説明

脱気装置

【課題】コンプレッサや耐圧容器などの設備が不要で、常温・常圧下で効率よく脱気できる。
【解決手段】加圧気液を導入する第1の導入部と気液分離空間とを有する気液分離ノズル420と、気液分離ノズルの吐出側から吐出される分離気液を偏倚して導入する分離気液導入孔431と、気体凝集筒434とを備えた気体凝集部430と、気体凝集部の旋回流発生筒432の頂部に貫通して設けられた気液上昇管436と、この気液上昇管が底部に貫通して内部に挿通される気体回収部440と、加圧液体を導入する加圧液体導入孔を形成した第2の導入部と、第2の導入部の返送液体吸引圧力発生空間に一端が開口し、第2の導入部の側部に他端が開口する返送液体導入孔とを有する気体回収部圧力減圧用ノズル450と、気体回収部の底部と気体回収部圧力減圧用ノズルの返送液体導入孔とを連結する気体回収部圧力調節管409とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体を含む液体を脱気する脱気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水の中に酸素が含まれていると、ボイラ缶の内壁が酸化し、錆が出て腐食してしまう。これを防ぐために、従来はCaを水に入れてボイラ缶の内壁に付着させ、防護膜を形成していたが、Caが付着しすぎるとCa膜は断熱材料であるため、ボイラの熱効率が低下する。そのため、定期的にCa膜を除去する必要があった。
【0003】
このような酸素等の溶存気体を液体から脱気する技術としては、(1)真空にして液の中の気体を分離する方法と、(2)液の温度を上げて沸騰させて気体を分離する方法があった。
【0004】
しかしながら、真空にする方法は、大型のコンプレッサや耐圧容器等の機器が必要で、設備とコストが大掛かりになるという問題があり、沸騰させる方法では、液によっては温度を上げられないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コンプレッサや耐圧容器などの設備が不要で、常温・常圧下で効率よく脱気できる脱気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の脱気装置は、気体を含む液体を導入する加圧気液導入孔を形成した第1の導入部と、この加圧気液導入孔の吐出側において加圧気液導入孔の総面積よりも断面積を大きくした気液分離空間とを有する気液分離ノズルと、頂部がドーム状の有底の旋回流発生筒の底部近傍に前記気液分離ノズルの吐出側から吐出される分離気液を中心軸線に対して偏倚して導入する分離気液導入孔と、前記旋回流発生筒の底部を貫通して中心軸線と同軸に設けられた気体凝集筒とを備えた気体凝集部と、前記気体凝集部の旋回流発生筒の頂部に貫通して設けられた気液上昇管と、この気液上昇管が底部に貫通して内部に挿通される気体回収部と、前記気体凝集筒の下端にバルブを介して接続され、排出される加圧液体を導入する加圧液体導入孔を形成した第2の導入部と、この加圧液体導入孔の吐出側において加圧液体導入孔の総面積よりも断面積を大きくした返送液体吸引圧力発生空間と、前記第2の導入部の前記返送液体吸引圧力発生空間に一端が開口し、前記第2の導入部の側部に他端が開口する返送液体導入孔とを有する気体回収部圧力減圧用ノズルと、前記気体回収部の底部と前記気体回収部圧力減圧用ノズルの返送液体導入孔とを連結する気体回収部圧力調節管とを備えている。
【0007】
前記気液分離ノズルの加圧気液の導入部に複数の加圧気液導入孔を穿設し、前記複数の加圧気液導入孔の吐出側開口を、前記導入部の吐出側に形成した共通の気液分離空間に連通させたことを特徴としている。
【0008】
また、気液分離ノズルの加圧気液導入孔を下流側に行くにつれて不連続的に径が大きくなる段差部を設けたことを特徴とする。
【0009】
この脱気装置において、気液分離ノズルの気液分離管の内壁に偏倚したタップを形成することにより、気液分離管の壁面でもキャビテーションが生じる。このキャビテーション現象は、タップ断面の三角形状の山の位置を、加圧気液の流れ方向の下流側に偏倚して形成することにより、さらに顕著になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の脱気装置により、コンプレッサや耐圧容器などの設備が不要で、常温・常圧下で効率よく脱気できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の脱気装置の構造を示す断面図である。図2(a)は上面の加圧液体流入側から見た導入部421の形態を示す平面図、(b)は縦断面図、(c)は下面から見た図、(d)は(c)の拡大図、(e)は気液分離管423の拡大断面図である。図3は本発明の気液凝集部の実施例を示す図1のA−B断面図である。図4は本発明の気体回収部の実施例を示す図1のC−D断面図である。図5は本発明の気体回収部圧力減圧用ノズルの実施例を示す図である。
【0012】
図1において、脱気装置400は、外部から脱気を必要とする加圧液体が、接続管401を介して気液分離ノズル420に導入される。気液分離ノズル420は、図2に示す構造となっている。図中404は気体回収用電動弁、406は気体回収部圧力調節電動弁、408は気体凝集部内圧力調節電動弁、470は制御盤、471はフロートレス液面リレー、472は計装配線である。
【0013】
図2(b)に示すように、気液分離ノズル420は、加圧気液の導入部421と、気液分離空間424を有する。図においては、導入部421と気液分離空間424を形成した気液分離空間形成筒425は一体に形成した構造を示しているが、別体に形成することもできる。
【0014】
この導入部421内には、その上面に開口する加圧気液導入孔422を形成し、気液分離管423として導入部421の下に形成した気液分離空間424に開口している。この加圧気液導入孔422は、円、もしくは楕円の形状をなし、径の大きさと数は、加圧気液の圧力と種類によっても異なるが、図2(a)に示すように、複数本(この場合は31個)を端面でそれぞれが点対称位置になるように開口し、導入部421内を貫通した気液分離管423として気液分離空間424に開口している。また加圧気液導入孔422の流入側開口の周囲422aは、流入する液体の流れを円滑にするため、アールを取っている。
【0015】
この気液分離ノズル420に導入された加圧気液は、下流側に行くにつれて不連続的に径が大きくなる段差部を設けた気液分離管423を通って、断面積が急激に広くなる気液分離空間424に排出される際、気液分離管423内部と気液分離空間424の上底壁面424aにおいてキャビテーションが生じ、液体中の気体が霧状となって、液体と分離された状態となる。
【0016】
なお、気液分離管423は、図2(e)に示すように、内壁に偏倚したタップが形成されており、これにより、気液分離管の壁面でもキャビテーションが生じる。このキャビテーション現象は、タップ断面の三角形状の山の位置を、加圧気液の流れ方向の下流側に偏倚して形成することにより、さらに顕著になる。
【0017】
図1に戻って、気液分離ノズル420から吐出された分離気液は、分離気液導入用接続管402により、気体凝集部430内部に導入される。このとき、分離気液導入用接続管402の内面には、気液分離ノズル420の端面外周との間で乱流が起きないための乱流防止ツバ403が形成されている。
【0018】
気体凝集部430は頂部がドーム状の旋回流発生筒432とその旋回流発生筒432の底部から貫通して同心状に設けられている気体凝集筒434とを有しており、図3に示すように、分離気液導入用接続管402は、分離気液が旋回流発生筒432に旋回流を生じながら導入されるように、旋回流発生筒432の中心軸とは偏倚した位置(接線方向)に分離気液導入孔431を有している。なお、図3には、流体の進行方向に向かって左向き(反時計回り)に旋回流を生じる向きに分離気液導入孔431を設けているが、反対側に設けて右向きに旋回流を生じるようにしてもよい。
【0019】
気体凝集部430の旋回流発生筒432の頂部は、気液上昇管436が貫通して設けられており、気液上昇管436の上部は、気体回収部440の底部に貫通して設けられている。気体回収部440の中ほどには、図4に示すように、気体逆流防止用縮径部443が形成されており、この気体逆流防止用縮径部443よりも上位に気液上昇管436の上端が位置するように構成されている。気体回収部440の上部には、気体の回収状態を検知するフロートレス液面リレー及び気体回収用バルブ404を介して気体回収管405が設けられており、装置の連続運転を可能にするため、減圧装置473に接続されている。
【0020】
一方、気体凝集筒434の下端には気体凝集部内圧力調節バルブ408及び回収部圧力減圧用ノズル接続管409を介して気体回収部圧力減圧用ノズル450が接続されている。
【0021】
この気体回収部圧力減圧用ノズル450の構造を図5に示す。図5(a)は上面の加圧液体流入側から見た導入部451の形態を、(b)は縦断面を、(c)は下面の加圧液体吐出口側から見た図を示す。
【0022】
図5(b)に示すように、ノズル450は、加圧気液の導入部451と、返送液体吸引圧力発生空間457を有する。図5においては、導入部451と返送液体吸引圧力発生空間457を形成した返送液体吸引圧力発生筒体456は別体に形成し、それぞれを嵌合して一体化した構造を示しているが、当初から一体に形成することもできる。
【0023】
この導入部451内には、その上面に開口する加圧液体導入孔452を形成し、導入部451の下に形成した返送液体吸引圧力発生空間457に開口している。この加圧液体導入孔452は、円、楕円もしくは導入部451の上面を底面とする円錐台または楕円錘台の形状をなし、径の大きさと数は、このノズルの使用用途と加圧液体の種類によっても異なるが、図5(a)に示すように、端面に対し、返送液体吸引圧力発生空間457の開口断面積が10〜40%になる程度の複数本(この場合は3個)を端面でそれぞれが点対称位置になるように開口し、導入部451内を貫通し、返送液体吸引圧力発生空間457に開口している。また加圧液体導入孔452の流入側開口の周囲452aは、流入する液体の流れを円滑にするため、アールを取っている。453は返送液体導入孔を示す。
【0024】
この返送液体導入孔453は、側面の開口から導入部451の返送液体導入孔453に挿入された返送液体導入管454によって形成され、返送液体吸引圧力発生空間457に放射状または中央に1個(この場合は中央に1個)開口されている。
【0025】
なお、455は返送液体導入孔453内部を掃除する場合必要とされる孔を塞ぐための返送液体導入孔メクラビス、458は返送液体吸引圧力発生筒体456内面に形成された、加圧液体導入孔452に連通する円弧状の加圧液体誘導溝、459は返送液体吸引圧力発生筒体456の端部に形成された接合用凸部、460は導入部451と返送液体吸引圧力発生筒体456とを接合する接合用止具である。
【0026】
次に、本発明の脱気装置による脱気のプロセスについて説明する。
【0027】
1.気液分離ノズル420に導入された加圧気液は、気液分離ノズル420内のキャビテーション現象により真空に近い状態が生じ、液体中の気体が霧状になって分離される。
【0028】
2.分離された気液は分離気液導入孔431より気体凝集部430へ旋回流として送り込まれる。
【0029】
3.送り込まれた気液は旋回流を伴い、ドーム部上部に達し、気体凝集筒434を旋回流を加速させ降下してくる。このとき、気体凝集空間435の中央部に気体が凝集し、竜巻状になる。
【0030】
4.液体は流れ方向にある気体凝集部430下方の圧力調節バルブ408に流れて行くが、前記のように竜巻状になった気体はエアーリフトの作用(液体中における気体の浮上作用)により気体凝集空間435の中央部に留まる。
【0031】
5.この中央部に留まった気体は、気体回収部圧力減圧用ノズル450の返送液体導入管454に接続されている気体回収部圧力調節管407により気体回収部440内が減圧され、気体回収部440に送られる。すなわち、脱気装置410最下部の脱気水吐出口前部に取り付けた気体回収部圧力減圧用ノズル450の導入部451に流入する加圧液体の有する負圧発生効果が返送液体導入孔453に発生し、これにより、気体回収部440内の圧力が減圧され、竜巻状になった気体の浮上を促す。
【0032】
6.浮上した気泡は気液上昇管436内を通り、気体回収部440内の気体回収空間441に集まる。
【0033】
7.気体回収が進むと気体回収空間441内のフロートレス液面リレー471が液面低下を検知し、制御盤470に信号を送る。
【0034】
8.液面低下の信号を受けると、電動弁404は開、電動弁406は閉作動をする。同時に気体凝集筒434下部に設けた電動弁408を閉方向に作動させ、減圧装置473により気体回収空間441内の気体を強制的に回収することによって、気液上昇管436内の流れを気体回収部440に強制的に導き内部液面を上昇させる。
【0035】
9.液面が上限に達するとフロートレス液面リレー471が検知し、制御盤470に信号を送る。
【0036】
10.液面上昇の信号を受けると、減圧装置は停止し、電動弁404は閉、電動弁406は開作動をする。
【0037】
11.同時に気体凝集筒下部の電動弁408を開方向に作動させ、気体回収を行う。
【0038】
12.上記プロセスにより、装置の連続運転下における気体回収を行う。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の脱気装置の実施例を示す図である。
【図2】本発明の気液分離ノズルの実施例を示す図である。
【図3】本発明の気液凝集部の実施例を示す図1のA−B断面図である。
【図4】本発明の気体回収部の実施例を示す図1のC−D断面図である。
【図5】本発明の気体回収部圧力減圧用ノズルの実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
400:脱気装置
401:接続管
402:分離気液導入用接続管
404:気体回収用電動弁
405:気体回収管
406:気体回収部圧力調節電動弁
408:気体凝集部内圧力調節電動弁
409:回収部圧力減圧用ノズル接続管
420:気液分離ノズル
421:導入部
422:加圧気液導入孔
423:気液分離管
424:気液分離空間
425:気液分離空間形成筒
430:気体凝集部
431:分離気液導入孔
432:旋回流発生筒
434:気体凝集筒
436:気液上昇管
440:気体回収部
441:気体回収空間
443:気体逆流防止用縮径部
450:気体回収部圧力減圧用ノズル
451:導入部
452:加圧液体導入孔
453:返送液体導入孔
454:返送液体導入管
455:返送液体導入孔メクラビス
456:返送液体吸引圧力発生筒体
457:返送液体吸引圧力発生空間
458:円弧状の加圧液体誘導溝
459:接合用凸部
470:制御盤
471:フロートレス液面リレー
472:計装配線
473:減圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を含む液体を導入する加圧気液導入孔を形成した第1の導入部と、この加圧気液導入孔の吐出側において加圧気液導入孔の総面積よりも断面積を大きくした気液分離空間とを有する気液分離ノズルと、
頂部がドーム状の有底の旋回流発生筒の底部近傍に前記気液分離ノズルの吐出側から吐出される分離気液を中心軸線に対して偏倚して導入する分離気液導入孔と、
前記旋回流発生筒の底部を貫通して中心軸線と同軸に設けられた気体凝集筒とを備えた気体凝集部と、前記気体凝集部の旋回流発生筒の頂部に貫通して設けられた気液上昇管と、
この気液上昇管が底部に貫通して内部に挿通される気体回収部と、
前記気体凝集筒の下端にバルブを介して接続され、排出される加圧液体を導入する加圧液体導入孔を形成した第2の導入部と、
この加圧液体導入孔の吐出側において加圧液体導入孔の総面積よりも断面積を大きくした返送液体吸引圧力発生空間と、
前記第2の導入部の前記返送液体吸引圧力発生空間に一端が開口し、前記第2の導入部の側部に他端が開口する返送液体導入孔とを有する気体回収部圧力減圧用ノズルと、
前記気体回収部の底部と前記気体回収部圧力減圧用ノズルの返送液体導入孔とを連結する気体回収部圧力調節管とを備えた脱気装置。
【請求項2】
前記気液分離ノズルの加圧気液の導入部に複数の加圧気液導入孔を穿設し、前記複数の加圧気液導入孔の吐出側開口を、前記導入部の吐出側に形成した共通の気液分離空間に連通させた請求項1記載の脱気装置。
【請求項3】
気液分離ノズルの加圧気液導入孔を下流側に行くにつれて不連続的に径が大きくなる段差部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の脱気装置。
【請求項4】
気液分離ノズルの加圧気液導入孔の内壁に、断面の三角形状の山の位置が、加圧気液の流れ方向の下流側に偏倚しているタップを形成した請求項1又は2記載の脱気装置。
【請求項5】
気体回収管、気体回収部圧力調節管及び気体凝集筒下流に接続された各々のバルブを電気的制御により行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱気装置。
【請求項6】
気体回収管に真空ポンプ等の減圧装置を取り付けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の脱気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−289958(P2007−289958A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154838(P2007−154838)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【分割の表示】特願2001−538084(P2001−538084)の分割
【原出願日】平成12年11月13日(2000.11.13)
【出願人】(398005630)株式会社オ−ラテック (15)
【Fターム(参考)】