説明

脱硫器およびその運転方法、ならびに燃料電池システム

【課題】低コストかつ製作が容易な脱硫器およびその運転方法、ならびに燃料電池システムの提供。
【解決手段】脱硫触媒層が内設された反応器と、前記脱硫触媒層を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の加熱温度を測定する加熱温度測定手段と、前記反応器に炭化水素原料を供給する原料供給手段と、前記加熱温度測定手段によって測定される前記加熱手段の加熱温度に応じて、前記加熱手段による前記脱硫触媒層の加熱のON/OFF動作を制御するとともに、前記加熱のON/OFF動作のデューティー比を求める加熱制御部と、前記デューティー比が所定の値以下になったときに、前記原料供給手段による前記反応器への炭化水素原料の供給を開始させる原料供給制御部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素原料を脱硫する脱硫器およびその運転方法、ならびに燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に優しいエネルギ源として、水素と酸素の電気化学的反応によって発電を行う燃料電池システムの開発が進んでいる。この燃料電池システムとして、炭化水素原料を改質して水素含有量が多い改質ガスを製造し、その改質ガスを水素源として燃料電池スタックに供給して発電を行う燃料改質型の燃料電池システムが検討されている(特許文献1参照)。
【0003】
この燃料改質型の燃料電池システムは、改質器と、シフト反応器と、一酸化炭素選択酸化反応器とで構成される燃料プロセッサ、および水素と酸素の電気化学反応によって発電を行う燃料電池スタックを有する。この燃料電池システムにおいて、燃料プロセッサは、炭化水素原料と水から水素を含む改質ガスを製造し、燃料電池スタックのアノードに供給する。燃料電池スタックにおいては、アノードに供給された改質ガス中の水素と、カソードに供給された酸素(空気)との電気化学反応によって、発電が行われる。
【0004】
この燃料プロセッサに供給される炭化水素原料は、燃料プロセッサを構成する反応器(改質器、シフト反応器、一酸化炭素選択酸化反応器)における触媒反応を阻害する硫黄成分を除去するため、脱硫器によって脱硫された後、燃料プロセッサに供給される。そして、図5に示すように、脱硫器51は、脱硫触媒層52が内設された反応器53と、脱硫触媒層52を加熱するための加熱用ヒータ54と、原料供給路56a,56bを通じて、反応器53に炭化水素原料を供給する原料供給ポンプ56とで構成される。そして、この脱硫器51においては、反応器53の外壁から脱硫触媒層52に挿入された監視用熱電対(T1,T2、T3)55bによって脱硫触媒層52の各部の温度が触媒活性温度に達しているか否かが監視される。また、反応器53および脱硫触媒層52の熱抵抗が大きいため、加熱用ヒータ54の温度を制御するために、加熱用ヒータ54の温度を測定する制御用熱電対55aが設けられている。
【0005】
この脱硫器51においては、加熱用ヒータ54によって反応器53に内設されている脱硫触媒層52の加熱を開始し、制御用熱電対55aによって加熱用ヒータ54の温度を測定して監視する。そして、図6に示すように、加熱用ヒータ54の温度が所定の温度(加熱用ヒータ目標温度)に達したら、制御用熱電対55aによって加熱用ヒータ54の温度を測定して監視しながら、加熱用ヒータ54をON/OFFして、加熱用ヒータ54の温度を制御する。一方、図6に示すように、監視用熱電対(T1,T2、T3)55bによって、脱硫触媒層52の各部の温度を測定し、各部の温度が予め設定された温度(原料供給ポンプ運転許可温度)に到達した時点で、原料供給ポンプ56の運転を開始し、反応器53に原料供給路56a,56bを通じて、炭化水素原料を供給して、脱硫器51における炭化水素原料の脱硫が開始される。
【特許文献1】特開2007−115523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の脱硫器51では、前記のとおり、監視用熱電対55bと制御用熱電対55aの少なくとも2つの温度測定用熱電対が必要であった。また、監視用熱電対55bは、脱硫触媒層52の各部の温度を測定するために、鞘管等に収納された状態で、反応器53に穿設された測定孔から脱硫触媒層52に挿入する必要がある。そのため、従来の脱硫器は、反応器の製作が容易でなく、また、コストが掛かるものであった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、脱硫触媒層の温度を測定する必要がないため、脱硫触媒層の温度監視用の熱電対が不要となり、低コストかつ製作が容易な脱硫器およびその運転方法、ならびに燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明の脱硫器は、脱硫触媒層が内設された反応器と、前記脱硫触媒層を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の加熱温度を測定する加熱温度測定手段と、前記反応器に炭化水素原料を供給する原料供給手段と、前記加熱手段による前記脱硫触媒層の加熱と、前記原料供給手段による前記反応器への炭化水素原料の供給とを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記加熱温度測定手段によって測定される前記加熱手段の加熱温度に応じて、前記加熱手段による前記脱硫触媒層の加熱のON/OFF動作を制御するとともに、前記加熱のON/OFF動作のデューティー比を求める加熱制御部と、前記デューティー比が所定の値以下になったときに、前記原料供給手段による前記反応器への炭化水素原料の供給を開始させる原料供給制御部と、を有することを特徴とする。本発明において、加熱のON/OFF動作のデューティー比とは、単位時間当たりの加熱手段による加熱が行われる(加熱手段による脱硫触媒層の加熱がON)時間の割合を言う。
【0009】
この脱硫器では、加熱制御部によって、加熱手段による脱硫触媒層の加熱のON/OFF動作を制御するとともに、加熱のON/OFF動作のデューティー比を求め、原料供給制御部によって、そのデューティー比が所定の値以下になったときに、原料供給手段による反応器への炭化水素原料の供給を開始して、適正な触媒活性温度に保持された脱硫触媒層で炭化水素原料の脱硫を開始することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、脱硫触媒層が内設された反応器と、前記脱硫触媒層を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の加熱温度を測定する加熱温度測定手段と、前記反応器に炭化水素原料を供給する原料供給手段と、を備える脱硫器の運転方法であって、前記加熱温度測定手段によって測定される前記加熱手段による加熱温度に応じて、前記加熱手段による前記脱硫触媒層の加熱のON/OFF動作を制御するとともに、前記加熱手段による加熱のON/OFF動作のデューティー比が所定の値以下となったときに、前記原料供給手段によって前記反応器に炭化水素原料を供給することを特徴とする。
【0011】
この脱硫器の運転方法では、加熱手段による加熱温度に応じて、加熱手段による前記脱硫触媒層の加熱のON/OFF動作を制御するとともに、加熱手段による加熱のON/OFF動作のデューティー比が所定の値以下となったときに、原料供給手段によって反応器に炭化水素原料を供給して、適正な触媒活性温度に保持された脱硫触媒層で炭化水素原料の脱硫を開始することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記脱硫器を備えることを特徴とする燃料電池システムを提供するものである。
この燃料電池システムでは、脱硫器において、加熱手段による脱硫触媒層の加熱のON/OFF動作を制御するとともに、加熱のON/OFF動作のデューティー比を求め、原料供給制御部によって、そのデューティー比が所定の値以下になったときに、原料供給手段による反応器への炭化水素原料の供給を開始して、適正な触媒活性温度に保持された脱硫触媒層で炭化水素原料の脱硫を開始することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の脱硫器は、脱硫触媒層の温度を測定する必要がないため、脱硫触媒層の温度監視用の熱電対が不要となり、低コストかつ製作が容易である。また、制御電力も削減できるため、発電効率向上に寄与する。
【0014】
また、本発明の脱硫器の運転方法によれば、加熱手段による加熱のON/OFF動作のデューティー比が所定の値以下となったときに、原料供給手段によって反応器に炭化水素原料を供給することによって、炭化水素原料の脱硫を開始することができる。
【0015】
さらに、本発明の燃料電池システムは、脱硫器において、加熱手段による脱硫触媒層の加熱のON/OFF動作を制御するとともに、加熱のON/OFF動作のデューティー比を求め、原料供給制御部によって、そのデューティー比が所定の値以下になったときに、原料供給手段による反応器への炭化水素原料の供給を開始して、適正な触媒活性温度に保持された脱硫触媒層で炭化水素原料の脱硫を開始することができる。そのため、本発明の燃料電池システムは、脱硫器における脱硫触媒層の温度監視用の熱電対が不要となり、低コストで構成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る脱硫器1の構成を示す概略図、図2は、脱硫器1の運転方法を説明する図である。
【0017】
図1に示す脱硫器1は、脱硫触媒層2が内設された反応器3と、加熱手段4と、加熱用ヒータの温度を測定する加熱温度測定手段5と、反応器3に炭化水素原料を供給する原料供給ポンプ(原料供給手段)6と、制御手段7とを備える。
【0018】
反応器3は、燃料電池システムの燃料プロセッサ(図4参照)に供給する炭化水素原料の硫黄分を除去するため、炭化水素原料を脱硫する装置である。この反応器3は、液状炭化水素に対して耐性のある材料、例えば、ステンレス鋼等の金属で耐圧性の筐体を構成し、その形状、大きさ、材質等は、特に制限されず、脱硫するために導入される炭化水素原料の性状、硫黄含有量、脱硫負荷、処理量等に応じて、適宜選択される。反応器3に内設される脱硫触媒層2は、例えば、コバルト−モリブデン系、ニッケル−アルミニウム系、またはニッケル−タングステン系の水素化脱硫触媒、あるいはこれらと酸化亜鉛を組み合わせた脱硫触媒によって構成される。
【0019】
加熱手段4は、反応器3の外側に設けられ、反応器3の外壁を介して反応器3に内設された脱硫触媒層2を加熱し、脱硫触媒層2を所定の触媒活性温度に加熱するものである。この加熱手段4としては、反応器3の外側から脱硫触媒層2を加熱できるものであれば、特に限定されない。例えば、加熱手段4は、反応器3の外被を被包するように設けられた電熱ヒータ等で構成することができる。
【0020】
加熱温度測定手段5は、加熱手段4の温度を検知し、検知した加熱用ヒータ4の温度に関する検知信号を制御手段7の加熱温度検知手段7aに入力するものである。この加熱温度測定手段5として、熱電対、サーミスタ等を用いることができる。この加熱温度測定手段5は、加熱手段4と反応器3の容器外被の間に配置することが好ましい。
【0021】
原料供給ポンプ(原料供給手段)6は、原料供給路6a,6bを介して炭化水素原料を反応器3に供給するものである。この原料供給ポンプ(原料供給手段)6は、制御手段7の原料供給制御部7cからの制御信号に基づいて稼動し、炭化水素原料を反応器3に給送するものである。この原料供給ポンプ6は、反応器3に給送する炭化水素原料の性状、種類、給送量等に応じて適宜選択される。
【0022】
本発明において、原料供給ポンプ6によって反応器3に供給され、脱硫触媒層2で脱硫される炭化水素原料は、燃料電池システムの燃料プロセッサ(図4参照)によって水素を製造できるものであれば、特に制限されない。例えば、灯油、軽油、重油、アスファルテン、オイルサンド油、メタノール、ナフサ、石炭液化油、石炭系重質油、ガソリン等の液状炭化水素混合物、都市ガス、LPG等の気体状炭化水素混合物などの各種の炭化水素混合物を用いることができる。液状の炭化水素原料は、脱硫器1で脱硫した後、加熱して気体として燃料プロセッサに供給すればよい。これらの中でも、灯油は、水素源としてのエネルギー密度が非常に高く、可搬性および貯蔵性に富むため、家庭用の小型の定置型燃料電池システム用の炭化水素原料として好適である。具体的には、JIS1号灯油が挙げられる。
【0023】
制御手段7は、加熱温度検知手段7aと、加熱制御部7bと、原料供給制御部7cとを備える。この制御手段は、与えられたプログラムをCPU(Central Processing Unit)が実行することにより、脱硫器1内の各装置の動作を制御するように構成されている。
【0024】
制御手段7の加熱温度検知手段7aは、加熱温度測定手段5から入力される検知信号に基づいて、加熱手段4の温度を求め、加熱手段4の温度が、所定の温度(加熱目標温度)以下または以上であるかを判定するものである。この加熱温度検知手段7aによる判定結果は、加熱制御部7bに入力される。加熱目標温度は、脱硫触媒層2の触媒の種類、炭化水素原料の種類に応じて適切な値が選択される。
【0025】
加熱制御部7bは、加熱温度検知手段7aから入力された加熱手段4の温度に関する判定結果に基づいて、加熱手段4による脱硫触媒層3の加熱のON/OFF動作を制御するものである。すなわち、加熱制御7bは、加熱手段4の温度が加熱目標温度以下である場合は、加熱手段4による脱硫触媒層2の加熱を開始(加熱ON)し、加熱手段4の温度が加熱目標温度以上であるときは、脱硫触媒層の加熱を停止(加熱OFF)する。
【0026】
また、加熱制御部7bは、加熱手段4による脱硫触媒層2の加熱のON/OFF動作を制御するとともに、前記加熱のON/OFF動作のデューティー比を求める。本発明において、加熱のON/OFF動作のデューティー比とは、単位時間当たりの加熱手段による加熱が行われる(加熱手段による脱硫触媒層の加熱がON)時間の割合を言う。例えば、単位時間1秒当たり、加熱手段4として用いられる電熱ヒータがONして脱硫触媒層2が加熱されている時間が0.5秒であれば、そのときのデューティー比は0.5であり、単位時間当たり、加熱手段4として用いられる電熱ヒータがONして脱硫触媒層2が加熱されている時間が1秒であれば、そのときのデューティー比は1である。そして、デューティー比が所定の値以下となったときに、その情報を原料供給制御部7cに伝達する。例えば、デューティー比が、0.4以下となったときに、その情報を原料供給部7cに伝達する。
【0027】
一般に、加熱手段4は加熱目標温度以上で加熱OFFとし、加熱目標温度未満で加熱ONとなるように加熱制御部7bによって制御される。このとき、加熱手段4の熱は反応器3の壁面を通り脱硫触媒層2に伝達されるため、脱硫触媒層2の温度が加熱手段4の加熱温度に近づくにつれて、加熱手段4から脱硫触媒層2への熱の移動が緩慢になり、加熱OFF時に加熱温度測定手段5によって測定される加熱手段4の温度の低下速度が低下する。このため、加熱ON時間と加熱OFF時間の比率は脱硫触媒層2の温度の変化に追従して変化する。したがって、加熱手段4から脱硫触媒層2への熱の移動が緩慢になり、加熱OFF時に加熱温度測定手段5によって測定される加熱手段4の温度の低下速度が低下して、すなわち、単位時間当たりの加熱手段4の加熱ONの時間の割合、すなわち、デューティー比が所定の値以下になったとき、脱硫触媒層2の温度が加熱手段4の加熱温度に近づき、所定の触媒活性温度に到達したことになる。
【0028】
原料供給制御部7cは、原料供給ポンプ(原料供給手段)6の運転を制御するものである。この原料供給制御部7cは、加熱制御部7cからデューティー比が所定の値以下になった情報を伝達されたときに、原料供給ポンプ(原料供給手段)6に反応器3への炭化水素原料の供給開始信号を発信する。供給開始信号を受信した原料供給ポンプ6は、運転を開始し、反応器3に原料供給路6a,6bを通じて、炭化水素原料を供給する。これによって、脱硫器1における炭化水素原料の脱硫が開始される。
【0029】
次に、この脱硫器1の運転について、図2にしたがって説明する。
まず、脱硫器1の運転に際して、制御手段7の加熱制御部7bによって、加熱手段4による加熱が開始され(加熱ON)、加熱温度測定手段5によって測定される加熱手段4の温度Tが上昇する。このとき、加熱手段4は加熱ON状態を続けるため、加熱制御部7bによって求められるデューティー比(D)は1である。このとき、加熱手段4の温度の上昇とともに、脱硫触媒層2の温度も上昇する。
【0030】
そして、制御手段7の加熱温度検知手段7aは、加熱温度測定手段5から入力される検知信号に基づいて、加熱手段4の温度を求め、加熱手段4の温度が、所定の温度(加熱目標温度)以下または以上であるかを判定する。このとき、加熱制御部7bは、加熱温度検知手段7aから入力された加熱手段4の温度に関する判定結果に基づいて、加熱手段4による脱硫触媒層3の加熱のON/OFF動作を制御する。すなわち、加熱手段4の温度が加熱目標温度以下である場合は、加熱手段4による脱硫触媒層2の加熱を開始(加熱ON)し、加熱手段4の温度が加熱目標温度以上であるときは、脱硫触媒層の加熱を停止(加熱OFF)する。
【0031】
この加熱手段4による脱硫触媒層3の加熱のON/OFF動作を続けると、脱硫触媒層2の温度が上昇するにつれて、加熱手段4から脱硫触媒層2への熱の移動が徐々に緩慢になり、加熱OFF時に加熱温度測定手段5によって測定される加熱手段4の温度の低下速度が低下する。そのため、図2に示すように、加熱ON時間が少なくなり、加熱OFF時間が増加する。したがって、単位時間当たりの加熱手段4の加熱ONの時間の割合、すなわち、デューティー比が徐々に低下する。そして、所定のデューティー比(原料供給ポンプ運転許可デューティー比)になったとき、加熱制御部7cから原料供給制御部7cにデューティー比が所定の値以下になった情報が伝達され、原料供給制御部7cは、原料供給ポンプ(原料供給手段)6に反応器3への炭化水素原料の供給開始信号を発信する。供給開始信号を受信した原料供給ポンプ6は、運転を開始し、反応器3に原料供給路6a,6bを通じて、炭化水素原料を供給する。これによって、脱硫器1における炭化水素原料の脱硫運転が開始される。したがって、脱硫器1では、脱硫触媒層2の温度を監視するための温度測定手段が不要となり、反応器3に測定孔を穿設したり、熱電対等の温度測定手段を鞘管等に収納された状態で、反応器53の脱硫触媒層52に挿入する必要がないため、低コストかつ製作が容易となる。
【0032】
本発明において、この炭化水素原料の供給を開始するときのデューティー比(原料供給ポンプ運転許可デューティー比)は、実験、シミュレーション等によって予め決定することができる。また、加熱目標温度および目標触媒温度は、反応器3の大きさ、形状、また、脱硫触媒層2の脱硫触媒の充填量、充填密度、種類、炭化水素原料の種類などの緒元に応じて、適宜決定される。
この原料供給ポンプ運転許可デューティー比の選定について、図3に基づいて説明する。ここで、原料供給ポンプ運転許可デューティー比を選定する脱硫器において、加熱手段による加熱目標温度を230℃、炭化水素原料の供給を開始する脱硫触媒層の目標触媒温度を210℃とする。
【0033】
この脱硫器においては、まず、制御手段7の加熱制御部7bによって、加熱手段4による加熱を開始し(加熱ON)、加熱温度測定手段5によって加熱手段4の温度を測定する。このとき、デューティー比は1である。同時に、脱硫触媒層2の温度も測定すると、加熱手段4の温度の上昇とともに、脱硫触媒層2の温度も上昇する。そして、加熱温度測定手段5によって測定される加熱手段4の温度が加熱目標温度:230℃に到達すると、加熱制御部7bによって、加熱手段4の温度が230℃以下である場合は、加熱手段4による脱硫触媒層2が加熱され(加熱ON)、加熱手段4の温度が230℃以上であるときは、脱硫触媒層の加熱が停止(加熱OFF)される。そして、脱硫触媒層2の温度が上昇するにつれて、デューティー比が徐々に低下する。そして、脱硫触媒層2の温度が目標触媒温度:210℃に達したときのデューティー比を原料供給ポンプ運転許可デューティー比とする。これによって、炭化水素原料の供給を開始するときのデューティー比を決定することができる。
【0034】
次に、本発明の脱硫器を備える燃料電池システムの実施形態について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る燃料電池システムFCの主要構成を示すブロック図である。
この燃料電池システムFCは、前記図1に示す脱硫器1と、改質器42と、シフト反応器43と、一酸化炭素(CO)選択酸化反応器44と、燃料電池スタック45とを備えるものである。改質器42と、シフト反応器43と、一酸化炭素(CO)選択酸化反応器44とで、炭化水素原料と水から水素を含む改質ガスを製造して燃料電池スタック44に供給する燃料プロセッサ40が構成される。
【0035】
改質器42は、改質触媒の存在下に、例えば600〜700℃の範囲の改質処理温度の下で、炭化水素原料が含む炭化水素分と水蒸気との反応によって、水素ガスと一酸化炭素ガスを含むガス(以下、「改質ガス」という)を生成するための装置である。この改質器は、後記のとおり、炭化水素分と水蒸気との反応が行なわれる反応部と、その反応部に炭化水素原料を供給するための炭化水素原料供給流路と、水蒸気を供給するための水供給流路とを備える装置である。
用いられる改質触媒は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)等の貴金属系触媒等が挙げられ、これらの触媒は、セラミック製の多孔質粒状体に担持され、改質器42内に、その多孔質粒状体が充填されて触媒層を形成している。
【0036】
この改質器42は、吸熱反応である炭化水素分と水蒸気の反応の生起のために熱を供給するバーナ42aを備える。バーナ42aには、燃料として、燃料電池スタック45のアノードから排出された未反応の水素を含むオフガスと、炭化水素原料とが供給されると共に、それらの燃料を燃焼させるための空気が供給される。そして、改質器42における反応温度は、例えば、改質器42の出口における改質ガスの温度を検出し、その温度に基づいて、炭化水素原料の供給量および空気の供給量を調整することによって制御される。
【0037】
シフト反応器43は、酸化鉄、銅−亜鉛系、銅−クロム系等のシフト触媒の存在下に、例えば150〜300℃の温度において、改質器42で生成した改質ガス中に含まれる一酸化炭素と水蒸気の発熱反応(CO+HO→CO+H)によって、一酸化炭素を二酸化炭素に変成して、一酸化炭素濃度を低減させるとともに、さらに水素含有量が増加された水素含有ガス(以下、「シフトガス」という)を生成する装置である。
【0038】
一酸化炭素選択酸化反応器44は、燃料電池スタック45の電極の被毒の問題を回避するため、シフト反応器43から供給されるシフトガス中に微量に存在する一酸化炭素を酸化させて、シフトガスの一酸化炭素濃度をさらに低減させた水素含有ガスを燃料電池スタック45に供給するための装置である。通常、この一酸化炭素選択酸化反応器44において、シフトガス中の一酸化炭素濃度が10ppm以下に低減される。一酸化炭素選択酸化反応器44における反応は、例えば、白金、ルテニウム、ロジウム等の貴金属系触媒の存在下に、例えば80〜160℃の範囲の温度で行なわれる。
【0039】
また、気化器46は、脱硫器1から供給される脱硫された炭化水素原料と、水(改質用水)とを気化させて気体とするための装置である。この気化器46においては、バーナ42aの燃焼ガスまたは電熱ヒータによって、脱硫済みの炭化水素原料と水を加熱し、気体とするものである。
【0040】
燃料電池スタック45は、前記一酸化炭素選択酸化反応器44から供給される水素含有ガスをアノード45aに導入し、加湿器(図示せず)によって加湿された空気をカソード45bに導入して、水素と酸素の電気化学的反応によって発電を行うものである。この燃料電池スタック45は、触媒を含むアノード45aとカソード45bの間に固体高分子電解質膜等の電解質膜を挟装し、アノード45aに供給される水素含有ガス中の水素と、カソード45bに供給される空気中の酸素との反応によって水を生成する反応によって発電を行なうものである。
【0041】
この水素と酸素の電気化学的反応は発熱反応であるため、燃料電池スタック45に冷却水を通じて、発生した熱を回収して、給湯等に有効利用することができる。
また、燃料電池スタック45における水素と酸素の電気化学的反応は、発電効率の観点から、通常、水素利用率80%程度で行なわれるため、燃料電池スタック45のアノード45aから排出されるオフガスには、未反応の水素が含まれている。そのため、オフガスを、前記のバーナ42aに供給することによって、含有する水素を燃料として有効利用して、燃料電池システム全体の熱効率の向上を図ることができる。
【0042】
次に、図4に示す本発明の実施形態に係る燃料電池システムFCの運転について説明する。
図4に示す燃料電池システムFCにおいて、炭化水素原料は、脱硫器1によって脱硫された後、気化器46によって、水とともに気体となって改質器42に供給される。改質器42においては、改質触媒の存在下に、例えば600〜700℃の範囲の改質処理温度の下で、炭化水素原料が含む炭化水素分と水蒸気との反応(炭化水素+H2O→3H2+CO)によって、水素ガスと一酸化炭素ガスを含むガス(以下、「改質ガス」という)が生成される。改質器42で生成した改質ガスは、シフト反応器43に供給され、一酸化炭素と水蒸気の発熱反応(CO+HO→CO+H)によって、一酸化炭素を二酸化炭素に変成して、一酸化炭素濃度を低減させるとともに、さらに水素含有量が増加されたシフトガスを生成する。シフト反応器43で生成するシフトガスは、一酸化炭素選択酸化反応器44に供給され、シフトガス中に微量に存在する一酸化炭素を酸化させて、シフトガスの一酸化炭素濃度を更に低減させた水素含有ガスが生成される。そして、この水素含有ガスを、燃料電池スタック45のアノード45aに導入するとともに、加湿器(図示せず)によって加湿された空気をカソード45bに導入して、水素と酸素の電気化学的反応によって発電が行なわれる。
【0043】
この燃料電池システム1における発電に際して、脱硫された炭化水素原料を気化器46を介して燃料プロセッサ40の改質器42に供給する脱硫器1は、前記のとおり、加熱手段4による加熱が開始され(加熱ON)、加熱温度測定手段5によって測定される加熱手段4の温度THが加熱目標温度に到達し、所定のデューティー比(原料供給ポンプ運転許可デューティー比)以下になったとき、原料料供給ポンプ6によって、反応器3に原料供給路6a,6bを通じて、炭化水素原料を供給する。これによって、脱硫器1における炭化水素原料の脱硫運転が開始され、脱硫触媒層2における脱硫触媒反応によって脱硫された炭化水素原料が、気化器46を介して燃料プロセッサ40の改質器42に供給される。これによって、燃料電池システムFCの運転が開始される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る脱硫器の構成を示す概略図である。
【図2】脱硫器の運転方法を説明する図である。
【図3】脱硫器における加熱用ヒータ温度、脱硫触媒層温度およびデューティー比の関係を示すグラフである。
【図4】燃料電池システムの構成を示す概略図である。
【図5】従来の脱硫器の構成例を示す概略図である。
【図6】従来の脱硫器における運転方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0045】
1 脱硫器
2 脱硫触媒層
3 反応器
4 加熱手段
5 加熱温度測定手段
6 原料供給ポンプ(原料供給手段)
7 制御手段
42 改質器
42a バーナ
43 シフト反応器
44 一酸化炭素選択酸化反応器
45 燃料電池スタック
45a アノード
45b カソード
FC 燃料電池システム
51 脱硫器
52 脱硫触媒層
53 反応器
54 加熱用ヒータ
56 原料供給ポンプ
56a,56b 原料供給路
55a 制御用熱電対
55b 監視用熱電対(T1,T2、T3)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱硫触媒層が内設された反応器と、
前記脱硫触媒層を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段の加熱温度を測定する加熱温度測定手段と、
前記反応器に炭化水素原料を供給する原料供給手段と、
前記加熱手段による前記脱硫触媒層の加熱と、前記原料供給手段による前記反応器への炭化水素原料の供給とを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記加熱温度測定手段によって測定される前記加熱手段の加熱温度に応じて、前記加熱手段による前記脱硫触媒層の加熱のON/OFF動作を制御するとともに、前記加熱のON/OFF動作のデューティー比を求める加熱制御部と、
前記デューティー比が所定の値以下になったときに、前記原料供給手段による前記反応器への炭化水素原料の供給を開始させる原料供給制御部と、
を有することを特徴とする脱硫器。
【請求項2】
脱硫触媒層が内設された反応器と、前記脱硫触媒層を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の加熱温度を測定する加熱温度測定手段と、前記反応器に炭化水素原料を供給する原料供給手段と、を備える脱硫器の運転方法であって、
前記加熱温度測定手段によって測定される前記加熱手段による加熱温度に応じて、前記加熱手段による前記脱硫触媒層の加熱のON/OFF動作を制御するとともに、前記加熱手段による加熱のON/OFF動作のデューティー比が所定の値以下となったときに、前記原料供給手段によって前記反応器に炭化水素原料を供給することを特徴とする脱硫器の運転方法。
【請求項3】
請求項1に記載の脱硫器を備えることを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−78938(P2009−78938A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248471(P2007−248471)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】