説明

脱水用袋体

【課題】排出部を容易に開閉できることで再使用することができ、ならびに、その排出部を強固に閉じることができ、且つ排出量を調整することができる泥土の脱水用袋体を提供する。
【解決手段】透水性を有する布帛からなり、泥土を内部に注入するための注入口2aを有し、外部に開口する第1開口部Aを一端に形成した外袋2と、第1開口部Aの全周にわたって設置し、緩めたり締めたりすることにより第1開口部Aを開閉するための複数の線状体3とを備える脱水用袋体1であって、この脱水用袋体1は、第1開口部Aを複数に分割した分割開口部A1、A2を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含水率の泥土を注入して袋詰め脱水を行うための脱水用袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川、湖沼、海洋などで浚渫された高含水率の泥土の脱水処理としては、布帛等からなり透水性を有する袋体に、高含水率の泥土をポンプ等により圧送して充填してから、袋体を一定期間放置する、いわゆる、袋詰め脱水処理が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の袋詰め脱水処理において使用される袋体は、透水性を有する細長い袋体である。ところで、特許文献1には、この袋体に係るその他の特徴についての記載は特に見当たらない。また、このような袋詰め脱水処理用の袋体を1回限りの使用で処分するのではなく、繰り返し再使用することができれば、非常に経済的である。
【0003】
一方、従来、ペレット状の樹脂製品、けい砂、又はセメントなどの粒状又は粉状の製品又は原料の搬送などに使用されるフレキシブルコンテナバッグの底面に設けられた、いわゆる巾着の口状をした排出部の構造が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。この特許文献2に記載のフレキシブルコンテナバッグは、内袋と外袋との二重構造からなるフレキシブルコンテナバッグであって、その排出部は、内袋の排出筒の下端を上方外側に折り返して、外袋の排出筒側面に固着して形成され、ロープにより排出口を緩めたり締めたりする構造となっている。内容物の排出は、この締めたロープを緩めることにより排出できるようにしたものである。また、特許文献3に記載のフレキシブルコンテナバッグも同様に、底面に設けられた排出部は、ロープにより排出口を緩めたり締めたりする構造となっている。
【0004】
また、フレキシブルコンテナバッグの底面に設けられた排出部を容易に開閉できるように簡単に縫着して閉じた構造としたフレキシブルコンテナバッグの排出部の構造も知られている(例えば、特許文献4参照)。このフレキシブルコンテナバッグは、底面全面が開口したフレキシブルコンテナバッグ胴部の底面に2枚の織布を縫着し、この2枚の織布を互いに単環縫、二重環縫などのような手段で簡単に縫着し、内容物の排出は、この2枚の織布間の縫着を離開して、この2枚の織布間から排出できるようにしたものである。
【0005】
【特許文献1】特許第2535302号公報
【特許文献2】特開2005−22736号公報
【特許文献3】特開2003−285898号公報
【特許文献4】特開1995−315481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載されたフレキシブルコンテナバッグの排出部は、ロープを緩めたり締めたりすることで容易に開閉することができるが、全開又は全閉のいずれかしか選択できず、排出量の調整をすることはほとんどできない。また、フレキシブルコンテナバッグに詰める内容物の量が多かったり、内容部の比重が大であったりして、内容物の重量が重い場合には、内容物の自重、又は搬送時の振動等で締め付けられたロープが緩み、内容物が漏出してしまう場合がある。
【0007】
また、特許文献4に記載されたフレキシブルコンテナバッグの排出部は、簡易に縫着さされているため比較的容易にその縫着を離開して、排出部を開にすることができるが、このフレキシブルコンテナバッグを再使用しようとする場合には、再度、排出部を縫着する必要があり、フレキシブルコンテナバッグの使用者にとっては容易なことではない。また、容易に離開可能な排出部の縫着では、フレキシブルコンテナバッグに詰める内容物の量が多かったり、内容部の比重が大であったりして、内容物の重量が重い場合には、内容物の自重、又は搬送時の振動等で排出部の縫着が離開し、内容物が漏出してしまう場合がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排出部を容易に開閉できることで再使用することができ、ならびに、その排出部を強固に閉じることができ、且つ排出量を調整することができる脱水用袋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明に係る脱水用袋体は、高含水率の泥土を注入して袋詰め脱水を行うための脱水用袋体に関する。そして、本発明に係る脱水用袋体は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の脱水用袋体は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る脱水用袋体における第1の特徴は、透水性を有する布帛からなり、前記泥土を内部に注入するための注入口を有し、外部に開口する第1開口部を一端に形成した外袋と、前記第1開口部の全周にわたって設置され、緩められたり締められたりすることにより前記第1開口部を開閉するための複数の線状体とを備え、前記第1開口部を複数に分割した分割開口部を、複数の前記線状体により、それぞれ開閉することである。
【0011】
この構成によると、上記第1開口部は、いわゆる巾着の口状になり、線状体を緩めたり締めたりすることにより第1開口部を開閉できることで、外部に開口する第1開口部を容易に開閉することができ、脱水用袋体を再使用することが可能となる。
【0012】
また、第1開口部に形成されるそれぞれの分割開口部の大きさは、開口が1つの場合より分割された分だけ小さくなり、その分割開口部が複数の線状体によって別々に締め付けて閉じられる。よって、大きな1つの開口を1本の線状体で締め付けるよりも、全体として強固に締め付けることが可能となる。また、例えば、第1開口部が底部となる状態で脱水用袋体を吊り下げた場合、複数の分割開口部を複数の線状体で締め付けて閉じられた底部で泥土の重量を支持するのと、1つの開口部を1本の線状体で締め付けて閉じられた底部で泥土の重量を支持するのとでは、複数の分割開口部を有する底部で泥土の重量を支持するほうが泥土の重量が分散し、線状体1本当たりの受け持つ重量は小さくなる。従って、外部に開口する第1開口部をより強固に閉じることが可能となる。
【0013】
尚、第1開口部を分割せずに1つの開口のままとし、その1つの開口を複数の線状体で締め付けて、線状体1本当たりの負担重量を低減する手段も考えられる。しかし、この場合には、全ての線状体がそれぞれ泥土の重量を負担支持するように、線状体を全てほぼ均等に締め付けることが必要となるが、これは容易でなく、結局、いずれかの線状体が主に泥土の重量を負担支持することになってしまうという問題がある。
【0014】
また、複数の分割開口部の開口数を適宜調整することにより、処理土の排出量を調整することができる。
【0015】
また、本発明に係る脱水用袋体における第2の特徴は、前記線状体は、帯状の布帛で形成されていることである。
【0016】
この構成によると、面接触で第1開口部を締め付けることができるため、より強固に第1開口部を締め付け、閉じることが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る脱水用袋体における第3の特徴は、透水性を有する布帛からなり、前記外袋の内側に設置され、一端に形成され外部に開口する第2開口部を開閉できる内袋をさらに備え、前記内袋は、前記泥土が当該内袋の内部を経由して前記外袋の外部に排出されるように、他端が前記外袋の内側全周に縫着されていることである。
【0018】
この構成によると、脱水用袋体は、外袋と内袋とを有する二重構造になる。二重構造とすることで、脱水用袋体の強度が全体的に向上する。また、処理土は、内袋に形成された第2開口部と、外袋に形成された第1開口部とをいずれも通過しないと外部に排出されないので、処理土の漏れをより防止することが可能となる。よって、より確実に脱水用袋体の開口部を閉じることができる。
【0019】
また、内袋の他端が外袋の内側全周に縫着されていることにより、内袋はその他端を基準に外袋の内部で固定され、例えば、折りたたまれて保管されていた脱水用袋体を広げると、ほぼ確実に内部の内袋も広がる。よって、泥土の注入を効率よく行うことができる。
【0020】
また、本発明に係る脱水用袋体における第4の特徴は、前記内袋は、面ファスナーにより前記第2開口部が開閉されることである。
【0021】
この構成によると、容易に内袋の第2開口部の開閉操作を行うことができる。また、振動等による緩みの発生も生じにくいので、より強固に第2開口部を締め付け、閉じることが可能となる。
【0022】
また、本発明に係る脱水用袋体における第5の特徴は、前記線状体の緩みを防止するための留め具をさらに備えていることである。
【0023】
この構成によると、線状体の振動等による緩みを防止することができ、より強固に第1開口部を締め付け、閉じることが可能となる。
【0024】
また、本発明に係る脱水用袋体における第6の特徴は、前記外袋の内部空間を横切るように前記外袋の内側に設置され、且つ、前記外袋の内側に開口する筒状排水袋体と、前記注入口と前記筒状排水袋体とを連通させる連通袋体と、をさらに備えていることである。
【0025】
本発明に係る脱水用袋体は、袋体内に高含水率の泥土が注入された後、泥土が十分に脱水されるまで一定期間放置される。この構成によると、袋体内に泥土が注入された状態で、その中心付近の泥土から水分が筒状排水袋体を伝って袋体の表面へ移動し、外部へ排出されるため、脱水時間が短縮される。
【0026】
また、注入口から注入された泥土は、連通袋体及び筒状排水袋体を経由して、筒状排水袋体の開口部から袋体内に注入される。そのため、袋体内に泥土が注入されていくにつれ、筒状排水袋体の内部にも泥土が注入されて膨張することになり、筒状排水袋体がその外側の泥土により押し潰されることなく袋体内で筒状に保持される。よって、袋体内の泥土に含まれる水分は筒状排水袋体を伝って効率よく外袋の表面まで移動するため、脱水時間がさらに短縮される。
【0027】
また、注入された泥土は外袋若しくは内袋の内面に直接注入されず、連通袋体の内部及び筒状排水袋体の内部を経由して外袋若しくは内袋の中に注入される。このため、注入された泥土の流れに乱れが発生しにくく、外袋若しくは内袋の内面に形成された泥膜が破壊されにくいので、袋詰め脱水においてしばしば見られる注入開始直後の排出水の濁り(初期濁り)を効果的に抑えることができる。また、注入された泥土は、筒状排水袋体の中を通過する間に濾過されるので、これによっても濁りが除去される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る脱水用袋体の第1実施形態を示す斜視図である。図2は、図1に示す脱水用袋体の開口部を閉にした状態でのX−X断面模式図である。また、図3は、図1に示す脱水用袋体の開口部を開にした状態でのX−X断面模式図である。
【0030】
図1乃至図3に示すように、本第1実施形態の脱水用袋体1は、泥土を内部に注入するための注入口2aを有し、外部に開口する第1開口部Aを一端に形成した外袋2と、第1開口部Aの全周にわたって設置し、緩めたり締めたりすることにより第1開口部Aを開閉するための線状体3とを備えている。このように第1開口部Aを、いわゆる巾着の口状に形成している。これにより容易に第1開口部Aを開閉でき、脱水用袋体1を再使用することが可能となる。これは、他の実施形態においても同様である。
【0031】
外袋2は、透水性を有する筒状の布帛からなり、例えば、ポリエステル繊維の経糸(1100T/2)、緯糸(1100T/4)で織成される。また、この筒状の布帛は、経糸に対してスパイラル状に連続して織り込まれた緯糸とからなる、継ぎ目のない筒状の布帛である。このため、外袋2は高い破断応力を有しており、外袋2の中にポンプ等の注入手段により泥土を加圧注入して膨張させても容易に破断しない。また、この外袋2は、内部に泥土が注入されたときに、外袋2の径方向に膨張し、これによって、外袋2の筒長方向には収縮する。
【0032】
また、外袋2の一方の端部は折り曲げられた状態で縫着されており、この端部には棒状の吊り具40が挿入される筒状の吊り部2bが形成されている。例えば、クレーン等により、この吊り具40を介して本第1実施形態の脱水用袋体1を吊り下げ、そして移動させることができる。ここで、脱水用袋体1の安定した吊り下げを考慮すると、脱水用袋体1は、筒長方向に長い形状に形成されることが好ましい。しかし、必ずしも筒長方向に長い形状に形成される必要はない。脱水用袋体1が、筒長方向に長い形状に形成されることが好ましいことは、他の実施形態においても同様である。
【0033】
線状体3は、ロープ、鎖等を使用することもできるが、帯状の布帛で形成されていることが好ましい。帯状の布帛で形成された線状体3を用いることで、面接触で第1開口部Aを締め付けることができる。よって、より強固に第1開口部Aを締め付け、閉じることができる。これは、他の実施形態においても同様である。
【0034】
また、図1に示すように、本第1実施形態の脱水用袋体1は、第1開口部Aを2つに分割した分割開口部A1と分割開口部A2とを有し、それぞれ線状体3により開閉される。これにより、第1開口部Aに形成される分割開口部A1、A2の大きさは、開口が1つの場合より2つに分割された分だけ小さくなり、それぞれ線状体3によって別々に締め付けて閉じられる。よって、大きな1つの開口を1本の線状体で締め付けるよりも、全体として強固に締め付けることが可能となる。また、例えば、第1開口部Aが底部となる状態で脱水用袋体1を吊り下げた場合、2つの分割開口部をA1、A2をそれぞれ線状体3で締め付けて閉じられた底部で泥土の重量を支持するのと、1つの開口部を1本の線状体で締め付けて閉じられた底部で泥土の重量を支持するのとでは、分割開口部A1、A2を有する底部で泥土の重量を支持するほうが、泥土の重量が分散し、線状体3の1本当たりの受け持つ重量は小さくなる。従って、外部に開口する第1開口部Aをより強固に閉じることが可能となる。また、分割開口部A1、A2の開口数を適宜調整することにより、処理土の排出量を調整することもできる。
【0035】
尚、第1開口部Aは、このように2分割されていることにこだわらず、3分割、4分割等されていても良い。このように、第1開口部Aを2つ以上の複数の分割開口部にすることは、他の実施形態でも同様である。
【0036】
また、図2及び図3に示すように、脱水用袋体1における外袋2の内側には、外部に開口する第2開口部Bを有する内袋4が設けられている。この内袋4は、泥土が内袋4の内部を経由して外袋2の外部に排出されるように、端部が外袋2の内側全周に縫着されている。
【0037】
内袋4は、外袋2と同様、透水性を有する筒状の布帛からなり、例えば、ポリエステル繊維の経糸(1100T/2)、緯糸(1100T/4)で織成される。また、この筒状の布帛は、経糸に対してスパイラル状に連続して織り込まれた緯糸とからなる、継ぎ目のない筒状の布帛である。このため、内袋4は高い破断応力を有しており、内袋4の中にポンプ等の注入手段により泥土を加圧注入して膨張させても容易に破断しない。脱水用袋体1を外袋2と内袋4との二重構造にすることで、脱水用袋体1の強度は全体的に向上する。
【0038】
内袋4は、縫着により一端が内袋4の内側に固定され、内袋4の第2開口部Bは、面ファスナー5aを取り付けた面ファスナー付ベルト5により開閉される。これにより、容易に内袋4の第2開口部Bの開閉操作を行うことができる。尚、第2開口部Bの開閉手段は、これに限られることはなく、例えば、単に帯状の布帛を用いても良いし、ロープ、鎖等を用いても良い。
【0039】
また、図2に示すように、内袋4は、第2開口部B側を丸めて外袋2の内側に配置されている。このように配置することで、閉じられた内袋4の第2開口部Bからの泥土の漏れをより防ぐことができる。
【0040】
高含水率の泥土は、ポンプ等の注入手段により脱水用袋体1に設けられた注入口2aから脱水用袋体1内に注入される。次に、泥土が注入された脱水用袋体1を適宜、適切な場所に移動させ一定期間放置すること等により、泥土中の水分は、透水性を有する外袋2や内袋4を伝って脱水用袋体1の表面から外部に排出される。処理された処理土は、必要に応じ内袋4の第2開口部B及び外袋2の第1開口部Aを経由して、外部に排出される。処理土が排出された脱水用袋体1は、再度、泥土の袋詰め脱水に使用することが可能である。
【0041】
図4は、線状体3の留め具を示す図である。図4に示すように、留め具8を取り付けた線状体3を使用して、外袋2の第1開口部Aを締め付けることにより、非常に強固に緩み止め防止を行うことができる。また、より強く第1開口部Aを締め付け、閉じることもできる。尚、留め具8は、この形状に限られるものではない。また、この留め具8は、内袋4の第2開口部Bを開閉する面ファスナー付ベルト5の面ファスナー5aの代わりに用いることも可能である。また、この留め具8は、第1実施形態だけでなく、他の実施形態においても使用できるものである。
【0042】
(第2実施形態)
図5は、本発明に係る脱水用袋体の第2実施形態を示す断面模式図である。図6は、図5の第2実施形態に係る脱水用袋体に泥土を注入している途中の状態を示す図である。また、図7は、図5の第2実施形態に係る脱水用袋体への泥土の注入が完了した状態を示す図である。
【0043】
図5乃至図7に示すように、本第2実施形態の脱水用袋体10は、泥土を内部に注入するための注入口12aを有し、外部に開口する第1開口部Aを一端に形成した外袋12と、第1開口部Aの全周にわたって設置し、緩めたり締めたりすることにより第1開口部Aを開閉するための線状体3とを備えている。このように第1開口部Aを、いわゆる巾着の口状に形成している。これにより容易に第1開口部Aを開閉でき、脱水用袋体10を再使用することが可能となる。
【0044】
また、本第2実施形態の脱水用袋体10は、外袋12の内部空間を横切るように外袋12の内側に設置され、且つ、外袋12の内側に開口する筒状排水袋体6と、注入口12aと筒状排水袋体6とを連通させる連通袋体7とをさらに備えている。
【0045】
外袋12は、第1実施形態の外袋2と同様、透水性を有する筒状の布帛からなる。また、筒状排水袋体6は、透水性を有する筒状の布帛からなり、図5に示すように、膨張状態の外袋12内において、その内部空間の中心付近を通って外袋12の長手方向に配置されている。筒状排水袋体6の一端部には、連通袋体7の端部が挿入されるスリット状の開口6aが形成されている。一方、筒状排水袋体6の他端部には、外袋12内へ開口するスリット状の開口6bが形成されている。ここで、開口6a及び開口6bは、必ずしもスリット状である必要はなく、例えば、孔状であっても良い。
【0046】
連通袋体7は、透水性を有する筒状の布帛からなる。そして、この連通袋体7は、一端部が泥土を内部に注入するための注入口12aを形成し、外袋12に縫着されている。また、連通袋体7の他端部は、筒状排水袋体6の開口6aから筒状排水袋体6の端部の内側に挿入されている。さらに、筒状排水袋体6の内側に入り込んだ連通袋体7の端部にはスリット状の開口7aが形成されており、この開口7aを介して連通袋体7と筒状排水袋体6とが連通している。また、この連通袋体7の他端部は、脱水用袋体10を形成する外袋12に閉塞された状態で縫着されている。そして、この連通袋体7を介して注入口12aと筒状排水袋体6とが連通した状態となっている。
【0047】
次に、図6及び図7に基づいて、脱水用袋体10を用いた高含水率の泥土30の袋詰め脱水処理について説明する。まず、第1開口部Aが確実に閉にされているか確認する。そして、注入口12aに注入ホース81を挿入し、この注入ホース81から脱水用袋体10内に泥土30を注入していく。このとき、注入ホース81から注入された泥土30は、連通袋体7を通って開口7aから筒状排水袋体6内に流入する。さらに、この泥土30は、筒状排水袋体6内を通って筒状排水袋体6の端部に形成された開口6bから外袋12内へ流れ込み、外袋12の内部に泥土30が堆積していく。そして、泥土30は外袋12の下部から徐々に充填される。
【0048】
このように、注入された泥土30は外袋12の内面に直接注入されず、連通袋体7の内部及び筒状排水袋体6の内部を経由して外袋12の中に充填されていく。そのため、注入された泥土30の流れに乱れが発生せず、外袋12の内面に形成された泥膜が破壊されることがないので、特に注入初期において外袋12から排出される水の濁り(初期濁り)を効果的に抑えることができる。よって、例えば、環境汚染物質を含有するような泥土の脱水にも有効である。
【0049】
さらに、外袋12内に泥土30を注入していくと、図7に示すように、外袋12の上部まで堆積してきた泥土30が、注入口12aの折り返し部及び連通袋体7の一方側の空間に集中して充填される。すると、連通袋体7は、この泥土30により圧迫されて外袋12の内面に押しつけられ閉塞されていく。従って、泥土30が外袋12内に充填された後に、注入口12aの折り返し部から外部へ泥土30が逆流しないようになる。
【0050】
このようにして外袋12内に泥土30を充填した後に、その泥土30を脱水するために、脱水用袋体10を一定期間放置する。ここで、外袋12内の泥土30は、外袋12の表面から離れた中心付近に位置している部分ほど、その水分が外袋12の表面まで移動しにくく、外部へ排出されにくいため、脱水に時間がかかる。しかし、本第2実施形態に係る脱水用袋体10においては、泥土30が充填された膨張状態の外袋12内に、その内部空間の中心付近を横切る筒状排水袋体6が外袋12の長手方向に延びた状態で設置されている。そのため、外袋12内の中心付近に位置する泥土30の水分は筒状排水袋体6を伝って外袋12の表面まで速やかに移動し、外部へ排出される。よって、脱水時間が短縮される。また、膨張した外袋12内の泥土には高い注入圧力を作用させることができるため、脱水が促進される。
【0051】
(第3実施形態)
図8は、本発明に係る脱水用袋体の第3実施形態を示す斜視図である。図9は、図8の脱水用袋体の設置状態を示す詳細断面模式図である。また、図10は、図8の脱水用袋体の施工例を示す断面図である。
【0052】
図8に示すように、本第3実施形態の脱水用袋体20は、泥土を内部に注入するための注入口22aを有し、外部に開口する第1開口部Aを一端に形成した外袋22と、第1開口部Aの全周にわたって設置し、緩めたり締めたりすることにより第1開口部Aを開閉するための線状体3とを備えている。このように第1開口部Aを、いわゆる巾着の口状に形成している。これにより容易に第1開口部Aを開閉でき、脱水用袋体20を再使用することが可能となる。
【0053】
また、本第3実施形態の脱水用袋体20は、脱水用袋体20の外面に沿って、内部に植生材料を収容可能な開口部を有するポケット部27をさらに備えている。このように、植生材料を収容可能なポケット部27を有するようにすることで、脱水用袋体20は、泥土脱水用だけでなく、植生基盤材の流出を抑制することが可能な植生用脱水袋体としても用いることができる。
【0054】
外袋22は、第1、第2実施形態の外袋と同様、透水性を有する筒状の布帛からなる。また、ポケット部27は脱水用袋体20の外面に沿って取り付けられたシート状部材23により形成されており、開口部23bからシート状部材23と脱水用袋体20の外側表面との間の収容空間に植生材料を収容可能である。ここで、植生材料とは、植物の種、苗木、地下茎等の生育して植生を形成する植物を含む材料をいい、当該植物と土、肥料等とを混合した材料や、小さな苗木と土を小袋に入れたもの等も含まれる。
【0055】
また、脱水用袋体20には、棒状の吊り具が挿通可能なリング状の吊り部26が繊維性ベルト等によって形成されている。また、脱水用袋体20は、シート状部材23の外面を覆うように取り付けられたカバー部材24をさらに備えている。尚、吊り部の形状は、こえに限られず、例えば、図1に示す第1実施形態の吊り部2bのような形状であっても良い。
【0056】
図9に、河川護岸100の傾斜面に沿って積み重ねて設置された状態の脱水用袋体20の断面摸式図を示す。脱水用袋体20は、脱水用袋体20内に泥土30を保持した状態で、ポケット部27が形成されていない端部を河川護岸100の傾斜面に沿わせて積み重ねられることにより、脱水用袋体20の他端に設けられたシート状部材23及びカバー部材24を露出させた状態で設置される。ポケット部27に収容された植生材料91内に含まれる植物は、シート状部材23及びカバー部材24を貫通して生育し、脱水用袋体20の露出した表面に植生を形成する。
【0057】
図10に、河川護岸100に脱水用袋体20を積み重ねて形成された法面全体の断面図を示す。脱水用袋体20は、栗石及び砕石等の埋戻材102により固められた地盤上に積層されており、脱水用袋体20と河川護岸100との隙間は砂等の埋戻材103により充填されている。また、積層した脱水用袋体20の最上端における外袋22の露出部は土104によって覆われている。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る脱水用袋体の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す脱水用袋体の開口部を閉にした状態でのX−X断面模式図である。
【図3】図1に示す脱水用袋体の開口部を開にした状態でのX−X断面模式図である。
【図4】留め具を示す図である。
【図5】本発明に係る脱水用袋体の第2実施形態を示す断面模式図である。
【図6】図5の脱水用袋体に泥土を注入している途中の状態を示す図である。
【図7】図5の脱水用袋体への泥土の注入が完了した状態を示す図である。
【図8】本発明に係る脱水用袋体の第3実施形態を示す斜視図である。
【図9】図8の脱水用袋体の設置状態を示す詳細断面模式図である。
【図10】図8の脱水用袋体の施工例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 脱水用袋体
2 外袋
3 線状体
4 内袋
6 留め具
10 脱水用袋体
20 脱水用袋体
A 第1開口部
B 第2開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高含水率の泥土を注入して袋詰め脱水を行うための脱水用袋体であって、
透水性を有する布帛からなり、前記泥土を内部に注入するための注入口を有し、外部に開口する第1開口部を一端に形成した外袋と、
前記第1開口部の全周にわたって設置され、緩められたり締められたりすることにより前記第1開口部を開閉するための複数の線状体とを備え、
前記第1開口部を複数に分割した分割開口部を、複数の前記線状体により、それぞれ開閉することを特徴とする、脱水用袋体。
【請求項2】
前記線状体は、帯状の布帛で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の脱水用袋体。
【請求項3】
透水性を有する布帛からなり、前記外袋の内側に設置され、一端に形成され外部に開口する第2開口部を開閉できる内袋をさらに備え、
前記内袋は、前記泥土が当該内袋の内部を経由して前記外袋の外部に排出されるように、他端が前記外袋の内側全周に縫着されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の脱水用袋体。
【請求項4】
前記内袋は、面ファスナーにより前記第2開口部が開閉されることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の脱水用袋体。
【請求項5】
前記線状体の緩みを防止するための留め具をさらに備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の脱水用袋体。
【請求項6】
前記外袋の内部空間を横切るように前記外袋の内側に設置され、且つ、前記外袋の内側に開口する筒状排水袋体と、
前記注入口と前記筒状排水袋体とを連通させる連通袋体と、
をさらに備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の脱水用袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−80186(P2008−80186A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260128(P2006−260128)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】