説明

脱塩室用容器、電極室用キャップ及び電気式脱イオン水製造装置

【課題】規定された電極間距離を安定して得ることが可能な脱塩室用容器を提供する。
【解決手段】電気式脱イオン水製造装置7に設けられる脱塩室10を形成する脱塩室用容器1である。
そして、イオン交換体3Aが充填される内空部11aが形成されるとともに両端が開放された本体11と、本体の両端付近にそれぞれ形成されて電気式脱イオン水製造装置の電極(51,52)間距離を規定する連結部12とを備えている。
ここで、本体の外面11b側に突出されて被処理水を内空部に取り込む流入口13と、本体の外面側に突出されて内空部から脱イオン水を排出する流出口14とを設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水などの脱イオン水を製造する電気式脱イオン水製造装置に設けられる脱塩室を形成する脱塩室用容器、及びそれに装着される電極室用キャップ、並びに電気式脱イオン水製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工業、製薬工業、食品工業などの各種工業、研究室又は燃料電池などで純水又は超純水などの脱イオン水が使用されており、その製造装置の一つとして電気式脱イオン水製造装置が知られている(特許文献1,2など参照)。
【0003】
これらの特許文献1,2に開示された電気式脱イオン水製造装置は、陽極と陰極の電極間に、両側面にイオン交換膜が張設された平板状の枠体が配置され、この枠体内に充填されたイオン交換樹脂に被処理水を通過させることで、被処理水が脱イオン水として排出される構造となっている。
【0004】
そして、この平板状の枠体には取付用の穴が設けられており、その穴に挿入されたボルトを締結することによって電極間に枠体が固定される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3009221号公報
【特許文献2】特開平11−192491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のボルトを締結する構造では、ボルトを締結する力の大きさによって電極間の距離が変化して電気抵抗が変動するため、装置毎の消費電力などの性能に個体差が生じるおそれがある。
【0007】
また、枠体にイオン交換樹脂を充填し、イオン交換膜を張設し、ボルトを挿入して締結をおこなう、というように製作工程が多く、その工程も不安定な状態でおこなわれるため、このことからも上述した個体差が生じることが懸念されるとともに手間がかかる。
【0008】
さらに、ボルトの締結する力が大きく入りすぎると損傷してしまうことが懸念されるため、慎重な作業が求められることになり、作業効率を上げ難いという問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、規定された電極間距離を安定して得ることにより上記の課題を解決可能とする脱塩室用容器、電極室用キャップ、及びそれらによって組み立てられる電気式脱イオン水製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の脱塩室用容器は、電気式脱イオン水製造装置に設けられる脱塩室を形成する脱塩室用容器であって、イオン交換体が充填される内空部が形成されるとともに両端が開放された本体と、前記本体に形成されて前記電気式脱イオン水製造装置の電極との距離を規定する連結部とを備えたことを特徴とする。前記連結部は、例えば前記本体の両端付近にそれぞれ形成することができる。
【0011】
ここで、前記本体の外面側に突出されて被処理水を前記内空部に取り込む流入口と、前記本体の外面側に突出されて前記内空部から脱イオン水を排出する流出口とを備えた構成であってもよい。
【0012】
また、前記連結部には、対となる連結機構の一方が形成されるとともに、前記連結機構は所定の位置で前記本体の軸方向の嵌入が停止する構造であってもよい。例えば、前記対となる連結機構は、嵌入停止位置にストッパが設けられたツイストネジとすることができる。
【0013】
一方、本発明の電極室用キャップは、上記脱塩室用容器に装着されて電極室を形成する電極室用キャップであって、凹部が形成された外殻と、前記凹部の底面側に設けられる電極を取り付けるための電極取付口と、前記凹部の開放側に形成されて前記連結部と所定の位置で連結される電極側連結部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
ここで、前記外殻の外面側に突出されて電極水を前記凹部に取り込む電極水流入口と、前記外殻の外面側に突出されて前記凹部から電極水を排出する電極水流出口とを備えた構成とすることができる。また、前記凹部には、電極室と濃縮室とが一室として形成されているものであってもよい。
【0015】
そして、本発明の電気式脱イオン水製造装置は、上記脱塩室用容器に、上記電極室用キャップが装着される電気式脱イオン水製造装置であって、前記内空部にイオン交換体が充填された前記脱塩室用容器の前記連結部に、前記電極取付口に電極を取り付けるとともに前記凹部にイオン交換体とイオン交換膜を配置した前記電極室用キャップの前記電極側連結部を連結したことを特徴とする。
【0016】
ここで、電極室用キャップに電極水流入口と電極水流出口とが設けられている場合は、一方の前記電極室用キャップの前記電極水流出口と他方の前記電極室用キャップの前記電極水流入口とを繋ぐ配管をおこなうことができる。
【0017】
さらに、前記脱塩室用容器を複数接続し、その両側に前記電極室用キャップをそれぞれ装着してもよい。
【発明の効果】
【0018】
このように構成された本発明の脱塩室用容器は、本体に電気式脱イオン水製造装置の電極との距離を規定する連結部が設けられている。
【0019】
このため、この連結部を介して電極を配置すると、必ず規定された電極間距離の電気式脱イオン水製造装置が製作されるので、電気抵抗が一定である安定した性能の製品を供給することができる。
【0020】
また、本体の外面側に流入口と流出口とが突出されていれば、配管の組み付けを容易におこなうことができる。
【0021】
さらに、連結部が対となる連結機構の一方であれば、他方の連結機構を備えた部材を停止するまで嵌め込むだけで、容易に組み立てをおこなうことができる。特に、嵌入停止位置にストッパが設けられたツイストネジであれば、ねじ込むだけで組み立てを完了させることができる。
【0022】
また、脱塩室用容器の連結部と対になる電極側連結部と電極取付口とを備えた電極室用キャップを使用することで、脱塩室の両側に迅速に所定の間隔で電極を配置することができる。
【0023】
さらに、電極水流入口と電極水流出口とが設けられた電極室用キャップであれば、移動してきたイオンが多く含まれた濃縮水を電極室から効率よく排出させることができる。また、電極室と濃縮室とが一室で形成されていれば、構造が簡素化されて製作工程を減らすことができる。
【0024】
そして、脱塩室用容器に電極室用キャップを装着する際に、連結部と電極側連結部とによって組み立て後の電極との距離が規定される電気式脱イオン水製造装置であれば、安定した性能の製品を効率よく製作することができる。
【0025】
さらに、両側の電極室間で電極水を通水させる場合も、電極水流出口と電極水流入口とが外面側に設けられた電極室用キャップを使用するのであれば、配管を容易におこなうことができる。
【0026】
また、複数の脱塩室用容器を電極間に配置する構成であれば、所望する処理水量に合わせた電気式脱イオン水製造装置を、接続する脱塩室用容器の数を調節するだけで容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の脱塩室用容器及び電極室用キャップの構成を説明する斜視図である。
【図2】脱塩室用容器の両端に電極室用キャップを装着した構成を説明する断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の電気式脱イオン水製造装置の構成を説明する断面図である。
【図4】電気式脱イオン水製造装置の配管を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本実施の形態で説明する電気式脱イオン水製造装置7の概略構成について、図3を参照しながら説明する。
【0029】
この電気式脱イオン水製造装置7は、燃料電池や研究室などで使用する純水などの脱イオン水を製造する装置である。本実施の形態で説明する電気式脱イオン水製造装置7は、電極としての陰極51と陽極52との間に、電極室20,20と脱塩室10が、イオン交換膜4,4によって区画されることで形成されている。
【0030】
また、電極室20,20と脱塩室10には、それぞれイオン交換体3A,3B,3Cが充填されている。なお、イオン交換体3A,3B,3Cとしては、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂を混合したものなどが利用できる。
【0031】
そして、脱塩室10に、流入口13から流入した被処理水WA中のイオンは、イオン交換体3Aにより補足されて、脱イオン水WBとして排出される。
【0032】
また、イオン交換体3Aに補足されたイオンは、陰極51と陽極52の間の電位勾配によりイオン交換膜4を通過して電極室20に移動し、電極水流出口25から排出される。
【0033】
なお、イオン交換膜4には、陰イオン交換膜、陽イオン交換膜などがあり、脱塩室10から電極室20に向けて移動させたいイオンの種類に応じて設定すればよい。
【0034】
そして、この電気式脱イオン水製造装置7では、このようなイオンが移動してくる濃縮室の機能を電極室20が兼ね備えており、脱塩室10から移動してきたイオンは、一室として形成された電極室20に集まることになる。
【0035】
また、このように構成された電気式脱イオン水製造装置7は、電極間距離(陰極51と陽極52との距離、より詳細には、陰極板51aと陽極板52aとの間の距離)が変化すると、それに伴って電極間の電気抵抗も変動して装置の消費電力が変動することになる。
【0036】
そこで、規定された電極間距離を安定して得ることが可能な本実施の形態の脱塩室用容器1と、その両側に装着される電極室用キャップ2A,2Bの構成について図1,2を参照しながら説明する。
【0037】
この脱塩室用容器1は、円筒形状の本体11と、電極室用キャップ2A(2B)と連結する手段となる連結部12と、被処理水WAを取り込む流入口13と、脱イオン水WBを排出する流出口14とを備えている。
【0038】
この脱塩室用容器1は、合成樹脂などの絶縁材料によって成形された部材で、本体11の内側には円柱状の内空部11aが形成され、その軸方向の両端は開放されている。
【0039】
また、本体11の外面11b側には、円筒状の流入口13が突出されており、流入口13と内空部11aは、図2の破線で模式的に示したように本体11に形成される流入経路13aによって接続されている。
【0040】
さらに、本体11の外面11b側には、円筒状の流出口14が突出されており、内空部11aと流出口14は、図2の破線で模式的に示したように本体11に形成される流出経路14aによって接続されている。
【0041】
また、本体11の両端付近の外面11bに形成される連結部12は、対となる連結機構の一方であり、ここでは連結機構としてツイストネジについて説明する。
【0042】
この連結部12は、図1に示すように、本体11の端面から軸方向の中央側に離隔した位置でその端面と平行となるように周方向に延設される突条12aと、その突条12aの端から略直角に本体11軸方向の中央側に延出されるストッパ12bとによって、平面視略L字形に形成されている。また、略L字形の連結部12の内角側には、ストッパ12bから周方向にずれた位置に、電極室用キャップ2A(2B)の逆転を防止するための突起12cが本体11軸方向に延出されている。
【0043】
そして、本実施の形態では、このような連結部12は、本体11の外面11b上のそれぞれの端部付近において、内空部11aを挟んで対峙するように2つずつ形成される。また、このように本体11の周方向に2つ配置される連結部12,12は、一周方向で見て同じ向きになるように取り付けられる。
【0044】
他方、電極室用キャップ2A(2B)は、凹部21aが形成された外殻21と、電極(陰極51又は陽極52)を取り付けるための電極取付口23と、連結部12と所定の位置で連結される電極側連結部22と、電極水WCを取り込む電極水流入口24と、電極水WDを排出する電極水流出口25とを備えている。
【0045】
この電極室用キャップ2A(2B)は、合成樹脂などの絶縁材料によって成形された部材で、外殻21の内側には凹部21aが形成され、脱塩室用容器1に装着する側は開放されている。
【0046】
この凹部21aは、図2に示すように、脱塩室用容器1の軸方向の端部を収容する第1空間211と、その第1空間211よりも軸直交方向となる幅が狭くなった底面側の第2空間212とが階段状に形成されている。また、この凹部21aの底面には貫通穴が電極取付口23として形成されている。
【0047】
さらに、凹部21aの開放側の内周面に形成される電極側連結部22は、脱塩室用容器1に形成される連結部12と対となる連結機構である。
【0048】
この電極側連結部22は、外殻21の開放側端面に隣接した位置で周方向に延設される突条22aと、本体11側の連結部12の突条12aの幅より僅かに広い幅の溝部22bと、溝部22bの側面を形成する段差部22cとによって形成されている。また、突条22aの内周面には、脱塩室用容器1の突起12cに噛み合う止め溝22dが形成されている。
【0049】
この突条22aは、本体11の端部付近に周方向に間隔を置いて設けられた連結部12,12間の隙間に挿入可能な長さに形成されている。また、溝部22bは、電極室用キャップ2A(2B)を回転させると、突条22aに沿って突条12aが相対的に移動可能な幅に形成されている。
【0050】
さらに、本体11側のストッパ12bは、電極室用キャップ2A(2B)が回転することで突条22aの周方向端面が衝突すると電極室用キャップ2A(2B)の回転を停止させることができる程度の大きさに形成されており、この回転の停止によって電極室用キャップ2A(2B)の嵌入が停止される。また、嵌入停止位置では、脱塩室用容器1側の突起12cと突条22aの止め溝22dとが噛み合って電極室用キャップ2A(2B)の逆回転が防止される。
【0051】
この嵌入停止位置では、電極室用キャップ2A(2B)の周方向への回転が停止されるとともに、電極室用キャップ2A(2B)の脱塩室用容器1側への移動、換言すると本体11の軸方向への嵌入も停止される。すなわち、この嵌入停止位置では、本体11の突条12aは、電極室用キャップ2A(2B)の溝部22bにおいて突条22aと段差部22cとの間に挟持されるため、本体11軸方向の移動が制限される。そして、このような連結機構によって連結された脱塩室用容器1と電極室用キャップ2A(2B)とは、本体11軸方向の相対的な位置関係が常に一定になる。
【0052】
また、外殻21の外面21b側には、円筒状の電極水流入口24が突出されており、電極水流入口24と凹部21aは、図2の破線で模式的に示したように外殻21に形成される流入経路24aによって接続されている。
【0053】
さらに、外殻21の外面21b側には、円筒状の電極水流出口25が突出されており、凹部21aと電極水流出口25は、図2の破線で模式的に示したように外殻21に形成される流出経路25aによって接続されている。
【0054】
次に、本実施の形態の電気式脱イオン水製造装置7の製作工程を説明するとともに、その作用について説明する。
【0055】
まず、図3に示すように、脱塩室用容器1の内空部11aにイオン交換体3Aを充填する。ここで、イオン交換体3Aを充填する際には、流入経路13a及び流出経路14aの内空部11a側の開口に、イオン交換体3Aの流出を防止するスリットやメッシュなどの部材を必要に応じて取り付ける。
【0056】
続いて、2つの電極室用キャップ2A,2Bを用意し、一方の電極室用キャップ2Aには陰極51を取り付け、他方の電極室用キャップ2Bには陽極52を取り付ける。
【0057】
この陰極51は、陰極板51aと、その中央に接続される陰極棒51bとによって構成されており、凹部21aの開放側から陰極棒51bを電極取付口23に差し込むことによって、陰極51を電極室用キャップ2Aに取り付けることができる。なお、図示していないが、陰極51は、陰極棒51bをナットで締結するなどして電極室用キャップ2Aに固定される。
【0058】
また、陽極52も、陽極板52aと陽極棒52bとによって構成されており、陰極51と同様にして電極室用キャップ2Bに取り付けて固定する。
【0059】
さらに、電極室用キャップ2A(2B)の凹部21aには、イオン交換体3B(3C)が充填される。この充填に際しても、図示していないが、流入経路24a及び流出経路25aの凹部21a側の開口には、イオン交換体3B(3C)の流出を防止するスリットなどの部材を必要に応じて取り付ける。
【0060】
また、イオン交換体3B(3C)が充填された凹部21aの開放側は、イオン交換膜4を張設することによって遮蔽する。なお、図示していないが、凹部21aの開放側の内周面には、水密性を高めるためのガスケットやOリング及びイオン交換膜4を固定する部材などを必要に応じて配置する。
【0061】
そして、イオン交換体3Aが充填された脱塩室用容器1に対して、陰極51を取り付けた電極室用キャップ2Aの突条22a,22aが、本体11の外面11bの突条12aのない位置にくるように位置合わせをし、電極室用キャップ2Aを押し込む。すると、電極室用キャップ2Aの段差部22cが本体11の突条12aに当接し、電極室用キャップ2A側の突条22aと本体11側の突条12aとが平行になる。
【0062】
さらに、その電極室用キャップ2Aを図1で見て反時計回りに回すと、溝部22bに突条12aの先端が入り込み、突条12aに沿って相対的にスライドした突条22aの先端は、突起12cを乗り越え、ストッパ12bの側面に突き当たることで回転が停止する。
【0063】
また、この停止位置で突起12cが止め溝22dに食い込むため、電極室用キャップ2Aの逆転も防止されて、脱塩室用容器1に電極室用キャップ2Aが固定されることになる。
【0064】
このように、連結部12と電極側連結部22とが対となってツイストネジを構成し、所定の位置で周方向の移動を停止させるストッパ12bと、本体11軸方向の嵌入を停止させる段差部22cとが設けられた脱塩室用容器1への電極室用キャップ2Aの装着であれば、ねじ込むだけで組み立てを完了させることができる。
【0065】
また、脱塩室用容器1側の周方向に延設される突条12aが、電極室用キャップ2Aの突条22aと段差部22cとによって挟持される連結構造となるため、本体11軸方向の連結力が強く、衝撃や内圧の上昇などに対してもずれが生じることがない。
【0066】
そして、陽極52を取り付けた電極室用キャップ2Bについても、上記と同様にして脱塩室用容器1の連結部12に連結することで装着をおこなう。
【0067】
このようにして脱塩室用容器1に電極室用キャップ2A,2Bを装着すると、脱塩室用容器1と電極室用キャップ2A,2Bとの本体11軸方向の相対的な位置関係が一定になるため、図3に示すような陰極板51aと陽極板52aとの間隔は常に規定した距離になる。
【0068】
このため、脱塩室用容器1と電極室用キャップ2A,2Bとを使用して組み立てられる電気式脱イオン水製造装置7の電極間距離は、常に規定された距離となって個体ごとに異なることがなく、一定の電気抵抗、すなわち一定の消費電力を示す装置を安定して製作することができる。
【0069】
さらに、脱塩室用容器1の両側に電極室用キャップ2A,2Bを装着した後には、図4に示すように配管をおこなう。
【0070】
まず、脱塩室用容器1の流入口13には、被処理水WAを搬送させる送水管61を接続する。そして、脱塩室10で処理された脱イオン水WBを排出させる流出口14には、供給管62を接続する。
【0071】
この供給管62は、脱イオン水WBを使用する機器まで延設されることになるが、その途中には分岐管63が接続され、分岐管63の端部は陰極51が取り付けられた電極室用キャップ2Aの電極水流入口24に接続される。
【0072】
また、この陰極51側の電極室用キャップ2Aの電極水流出口25と、陽極52側の電極室用キャップ2Bの電極水流入口24とは、連結管64によって連結される。
【0073】
さらに、陽極52が取り付けられた電極室用キャップ2Bの電極水流出口25には、濃縮室を兼用する電極室20を通過した電極水WD(濃縮水)を排出する排出管65を接続する。
【0074】
このような配管は、電気式脱イオン水製造装置7の外面側に突出された流入口13、流出口14、電極水流入口24,24及び電極水流出口25,25に対しておこなえばよいので、作業性がよく、容易に組み付けをおこなうことができる。
【0075】
また、配管の作業性を考慮して、流入口13、流出口14、電極水流入口24,24及び電極水流出口25,25の一部又は全部が同じ方向に突出するように構成することもできる。
【0076】
このように分岐管63によって生成された脱イオン水WBの一部を取り出し、陰極51側の電極室20及び陽極52側の電極室20を通過させることで、電極室20,20内に滞留するイオンとともに電極水WDを強制的に排出させることができる。
【0077】
特に、陽極52側の電極室20では、脱塩室10から移動してきた多くのイオンが滞留して濃縮水となっており、この濃縮水となる電極水WDを強制的に排出させる構造にすることで、電気式脱イオン水製造装置7の処理効率を向上させることができる。
【0078】
また、電気式脱イオン水製造装置7は、流入口13が上にあっても下にあっても機能するが、例えば流入口13を下にして被処理水WAが脱塩室10を打ち上がった後に上方の流出口14から排出される向きに設置すれば、除去率の高い高純度の脱イオン水WBを製造することができる。
【0079】
さらに、このようにして製作される電気式脱イオン水製造装置7は、例えば直径約70mm、長さ約80mm程度の小型のものにできるので、家庭用燃料電池に使用する純水製造装置や研究室用の純水製造装置などの小型化が要望される機器に適用することができる。
【実施例】
【0080】
本実施の形態によって説明した電気式脱イオン水製造装置7と、従来の電極間に平板状の枠体をボルトで締結して固定する電気式脱イオン水製造装置(スタック&フレーム型)とをそれぞれ15台ずつ製作し、各装置の電極間の電気抵抗を測定した結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
この表1の結果からすれば、従来のスタック&フレーム型は、電気抵抗の標準偏差が平均値の3.3%の幅で広がっているのに対し、本実施の形態の電気式脱イオン水製造装置7は、1.3%の範囲で収まっており、従来構造に比べて安定した消費電力の製品を製作できることがわかる。
【0083】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0084】
例えば、前記実施の形態では、電極間距離を規定する連結機構として、周方向に回転する際には本体11軸方向へ移動しない本体11の端面と平行に形成されたツイストネジについて説明したが、これに限定されるものではなく、周方向に回転すると本体11軸方向の移動も生じる本体11の端面に対して斜めに形成されるツイストネジであってもよい。さらに、所定の位置でねじ込みを停止させるストッパなどが設けられた袋ナット、又は可撓性の爪を凹部に食い込ませる構造など、決められた位置で本体11軸方向の嵌入が停止することで電極間距離を規定できる連結機構であればよい。
【0085】
また、前記実施の形態で本体11に設けた連結部12を電極室用キャップ2A(2B)側に設け、凹部21aに設けた電極側連結部22を脱塩室用容器1側に設けるというように、対となる連結機構のいずれを脱塩室用容器1側に設けてもよい。
【0086】
さらに、前記実施の形態では、1体の脱塩室用容器1の両側にそれぞれ電極室用キャップ2A,2Bを装着する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、複数の脱塩室用容器1,・・・を上述したような電極間距離を規定する袋ナットなどで連結し、その脱塩室用容器1,・・・群の両側にそれぞれ電極室用キャップ2A,2Bを装着する構成であってもよい。このように脱塩室用容器1,・・・の数を調節することで、電気式脱イオン水製造装置の処理能力(処理水量)を容易に調節することができる。
【0087】
また、前記実施の形態では、本体11及び外殻21が円筒状のものについて説明したが、これに限定されるものではなく、四角筒などの断面視多角形や断面視楕円となる本体や外殻を備えたものであってもよい。さらに、脱塩室用容器1と電極室用キャップ2A(2B)の形態の組み合わせも、前記実施の形態に限定されるものではない。
【0088】
また、前記実施の形態では、脱塩室用容器1の両端付近にイオン交換膜4,4がそれぞれ張設される構成について説明したが、これに限定されるものではなく、内空部11aの内側にイオン交換膜4,4が張設されるような構成であってもよい。
【0089】
さらに、前記実施の形態では濃縮室を兼用する一室の電極室20を形成したが、これに限定されるものではなく、凹部21aの内部にイオン交換膜4に並行してもう一枚のイオン交換膜を追加することで、電極室20と脱塩室10との間に濃縮室を設けることもできる。
【0090】
また、前記実施の形態では、流入口13、流出口14、電極水流入口24及び電極水流出口25を本体11又は外殻21の外面側から突出させたが、これに限定されるものではなく、内空部11a又は凹部21aに連通する開口を外側面に設けただけの構造であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 脱塩室用容器
10 脱塩室
11 本体
11a 内空部
11b 外面
12 連結部
12b ストッパ
13 流入口
14 流出口
2A,2B 電極室用キャップ
20 電極室
21 外殻
21a 凹部
21b 外面
22 電極側連結部
23 電極取付口
24 電極水流入口
25 電極水流出口
3A,3B,3C イオン交換体
4 イオン交換膜
51 陰極(電極)
52 陽極(電極)
64 連結管(配管)
7 電気式脱イオン水製造装置
WA 被処理水
WB 脱イオン水
WC,WD 電極水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式脱イオン水製造装置に設けられる脱塩室を形成する脱塩室用容器であって、
イオン交換体が充填される内空部が形成されるとともに両端が開放された本体と、
前記本体に形成されて前記電気式脱イオン水製造装置の電極との距離を規定する連結部とを備えたことを特徴とする脱塩室用容器。
【請求項2】
前記本体の外面側に突出されて被処理水を前記内空部に取り込む流入口と、
前記本体の外面側に突出されて前記内空部から脱イオン水を排出する流出口とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の脱塩室用容器。
【請求項3】
前記連結部には、対となる連結機構の一方が形成されるとともに、前記連結機構は所定の位置で前記本体の軸方向の嵌入が停止する構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の脱塩室用容器。
【請求項4】
前記対となる連結機構は、嵌入停止位置にストッパが設けられたツイストネジであることを特徴とする請求項3に記載の脱塩室用容器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の脱塩室用容器に装着されて電極室を形成する電極室用キャップであって、
凹部が形成された外殻と、
前記凹部の底面側に設けられる電極を取り付けるための電極取付口と、
前記凹部の開放側に形成されて前記連結部と所定の位置で連結される電極側連結部とを備えたことを特徴とする電極室用キャップ。
【請求項6】
前記外殻の外面側に突出されて電極水を前記凹部に取り込む電極水流入口と、
前記外殻の外面側に突出されて前記凹部から電極水を排出する電極水流出口とを備えたことを特徴とする請求項5に記載の電極室用キャップ。
【請求項7】
前記凹部には、電極室と濃縮室とが一室として形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の電極室用キャップ。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の脱塩室用容器に、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の電極室用キャップが装着される電気式脱イオン水製造装置であって、
前記内空部にイオン交換体が充填された前記脱塩室用容器の前記連結部に、前記電極取付口に電極を取り付けるとともに前記凹部にイオン交換体とイオン交換膜を配置した前記電極室用キャップの前記電極側連結部を連結したことを特徴とする電気式脱イオン水製造装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の脱塩室用容器に、請求項6に記載の電極室用キャップが装着される電気式脱イオン水製造装置であって、
前記内空部にイオン交換体が充填された前記脱塩室用容器の前記連結部に、前記電極取付口に電極を取り付けるとともに前記凹部にイオン交換体とイオン交換膜を配置した前記電極室用キャップの前記電極側連結部を連結することで両側の電極室用キャップを装着し、
一方の前記電極室用キャップの前記電極水流出口と他方の前記電極室用キャップの前記電極水流入口とを繋ぐ配管をおこなうことを特徴とする電気式脱イオン水製造装置。
【請求項10】
前記脱塩室用容器を複数接続し、その両側に前記電極室用キャップをそれぞれ装着したことを特徴とする請求項8又は9に記載の電気式脱イオン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−194404(P2010−194404A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39669(P2009−39669)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】