説明

脈波診断装置及び脈波診断装置制御方法

【課題】本発明は、長時間にわたる脈波の変動を検出することのできる脈波診断装置及び脈波診断装置制御方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係る脈波診断装置及び脈波診断装置制御方法は、光電センサを用いて脈波を検出し、検出した脈波から脈波の変動を算出することを特徴とする。具体的には、本発明に係る脈波診断装置は、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出部と、前記光電脈波検出部の検出する脈波の脈波振幅を算出する脈波振幅算出部と、前記脈波振幅算出部の算出する脈波振幅が所定の大きさ以上か否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図7

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波を検出して脈波間隔の変動や脈波振幅の変動を計測する脈波診断装置及び脈波診断装置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心拍変動が精神的ストレスの指標となることが知られており、この心拍変動を用いた精神状態判定装置が提案されている(例えば、非特許文献1又は特許文献1参照。)。従来の心拍変動を用いた判定装置は、電極を皮膚表面に装着して心電を検出する。電極を皮膚表面に装着する際、皮膚との接触抵抗を下げるために電極と皮膚との間隙をジェルなどの整合剤で充填する必要がある。このため、整合剤と皮膚表面とが長時間接触するので、長時間心電を検出するとかぶれなどの皮膚疾患を起こしやすかった。また、時間経過により整合剤が乾燥するので、長時間心電を検出すると電極が剥離する問題もあった。また、整合剤の乾燥とは逆に、被検者の発汗によっても電極が剥離しやすくなるという問題があった。さらに、心電を用いて心拍変動を検出するためには、このような電極を少なくとも3個装着する必要があるので、長時間にわたる心拍変動の検出が困難であった。
【特許文献1】特開2004−344269号公報
【非特許文献1】林博史編集:「心拍変動の臨床応用」医学書院、15頁〜16頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、従来は、皮膚表面に電極を装着して心電を検出していたので、長時間にわたる心拍変動の検出が困難であった。心拍変動は脈波の変動によっても検出することができる。よって、本発明は、長時間にわたる脈波の変動を検出することのできる脈波診断装置及び脈波診断装置制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明に係る脈波診断装置及び脈波診断装置制御方法は、光電センサを用いて脈波を検出して脈波の変動を算出することを特徴とする。
【0005】
光電センサを用いて脈波を検出するので、ジェルなどの整合剤を用いることなく脈波を検出することができる。また、光電センサを用いて脈波を検出するので、人体の外耳などの抹消血管から脈波を検出することができる。よって、長時間にわたる脈波の変動を検出することができる。
【0006】
具体的には、本発明に係る脈波診断装置は、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出部と、前記光電脈波検出部の検出した脈波の1拍ごとの脈拍間隔を算出し、前記脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出する周波数成分抽出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
光電センサを用い、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する。周波数成分抽出部が脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出するので、長時間にわたる脈波の変動を検出することができる。
【0008】
前記周波数成分抽出部は、前記脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を、予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに抽出し、外部からの入力により、前記第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部をさらに備え、前記周波数成分抽出部は、前記脈拍数可変部の設定する新たな第1脈拍数を用いて脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出することが好ましい。
【0009】
ゆらぎを算出する脈拍数を可変できるので、所望のデータ数での脈拍間隔の変動を算出することができる。
【0010】
前記周波数成分抽出部の抽出するゆらぎの周波数成分をスペクトル表示する表示部をさらに備えることが好ましい。
【0011】
ゆらぎの周波数成分をスペクトル表示することができるので、長時間にわたる脈拍間隔の変動を表示することができる。
【0012】
前記周波数成分抽出部の抽出するゆらぎの周波数成分のうち特定の2つの周波数の周波数成分の比を算出する周波数成分比算出部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
特定の2つの周波数の周波数成分の比を算出するので、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分の変動を算出することができる。
【0014】
前記周波数成分比算出部は、前記周波数成分抽出部の抽出するゆらぎの周波数成分のうち0.1Hz付近と0.3Hz付近との周波数成分の比を算出することが好ましい。
【0015】
0.1Hz付近と0.3Hz付近との周波数成分の比の変化を算定することができる。0.1Hz付近と0.3Hz付近との周波数成分の比の変化は精神的ストレスの判定に役立つとされているので、精神的ストレスの推定に資することができる。
【0016】
また、本発明に係る脈波診断装置は、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出部と、前記光電脈波検出部の検出する脈波の1拍ごとの脈拍間隔を算出し、連続して算出された2つの前記脈拍間隔同士で形成される直交座標平面上での前記脈拍間隔の点をポアンカレ座標として算出する脈拍間隔ポアンカレ算出部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
光電センサを用い、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する。脈拍間隔ポアンカレ算出部が脈拍間隔のポアンカレ座標を算出するので、時刻に依存しない脈拍間隔の分布を算出することができる。
【0018】
前記脈拍間隔ポアンカレ算出部は、前記脈拍間隔のポアンカレ座標を、予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出し、外部からの入力により、前記第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部をさらに備え、前記脈拍間隔ポアンカレ算出部は、前記脈拍数可変部の設定する新たな第1脈拍数を用いて脈拍間隔のポアンカレ座標を算出することが好ましい。
【0019】
脈拍間隔のポアンカレ座標を算出する脈拍数を可変できるので、所望のデータ数での脈拍間隔のポアンカレ座標を算出することができる。
【0020】
前記脈拍間隔ポアンカレ算出部の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標を表示する表示部をさらに備えることが好ましい。
【0021】
脈拍間隔のポアンカレ座標を表示することができるので、時刻に依存しない脈拍間隔の分布を表示することができる。
【0022】
前記脈拍間隔ポアンカレ算出部の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈拍間隔統計処理部をさらに備えることが好ましい。
【0023】
ポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出することができるので、時刻に依存しない脈拍間隔の分布の統計値を算出することができる。
【0024】
前記脈拍間隔ポアンカレ算出部の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出する脈拍間隔分布算出部をさらに備えることが好ましい。
【0025】
脈拍間隔のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出すれば、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布が狭まったことを検出できる。
【0026】
前記脈拍間隔分布算出部は、脈拍間隔ポアンカレ算出部の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標の予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出することが好ましい。
【0027】
予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出するので、脈拍間隔の診断に有用な座標範囲内での変化幅を検出することができる。
【0028】
また、本発明に係る脈波診断装置は、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出部と、前記光電脈波検出部の検出する脈波の脈波振幅を算出する脈波振幅算出部と、前記脈波振幅算出部の算出する脈波振幅が所定の大きさ以上か否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0029】
光電センサを用い、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する。脈波振幅算出部が脈波振幅を算出するので、長時間にわたる脈波の変動を検出することができる。さらに、光電センサを用いて血管の容積変化を検出できるので、脈波振幅を算出することによって血管のスティフネス等の血管の状態の変化を検出することができる。
【0030】
前記脈波振幅算出部は、前記光電脈波検出部の検出する脈波の脈波振幅の平均値を、予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出し、外部からの入力により、前記第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部をさらに備え、前記脈波振幅算出部は、前記脈拍数可変部の設定する新たな第1脈拍数を用いて脈波振幅の平均値を算出することが好ましい。
【0031】
脈波振幅の平均値を算出する脈拍数を可変できるので、所望のデータ数での脈波振幅の変動を算出することができる。
【0032】
前記脈波振幅算出部の算出する脈波振幅の時間推移か、又は、前記脈波振幅算出部の算出する脈波振幅の平均値の時間推移を表示する表示部をさらに備えることが好ましい。
【0033】
脈波振幅の時間推移又は脈波振幅の平均値の時間推移を表示することができるので、長時間にわたる脈波振幅の変動を表示することができる。
【0034】
前記脈波振幅算出部の算出する平均値のうち特定の2つの平均値の比を算出する脈波振幅比算出部をさらに備えることが好ましい。
【0035】
脈波振幅算出部の算出する2つの脈波振幅の平均値の比を算出するので、2つの脈波振幅の平均値の増減を判定することができる。
【0036】
また、本発明に係る脈波診断装置は、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出部と、前記光電脈波検出部の検出する脈波の1拍ごとの脈波振幅を算出し、連続して算出された2つの前記脈波振幅同士で形成される直交座標平面上での前記脈波振幅の点をポアンカレ座標として1拍ごとに算出する脈波振幅ポアンカレ算出部と、を備えることを特徴とする。
【0037】
光電センサを用い、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する。脈波振幅ポアンカレ算出部が脈波振幅のポアンカレ座標を算出するので、時刻に依存しない脈波振幅の分布を算出することができる。
【0038】
前記脈波振幅ポアンカレ算出部は、脈波振幅のポアンカレ座標を予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出し、外部からの入力により前記第1脈拍数を新たな第1脈拍数として設定する脈拍数可変部をさらに備え、前記脈波振幅ポアンカレ算出部は、前記脈拍数可変部の設定する新たな第1脈拍数を用いて脈波振幅のポアンカレ座標を算出することが好ましい。
【0039】
脈波振幅のポアンカレ座標を算出する脈拍数を可変できるので、所望のデータ数での脈波振幅のポアンカレ座標を算出することができる。
【0040】
前記脈波振幅ポアンカレ算出部の算出する脈波振幅のポアンカレ座標を表示する表示部をさらに備えることが好ましい。
【0041】
脈波振幅のポアンカレ座標を表示することができるので、時刻に依存しない脈波振幅の分布を表示することができる。
【0042】
前記脈波振幅ポアンカレ算出部の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈波振幅統計処理部をさらに備えることが好ましい。
【0043】
ポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出するので、時刻に依存しない脈波振幅の分布の統計値を算出することができる。
【0044】
前記脈波振幅ポアンカレ算出部の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出する脈波振幅分布算出部をさらに備えることが好ましい。
【0045】
脈波振幅のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出すれば、脈波振幅のポアンカレ座標の分布が狭まったことを検出できる。
【0046】
前記脈波振幅分布算出部は、前記脈波振幅ポアンカレ算出部の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出することが好ましい。
【0047】
予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出するので、脈波振幅の診断に有用な座標範囲内での変化幅を検出することができる。
【0048】
前記光電脈波検出部は、人体の外耳への装着機構をさらに備えることが好ましい。
【0049】
装着機構を備えるので、光電脈波検出部を外耳に装着し、外耳の脈波を検出することができる。
【0050】
前記光電脈波検出部は、検出する脈波を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することが好ましい。
【0051】
光電脈波検出部が500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で脈波を抽出するので、脈波の変化を精度よく識別することができる。
【0052】
本発明に係る脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出過程と、周波数成分抽出部が、前記光電脈波検出過程で検出した脈波の1拍ごとの脈拍間隔を抽出し、前記脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出する周波数成分抽出過程と、を有することを特徴とする。
【0053】
光電センサを用い、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する。周波数成分抽出部が脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出するので、長時間にわたる脈波の変動を検出することができる。
【0054】
前記周波数成分抽出過程において、前記周波数成分抽出部が、前記脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を、予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに抽出し、脈拍数可変部が、外部からの入力により、前記第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変過程を前記周波数成分抽出過程の前にさらに有し、前記周波数成分抽出過程において、前記周波数成分抽出部が、前記脈拍数可変過程で設定した新たな第1脈拍数を用いて脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出することが好ましい。
【0055】
ゆらぎを算出する脈拍数を可変できるので、所望のデータ数での脈拍間隔の変動を算出することができる。
【0056】
表示部が、前記周波数成分抽出過程で抽出したゆらぎの周波数成分をスペクトル表示する表示過程をさらに有することが好ましい。
【0057】
ゆらぎの周波数成分をスペクトル表示することができるので、長時間にわたる脈拍間隔の変動を表示することができる。
【0058】
周波数成分比算出部が、前記周波数成分抽出過程で抽出したゆらぎの周波数成分のうち特定の2つの周波数の周波数成分の比を算出する周波数成分比算出過程をさらに有することが好ましい。
【0059】
特定の2つの周波数の周波数成分の比を算出するので、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分の変動を算出することができる。
【0060】
前記周波数成分比算出過程において、前記周波数成分比算出部が、前記周波数成分抽出過程で抽出した周波数成分のうち0.1Hz付近と0.3Hz付近との周波数成分の比を算出することが好ましい。
【0061】
0.1Hz付近と0.3Hz付近との周波数成分の比の変化を算定することができる。0.1Hz付近と0.3Hz付近との周波数成分の比の変化は精神的ストレスの判定に役立つとされているので、精神的ストレスの推定に資することができる。
【0062】
また、本発明に係る脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出過程と、脈拍間隔ポアンカレ算出部が、前記光電脈波検出過程で検出した脈波の1拍ごとの脈拍間隔を算出し、連続して算出された2つの前記脈拍間隔同士で形成される直交座標平面上での前記脈拍間隔の点をポアンカレ座標として算出する脈拍間隔ポアンカレ算出過程と、を有することを特徴とする。
【0063】
光電センサを用い、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する。脈拍間隔ポアンカレ算出部が脈拍間隔のポアンカレ座標を算出するので、時刻に依存しない脈拍間隔の分布を算出することができる。
【0064】
前記脈拍間隔ポアンカレ算出過程において、前記脈拍間隔ポアンカレ算出部が、前記脈拍間隔のポアンカレ座標を、予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出し、脈拍数可変部が、外部からの入力により、前記第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変過程を前記脈拍間隔ポアンカレ算出過程の前にさらに有し、前記脈拍間隔ポアンカレ算出過程において、前記脈拍間隔ポアンカレ算出部が、前記脈拍数可変過程で設定した新たな第1脈拍数を用いて脈拍間隔のポアンカレ座標を算出することが好ましい。
【0065】
脈拍間隔のポアンカレ座標を算出する脈拍数を可変できるので、所望のデータ数での脈拍間隔のポアンカレ座標を算出することができる。
【0066】
表示部が、前記脈拍間隔ポアンカレ算出過程で算出した脈拍間隔のポアンカレ座標を表示するポアンカレプロット表示過程をさらに有することが好ましい。
【0067】
脈拍間隔のポアンカレ座標を表示することができるので、時刻に依存しない脈拍間隔の分布を表示することができる。
【0068】
脈拍間隔統計処理部が、前記脈拍間隔ポアンカレ算出過程で算出した脈拍間隔のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈拍間隔統計処理過程をさらに有することが好ましい。
【0069】
ポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出することができるので、時刻に依存しない脈拍間隔の分布の統計値を算出することができる。
【0070】
前記脈拍間隔分布算出部が、前記脈拍間隔ポアンカレ算出部の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出する脈拍間隔分布算出過程をさらに有することが好ましい。
【0071】
脈拍間隔のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出すれば、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布が狭まったことを検出できる。
【0072】
前記脈拍間隔分布算出過程において、前記脈拍間隔分布算出部が、前記脈拍間隔ポアンカレ算出部の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標の予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出することが好ましい。
【0073】
予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出するので、脈拍間隔の診断に有用な座標範囲内での変化幅を検出することができる。
【0074】
また、本発明に係る脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出過程と、脈波振幅算出部が、前記光電脈波検出過程で検出した脈波の脈波振幅を算出する脈波振幅算出過程と、判定部が、前記脈波振幅算出過程で算出した脈波振幅が所定の大きさ以上か否かを判定する判定過程と、を有することを特徴とする。
【0075】
光電センサを用い、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する。脈波振幅算出部が脈波振幅を算出するので、長時間にわたる脈波の変動を検出することができる。さらに、光電センサを用いて血管の容積変化を検出できるので、脈波振幅を算出することによって血管のスティフネス等の血管の状態の変化を検出することができる。
【0076】
前記脈波振幅算出過程において、前記脈波振幅算出部が、前記光電脈波検出過程で検出した脈波の脈波振幅の平均値を、予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出し、脈拍数可変部が、外部からの入力により、前記第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変過程を前記脈波振幅算出過程の前にさらに有し、前記脈波振幅算出過程において、前記脈波振幅算出部が、前記脈拍数可変過程で設定した新たな第1脈拍数を用いて脈波振幅の平均値を算出することが好ましい。
【0077】
脈波振幅の平均値を算出する脈拍数を可変できるので、所望のデータ数での脈波振幅の変動を算出することができる。
【0078】
表示部が、前記脈波振幅算出過程で算出された脈波振幅の時間推移か、又は、前記脈波振幅算出過程で算出された脈波振幅の平均値の時間推移を表示する表示過程をさらに有することが好ましい。
【0079】
脈波振幅の時間推移又は脈波振幅の平均値の時間推移を表示することができるので、長時間にわたる脈波振幅の変動を表示することができる。
【0080】
脈波振幅比算出部が、前記脈波振幅算出過程で算出した平均値のうち特定の2つの平均値の比を算出する脈波振幅比算出過程をさらに有することが好ましい。
【0081】
脈波振幅算出部の算出する2つの脈波振幅の平均値の比を算出するので、2つの脈波振幅の平均値の増減を判定することができる。
【0082】
また、本発明に係る脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出過程と、脈波振幅ポアンカレ算出部が、前記光電脈波検出過程で検出した脈波の1拍ごとの脈波振幅を算出し、連続して算出された2つの前記脈波振幅同士で形成される直交座標平面上での前記脈波振幅の点をポアンカレ座標として1拍ごとに算出する脈波振幅ポアンカレ算出過程と、を有することを特徴とする。
【0083】
光電センサを用い、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する。脈波振幅ポアンカレ算出部が脈波振幅のポアンカレ座標を算出するので、時刻に依存しない脈波振幅の分布を算出することができる。
【0084】
前記脈波振幅ポアンカレ算出過程において、前記脈波振幅ポアンカレ算出部が、前記ポアンカレ座標を予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出し、脈拍数可変部が、外部からの入力により前記第1脈拍数を新たな第1脈拍数として設定する脈拍数可変過程を前記脈波振幅ポアンカレ算出過程の前にさらに有し、前記脈波振幅ポアンカレ算出過程において、前記脈波振幅ポアンカレ算出部が、前記脈拍数可変過程で設定する新たな第1脈拍数を用いて脈波振幅のポアンカレ座標を算出することが好ましい。
【0085】
脈波振幅のポアンカレ座標を算出する脈拍数を可変できるので、所望のデータ数での脈波振幅のポアンカレ座標を算出することができる。
【0086】
表示部が、前記脈波振幅ポアンカレ算出部の算出する脈波振幅のポアンカレ座標を表示する表示過程をさらに有することが好ましい。
【0087】
脈波振幅のポアンカレ座標を表示することができるので、時刻に依存しない脈波振幅の分布を表示することができる。
【0088】
脈波振幅統計処理部が、前記脈波振幅ポアンカレ算出過程で算出した脈波振幅のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈波振幅統計処理過程をさらに有することが好ましい。
【0089】
ポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出するので、時刻に依存しない脈波振幅の分布の統計値を算出することができる。
【0090】
前記脈波振幅分布算出部が、前記脈波振幅ポアンカレ算出部の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出する脈波振幅分布算出過程をさらに有することが好ましい。
【0091】
脈波振幅のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出すれば、脈波振幅のポアンカレ座標の分布が狭まったことを検出できる。
【0092】
前記脈波振幅分布算出過程において、前記脈波振幅分布算出部が、前記脈波振幅ポアンカレ算出部の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出することが好ましい。
【0093】
予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出するので、脈波振幅の診断に有用な座標範囲内での変化幅を検出することができる。
【0094】
前記光電脈波検出過程において、前記光電脈波検出部が、検出する脈波を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することが好ましい。
【0095】
光電脈波検出部が500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で脈波を抽出するので、脈波の変化を精度よく識別することができる。
【発明の効果】
【0096】
本発明によれば、光電センサを用いて脈波を検出し、検出した脈波の脈拍間隔の変動又は脈波振幅の変動を算出するので、長時間にわたる脈波の変動を検出することのできる脈波診断装置及び脈波診断装置制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0098】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る脈波診断装置の構成概略図である。図1に示す脈波診断装置91は、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出部11と、光電脈波検出部11の検出した脈波1の1拍ごとの脈拍間隔を算出し、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出する周波数成分抽出部12と、を備えることを特徴とする。
【0099】
脈波診断装置91は、外部からの入力により、第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部13と、周波数成分抽出部12の抽出するゆらぎの周波数成分をスペクトル表示する表示部14と、周波数成分抽出部12の抽出するゆらぎの周波数成分のうち特定の2つの周波数の周波数成分の比を算出する周波数成分比算出部15と、をさらに備えていてもよい。また、所定時刻に光電脈波検出部11に脈波の検出を始めさせ、所定時刻に光電脈波検出部11に脈波の検出を終了させるタイマー16と、周波数成分比算出部15の算出する周波数成分の比があらかじめ定められた閾値以上であるか否かを判定する判定部17と、をさらに備えていてもよい。
【0100】
光電脈波検出部11は、動脈を透過した透過光を検出するものである。例えば、透過型の光電センサである。透過型の光電センサとしては、例えば、発光素子と、前記発光素子から出射された光が被検者の一部を透過した透過光を受光する受光素子とを用いることができる。また、光電脈波検出部11は、動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出するものである。例えば、反射型の光電センサである。反射型の光電センサとしては、例えば、発光素子と、前記発光素子から出射された光が被検者の一部で反射された反射光を受光する受光素子とを備えるものである。発光素子としては、例えば、LED(半導体発光素子)又は半導体レーザを用いることができる。発光素子の出射する光の波長は、例えば、ヘモグロビンで吸収される波長や、血管壁で散乱される波長とすることができる。受光素子としては、例えば、フォトダイオード又はフォトトランジスタを用いることができる。発光素子、受光素子とも複数有してもよい。光電センサを用いて脈波を検出することにより、被検体の振動の影響の少ない脈波検出ができる。ここで、被検体とは、例えば、耳介101である。また、末梢血管での脈波検出の精度を向上することができる。
【0101】
光電脈波検出部11は、人体の外耳103への装着機構31をさらに備えることが好ましい。装着機構31としては、例えば、挟持する機構を用いることができる。また、人体の外耳道102の内壁を押圧することによって脱離を防ぐ機構であってもよい。また、装着機構31は、耳介101の上部に掛ける機構を用いてもよい。また、外耳道102に挿入する機構を用いてもよい。このように、光電脈波検出部11が装着機構31を備えれば、外耳103の脈波を検出することができる。
【0102】
光電脈波検出部11は、検出する脈波1を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することが好ましい。脈波には100Hzまでの脈波の周波数成分が含まれている。よって、ナイキスト条件から、サンプリング間隔を5msec以下とすることによって、脈波を精度よく検出することができる。500μsec未満とすると、脈波と無関係の微細なノイズを検出する可能性がある。さらに、光電脈波検出部11は、脈波1を1msecのサンプリング間隔で抽出することが好ましい。500μsec以上1msec以下であれば、脈波の微細な変動を検出することができる。このように、光電脈波検出部11のサンプリング間隔が500μsec以上5msec以下であれば、光電脈波検出部11の検出した脈波1を精度よく検出することができる。
【0103】
周波数成分抽出部12の構成について図2を用いて説明する。図2は、光電脈波検出部の検出する脈波の一例を示す模式図である。横軸は時間、縦軸は光電脈波検出部11の出力する脈波1の信号出力を示す。図2に示す脈波信号出力は、山41a、谷42a、山41b、谷42b、山41c、谷42c、山41d及び谷42dが連続している。
【0104】
周波数成分抽出部12は、光電脈波検出部11の検出した脈波1の1拍ごとの脈拍間隔を算出するものである。脈拍間隔は、例えば、隣接する山41同士の時間間隔43(R−R間隔)である。また、脈拍間隔は、隣接する谷42同士の時間間隔(P−P間隔)としてもよい。又、脈拍間隔は、脈波の立ち上がり点の間隔としてもよい。又、脈拍間隔は、脈波が予め定めた閾値を超える時点の間隔としてもよい。
【0105】
さらに、図1に示す周波数成分抽出部12は、算出した脈拍間隔から、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出するものである。図3は、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分の一例を示すグラフである。横軸が周波数、縦軸が周波数成分である。ここで、周波数成分は、例えばパワースペクトル密度とすることができる。
【0106】
さらに、周波数成分抽出部12は、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を、予め定められた第1脈拍数で抽出することが好ましい。第1脈拍数とは、予め定められた脈拍数であり、例えば脈拍間隔のゆらぎを算出するデータ数である。例えば、256〜512拍程度の連続したデータである。さらに、第1脈拍数は、脈拍数可変部13によって増減可能であることが好ましい。第1脈拍数が増減可能であれば、脈拍間隔のゆらぎを算出する時間幅を可変できるので、所望のデータ数での脈拍間隔の変動を算出することができる。さらに、周波数成分抽出部12は、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を、予め定められた第2脈拍数ごとに抽出することが好ましい。第2脈拍数とは、予め定められた脈拍数であり、例えば脈拍間隔のゆらぎを算出するタイミングである。第2脈拍数は、例えば、1拍とすることができる。また、10分程度の間にわたり検出される脈拍数としてもよい。例えば、500拍以上1000拍以下の範囲内のいずれかの脈拍数とすることができる。また、60分程度の間にわたり検出される脈拍数としてもよい。また、第2脈拍数は、第1脈拍数と同一であってもよい。また、第2脈拍数も可変であってもよい。例えば、1000拍と6000拍となどの所定の脈拍数が数段にわたり切り替えられることが好ましい。拍間隔のゆらぎの周波数成分を第2脈拍数ごとに算出することができるので、最新のゆらぎの周波数成分を第2脈拍数ごとに取得することができる。
【0107】
脈波診断装置91は、外部からの入力により、第1脈拍数を増加又は減少して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部13をさらに備えることが好ましい。脈拍数可変部13は、例えば、外部から入力された数値を新たな第1脈拍数として設定するものである。又、脈拍数可変部13は、複数の脈拍数を記憶しているテーブルを格納しており、外部からの入力信号によりテーブルに記憶されている脈拍数のいずれかを選択し、新たな第1脈拍数として設定するものでもよい。
【0108】
図1に示す脈波診断装置91は、周波数成分抽出部12の抽出するゆらぎの周波数成分のうち特定の2つの周波数の周波数成分の比を算出する周波数成分比算出部15をさらに備えることが好ましい。特定の2つの周波数とは、あらかじめ定められた周波数である。例えば、0.1Hzと0.3Hzである。特定の2つの周波数は、0.1Hzと0.3Hzに限定するものではなく、0.1Hz付近と0.3Hz付近であってもよい。0.1Hz付近と0.3Hz付近とは、例えば、0.05〜0.15Hzの範囲のいずれかの周波数と、0.2〜0.4Hzの範囲のいずれかの周波数であってもよい。このように、0.1Hz付近と0.3Hz付近との周波数成分の比の変化を算定することができる。0.1Hz付近と0.3Hz付近との周波数成分の比の変化は精神的ストレスの判定に役立つとされているので、精神的ストレスの推定に資することができる。
【0109】
図1に示す脈波診断装置91は、所定時刻に光電脈波検出部11に脈波の検出を始めさせ、所定時刻に光電脈波検出部11に脈波の検出を終了させるタイマー16をさらに備えていてもよい。
【0110】
図1に示す脈波診断装置91は、周波数成分比算出部15の算出する脈拍間隔の周波数成分があらかじめ定められた閾値以上であるか否かを判定する判定部17を備えていてもよい。この場合、あらかじめ定められた閾値とは、例えば、ある時間安静を保ったときに検出された脈波の脈拍間隔の周波数成分とすることができる。閾値は、被検者に応じて可変であることが好ましい。例えば、使用する被検者の脈拍間隔の周波数成分を予め算出し、メモリーに記憶させることができる。判定部17は、メモリーから閾値を取得する。このように、判定部17が、周波数成分比算出部15の算出する脈拍間隔の周波数成分の変動を、記憶されている脈拍間隔の周波数成分を基準に判定すれば、医師又は被検者は、精神的ストレスの有無又はその強度を推定することができる。
【0111】
脈波診断装置91は、周波数成分抽出部12の抽出する脈拍間隔のゆらぎの周波数成分をスペクトル表示する表示部14をさらに備えることが好ましい。表示部14としては、例えば、液晶表示装置又はLEDディスプレイを用いることができる。表示部14は、さらに、脈拍数可変部13の設定した新たな第1脈拍数を表示してもよい。又、第2脈拍数を表示してもよい。又、周波数成分比算出部15の算出する特定の2つの周波数の周波数成分の比をさらに表示してもよい。又、判定部17の判定結果を表示してもよい。このように、表示部14は、ゆらぎの周波数成分をスペクトル表示することができるので、長時間にわたる脈拍間隔の変動を表示することができる。
【0112】
次に、脈波診断装置91の動作について説明する。本実施形態に係る脈波診断装置91を用いた脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部11が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波1を検出する光電脈波検出過程と、周波数成分抽出部12が、光電脈波検出過程で検出した脈波の1拍ごとの脈拍間隔を抽出し、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出する周波数成分抽出過程と、を有する。
【0113】
脈波診断装置91を用いた脈波診断装置制御方法は、脈拍数可変部13が、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を算出する予め定められた第1脈拍数を、外部からの入力により増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変過程を周波数成分抽出過程の前にさらに有していてもよい。又、表示部14が、周波数成分抽出過程で抽出したゆらぎの周波数成分をスペクトル表示する表示過程をさらに有していてもよい。周波数成分抽出過程の後に周波数成分比算出過程をさらに有していてもよいし、周波数成分比算出過程の後に判定過程をさらに有していてもよい。
【0114】
光電脈波検出過程では、光電脈波検出部11が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波1を検出する。脈波1の検出は、例えば、光電脈波検出部11へ信号が入力されたのを受けて脈波1の検出を開始し、再度信号が入力されたのを受けて脈波1の検出を終了する。また、脈波診断装置91がタイマー16を備え、タイマー16からの入力信号によって脈波1の検出を開始又は終了してもよい。
【0115】
光電脈波検出過程において、光電脈波検出部11が、検出する脈波1を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することが好ましい。光電脈波検出部11が500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で脈波1を抽出するので、ナイキスト条件から、サンプリング間隔を5msec以下とすることによって、脈波1を精度よく検出することができる。さらに、光電脈波検出部11は、脈波1を1msecのサンプリング間隔で抽出することが好ましい。
【0116】
周波数成分抽出過程では、周波数成分抽出部12が、光電脈波検出過程で検出した脈波の1拍ごとの脈拍間隔を抽出し、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出する。周波数成分抽出部12が脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出するので、脈波1の変動を検出することができる。
【0117】
脈拍間隔のゆらぎの周波数成分は、精神的ストレスが印加されないときではピークが2つであるのに対し、精神的ストレスが印加されるとピークが1つになるとされている。脈拍間隔のゆらぎの周波数成分のピークが2つから1つになったことを用いて、精神的ストレスの判定に資することができる。例えば、表示部14を備え、表示部14がゆらぎの周波数成分をスペクトル表示すれば、ピークが2つから1つになったか、ピークのいずれかが小さくなったことを視認することができる。また、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分をコンピュータへ転送し、コンピュータで脈拍間隔のゆらぎの周波数成分のピークの1つが小さくなったことを判定してもよい。このように、周波数成分抽出部12が脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を算出することによって、精神的ストレスの推定に資することができる。
【0118】
周波数成分抽出過程において、周波数成分抽出部12が、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を、予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに抽出することが好ましい。さらに、周波数成分抽出過程において、周波数成分抽出部12が、脈拍数可変過程で設定した新たな第1脈拍数を用いて脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出することが好ましい。第1脈拍数及び第2脈拍数は、前述の周波数成分抽出部12で説明したものと同様とすることができる。このように、ゆらぎを算出する脈拍数を可変できるので、所望のデータ数での脈拍間隔の変動を算出することができる。
【0119】
脈拍数可変過程では、脈拍数可変部13が、外部からの入力により、第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する。外部から脈拍数可変部13に信号が入力されたときに脈拍数可変過程が行われ、新たな第1脈拍数を設定する。その後、光電脈波検出部11の検出した脈波1が周波数成分抽出部12に入力されると、周波数成分抽出部12が新たな第1脈拍数を用いて脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出する。
【0120】
周波数成分比算出過程では、周波数成分比算出部15が、周波数成分抽出過程で抽出したゆらぎの周波数成分のうち特定の2つの周波数の周波数成分の比を算出する。特定の2つの周波数の周波数成分の比を算出するので、いずれか一方のみの周波数の周波数成分が著しく減少したことを判定することができる。これにより、脈拍間隔のゆらぎの周波数成分の変動を算出することができる。
【0121】
また、周波数成分比算出過程において、周波数成分比算出部15が、周波数成分抽出過程で抽出した周波数成分のうち0.1Hz付近と0.3Hz付近との周波数成分の比を算出することが好ましい。0.1Hz付近と0.3Hz付近との周波数成分の比の変化は精神的ストレスの判定に役立つとされているので、精神的ストレスの推定に資することができる。
【0122】
判定過程では、判定部17が、周波数成分比算出過程において周波数成分比算出部15の算出する脈拍間隔の周波数成分があらかじめ定められた閾値以上であるか否かを判定する。
【0123】
表示部14が、周波数成分抽出過程で抽出したゆらぎの周波数成分をスペクトル表示する表示過程をさらに有することが好ましい。スペクトル表示とは、本実施形態では、周波数ごとの周波数成分を表示するグラフ表示である。表示過程は、算出された脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を入力されたときは常時表示することが好ましい。また、外部から信号が入力されたときに表示してもよい。このように、表示過程を有すれば、表示部14がゆらぎの周波数成分をスペクトル表示することができるので、長時間にわたる脈拍間隔の変動を表示することができる。
【0124】
以上説明したように、本実施形態に係る脈波診断装置91及び脈波診断装置91を用いた脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部11が光電センサを用いて外耳103の脈波1を検出することができるので、長時間にわたり脈波を検出算出することができる。さらに、周波数成分抽出部12が脈拍間隔のゆらぎの周波数成分を抽出することができるので、脈波の変動を検出することができる。よって、脈波診断装置91及び脈波診断装置91を用いた脈波診断装置制御方法は、長時間にわたる脈波の変動を検出することができる。
【0125】
(実施形態2)
図4は、本実施形態に係る脈波診断装置の構成概略図である。図4に示す脈波診断装置92は、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出部11と、光電脈波検出部11の検出する脈波の1拍ごとの脈拍間隔を算出し、連続して算出された2つの脈拍間隔同士で形成される直交座標平面上での脈拍間隔の点をポアンカレ座標として算出する脈拍間隔ポアンカレ算出部21と、を備える。
【0126】
脈波診断装置92は、外部からの入力により、第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部13と、脈拍間隔ポアンカレ算出部21の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標を表示する表示部14と、脈拍間隔ポアンカレ算出部21の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈拍間隔統計処理部23と、をさらに備えていてもよい。また、所定時刻に光電脈波検出部11に脈波の検出を始めさせ、所定時刻に光電脈波検出部11に脈波の検出を終了させるタイマー16と、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布があらかじめ定められた座標範囲内であるか否かを判定する判定部24と、をさらに備えていてもよい。
【0127】
光電脈波検出部11は、動脈を透過した透過光を検出するものである。また、光電脈波検出部11は、動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出するものである。例えば、前述の実施形態1と同様のものを用いることができる。光電脈波検出部11は、人体の外耳103への装着機構31をさらに備えることが好ましい。また、光電脈波検出部11は、検出する脈波1を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することが好ましい。
【0128】
脈拍間隔ポアンカレ算出部21は、光電脈波検出部11の検出する脈波の1拍ごとの脈拍間隔を算出するものである。光電脈波検出部11の検出する脈波の1拍ごとの脈拍間隔を算出する構成は、前述の実施形態1で説明した周波数成分抽出部12と同様のものを用いることができる。
【0129】
脈拍間隔ポアンカレ算出部21は、さらに、連続して算出された2つの脈拍間隔同士で形成される直交座標平面上での脈拍間隔の点をポアンカレ座標として算出するものである。図5は、脈拍間隔の第1例を示すポアンカレプロットである。図6は、脈拍間隔の第2例を示すポアンカレプロットである。図5は、精神的ストレスの印加されていない状態での脈拍間隔の一例を示す。図6は、精神的ストレスの印加された状態での脈拍間隔の一例を示す。図5及び図6において、横軸の脈拍間隔(i)はi番目に算出された脈拍間隔、縦軸の脈拍間隔(i+1)は(i+1)番目に算出された脈拍間隔を示す。脈拍間隔のポアンカレ座標は、例えばこの座標平面上の座標とすることができる。なお、脈拍間隔のポアンカレ座標は図5、図6に示す座標系に限定されるものではない。例えば、縦軸及び横軸の目盛が異なっていてもよい。
【0130】
脈拍間隔のポアンカレ座標を算出した場合、精神的ストレスが印加されていなければ、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布は図5に示すような楕円形若しくは長円形又はこれらに近い形状となる。しかし、精神的ストレスが印加されると、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布は図6に示すような円に近い形状となる。よって、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布の形状に基づいて精神的ストレスの有無又はその強度を推定することができる。また、このように、脈拍間隔のポアンカレ座標を算出すれば、医師又は被検者は、精神的ストレスの有無又はその強度を推定することができる。
【0131】
脈拍間隔ポアンカレ算出部21は、脈拍間隔のポアンカレ座標を、予め定められた第1脈拍数で算出することが好ましい。さらに、脈拍間隔ポアンカレ算出部21は、脈拍間隔のポアンカレ座標を、予め定められた第2脈拍数ごとに算出することが好ましい。第1脈拍数及び第2脈拍数は、前述の実施形態1の周波数成分抽出部12で説明したものと同様とすることができる。脈拍間隔のポアンカレ座標を第2脈拍数ごとに算出することができるので、最新のポアンカレ座標を第2脈拍数ごとに取得することができる。
【0132】
脈波診断装置92は、外部からの入力により、第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部13をさらに備えることが好ましい。脈拍数可変部13は、前述の実施形態1で説明した脈拍数可変部13と同様のものを用いることができる。
【0133】
図4に示す脈波診断装置92は、脈拍間隔ポアンカレ算出部21の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈拍間隔統計処理部23をさらに備えることが好ましい。脈拍間隔のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出することができれば、時刻に依存しない脈拍間隔の分布の統計値を算出することができる。
【0134】
脈拍間隔統計処理部23に代えて、脈拍間隔ポアンカレ算出部21の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標の座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出する脈拍間隔分布算出部が配置されていてもよい。図12は、脈拍間隔の第3例を示すポアンカレプロットである。横軸の脈拍間隔(i)はi番目に算出された脈拍間隔、縦軸の脈拍間隔(i+1)は(i+1)番目に算出された脈拍間隔を示す。ポアンカレ座標上にY=Xを示す直線45と、Y=X+aを示す直線46と、Y=X−aを示す直線47とが示されている。この場合、脈拍間隔分布算出部は、脈拍間隔のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出する。例えば、ポアンカレ座標の最大と最小の差を算出する。さらに、脈拍間隔分布算出部は、予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅48を算出することが好ましい。予め定められた座標範囲内とは、例えば、図中に示す直線46及び直線47で囲まれた座標範囲である。このように、最大及び最小の変化幅48を算出すれば、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布が狭まったことを検出できる。さらに、脈拍間隔分布算出部は、脈拍間隔のポアンカレ座標が直線46及び直線47で囲まれる座標範囲内にあるか否かを判定してもよい。また、脈拍間隔分布算出部は、直線46及び直線47で囲まれる座標範囲に入った脈拍間隔のポアンカレ座標の最大又は最小を算出するにとどまるものでもよい。
【0135】
ここで、aは、予め定められた値である。例えば、10〜20msecとすることができる。また、aは可変であることが好ましい。例えば、ある時間安静を保ったときに検出された脈波の脈拍間隔のポアンカレ座標が分布する座標範囲と、ストレス印加時に検出した脈波の脈拍間隔のポアンカレ座標が分布する座標範囲とを比較し、ストレス印加時では収まるが安静時では収まらないポアンカレ座標の座標範囲からaを定めることが好ましい。
【0136】
また、X軸データとY軸データの積の最大値から最小値を差し引いてもよい。この場合、前述の図5及び図6に示す脈拍間隔(i)及び脈拍間隔(i+1)を用いて表すと、(脈拍間隔(i)×脈拍間隔(i+1))max−(脈拍間隔(i)×脈拍間隔(i+1))minとなる。このような算出を行うことでも、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布が狭まったことを検出できる。このように、ポアンカレ座標の分布範囲を算出すれば、医師又は被検者は、精神的ストレスの有無又はその強度を推定することができる。
【0137】
図4に示す脈波診断装置92は、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布があらかじめ定められた座標範囲内であるか否かを判定する判定部24をさらに備えることが好ましい。この場合、あらかじめ定められた座標範囲とは、例えば、ある時間安静を保ったときに検出された脈波の脈拍間隔のポアンカレ座標とすることができる。あらかじめ定められた座標範囲は、前述の図12で説明した座標範囲と同様の座標範囲を用いることができる。あらかじめ定められた座標範囲は、被検者に応じて可変であることが好ましい。例えば、被検者の脈拍間隔のポアンカレ座標を予め算出し、メモリーに記憶させることができる。判定部24は、メモリーからあらかじめ定められた座標範囲を取得する。このように、判定部24が脈拍間隔のポアンカレ座標の分布があらかじめ定められた座標範囲内であるか否かを判定すれば、医師又は被検者は、精神的ストレスの有無又はその強度を推定することができる。
【0138】
図4に示す脈波診断装置92は、脈拍間隔ポアンカレ算出部21の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標を表示する表示部14をさらに備えることが好ましい。表示部14としては、例えば、前述の実施形態1で説明した表示部14と同様のものを用いることができる。表示部14は、さらに、脈拍数可変部13の設定した新たな第1脈拍数を表示してもよい。又、第2脈拍数を表示してもよい。又、脈拍間隔統計処理部23の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を表示してもよい。このように、表示部14は、脈拍間隔のポアンカレ座標を表示することができるので、時刻に依存しない脈拍間隔の分布を表示することができる。
【0139】
次に、脈波診断装置92の動作について説明する。本実施形態に係る脈波診断装置92を用いた脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部11が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出過程と、脈拍間隔ポアンカレ算出部21が、光電脈波検出過程で検出した脈波の1拍ごとの脈拍間隔を算出し、連続して算出された2つの脈拍間隔同士で形成される直交座標平面上での脈拍間隔の点をポアンカレ座標として算出する脈拍間隔ポアンカレ算出過程と、を有する。
【0140】
脈波診断装置92を用いた脈波診断装置制御方法は、表示部14が、脈拍間隔ポアンカレ算出過程で算出した脈拍間隔のポアンカレ座標を表示するポアンカレプロット表示過程をさらに有していてもよい。又、脈拍間隔統計処理部23が、脈拍間隔ポアンカレ算出過程で算出した脈拍間隔のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈拍間隔統計処理過程をさらに有していてもよい。又、脈拍数可変過程を脈拍間隔ポアンカレ算出過程の前にさらに有していてもよい。又、脈拍間隔ポアンカレ算出過程の後に脈拍間隔統計処理過程をさらに有していてもよい。又、脈拍間隔ポアンカレ算出過程の後に判定過程をさらに有していてもよい。
【0141】
光電脈波検出過程では、光電脈波検出部11が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する。光電脈波検出過程は前述の実施形態1で説明した光電脈波検出過程と同様としてもよい。又、光電脈波検出過程において、光電脈波検出部11が、検出する脈波1を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することが好ましい。
【0142】
脈拍間隔ポアンカレ算出過程では、脈拍間隔ポアンカレ算出部21が、光電脈波検出過程で検出した脈波の1拍ごとの脈拍間隔を算出する。
【0143】
さらに、脈拍間隔ポアンカレ算出過程では、連続して算出された2つの脈拍間隔同士で形成される直交座標平面上での脈拍間隔の点をポアンカレ座標として算出する。
【0144】
脈拍間隔ポアンカレ算出過程において、脈拍間隔ポアンカレ算出部21が、脈拍間隔のポアンカレ座標を、予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出することが好ましい。さらに、脈拍間隔ポアンカレ算出過程において、脈拍間隔ポアンカレ算出部21が、脈拍数可変過程で設定した新たな第1脈拍数を用いて脈拍間隔のポアンカレ座標を算出することが好ましい。第1脈拍数及び第2脈拍数は、前述の実施形態1の周波数成分抽出部12で説明したものと同様とすることができる。
【0145】
脈拍数可変過程では、脈拍数可変部13が、外部からの入力により、第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する。脈拍間隔のポアンカレ座標を算出する脈拍数を増減することができるので、所望のデータ数での脈拍間隔のポアンカレ座標を算出することができる。
【0146】
脈拍間隔統計処理過程では、脈拍間隔統計処理部23が、脈拍間隔ポアンカレ算出過程で算出したポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する。脈拍間隔統計処理過程において、脈拍間隔統計処理部23は、脈拍間隔ポアンカレ算出過程で算出したポアンカレ座標の標準偏差、中央値及び平均値を表示してもよい。脈拍間隔のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出することができるので、時刻に依存しない脈拍間隔の分布の統計値を算出することができる。
【0147】
脈拍間隔統計処理部23に脈拍間隔分布算出部が配置される場合、前記脈拍間隔統計処理過程は、脈拍間隔分布算出部が、脈拍間隔ポアンカレ算出部21の算出する脈拍間隔のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出する脈拍間隔分布算出過程となる。この場合、脈拍間隔分布算出過程では、予め定められた時間範囲内の脈拍間隔のポアンカレ座標の最大値と脈拍間隔のポアンカレ座標の最小値との差を算出する。さらに、脈拍間隔分布算出過程において、予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出することが好ましい。予め定められた座標範囲内とは、例えば、前述の図12で説明した直線46及び直線47で囲まれた座標範囲内である。このように、予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出すれば、脈拍間隔の診断に有用な座標範囲内での変化幅を検出することができる。このように、脈拍間隔のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出すれば、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布が狭まったことを検出できる。
【0148】
判定過程では、判定部24が、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布があらかじめ定められた座標範囲内であるか否かを判定する。判定過程を有することで、脈拍間隔のポアンカレ座標の分布があらかじめ定められた座標範囲内であるか否かの判定を自動化することができる。
【0149】
表示部14が、脈拍間隔ポアンカレ算出過程で算出した脈拍間隔のポアンカレ座標を表示するポアンカレプロット表示過程をさらに有することが好ましい。表示過程は、算出された脈拍間隔のポアンカレ座標を入力されたときは常時表示することが好ましい。また、外部から信号が入力されたときに脈拍間隔のポアンカレ座標を表示してもよい。表示過程において、表示部14は、例えば、予め定められた時間範囲内に算出されたポアンカレ座標を表示する。表示する時間範囲は可変であることが好ましい。このように、表示過程において、表示部14は脈拍間隔のポアンカレ座標を表示することができるので、時刻に依存しない脈拍間隔の分布を表示することができる。
【0150】
以上説明したように、本実施形態に係る脈波診断装置92及び脈波診断装置92を用いた脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部11が光電センサを用いて外耳103の脈波1を検出することができるので、長時間にわたり脈波を検出することができる。さらに、脈拍間隔ポアンカレ算出部21が脈拍間隔のポアンカレ座標を算出するので、脈波の変動を検出することができる。よって、脈波診断装置92及び脈波診断装置92を用いた脈波診断装置制御方法は、長時間にわたる脈波の変動を検出することができる。
【0151】
(実施形態3)
図7は、本実施形態に係る脈波診断装置の構成概略図である。図7に示す脈波診断装置93は、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出部11と、光電脈波検出部11の検出する脈波の脈波振幅を算出する脈波振幅算出部25と、脈波振幅算出部25の算出する脈波振幅が所定の大きさ以上か否かを判定する判定部26と、を備える。
【0152】
脈波診断装置93は、脈波振幅算出部25の算出する脈波振幅の時間推移を表示する表示部14と、脈波振幅算出部25の算出する平均値のうち特定の2つの平均値の比を算出する脈波振幅比算出部27と、外部からの入力により、第1脈拍数を増加又は減少して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部13と、をさらに備えていてもよい。また、所定時刻に光電脈波検出部11に脈波1の検出を始めさせ、所定時刻に光電脈波検出部11に脈波1の検出を終了させるタイマー16をさらに備えていてもよい。
【0153】
光電脈波検出部11は、動脈を透過した透過光を検出するものである。また、光電脈波検出部11は、動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出するものである。例えば、前述の実施形態1と同様のものを用いることができる。光電脈波検出部11は、検出する脈波1を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することが好ましい。また、光電脈波検出部11は、人体の外耳103への装着機構31をさらに備えることが好ましい。さらに、装着機構31は、光電センサを耳介101の付け根に装着することが好ましい。光電センサを耳介101の付け根に装着すれば、後耳介動脈及び迷走神経の耳介枝に近接しているため、後耳介動脈の血管状態を検出することができる。
【0154】
脈波振幅算出部25は、光電脈波検出部11の検出する脈波の脈波振幅を算出するものである。脈波振幅は、例えば、前述の図2に示す隣接する山41と谷42との信号出力の差異とすることができる。
【0155】
図8は、光電脈波検出部の検出する脈波振幅の一例を示す時系列グラフである。図8に示す脈波振幅は、点線で示す略100secの時点以降に精神的ストレスを印加したときの脈波振幅の時間推移を示す。ストレスが印加されていない状態では略1.2V以下から略1.8V以上の脈波振幅が算出されているのに対し、精神的ストレスを印加後の略200sec以降に脈波振幅が略1.2Vから略1.8Vまでの範囲内しか算出されていない。このように、精神的ストレスの印加を脈波振幅の算出によって推定することができる。これは、ストレスが加わると、「防御反応」により、脳、筋肉の血管は拡張するが、皮膚近傍や内臓の血管は収縮する。光電センサで捕らえる血管は皮膚表面に近いため、血管の収縮による脈波振幅の減少が現れる。心電は心臓を駆動するタイミング信号であるのに対し、脈波振幅は人体の血管の拡張又は収縮の影響を受けるので、脈波振幅から血管の収縮を検出すれば、精神的ストレスが印加されたことを検出することができる。
【0156】
さらに、血管が体表面に多く出ている指や外耳103のうち、指では血管運動(Vasomotion)が多く、人体からの情報が隠されてしまう。一方の外耳103では、血管運動の影響が少ないので、血管からの情報を容易に取得することができる。さらに、脈波振幅の変化は、ストレスの印加に対する応答が速いので、リアルタイムでのストレスの評価に用いることができる。
【0157】
脈波振幅算出部25は、光電脈波検出部11の検出する脈波の脈波振幅の平均値を、予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出することが好ましい。さらに、脈波振幅算出部25は、脈拍数可変部13の設定する新たな第1脈拍数を用いて脈波振幅の平均値を算出することが好ましい。第1脈拍数及び第2脈拍数は、前述の実施形態1の周波数成分抽出部12で説明したものと同様とすることができる。脈波振幅の平均値を第2脈拍数ごとに算出することができるので、最新の脈波振幅の平均値を第2脈拍数ごとに取得することができる。
【0158】
脈波診断装置93は、外部からの入力により、第1脈拍数を増加又は減少して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部13をさらに備えることが好ましい。脈拍数可変部13は、前述の実施形態1で説明した脈拍数可変部13と同様のものを用いることができる。
【0159】
脈波診断装置93は、脈波振幅算出部25の算出する平均値のうち特定の2つの平均値の比を算出する脈波振幅比算出部27をさらに備えることが好ましい。脈波振幅算出部25の算出する2つの脈波振幅の平均値の比を算出するので、2つの脈波振幅の平均値の増減を判定することができる。
【0160】
判定部26は、脈波振幅算出部25の算出する脈波振幅が所定の大きさ以上か否かを判定するものである。所定の大きさとは、あらかじめ定められた脈波振幅の大きさである。例えば、ストレスが印加されている時の脈波振幅と、ストレスが印加されていないときの脈波振幅との境界の値である。ストレスが印加されていないときの脈波振幅とは、例えば、ある時間安静を保ったときに検出された脈波の脈波振幅である。脈波振幅は個人によって大きさが異なるので、被検者ごとにあらかじめ測定し、閾値を定めることが好ましい。さらに、脈波診断装置93が脈波振幅比算出部27をさらに備える場合、判定部26は脈波振幅算出部25の算出する2つの脈波振幅の平均値の比が所定の大きさ以上か否かを判定することが好ましい。
【0161】
脈波振幅算出部25の算出する脈波振幅の時間推移を表示する表示部14をさらに備えることが好ましい。又は、脈波振幅算出部25の算出する脈波振幅の平均値の時間推移を表示する表示部14をさらに備えることが好ましい。表示部14としては、例えば、前述の実施形態1で説明したものと同様のものを用いることができる。表示部14は、脈波振幅算出部25が脈波振幅の平均値を算出する場合は、脈波振幅の平均値の時間推移を表示することが好ましい。表示部14は、さらに、脈拍数可変部13の設定した新たな第1脈拍数を表示してもよい。又、第2脈拍数を表示してもよい。又、判定部26の判定結果を表示してもよい。又、脈波振幅比算出部27の算出する特定の2つの平均値の比を表示してもよい。このように、表示部14は、脈波振幅の時間推移又は脈波振幅の平均値の時間推移を表示することができるので、時刻に依存しない脈拍間隔の分布を表示することができる。
【0162】
次に、脈波診断装置93の動作について説明する。本実施形態に係る脈波診断装置93を用いた脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部11が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出過程と、脈波振幅算出部25が、光電脈波検出過程で検出した脈波の脈波振幅を算出する脈波振幅算出過程と、判定部26が、脈波振幅算出過程で算出した脈波振幅が所定の大きさ以上か否かを判定する判定過程と、を有する。
【0163】
脈波診断装置93を用いた脈波診断装置制御方法は、脈拍数可変部13が、外部からの入力により、第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変過程を脈波振幅算出過程の前にさらに有していてもよい。又、表示部14が、脈波振幅算出過程で算出された脈波振幅の時間推移か、又は、脈波振幅算出過程で算出された脈波振幅の平均値の時間推移を表示する表示過程をさらに有していてもよい。又、脈波振幅算出過程の後に、判定過程をさらに有していてもよい。
【0164】
光電脈波検出過程では、光電脈波検出部11が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する。光電脈波検出過程は前述の実施形態1で説明した光電脈波検出過程と同様としてもよい。光電脈波検出過程において、光電脈波検出部11が、検出する脈波1を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することが好ましい。
【0165】
脈波振幅算出過程では、脈波振幅算出部25が、光電脈波検出過程で検出した脈波の脈波振幅を算出する。
【0166】
判定過程では、判定部26が、脈波振幅算出過程で算出した脈波振幅が所定の大きさ以上か否かを判定する。所定の大きさは、前述の判定部26で説明したものと同様である。判定過程は、例えば、脈波振幅が算出されるたびに行うことができる。
【0167】
脈波振幅算出過程において、脈波振幅算出部25が、光電脈波検出過程で検出した脈波の脈波振幅の平均値を、予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出することが好ましい。さらに、脈波振幅算出過程において、脈波振幅算出部25が、脈拍数可変過程で設定した新たな第1脈拍数を用いて脈波振幅の平均値を算出することが好ましい。第1脈拍数及び第2脈拍数は、前述の実施形態1の周波数成分抽出部12で説明したものと同様とすることができる。このように、脈波振幅の平均値を第2脈拍数ごとに算出することができるので、最新の脈波振幅の平均値を第2脈拍数ごとに取得することができる。
【0168】
脈拍数可変過程では、脈拍数可変部13が、外部からの入力により、第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する。脈波振幅の平均値を算出する脈拍数を可変できるので、所望のデータ数での脈波振幅の変動を算出することができる。
【0169】
脈波振幅比算出部27が、脈波振幅算出過程で算出した平均値のうち特定の2つの平均値の比を算出する脈波振幅比算出過程をさらに有することが好ましい。脈波振幅算出部25の算出する2つの脈波振幅の平均値の比を算出するので、2つの脈波振幅の平均値の増減を判定することができる。
【0170】
判定過程では、判定部26は、脈波振幅算出過程において脈波振幅算出部25の算出する脈波振幅が所定の大きさ以上か否かを判定する。所定の大きさとは、前述の判定部26で説明したとおりである。
【0171】
表示部14が、脈波振幅算出過程で算出された脈波振幅の時間推移を表示する表示過程をさらに有することが好ましい。又、表示部14が、脈波振幅算出過程で算出された脈波振幅の平均値の時間推移を表示する表示過程をさらに有することが好ましい。表示過程において表示部14が表示する脈波振幅の時間推移は、予め定められた時間範囲のものとすることができる。脈波振幅の平均値の時間推移についても同様である。このように、表示過程において、表示部14は脈波振幅の時間推移又は脈波振幅の平均値の時間推移を表示することができる。
【0172】
以上説明したように、本実施形態に係る脈波診断装置93及び脈波診断装置93を用いた脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部11が光電センサを用いて外耳103の脈波1を検出することができるので、長時間にわたり脈波を検出算出することができる。さらに、脈波振幅算出部25が脈波の脈波振幅を算出するので、脈波の変動を検出することができる。よって、脈波診断装置93及び脈波診断装置93を用いた脈波診断装置制御方法は、長時間にわたる脈波の変動を検出することができる。さらに、光電センサを用いて抹消血管の脈波を検出することができるので、血管運動が大きい場合でも、脈波振幅を算出することによって血管状態の変化を検出することができる。
【0173】
(実施形態4)
図9は、本実施形態に係る脈波診断装置の構成概略図である。図9に示す脈波診断装置94は、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出部11と、光電脈波検出部11の検出する脈波の1拍ごとの脈波振幅を算出し、連続して算出された2つの脈波振幅同士で形成される直交座標平面上での脈波振幅の点をポアンカレ座標として1拍ごとに算出する脈波振幅ポアンカレ算出部28と、を備えることを特徴とする。
【0174】
脈波診断装置94は、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標を表示する表示部14と、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈波振幅統計処理部29と、外部からの入力により、第1脈拍数を増加又は減少して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部13と、をさらに備えていてもよい。また、所定時刻に光電脈波検出部11に脈波1の検出を始めさせ、所定時刻に光電脈波検出部11に脈波1の検出を終了させるタイマー16と、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する周波数成分の比があらかじめ定められた閾値以上であるか否かを判定する判定部30と、をさらに備えていてもよい。
【0175】
光電脈波検出部11は、動脈を透過した透過光を検出するものである。また、光電脈波検出部11は、動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出するものである。例えば、前述の実施形態1と同様のものを用いることができる。光電脈波検出部11は、人体の外耳103への装着機構31をさらに備えることが好ましい。また、光電脈波検出部11は、検出する脈波1を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することが好ましい。
【0176】
脈波振幅ポアンカレ算出部28は、光電脈波検出部11の検出する脈波1の1拍ごとの脈波振幅を算出するものである。脈波振幅は、例えば、前述の図2に示す隣接する山41と谷42との信号出力の差異とすることができる。
【0177】
脈波振幅ポアンカレ算出部28は、連続して算出された2つの脈波振幅同士で形成される直交座標平面上での脈波振幅の点をポアンカレ座標として1拍ごとに算出するものである。図10は、脈波振幅の第1例を示すポアンカレプロットである。図11は、脈波振幅の第2例を示すポアンカレプロットである。図10は、精神的ストレスの印加されていない状態での脈波振幅の一例を示す。図11は、精神的ストレスの印加された状態での脈波振幅の一例を示す。図10及び図11において、横軸はi番目に算出された脈波振幅、縦軸は(i+1)番目に算出された脈波振幅を示す。脈波振幅のポアンカレ座標は、例えばこの座標平面上の座標とすることができる。なお、脈波振幅のポアンカレ座標は図10、図11に示す座標系に限定されるものではない。例えば、縦軸及び横軸の目盛が異なっていてもよい。
【0178】
脈波振幅のポアンカレ座標を算出した場合、精神的ストレスが印加されていなければ、脈波振幅のポアンカレ座標の分布は楕円形若しくは長円形又はこれらに近い形状となる。しかし、精神的ストレスが印加されると、脈波振幅のポアンカレ座標の分布は円に近くなる。よって、脈波振幅のポアンカレ座標の分布の形状に基づいて精神的ストレスの有無又はその強度を推定することができる。このように、脈波振幅のポアンカレ座標を算出すれば、医師又は被検者は、精神的ストレスの有無又はその強度を推定することができる。
【0179】
脈波振幅ポアンカレ算出部28は、脈波振幅のポアンカレ座標を予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出することが好ましい。さらに、脈波振幅ポアンカレ算出部28は、脈波振幅のポアンカレ座標を、予め定められた第2脈拍数ごとに算出することが好ましい。第1脈拍数及び第2脈拍数は、前述の実施形態1の周波数成分抽出部12で説明したものと同様とすることができる。脈波振幅のポアンカレ座標を第2脈拍数ごとに算出することができるので、脈波振幅のポアンカレ座標を第2脈拍数ごとに取得することができる。
【0180】
脈波診断装置94は、外部からの入力により、第1脈拍数を増加又は減少して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部13をさらに備えることが好ましい。脈拍数可変部13は、前述の実施形態1で説明した脈拍数可変部13と同様のものを用いることができる。
【0181】
脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈波振幅統計処理部29をさらに備えることが好ましい。脈波振幅統計処理部29が脈波振幅のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出するので、時刻に依存しない脈波振幅の分布の統計値を算出することができる。
【0182】
脈波振幅統計処理部29に代えて、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出する脈波振幅分布算出部が配置されていてもよい。図13は、脈波振幅の第3例を示すポアンカレプロットである。横軸はi番目に算出された脈波振幅、縦軸は(i+1)番目に算出された脈波振幅を示す。ポアンカレ座標上にY=Xを示す直線55と、Y=X+aを示す直線56と、Y=X−aを示す直線57とが示されている。この場合、脈波振幅分布算出部は、脈波振幅のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出する。例えば、ポアンカレ座標の最大と最小の差を算出する。さらに、脈波振幅分布算出部は、予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅58を算出することが好ましい。予め定められた座標範囲内とは、例えば、図中に示す直線56及び直線57で囲まれた座標範囲である。このように、最大及び最小の変化幅58を算出すれば、脈波振幅のポアンカレ座標の分布が狭まったことを検出できる。さらに、脈波振幅分布算出部は、脈波振幅のポアンカレ座標が直線56及び直線57で囲まれる座標範囲内にあるか否かを判定してもよい。また、脈波振幅分布算出部は、直線56及び直線57で囲まれる座標範囲に入った脈波振幅のポアンカレ座標の最大又は最小を算出するにとどまるものでもよい。
【0183】
ここで、aは、予め定められた値である。aは可変であることが好ましい。例えば、ある時間安静を保ったときに検出された脈波の脈波振幅のポアンカレ座標が分布する座標範囲と、ストレス印加時に検出した脈波の脈波振幅のポアンカレ座標が分布する座標範囲とを比較し、ストレス印加時では収まるが安静時では収まらない座標範囲をaとすることが好ましい。
【0184】
また、脈波振幅のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出してもよい。また、X軸データとY軸データの積の最大値から最小値を差し引いてもよい。この場合、前述の図10及び図11に示す脈波振幅(i)及び脈波振幅(i+1)を用いてあらわすと、(脈波振幅(i)×脈波振幅(i+1))max−(脈波振幅(i)×脈波振幅(i+1))minとなる。このような算出を行うことで、脈波振幅のポアンカレ座標の分布が狭まったことを検出できる。これにより、医師又は被検者は、精神的ストレスの有無又はその強度を推定することができる。
【0185】
脈波診断装置94は、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標があらかじめ定められた座標範囲内であるか否かを判定する判定部30をさらに備えることが好ましい。この場合、あらかじめ定められた座標範囲とは、例えば、ある時間安静を保ったときに検出された脈波の脈波振幅のポアンカレ座標とすることができる。あらかじめ定められた座標範囲は、前述の図13で説明した座標範囲と同様の座標範囲を用いることができる。あらかじめ定められた座標範囲は、被検者に応じて可変であることが好ましい。例えば、被検者の脈波振幅のポアンカレ座標を予め算出し、メモリーに記憶させることができる。判定部30は、メモリーからあらかじめ定められた座標範囲を取得する。このように、判定部30が、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の分布があらかじめ定められた座標範囲内であるか否かを判定すれば、医師又は被検者は、精神的ストレスの有無又はその強度を推定することができる。
【0186】
脈波診断装置94は、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標を表示する表示部14をさらに備えることが好ましい。表示部14は、さらに、脈波振幅統計処理部29の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を表示してもよい。又、判定部30の判定結果を表示してもよい。このように、表示部14は、脈波振幅のポアンカレ座標を表示することができるので、時刻に依存しない脈波振幅の分布を表示することができる。
【0187】
次に、脈波診断装置94の動作について説明する。本実施形態に係る脈波診断装置94を用いた脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部11が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出過程と、脈波振幅ポアンカレ算出部28が、光電脈波検出過程で検出した脈波の1拍ごとの脈波振幅を算出し、連続して算出された2つの脈波振幅同士で形成される直交座標平面上での脈波振幅の点をポアンカレ座標として1拍ごとに算出する脈波振幅ポアンカレ算出過程と、を有する。
【0188】
脈波診断装置94を用いた脈波診断装置制御方法は、脈拍数可変部13が、外部からの入力により第1脈拍数を新たな第1脈拍数として設定する脈拍数可変過程を脈波振幅ポアンカレ算出過程の前にさらに有していてもよい。又、表示部14が、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標を表示する表示過程をさらに有していてもよい。又、脈波振幅統計処理部29が、脈波振幅ポアンカレ算出過程で算出した脈波振幅のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈波振幅統計処理過程をさらに有していてもよい。又、脈波振幅ポアンカレ算出過程の後に判定過程をさらに有していてもよい。
【0189】
光電脈波検出過程では、光電脈波検出部11が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波1を検出する。光電脈波検出過程は前述の実施形態1で説明した光電脈波検出過程と同様としてもよい。光電脈波検出過程において、光電脈波検出部11が、検出する脈波1を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することが好ましい。
【0190】
脈波振幅ポアンカレ算出過程では、脈波振幅ポアンカレ算出部28が、光電脈波検出過程で検出した脈波1の1拍ごとの脈波振幅を算出し、連続して算出された2つの脈波振幅同士で形成される直交座標平面上での脈波振幅の点をポアンカレ座標として1拍ごとに算出する。
【0191】
脈波振幅ポアンカレ算出過程において、脈波振幅ポアンカレ算出部28が、脈波振幅のポアンカレ座標を予め定められた第1脈拍数で予め定められた第2脈拍数ごとに算出することが好ましい。ここで、第1脈拍数は、脈拍数可変過程で設定する新たな第1脈拍数である。第1脈拍数及び第2脈拍数は、前述の実施形態1の周波数成分抽出部12で説明したものと同様とすることができる。脈波振幅のポアンカレ座標を第2脈拍数ごとに算出することができるので、最新の脈波振幅のポアンカレ座標を第2脈拍数ごとに取得することができる。
【0192】
脈拍数可変過程では、脈拍数可変部13が、外部からの入力により第1脈拍数を新たな第1脈拍数として設定する。脈波振幅のポアンカレ座標を算出する脈拍数を増減することができるので、所望のデータ数での脈波振幅のポアンカレ座標を算出することができる。
【0193】
脈波振幅統計処理部29が、脈波振幅ポアンカレ算出過程で算出した脈波振幅のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出する脈波振幅統計処理過程をさらに有することが好ましい。脈波振幅統計処理過程では、脈波振幅統計処理部29が脈波振幅のポアンカレ座標の標準偏差、中央値及び平均値を算出してもよい。このように、脈波振幅のポアンカレ座標の標準偏差、中央値又は平均値を算出するので、時刻に依存しない脈波振幅の分布の統計値を算出することができる。
【0194】
脈波振幅統計処理部29に脈波振幅分布算出部が配置される場合、前記脈波振幅統計処理過程は、脈波振幅分布算出部が、前記脈波振幅ポアンカレ算出部の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出する脈波振幅分布算出過程となる。この場合、脈波振幅分布算出過程では、予め定められた時間範囲内の脈波振幅のポアンカレ座標の最大値と脈波振幅のポアンカレ座標の最小値との差を算出する。さらに、脈波振幅分布算出過程において、予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出することが好ましい。予め定められた座標範囲内とは、例えば、前述の図13で説明した直線56及び直線57である。このように、予め定められた座標範囲内での最大及び最小の変化幅を算出すれば、脈波振幅の診断に有用な座標範囲内での変化幅を検出することができる。このように、脈波振幅のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅を算出すれば、脈波振幅のポアンカレ座標の分布が狭まったことを検出できる。
【0195】
判定過程では、判定部30が、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標があらかじめ定められた座標範囲内であるか否かを判定する。あらかじめ定められた座標範囲とは、前述の図9の判定部30で説明したとおりである。判定過程では、脈波振幅分布算出過程で算出した最大及び最小の変化幅があらかじめ定められた座標範囲内であるか否かを判定してもよい。
【0196】
表示部14が、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標を表示する表示過程をさらに有することが好ましい。表示過程は、算出された脈波振幅のポアンカレ座標を入力されたときは常時表示することが好ましい。また、外部から信号が入力されたときに脈波振幅のポアンカレ座標を表示してもよい。表示過程において、表示部14は、例えば、予め定められた時間範囲内に算出されたポアンカレ座標を表示する。表示する時間範囲は可変であることが好ましい。なお、表示部14が、脈波振幅ポアンカレ算出部28の算出する脈波振幅のポアンカレ座標の平均値の時間推移を表示してもよい。このように、表示過程において、表示部14は脈波振幅のポアンカレ座標の平均値の時間推移を表示することができる。
【0197】
以上説明したように、本実施形態に係る脈波診断装置94及び脈波診断装置94を用いた脈波診断装置制御方法は、光電脈波検出部11が光電センサを用いて外耳103の脈波1を検出することができるので、長時間にわたり脈波を検出算出することができる。さらに、脈波振幅ポアンカレ算出部28が脈波振幅のポアンカレ座標を算出するので、脈波1の変動を検出することができる。よって、脈波診断装置94及び脈波診断装置94を用いた脈波診断装置制御方法は、長時間にわたる脈波の変動を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明は、脈波を検出できるので、美容や健康の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】実施形態1に係る脈波診断装置の構成概略図である。
【図2】光電脈波検出部の検出する脈波の一例を示す模式図である。
【図3】脈拍間隔のゆらぎの周波数成分の一例を示すグラフである。
【図4】実施形態2に係る脈波診断装置の構成概略図である。
【図5】精神的ストレスの印加されていない状態での脈拍間隔の一例を示すポアンカレプロットである。
【図6】精神的ストレスの印加された状態での脈拍間隔の一例を示すポアンカレプロットである。
【図7】実施形態3に係る脈波診断装置の構成概略図である。
【図8】光電脈波検出部の検出する脈波振幅の一例を示す時系列グラフである。
【図9】実施形態4に係る脈波診断装置の構成概略図である。
【図10】精神的ストレスの印加されていない状態での脈波振幅の一例を示すポアンカレプロットである。
【図11】精神的ストレスの印加された状態での脈波振幅の一例を示すポアンカレプロットである。
【図12】脈拍間隔の第3例を示すポアンカレプロットである。
【図13】脈波振幅の第3例を示すポアンカレプロットである。
【符号の説明】
【0200】
1 脈波
11 光電脈波検出部
12 周波数成分抽出部
13 脈拍数可変部
14 表示部
15 周波数成分比算出部
16 タイマー
17、24、26、30 判定部
21 脈拍間隔ポアンカレ算出部
23 脈拍間隔統計処理部
25 脈波振幅算出部
27 脈波振幅比算出部
28 脈波振幅ポアンカレ算出部
29 脈波振幅統計処理部
31 装着機構
41 山
42 谷
43 脈拍間隔
45 脈拍間隔のポアンカレ座標平面状のY=Xを示す直線
46 Y=X+aを示す直線
47 Y=X−aを示す直線
48 脈拍間隔のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅
55 脈波振幅のポアンカレ座標平面上のY=Xを示す直線
56 脈波振幅のポアンカレ座標平面上のY=X+aを示す直線
57 脈波振幅のポアンカレ座標平面上のY=X−aを示す直線
58 脈波振幅のポアンカレ座標の最大及び最小の変化幅
91、92、93、94 脈波診断装置
101 耳介
102 外耳道
103 外耳
F1、F2 周波数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出部と、
前記光電脈波検出部の検出する脈波の脈波振幅を算出する脈波振幅算出部と、
前記脈波振幅算出部の算出する脈波振幅が所定の大きさ以上か否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする脈波診断装置。
【請求項2】
前記脈波振幅算出部は、前記光電脈波検出部の検出する脈波の脈波振幅の平均値を、予め定められた脈拍数であり、脈拍間隔のゆらぎを算出するために使用する脈拍データの数である第1脈拍数で予め定められた脈拍数であり、脈拍間隔のゆらぎを算出するタイミングを決める脈拍データの数である第2脈拍数ごとに算出し、
外部からの入力により、前記第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変部をさらに備え、
前記脈波振幅算出部は、前記脈拍数可変部の設定する新たな第1脈拍数を用いて脈波振幅の平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の脈波診断装置。
【請求項3】
前記脈波振幅算出部の算出する脈波振幅の時間推移か、又は、前記脈波振幅算出部の算出する脈波振幅の平均値の時間推移を表示する表示部をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の脈波診断装置。
【請求項4】
前記脈波振幅算出部の算出する平均値のうち特定の2つの平均値の比を算出する脈波振幅比算出部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3に記載のいずれかの脈波診断装置。
【請求項5】
前記光電脈波検出部は、人体の外耳への装着機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から4に記載のいずれかの脈波診断装置。
【請求項6】
前記光電脈波検出部は、検出する脈波を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することを特徴とする請求項1から5に記載のいずれかの脈波診断装置。
【請求項7】
光電脈波検出部が、動脈を透過した透過光又は動脈で散乱された散乱光を受光して脈波を検出する光電脈波検出過程と、
脈波振幅算出部が、前記光電脈波検出過程で検出した脈波の脈波振幅を算出する脈波振幅算出過程と、
判定部が、前記脈波振幅算出過程で算出した脈波振幅が所定の大きさ以上か否かを判定する判定過程と、を有することを特徴とする脈波診断装置制御方法。
【請求項8】
前記脈波振幅算出過程において、前記脈波振幅算出部が、前記光電脈波検出過程で検出した脈波の脈波振幅の平均値を、予め定められた脈拍数であり、脈拍間隔のゆらぎを算出するために使用する脈拍データの数である第1脈拍数で予め定められた脈拍数であり、脈拍間隔のゆらぎを算出するタイミングを決める脈拍データの数である第2脈拍数ごとに算出し、
脈拍数可変部が、外部からの入力により、前記第1脈拍数を増減して新たな第1脈拍数を設定する脈拍数可変過程を前記脈波振幅算出過程の前にさらに有し、
前記脈波振幅算出過程において、前記脈波振幅算出部が、前記脈拍数可変過程で設定した新たな第1脈拍数を用いて脈波振幅の平均値を算出することを特徴とする請求項7に記載の脈波診断装置制御方法。
【請求項9】
表示部が、前記脈波振幅算出過程で算出された脈波振幅の時間推移か、又は、前記脈波振幅算出過程で算出された脈波振幅の平均値の時間推移を表示する表示過程をさらに有することを特徴とする請求項7又は8に記載の脈波診断装置制御方法。
【請求項10】
脈波振幅比算出部が、前記脈波振幅算出過程で算出した平均値のうち特定の2つの平均値の比を算出する脈波振幅比算出過程をさらに有することを特徴とする請求項7から9に記載のいずれかの脈波診断装置制御方法。
【請求項11】
前記光電脈波検出過程において、前記光電脈波検出部が、検出する脈波を500μsec以上5msec以下のサンプリング間隔で抽出することを特徴とする請求項7から10に記載のいずれかの脈波診断装置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−188152(P2010−188152A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94405(P2010−94405)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【分割の表示】特願2005−297097(P2005−297097)の分割
【原出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】