説明

脱硫剤カートリッジ

【課題】 小型で廉価かつ保守対応に優れかつ安全性の向上を図る。
【解決手段】上部に第1開口部60を形成するとともに底部に第2開口部61を形成したカートリッジ缶55に、第1開口部60を閉塞してキャップ部材56を組み付けるとともに第2開口部61を閉塞して密閉シール57を貼着して脱硫剤58を密閉する。第1開口部60との対向部位に薄肉連結部69を介して蓋部68を一体に形成した樹脂製キャップ部材56が薄肉連結部69を破断して蓋部68を取り外して第1開口部60を開口し、密閉シール57を引き剥がして第2開口部61を開口して脱硫器15に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高圧燃料ボンベを燃料供給源とし、この高圧燃料ボンベに充填された液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas。以下LPGと称する。)や天然ガス、水素ガス或いはジメチルエーテル(DME)等の燃料ガスをガス器具と燃料電池装置とに供給する燃料ガス供給装置に付設され、燃料ガスに含有された硫黄成分や硫黄化合物等を吸着除去する脱硫器に用いられる脱硫剤カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池装置は、省エネルギー化やクリーン化を実現する高効率なコージェネレーションシステム(電気・熱同時発生システム)の有力手段として積極的な開発が進められている。燃料電池装置においては、業務用或いは一般家庭用として供給システムが確立されている天然ガスやLPGを燃料として水素を取り出す方式が注目されている。
【0003】
燃料電池装置においては、燃料ガスから水素を取り出す改質工程とともに、硫黄分を除去する脱硫工程が大きな研究課題となっている。燃料電池装置においては、燃料ガスに混入する高沸点炭化水素やメルカプタン、チオフェン等の天然成分や着臭剤として混合された硫黄成分や硫黄化合物が装置内部に用いられている各種の改質触媒や燃料電池電極触媒に対して被毒物質として作用して触媒特性の低下等の原因となる。燃料電池装置においては、このために燃料ガスから水素を取り出す改質工程とともに硫黄成分を除去する脱硫工程が必要となる(例えば、特許文献1乃至特許文献3を参照。)。
【0004】
燃料電池装置システムは、都市ガスを燃料ガスとして用いる都市ガス方式が先行して開発を進められている状況にあり、燃料電池ユニットを介して屋内に設置された適宜の電気機器に対して電気エネルギーの供給を行う。都市ガス方式の燃料電池装置システムは、燃料ガスが都市ガス配管内を3.5kPa程度の圧力で供給されるために、燃料ガスを所定の圧力まで昇圧させる昇圧装置が必要となる。また、都市ガス方式の燃料電池装置システムは、脱硫器について例えば5年間程度のメンテナンスフリーとするために高価な貴金属系の脱硫触媒を用いることが必要となる。都市ガス方式の燃料電池装置システムは、脱硫器の交換のために新たなメンテナンスシステムの構築を必要とするとともにユーザに対して高額なメンテナンス費用を負担させるといった問題がある。
【0005】
一方、LPG又は天然ガスを充填した高圧ボンベを用いるボンベ方式の燃料電池装置システムは、特許文献3に開示されているが、莫大な設置投資の負担を不要として非都市ガス供給地域での導入も可能である。また、ボンベ方式の燃料電池装置システムは、高圧燃料ボンベの内部に燃料ガスを高圧で充填することから昇圧装置を不要として燃料ガスの供給が行われ、システム全体の簡易化、小型化、低コスト化等が図られる。ボンベ方式の燃料電池装置システムは、所定期間で高圧燃料ボンベの交換が行われることから、この高圧燃料ボンベの交換時に脱硫器の交換も行うことが可能である。ボンベ方式の燃料電池装置システムは、交換頻度が高められることによって廉価な吸着触媒を内蔵した廉価な脱硫器を用いることが可能であるとともに、新たなメンテナンスシステムの構築も不要である。
【0006】
【特許文献1】特開平6−49469号公報
【特許文献2】特開2001−279256
【特許文献3】特開2002−83623
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ボンベ方式の燃料電池装置システムは、上述したように都市ガス方式の燃料電池装置システムと比較して莫大な設備投資を必要とせずに非都市ガス供給地域への導入が可能であること、システム全体の簡易化、小型化、低コスト化等が図られること、新たなメンテナンスシステムの構築が不要であること等の特徴を有している。ボンベ方式の燃料電池装置システムは、その実用化のために、燃料ガスに混入する硫黄成分や燃料の主成分以外の高沸点炭化水素が効率的に除去された高品質の燃料ガスが安定して供給され取り扱いが簡易で保守性に優れた燃料ガス供給装置が必須となる。勿論、燃料ガス供給装置は、燃料ガスを燃料電池装置とともに各種のガス器具にも供給することが必要である。
【0008】
ボンベ方式の燃料ガス供給装置は、上述したように高圧燃料ボンベの交換時に同時に交換される脱硫器をガス配管に付設するが、より低コスト化や交換作業の簡易化を図る必要がある。燃料ガス供給装置は、脱硫器内において燃料ガスを脱硫剤に充分接触させることによって高精度の脱硫処理を施す必要がある。燃料ガス供給装置においては、脱硫器内において圧力損失が生じて燃料ガスが所定の供給圧力で各ガス器具や燃料電池装置に供給されなくなることから、ガス配管の途中に適宜の昇圧器を設けるといった対応も図られることがあった。燃料ガス供給装置においては、高圧燃料ボンベとともに脱硫器がガス管に着脱されることから、接続部において発生しやすいガス漏れを防止するための慎重な作業と接続構造が必要となる。
【0009】
例えば特許文献3の燃料供給ガス装置には、脱硫器を取り付けた高圧燃料ボンベが開示されており、高圧燃料ボンベの回収と供給及び脱硫器の回収と供給とが一元化して定期的に実施されるようになる。燃料ガス供給装置によれば、莫大な設備投資を必要とせずに非都市ガス供給地域においてボンベ方式の燃料電池装置システムの早期実用化を実現することを可能とする。燃料供給ガス装置は、高圧燃料ボンベから噴出される燃料ガスに対して脱硫器によって直ちに脱硫処理を施すことから、所定の供給圧力を保持して燃料ガスの供給が行われるとともに脱硫剤との接触時間も保持されて燃料ガスに対して効率的な脱硫処理を行うことが可能である。
【0010】
しかしながら、かかる燃料供給ガス装置においては、脱硫器にガス配管を接続する構造となることから、この脱硫器に所定の強度と高度の漏れ防止構造を有するガス配管との接続構造を必要とし、またバルブ構造を異にした新規な構成の高圧燃料ボンベを必要とする等の問題によって実用化が困難であるといった問題がある。
【0011】
したがって、燃料供給ガス装置においては、脱硫器をガス配管に対して固定される脱硫器本体と、内部に脱硫剤を充填して脱硫器本体に対して着脱される脱硫剤カートリッジとによって構成し、高圧燃料ボンベの交換時に脱硫剤カートリッジを脱硫器本体から取り外して交換することにより作業性が大幅に向上されるようになるとともに安全性の向上も図られるようになる。脱硫剤カートリッジは、例えばカートリッジ缶と、その内部に充填した脱硫剤とによって構成するが、カートリッジ缶が脱硫剤を外気に曝さないようにする密閉缶構造とすることが必要である。脱硫剤カートリッジは、かかる構造であっても、コスト上昇が抑制され取り扱いが簡便であるとともに簡易な構造であることが要求される。
【0012】
また、脱硫剤カートリッジは、脱硫器本体に対して簡易な作業によって着脱可能であるとともに、ガス漏れを生じさせない構造であることが要求される。さらに、脱硫剤カートリッジは、脱硫器本体に装填された状態において、脱硫剤を充填した内部空間に燃料ガスを導入するとともに脱硫処理を施した燃料ガスをガス配管へと供給するガス流路が構成される構造が必要とされる。また、脱硫剤カートリッジは、脱硫器本体から取り外されて回収された後に、簡易な作業によって内部から脱硫剤を取り出して廃棄処分することが可能な構造であることが必要である。
【0013】
したがって、本発明は、上述した要求仕様に対応し、精度の高い脱硫処理を施して燃料ガスを燃料電池装置に安定して供給する燃料ガス供給装置に用いて好適な小型で廉価かつ保守対応に優れかつ安全性の向上を図る脱硫剤カートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成する本発明にかかる脱硫剤カートリッジは、カートリッジ缶と、キャップ部材と、第1閉塞部材と、第2閉塞部材とを備え、例えば高圧燃料ガスボンベから供給される燃料ガスをガス器具や燃料電池装置等に供給するガス配管に付設された脱硫器本体に着脱されて、燃料ガスに含有された硫黄成分や硫黄化合物を除去する脱硫器を構成する。脱硫剤カートリッジは、カートリッジ缶が、上部に開口されて燃料ガスを内部空間に導入する導入開口又は内部空間から脱硫処理後の燃料ガスをガス配管に還流させる供給開口を構成する第1開口部と、底部に開口されて内部空間から脱硫処理後の燃料ガスをガス配管に還流させる供給開口又は燃料ガスを内部空間に導入する導入開口を構成する第2開口部とを有する。脱硫剤カートリッジは、キャップ部材が、カートリッジ缶の第1開口部と対向して開口部が形成され、カートリッジ缶の上部に第1開口部を閉塞して組み付けられ、脱硫器本体側の受け部に支持されることによって脱硫器本体とカートリッジ缶との間に燃料ガスのガス流路を構成する。脱硫剤カートリッジは、第1閉塞部材が、キャップ部材に開口部を閉塞して設けられ、使用時に取り外されることによって開口部を介してカートリッジ缶の第1開口部を開口させる。脱硫剤カートリッジは、第2閉塞部材が、カートリッジ缶に第2開口部を閉塞して設けられ、使用時に取り外されることによって第2開口部を開口させる。
【0015】
脱硫剤カートリッジは、キャップ部材が、例えばカートリッジ缶との嵌合部を構成する外周部位に囲まれた第1開口部との対向部位に環状の薄肉連結部を介して一体に形成された蓋部によって第1閉塞部材を構成し、使用時に薄肉連結部を破断して蓋部を取り外すことによって第1開口部を開口させるようにしてもよい。また、脱硫剤カートリッジは、第1閉塞部材が、キャップ部材の上部に貼着されて開口部を閉塞し、使用時に剥離されて第1開口部を開口させる密閉シールによって構成してもよい。
【0016】
脱硫剤カートリッジは、例えばカートリッジ缶の底部に環状の薄肉連結部を介して一体に形成された蓋部によって第2閉塞部材を構成し、使用時に薄肉連結部を破断して蓋部を取り外すことによって第2開口部を開口させるようにしてもよい。また、脱硫剤カートリッジは、第2閉塞部材が、カートリッジ缶の底部に貼着されて第2開口部を閉塞するとともに、使用時に剥離されて第1開口部を開口させる密閉シールによって構成してもよい。
【0017】
脱硫剤カートリッジにおいては、例えば高圧燃料ボンベの交換時に合わせて脱硫器本体から取り外されて交換されることで、比較的廉価な活性炭粒子や無機物材粒子を基材とする脱硫剤を用いても実用上高精度の脱硫が行われるようにするとともに脱硫器の低コスト化や小型、軽量化が図られるようにする。脱硫剤カートリッジにおいては、脱硫器本体をガス配管から取り外す作業を不要とすることで、作業効率の向上が図られるようにするとともに接続箇所に生じやすいガス漏れの発生が防止されるようにして安全性の向上が図られるようにする。
【0018】
脱硫剤カートリッジは、キャップ部材とカートリッジ缶とにそれぞれ第1閉塞部材と第2閉塞部材とを設けて未使用時にカートリッジ缶が密閉容器を構成してその内部空間に大気との接触を断つようにして脱硫剤を充填することから、脱硫剤の脱硫特性の劣化を防止して使用時に燃料ガスに対して高精度の脱硫処理を施すことが可能である。脱硫剤カートリッジにおいては、第1閉塞部材と第2閉塞部材とがプルトップ型蓋体或いは密閉シールによって構成されることで、使用時において極めて簡易な操作によってキャップ部材やカートリッジ缶からの取り外しが行われる。
【0019】
脱硫剤カートリッジにおいては、キャップ部材が、脱硫器本体に対する取付部材としても機能することで構成部品が削減されて構造の簡易化が図られる。脱硫剤カートリッジにおいては、キャップ部材が脱硫器本体の内面とカートリッジ缶の外周部との間に燃料ガスの流路を構成する部材としても機能することで、脱硫器内に燃料ガスがカートリッジ缶の内外を巡る流路を構成する。脱硫剤カートリッジにおいては、燃料ガスを脱硫剤が充填されたカートリッジ缶の全長に亘って導くことで、簡易な構造と小型化を図って効率的な脱硫処理が行われるようにする。脱硫剤カートリッジにおいては、回収した後に、簡易な作業によってカートリッジ缶からキャップ部材を取り外すとともに内部から脱硫剤の取り出しが行われることから、カートリッジ缶とキャップ部材と脱硫剤との分別廃棄も簡易に行うことが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる脱硫剤カートリッジによれば、ガス配管から脱硫器本体を取り外すことなく交換が行われることから、作業性や安全性の向上が図られるようにする。脱硫剤カートリッジによれば、未使用時にはカートリッジ缶やキャップ部材に設けた閉塞体によってカートリッジ缶を密閉容器として構成し、その内部空間に脱硫剤を密封状態に保持するとともに使用時には簡易な操作により閉塞体を取り外して燃料ガスの導入が行われるようにすることから、廉価な脱硫剤を用いて高精度の脱硫処理を行うことを可能とし、脱硫器の低コスト化や小型軽量化をはかることを可能とする。脱硫剤カートリッジによれば、キャップ部材が、キャップ機能とともに脱硫器本体への取付機能とガス流路の構成機能とを奏することから、構造の簡易化のコスト低減が図られるとともに廃棄処分に際しての作業性の向上も図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態として示す脱硫剤カートリッジ30について、図面を参照して詳細に説明する。脱硫剤カートリッジ30は、図1に示すLPG(燃料ガス)を燃料電池装置2と各種のガス器具3とに供給して非都市ガス供給地域における既存のLPG供給システムを利用したLPG方式の燃料電池装置システムを構築する燃料ガス供給装置1に用いられる。なお、燃料ガス供給装置1は、燃料電池装置2が単独或いは商用電源と併用されて宅内機器等の全てのエネルギー源を構成しガス器具3が用いられないいわゆるオール電化住宅等に設置される場合には、燃料電池装置2にのみに燃料ガスを供給する。
【0022】
燃料電池装置2は、詳細を後述するように燃料ガス供給装置1から燃料ガスが供給され、改質部4と、この改質部4と水素配管5とによって接続されるとともに空気取入れ部6と酸素配管7によって接続される燃料電池部8とから構成される。燃料電池装置2は、図示を省略するが、改質部4が内部に燃料ガスを水素に変換する適宜の触媒を内蔵するとともに、燃料ガスを燃焼させるヒータやこのヒータによって加熱される水供給管等を備えている。燃料電池装置2は、改質部4において、燃料ガス供給装置1から供給された燃料ガスとヒータとによって水供給管を加熱して発生させた水蒸気との混合気体から、触媒の作用によって水素を発生させる。
【0023】
燃料電池装置2は、燃料電池部8の内部に、正極と、負極と、電解質としての高分子電解質膜と、水素や酸素の漏れを防止するセパレータと、水素や酸素の供給量を制御する制御部等が設けられている。燃料電池装置2は、燃料電池部8において、改質部4から水素配管5を介して供給された水素と、酸素配管7を介して供給された酸素とを反応させて直流電力を発生させる。燃料電池装置2は、燃料電池部8で発電した直流電力を図示しない変換器によって交流電力に変換して電力供給線9を介して配電盤10に供給する。燃料電池装置2は、配電盤10から図示しない電気機器等に対して電力を供給する。なお、燃料電池装置2には、図示しないが燃料電池部8を冷却するラジエータが付設されており、このラジエータを熱源として熱供給パイプ11によって適宜の熱交換器12へと熱エネルギーを導いて適宜利用することも可能である。
【0024】
燃料ガス供給装置1は、図1及び図2に示すように、それぞれ燃料ガスを充填した所定本数の可搬型高圧燃料ボンベ13A、13B(以下、ボンベ13と総称する。)を燃料ガスの供給源とする。なお、燃料ガス供給装置1は、燃料ガスの供給源がボンベ13に限定されるものではなく、例えば各ユーザ毎に設置されて配給車から供給される燃料ガスを貯蔵する固定型タンク(バルクタンク)によって構成してもよい。ボンベ13は、所定の供給元と各ユーザとで供給契約が結ばれ、供給元においてLPGを0.5〜1.5MPa程度まで加圧して液化した状態で充填する充填工程を行い、各ユーザの使用実績等に応じて定期的に交換が行われる。
【0025】
ボンベ13には、現状において非都市ガス供給地域において実施されている既存のLPG供給システムに用いられている高圧燃料ボンベが用いられる。ボンベ13は、詳細を省略するが鋼材等により耐圧容器として形成されたボンベ本体と、その天井部に一体に形成された円筒状のバルブ組付部に組み付けられたバルブ構造体と、台座部とから構成される。ボンベ13は、運搬車等によって各ユーザに配達されて所定の場所に複数本が並んで設置され、それぞれのバルブ構造体にガス配管が接続される。ボンベ13には、詳細を省略するが図2に示すように上部に設けたバルブ構造体から燃料ガス供給管が出されており、既設の接続管14A、15B(以下、個別に説明する場合を除いて接続管14と総称する。)にそれぞれ接続される。ボンベ13は、ハンドルを操作してバルブ構造体内のバルブ弁を開放することにより、後述する自動切替圧力調整器16(以下、調整器16と略称する。)によって選択されたボンベ本体内から燃料ガスを接続管14へと供給する。
【0026】
燃料ガス供給装置1は、ボンベ13と、接続管14と、各接続管14に付設される脱硫器15A、15B(以下、個別に説明する場合を除いて脱硫器15と総称する。)と、調整器16と、この調整器16と接続される供給管17に付設された撹拌器18とガスメータ19とを備えている。燃料ガス供給装置1は、供給管17がガスメータ19の後段において、各ガス器具3に燃料ガスを供給する第1端末配管20と燃料電池装置2に燃料ガスを供給する第2端末配管21とに分岐される。燃料ガス供給装置1は、第2端末配管21に第1センサ22と第2センサ23とが付設される。燃料ガス供給装置1には、システム全体を制御するための制御監視盤24が設けられている。
【0027】
なお、燃料ガス供給装置1は、特に一般家庭用や中規模システム等の場合には、第1センサ22や第2センサ23或いは制御監視盤24や撹拌器18を特に必要とするものでは無い。燃料ガス供給装置1は、例えば調整器16がボンベ13から供給される燃料ガスの圧力を0.1MPa〜1.6MPaに減圧する第一次調整器とさらに25kPa〜100kPaに減圧する第二次調整器とによって構成される場合に、脱硫器15を脱硫作用がより効率的に奏される第一次調整器の上流側である高圧ゾーン或いは第二次調整器の上流側である中圧ゾーンのいずれに設置することが好ましい。また、燃料ガス供給装置1は、必要に応じて第2端末配管21に第2センサ23と燃料電池装置2との間に位置して昇圧器を付設するようにしてもよい。
【0028】
燃料ガス供給装置1は、各接続管14に付設された脱硫器15が、燃料ガスから硫黄成分や硫黄化合物或いは高沸点炭化水素を除去して切替器17に供給することで、燃料電池装置2内に用いられている各種の触媒に対する悪影響を低減して効率的な発電、発熱が行われるようにする。脱硫器15は、当該接続管14に接続されたボンベ13を交換する際に同時に交換される。脱硫器15は、詳細を後述するが接続管14から全体を取り外して交換する操作を不要とし、後述する脱硫剤カートリッジ30のみの交換が行われる。
【0029】
調整器16は、従来のLPG供給システムにも設けられており、燃料ガスを所定の圧力に降圧して供給管17に送り出す降圧機能や燃料ガスの圧力を検出する圧力検出機能を有している。調整器16は、燃料ガスの供給をボンベ13Aからボンベ13Bに切り替える切替機能やこのボンベ切替を行った際に信号を出力する切替信号発信機能を有している。調整器16は、降圧機能によって、ボンベ13から高圧で供給される燃料ガスを各ガス器具3やガスメータ19の耐圧圧力の2.8〜3.5kPa程度に降圧し、供給管17や端末配管20、21の低圧仕様化を図ってガス漏れの発生を抑制するようにする。
【0030】
調整器16は、圧力検出機能によって、ボンベ13から供給される燃料ガスの圧力を検出する。調整器16は、現に燃料ガスを供給しているボンベ13Aにおいて使用に伴って燃料ガスの残量が少なくなって例えば0.08MPa程度まで降下した状態を検出する。調整器16は、この圧力降下を検出すると、切替機能によって燃料ガスの供給源をボンベ13Aからボンベ13Bへと切り替える切替動作を行う。
【0031】
調整器16は、図示を省略するが上流側の接続管14Aを接続する第1弁機構と下流側の接続管14Bを接続する第2弁機構とが内蔵されており、開放状態のボンベ13A側の第1弁機構を閉塞するとともに、閉塞されていたボンベ13B側の第2弁機構を開放する切替動作を行う。調整器16は、この切替え動作を実行するとともに、発信機能によってガスメータ19及び制御監視盤24に対して切替え実行信号を出力する。
【0032】
ところで、燃料ガスは、プロパンを主成分とするが気化特性を異にする数%のブタンや数ppm単位の高沸点炭化水素も混入しており、ボンベ13内において自然気化して供給管17へと供給される。燃料ガスは、ボンベ13内で満タン状態の場合にほぼプロパン成分のみが供給管17に供給されるが、残量の低下に伴って次第にブタンの割合が多くなってくる。したがって、燃料ガス供給装置1は、環境条件や残量等の要因によって成分比率にバラツキがある燃料ガスを供給管17に供給するようになる。
【0033】
燃料ガス供給装置1は、供給管17の途中に付設された撹拌器18によって燃料ガスを撹拌することによってプロパンとブタンとの比率を均一化し、燃料電池装置2や各ガス器具3に供給する。燃料ガス供給装置1は、成分の均一化が図られた燃料ガスを燃料電池装置2に供給することによって改質部4において効率的な改質が行われるようにする。撹拌器18は、例えば豊晴理工製の超振動攪拌器や佐竹化学機械工業製のポータブルミキサ等が用いられ、第2センサ23により検出される燃料ガスの成分情報に基づいてブタンの割合が一定以上となった場合に制御監視盤24から出力される制御信号によって駆動される。なお、撹拌器18は、常時駆動されるようにしてもよく、燃料電池装置2の前段位置に適宜付設することも可能である。
【0034】
ガスメータ19は、燃料ガス供給装置1を既存のLPG供給システムに設置することを前提とすることから、既設のいわゆるマイコンガスメータが用いられる。ガスメータ19は、燃料ガスの使用量を計量するとともに電話回線やデジタル無線電話サービス(PHS:Personal Handy-Phone System)網によって計量値やガス漏れ警報等を通信する機能を備えている。ガスメータ19は、調整器16から出力された切替え実行信号を受信するとともに、計量値情報をガス会社等や制御監視盤24に対して出力する。なお、ガスメータ19については、供給管17に付設される計量センサによって構成し、表示器や通信機能等を制御監視盤24に持たせるようにしてもよい。
【0035】
ところで、燃料ガス供給装置1においては、脱硫器15によって燃料ガスから硫黄成分や炭化水素成分を除去するとともに、撹拌器18によって成分を均一化して燃料電池装置2や各ガス器具3に燃料ガスを供給する。燃料ガス供給装置1は、何らかの原因によって例えばブタン成分の割合が多い燃料ガスを燃料電池装置2に供給することがある。燃料電池装置2は、燃料ガスとしてLPGを用いることから改質触媒等をLPGの主成分であるプロパン仕様で設計する。したがって、燃料電池装置2は、万一燃料ガス供給装置1から成分を異にするLPGが燃料ガスとして供給された場合に、改質触媒の劣化や改質効率が低下する。なお、燃料電池装置2は、燃料ガスとして都市ガスを用いる場合には、メタン仕様で設計される。
【0036】
燃料ガス供給装置1においては、第2端末配管21に第1センサ22と第2センサ23とを付設して燃料ガスの成分検出を行うことにより、所定成分の燃料ガスが燃料電池装置2に供給されるようにする。第1センサ22及び第2センサ23には、例えば赤外線分析器が用いられ、所定波数に現れる硫黄成分や炭化水素成分を測定する。第1センサ22は、脱硫器15により燃料ガス中の硫黄成分が所定のレベルで除去されていることを検出する。第1センサ22は、具体的には燃料ガス中のチオフェンの1520cm−1に現れる吸収で硫黄成分を測定する。第1センサ22は、燃料ガス中からこれらの硫黄成分の測定を行って測定結果の検出信号を制御監視盤24に出力する。
【0037】
第2センサ23は、燃料ガス中のプロパン濃度とブタン以上の炭化水素の濃度とを測定する。第2センサ23は、具体的には、燃料ガス中のプロパンの3000cm−1に現れる飽和炭化水素成分を測定し、次に、プロピレンの1700cm−1に現れる吸収で不飽和炭化水素成分を測定し、さらにベンゼンの800cm−1に現れる芳香族炭化水素成分を測定して測定結果の検出信号を制御監視盤24に出力する。
【0038】
制御監視盤24は、詳細を省略するがマイクロコンピュータや表示器或いは通信機能等を備えており、燃料電池装置2に対する燃料ガスの供給を制御するとともにボンベ13を供給するガス会社等の適宜の外部機関との通信を行う機能を有している。制御監視盤24は、調整器16から出力されるボンベ13の切替信号を受信すると、燃料ガスの残量計算等を行いガス会社に対して必要な情報提供等を行う。制御監視盤24は、ガスメータ19から出力される計量信号を受信すると、例えばこの計量信号と平均使用量等の基準値との比較を行い、異常値を検出するとガス会社に対して警報を発信する。
【0039】
制御監視盤24は、基準の硫黄成分値や基準成分値の基準値情報を格納しており、第1センサ22や第2センサ23から出力される検出信号を受信すると、これら検出信号と基準値情報との比較を行う。制御監視盤24は、基準値を超える硫黄成分値や基準成分値を検出すると、調整器16或いは図示しない弁機構に対して制御信号を出力して燃料ガスの供給を停止又は予備ボンベへの切替えを指示するとともに警報信号を供給元や所定の外部機関等に発信する。制御監視盤24は、第2センサ23から出力される検出信号に基づいてブタンの割合が一定値を超えた状態を検出すると、撹拌器18を駆動させる制御信号を出力して燃料ガスを撹拌させる。
【0040】
脱硫器15は、脱硫剤カートリッジ30と、この脱硫剤カートリッジ30を着脱自在に収納する脱硫器本体31とから構成されと、ボンベ13の交換に合わせて脱硫剤カートリッジ30の交換が行われる。脱硫器本体31は、図3に示すように接続管14に固定接続されるヘッド部材32と、このヘッド部材32に対して着脱されるケース部材33とから構成され、ロックリング部材34によって一体化される。脱硫器本体31は、後述するようにロックリング部材34をヘッド部材32から取り外した後にケース部材32を抜き出して脱硫剤カートリッジ30の交換が行われる。
【0041】
ヘッド部材32は、防錆性や機械的剛性に優れた金属材、例えばステンレス鋼が用いられ、図3に示すように円盤状の天井部35と、この天井部35の外周縁に沿って全周に亘って一体に折曲形成された円筒状の外周壁部36とからなる全体略キャップ状に形成されている。ヘッド部材32には、天井部35の上面に中央位置を横切るようにして一体に突出された矩形の凸部からなるガス流路構成部37が形成されている。ガス流路構成部37は、後述するように内部に燃料ガスの流路が形成されるとともに上面部が適宜の取付部材に固定される取付部を構成する。
【0042】
ガス流路構成部37には、長さ方向の一方側面に上流側の接続管14が接続されてボンベ13から燃料ガスが供給される第1接続孔38が開口されるとともに、相対する他方側面に調整器16と接続する第2接続管40が接続されて脱硫処理した燃料ガスを送り出す第2接続孔39が形成されている。なお、ガス流路構成部37は、例えば第1接続孔38と第2接続孔39の内壁にそれぞれ内周ねじを形成して連結管を一体に設け、これら連結管を介して接続管14や第2接続管40の接続を行うようにしてもよい。
【0043】
ヘッド部材32は、第1接続孔38がガス流路構成部37の内部において下方へと折曲され、天井部35を貫通して外周壁部36で囲まれた内部空間41に連通する第1開口部42を構成する。第1開口部42は、内部空間41の外周側に位置して天井部35に形成されている。ヘッド部材32は、第2接続孔39がガス流路構成部37の内部を第1接続孔38側へと延長され、中央部を越えた位置で下方へと折曲され、中央位置で内部空間41に大きく開口する第2開口部43を構成する。ヘッド部材32は、第2開口部43を構成する天井部35の中央部位が下方に向かって突き出されており、後述するように脱硫剤カートリッジ30が組み合わされる嵌合筒部44を構成する。
【0044】
ヘッド部材32は、上述したように天井部35と外周壁部36とによって底部を開放した内部空間41を構成し、この内部空間41が後述するように脱硫剤カートリッジ30を装填したケース部材33の上方部位を収納する空間部を構成する。ヘッド部材32には、外周壁部36の内周部に全域に亘って内周ねじ45が形成されており、この内周ねじ45に内部空間41に嵌め合わされたケース部材33を保持するロックリング部材34をねじ込むことによってケース部材33を一体化する。
【0045】
なお、ヘッド部材32は、ガス流路構成部37の相対する側面部に開口する第1接続孔38と第2接続孔39とを形成したが、かかる構成に限定されるものでは無い。ヘッド部材32は、例えば複数個の第1接続孔38を形成して脱硫器15に対して複数本のボンベ13が接続されるようにしてもよい。ヘッド部材32は、脱硫処理を施した燃料ガスを第2接続孔39を介して側方へと排出するようにしたが、ガス流路構成部37の上面に開口する接続孔を形成して上方から燃料ガスの供給を行うようにしてもよい。
【0046】
ケース部材33も、防錆性や機械的剛性に優れた金属材、例えばステンレス鋼が用いられ、図3に示すようにヘッド部材32の外周壁部36よりも小径とされた有底円筒形の部材からなる。ケース部材33は、後述するように内部空間46に脱硫剤カートリッジ30を浮かした状態で収納するとともに、第1開口部42から導入した燃料ガスを脱硫剤カートリッジ30の外周部に回り込ませるガス流路を構成する。
【0047】
ケース部材33には、外周部の上端部位に所定の厚みと高さとを有する係合フランジ部47が全周に亘って周回りに一体に突設されている。係合フランジ部47は、ヘッド部材32の外周壁部36の内径よりもやや小径に形成されている。ケース部材33は、係合フランジ部47を嵌め合わせ側として外周壁部36の開口部から内部空間41に嵌め合わされ、ロックリング部材34をねじ込むことによってヘッド部材32と一体化される。
【0048】
ケース部材33には、係合フランジ部47の上端面に全周に亘って凹溝48が形成されており、この凹溝48内にOリング或いは弾性リング等からなるシールリング49が嵌め込まれる。ケース部材33は、ヘッド部材32に対して、係合フランジ部47の上端面が天井部35の底面に突き当てられるまで嵌め合わされ、ロックリング部材34によって押圧されてこの天井部35の底面にシールリング49が密着することによってそれぞれの内部空間41、46を密閉空間として構成する。
【0049】
ケース部材33は、ヘッド部材32と一体化された状態において、図3に示すように係合フランジ部47の内周縁が天井部35の内周縁よりも全周に亘って突出して、後述するように内部空間46に装填された脱硫剤カートリッジ30を浮いた状態で支持する受け段部50を構成する。
【0050】
脱硫器15は、ボンベ13に近接して屋外に設置されることから、ロックリング部材34を介してヘッド部材32とケース部材33とを一体化することによりガス漏れ防止とともに不心得者等によるいたずら防止の対応が図られている。ロックリング部材34も、防錆性や機械的剛性に優れた金属材、例えばステンレス鋼によって形成されたリング状の部材からなる。ロックリング部材34は、ヘッド部材32の外周壁部36の内径とほぼ等しい外径を有するとともに、ケース部材33の外径よりも大径の嵌挿口51が厚み方向に貫通して形成されている。
【0051】
ロックリング部材34には、嵌挿口51の内周壁に、複数個の係合凸部52が一体に突設されている。各係合凸部52は、それぞれ横長矩形の凸部であり、ケース部材33の外径とほぼ等しい内周円を構成する厚みを有している。したがって、係合凸部52は、後述するようにロックリング部材34がケース部材33の外周部に嵌め合わされた状態で、図3に示すようにその外周面に突き当てられてケース部材33を保持する。
【0052】
ロックリング部材34には、外周部に全長に亘って外周ねじ53が形成されている。ロックリング部材34は、ヘッド部材32にケース部材33を嵌め込んだ状態で、下方側から外周壁部36に嵌め合わされてその内周ねじ45に外周ねじ53がねじ合わされる。ロックリング部材34は、ねじ込まれるにしたがってケース部材33の係合フランジ部47を上方側へと押し上げてヘッド部材32の天井部35の底面に押し付けることによって、ヘッド部材32とケース部材33とを一体化させる。
【0053】
ロックリング部材34は、上述したヘッド部材32に対するねじ込み操作に際して、図示しないが専用の治具が用いられる。専用治具は、ケース部材33の外径よりもやや大径のガイド孔が厚み方向に貫通して形成された略リング状の部材からなり、一方側の外周縁に上述したロックリング部材34の係合凸部52を挟み込むクランク状の係合片部が一体に突設されている。専用治具は、各係合片部に係合凸部52を係合させてケース部材33の外周部に嵌め合わされ、この状態で回転操作することによってロックリング部材34をヘッド部材32の外周壁部36の内部空間41内へとねじ込むようにする。
【0054】
脱硫器本体31においては、専用治具によるロックリング部材34の締め付け操作によって、ケース部材33がその係合フランジ部47をヘッド部材32の天井部35に突き当てられまで押し上げられる。脱硫器本体31においては、図3に示すように係合フランジ部47が全周に亘って天井部35とロックリング部材34とによって挟み込まれて固定される。
【0055】
脱硫器本体31においては、この状態でシールリング49が天井部35と係合フランジ部47との間に密着されてヘッド部材32とケース部材33とが確実にシーリングされた状態で結合される。脱硫器本体31においては、図3に示すようにロックリング部材34がヘッド部材32の内部空間41内に収納されて外部から視認することができない状態となっている。したがって、脱硫器本体31においては、不心得者が例えばケース部材33を回す操作を行っても、ヘッド部材32からの取り外しを不能とさせる。
【0056】
また、脱硫器本体31においては、ロックリング部材34の存在に気づいても専用治具を使用しなければロックリング部材34の取り外しができないことから、不正にケース部材33をヘッド部材32から取り外すといったいたずらを防止する。また、脱硫器本体31においては、かかる鍵システムを構成することによりシステム仕様に合った脱硫剤カートリッジ30が誤り無く行われるようにすることが可能である。さらに、脱硫器本体31は、ヘッド部材32とケース部材33との接合部位が内部に設けられた構造とされることから、雨水等の浸入も防止される。
【0057】
なお、脱硫器本体31は、上述したヘッド部材32とケース部材33及びロックリング部材34の構成に限定されないことは勿論である。脱硫器本体31は、最も簡易な構成としてヘッド部材32に対してケース部材33を直接ねじ込んで一体化した構造であってもよい。また、脱硫器本体31は、ヘッド部材32とケース部材33との外周部に相対して突き合わされるフランジ部をそれぞれ一体に形成し、これらフランジ部をリング状の結合部材によって引き付けるようにして一体化する構造であってもよい。脱硫器本体31は、ヘッド部材32とケース部材33とを適宜の密閉型管継ぎ手構造を利用して一体化することも可能である。
【0058】
脱硫器15は、上述したように脱硫器本体31に対して脱硫剤カートリッジ30が着脱される。脱硫剤カートリッジ30は、カートリッジ缶55と、キャップ部材56と、密閉シール57とによって脱硫剤58を封装し、上述したようにボンベ13の交換時にヘッド部材32からケース部材33を取り外して交換が行われる。カートリッジ缶55には、アルミ材に深絞り加工を施したアルミ缶が用いられるが例えば樹脂材によって成形した樹脂缶を用いてもよい。なお、カートリッジ缶55は、アルミ材に深絞り加工を施して一体形成した後述するアルミ缶を用いるが、例えば筒状体にボトムプレートをかしめ付けたアルミ缶或いは各種の金属缶であってもよい。カートリッジ缶55は、脱硫処理を施す際に反応熱が発生することから、樹脂缶よりも耐熱性が大きい金属缶が好ましく、さらに軽量で加工性の高いアルミ缶が好ましい。
【0059】
カートリッジ缶55は、図3に示すようにケース部材33の内部空間46よりも小径でかつ高さも小さな缶体からなり、ボンベ13に充填された燃料ガスに対して所定の脱硫処理を施すに足る容量の脱硫剤58を内部に充填する。カートリッジ缶55は、脱硫器15に複数本のボンベ13が接続される場合には、全体の容量の燃料ガスに対して脱硫処理を施すに足る容量の脱硫剤58が充填される。
【0060】
カートリッジ缶55には、図4及び図5に示すように上端部に全周に亘って形成されたビード59によって補強された広口の供給開口部60(第1開口部)が開口されている。供給開口部60は、ヘッド部材32の第2開口部43とほぼ同径とされ、脱硫剤58によって脱硫処理を施した燃料ガスを後述するキャップ部材56を介して第2開口部43へと供給する。カートリッジ缶55には、底部に複数個の導入開口部61(第2開口部)が形成されている。導入開口部61は、外周部とケース部材33の内周壁との間に構成されたガス流路を回り込んで底部に導かれた燃料ガスを缶内へと導入する。
【0061】
カートリッジ缶55は、図5に示すように未使用時に封装した脱硫剤58と外気とを遮断するために、供給開口部60をキャップ部材56によって閉塞するとともに導入開口部61を第2閉塞材を構成する密閉シール57により閉塞することによって密閉缶として構成される。密閉シール57は、例えば粘着剤を塗布したアルミ箔が用いられ、導入開口部61を閉塞してカートリッジ缶55に接合されるとともに、使用時にカートリッジ缶55から引き剥がされることによって導入開口部61を開口させる。カートリッジ缶55は、導入開口部61を密閉シール57によって閉塞することで、回収後にキャップ部材56のみを交換することによって再利用することも可能である。
【0062】
なお、新規の脱硫剤カートリッジから引き剥がした密閉シール57は、例えば脱硫器15から取り外した脱硫剤カートリッジに接合することによって、導入開口部61からの脱硫剤58の落下を防止して回収を行うことも可能とする。交換されるカートリッジ缶55は、脱硫剤58が燃料ガスから硫黄成分等を吸着することによって、かなりの異臭を発生させる。交換後のカートリッジ缶55は、密閉シール57を利用して導入開口部61を閉塞することによって、廃棄処分の際に防臭の対応が効果的に図られるようになる。また、カートリッジ缶55は、例えば底部の全体或いは一部にいわゆるプルトップ構造を形成して導入開口部61を開口させるようにしてもよい。
【0063】
キャップ部材56は、例えばポリプロピレンやポリエチレン等の耐熱性、耐化学性を有する合成樹脂材によって一体に成形される。キャップ部材56は、図4及び図6に示すように、ヘッド部材32の内部空間41とほぼ等しい外径を有するとともに嵌合筒部44の外径とほぼ等しい内径の開口構成部63を設けた円筒形状を基本形として筒状基部62が形成される。キャップ部材56は、筒状基部62が略正方形状となるように互いに等間隔でかつ円周方向に所定の長さを有する円弧状の受け頂点部64を4箇所に残し、各受け頂点部64間にそれぞれケース部材33の受け段部50の内径よりも小径とした短径辺部からなる流路構成辺部65を構成してなる。
【0064】
キャップ部材56は、筒状基部62が、上述したようにヘッド部材32の天井部35に脱硫カートリッジ30を装填したケース部材33の係合フランジ部47を突き当て組み合わせた状態で、図3に示すように排出開口部73にヘッド部材32側の嵌合筒部44が相対嵌合する厚みを以って形成される。また、キャップ部材56は、ヘッド部材32とケース部材33とを一体した状態で、筒状基部62がヘッド部材32の天井部35との間に所定の高さの空間部を構成する厚みを以って形成される。
【0065】
キャップ部材56は、ヘッド部材32とケース部材33とを一体化した状態で、各受け頂点部64が係合フランジ部47の開口縁によって構成された受け段部50上にそれぞれ支持される。キャップ部材56は、ヘッド部材32とケース部材33とを一体化した状態で、各流路構成辺部65の対向部位においてケース部材33の内周壁との間にガス流路74を構成する間隙が設けられるようにする。ガス流路74は、ヘッド部材32の第1接続孔38−第1開口部42−天井部35と係合フランジ部47との間に構成される間隙のルートを介してケース部材33の内部空間46に連通して、第1接続孔38から流入する燃料ガスをカートリッジ缶55の底部へと回り込ませるようにする。
【0066】
なお、キャップ部材56は、筒状基部62を4箇所に受け頂点部64を有する略正方形状としたがかかる形状に限定されるものでは無い。キャップ部材56は、ケース部材33の受け段部50上に安定した状態で載置される部位と、ケース部材33の内周壁との間にガス流路74を構成する部位とが形成されればよい。キャップ部材56は、多角形や流路を構成する多数個の貫通孔を形成した形状であってもよい。
【0067】
キャップ部材56には、筒状基部62の底面部に、後述するようにカートリッジ缶55のビード59が嵌合される略半円形断面を有するビード嵌合凹部66が、開口構成部63の開口縁部に沿って全周に亘って形成される。キャップ部材56には、開口構成部63の内壁に所定幅を有して全周に亘って突出する蓋フランジ部67が形成されるとともに、この蓋フランジ部67に対して環状の薄肉連結部69を介して第1閉塞体を構成する蓋部68が形成されて開口構成部63を閉塞している。キャップ部材56には、蓋部68に立設された連結リブ71を介して蓋部68と対向するプルトップリング部70が形成されている。キャップ部材56には、蓋フランジ部67の内周縁に沿った上面に、略漏斗状を呈するリップリング部72が一体に立設されている。
【0068】
ビード嵌合凹部66は、詳細にはカートリッジ缶55のビード59の外周部位を半周よりもやや大きな範囲で包み込んできつく嵌合する半円形の断面寸法を有して形成されている。したがって、キャップ部材56は、カートリッジ缶55の供給開口部60を閉塞するようにしてビード嵌合凹部66にビード59を嵌合させて組み合わされるが、このビード59とビード嵌合凹部66との嵌合によってカートリッジ缶55から脱落することは無い。また、キャップ部材56は、カートリッジ缶55の外周部との間に適宜の治具をこじ入れて開口構成部63の下方部位を押し広げてビード59とビード嵌合凹部66との嵌合を解除することによって、カートリッジ缶55から取り外すことが可能である。
【0069】
蓋フランジ部67は、やや厚みが大きくかつヘッド部材32の嵌合筒部44の内径とほぼ等しいリング部を構成して開口構成部63に形成されている。蓋フランジ部67には、上述したようにリップリング部72を一体に立設し、このリップリング部72によって上述したキャップ部材56とヘッド部材32の筒状基部62との嵌合部位がシーリングされるようにする。リップリング部72は、薄肉とされることによって可撓性を有しており、脱硫剤カートリッジ30を脱硫器本体31に組み付けた状態において筒状基部62の底面部に弾性変形した状態で密着する。
【0070】
蓋部68は、脱硫剤カートリッジ30が未使用状態において、開口構成部63を閉塞している。蓋部68には、図4に示すように薄肉連結部69を基端として内周側を長軸とした矩形断面の連結リブ71が一体に突設されるとともにこの連結リブ71の上端にプルトップリング部70が一体に形成されている。したがって、キャップ部材56は、プルトップリング部70を摘んで上方へと強く引っ張ることによって連結リブ71の形成部位から薄肉連結部69を全周に亘って蓋フランジ部67から破断させて蓋部68を蓋フランジ部67から簡単に取り外すことが可能である。キャップ部材56は、蓋部68を取り外すことによって図6及び図7に示すように開口構成部63が基部62を貫通して開口されてヘッド部材32の第2開口部43とほぼ同径の第1開口部となる排出開口部73が構成される。
【0071】
なお、キャップ部材56は、円形の薄肉連結部69を介して蓋部68を取り外すことによって円形の排出開口部73を形成するようにしたが、適宜の形状の排出開口部73が形成されるようにしてもよいことは勿論である。また、キャップ部材56は、プルトップリング部70と連結リブ71とによって蓋部68を取り外すようにしたが、かかる構成に限定されないことは勿論であり蓋部68に適宜の摘み部位を形成してもよい。
【0072】
さらに、キャップ部材56は、上述したプルトップ構造に代えて、カートリッジ缶55の導入開口部61を密閉する密閉シール57と同様の密閉シールを用いて予め貫通して形成された排出開口部73を閉塞するようにしてもよい。キャップ部材56も、使用時に密閉シールが引き剥がされることによって排出開口部73を開口させる。なお、新規の脱硫剤カートリッジから引き剥がした密閉シールも、例えば脱硫器15から取り外した脱硫剤カートリッジのキャップ部材56に接合することによって、排出開口部73からの脱硫剤58の落下を防止して回収を行うことも可能とする。密閉シールも、交換されるカートリッジ缶55の排出開口部73を閉塞することによって、廃棄処分の際に防臭の対応が効果的に図られるようにする。
【0073】
また、キャップ部材56は、排出開口部73を比較的大径の貫通孔として形成することから、取り扱い時等において密閉シールに孔が空いてしまう虞もある。したがって、キャップ部材56は、排出開口部73を、上述したカートリッジ缶55の導入開口部61と同様に多数個の貫通孔によって形成するようにしてもよい。
【0074】
脱硫剤カートリッジ30は、例えば椰子殻活性炭に銅を含浸させて嵌挿させた特殊活性炭が脱硫剤58として用いられ、この脱硫剤58を導入開口部61を密閉シール57で塞いだカートリッジ缶55内に充填した後にキャップ部材56を供給開口部60に嵌合することによって封装する。脱硫剤カートリッジ30は、カートリッジ缶55に対してキャップ部材56が、ビード嵌合凹部66にビード59を相対嵌合して組み合わせることにより供給開口部60を密閉する。
【0075】
脱硫剤カートリッジ30は、詳細を省略するがカートリッジ缶55内の上層と下層に例えば繊維状のグラファイバー等からなるフィルタ75を充填するとともに、これらフィルタ75間に粒状或いは粉末状の上述した脱硫剤58を封装する。脱硫剤カートリッジ30は、例えばカートリッジ缶55内を複数の空間部に区割りする隔壁部材を収納し、導入開口部61から導入された燃料ガスが缶内を蛇行しながら供給開口部60へと導かれることによって脱硫剤58との接触時間が保持されるように構成してもよい。
【0076】
ところで、燃料ガスは、ボンベ13内に圧縮状態で充填されており、硫黄成分も例えば200ppmといった高濃度の状態である。燃料ガスは、硫黄成分が1ppm程度以上残留していれば、室内等でガス漏れがあった場合でも臭いの識別が充分に可能である。燃料ガスは、硫黄成分が平均で5ppm以下、好ましくは3ppm以下であれば、燃料電池装置2に対して実用上、触媒特性を損なわさせることは無い。したがって、脱硫剤カートリッジ30は、脱硫剤58によって燃料ガスの硫黄成分を例えば1ppm乃至3ppm程度まで脱硫する。
【0077】
なお、脱硫剤58には、上述した銅含浸の椰子殻系活性炭ばかりでなく、含浸材として硫黄化合物との反応性が大きい鉄、亜鉛或いはニッケル等の金属元素を用いたり、石炭系活性炭を用いてもよい。また、脱硫剤58には、活性炭粒子に対して例えばプラズマ法やCVD(Chemical Vapor Deposit)法によって硫黄化合物との反応性が大きなニッケル、コバルト、モリブデン、銀、銅、白金、ルテニウム等の金属及びその酸化物の微粒子又は被膜を形成した脱硫剤も用いられる。さらに、脱硫剤58には、例えば微細多孔質の活性炭粒子或いは無機物粒子を基材とし、この基材の表面にその粒径よりも小さな金属や金属酸化物を担持させた脱硫剤も用いられる。かかる脱硫剤は、常温、常圧雰囲気で、物理的なファンデルワールス吸着や化学的な吸着論等に基づいて、燃料ガスから硫黄成分や硫黄化合物或いは高沸点炭化水素を吸着除去する。
【0078】
脱硫剤カートリッジ30は、密閉シール57によって導入開口部61が閉塞されたカートリッジ缶55内に供給開口部61から下層のフィルタ75を敷き込むようにして充填した後に所定量の脱硫剤58が充填される。脱硫剤カートリッジ30は、必要に応じて上層のフィルタを充填した後に、供給開口部61を閉塞してカートリッジ缶55にキャップ部材56が組み付けられる。キャップ部材56は、カートリッジ缶55に対して筒状基部62の開口構成部63をビード59に押し込むようにして組み付けられる。キャップ部材56は、ビード59がビード嵌合凹部66に全周に亘って嵌合することによって供給開口部61を閉塞してカートリッジ缶55と一体化される。
【0079】
以上のように構成された脱硫剤カートリッジ30は、キャップ部材56からプルトップリング部70と連結リブ71とにより蓋部68を取り外して排出開口部73を開口させるとともにカートリッジ缶55から密閉シール57を剥がして導入開口61を開口させてケース部材33の内部空間46内に装填する。脱硫剤カートリッジ30は、キャップ部材56の各受け頂点部64がそれぞれの受け段部50上に支持されて、図3に示すようにカートリッジ缶55がケース部材33の内部空間46に浮いた状態で収納される。また、脱硫剤カートリッジ30は、この状態でキャップ部材56が、同図に示すように各流路構成辺部65を受け段部50上に載せられていない状態とすることにより、ケース部材33の内周面との間においてその内部空間46とヘッド部材32の内部空間41とを高さ方向に連通させてガス流路74を構成する。
【0080】
脱硫剤カートリッジ30は、詳細を後述するようにケース部材33の外周部にロックリング部材34が嵌め合わされた状態で、ケース部材33がヘッド部材32に組み合わされることによってこれらヘッド部材32の内部空間41とケース部材33の内部空間46とによって構成された密閉空間内に収納される。脱硫剤カートリッジ30は、図3に示すようにキャップ部材56の排出開口部73にヘッド部材32側の嵌合筒部44が嵌合されることにより、供給開口部60がガス流路構成部37の第2接続孔39と連通する。
【0081】
脱硫剤カートリッジ30は、上述したようにキャップ部材56の流路構成辺部65とケース部材33の受け段部50との間にガス流路74を構成し、このガス流路74を介して導入開口部61がヘッド部材32のガス流路構成部37に形成した第1接続孔38と連通する。したがって、脱硫剤カートリッジ30には、ボンベ13から供給された燃料ガスが第1接続孔38−第1開口部42−ガス流路74−導入開口部61の流路によってカートリッジ缶55内に導入される。脱硫剤カートリッジ30は、カートリッジ缶55内に導入された燃料ガスに対して脱硫剤58による脱硫処理を施して供給開口部60からガス流路構成部37に形成した第2接続孔39へと供給する。
【0082】
以上のように構成された燃料ガス供給装置1においては、脱硫器15が、ボンベ13の交換時に合わせて脱硫カートリッジ30の交換が行われる。燃料ガス供給装置1は、調整器16によってボンベ13に接続された接続管14が閉鎖された状態にあり、脱硫剤カートリッジ30を交換するために接続管14を閉鎖するバルブ機構やバイパス配管を不要として設備の簡易化や作業性の向上が図られる。燃料ガス供給装置1においては、比較的短期間で脱硫剤カートリッジ30を交換することから、上述した廉価な脱硫剤を用いても燃料ガスに対して高精度の脱硫処理を行うとともに脱硫器15の低コスト化や小型、軽量化が図られるようになる。燃料ガス供給装置1においては、脱硫器15が、接続管14に対して着脱操作を不要として脱硫剤カートリッジ30の交換が行われることで、作業効率の向上が図られるとともに接続箇所に生じやすいガス漏れの発生が防止されて安全性の向上が図られる。
【0083】
脱硫器15は、ケース部材33の外周部に鍵治具が嵌め合わされ、ロックリング部材34の取り外し操作が行われる。脱硫器15は、鍵治具によってロックリング部材34が緩み方向に回転されることによってヘッド部材32とのねじ合わせ状態が解除され、ケース部材33をヘッド部材32から取り外されるようにする。脱硫器15は、脱硫剤カートリッジ30も、供給開口60が嵌合筒部48から引き抜かれることによってヘッド部材32から取り外される。取り外された脱硫剤カートリッジ30は、例えば交換用の脱硫剤カートリッジ30から引き剥がした密閉シール57を利用して導入開口部61が塞がれて回収される。
【0084】
脱硫剤カートリッジ30は、カートリッジ缶55からキャップ部材56を取り外した後に、カートリッジ缶55の内部から脱硫剤58を取り出して分別廃棄される。脱硫剤カートリッジ30は、カートリッジ缶55とキャップ部材56との間に適当な治具をこじ入れてビード59とビード嵌合凹部66との嵌合状態を解除することによって、容易に分解することが可能である。
【0085】
なお、脱硫剤カートリッジ30においては、上述したように脱硫器本体31内に密閉状態で収納されて用いられることから、カートリッジ缶55に腐食や汚れの発生がほとんど生じない。脱硫剤カートリッジ30においては、カートリッジ缶55に対するキャップ部材56の着脱が簡易な作業によって行われる。したがって、脱硫剤カートリッジ30は、回収したカートリッジ缶55に所定の処理を施して再利用するリサイクルシステムも構築することによって資源の有効利用とコスト低減が図られるようにする。
【0086】
脱硫剤カートリッジ30は、カートリッジ缶55から密閉シール57を剥がして導入開口部61を開口させるとともにキャップ部材56から蓋部68を取り除いて供給開口部60を開口させる。脱硫剤カートリッジ30は、カートリッジ缶55を内部空間46内に装填し、各受け頂点部64を受け段部50上に載置してケース部材33に組み合わせる。脱硫剤カートリッジ30は、ケース部材33の内部空間46内において浮いた状態とされるとともに、キャップ部材56の上部が係合フランジ部47から突出した状態で組み合わされる。
【0087】
脱硫器15においては、脱硫剤カートリッジ30を装填したケース部材33の外周部にロックリング部材34が嵌め合わされる。脱硫器15においては、ケース部材33の外周部に嵌め合わされた鍵治具を介してロックリング部材34が係合フランジ部47に突き当たるまで押し上げられた状態で、ケース部材33がヘッド部材32に組み合わされる。脱硫器15においては、鍵治具の回転操作によりヘッド部材32の内周ねじ45にロックリング部材34の外周ねじ53が次第にねじ込まれ、ロックリング部材34によって押し上げられたケース部材33が係止フランジ部47の上端面をヘッド部材32の天井部35の底面に突き当てられる。
【0088】
脱硫器15においては、ケース部材33がその係止フランジ部47をヘッド部材32の天井部35とロックリング部材34との間に全周に亘って挟み込まれることによって、ヘッド部材32と一体化される。脱硫器15においては、天井部35と係止フランジ部47との間でシールリング49が密着してヘッド部材32の内部空間41とケース部材33の内部空間46とが密閉空間を構成する。
【0089】
脱硫器15においては、脱硫剤カートリッジ30がケース部材33を介してヘッド部材32の内部空間41を押し上げられ、キャップ部材56の排出開口部73に嵌合筒部44が嵌合される。脱硫器15においては、この状態で図3に示すように嵌合筒部44の底面にリップリング部72が弾性変形した状態で密着することにより、排出開口部73と嵌合筒部44との間を密閉する。
【0090】
脱硫器15においては、上述したようにヘッド部材32を接続管17に対して着脱操作することなく、脱硫剤カートリッジ30を交換することが可能である。脱硫器15においては、ヘッド部材32とケース部材33とが結合部位においてシールリング49を介して密閉されるとともに、ヘッド部材32と脱硫剤カートリッジ30のキャップ部材56とが結合部位においてリップリング部72によって密閉される。
【0091】
燃料ガス供給装置1においては、調整器16によってボンベ13の切り換えが行われると、接続管17から脱硫器15に燃料ガスが供給される。脱硫器15には、第1接続孔38から流れ込んだ燃料ガスが、ヘッド部材32の天井部35に形成した第1開口部42からケース部材33の外周壁部36とカートリッジ缶55の外周部との間に構成されたガス流路74を流れる。脱硫器15においては、燃料ガスが、ガス流路74をケース部材33の底面部に回り込んでカートリッジ缶55の底面部に形成した導入開口部61から内部へと流れ込む。
【0092】
脱硫器15においては、脱硫剤カートリッジ30が、カートリッジ缶55の内部を流れる燃料ガスから脱硫剤58によって硫黄成分等を除去し、脱硫処理を施した燃料ガスを供給開口部60からヘッド部材32側の第2開口部43を介して第2接続孔39へと排出する。脱硫器15においては、燃料ガスが第2接続孔39から第2接続管40を介して調整器16に供給することで、燃料電池装置2や各ガス器具3への供給を行う。
【0093】
脱硫器15は、上述したようにボンベ13とガスメータ19との間のいわゆる高圧ゾーンに付設されて燃料ガスの脱硫処理を行っている。燃料ガスは、燃料電池装置2や各ガス器具3における単位時間当たりの消費量が一定であり、高圧ゾーンにおいて圧縮状態とされることで脱硫器15内での滞留時間が低圧ゾーンよりも長くなる。したがって、脱硫器15においては、燃料ガスが脱硫剤カートリッジ30内において脱硫剤58との接触時間が長くなり、硫黄成分や高沸点炭化水素等を効率的に除去する。
【0094】
脱硫器15においては、カートリッジ缶55内に例えば粒径が2mm乃至3mm程度の脱硫剤58を充填して脱硫剤カートリッジ30を構成しており、燃料ガスがこの脱硫剤カートリッジ30内を通過することで圧力損失が生じる。脱硫器15においては、燃料ガスを例えば3kPa程度の微圧に調整して端末側へと供給することから、低圧ゾーン側では困難な圧力調整を容易に行うことが可能な燃料ガス供給装置1を構成する。脱硫器15においては、燃料ガスの圧力低下も少なく、調整器16による調整範囲が大きいことから燃料電池装置2や各ガス器具3に対して燃料ガスを安定して供給することが可能な燃料ガス供給装置1を構成する。
【0095】
脱硫器15は、例えば空気取入れ部6の空気配管7にも付設してもよい。脱硫器15は、脱硫剤58やフィルタ75によって空気中の塵埃やゴミ或いは粒子状物質(PM)、塩分、硫黄化合物、窒化化合物等の不純物を吸着除去する空気清浄機能を奏して、燃料電池装置2に対して清浄な空気の供給を行う。空気配管7に付設した脱硫器15は、さほどの交換頻度を要するものでは無いが、保守作業の効率化を図るためにボンベ13の交換時に同時に行うようにする。
【0096】
燃料ガス供給装置1においては、上述したように脱硫器15を高圧或いは中圧ゾーンに設置するようにしたが、例えば二次調整器と燃料電池装置2や各ガス器具3との間の、燃料ガスが2kPa〜4kPaの圧力で流れる低圧ゾーンに付設するようにしてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】実施の形態として示す燃料供給装置を用いたLPG方式燃料電池システムの要部構成図である。
【図2】燃料ガス供給部を構成するガスボンベと自動切替調整器との間に脱硫器を設置した燃料供給装置の要部構成図である。
【図3】脱硫器の内部構造を示す断面図である。
【図4】未使用状態の脱硫剤カートリッジの平面図である。
【図5】同脱硫剤カートリッジの一部切欠き要部側面図である。
【図6】使用状態の脱硫剤カートリッジの平面図である。
【図7】同脱硫剤カートリッジの一部切欠き要部側面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 燃料ガス燃料供給装置、2 燃料電池装置、3 ガス器具、13 ボンベ、14 接続管、15 脱硫器、16 自動切替圧力調整器、17 供給管、19 ガスメータ、30 脱硫剤カートリッジ、31 脱硫器本体、32 ヘッド部材、33 ケース部材、34 ロックリング部材、35 天井部、36 外周壁部、37 ガス流路構成部、38 第1接続孔、39 第2接続孔、40 第2接続管、41 内部空間、42 第1開口部、43 第2開口部、44 嵌合筒部、45 内周ねじ、46 内部空間、47 係合フランジ部、49 シールリング、50 受け段部、51 嵌挿口、53 外周ねじ、55 カートリッジ缶、56 キャップ部材、57 密閉シール、58 脱硫剤、59 ビード、60 供給開口部、61 導入開口部、62 筒状基部、63 開口構成部、64 受け頂点部、65 流路構成辺部、66 ビード嵌合凹部、67 蓋フランジ部、68 蓋部、69 薄肉連結部、70 プルトップリング部、72 リップリング部、73 排出開口部、74 ガス流路、75 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを供給するガス配管に付設された脱硫器本体に着脱されて脱硫器を構成し、内部に上記燃料ガスに含有された少なくとも硫黄成分や硫黄化合物を除去する脱硫剤を充填した脱硫剤カートリッジにおいて、
上部に開口されて上記燃料ガスを内部空間に導入する導入開口又は内部空間から脱硫処理後の上記燃料ガスを上記ガス配管に還流させる供給開口を構成する第1開口部と、底部に開口されて上記内部空間から脱硫処理後の上記燃料ガスを上記ガス配管に還流させる供給開口又は上記燃料ガスを内部空間に導入する導入開口を構成する第2開口部とを有するカートリッジ缶と、
上記カートリッジ缶の上記第1開口部と対向して開口部が形成され、上記カートリッジ缶の上部に上記第1開口部を閉塞して組み付けられて上記脱硫器本体側の受け部に支持されることによって、上記脱硫器本体と上記カートリッジ缶との間に上記燃料ガスのガス流路を構成するキャップ部材と、
上記キャップ部材に、上記開口部を閉塞して設けられ、使用時に取り外されることによって上記開口部を介して上記カートリッジ缶の上記第1開口部を開口させる第1閉塞部材と、
上記カートリッジ缶に上記第2開口部を閉塞して設けられ、使用時に取り外されることによって上記第2開口部を開口させる第2閉塞部材と
を備えることを特徴とする脱硫剤カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−84621(P2007−84621A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272493(P2005−272493)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(504150715)萩尾高圧容器株式会社 (5)
【Fターム(参考)】