏、アヒルなどの家禽、タイ、ヒラメ、ハマチ、アサリ、ハマグリなどの養殖魚介類、エビ、カニなど養殖甲殻類、蚕、ミツバチなどの昆虫、犬、猫、鳥などのペットの動物などが使用の対象となる。また、本発明の脂質調節剤は、これらのヒトを含む動物における脂質の増加の原因が、食事や餌の過剰摂取や、先天的、或いは、後天的な、脂質代謝異常などに起因する体内の脂質の増加の調節に使用することができる。さらに、本発明の脂質調節剤は、生体内の脂質の増加が続き、肥満、高脂血症、高コレステロール血症などの生活習慣病と呼ばれる状態にあるもののみでなく、これらの状態を示す指標となる数値が、健常の範囲であっても、その範囲内で、脂質を低減させる目的で使用することも随意である。
本発明でいう肥満とは、ヒトの場合には、日本肥満学会の判定基準でいう、体重(kg)を身長(m)で2回除したボディマスインデックス(BMI)が、健常値の25を越えている状態を意味する。また、BMIが25以下であっても、組織や内臓の特定部位の脂質量が健常よりも多い場合を含むものであり、特に、生活習慣病の危険因子として挙げられる内臓脂質量が増加している場合を含むことはいうまでもない。
本発明でいう高脂血症とは、血液及び/又は体液中の中性脂肪及び/又はコレステロールの含量が、健常値を越えている状態をいう。ヒトの場合には、血液中の中性脂肪の含量が、100ml当たり150mgを越える状態、及び/又は、高コレステロール血症にある場合をいう。本発明でいう高コレステロール血症とは、血液中の総コレステロールの含量が、100ml当たり220mg以上の場合をいい、その値が100ml当たり220mg以下の場合であっても、血液中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL)の含量が100ml当たり41mg以下の場合や、血液中のレムナント様コレステロールの含量が100ml当たり7.5mg以上の場合も含む。
本発明の脂質調節剤の有効成分である環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体は、安定で、しかも、飲食品の風味に殆ど影響を与えないことから、そのままで、あるいは、例えば、特許文献1乃至4に開示されているキシログルンカンやその加水分解物、ポルフィランの加水分解物のガラクト硫酸オリゴ糖などの糖質や、ヘスペレチン、ナリンゲニンなどの、生体内の脂質代謝に影響を与えることの知られている1種又は2種以上の成分と適宜組み合わせて使用してもよく、さらには、非特許文献1に開示されたセルロース、ペクチン、プルラン、アミロースやその誘導体、ヘミセルロースをはじめとする食物繊維と組み合わせることも自由である。また、これらの成分に加えて、ヘスペリジン、酵素処理ヘスペリジン、ナリンジン、酵素処理ナリンジン、ルチン、酵素処理ルチン、プロアントシアニジンなどのフラボノイド、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキンなどのカテキン、さらには、ジアシルグリセロール、ポリエンホスファチジルコリンをはじめとする植物ステロール、ローヤルゼリー、プラバスタチンナトリウム、シンバスタチン、シンフィブラート、ニコチン酸、ニコモール、クリノフィブラート、クロフィブラート、パンテチン、酪酸リボフラビンなどの脂質の代謝調節に関与することが知られている公知の成分の1種又は2種以上を併用して、脂質調節効果をさらに増強することも自由である。
また、本発明で使用する環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を有効成分として含有する脂質調節剤は、そのままで、または必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、顆粒、球状、短棒状、板状、立方体、錠剤など各種形状に成型して使用することも随意である。
さらに、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を含有する本発明の脂質調節剤は、酸味、塩から味、渋味、旨味、苦味などの他の呈味を有する各種物質とよく調和し、耐酸性、耐熱性も大きいので、一般の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの原料として有利に利用できる。そして、本発明の脂質調節剤を含有させた製品は、これを含有させない場合と同様に使用できる上に、これらの製品には脂質調節作用が付与されていることから、ダイエットや、生活習慣病の予防、さらには肥満、糖尿病、高脂血症、脂肪肝などの治療や予防の目的で、カロリーや脂肪の摂取量を制限された生活習慣病者用の飲食品、医薬部外品、医薬品、その中間加工品や原材料として有利に利用できる。また、本発明の脂質調節剤は、家畜、家禽、ペットなどの肥満の防止や高脂血症、脂肪肝などの改善のための、飼料、餌料、ペットフードなどに利用することも随意である。
また、本発明の脂質調節剤は、例えば、調味料、複合調昧料、各種の和菓子・洋菓子、パン、氷菓、シロップ、ペースト、野菜の加工食品、漬物、漬物の素、畜肉製品、魚介製品、珍味、惣菜食品、乳製品、清涼飲料水、各種プレミックス、即席食品、冷蔵食品、冷凍食品、チルド食品、レトルト食品、乾燥食品、さらには、離乳食、治療食、ドリンク剤、ペプチド食品、冷凍食品などの各種飲食物の製造に使用することができる。また、本発明の脂質調節剤は、例えば、ラード、牛脂、魚油、植物油、ミルク脂肪、バター、チーズ、ショートニング、マーガリン、調理用オイル又は調理用脂肪などを使用した、ブラウニー、パイフィリング、冷凍デザート、サラダドレッシング、スプレッド、ケーキ、クッキー、粉末飲料やその他の脂肪を含む飲食品の脂肪の一部或いは全部と置き換えるか、又は、これらの飲食品に加えることにより、脂肪を使用した場合と同様のクリーミーで口当たりのよい食感を有する飲食品を製造するための、脂質代替物として利用することも有利に実施できる。そして、これらの環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を含有する飲食品は、脂質調節能が付与されているので、脂質調節用の組成物として有利に利用できる。
また、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有する脂質調節剤を、家畜、家禽、その他蜜蜂、蚕、淡水魚或いは海水魚、甲殻類などの飼育動物用の飼料、餌料、ペットフードなどに含有させて、これらに脂質調節機能を付与することも随意である。さらに、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体は、整腸作用及び腸内の胆汁酸の再吸収を阻害する作用を有することから、本発明の脂質調節剤を、整腸用及び/又は胆汁酸の代謝調節用として使用することも随意である。
本発明の脂質調節剤を、対象とする組成物に含有させる方法としては、特に制限はなく、目的の組成物が完成されるまでに、或いは、完成品に対して、含有させればよく、その方法としては、例えば、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、浸透、晶出、散布、塗布、付着、噴霧、被覆(コーティング)、注入、晶出、固化などの公知のものが適宜に選ばれる。また、これらの方法の1種又は2種以上を組み合わせることも随意である。
本発明の脂質調節剤は、その有効成分の剤環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を、合計で、無水物換算で、約0.1質量%(以下、本明細書では特に断らない限り、「質量」%を単に%と表記する。)以上、望ましくは、0.5%以上、さらに望ましくは1.0%以上含有するものが好適である。また、本発明の脂質調節剤は、生体内の脂質の低減及び/又は維持する効果を発揮出来ればよく、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体のみで構成されていてもよいし、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体の製造方法に由来するグルコース、イソマルトース、マルトース、オリゴ糖、デキストリンなどの糖質を含有していてもよい。逆に、本発明の脂質調節剤を含有する組成物が、アミノ酸などの分子内にアミノ基を含む生理活性物質などを有効成分として含む場合であって、グルコースをはじめとする還元性糖質が混在するとメーラード反応などによりこの有効成分が変化し、該組成物の品質低下が予想される場合には、本発明の脂質調節剤は、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を、合計で98%以上、望ましく99%以上、さらに望ましくは99.5%以上含有するものが好適であり、或いは、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体と共存する還元性の糖質を水素添加して、その還元性を低減したものを使用することも可能である。また、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体は安定な糖質なので、本発明の脂質調節剤を使用する組成物の効果や品質を低下させない限り、必要に応じて、分散性を高めたり、増量などの目的に応じて、還元性糖質、環状四糖及びこれの糖質誘導体を除く非還元性糖質、サイクロデキストリン、糖アルコール、水溶性多糖などの糖質、上記以外のフラボノイドやカテキンなどのポリフェノール、甘味料、香辛料、酸味料、旨昧料、酒、有機酸、有機酸の塩、無機塩、乳化剤、香料、色素、酸化防止剤、キレート作用を有する物質から選ばれるいずれか1種又は2種以上と併用することも随意である。さらに必要であれば、公知の保存料、旨味料、甘味料、安定剤、アルコール、殺菌剤などの1種又は2種以上を適量併用することも随意である。このようにして得られた脂質調節剤は、その形状を問わず、例えば、シラップ、ペースト、マスキット、粉末、結晶、顆粒、錠剤などの何れの形状であってもよい。
本発明の脂質調節剤は、例えば、粉飴、ブドウ糖、マルトース、トレハロース、蔗糖、異性化糖、蜂蜜、メープルシュガー、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キトオリゴ糖、ビートオリゴ糖、特開平7−143876号公報などに開示されたα−グルコシルα,α−トレハロースやα−マルトシルα,α−トレハロースなどのα,α−トレハロースの糖質誘導体、ラクトスクロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、エリスリトール、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α−グリコシルステビオシド、レバウディオシド、グリチルリチン、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル、サッカリン、グリシン、アラニン、アセスルファムK、スクラロースなどのような糖質、甘味料などの1種又は2種以上の適量と混合して使用してもよく、デキストリン、澱粉、乳糖などのような増量剤と混合して使用することもできる。
さらに、本発明の脂質調節剤の1日当たり必要な摂取量は、脂質調節剤が、脂質の調節機能を発揮できる量であればよく、特に制限はないが、通常、体重1kg当たり、その有効成分である環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を、合計で、無水物換算で約0.01g以上、望ましくは、約0.5g以上、さらに望ましくは、約1.2g以上が好適である。通常0.01g未満では、脂質調節機能を効果的に発揮するには不充分である。また、本発明の脂質調節剤の1日当たり必要な摂取回数は、脂質調節剤が、脂質の調節機能を発揮できる量の環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を摂取できる回数であればよく、特に制限はなく、一度に一日の必要量の全量を摂取してもよいし、数回に分けて摂取してもよい。また、本発明の脂質調節剤は、体質によっては、一度に摂取する量が多い場合に、おなかが緩くなる場合があるので、通常は、数回に分けて摂取するのが望ましく、とりわけ、食事の原材料として使用するか、食事と前後して摂取するのが望ましい。なお、本発明の脂質調節剤は、通常、そのままで、或いは、飲食品、医薬品、医薬部外品などの組成物として経口的に摂取すればよく、それが不可能な場合には、カテーテルなどを使用して、直接、胃や腸管内に注入することも随意である。
以下、実験例に基づいて環状四糖、又は、この環状四糖とこれの糖質誘導体の混合物を使用した脂質調節剤についてより詳細に説明する。
実験例1
<環状四糖摂取によるラットの脂質への影響>
特許文献5に開示されているとおり、環状四糖は、食物繊維作用を有することが知られていることから、環状四糖は生体に何らかの影響を与えていると考えて、ラットの脂質代謝に着目して、これに及ぼす影響を調べる実験を、代表的な食物繊維のセルロースを含有する飼料及び、食物繊維を含有しない飼料を対照として、以下のように行った。
実験例1−1
<ラットの飼育と体重の測定>
体重110g〜120gのウイスター系ラット(日本チャールズリバー株式会社販売、雄、5週齢)50匹を、表1に示す配合組成(%)の無繊維飼料で1週間馴化のために飼育した。馴化後、ラットをアットランダムに10匹ずつ5群に分け、各々、表1に示す飼料(以下、「無繊維飼料」という)、無繊維飼料にセルロースを5%含有させた飼料(以下、「有繊維飼料」という)、無繊維飼料に、後述する実施例A−3の方法で調製した純度99.5%の環状四糖の無水結晶粉末を、無水物換算で、1%、2%或いは5%となるように配合した飼料の何れか1種を与えて、4週間の飼育試験を行った。有繊維飼料及び3種類の環状四糖含有飼料は、セルロース或いは環状四糖とコーンスターチとの合計の配合割合が、何れの飼料でも、飼料の総質量の44.75%となるように調製した。ラットの飼育は、室温25℃で、12時間の明暗サイクルとし、飼料及び水は、自由摂取とし、試験終了時に、各群の各々の個体の体重を計測して、各群の個体の平均体重と試験期間中の増加体重の平均を求めた。その結果を表2に示す。飼育試験期間の4週間に、各群のラット1匹当たりに与えた飼料の総量、及び、一日体重当たりの環状四糖の平均摂取量を計算して表2に示した。
<血漿中の脂質の測定>
試験終了後、ラットを1日絶食させ、エーテル麻酔下で開腹して、下大静脈より1%EDTAで処理した注射器を用いて血液を採取した。採取した血液を遠心分離して(3,500rpm、10分)血漿を分離し、血漿中の総コレステロール、トリグリセリド、リン脂質の含量を、それぞれコレステロールC−テスト ワコー、トリグリセリド−テスト ワコー、リン脂質C−テスト ワコー(以上、何れも和光純薬株式会社販売)により測定した。肝臓の機能障害の有無を確認するために、血漿中のGOT活性の測定を、GOT−テスト ワコー(和光純薬株式会社販売)を使用しておこなった。なお、LDL−コレステロール含量は、総コレステロール含量からHDL−コレステロール含量を減じて求めた。その測定結果を表3に示す。有意差検定は有繊維飼料で飼育した群に対して行った。なお、非特許文献1に記載されているように、セルロースには経口摂取によりコレステロールを低減する機能は無いとされているので、コレステロールについてのみ、有意差検定は無繊維飼料で飼育した群に対して行った。
<臓器・組織の脂質の測定>
前記採血後、頚椎脱臼によりラットを屠殺して、解剖し、腸管膜周囲、腎臓周囲、睾丸周囲の各々の脂肪組織、肝臓、及び盲腸を取り出し、その各々の脂肪組織の湿質量を測定した。その結果を表4に示す。肝臓についてはその湿質量、総脂質量、総コレステロール量、トリグリセリド量及びリン脂質量を測定し、その結果を表5に示す。なお、肝臓の脂質量は、採取した肝臓4質量部に対して脱イオン水4質量部を加えて、ホモジナイザーを使用してホモジナイズし、この8質量部に、クロロフォルムとメタノールを2:1の容積比で混合した溶液8mlを加えて、撹拌抽出し、遠心分離(3,000rpm、15分)した。この操作をさらに2回繰り返し、各操作で得られた遠心上清画分を集めてクロロフォルム層を回収し、濃縮固化後、これのコレステロール、トリグリセリド、リン脂質量を、血漿中の脂質の測定と同じ方法により測定した。
<盲腸内容物の質量及び胆汁酸量の測定>
前記盲腸を摘出した直後に、その内容物を取り出し、その含量を測定した。胆汁酸濃度の測定は、取り出した盲腸内容物0.2gにメタノールと水を8:2の容積比で混合した溶液2mlを加えて、70℃で30分間抽出し、遠心分離(3,500rpm、10分)した後、上清を五酸化リンの入ったデシケーター内で一晩乾燥させて乾固し、胆汁酸−テスト ワコー(和光純薬株式会社販売)を用いて測定した。胆汁酸量は、脂肪酸濃度に盲腸内容物の質量を乗じて計算した。その結果を表6に示す。また、盲腸組織の質量は、摘出した盲腸の全湿質量から、盲腸の内容物の湿質量を減じて求めた。







<環状四糖の体重及び摂餌量に及ぼす影響>
表2から明らかなように、環状四糖を5%含有する飼料で飼育した群で、有繊維飼料で飼育した群と比べて、有意の体重差及び体重増加の抑制が認められた。試験期間中の総飼料摂取量については、何れの群でも有意の差は認められなかった。
<環状四糖の脂質に及ぼす影響>
表3から明らかなように、血漿中の脂質については、環状四糖を5%含有する飼料で飼育した群で、無繊維飼料で飼育した群と比べて、有意の総コレステロール量の低下が認められた。また、環状四糖を2%或いは5%含有する飼料で飼育した群で、有繊維飼料で飼育した群と比べて、有意のトリグリセリド量の低下が認められた。リン脂質及びGOTは何れの群でも差は認められなかった。表4から明らかなように、環状四糖を2%又は5%含有する飼料で飼育した群で、有繊維飼料で飼育した群と比べて、腸管周囲脂肪、腎周囲脂肪、睾丸周囲脂肪の蓄積が、何れも有意に抑制されていた。また、環状四糖を1%含有する飼料で飼育した群で、有繊維飼料で飼育した群と比べて、腎周囲脂肪、睾丸周囲脂肪の蓄積が、何れも有意に抑制されていた。表5から明らかなように、肝臓のトリグリセリド量は、有繊維飼料で飼育した群及び無繊維飼料で飼育した群と比べて、低下の傾向が認められたものの、個体によるばらつきが大きく、有意な差とはならなかった。また、その他の脂質についても有意の差は認められなかった。
<環状四糖の盲腸内容物及び盲腸内の胆汁酸に及ぼす影響>
表6から明らかなように、環状四糖を2%或いは環状四糖を5%含有する飼料で飼育した群で、有繊維飼料で飼育した群と比べて、盲腸組織質量、盲腸内容物、盲腸内胆汁酸量の有意の増加が認められ、環状四糖を1%含有する飼料で飼育した群では、有繊維飼料で飼育した群と比べて、盲腸組織質量及び盲腸内胆汁酸量の有意の増加が認められた。
これらの結果から、環状四糖が、血漿中のトリグリセリド、臓器周辺の脂質(内臓脂肪)などの脂質調節作用を有しており、これらの作用が代表的な食物繊維のセロルロースの持つ作用よりも遥かに強いことが明らかになった。特に、血漿中のトリグリセリド、内臓周囲の脂質に対しては、著しい脂質調節効果があり、また、肝臓のトリグリセリドも低下傾向を示したことから、血清中の脂質の低下が、トリグリセリドを脂肪組織に蓄積する機構によるものではなく、環状四糖を摂取したラットでは、生体内の脂質そのものが減少していることを示している。また、この生体内の脂質が低減する脂質調節作用は、環状四糖の摂取量に依存しており、脂質の種類による程度差はあるものの、環状四糖を1%含有する飼料(環状四糖の1日の平均摂取量が、1匹当たり0.63g)で既に低減効果が認められ、環状四糖を2%以上含有する場合(環状四糖の1日の平均摂取量が、1匹当たり1.25g以上)では顕著な調節作用があることが確認された。さらに、5%の環状四糖を含有する飼料で飼育したラットでは、セルロースにはないとされているコレステロールの低下作用が確認された。また、脂質の吸収への関与が知られている胆汁酸量が、盲腸内で増加していることから、環状四糖が胆汁酸の小腸での再吸収を阻害し、それに伴う、小腸での脂質の吸収が抑制されている可能性が高く、環状四糖による脂質調節機構の一つが、胆汁酸の小腸での再吸収の阻害によることが示唆された。
なお、肝臓の機能障害の指標であるGOTが、環状四糖の摂取の有無に関わらず有意の変化の無かったことは、環状四糖のよる脂質調節作用が肝障害によるものではないことを示している。また、具体的なデータは示さないが、5%の環状四糖を含有する飼料で飼育したラットの10匹の内2匹で、環状四糖の摂取開始の翌日から2〜3日間軟便を生じ、その後回復した。このことは、環状四糖が難消化性であることを示しており、同じ出願人らが、特許文献5において開示した内容と一致している。また、2%の環状四糖を含有する飼料の摂取では軟便が発生せず、5%の環状四糖を含有する飼料を摂取した群でも摂取を継続すると軟便が改善することから、腸内菌叢の馴化が徐々に進行していることを示している。
実験例1−2
<環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有する糖質の摂取によるラットの脂質への影響>
実験例1−1の結果から、環状四糖がラットの脂質調節作用を有することを確認したので、次に、環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有する糖質に、環状四糖のみの場合と同様の作用があることを確認するための試験を以下のように行った。また、脂質調節に関与していることが知られている胆汁酸量、及び、肝臓の機能障害の指標として用いられGOTの活性を測定した。また、実験例1−1で確認されたコレステロールの低下が、動脈硬化や心筋梗塞の原因とされるLDL−コレステロール量を低下させるのかどうかを確認するために、総コレステロール量と共に、LDL−コレステロール量を求めた。なお、測定の結果の、有意差検定は、実験例1−1と同様に有繊維飼料で飼育した群に対して行い、コレステロールのみ、無繊維飼料で飼育した群に対して行った。
<ラットの飼育と体重の測定>
ラットの脂質量に及ぼす環状四糖の影響を調べる実験は次のようにして行った。すなわち、体重110g〜120gのウイスター系ラット(日本チャールズリバー株式会社販売、雄、5週齢)50匹を、表7に示す配合組成の無線維飼料で1週間馴化のために飼育した。馴化後、ラットをアットランダムに10匹ずつ5群に分け、各々、表7に示す無繊維飼料、有繊維飼料、無繊維飼料に後述する実施例A−2の方法で調製した、無水物換算で環状四糖を35.2%、同じく無水物換算で環状四糖の糖質誘導体15.6%を含有するシラップを噴霧乾燥した粉末を、無水物換算で、環状四糖及びこれの糖質誘導体を合計で、1%、2%或いは5%となるように配合した飼料の何れか1種を与えて、4週間の飼育試験を行った。有繊維飼料、並びに、3種類の環状四糖及びこれの糖質誘導体含有糖質を含有する飼料は、セルロース、或いは、環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有する糖質とコーンスターチとの合計の配合割合が、何れの飼料でも、飼料の44.75%となるように調製した。試験終了時に、各群の各々の個体の体重を計測して、各群の個体の平均体重と試験期間中の増加体重の平均を求め、その結果を表8に示す。また、飼育試験期間の4週間に、各群のラット1匹当たりに与えた飼料の総量と、一日体重当たりの環状四糖、及び、環状四糖とこれの糖質誘導体との合計の平均摂取量を計算して表8に示した。
<血漿中の脂質の測定>
試験終了後、実験例1−1と同様に、血漿中の総コレステロール、HDL−コレステロール、トリグリセリド、リン脂質の含量、GOT活性の測定を行った。おなった。なお、LDL−コレステロール含量は、総コレステロール含量からHDL−コレステロール含量を減じて求めた。なお、HDL−コレステロールは、HDL−コレステロール−テスト ワコー(和光純薬株式会社販売)を使用して測定した。その測定結果を表9に示す。
<臓器・組織の脂質質量の測定>
前記採血後、実験例1−1と同様に、腸管膜周囲、腎臓周囲、睾丸周囲の各々の脂肪組織の湿質量を測定し、その結果を表10に示す。肝臓の湿質量、総脂質、総コレステロール、トリグリセリド及びリン脂質を測定し、その結果を表11に示す。
<盲腸内容物及び盲腸内の胆汁酸の測定>
前記盲腸を摘出した直後に、その内容物を取り出しその質量と胆汁酸を、実験例1−1と同様に測定した。その結果を表12に示す。







<環状四糖及びこれの糖質誘導体の体重及び摂餌量に及ぼす影響>
表8から明らかなように、何れの群においても、体重及び摂餌量には有意の差が認められなかった。
<環状四糖及びこれの糖質誘導体の血漿中の脂質に及ぼす影響>
表9から明らかなように、環状四糖及びこれの糖質誘導体を、無水物換算で、合計1%、2%或いは5%含有する飼料で飼育した群では、無繊維飼料で飼育した群と比べて、何れも血漿中の総コレステロール量、LDL−コレステロールに有意の低下が認められた。さらに、何れの群においても、血漿中の総コレステロール量に占めるLDL−コレステロールの割合に大きな変化は認められなかった。また、血漿中のトリグリセリドについては、飼料中の環状四糖及びこれの糖質誘導体の含量に依存して低下し、無水物換算で合計5%含有する飼料で飼育した群で、有繊維飼料で飼育した群に対して、有意の低下が認められた。リン脂質については、環状四糖及びこれの糖質誘導体を無水物換算で、合計1%或いは5%含有する飼料で飼育した群では、有繊維飼料で飼育した群と比べて有意の低下が認められた。
<環状四糖及びこれの糖質誘導体の組織中の脂質に及ぼす影響>
表10から明らかなように、環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有する飼料で飼育した群では、腸管膜周囲脂肪、腎周囲脂肪及び睾丸周囲脂肪の蓄積が、その含量に依存して抑制されており、環状四糖及びこれの糖質誘導体を、無水物換算で、合計2%或いは5%含有する飼料で飼育した群では、有繊維飼料で飼育した群に比べて、蓄積の有意の抑制が認められた。また、肝臓については、表11から明らかなように、環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有する飼料で飼育した群では、その含有量に依存した肝臓の総脂質及びトリグリセリドの低下が認められ、総脂質については、環状四糖及びこれの糖質誘導体を、無水物換算で、合計5%含有する飼料で飼育した群で、有繊維飼料で飼育した群と比べて、有意の低下が認められ、トリグリセリドについては、環状四糖及びこれの糖質誘導体を、無水物換算で、合計2%又は5%含有する飼料で飼育した群で、有繊維飼料で飼育した群と比べて、有意の低下が認められた。また、総コレステロールは、環状四糖及びこれの糖質誘導体を、無水物換算で、合計1%含有する飼料で飼育した群で、無繊維飼料で飼育した群と比べて、有意の上昇が認められた。各群における肝臓の質量及び肝臓のリン脂質量に有意の差は認められなかった。
<環状四糖及びこれの糖質誘導体の盲腸内容物及び盲腸内の胆汁酸に及ぼす影響>
表12から明らかなように、環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有する飼料で飼育した群では、無水物換算で、その合計の含有量に依存して、盲腸内容物及び胆汁酸量が増加した。盲腸内容物については、環状四糖及びこれの糖質誘導体を、無水物換算で、合計2%又は5%含有する飼料で飼育した群で、有繊維飼料で飼育した群と比べて、有意の増加が認められた。胆汁酸については、環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有する飼料で飼育した何れの群においても、有繊維飼料で飼育した群と比べて、有意の増加が認められた。
これらの結果は、環状四糖で確認された、脂質の調節作用が、環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有する糖質にも存在することを示している。また、この脂質調節効果は、環状四糖及びこれの糖質誘導体の合計の摂取量に依存しており、脂質の種類による程度差はあるものの、環状四糖及びこれの糖質誘導体を、無水物換算で、合計1%含有する飼料(環状四糖の1日の平均摂取量が、1匹当たり0.56g)で既に低減効果が認められ、環状四糖及びこれの糖質誘導体を、無水物換算で、合計2%以上含有する場合(環状四糖の1日の平均摂取量が、1匹当たり1.18g以上)では顕著な調節効果があることが確認された。また、胆汁酸量についても、環状四糖のみの摂取の場合と同様に、盲腸内で増加していることから、環状四糖及びこれの糖質誘導体が、何れも胆汁酸の小腸での再吸収を阻害し、それに伴い、小腸での脂質の吸収が抑制されていると考えられる。また、実験例1−1で使用した環状四糖のみを含有する飼料と、実験例1−2で使用した環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有する飼料とでは、環状四糖のみで見れば、環状四糖及びこれの糖質誘導体の、無水物換算で、その合計の含量が同じ飼料の場合、実験例1−2で使用した飼料では、実験例1−1で使用した飼料の約70%しか含有していないのにも関わらず、両方の実験でほぼ同等の脂質調節効果が得られていることから、環状四糖のみでなく、これの糖質誘導体にも、脂質調節作用があると考えられる。なお、環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有する餌で飼育した群において、GOTが環状四糖の摂取量により有意の低下が認められたが、その数値の変動は僅かであり、肝障害が発生しているとは考えられない。
以上の実験結果から、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体含有する組成物は、生体内の脂質調節に利用できることが判明した。
以下に、本発明の環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有する脂質調節剤の具体的な例を実施例Aで、この脂質調節剤を含有させた組成物を実施例Bで具体的に例を挙げて説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例A
<環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有する脂質調節剤>
実施例A−1
特許文献6に開示された実施例A−2の方法に準じて、馬鈴薯澱粉から、濃度80%、固形物当たり、グルコース0.6%、イソマルトース1.5%、マルトース12.3%、環状四糖63.5%、環状四糖にさらに1又は2個以上のグルコースが結合した環状四糖の糖質誘導体5.2%及びその他の糖質16.9%を含有するシラップ状の脂質調節剤を調製した。本品は、そのままで、脂質調節用に用いるか、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、脂質調節用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
実施例A−2
特許文献6に開示された実施例A−9に開示された方法に準じて(α−グルコシダーゼ及びグルコアミラーゼ処理はせず。)、トウモロコシ澱粉から、濃度73%、固形物当たり、グルコース4.1%、マルトース、イソマルトースなどの二糖類8.1%、マルトトリオースなどの三糖類4.6%、環状四糖35.2%、環状四糖にさらに1又は2個のグルコースの結合した環状四糖の糖質誘導体15.6%、その他の糖質32.4%を含有するシラップ状の脂質調節剤を調製した。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、脂質調節用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
実施例A−3
特許文献6に開示された実施例A−4の方法に準じて、コーンスターチを原料として調製した環状四糖含有シラップを、特許文献6の実施例A−6及び実施例A−7記載の方法に準じて精製、濃縮、乾燥・結晶化して、純度99.6%の環状四糖5含水結晶からなる粉末状の脂質調節剤を得た。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、脂質調節用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
前記環状四糖5含水結晶をさらに、特許文献6に開示された実験例31或いは実験例32の方法に準じて乾燥し、環状四糖1含水結晶粉末、或いは、環状四糖無水結晶粉末からなる脂質調節剤を調製した。これらは、何れも、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、脂質調節用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
実施例A−4
実施例A−3で得た環状四糖5含水結晶60質量部に対して、市販の無水結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、商品名『マビット』)を40質量部を混合して粉末状の脂質調節剤を得た。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、脂質調節用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
実施例A−5
実施例A−3で得た環状四糖5含水結晶50質量部に対して、市販のα,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)50質量部を混合し、粉末状の脂質調節剤を得た。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、脂質調節用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。また、本品は、直接、或いは、シュガーエステルなどを添加して、造粒、さらには、打錠して、顆粒、錠剤の形態での利用も容易である。
実施例A−6
市販の食品級含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)を、水に溶解し、60℃に加熱しながら、減圧濃縮して、トレハロースの濃度が75%の溶液を調製し、室温に放置して結晶を析出させ、該結晶を水で洗浄する操作を2回くり返した後、乾燥、粉砕して調製した、純度99.8%の含水結晶α,α−トレハロース粉末50質量部と実施例A−3で得た環状四糖5含水結晶50質量部とを均質に混合して、粉末状の脂質調節剤を得た。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、脂質調節用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。また、本品は、高純度の環状四糖及びα,α−トレハロースで構成されているので、反応性が極めて低く安定なので、特に、分子内にアミノ基を含み、還元性の糖とメーラード反応を起こし、その品質に劣化を来すような組成物に対して好適に使用できる。また、本品は、直接、或いは、シュガーエステルなどを添加して、造粒、さらには、打錠して、顆粒、錠剤の形態での利用も容易である。
実施例A−7
実施例A−1で得た環状四糖とこれの糖質誘導体との混合物を含有するシラップ70質量部に対して、アスコルビン酸2質量部、ビタミンE1質量部、グリセリン脂肪酸エステル0.5質量部を含有するシラップ状の脂質調節剤を調製した。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、脂質調節用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
実施例A−8
実施例A−3で得た環状四糖5含水結晶70質量部に対して、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売)2質量部、酵素処理ルチン2質量部(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGルチン」)を混合し、粉末混合物を得た。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、脂質調節用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
実施例B
<環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有する脂質調節剤を含有させた脂質調節用の組成物>
実施例B−1
<脂質調節用テーブルシュガー>
実施例A−3の方法で調製した環状四糖の5含水結晶からなる粉末状の脂質調節剤50質量部に対して、無水結晶マルチトール46質量部、糖転移ヘスペリジン(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGヘスペリジン」)3質量部、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社販売)1質量部を200質量部の水に溶解し、常法により、噴霧乾燥して脂質調節用の粉末甘味料を調製した。本品は、環状四糖及び糖転移ヘスペリジンが体内の脂質調節をすることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用のテーブルシュガーとして好適である。
実施例B−2
<脂質調節用甘味料>
実施例A−3で調製した環状四糖の1含水結晶からなる粉末状の脂質調節剤5質量部、無水結晶マルチトール粉末(株式会社林原商事販売、商標『マビット』)94.5質量部、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(味の素株式会社販売、商品名「アスパルテーム」)0.5質量部を均質に混合後、常法により造粒して、脂質調節用の顆粒状甘味料を調製した。本品は、環状四糖が体内の脂質調節をするとともに、カロリーも砂糖と比較して低いことから、本品を摂取することにより、カロリーもひかえることができることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、糖や脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の甘味料として好適である。また、本品は、医薬品などの甘味付与剤としても好適である。
実施例B−3
<脂質調節用粉末油脂>
大豆サラダ油100質量部及びレシチン1質量部に水10質量部を室温で混合した後、これに実施例A−5で調製した粉末状の脂質調節剤100質量部を混合して粉末化し、篩にかけて、脂質調節用の粉末油脂を得た。本品は、環状四糖を含有しているので、本品を用いて調製する飲食品、飼料、餌料などを摂取すると、体内の脂質調節がされることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、糖や脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の食事、体内の脂質調節をする必要のある動物の飼料、餌料などの原材料として好適である。
実施例B−4
<脂質調節用野菜ジュース>
市販野菜ジュース97.5質量物に、キシログルカン部分分解物1質量部、実施例A−2で調製したシラップ状の脂質調節剤1質量部、糖転移ナリンジン0.5質量部を加えて混合し、脂質調節用の野菜ジュースを調製した。本品は、環状四糖、これの糖質誘導体、キシログルカン部分分解物、糖転移ナリンジン及び野菜由来の食物繊維を含有しているので、本品、或いは、本品を用いて調製する飲食品、飼料、餌料などを摂取すると、体内の脂質調節がされることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の健康補助食品として好適である。また、本品は、環状四糖及びこれの糖質誘導体が、野菜の不快味や不快臭を低減するので、飲みやすい野菜ジュースである。
実施例B−5
<脂質調節用ビール>
市販のビール調製キット(東急ハンズ通販クラブ販売、商品名「NBビール基本セット」)を購入し、その発酵用の溶液に、100質量部に対して、実施例A−1の方法で調製したシラップ状の脂質調節剤2質量部を添加、混合して、添付のマニュアルに従い、ビールを調製した。本品を飲むことにより、体内の脂質調節がされることから、ダイエットの目的や、生活習慣病のためのビールとして好適である。また、本品は、ビール特有の不快味及び/又は不快臭が低減されており、切れの良い、美味しいビールであった。
実施例B−6
<脂質調節用酎ハイ>
市販の焼酎を炭酸水で割り、実施例A−1の方法で調製したシラップ状の脂質調節剤4質量部と梅のフレーバーを加えて、撹拌し、アルコール分6%の酎ハイを調製した。本品を飲むことにより、体内の脂質調節がされることから、ダイエットの目的や、生活習慣病のためのアルコール飲料として好適である。また、本品は、焼酎特有の不快味及び/又は不快臭が低減されており、切れの良い、美味しい酎ハイであった。
実施例B−7
<脂質調節用ニンジンエキス粉末>
ニンジンエキス1質量部を5倍濃縮したもの1質量部に対して、含水結晶トレハロース2質量部と実施例A−1で調製したシラップ状の脂質調節剤4質量部を添加して撹拌溶解したものを、常法により噴霧乾燥して、脂質調節用ニンジンエキス粉末を調製した。本品は、環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有しているので、本品、或いは、本品を用いて調製する飲食品、飼料、餌料などを摂取すると、体内の脂質調節がされることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の健康補助食品として好適である。
実施例B−8
<脂質調節用粉末ローヤルゼリー>
冷凍生ローヤルゼリー1質量部に対して、実施例A−3で調製した環状四糖の1含水結晶と無水結晶からなる粉末状の脂質調節剤を等量混合したもの9質量部を混合し、常法により粉砕して、脂質調節用生ローヤルゼリーの粉末品を調製した。本品は、環状四糖及びローヤルゼリーが体内の脂質調節をすることから、本品、或いは、本品を用いて調製する飲食品、飼料、餌料などを摂取することにより、体内の脂質調節がされることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の健康補助食品として好適である。
実施例B−9
<脂質調節用チョコクッキー>
小麦粉(薄力粉)140質量部、バター90質量部、チョコレート115質量部、砂糖360質量部、全卵200質量部、アーモンド200質量部、実施例A−3の方法で調製した環状四糖の1含水結晶からなる粉末状の脂質調節剤50質量部を使用して、常法により脂質調節用チョコクッキーを製造した。本品は、環状四糖により体内の脂質調節がされることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の菓子として好適である。
実施例B−10
<脂質調節用ゼリー>
フランボワーズ・ピューレ200質量部、グラニュー糖46質量部、実施例A−2の方法で調製したシラップ状の脂質調節剤12質量部、水飴50質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事、商標『トレハ』)122質量部、ペクチン5質量部、50%クエン酸水溶液3質量部、異性化糖27質量部、水適量を加えて混合し、溶解し、ブリックスが約78になるまで、ゆっくり煮詰めて、適当な型に流し込み、室温で冷却して脂質調節用のハードゼリーを調製した。本品は、環状四糖、これの糖質誘導体及び食物繊維のペクチンが体内の脂質調節をすることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の菓子として好適である。また、本品は、硬くてしっかりしたハードゼリーであり、離水もなく、風味に優れたゼリーである。
実施例B−11
<脂質調節用ハードキャンディ>
砂糖60質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)20質量部、実施例A−1の方法で調製したシラップ状の脂質調節剤35質量部、アミノ酸混合物1.5質量部、水85質量部を加えて、常法により、脂質調節用ハードキャンディを製造した。本品は、環状四糖及びこれの糖質誘導体が体内の脂質調節をすることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の菓子として好適である。また、本品は、α,α−トレハロース、環状四糖及びこれの糖質誘導体によりアミノ酸の苦味が低減されることから、口あたりのよいアミノ酸含有キャンディーである。
実施例B−12
<脂質調節用米粉パン>
予めグルテンを配合したパン用の米粉(斎藤製粉株式会社販売、商品名「こめの粉(パン用)」)400質量部、食塩8質量部、実施例A−3で調製した環状四糖5含水結晶を有効成分として含有する粉末状の脂質調節剤40質量部、上白糖12質量部、脱脂粉乳12質量部、生イースト1質量部、プルラン8質量部、水320質量部を加えて、縦型ミキサーで撹拌混合後、バター20質量部を添加してさらに捏ねパン生地を調製した。生地を25℃で50分間発行した後、適当な大きさに分割し、湿度75%、室温35℃で50間保持し、オーブンに入れて、上火温度180℃、下火温度180℃で40分間焼成し、脂質調節用米粉パンを調製した。本品は、環状四糖を含有しているので、この米粉パンを食べることにより、体内の脂質調節がされることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の食事用として好適である。また、本品は、米粉の風味のよい、もちもち感のある美味しい米粉パンである。
実施例B−13
<脂質調節用米飯>
水375質量部と実施例A−4で調製した粉末状の脂質調節剤13.5質量部を混合して調製した液に対して、予め水洗いして水切りした米300質量部をいれて1時間浸漬後、家庭用の炊飯器でそのまま炊飯して脂質調節用米飯を得た。本品は、環状四糖を含有しているので、この米飯を食べると、体内の脂質調節がされることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の食事用に好適である。
実施例B−14
<脂質調節用魚肉練製品>
水晒ししたスケトウダラの生肉2,000質量部に対し、実施例A−5の方法で調製した粉末状の脂質調節剤105質量部、乳酸ナトリウム3質量部、プロアントシアニジン0.2質量部を加えて、スリ身を製造し、−20℃で凍結して冷凍スリ身を製造した。冷凍スリ身を90日間−20℃で冷凍保存後に解凍し、氷水150質量部に対して、グルタミン酸ナトリウム40質量部、馬鈴薯澱粉100質量部、ポリリン酸ナトリウム3質量部、食塩50質量部及びソルビトール5質量部を溶解しておいた水溶液100質量部を添加して擂漬し、約120gずつを定形して板付した。これらを、30分間で内部の品温が約80℃になるように蒸し上げた。次いで、室温で放冷した後、4℃で24時間放置して脂質調節用魚肉練製品を得た。本品は、環状四糖及びプロアントシアニジンが、体内の脂質調節をすることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の食品、或いは、その素材として好適である。
実施例B−15
<脂質調節用ベーコン>
食塩22質量部、実施例A−3の方法で調製した環状四糖5含水結晶を含有する脂質調節剤4質量部、砂糖1質量部、乳酸ナトリウム2質量部、ポリリン酸ナトリウ2.0質量部、アスコルビン酸0.5質量部、亜硝酸ナトリウム0.2質量部、水68.8質量部を混合して溶解し、ピックル液を調製した。豚の肋肉9質量部に対してピックル液1質量部を、肉全体にまんべんなく浸透するように時間をかけて注入後、常法によりスモークして、脂質調節用ベーコンを調製した。スモーク後、一夜室温に放置し、スライスしたベーコンを真空包装して、10℃で保存した。本品は、環状四糖が体内の脂質調節をすることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者の食事用の素材として好適である。
実施例B−16
<脂質調節用アイスクリーム>
水60質量部、無脂固形乳12質量部、グラニュー糖12質量部、シラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(株式会社林原商事販売、商標『ハローデックス』)5.5質量部、増粘剤0.3質量部、バニラエキス0.5質量部、実施例3の方法で調製した環状四糖の無水結晶からなる粉末11質量部を使用して、常法により、アイスクリームを調製した。本品は、環状四糖が体内の脂質調節をすることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防、或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の患者用のアイスクリームとして好適である。また、本品は、通常、アイスクリームの調製に使用する脂肪(クリーム)を使用していないにも関わらず、脂肪を使用したものと同様のクリーミーな食感と味を有し、しかも、脂肪を含まないので、低カロリーの脂質調節用アイスクリームである。
実施例B−17
<脂質調節用サラダドレッシング>
水40質量部、ホワイトビネガー20質量部、植物油15質量部、砂糖5質量部、食塩2質量部、ガーリックパウダー1質量部、タマネギパウダー0.5質量部、ホワイトペッパー0.1質量部、増粘剤0.3質量部、実施例3の方法で調製した、環状四糖5含水結晶の粉末からなる脂質調節剤15質量部を使用して、常法により、サラダドレッシングを調製した。本品は、環状四糖が体内の脂質調節をすることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防、或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の患者用のサラダドレッシングとして好適である。本品は、また、通常のサラダドレッシングの調製に使用する植物油の約半量しか使用していないにも関わらず、通常のサラダドレッシングと遜色のない食感と味を有し、しかも、油分が少ないので、低カロリーの脂質調節用サラダドレッシングである。さらに、本品は、環状四糖を含有しているので、油相と水相の分離が良いという特徴を有している。
実施例B−18
<脂質調節用の錠剤>
ガンマーオリザノール200質量部に対して、実施例A−3の方法で調製した環状四糖5含水結晶を含有する脂質調節剤650質量部、糖転移ヘスペリジン50質量部、ステアリン酸マグネシウム2質量部を均質に混合し、常法により打錠して、1錠が250mgの錠剤を調製した。本品は、ガンマーオリザノール、環状四糖及び糖転移ヘスペリジンが、体内の脂質調節をすることから、肥満、脂肪肝、高脂血症などの患者用の脂質調節剤として好適である。
実施例B−19
<脂質調節用配合飼料>
小麦麩30質量部、脱脂粉乳35質量部、米糠10質量部、ラクトスクロース高含有粉末10質量部、総合ビタミン剤10質量部、魚粉5質量部、第二リン酸カルシウム5質量部、液状油脂3質量部、炭酸カルシウム3質量部、糖転移ルチン1質量部、食塩2質量部、実施例A−2の方法で調製したシラップ状の脂質調節剤5質量部及びミネラル剤2質量部を配合して、脂質調節用配合飼料を製造した。本品は、環状四糖、これの糖質誘導体及び糖転移ルチンが体内の脂質脂調節をすることから、体内の脂質調節を目的とする飼料として好適であり、家畜、家禽、ペットなどのための飼料であって、とりわけ、子豚用飼料として好適である。
【産業上の利用可能性】
以上説明したとおり、本発明は、ヒトを含む動物の脂質調節に使用することのできる、グルコースを構成糖とする非還元性糖質である環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を有効成分として含有する脂質調節剤、及び、この脂質調節剤を含有する脂質調節用の組成物に関するものである。しかも、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体は、経口摂取しても安全で、且つ、非常に安定であることから、本発明による環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有する脂質調節剤の利用分野は、飲食品分野、化粧品分野、医薬部外品、医薬品分野など多岐に渡る。本発明は、この様に顕著な作用効果を有する発明であり、産業上の貢献は誠に大きく、意義のある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有する脂質調節剤。
【請求項2】
サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体とともに、これらの糖質を除く非還元性糖質、還元性糖質、サイクロデキストリン、水溶性多糖、ポリフェノール、香辛料、酸味料、旨味料、酒、有機酸、有機酸の塩、無機塩、乳化剤、香料、色素の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の脂質調節剤。
【請求項3】
非還元性糖質が、マルチトール、α,α−トレハロース及びα,α−トレハロースの糖質誘導体から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の脂質調節剤。
【請求項4】
ポリフェノールが、ヘスペレチン、ナリンゲニン、ケルセチン、ヘスペリジン、酵素処理ヘスペリジン、ナリンジン、酵素処理ナリンジン、ルチン、酵素処理ルチン、プロアントシアニジンなどのフラボノイド、及び、カテキン、エピガロカテキンなどのカテキンから選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求の範囲第2項又は第3項に記載の脂質調節剤。
【請求項5】
サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を、合計で、無水物換算で、0.1質量%以上含有することを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載の脂質調節剤。
【請求項6】
請求の範囲第1項乃至第5項のいずれかに記載の脂質調節剤を含有することを特徴とする脂質調節用の組成物。
【請求項7】
サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を、合計で、無水物換算で0.01質量%以上含有することを特徴とする請求の範囲第6項に記載の脂質調節用の組成物。
【請求項8】
脂質調節が、生体内の脂質調節であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第7項のいずれかに記載の脂質調節剤又は脂質調節用の組成物。
【請求項9】
生体内の脂質が、遊離脂肪酸、単純脂質複合脂質、リポ蛋白及び、遊離コレステロールから選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求の範囲第8項に記載の脂質調節剤又は脂質調節用の組成物。
【請求項10】
生体内の脂質の存在部位が、血液、皮下、皮内、睾丸、腎臓、心臓、肝臓及び消化管から選ばれるいずれか1種又は2種以上の組織又は器官である請求の範囲第9項に記載の脂質調節剤又は脂質調節用の組成物。
【請求項11】
単純脂質がトリグリセリドである請求の範囲第9項又は第10項に記載の脂質調節剤又は脂質調節用の組成物。
【請求項12】
生活習慣病の改善用であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第11項のいずれかに記載の脂質調節剤又は脂質調節用の組成物。
【請求項13】
生活習慣病が、高脂血症、動脈硬化、血管の狭窄、血管の閉塞、高血圧、血栓形成、狭心症、心筋梗塞、心不全、脳梗塞、脂肪肝、肝硬変、肥満、便秘、大腸癌及び糖尿病から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求の範囲第12項に記載の脂質調節剤又は脂質調節用の組成物。
【請求項14】
体重の増加抑制用、総コレステロール低下用、LDL−コレステロール低下用、リポ蛋白代謝調節用、脂質蓄積抑制用、胆汁酸代謝調節用、及び整腸用のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第13項のいずれかに記載の脂質調節剤又は脂質調節用の組成物。
【請求項15】
医薬品、医薬部外品、健康食品、飲食品、飼料、餌料のいずれかである請求の範囲第1項乃至第14項のいずれかに記載の脂質調節剤又は脂質調節用の組成物。
【請求項16】
脂肪代替物としての特許請求の範囲第1項乃至第7項のいずれかに記載の脂質調節剤。

【国際公開番号】WO2004/089964
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505191(P2005−505191)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004079
【国際出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】