脈波センサ
【課題】従来の脈波センサは安静状態で測定しなければ正確な測定値を得ることができなかった。
【解決手段】脈波センサは、出力波長可変の発光部(LED1〜LED8の集合体を指す)と、前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部(PD)と、前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、を有する。
【解決手段】脈波センサは、出力波長可変の発光部(LED1〜LED8の集合体を指す)と、前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部(PD)と、前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の脈波センサは、発光部(一般には近赤外LED[Light Emitting Diode])と受光部(フォトダイオードやフォトトランジスタ)1つずつを一対として、脈波の測定を行う構成とされていた。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−212016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の脈波センサには、(1)安静状態で測定しなければ正確な測定値を得ることができない、(2)脈波センサに指先(血管が走行していれば、その他の部位でも可)を押し当てる圧力(以下では押圧と呼ぶ)によって測定値にばらつきが生じる、(3)測定中は指先を動かしてはならない、(4)脈波センサから指先が浮いた状態では測定値がぶれる、(5)脈波の強度には個人差がある、というように、脈波の測定精度を高める上で解決すべき種々の課題があった。
【0006】
本発明は、本願の発明者らによって見い出された上記の問題点に鑑み、脈波を正確に測定することが可能な脈波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る脈波センサは、異なる位置に設けられた複数の発光部と、前記複数の発光部から各々照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を前記複数の発光部毎に検出する少なくとも一つの受光部と、前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波を取得する演算処理装置と、を有する構成(第1−1の構成)とされている。
【0008】
なお、上記第1−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記受光部は、前記複数の発光部に対して共通に設けられており、前記複数の発光部は、順次点灯される構成(第1−2の構成)にするとよい。
【0009】
また、上記第1−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記複数の発光部は、前記受光部を中心とする円周上に等間隔で配置された構成(第1−3の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第1−3の構成から成る脈波センサにおいて、前記複数の発光部は、各々の出力強度が異なる構成(第1−4の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第1−3の構成から成る脈波センサにおいて、前記複数の発光部は、各々の出力波長が異なる構成(第1−5の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第1−5の構成から成る脈波センサにおいて、前記複数の発光部は、周回毎に出力強度が変化される構成(第1−6の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第1−3〜第1−6いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記複数の発光部は、複数個ずつ同時点灯される構成(第1−7の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第1−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記受光部は、前記複数の発光部に対して各々ペアを組むように複数設けられており、前記複数の発光部は、同時点灯される構成(第1−8の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第1−1〜第1−8いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記複数の発光部毎に検出される複数の測定値のうち、最も強度の大きいものを脈強度として採用する構成(第1−9の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第1−1〜第1−8いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記複数の発光部毎に検出される複数の測定値について、その合算値または平均値を脈強度として採用する構成(第1−10の構成)にするとよい。
【0017】
また、上記第1−1〜第1−10いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部と前記受光部は、前記被測定者の身体の一部に対していずれも同じ側に設けられている構成(第1−11の構成)にするとよい。
【0018】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る脈波センサは、出力強度可変の発光部と、前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部と、前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、を有する構成(第2−1の構成)とされている。
【0019】
なお、上記第2−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部は、脈波測定時に出力強度が変化される構成(第2−2の構成)にするとよい。
【0020】
また、上記第2−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記発光部の出力強度毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、最も強度の大きいものを脈強度として採用する構成(第2−3の構成)にするとよい。
【0021】
また、上記第2−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記発光部の出力強度毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、その合算値または平均値を脈強度として採用する構成(第2−4の構成)にするとよい。
【0022】
また、上記第2−1〜第2−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部は、出力強度の異なる複数の発光素子の順次点灯制御により、全体の出力強度を変化する構成(第2−5の構成)にするとよい。
【0023】
また、上記第2−1〜第2−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部は、複数の発光素子の点灯数制御により、全体の出力強度を変化する構成(第2−6の構成)にするとよい。
【0024】
また、上記第2−1〜第2−6いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記被測定者毎に、前記発光部の出力強度の最適値を判別して記憶する構成(第2−7の構成)にするとよい。
【0025】
また、上記第2−1〜第2−7いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部と前記受光部は、前記被測定者の身体の一部に対していずれも同じ側に設けられている構成(第2−8の構成)にするとよい。
【0026】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る脈波センサは、出力波長可変の発光部と、前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部と、前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、を有する構成(第3−1の構成)とされている。
【0027】
なお、上記第3−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部は、脈波測定時に出力波長が変化される構成(第3−2の構成)にするとよい。
【0028】
また、上記第3−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記発光部の出力波長毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、最も強度の大きいものを脈強度として採用する構成(第3−3の構成)にするとよい。
【0029】
また、上記第3−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記発光部の出力波長毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、その合算値または平均値を脈強度として採用する構成(第3−4の構成)にするとよい。
【0030】
また、上記第3−1〜第3−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部は、出力波長の異なる複数の発光素子の順次点灯制御により、全体の出力波長を変化する構成(第3−5の構成)にするとよい。
【0031】
また、上記第3−1〜第3−5いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記被測定者毎に、前記発光部の出力波長の最適値を判別して記憶する構成(第3−6の構成)にするとよい。
【0032】
また、上記第3−1〜第3−6いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部の出力波長は、およそ600nm以下の可視光領域に属する構成(第3−7の構成)にするとよい。
【0033】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る脈波センサは、出力波長がおよそ600nm以下の可視光領域に属する発光部と、前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部と、前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、を有する構成(第3−8の構成)とされている。
【0034】
なお、上記第3−1〜第3−8いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部と前記受光部は、前記被測定者の身体の一部に対していずれも同じ側に設けられている構成(第3−9の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る脈波センサであれば、測定状態の違いや個人差に依ることなく、脈波を正確に測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】脈波測定の原理を説明するための模式図
【図2】生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図
【図3】本発明に係る脈波センサの一構成例を示す模式図
【図4】第1の測定動作を示すフローチャート
【図5】第2の測定動作を示すフローチャート
【図6】第3の測定動作を示すフローチャート
【図7】第4の測定動作を示すフローチャート
【図8】第5の測定動作を示すフローチャート
【図9】第6の測定動作を示すフローチャート
【図10】第7の測定動作を示すフローチャート
【図11】押圧と脈強度(測定値)との関係を示す図
【図12】LED強度と脈強度(測定値)との関係を示す図
【図13】LED波長と脈強度(測定値)との関係を示す図
【図14】本発明に係る脈波センサの第1変形例を示す模式図
【図15A】本発明に係る脈波センサの第2変形例を示す模式図
【図15B】本発明に係る脈波センサの第3変形例を示す模式図
【図16A】本発明に係る脈波センサの第4変形例を示す模式図
【図16B】本発明に係る脈波センサの第5変形例を示す模式図
【図17】各種LED出力と脈強度(測定値)との関係を示す図
【図18】LED波長とHbO2の吸収係数との関係を示す図
【図19】本発明に係る脈波センサの回路ブロック図
【図20】脈波センサ1の一動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0037】
<脈波測定の原理>
図1は、脈波測定の原理を説明するための模式図であり、図2は、生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図である。
【0038】
容積脈波法による脈波測定では、例えば、図1に示すように、測定窓に押し当てられた指先(血管が走行していれば、その他の部位でも可)に向けて発光部(LEDなど)から光が照射され、体内を透過して体外に出てくる光の強度が受光部(フォトダイオードやフォトトランジスタなど)で検出される。ここで、図2に示したように、生体組織や静脈血(脱酸素化ヘモグロビンHb)による光の減衰量(吸光度)は一定であるが、動脈血(酸素化ヘモグロビンHbO2)による光の減衰量(吸光度)は拍動によって時間的に変動する。従って、可視領域から近赤外領域にある「生体の窓」(光が生体を透過しやすい波長領域)を利用して、末梢動脈の吸光度変化を測定することにより、容積脈波を測定することができる。
【0039】
<脈波から分かること>
なお、心臓及び自立神経の支配を受けている脈波は、常に一定の挙動を示すものではなく、被測定者の状態によって様々な変化(揺らぎ)を生じるものである。従って、脈波の変化(揺らぎ)を解析することにより、被測定者の様々な身体情報を得ることができる。例えば、心拍数からは、被測定者の運動能力や緊張度などを知ることができ、心拍変動からは、被測定者の疲労度、快眠度、及び、ストレスの大きさなどを知ることができる。また、脈波を時間軸で2回微分することにより得られる加速度脈波からは、被測定者の血管年齢や動脈硬化度などを知ることができる。
【0040】
ただし、脈波の変化(揺らぎ)を正しく解析するためには、脈波自体を高精度に測定することが重要であり、測定状態の違いや個人差に起因する測定ばらつき(測定誤差)を極力低減しなければならない。
【0041】
<本発明の構成>
図3は、本発明に係る脈波センサの一構成例を示す模式図である。本構成例の脈波センサは、発光部と受光部が指先に対して互いに反対側に設けられた構成(いわゆる透過型、図1の破線矢印を参照)ではなく、発光部と受光部が指先に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型、図1の実線矢印を参照)とされており、かつ、図3に示すように、単一の受光部PD(例えばフォトダイオードやフォトトランジスタ)と、受光部PDを中心とする円周上に等間隔で配置された8つの発光部LED1〜LED8(例えば発光ダイオード)と、を有する。なお、以下の説明では、発光部LED1〜LED8の出力強度をI1〜I8で表し、発光部LED1〜LED8の出力波長をλ1〜λ8で表す。また、図3には明示されていないが、本発明に係る脈波センサは、発光部LED1〜LED8の発光制御や受光素子PDの受光制御を行うほか、受光素子PDで得られた測定値に各種の信号処理を施すための演算処理装置(CPU[Central Processing Unit]など)を有する。なお、発光部の個数はあくまで例示であり、8つ以外でも構わない。
【0042】
<第1の測定動作>
図4は、図3の脈波センサを用いた第1の測定動作を示すフローチャートである。第1の測定動作を行う際の前提条件として、発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8はいずれも共通の一定値Iであり、出力波長λ1〜λ8はいずれも共通の一定値λであるものとする。
【0043】
時点tにおける脈強度DATA(t)の測定が開始されると、ステップS101では、複数設けられた発光部LEDx(ただし、xはLED番号であり、x=1、2、…、7、8、以下同様)の点消灯制御に先立ち、次に点灯すべきLED番号xのリセット(x=1に設定)が行われる。ステップS102では、次に点灯すべきLED番号x(=1)に基づいて、発光部LED1のみが点灯され、その余の発光部LED2〜LED8がいずれも消灯される。ステップS103では、発光部LED1から照射されて体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1(t)として出力され、演算処理装置の記憶領域、或いは、演算処理装置に外部接続される記憶装置に一時格納される。ステップS104では、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント(x=2に設定)が行われる。ステップS105では、次に点灯すべきLED番号xが8よりも大きいか否かの判定(一巡判定)が行われる。ここでノー判定が下された場合には、フローがステップS102に戻され、次に点灯すべきLED番号x(=2)に基づいて発光部LED2の点灯が行われた後、ステップS103〜S105においては、それぞれ、測定値DATA2(t)の取得、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント、及び、一巡判定が行われる。以後も、ステップS105にてイエス判定が下されない限り、ステップS102〜ステップS105のフローが繰り返されて、発光部LED3〜LED8の順次点灯、及び、測定値DATA3(t)〜DATA8(t)の順次取得が行われる。一方、ステップS105にてイエス判定が下された場合には、上記一連の測定動作が終了される。なお、実際の脈波測定に際しては、上記一連の測定動作が所定のサンプリングレート(500Hz〜10,000Hz)で所定の測定期間(例えば1秒間)に亘って繰り返される。
【0044】
このように、第1の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するために、異なる位置に設けられた同一強度、同一波長の発光部LED1〜LED8が順次点灯され、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1(t)〜DATA8(t)として各々個別に取得される。その後、演算処理装置では、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)に基づいて、時点tにおける脈強度DATA(t)が決定される。
【0045】
時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法としては、例えば、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)のうち、最も強度の大きいもの(S/Nの良好なもの)を選択することが考えられる。このような手法を採用すれば、脈波センサに対する指先の浮き加減や被測定者毎の個人差(血管走行の違いなど)の影響を低減することが可能となる。
【0046】
また、別の手法としては、例えば、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)の合算値や平均値を時点tにおける脈強度DATA(t)とすることが考えられる。このような手法を採用すれば、押圧の位置依存性を解消することも可能となる。
【0047】
また、先にも述べた通り、本構成例の脈波センサでは、発光部LED1〜LED8と受光部PDが指先に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型)が採用されている。このような構成を採用したことにより、受光部PDに戻ってくる光の強度は、発光部LED1〜LED8の位置の違いを反映しやすくなるので、上記の作用・効果を高める上で好適な構成であると言える。
【0048】
<第2の測定動作>
図5は、図3の脈波センサを用いた第2の測定動作を示すフローチャートである。第2の測定動作を行う際の前提条件として、出力波長λ1〜λ8はいずれも共通の一定値λであるものとする。
【0049】
時点tにおける脈強度DATA(t)の測定が開始されると、ステップS201では、複数設けられた発光部LEDxの点消灯制御に先立ち、次に点灯すべきLED番号xのリセット(x=1に設定)が行われる。ステップS206では、次に点灯すべきLED番号x(=1)に基づいて発光部LED1の出力強度I1が設定される。ステップS202では、次に点灯すべきLED番号x(=1)に基づいて、発光部LED1のみが点灯され、その余の発光部LED2〜LED8がいずれも消灯される。ステップS203では、発光部LED1から照射されて体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1(t)として出力され、演算処理装置の記憶領域、若しくは、演算処理装置に外部接続される記憶装置に一時格納される。ステップS204では、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント(x=2に設定)が行われる。ステップS205では、次に点灯すべきLED番号xが8よりも大きいか否かの判定が行われる。ここで、ノー判定が下された場合には、フローがステップS206に戻され、次に点灯すべきLED番号x(=2)に基づいて発光部LED2の出力強度I2(>I1)が設定された後、ステップS202〜S205では、それぞれ、発光部LED2の点灯、測定値DATA2(t)の取得、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント、並びに、一巡判定が行われる。以後も、ステップS205にてイエス判定が下されない限り、ステップS206、及び、ステップS202〜ステップS205のフローが繰り返されて、出力強度I3〜I8の順次設定(I3<I4<…<I7<I8)、発光部LED3〜LED8の順次点灯、及び、測定値DATA3(t)〜DATA8(t)の順次取得が行われる。一方、ステップS205においてイエス判定が下された場合には、上記一連の測定動作が終了される。なお、実際の脈波測定に際しては、上記一連の測定動作が所定のサンプリングレート(500Hz〜10,000Hz)で所定の測定期間(例えば1秒間)に亘って繰り返される。
【0050】
このように、第2の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するために、同一波長の発光部LED1〜LED8が相異なる出力強度で順次点灯され、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1(t)〜DATA8(t)として各々個別に取得される。その後、演算処理装置では、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)に基づいて、時点tにおける脈強度DATA(t)が決定される。
【0051】
出力強度I1〜I8を可変することの意義について、図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、押圧と脈強度(測定値)との関係を示す図であり、図12は、LED強度(発光部の出力強度)と脈強度(測定値)との関係を示す図である。なお、図12の実線(1)〜(4)は、それぞれ、図11の押圧(1)〜(4)が与えられた状態下で得られるLED強度と脈強度との関係を示している。
【0052】
図11に示すように、基本的には押圧が高いほど脈強度は強くなるが、押圧が高過ぎると指先に血流が届き難くなって脈強度が低下に転じる。このように、脈強度は押圧に応じて変化するが、押圧は被測定者によって千差万別であり、脈波センサ側でその大きさを制御することは困難である。一方、図12に示すように、基本的にはLED強度が高いほど脈強度は強くなるが、受光部PDには出力の飽和値(カットオフ値)が存在するため、LED強度を上げ過ぎると、脈強度が飽和値に振り切ってしまい、正しい測定結果を得ることができなくなるおそれがある。すなわち、適正レベルの脈強度が得られるLED強度は例えば押圧の違いに応じて大きく異なるものとなる。
【0053】
そこで、第2の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するに際して、各々の出力強度I1〜I8を段階的に高めながら複数の発光部LED1〜LED8を順次点灯し、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度を測定値DATA1(t)〜DATA8(t)として各々個別に取得する構成とされている。このような構成とすることにより、例えば、押圧(1)が与えられた状況下では、比較的出力強度の低い発光部が点灯されたときに適正レベルの脈強度が得られることになり、また、押圧(4)が与えられた状況下では、比較的出力強度の高い発光部が点灯されたときに適正レベルの脈強度が得られることになる。
【0054】
なお、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法については、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)のうち、適正レベルに収まっているものを適宜抽出した上で、例えば、その最大値や合算値、或いは、平均値を採択することが考えられる。
【0055】
このように、第2の測定動作であれば、先に説明した第1の測定動作と同様の効果を享受することができるほか、押圧の違いなどに依らず、適正レベルの脈強度DATA(t)を取得することが可能となる。
【0056】
<第3の測定動作>
図6は、図3の脈波センサを用いた第3の測定動作を示すフローチャートである。第3の測定動作を行う際の前提条件として、発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8はいずれも共通の可変値I(y)(ただしyは周回数)であり、出力波長λ1〜λ8はいずれも共通の一定値λであるものとする。
【0057】
時点tにおける脈強度DATA(t)の測定が開始されると、ステップS301では、複数設けられた発光部LEDxの点消灯制御に先立ち、次に点灯すべきLED番号xのリセット(x=1に設定)、及び、周回数yのリセット(y=1に設定)が行われる。ステップS306では、現在の周回数y(=1)に基づいて、発光部LED1〜LED8に共通の出力強度I(1)が設定される。ステップS302では、次に点灯すべきLED番号x(=1)に基づいて、発光部LED1のみが点灯され、その余の発光部LED2〜LED8がいずれも消灯される。ステップS303では、発光部LED1から照射されて体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1−1(t)として出力され、演算処理装置の記憶領域、或いは、演算処理装置に外部接続される記憶装置に一時格納される。ステップS304では、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント(x=2に設定)が行われる。ステップS305では、次に点灯すべきLED番号xが8よりも大きいか否かの判定が行われる。ここで、ノー判定が下された場合は、フローがステップS302に戻され、次に点灯すべきLED番号x(=2)に基づいて発光部LED2の点灯が行われた後、ステップS303〜S305においては、それぞれ、測定値DATA2−1(t)の取得、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント、並びに、一巡判定が行われる。以後も、ステップS305にてイエス判定が下されない限り、ステップS302〜ステップS305のフローが繰り返され、発光部LED3〜LED8の順次点灯、及び、測定値DATA3−1(t)〜DATA8−1(t)の順次取得が行われる。
【0058】
一方、ステップS305にてイエス判定が下された場合には、フローがステップS307に進められ、次に点灯すべきLED番号xのリセット(x=1に設定)と周回数yのインクリメント(y=2に設定)が行われる。ステップS308では、周回数yが3よりも大きいか否かの判定(周回終了判定)が行われる。ここで、ノー判定が下された場合は、フローがステップS306に戻され、現在の周回数y(=2)に基づいて、発光部LED1〜LED8に共通の新たな出力強度I(2)(>I(1))が設定された後、ステップS302〜S305のループ処理(測定値DATA1−2(t)〜DATA8−2(t)の順次取得)が実行され、さらに、ステップS307及びステップS308では、それぞれ、次に点灯すべきLED番号xのリセット処理及び周回数yのインクリメント処理、並びに、周回終了判定が行われる。以後も、ステップS308にて、イエス判定が下されない限り、ステップS306、ステップS302〜ステップS305、ステップS307、及び、ステップS308のフローが繰り返され、発光部LED1〜LED8に共通の新たな出力強度I(3)(>I(2))を設定した上で、測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)の順次取得が行われる。一方、ステップS308にてイエス判定が下された場合には、上記一連の測定動作が終了される。なお、実際の脈波測定に際しては、上記一連の測定動作が所定のサンプリングレート(500Hz〜10,000Hz)で所定の測定期間(例えば1秒間)に亘って繰り返される。
【0059】
このように、第3の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するために、周回毎の出力強度I(y)を変化させながら、同一波長の発光部LED1〜LED8が複数周回に亘って順次点灯され、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜DATA8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)として各々個別に取得される。その後、演算処理装置では、1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)に基づいて、時点tにおける脈強度DATA(t)が決定される。
【0060】
出力強度I1〜I8を可変することの意義は先に述べた通りであり、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法については、1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)のうち、適正レベルに収まっているものを適宜抽出した上で、例えば、全ての測定値のうちで最も強度の大きいものを選択してもよいし、或いは、全ての測定値の合算値や平均値を算出してもよい。若しくは、周回毎の測定値を比べて最も強度の大きい周回を特定し、当該周回中の測定値を対象としてその最大値や合算値、或いは、平均値を採択することも考えられる。
【0061】
このように、第3の測定動作であれば、先に説明した第2の測定動作に比べて、より確実に適正レベルの脈強度DATA(t)を取得することが可能となる。
【0062】
<第4の測定動作>
図7は、図3の脈波センサを用いた第4の測定動作を示すフローチャートである。第4の測定動作は、先に説明した第1の測定動作を基本とした動作例であり、第4の測定動作を行う際の前提条件は、第1の測定動作時と同じく、発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8がいずれも共通の一定値Iであり、出力波長λ1〜λ8がいずれも共通の一定値λであるものとする。
【0063】
時点tにおける脈強度DATA(t)の測定が開始されると、ステップS401では、複数設けられた発光部LEDx(ただし、xはLED番号であり、x=1、2、…、7、8、以下同様)の点消灯制御に先立ち、次に点灯すべきLED番号xのリセット(x=1に設定)が行われる。ステップS402では、次に点灯すべきLED番号x(=1)に基づいて、発光部LED1(=LEDx)と発光部LED5(=LED(x+4))が同時に点灯され、その余の発光部LED2〜LED4、及び、発光部LED6〜LED8がいずれも消灯される。すなわち、第4の測定動作では、受光部PDに対して点対称となる位置に設けられた一対の発光部(LEDx、LED(x+4))が同時に点灯される。ステップS403では、発光部LED1及びLED5から同時に照射されて体内を透過して受光部PDに戻ってくる合算光の強度が測定値DATA1(t)として出力され、演算処理装置の記憶領域、或いは、演算処理装置に外部接続される記憶装置に一時格納される。ステップS404では、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント(x=2に設定)が行われる。ステップS405では、次に点灯すべきLED番号xが4よりも大きいか否かの判定(一巡判定)が行われる。ここでノー判定が下された場合には、フローがステップS402に戻され、次に点灯すべきLED番号x(=2)に基づいて発光部LED2及びLED6の点灯が行われた後、ステップS403〜S405では、それぞれ、測定値DATA2(t)の取得、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント、及び、一巡判定が行われる。以後も、ステップS405にてイエス判定が下されない限り、ステップS402〜ステップS405のフローが繰り返され、発光部LED3及びLED7の同時点灯による測定値DATA3(t)の取得と、発光部LED4及びLED8の同時点灯による測定値DATA4(t)の取得が順次行われる。一方、ステップS405にてイエス判定が下された場合には、上記一連の測定動作が終了される。なお、実際の脈波測定に際しては上記一連の測定動作が所定のサンプリングレート(500Hz〜10,000Hz)で所定の測定期間(例えば1秒間)に亘って繰り返される。
【0064】
このように、第4の測定動作では、先に説明した第1の測定動作を基本としながら、受光部PDに対して点対称となる位置に設けられた一対の発光部(LEDx、LED(x+4))が同時に点灯されるので、発光部毎の出力強度を不要に高めることなく、指先に十分な出力強度(合算強度)の光を照射することが可能となる。
【0065】
なお、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法としては、先に説明した第1の測定動作と同様、測定値DATA1(t)〜DATA4(t)の最大値や合算値、或いは平均値を採択することが考えられる。
【0066】
また、第4の測定動作では、第1の測定動作に発光部の同時点灯技術を適用した構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、先に説明した第2の測定動作や第3の測定動作にも、発光部の同時点灯技術を適用可能であることは言うまでもない。
【0067】
また、第4の測定動作では、指先位置に起因する測定値ばらつきを相殺するために、受光部PDに対して点対称となる位置に設けられた一対の発光部(LEDx、LED(x+4))を同時に点灯する構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、測定値のS/N向上を優先するのであれば、互いに近傍に設けられた複数の発光部(例えば、LEDx、LED(x+1))を同時に点灯する構成とすればよい。また、同時に点灯する発光部の個数も2つに限定されるものではなく、3つ以上の発光部を同時に点灯させてもよい。
【0068】
<第5の測定動作>
図8は、図3の脈波センサを用いた第5の測定動作を示すフローチャートである。第5の測定動作を行う際の前提条件として、発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8はいずれも共通の一定値Iであり、出力波長λ1〜λ8は互いに異なる値(可視光領域〜近赤外領域)とする。なお、出力波長λ1〜λ8としては、青、緑、黄、橙などの発光色に相当する波長が好適であるが、これについては後ほど詳細な説明を行う。
【0069】
第5の測定動作(図8のステップS501〜S505)は、上記の前提条件が異なる以外、先に説明した第1の測定動作(図4のステップS101〜S105)と全く同一の内容である。すなわち、第5の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するために、同一強度の発光部LED1〜LED8が相異なる出力波長で順次点灯され、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1(t)〜DATA8(t)として各々個別に取得される。その後、演算処理装置では、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)に基づいて、時点tにおける脈強度DATA(t)が決定される。
【0070】
出力波長λ1〜λ8を可変することの意義について、先出の図11と共に、図13を参照しながら説明する。図13は、LED波長(発光部の出力波長)と脈強度(測定値)との関係を示す図である。なお、図13の実線(1)〜(4)は、それぞれ、図11の押圧(1)〜(4)が与えられた状態下で得られるLED波長と脈強度の関係を示している。
【0071】
脈強度が押圧に応じて変化することについては、図11を参照しながら先に述べた通りであるが、図13に示したように、脈強度はLED波長に応じても変化する。従って、LED波長が固定的に設定されていると、押圧によっては脈強度が飽和値に振り切ったり、逆に弱くなり過ぎたりして、正しい測定結果を得ることができなくなるおそれがある。すなわち、適正レベルの脈強度が得られるLED波長は、例えば押圧の違いに応じて大きく異なるものとなる。
【0072】
そこで、第5の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するに際して、各々の出力波長λ1〜λ8を切り替えながら複数の発光部LED1〜LED8を順次点灯し、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度を測定値DATA1(t)〜DATA8(t)として各々個別に取得する構成とされている。このような構成とすることにより、例えば、押圧(1)が与えられた状況下では、比較的出力波長の長い発光部が点灯されたときに適正レベルの脈強度が得られることになり、また、押圧(4)が与えられた状況下では、比較的出力波長の短い発光部が点灯されたときに適正レベルの脈強度が得られることになる。
【0073】
なお、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法については、先に説明した第
2の測定動作時と同じく、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)のうち、適正レベルに収まっているものを適宜抽出した上で、例えば、その最大値や合算値、或いは、平均値を採択することが考えられる。
【0074】
このように、第5の測定動作であれば、先に説明した第1の測定動作と同様の効果を享受することができるほか、押圧の違いなどに依らず、適正レベルの脈強度DATA(t)を取得することが可能となる。
【0075】
また、出力波長λ1〜λ8の異なる照射光は生体内への進入深さが異なるので、これらを切り替えて照射する構成であれば、被測定者の個人差、例えば、動脈血(酸素化ヘモグロビンHbO2)による光の減衰量(吸光度)のばらつきを解消することも可能となる。
【0076】
<第6の測定動作>
図9は、図3の脈波センサを用いた第6の測定動作を示すフローチャートである。第6の測定動作を行う際の前提条件として、発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8はいずれも共通の可変値I(y)(ただしyは周回数)であり、出力波長λ1〜λ8は互いに異なる値(可視光領域〜近赤外領域)とする。
【0077】
第6の測定動作(図9のステップS601〜S608)は、上記の前提条件が異なる以外、先に説明した第3の測定動作(図6のステップS301〜S308)と全く同一の内容である。すなわち、第6の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するために、周回毎の出力強度I(y)を変化させながら、相異なる出力波長の発光部LED1〜LED8が複数周回に亘って順次点灯され、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜DATA8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)として各々個別に取得される。その後、演算処理装置では、1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)に基づいて、時点tにおける脈強度DATA(t)が決定される。
【0078】
出力強度I1〜I8、及び、出力波長λ1〜λ8を各々可変することの意義については先に述べた通りであるが、第6の測定動作では、出力強度I1〜I8と出力波長λ1〜λ8の双方が組み合わせて可変制御される。このような構成とすることにより、押圧や被測定者の個人差に依らず、より確実に脈強度を適正レベルに収めることが可能となる。
【0079】
例えば、先出の図12で示したように、基本的にはLED強度が高いほど脈強度は強くなるが、LED強度の増大に応じて散乱成分(ノイズ成分)も増えるので、LED強度の設定値には上限が存在する。そのため、十分な押圧が得られていない状態(例えば、図12の押圧(4)を参照)では、LED強度を上限まで高めても、LED波長が一定である限り、適正レベルの脈強度を得られないおそれがある。しかしながら、LED強度とLED波長の双方を組み合わせて可変制御すれば、各々単独で可変制御した場合に比べて脈強度の調整幅が広がるため、より確実に脈強度を適正レベルに収めることが可能となる。
【0080】
なお、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法については、先に説明した第3の測定動作時と同じく、1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)のうち、適正レベルに収まっているものを適宜抽出した上で、例えば、全ての測定値のうちで最も強度の大きいものを選択してもよいし、或いは、全ての測定値の合算値や平均値を算出してもよい。若しくは、周回毎の測定値を比べて最も強度の大きい周回を特定し、当該周回中の測定値を対象として、その最大値や合算値、或いは、平均値を採択することも考えられる。
【0081】
このように、第6の測定動作であれば、先に説明した第2、第3の測定動作(出力強度のみ可変制御)や第5の測定動作(出力波長のみ可変制御)に比べて、より確実に適正レベルの脈強度DATA(t)を取得することが可能となる。
【0082】
<第7の測定動作>
図10は、図3の脈波センサを用いた第7の測定動作を示すフローチャートである。第7の測定動作を行う際の前提条件として発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8はいずれも共通の一定値Iであり、出力波長λ1(=λ5)、λ2(=λ6)、λ3(=λ7)、及び、λ4(=λ8)は互いに異なる値(可視光領域〜近赤外領域)とする。
【0083】
第7の測定動作(図10のステップS701〜S705)は、上記の前提条件が異なる以外、先に説明した第4の測定動作(図7のステップS401〜S405)と全く同一の内容である。すなわち、第7の測定動作では、受光部PDに対して点対称となる位置に設けられた同一波長の発光部(LEDx、LED(x+4))が同時に点灯されるので、発光部毎の出力強度を不要に高めることなく、指先に十分な出力強度(合算強度)の光を照射することが可能となる。
【0084】
なお、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法としては、先に説明した第4の測定動作と同様、測定値DATA1(t)〜DATA4(t)の最大値や合算値、或いは平均値を採択することが考えられる。
【0085】
<変形例>
先出の図3では、単一の受光部PDと、これを中心とする円周上に等間隔で配置された8つの発光部LED1〜LED8と、を有する脈波センサを例に挙げたが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、図14に示すように、発光部LEDと受光部PDとを一対とした光センサモジュール(破線で囲まれた部分)を異なる位置に複数設けてもよい。このような構成とすることにより、複数の発光部を順次に点灯させる必要がなくなるので、脈波の測定時間を短縮することが可能となる。
【0086】
また、脈波センサに対する指先の浮き加減や押圧の位置依存性を解消するためには、複数の発光部を設けることが望ましいが、出力強度や出力波長の可変制御によって得られる効果のみに着目するのであれば、図15A及び図15B、ないしは、図16A及び図16Bに示すように、必ずしも発光部を複数設ける必要はない。
【0087】
なお、単一の発光部の出力強度を可変制御する手法としては、例えば、図15Aに示すように、発光部の駆動電流制御(PWM[Pulse Width Modulation]制御による実効的な駆動電流制御も含む)を行う構成としてもよいし、或いは、図15Bに示すように、複数の発光素子を用いて単一の発光部を形成し、その点灯数制御を行う構成としてもよい。
【0088】
また、単一の発光部の出力波長を可変制御する手法としては、例えば、図16Aに示すように、発光部のフィルタ制御を行う構成としてもよいし、或いは、図16Bに示すように、出力波長の異なる複数の発光素子を用いて単一の発光部を形成し、その点消灯制御を行う構成としてもよい。
【0089】
また、上記で説明した第2及び第3の測定動作(出力強度のみ可変制御)、第5の測定動作(出力波長のみ可変制御)、並びに、第6の測定動作(出力強度と出力波長を組み合わせた可変制御)では、いずれの動作例においても、脈波の測定を行うたびに、発光部の出力強度や出力波長を可変制御する構成となっているが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、脈波の初回測定時に発光部の出力強度や出力波長の最適値を演算処理装置で判別し、その最適値をメモリに記憶しておく構成を採用すれば、以後、メモリに記憶されている最適値を用いて迅速かつ適切に脈波の測定を行うことが可能となる。また、複数の被測定者によって1つの脈波センサを共有する場合には、被測定者毎に発光部の出力強度や出力波長の最適値をメモリに記憶しておき、メモリに記憶された複数通りの最適値を任意に読み出せる構成にしておけばよい。
【0090】
<出力波長についての考察>
図17は、各種LED出力と脈強度(測定値)との関係を示す図であり、図18は、LED波長と酸素化ヘモグロビンHbO2の吸収係数との関係を示す図である。実験では、いわゆる反射型の脈波センサにおいて、発光部の出力波長をλ1(青:430nm)、λ2(青:466nm)、λ3(青:468nm)、λ4(緑:520nm)、λ5(緑:570nm)、λ6(黄:587nm)、λ7(橙:605nm)、λ8(赤:640nm)、λ9(赤:660nm)、及び、λ10(白)とし、発光部の出力強度(駆動電流値)を1mA、5mA、10mAに変化させたときの挙動を各々調査した。その結果、およそ波長600nm以下の可視光領域(発光色で言えば、青(λ1〜λ3)、緑(λ4、λ5)、黄(λ6)、及び、橙(λ7)に相当する波長領域)では、酸素化ヘモグロビンHbO2の吸収係数が大きくなり、測定される脈波のピーク強度が大きくなるため、脈波の波形を比較的取得しやすいことが分かった。
【0091】
なお、動脈血の酸素飽和度を検出するパルスオキシメータでは、酸素化ヘモグロビンHbO2の吸収係数(実線)と脱酸素化ヘモグロビンHbの吸収係数(破線)との差違が最大となる近赤外領域の波長(700nm前後)が発光部の出力波長として広く一般的に用いられているが、脈波センサ(特に、いわゆる反射型の脈波センサ)としての利用を考えた場合には、上記の実験結果で示したように、波長600nm以下の可視光領域を発光部の出力波長として用いることが望ましいと言える。
【0092】
<具体的なアプリケーション例>
図19は、本発明に係る脈波センサの具体的な回路ブロック図である。本構成例の脈波センサ1は、光センサ回路10と、演算処理装置20(以下、CPU20と呼ぶ)と、無線通信部30と、DC/DCコンバータ40と、CPUプログラム書換用端子50と、を有している。
【0093】
光センサ回路10は、発光ダイオードLED1〜LED4と、フォトトランジスタPDと、オペアンプAMP1及びAMP2と、抵抗R1〜R11と、コンデンサC1〜C6とを有する。発光ダイオードLED1〜LED4のアノードは、いずれも、内部電源電圧VDDの印加端に接続されている。発光ダイオードLED1〜LED4のカソードは、それぞれ、抵抗R1〜R4を介してCPU20に接続されている。フォトトランジスタPDのコレクタは、抵抗R5を介して内部電源電圧VDDの印加端に接続されている。フォトトランジスタPDのエミッタは、接地端に接続されている。
【0094】
コンデンサC1の第1端は、フォトトランジスタPDのコレクタに接続されている。コンデンサC1の第2端は、抵抗R6を介して接地端に接続されている。なお、コンデンサC1と抵抗R6により、直流成分除去用のハイパスフィルタが形成されている。
【0095】
オペアンプAMP1の非反転入力端(+)は、コンデンサC1の第2端に接続されている。オペアンプAMP1の反転入力端(−)は、抵抗R7を介して接地端に接続されている。オペアンプAMP1の出力端は、抵抗R8とコンデンサC3とを並列接続して成る帰還経路を介してオペアンプAMP1の反転入力端(−)に接続されている。オペアンプAMP1の第1電源端(高電源端)は、内部電源電圧VDDの印加端に接続される一方、コンデンサC2を介して接地端にも接続されている。オペアンプAMP1の第2電源端(低電源端)は、接地端に接続されている。なお、オペアンプAMP1、抵抗R7及びR8、並びに、コンデンサC2及びC3により、第1の増幅回路が形成されている。
【0096】
抵抗R9の第1端は、オペアンプAMP1の出力端に接続されている。抵抗R9の第2端は、コンデンサC4を介して接地端に接続されている。なお、抵抗R9とコンデンサC4により、ノイズ成分除去用のローパスフィルタが形成されている。
【0097】
オペアンプAMP2の非反転入力端(+)は、抵抗R9の第2端に接続されている。オペアンプAMP2の反転入力端(−)は、抵抗R10を介して接地端に接続されている。オペアンプAMP2の出力端は、可変抵抗R11とコンデンサC6を並列接続して成る帰還経路を介してオペアンプAMP2の反転入力端(−)に接続されている。オペアンプAMP2の第1電源端(高電源端)は、内部電源電圧VDDの印加端に接続される一方、コンデンサC5を介して接地端にも接続されている。オペアンプAMP2の第2電源端(低電源端)は、接地端に接続されている。なお、オペアンプAMP2、抵抗R10及びR11、並びに、コンデンサC5及びC6により、第2の増幅回路が形成されている。
【0098】
CPU20は、LED1〜LED4の発光制御、光センサ回路10から出力される脈波強度の読み取り処理及び各種信号処理(アナログ/デジタル変換処理や正規データ選別処理など)、並びに、無線通信部30を用いた無線通信制御を統括的に司る主体である。なお、CPU20には、プルダウン用の抵抗R12及びR13や、電源平滑用のコンデンサC7が外部接続されている。
【0099】
無線通信部30は、CPU20からの指示に基づいて、各種信号処理が施された脈波データを外部機器(例えば、携帯電話やゲーム機、パーソナルコンピュータ)に送信する半導体装置であり、例えば、BluetoothモジュールICを用いることができる。なお、無線通信部30には、電源平滑用のコンデンサC8が外部接続されている。
【0100】
DC/DCコンバータ40は、リチウムイオン電池から供給される電源電圧P1(3.7V)から内部電源電圧VDD(3.3V)を生成して、脈波センサ1の各部に供給する回路ブロックであり、DC/DCコントローラCTRLと、コイルL1と、抵抗R14及びR15と、コンデンサC9及びC10と、スイッチSWと、を有する。
【0101】
CPUプログラム書換用端子50は、脈波センサ1の外部から有線接続によってCPU20の内部プログラムを書き換えるための外部端子である。
【0102】
図20は、脈波センサ1の一動作例を示すフローチャートである。脈波センサ1がパワーオンされると、まず、ステップS1にて、外部機器との無線接続(Bluetooth接続)が確立された後、ステップS2にて、外部機器との無線通信(Bluetooth通信)が開始される。次に、ステップS3にて、CPU制御による脈波のセンシング動作が開始される。
【0103】
脈波のセンシング動作では、まず、ステップS4にて発光ダイオードLED1が所定時間(0.1ms〜1ms)だけ点灯され、ステップS5にて脈強度DATA1の読み出しと記憶が行われる。次に、ステップS6にて発光ダイオードLED2が所定時間(0.1ms〜1ms)だけ点灯され、ステップS7にて脈強度DATA2の読み出しと記憶が行われる。次に、ステップS8にて発光ダイオードLED3が所定時間(0.1ms〜1ms)だけ点灯され、ステップS9にて脈強度DATA3の読み出しと記憶が行われる。次に、ステップS10にて発光ダイオードLED4が所定時間(0.1ms〜1ms)だけ点灯され、ステップS11にて脈強度DATA4の読み出しと記憶が行われる。
【0104】
ステップS12では、所定のサンプリング期間(例えば1秒間)が経過したか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS13に進められる。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS4に戻されて、以後、ステップS12にてイエス判定が下されるまで、ステップS4〜S12で説明した一連のサイクル動作が繰り返される。
【0105】
ステップS12にてイエス判定が下された場合、ステップS13では、所定の演算処理(サイクル毎の正データ選択処理)が行われる。正データの選択手法としては、(1)サイクル毎に得られた脈強度DATA1〜DATA4のうち、最も信号強度の大きいものを1つ選択する、(2)サイクル毎に得られた脈強度DATA1〜DATA4を全て合算する、(3)サイクル毎に得られた脈強度DATA1〜DATA4を平均化する、などの手法が考えられる。
【0106】
ステップS13での演算処理が完了すると、ステップS14にてBluetooth通信による外部機器へのデータ送信が行われた後、脈波センサ1はパワーオフされる。データ送信を受け付けた外部機器では、脈波データのグラフ表示や数値表示を行ったり、さらなるデータ解析を行うことが可能である。
【0107】
なお、図20の破線で囲まれたセンサ動作のうち、ステップS4〜S11については、先出の図4〜図10で説明したフローに適宜置き換えることが可能である。
【0108】
上記構成から成る脈波センサ1を指や耳に装着可能な小型の脈波センサとして実用化すれば、気軽にいつでもどこでも脈波をセンシングすることが可能となるので、医療分野だけでなく、民生分野への応用(スポーツ分野での健康サポート、健康系ゲームの拡充や興奮度を取り入れた新規ゲームの開発、音響機器の付加価値向上(その日の気分に応じた選局機能など))も期待できるようになる。
【0109】
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0110】
例えば、上記実施形態では、受光部で検出される複数の測定値のうち、その最大値や合算値、或いは、平均値を最終的な脈強度として採択する構成を例示して説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、受光部で検出される複数の測定値のうち、最もS/Nの良好なものを最終的な脈強度として採択する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、脈波センサの測定精度を高める上で有用な技術である。
【符号の説明】
【0112】
1 脈波センサ
10 光センサ回路
20 演算処理装置(CPU)
30 無線通信部
40 DC/DCコンバータ
50 CPUプログラム書換用端子
LED、LED1〜LED8 発光部(発光ダイオード)
PD、PD1〜PD4 受光部(フォトトランジスタ)
R1〜R15 抵抗
C1〜C10 コンデンサ
AMP1、AMP2 オペアンプ
CTRL DC/DCコントローラ
L1 コイル
SW スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の脈波センサは、発光部(一般には近赤外LED[Light Emitting Diode])と受光部(フォトダイオードやフォトトランジスタ)1つずつを一対として、脈波の測定を行う構成とされていた。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−212016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の脈波センサには、(1)安静状態で測定しなければ正確な測定値を得ることができない、(2)脈波センサに指先(血管が走行していれば、その他の部位でも可)を押し当てる圧力(以下では押圧と呼ぶ)によって測定値にばらつきが生じる、(3)測定中は指先を動かしてはならない、(4)脈波センサから指先が浮いた状態では測定値がぶれる、(5)脈波の強度には個人差がある、というように、脈波の測定精度を高める上で解決すべき種々の課題があった。
【0006】
本発明は、本願の発明者らによって見い出された上記の問題点に鑑み、脈波を正確に測定することが可能な脈波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る脈波センサは、異なる位置に設けられた複数の発光部と、前記複数の発光部から各々照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を前記複数の発光部毎に検出する少なくとも一つの受光部と、前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波を取得する演算処理装置と、を有する構成(第1−1の構成)とされている。
【0008】
なお、上記第1−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記受光部は、前記複数の発光部に対して共通に設けられており、前記複数の発光部は、順次点灯される構成(第1−2の構成)にするとよい。
【0009】
また、上記第1−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記複数の発光部は、前記受光部を中心とする円周上に等間隔で配置された構成(第1−3の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第1−3の構成から成る脈波センサにおいて、前記複数の発光部は、各々の出力強度が異なる構成(第1−4の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第1−3の構成から成る脈波センサにおいて、前記複数の発光部は、各々の出力波長が異なる構成(第1−5の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第1−5の構成から成る脈波センサにおいて、前記複数の発光部は、周回毎に出力強度が変化される構成(第1−6の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第1−3〜第1−6いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記複数の発光部は、複数個ずつ同時点灯される構成(第1−7の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第1−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記受光部は、前記複数の発光部に対して各々ペアを組むように複数設けられており、前記複数の発光部は、同時点灯される構成(第1−8の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第1−1〜第1−8いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記複数の発光部毎に検出される複数の測定値のうち、最も強度の大きいものを脈強度として採用する構成(第1−9の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第1−1〜第1−8いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記複数の発光部毎に検出される複数の測定値について、その合算値または平均値を脈強度として採用する構成(第1−10の構成)にするとよい。
【0017】
また、上記第1−1〜第1−10いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部と前記受光部は、前記被測定者の身体の一部に対していずれも同じ側に設けられている構成(第1−11の構成)にするとよい。
【0018】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る脈波センサは、出力強度可変の発光部と、前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部と、前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、を有する構成(第2−1の構成)とされている。
【0019】
なお、上記第2−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部は、脈波測定時に出力強度が変化される構成(第2−2の構成)にするとよい。
【0020】
また、上記第2−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記発光部の出力強度毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、最も強度の大きいものを脈強度として採用する構成(第2−3の構成)にするとよい。
【0021】
また、上記第2−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記発光部の出力強度毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、その合算値または平均値を脈強度として採用する構成(第2−4の構成)にするとよい。
【0022】
また、上記第2−1〜第2−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部は、出力強度の異なる複数の発光素子の順次点灯制御により、全体の出力強度を変化する構成(第2−5の構成)にするとよい。
【0023】
また、上記第2−1〜第2−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部は、複数の発光素子の点灯数制御により、全体の出力強度を変化する構成(第2−6の構成)にするとよい。
【0024】
また、上記第2−1〜第2−6いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記被測定者毎に、前記発光部の出力強度の最適値を判別して記憶する構成(第2−7の構成)にするとよい。
【0025】
また、上記第2−1〜第2−7いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部と前記受光部は、前記被測定者の身体の一部に対していずれも同じ側に設けられている構成(第2−8の構成)にするとよい。
【0026】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る脈波センサは、出力波長可変の発光部と、前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部と、前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、を有する構成(第3−1の構成)とされている。
【0027】
なお、上記第3−1の構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部は、脈波測定時に出力波長が変化される構成(第3−2の構成)にするとよい。
【0028】
また、上記第3−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記発光部の出力波長毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、最も強度の大きいものを脈強度として採用する構成(第3−3の構成)にするとよい。
【0029】
また、上記第3−2の構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記発光部の出力波長毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、その合算値または平均値を脈強度として採用する構成(第3−4の構成)にするとよい。
【0030】
また、上記第3−1〜第3−4いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部は、出力波長の異なる複数の発光素子の順次点灯制御により、全体の出力波長を変化する構成(第3−5の構成)にするとよい。
【0031】
また、上記第3−1〜第3−5いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記演算処理装置は、前記被測定者毎に、前記発光部の出力波長の最適値を判別して記憶する構成(第3−6の構成)にするとよい。
【0032】
また、上記第3−1〜第3−6いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部の出力波長は、およそ600nm以下の可視光領域に属する構成(第3−7の構成)にするとよい。
【0033】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る脈波センサは、出力波長がおよそ600nm以下の可視光領域に属する発光部と、前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部と、前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、を有する構成(第3−8の構成)とされている。
【0034】
なお、上記第3−1〜第3−8いずれかの構成から成る脈波センサにおいて、前記発光部と前記受光部は、前記被測定者の身体の一部に対していずれも同じ側に設けられている構成(第3−9の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る脈波センサであれば、測定状態の違いや個人差に依ることなく、脈波を正確に測定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】脈波測定の原理を説明するための模式図
【図2】生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図
【図3】本発明に係る脈波センサの一構成例を示す模式図
【図4】第1の測定動作を示すフローチャート
【図5】第2の測定動作を示すフローチャート
【図6】第3の測定動作を示すフローチャート
【図7】第4の測定動作を示すフローチャート
【図8】第5の測定動作を示すフローチャート
【図9】第6の測定動作を示すフローチャート
【図10】第7の測定動作を示すフローチャート
【図11】押圧と脈強度(測定値)との関係を示す図
【図12】LED強度と脈強度(測定値)との関係を示す図
【図13】LED波長と脈強度(測定値)との関係を示す図
【図14】本発明に係る脈波センサの第1変形例を示す模式図
【図15A】本発明に係る脈波センサの第2変形例を示す模式図
【図15B】本発明に係る脈波センサの第3変形例を示す模式図
【図16A】本発明に係る脈波センサの第4変形例を示す模式図
【図16B】本発明に係る脈波センサの第5変形例を示す模式図
【図17】各種LED出力と脈強度(測定値)との関係を示す図
【図18】LED波長とHbO2の吸収係数との関係を示す図
【図19】本発明に係る脈波センサの回路ブロック図
【図20】脈波センサ1の一動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0037】
<脈波測定の原理>
図1は、脈波測定の原理を説明するための模式図であり、図2は、生体内における光の減衰量(吸光度)が時間的に変化する様子を示す波形図である。
【0038】
容積脈波法による脈波測定では、例えば、図1に示すように、測定窓に押し当てられた指先(血管が走行していれば、その他の部位でも可)に向けて発光部(LEDなど)から光が照射され、体内を透過して体外に出てくる光の強度が受光部(フォトダイオードやフォトトランジスタなど)で検出される。ここで、図2に示したように、生体組織や静脈血(脱酸素化ヘモグロビンHb)による光の減衰量(吸光度)は一定であるが、動脈血(酸素化ヘモグロビンHbO2)による光の減衰量(吸光度)は拍動によって時間的に変動する。従って、可視領域から近赤外領域にある「生体の窓」(光が生体を透過しやすい波長領域)を利用して、末梢動脈の吸光度変化を測定することにより、容積脈波を測定することができる。
【0039】
<脈波から分かること>
なお、心臓及び自立神経の支配を受けている脈波は、常に一定の挙動を示すものではなく、被測定者の状態によって様々な変化(揺らぎ)を生じるものである。従って、脈波の変化(揺らぎ)を解析することにより、被測定者の様々な身体情報を得ることができる。例えば、心拍数からは、被測定者の運動能力や緊張度などを知ることができ、心拍変動からは、被測定者の疲労度、快眠度、及び、ストレスの大きさなどを知ることができる。また、脈波を時間軸で2回微分することにより得られる加速度脈波からは、被測定者の血管年齢や動脈硬化度などを知ることができる。
【0040】
ただし、脈波の変化(揺らぎ)を正しく解析するためには、脈波自体を高精度に測定することが重要であり、測定状態の違いや個人差に起因する測定ばらつき(測定誤差)を極力低減しなければならない。
【0041】
<本発明の構成>
図3は、本発明に係る脈波センサの一構成例を示す模式図である。本構成例の脈波センサは、発光部と受光部が指先に対して互いに反対側に設けられた構成(いわゆる透過型、図1の破線矢印を参照)ではなく、発光部と受光部が指先に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型、図1の実線矢印を参照)とされており、かつ、図3に示すように、単一の受光部PD(例えばフォトダイオードやフォトトランジスタ)と、受光部PDを中心とする円周上に等間隔で配置された8つの発光部LED1〜LED8(例えば発光ダイオード)と、を有する。なお、以下の説明では、発光部LED1〜LED8の出力強度をI1〜I8で表し、発光部LED1〜LED8の出力波長をλ1〜λ8で表す。また、図3には明示されていないが、本発明に係る脈波センサは、発光部LED1〜LED8の発光制御や受光素子PDの受光制御を行うほか、受光素子PDで得られた測定値に各種の信号処理を施すための演算処理装置(CPU[Central Processing Unit]など)を有する。なお、発光部の個数はあくまで例示であり、8つ以外でも構わない。
【0042】
<第1の測定動作>
図4は、図3の脈波センサを用いた第1の測定動作を示すフローチャートである。第1の測定動作を行う際の前提条件として、発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8はいずれも共通の一定値Iであり、出力波長λ1〜λ8はいずれも共通の一定値λであるものとする。
【0043】
時点tにおける脈強度DATA(t)の測定が開始されると、ステップS101では、複数設けられた発光部LEDx(ただし、xはLED番号であり、x=1、2、…、7、8、以下同様)の点消灯制御に先立ち、次に点灯すべきLED番号xのリセット(x=1に設定)が行われる。ステップS102では、次に点灯すべきLED番号x(=1)に基づいて、発光部LED1のみが点灯され、その余の発光部LED2〜LED8がいずれも消灯される。ステップS103では、発光部LED1から照射されて体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1(t)として出力され、演算処理装置の記憶領域、或いは、演算処理装置に外部接続される記憶装置に一時格納される。ステップS104では、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント(x=2に設定)が行われる。ステップS105では、次に点灯すべきLED番号xが8よりも大きいか否かの判定(一巡判定)が行われる。ここでノー判定が下された場合には、フローがステップS102に戻され、次に点灯すべきLED番号x(=2)に基づいて発光部LED2の点灯が行われた後、ステップS103〜S105においては、それぞれ、測定値DATA2(t)の取得、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント、及び、一巡判定が行われる。以後も、ステップS105にてイエス判定が下されない限り、ステップS102〜ステップS105のフローが繰り返されて、発光部LED3〜LED8の順次点灯、及び、測定値DATA3(t)〜DATA8(t)の順次取得が行われる。一方、ステップS105にてイエス判定が下された場合には、上記一連の測定動作が終了される。なお、実際の脈波測定に際しては、上記一連の測定動作が所定のサンプリングレート(500Hz〜10,000Hz)で所定の測定期間(例えば1秒間)に亘って繰り返される。
【0044】
このように、第1の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するために、異なる位置に設けられた同一強度、同一波長の発光部LED1〜LED8が順次点灯され、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1(t)〜DATA8(t)として各々個別に取得される。その後、演算処理装置では、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)に基づいて、時点tにおける脈強度DATA(t)が決定される。
【0045】
時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法としては、例えば、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)のうち、最も強度の大きいもの(S/Nの良好なもの)を選択することが考えられる。このような手法を採用すれば、脈波センサに対する指先の浮き加減や被測定者毎の個人差(血管走行の違いなど)の影響を低減することが可能となる。
【0046】
また、別の手法としては、例えば、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)の合算値や平均値を時点tにおける脈強度DATA(t)とすることが考えられる。このような手法を採用すれば、押圧の位置依存性を解消することも可能となる。
【0047】
また、先にも述べた通り、本構成例の脈波センサでは、発光部LED1〜LED8と受光部PDが指先に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型)が採用されている。このような構成を採用したことにより、受光部PDに戻ってくる光の強度は、発光部LED1〜LED8の位置の違いを反映しやすくなるので、上記の作用・効果を高める上で好適な構成であると言える。
【0048】
<第2の測定動作>
図5は、図3の脈波センサを用いた第2の測定動作を示すフローチャートである。第2の測定動作を行う際の前提条件として、出力波長λ1〜λ8はいずれも共通の一定値λであるものとする。
【0049】
時点tにおける脈強度DATA(t)の測定が開始されると、ステップS201では、複数設けられた発光部LEDxの点消灯制御に先立ち、次に点灯すべきLED番号xのリセット(x=1に設定)が行われる。ステップS206では、次に点灯すべきLED番号x(=1)に基づいて発光部LED1の出力強度I1が設定される。ステップS202では、次に点灯すべきLED番号x(=1)に基づいて、発光部LED1のみが点灯され、その余の発光部LED2〜LED8がいずれも消灯される。ステップS203では、発光部LED1から照射されて体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1(t)として出力され、演算処理装置の記憶領域、若しくは、演算処理装置に外部接続される記憶装置に一時格納される。ステップS204では、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント(x=2に設定)が行われる。ステップS205では、次に点灯すべきLED番号xが8よりも大きいか否かの判定が行われる。ここで、ノー判定が下された場合には、フローがステップS206に戻され、次に点灯すべきLED番号x(=2)に基づいて発光部LED2の出力強度I2(>I1)が設定された後、ステップS202〜S205では、それぞれ、発光部LED2の点灯、測定値DATA2(t)の取得、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント、並びに、一巡判定が行われる。以後も、ステップS205にてイエス判定が下されない限り、ステップS206、及び、ステップS202〜ステップS205のフローが繰り返されて、出力強度I3〜I8の順次設定(I3<I4<…<I7<I8)、発光部LED3〜LED8の順次点灯、及び、測定値DATA3(t)〜DATA8(t)の順次取得が行われる。一方、ステップS205においてイエス判定が下された場合には、上記一連の測定動作が終了される。なお、実際の脈波測定に際しては、上記一連の測定動作が所定のサンプリングレート(500Hz〜10,000Hz)で所定の測定期間(例えば1秒間)に亘って繰り返される。
【0050】
このように、第2の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するために、同一波長の発光部LED1〜LED8が相異なる出力強度で順次点灯され、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1(t)〜DATA8(t)として各々個別に取得される。その後、演算処理装置では、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)に基づいて、時点tにおける脈強度DATA(t)が決定される。
【0051】
出力強度I1〜I8を可変することの意義について、図11及び図12を参照しながら説明する。図11は、押圧と脈強度(測定値)との関係を示す図であり、図12は、LED強度(発光部の出力強度)と脈強度(測定値)との関係を示す図である。なお、図12の実線(1)〜(4)は、それぞれ、図11の押圧(1)〜(4)が与えられた状態下で得られるLED強度と脈強度との関係を示している。
【0052】
図11に示すように、基本的には押圧が高いほど脈強度は強くなるが、押圧が高過ぎると指先に血流が届き難くなって脈強度が低下に転じる。このように、脈強度は押圧に応じて変化するが、押圧は被測定者によって千差万別であり、脈波センサ側でその大きさを制御することは困難である。一方、図12に示すように、基本的にはLED強度が高いほど脈強度は強くなるが、受光部PDには出力の飽和値(カットオフ値)が存在するため、LED強度を上げ過ぎると、脈強度が飽和値に振り切ってしまい、正しい測定結果を得ることができなくなるおそれがある。すなわち、適正レベルの脈強度が得られるLED強度は例えば押圧の違いに応じて大きく異なるものとなる。
【0053】
そこで、第2の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するに際して、各々の出力強度I1〜I8を段階的に高めながら複数の発光部LED1〜LED8を順次点灯し、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度を測定値DATA1(t)〜DATA8(t)として各々個別に取得する構成とされている。このような構成とすることにより、例えば、押圧(1)が与えられた状況下では、比較的出力強度の低い発光部が点灯されたときに適正レベルの脈強度が得られることになり、また、押圧(4)が与えられた状況下では、比較的出力強度の高い発光部が点灯されたときに適正レベルの脈強度が得られることになる。
【0054】
なお、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法については、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)のうち、適正レベルに収まっているものを適宜抽出した上で、例えば、その最大値や合算値、或いは、平均値を採択することが考えられる。
【0055】
このように、第2の測定動作であれば、先に説明した第1の測定動作と同様の効果を享受することができるほか、押圧の違いなどに依らず、適正レベルの脈強度DATA(t)を取得することが可能となる。
【0056】
<第3の測定動作>
図6は、図3の脈波センサを用いた第3の測定動作を示すフローチャートである。第3の測定動作を行う際の前提条件として、発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8はいずれも共通の可変値I(y)(ただしyは周回数)であり、出力波長λ1〜λ8はいずれも共通の一定値λであるものとする。
【0057】
時点tにおける脈強度DATA(t)の測定が開始されると、ステップS301では、複数設けられた発光部LEDxの点消灯制御に先立ち、次に点灯すべきLED番号xのリセット(x=1に設定)、及び、周回数yのリセット(y=1に設定)が行われる。ステップS306では、現在の周回数y(=1)に基づいて、発光部LED1〜LED8に共通の出力強度I(1)が設定される。ステップS302では、次に点灯すべきLED番号x(=1)に基づいて、発光部LED1のみが点灯され、その余の発光部LED2〜LED8がいずれも消灯される。ステップS303では、発光部LED1から照射されて体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1−1(t)として出力され、演算処理装置の記憶領域、或いは、演算処理装置に外部接続される記憶装置に一時格納される。ステップS304では、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント(x=2に設定)が行われる。ステップS305では、次に点灯すべきLED番号xが8よりも大きいか否かの判定が行われる。ここで、ノー判定が下された場合は、フローがステップS302に戻され、次に点灯すべきLED番号x(=2)に基づいて発光部LED2の点灯が行われた後、ステップS303〜S305においては、それぞれ、測定値DATA2−1(t)の取得、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント、並びに、一巡判定が行われる。以後も、ステップS305にてイエス判定が下されない限り、ステップS302〜ステップS305のフローが繰り返され、発光部LED3〜LED8の順次点灯、及び、測定値DATA3−1(t)〜DATA8−1(t)の順次取得が行われる。
【0058】
一方、ステップS305にてイエス判定が下された場合には、フローがステップS307に進められ、次に点灯すべきLED番号xのリセット(x=1に設定)と周回数yのインクリメント(y=2に設定)が行われる。ステップS308では、周回数yが3よりも大きいか否かの判定(周回終了判定)が行われる。ここで、ノー判定が下された場合は、フローがステップS306に戻され、現在の周回数y(=2)に基づいて、発光部LED1〜LED8に共通の新たな出力強度I(2)(>I(1))が設定された後、ステップS302〜S305のループ処理(測定値DATA1−2(t)〜DATA8−2(t)の順次取得)が実行され、さらに、ステップS307及びステップS308では、それぞれ、次に点灯すべきLED番号xのリセット処理及び周回数yのインクリメント処理、並びに、周回終了判定が行われる。以後も、ステップS308にて、イエス判定が下されない限り、ステップS306、ステップS302〜ステップS305、ステップS307、及び、ステップS308のフローが繰り返され、発光部LED1〜LED8に共通の新たな出力強度I(3)(>I(2))を設定した上で、測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)の順次取得が行われる。一方、ステップS308にてイエス判定が下された場合には、上記一連の測定動作が終了される。なお、実際の脈波測定に際しては、上記一連の測定動作が所定のサンプリングレート(500Hz〜10,000Hz)で所定の測定期間(例えば1秒間)に亘って繰り返される。
【0059】
このように、第3の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するために、周回毎の出力強度I(y)を変化させながら、同一波長の発光部LED1〜LED8が複数周回に亘って順次点灯され、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜DATA8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)として各々個別に取得される。その後、演算処理装置では、1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)に基づいて、時点tにおける脈強度DATA(t)が決定される。
【0060】
出力強度I1〜I8を可変することの意義は先に述べた通りであり、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法については、1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)のうち、適正レベルに収まっているものを適宜抽出した上で、例えば、全ての測定値のうちで最も強度の大きいものを選択してもよいし、或いは、全ての測定値の合算値や平均値を算出してもよい。若しくは、周回毎の測定値を比べて最も強度の大きい周回を特定し、当該周回中の測定値を対象としてその最大値や合算値、或いは、平均値を採択することも考えられる。
【0061】
このように、第3の測定動作であれば、先に説明した第2の測定動作に比べて、より確実に適正レベルの脈強度DATA(t)を取得することが可能となる。
【0062】
<第4の測定動作>
図7は、図3の脈波センサを用いた第4の測定動作を示すフローチャートである。第4の測定動作は、先に説明した第1の測定動作を基本とした動作例であり、第4の測定動作を行う際の前提条件は、第1の測定動作時と同じく、発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8がいずれも共通の一定値Iであり、出力波長λ1〜λ8がいずれも共通の一定値λであるものとする。
【0063】
時点tにおける脈強度DATA(t)の測定が開始されると、ステップS401では、複数設けられた発光部LEDx(ただし、xはLED番号であり、x=1、2、…、7、8、以下同様)の点消灯制御に先立ち、次に点灯すべきLED番号xのリセット(x=1に設定)が行われる。ステップS402では、次に点灯すべきLED番号x(=1)に基づいて、発光部LED1(=LEDx)と発光部LED5(=LED(x+4))が同時に点灯され、その余の発光部LED2〜LED4、及び、発光部LED6〜LED8がいずれも消灯される。すなわち、第4の測定動作では、受光部PDに対して点対称となる位置に設けられた一対の発光部(LEDx、LED(x+4))が同時に点灯される。ステップS403では、発光部LED1及びLED5から同時に照射されて体内を透過して受光部PDに戻ってくる合算光の強度が測定値DATA1(t)として出力され、演算処理装置の記憶領域、或いは、演算処理装置に外部接続される記憶装置に一時格納される。ステップS404では、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント(x=2に設定)が行われる。ステップS405では、次に点灯すべきLED番号xが4よりも大きいか否かの判定(一巡判定)が行われる。ここでノー判定が下された場合には、フローがステップS402に戻され、次に点灯すべきLED番号x(=2)に基づいて発光部LED2及びLED6の点灯が行われた後、ステップS403〜S405では、それぞれ、測定値DATA2(t)の取得、次に点灯すべきLED番号xのインクリメント、及び、一巡判定が行われる。以後も、ステップS405にてイエス判定が下されない限り、ステップS402〜ステップS405のフローが繰り返され、発光部LED3及びLED7の同時点灯による測定値DATA3(t)の取得と、発光部LED4及びLED8の同時点灯による測定値DATA4(t)の取得が順次行われる。一方、ステップS405にてイエス判定が下された場合には、上記一連の測定動作が終了される。なお、実際の脈波測定に際しては上記一連の測定動作が所定のサンプリングレート(500Hz〜10,000Hz)で所定の測定期間(例えば1秒間)に亘って繰り返される。
【0064】
このように、第4の測定動作では、先に説明した第1の測定動作を基本としながら、受光部PDに対して点対称となる位置に設けられた一対の発光部(LEDx、LED(x+4))が同時に点灯されるので、発光部毎の出力強度を不要に高めることなく、指先に十分な出力強度(合算強度)の光を照射することが可能となる。
【0065】
なお、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法としては、先に説明した第1の測定動作と同様、測定値DATA1(t)〜DATA4(t)の最大値や合算値、或いは平均値を採択することが考えられる。
【0066】
また、第4の測定動作では、第1の測定動作に発光部の同時点灯技術を適用した構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、先に説明した第2の測定動作や第3の測定動作にも、発光部の同時点灯技術を適用可能であることは言うまでもない。
【0067】
また、第4の測定動作では、指先位置に起因する測定値ばらつきを相殺するために、受光部PDに対して点対称となる位置に設けられた一対の発光部(LEDx、LED(x+4))を同時に点灯する構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、測定値のS/N向上を優先するのであれば、互いに近傍に設けられた複数の発光部(例えば、LEDx、LED(x+1))を同時に点灯する構成とすればよい。また、同時に点灯する発光部の個数も2つに限定されるものではなく、3つ以上の発光部を同時に点灯させてもよい。
【0068】
<第5の測定動作>
図8は、図3の脈波センサを用いた第5の測定動作を示すフローチャートである。第5の測定動作を行う際の前提条件として、発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8はいずれも共通の一定値Iであり、出力波長λ1〜λ8は互いに異なる値(可視光領域〜近赤外領域)とする。なお、出力波長λ1〜λ8としては、青、緑、黄、橙などの発光色に相当する波長が好適であるが、これについては後ほど詳細な説明を行う。
【0069】
第5の測定動作(図8のステップS501〜S505)は、上記の前提条件が異なる以外、先に説明した第1の測定動作(図4のステップS101〜S105)と全く同一の内容である。すなわち、第5の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するために、同一強度の発光部LED1〜LED8が相異なる出力波長で順次点灯され、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が測定値DATA1(t)〜DATA8(t)として各々個別に取得される。その後、演算処理装置では、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)に基づいて、時点tにおける脈強度DATA(t)が決定される。
【0070】
出力波長λ1〜λ8を可変することの意義について、先出の図11と共に、図13を参照しながら説明する。図13は、LED波長(発光部の出力波長)と脈強度(測定値)との関係を示す図である。なお、図13の実線(1)〜(4)は、それぞれ、図11の押圧(1)〜(4)が与えられた状態下で得られるLED波長と脈強度の関係を示している。
【0071】
脈強度が押圧に応じて変化することについては、図11を参照しながら先に述べた通りであるが、図13に示したように、脈強度はLED波長に応じても変化する。従って、LED波長が固定的に設定されていると、押圧によっては脈強度が飽和値に振り切ったり、逆に弱くなり過ぎたりして、正しい測定結果を得ることができなくなるおそれがある。すなわち、適正レベルの脈強度が得られるLED波長は、例えば押圧の違いに応じて大きく異なるものとなる。
【0072】
そこで、第5の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するに際して、各々の出力波長λ1〜λ8を切り替えながら複数の発光部LED1〜LED8を順次点灯し、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度を測定値DATA1(t)〜DATA8(t)として各々個別に取得する構成とされている。このような構成とすることにより、例えば、押圧(1)が与えられた状況下では、比較的出力波長の長い発光部が点灯されたときに適正レベルの脈強度が得られることになり、また、押圧(4)が与えられた状況下では、比較的出力波長の短い発光部が点灯されたときに適正レベルの脈強度が得られることになる。
【0073】
なお、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法については、先に説明した第
2の測定動作時と同じく、測定値DATA1(t)〜DATA8(t)のうち、適正レベルに収まっているものを適宜抽出した上で、例えば、その最大値や合算値、或いは、平均値を採択することが考えられる。
【0074】
このように、第5の測定動作であれば、先に説明した第1の測定動作と同様の効果を享受することができるほか、押圧の違いなどに依らず、適正レベルの脈強度DATA(t)を取得することが可能となる。
【0075】
また、出力波長λ1〜λ8の異なる照射光は生体内への進入深さが異なるので、これらを切り替えて照射する構成であれば、被測定者の個人差、例えば、動脈血(酸素化ヘモグロビンHbO2)による光の減衰量(吸光度)のばらつきを解消することも可能となる。
【0076】
<第6の測定動作>
図9は、図3の脈波センサを用いた第6の測定動作を示すフローチャートである。第6の測定動作を行う際の前提条件として、発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8はいずれも共通の可変値I(y)(ただしyは周回数)であり、出力波長λ1〜λ8は互いに異なる値(可視光領域〜近赤外領域)とする。
【0077】
第6の測定動作(図9のステップS601〜S608)は、上記の前提条件が異なる以外、先に説明した第3の測定動作(図6のステップS301〜S308)と全く同一の内容である。すなわち、第6の測定動作では、時点tにおける脈強度DATA(t)を取得するために、周回毎の出力強度I(y)を変化させながら、相異なる出力波長の発光部LED1〜LED8が複数周回に亘って順次点灯され、各発光部LED1〜LED8から体内を透過して受光部PDに戻ってくる光の強度が1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜DATA8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)として各々個別に取得される。その後、演算処理装置では、1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)に基づいて、時点tにおける脈強度DATA(t)が決定される。
【0078】
出力強度I1〜I8、及び、出力波長λ1〜λ8を各々可変することの意義については先に述べた通りであるが、第6の測定動作では、出力強度I1〜I8と出力波長λ1〜λ8の双方が組み合わせて可変制御される。このような構成とすることにより、押圧や被測定者の個人差に依らず、より確実に脈強度を適正レベルに収めることが可能となる。
【0079】
例えば、先出の図12で示したように、基本的にはLED強度が高いほど脈強度は強くなるが、LED強度の増大に応じて散乱成分(ノイズ成分)も増えるので、LED強度の設定値には上限が存在する。そのため、十分な押圧が得られていない状態(例えば、図12の押圧(4)を参照)では、LED強度を上限まで高めても、LED波長が一定である限り、適正レベルの脈強度を得られないおそれがある。しかしながら、LED強度とLED波長の双方を組み合わせて可変制御すれば、各々単独で可変制御した場合に比べて脈強度の調整幅が広がるため、より確実に脈強度を適正レベルに収めることが可能となる。
【0080】
なお、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法については、先に説明した第3の測定動作時と同じく、1周目の測定値DATA1−1(t)〜DATA8−1(t)、2周目の測定値DATA1−2(t)〜8−2(t)、及び、3周目の測定値DATA1−3(t)〜DATA8−3(t)のうち、適正レベルに収まっているものを適宜抽出した上で、例えば、全ての測定値のうちで最も強度の大きいものを選択してもよいし、或いは、全ての測定値の合算値や平均値を算出してもよい。若しくは、周回毎の測定値を比べて最も強度の大きい周回を特定し、当該周回中の測定値を対象として、その最大値や合算値、或いは、平均値を採択することも考えられる。
【0081】
このように、第6の測定動作であれば、先に説明した第2、第3の測定動作(出力強度のみ可変制御)や第5の測定動作(出力波長のみ可変制御)に比べて、より確実に適正レベルの脈強度DATA(t)を取得することが可能となる。
【0082】
<第7の測定動作>
図10は、図3の脈波センサを用いた第7の測定動作を示すフローチャートである。第7の測定動作を行う際の前提条件として発光部LED1〜LED8の出力強度I1〜I8はいずれも共通の一定値Iであり、出力波長λ1(=λ5)、λ2(=λ6)、λ3(=λ7)、及び、λ4(=λ8)は互いに異なる値(可視光領域〜近赤外領域)とする。
【0083】
第7の測定動作(図10のステップS701〜S705)は、上記の前提条件が異なる以外、先に説明した第4の測定動作(図7のステップS401〜S405)と全く同一の内容である。すなわち、第7の測定動作では、受光部PDに対して点対称となる位置に設けられた同一波長の発光部(LEDx、LED(x+4))が同時に点灯されるので、発光部毎の出力強度を不要に高めることなく、指先に十分な出力強度(合算強度)の光を照射することが可能となる。
【0084】
なお、時点tにおける脈強度DATA(t)の決定手法としては、先に説明した第4の測定動作と同様、測定値DATA1(t)〜DATA4(t)の最大値や合算値、或いは平均値を採択することが考えられる。
【0085】
<変形例>
先出の図3では、単一の受光部PDと、これを中心とする円周上に等間隔で配置された8つの発光部LED1〜LED8と、を有する脈波センサを例に挙げたが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、図14に示すように、発光部LEDと受光部PDとを一対とした光センサモジュール(破線で囲まれた部分)を異なる位置に複数設けてもよい。このような構成とすることにより、複数の発光部を順次に点灯させる必要がなくなるので、脈波の測定時間を短縮することが可能となる。
【0086】
また、脈波センサに対する指先の浮き加減や押圧の位置依存性を解消するためには、複数の発光部を設けることが望ましいが、出力強度や出力波長の可変制御によって得られる効果のみに着目するのであれば、図15A及び図15B、ないしは、図16A及び図16Bに示すように、必ずしも発光部を複数設ける必要はない。
【0087】
なお、単一の発光部の出力強度を可変制御する手法としては、例えば、図15Aに示すように、発光部の駆動電流制御(PWM[Pulse Width Modulation]制御による実効的な駆動電流制御も含む)を行う構成としてもよいし、或いは、図15Bに示すように、複数の発光素子を用いて単一の発光部を形成し、その点灯数制御を行う構成としてもよい。
【0088】
また、単一の発光部の出力波長を可変制御する手法としては、例えば、図16Aに示すように、発光部のフィルタ制御を行う構成としてもよいし、或いは、図16Bに示すように、出力波長の異なる複数の発光素子を用いて単一の発光部を形成し、その点消灯制御を行う構成としてもよい。
【0089】
また、上記で説明した第2及び第3の測定動作(出力強度のみ可変制御)、第5の測定動作(出力波長のみ可変制御)、並びに、第6の測定動作(出力強度と出力波長を組み合わせた可変制御)では、いずれの動作例においても、脈波の測定を行うたびに、発光部の出力強度や出力波長を可変制御する構成となっているが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、脈波の初回測定時に発光部の出力強度や出力波長の最適値を演算処理装置で判別し、その最適値をメモリに記憶しておく構成を採用すれば、以後、メモリに記憶されている最適値を用いて迅速かつ適切に脈波の測定を行うことが可能となる。また、複数の被測定者によって1つの脈波センサを共有する場合には、被測定者毎に発光部の出力強度や出力波長の最適値をメモリに記憶しておき、メモリに記憶された複数通りの最適値を任意に読み出せる構成にしておけばよい。
【0090】
<出力波長についての考察>
図17は、各種LED出力と脈強度(測定値)との関係を示す図であり、図18は、LED波長と酸素化ヘモグロビンHbO2の吸収係数との関係を示す図である。実験では、いわゆる反射型の脈波センサにおいて、発光部の出力波長をλ1(青:430nm)、λ2(青:466nm)、λ3(青:468nm)、λ4(緑:520nm)、λ5(緑:570nm)、λ6(黄:587nm)、λ7(橙:605nm)、λ8(赤:640nm)、λ9(赤:660nm)、及び、λ10(白)とし、発光部の出力強度(駆動電流値)を1mA、5mA、10mAに変化させたときの挙動を各々調査した。その結果、およそ波長600nm以下の可視光領域(発光色で言えば、青(λ1〜λ3)、緑(λ4、λ5)、黄(λ6)、及び、橙(λ7)に相当する波長領域)では、酸素化ヘモグロビンHbO2の吸収係数が大きくなり、測定される脈波のピーク強度が大きくなるため、脈波の波形を比較的取得しやすいことが分かった。
【0091】
なお、動脈血の酸素飽和度を検出するパルスオキシメータでは、酸素化ヘモグロビンHbO2の吸収係数(実線)と脱酸素化ヘモグロビンHbの吸収係数(破線)との差違が最大となる近赤外領域の波長(700nm前後)が発光部の出力波長として広く一般的に用いられているが、脈波センサ(特に、いわゆる反射型の脈波センサ)としての利用を考えた場合には、上記の実験結果で示したように、波長600nm以下の可視光領域を発光部の出力波長として用いることが望ましいと言える。
【0092】
<具体的なアプリケーション例>
図19は、本発明に係る脈波センサの具体的な回路ブロック図である。本構成例の脈波センサ1は、光センサ回路10と、演算処理装置20(以下、CPU20と呼ぶ)と、無線通信部30と、DC/DCコンバータ40と、CPUプログラム書換用端子50と、を有している。
【0093】
光センサ回路10は、発光ダイオードLED1〜LED4と、フォトトランジスタPDと、オペアンプAMP1及びAMP2と、抵抗R1〜R11と、コンデンサC1〜C6とを有する。発光ダイオードLED1〜LED4のアノードは、いずれも、内部電源電圧VDDの印加端に接続されている。発光ダイオードLED1〜LED4のカソードは、それぞれ、抵抗R1〜R4を介してCPU20に接続されている。フォトトランジスタPDのコレクタは、抵抗R5を介して内部電源電圧VDDの印加端に接続されている。フォトトランジスタPDのエミッタは、接地端に接続されている。
【0094】
コンデンサC1の第1端は、フォトトランジスタPDのコレクタに接続されている。コンデンサC1の第2端は、抵抗R6を介して接地端に接続されている。なお、コンデンサC1と抵抗R6により、直流成分除去用のハイパスフィルタが形成されている。
【0095】
オペアンプAMP1の非反転入力端(+)は、コンデンサC1の第2端に接続されている。オペアンプAMP1の反転入力端(−)は、抵抗R7を介して接地端に接続されている。オペアンプAMP1の出力端は、抵抗R8とコンデンサC3とを並列接続して成る帰還経路を介してオペアンプAMP1の反転入力端(−)に接続されている。オペアンプAMP1の第1電源端(高電源端)は、内部電源電圧VDDの印加端に接続される一方、コンデンサC2を介して接地端にも接続されている。オペアンプAMP1の第2電源端(低電源端)は、接地端に接続されている。なお、オペアンプAMP1、抵抗R7及びR8、並びに、コンデンサC2及びC3により、第1の増幅回路が形成されている。
【0096】
抵抗R9の第1端は、オペアンプAMP1の出力端に接続されている。抵抗R9の第2端は、コンデンサC4を介して接地端に接続されている。なお、抵抗R9とコンデンサC4により、ノイズ成分除去用のローパスフィルタが形成されている。
【0097】
オペアンプAMP2の非反転入力端(+)は、抵抗R9の第2端に接続されている。オペアンプAMP2の反転入力端(−)は、抵抗R10を介して接地端に接続されている。オペアンプAMP2の出力端は、可変抵抗R11とコンデンサC6を並列接続して成る帰還経路を介してオペアンプAMP2の反転入力端(−)に接続されている。オペアンプAMP2の第1電源端(高電源端)は、内部電源電圧VDDの印加端に接続される一方、コンデンサC5を介して接地端にも接続されている。オペアンプAMP2の第2電源端(低電源端)は、接地端に接続されている。なお、オペアンプAMP2、抵抗R10及びR11、並びに、コンデンサC5及びC6により、第2の増幅回路が形成されている。
【0098】
CPU20は、LED1〜LED4の発光制御、光センサ回路10から出力される脈波強度の読み取り処理及び各種信号処理(アナログ/デジタル変換処理や正規データ選別処理など)、並びに、無線通信部30を用いた無線通信制御を統括的に司る主体である。なお、CPU20には、プルダウン用の抵抗R12及びR13や、電源平滑用のコンデンサC7が外部接続されている。
【0099】
無線通信部30は、CPU20からの指示に基づいて、各種信号処理が施された脈波データを外部機器(例えば、携帯電話やゲーム機、パーソナルコンピュータ)に送信する半導体装置であり、例えば、BluetoothモジュールICを用いることができる。なお、無線通信部30には、電源平滑用のコンデンサC8が外部接続されている。
【0100】
DC/DCコンバータ40は、リチウムイオン電池から供給される電源電圧P1(3.7V)から内部電源電圧VDD(3.3V)を生成して、脈波センサ1の各部に供給する回路ブロックであり、DC/DCコントローラCTRLと、コイルL1と、抵抗R14及びR15と、コンデンサC9及びC10と、スイッチSWと、を有する。
【0101】
CPUプログラム書換用端子50は、脈波センサ1の外部から有線接続によってCPU20の内部プログラムを書き換えるための外部端子である。
【0102】
図20は、脈波センサ1の一動作例を示すフローチャートである。脈波センサ1がパワーオンされると、まず、ステップS1にて、外部機器との無線接続(Bluetooth接続)が確立された後、ステップS2にて、外部機器との無線通信(Bluetooth通信)が開始される。次に、ステップS3にて、CPU制御による脈波のセンシング動作が開始される。
【0103】
脈波のセンシング動作では、まず、ステップS4にて発光ダイオードLED1が所定時間(0.1ms〜1ms)だけ点灯され、ステップS5にて脈強度DATA1の読み出しと記憶が行われる。次に、ステップS6にて発光ダイオードLED2が所定時間(0.1ms〜1ms)だけ点灯され、ステップS7にて脈強度DATA2の読み出しと記憶が行われる。次に、ステップS8にて発光ダイオードLED3が所定時間(0.1ms〜1ms)だけ点灯され、ステップS9にて脈強度DATA3の読み出しと記憶が行われる。次に、ステップS10にて発光ダイオードLED4が所定時間(0.1ms〜1ms)だけ点灯され、ステップS11にて脈強度DATA4の読み出しと記憶が行われる。
【0104】
ステップS12では、所定のサンプリング期間(例えば1秒間)が経過したか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS13に進められる。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS4に戻されて、以後、ステップS12にてイエス判定が下されるまで、ステップS4〜S12で説明した一連のサイクル動作が繰り返される。
【0105】
ステップS12にてイエス判定が下された場合、ステップS13では、所定の演算処理(サイクル毎の正データ選択処理)が行われる。正データの選択手法としては、(1)サイクル毎に得られた脈強度DATA1〜DATA4のうち、最も信号強度の大きいものを1つ選択する、(2)サイクル毎に得られた脈強度DATA1〜DATA4を全て合算する、(3)サイクル毎に得られた脈強度DATA1〜DATA4を平均化する、などの手法が考えられる。
【0106】
ステップS13での演算処理が完了すると、ステップS14にてBluetooth通信による外部機器へのデータ送信が行われた後、脈波センサ1はパワーオフされる。データ送信を受け付けた外部機器では、脈波データのグラフ表示や数値表示を行ったり、さらなるデータ解析を行うことが可能である。
【0107】
なお、図20の破線で囲まれたセンサ動作のうち、ステップS4〜S11については、先出の図4〜図10で説明したフローに適宜置き換えることが可能である。
【0108】
上記構成から成る脈波センサ1を指や耳に装着可能な小型の脈波センサとして実用化すれば、気軽にいつでもどこでも脈波をセンシングすることが可能となるので、医療分野だけでなく、民生分野への応用(スポーツ分野での健康サポート、健康系ゲームの拡充や興奮度を取り入れた新規ゲームの開発、音響機器の付加価値向上(その日の気分に応じた選局機能など))も期待できるようになる。
【0109】
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0110】
例えば、上記実施形態では、受光部で検出される複数の測定値のうち、その最大値や合算値、或いは、平均値を最終的な脈強度として採択する構成を例示して説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、受光部で検出される複数の測定値のうち、最もS/Nの良好なものを最終的な脈強度として採択する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、脈波センサの測定精度を高める上で有用な技術である。
【符号の説明】
【0112】
1 脈波センサ
10 光センサ回路
20 演算処理装置(CPU)
30 無線通信部
40 DC/DCコンバータ
50 CPUプログラム書換用端子
LED、LED1〜LED8 発光部(発光ダイオード)
PD、PD1〜PD4 受光部(フォトトランジスタ)
R1〜R15 抵抗
C1〜C10 コンデンサ
AMP1、AMP2 オペアンプ
CTRL DC/DCコントローラ
L1 コイル
SW スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力波長可変の発光部と、
前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部と、
前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、
を有することを特徴とする脈波センサ。
【請求項2】
前記発光部は、脈波測定時に出力波長が変化されることを特徴とする請求項1に記載の脈波センサ。
【請求項3】
前記演算処理装置は、前記発光部の出力波長毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、最も強度の大きいものを脈強度として採用することを特徴とする請求項2に記載の脈波センサ。
【請求項4】
前記演算処理装置は、前記発光部の出力波長毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、その合算値または平均値を脈強度として採用することを特徴とする請求項2に記載の脈波センサ。
【請求項5】
前記発光部は、出力波長の異なる複数の発光素子の順次点灯制御により、全体の出力波長を変化することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脈波センサ。
【請求項6】
前記演算処理装置は、前記被測定者毎に前記発光部の出力波長の最適値を判別して記憶することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の脈波センサ。
【請求項7】
前記発光部の出力波長は、およそ600nm以下の可視光領域に属することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の脈波センサ。
【請求項8】
出力波長がおよそ600nm以下の可視光領域に属する発光部と、
前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部と、
前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、
を有することを特徴とする脈波センサ。
【請求項9】
前記発光部と前記受光部は、前記被測定者の身体の一部に対していずれも同じ側に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の脈波センサ。
【請求項1】
出力波長可変の発光部と、
前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部と、
前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、
を有することを特徴とする脈波センサ。
【請求項2】
前記発光部は、脈波測定時に出力波長が変化されることを特徴とする請求項1に記載の脈波センサ。
【請求項3】
前記演算処理装置は、前記発光部の出力波長毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、最も強度の大きいものを脈強度として採用することを特徴とする請求項2に記載の脈波センサ。
【請求項4】
前記演算処理装置は、前記発光部の出力波長毎に検出される複数の測定値について、適正レベルに収まっているものを抽出した上で、その合算値または平均値を脈強度として採用することを特徴とする請求項2に記載の脈波センサ。
【請求項5】
前記発光部は、出力波長の異なる複数の発光素子の順次点灯制御により、全体の出力波長を変化することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の脈波センサ。
【請求項6】
前記演算処理装置は、前記被測定者毎に前記発光部の出力波長の最適値を判別して記憶することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の脈波センサ。
【請求項7】
前記発光部の出力波長は、およそ600nm以下の可視光領域に属することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の脈波センサ。
【請求項8】
出力波長がおよそ600nm以下の可視光領域に属する発光部と、
前記発光部から照射されて被測定者の生体内を透過した光の強度を検出する受光部と、
前記受光部から出力される測定値に基づいて前記被測定者の脈波に関する情報を取得する演算処理装置と、
を有することを特徴とする脈波センサ。
【請求項9】
前記発光部と前記受光部は、前記被測定者の身体の一部に対していずれも同じ側に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の脈波センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−19929(P2012−19929A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159606(P2010−159606)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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