説明

脱穀装置

【課題】従来の脱穀装置は、扱室の排塵物を排塵処理室へ供給して引き継がせる作用が不充分であり、更に、扱室内に第一扱胴と第二扱胴との二つの扱胴を、軸芯を同じくして軸架した構成では、二つの扱胴に入力する伝動装置を二系統設けて両軸の外側軸端から別々に入力する複雑な構成となる課題があった。
【解決手段】この発明は、扱室1において、中側板2を基準にして第一扱胴軸5と第二扱胴軸6とによって、前側に第一扱胴3を、後側に第二扱胴4を、軸芯を同一にして軸架して構成した。該扱室1は、前記第二扱胴4を軸架した部位に開口した排塵口7を介して連通した排塵処理室8と併設して構成した。前記第一扱胴軸5と第二扱胴軸6とは、ギヤ伝動装置9によって伝動可能に接続して構成した脱穀装置としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扱室に軸架する扱胴を、第一扱胴と第二扱胴との二つの扱胴から構成し、軸芯を同一にして構成した脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の脱穀装置において、扱室内に設ける扱胴を、互いに異なった速度で回転する前側扱胴と後側扱胴とに分割して構成した技術が知られている。このような脱穀装置は、前後の扱胴の回転速度を異ならせることによって、穀稈に突き刺さっているささり籾を効果的に掻き落すことを目的とした技術である。
【0003】
そこで、従来公知の一例として、特開平9−294458号公報(特許文献1参照)に記載されている発明は、該公開特許公報に記載されている解決手段の項と添付図面の図1、及び図2から明らかなように、扱胴4を支承した上部ケース15を、扱口13とは反対側で扱胴軸芯Pと平行な軸芯Q周りに開閉揺動自在に下部ケース16で支持し、扱胴4を、互いに異なった速度で回転する前側扱胴4Aと後側扱胴4Bとの分割構造に構成し、前側扱胴4Aの駆動用の伝動軸12を前記軸芯Q上に配備して穀稈搬送方向下手側に延出し、その伝動軸12の延出部を後側扱胴4Bに伝動装置33を介して連動連結してある。
【0004】
そして、公開発明は、扱胴を分割構造にして異なった速度で回転するものでありながら、構造をコンパクトにした特徴があり、ささり籾をより効果的に掻き落すことができて、脱穀作業の作業性を向上させることができたと記載されている。
【特許文献1】特開平9−294458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の脱穀装置において、扱室の後半部分に排塵処理室の前半部分を排塵口によって連通させた構成にあっては、扱室内で発生した排塵物を排塵処理室に送り込む作用が、脱穀作用を主目的とした扱胴の回転速度では円滑な送り込み作用ができず、排塵物が扱室内に残留する傾向が大きい課題があった。又、扱室内に第一扱胴と第二扱胴との二つの扱胴を軸芯を同じくして軸架した構成では、既に説明した公開発明のように、第一扱胴軸と第二扱胴軸との両軸にそれぞれの軸端から入力するための別々の伝動装置を必要とする課題があった。そして、第二扱胴の伝動装置は、扱室の背後から排藁側に配置して設けられ、コンパクトな脱穀装置を製作するための障害となる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、扱室1において、中側板2を基準にして前側に第一扱胴3を、後側に第二扱胴4を、第一扱胴軸5と第二扱胴軸6とによって軸芯を同一にして軸架して設け、該扱室1は、前記第二扱胴4を軸架した部位に開口した排塵口7を介して連通した排塵処理室8と併設し、前記第一扱胴軸5と第二扱胴軸6とは、ギヤ伝動装置9によって伝動可能に接続して構成した脱穀装置であって、第一扱胴は、主として供給された穀稈の脱穀作用を行って穀粒を脱粒し、第二扱胴は、第一扱胴に比較して高速に伝動できるから、主として排塵物を排塵処理室に送り込んだり、穀稈に刺さり込んでいるささり粒を落とす機能を発揮するものとしている。
【0007】
つぎに、請求項2に記載した発明は、前記第二扱胴4の周速を、前記第一扱胴3の周速より高速に伝動するギヤ伝動装置9を設けて構成した請求項1記載の脱穀装置であって、この発明は、大部分が脱穀された搬送穀稈に対して、第二扱胴が、第一扱胴より高速で回転しながら作用して、穀稈の間に刺さっているささり粒を適確に取り除き、機外への損出を少なくすることができる。
【0008】
つぎに、請求項3に記載した発明は、前記第二扱胴4の周速は、排塵処理室8に軸架した排塵処理胴10の周速より低速に伝動する構成とした請求項1、又は2記載の脱穀装置であって、この発明は、請求項1、及び2に記載した発明と同様の作用を有するものであるが、その上に加えて、扱室内から排塵物を排塵口を通して排塵処理室に円滑に引き継がせることができる。特に、第二扱胴は、既に説明したように、第一扱胴より高速で回転するように伝動しているが、排塵処理胴の回転を超えないように制限することによって、扱室内の排塵物を排塵処理室に送り込んで、それを排塵処理胴が適確に受け取って両室の間における引き継ぎ作用が円滑にできるようになっている。
【0009】
つぎに、請求項4に記載した発明は、前記第一扱胴軸5と第二扱胴軸6とを接続した前記ギヤ伝動装置9は、前記第一扱胴3、又は第二扱胴4の内部に装置して構成した請求項1記載の脱穀装置であって、この発明は、既に述べた請求項1の発明が奏する作用、すなわち、ささり粒を落す作用や扱室から排塵処理室へ排塵物を円滑に引き継ぎ供給する作用を発揮するものであるが、その上に、増速機能を有するギヤ伝動装置を扱胴の内部に設けて、通常、ほとんど利用しない扱胴の内部空間を有効に活用して、扱胴の伝動装置をコンパクトに構成した利点がある。
【発明の効果】
【0010】
まず、請求項1に記載した発明は、第一扱胴と第二扱胴とに大雑把な機能分担をして、第一扱胴に主として脱穀作用を行わせ、第二扱胴には搬送穀稈中のささり粒の落下除去と、併せて、排塵物を適確に排塵処理室に送り込ませる作用を持たせている。この請求項1の発明は、第一扱胴と第二扱胴との周速差をつけることができるから、それぞれの作用に適した回転速度を選択して脱穀装置全体の性能を向上できる優れた特徴がある。
【0011】
そして、請求項2に記載した発明は、第一扱胴で大部分が脱穀されて第二扱胴側に搬送されてきた穀稈に対して、高速で作用しながら、穀稈と穀稈との間に刺さっているささり粒を適確に取り除き、排藁として機外に排出される穀稈に混入する籾粒をなくして、機外損出を少なくする効果を奏するものである。
【0012】
そして、請求項3に記載した発明は、請求項1、及び2に記載した発明と同様の効果を有する発明であるが、その上に加えて、扱室内の排塵物を排塵口から排塵処理室に円滑に引き継がせることができる特徴がある。特に、第二扱胴は、既に説明したように、第一扱胴より高速で回転するが、排塵処理胴の回転速度を超えないように制限することによって、扱室内の排塵物を排塵処理室に送り込んで、それを排塵処理胴が適確に受け取って引き継ぎながら排塵処理ができる特徴がある。
【0013】
そして、請求項4に記載した発明は、既に述べた請求項1の発明が奏する効果、すなわち、ささり粒を落す効果、更には扱室から排塵処理室へ排塵物を円滑に引き継ぎ供給する効果を発揮するものであるが、その上に、増速機能を有するギヤ伝動装置を扱胴の内部に収めて構成し、通常、ほとんど利用しない扱胴の内部空間を有効に利用して、扱胴の伝動装置をコンパクトに構成した優れた特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の実施例は、脱穀装置13の扱室1において、室内を区切る中側板2を基準にして前側(始端部側)に第一扱胴3を第一扱胴軸5に軸架し、後側(終端部側)に第二扱胴4を第二扱胴軸6によって軸架して設け、両軸5、6の軸芯を同一にして構成している。そして、扱室1は、前記第二扱胴4を軸架した部位に開口した排塵口7を介して連通した排塵処理室8と併設し、前記第一扱胴軸5と第二扱胴軸6とは、ギヤ伝動装置9によって伝動可能に接続して構成したものである。
【0015】
このように構成した実施例は、第二扱胴4が作用してささり粒の落とし作用を適確に行うと共に、扱室1の排塵物を確実に排塵処理室8に送り込み、排塵処理胴10への引継ぎを円滑に行って排塵物の処理を適確に行うことができるものとしている。
【0016】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、脱穀装置13は、図1、及び図4に示すように、走行装置の図示を省略している車台14上に搭載し、扱室1の穀稈供給口15を前側に位置させて設け、その前方に刈取搬送装置16を連結してコンバインを構成している。そして、油圧無段変速装置(HST)17は、図6から図9に示すように、図外のエンジンから入力プーリー18を介して伝動される油圧ポンプと、減速装置19側へ変速した回転動力を出力する出力軸20を有する油圧モータとによって構成している。
【0017】
そして、減速装置19は、図6に示すように、前記出力軸20から伝動された回転動力を複数個の減速ギヤ19aを噛み合わせて減速した後、中間位置の外側に取り出して軸架した刈取搬送伝動プーリ21と、更に、上部位置で外部に取り出して軸架し、前記刈取搬送伝動プーリ21より長く外側に軸を伸ばしてフィードチエン伝動スプロケット22を軸架して設け、それぞれ外部に出力できる構成としている。
【0018】
そして、上記刈取搬送伝動プーリ21は、図4に示すように、刈取搬送装置16側の刈取入力プーリ23にベルト伝動で伝動可能に接続し、フィードチエン伝動スプロケット22は、フィードチエン24の始端部内側に設けている受継チエン25に伝動可能に係合して構成している。
【0019】
このように、油圧無段変速装置17と減速装置19とは、脱穀装置13の穀稈供給口15に設けている入口漏斗26(図4、及び図5参照)の下方位置で車台14上に装置して、刈取搬送装置16とフィードチエン24の内側に配置した受継チエン25とに分配伝動する構成としている。上記構成によって、受継チエン25は、刈取搬送装置16側の刈取搬送速度に同調した、いわゆるシンクロさせた受継速度になっているから、刈取穀稈の受継が円滑にできる特徴がある。なお、実施例のフィードチエン24は、脱穀装置13の後部から伝動する構成としている。
【0020】
更に、実施例は、図5の平面視から解るように、減速装置19を基点にして刈取搬送側へ伝動経路(刈取搬送伝動プーリ21から刈取入力プーリ23への伝動ライン)が、フィードチエン伝動スプロケット22の伝動ラインより大幅に内側に配置して穀稈の受継経路から離れた構成になっているから、刈取伝動上に搬送穀稈の藁屑が落下する率が減って伝動ベルトへの巻き付きがほとんどなく円滑な伝動ができる特徴がある。
【0021】
そして、油圧無段変速装置17と減速装置19とは、図5の平面図に示すように、車台14上の操縦席28に近い側に油圧無段変速装置17を、遠い側に減速装置19を配置して、減速装置19から前述した各装置への伝動機構を設け、逆に入力プーリ18を操縦席28に近い側、すなわち、位置的にエンジンに近い側に配置して構成した。したがって、油圧無段変速装置17は、エンジンからの伝動機構が短く構成できる利点があり、簡潔な伝動構成で安価に製作できる特徴がある。そして、刈取搬送装置16は、図5に示すように、刈取入力プーリ23が外側(左側)に位置するから、調整やメンテナンスが一段と楽にできる利点もある。
【0022】
今、ここで、実施例の構成を、もう少し具体的に述べ、併せてその特徴について説明する。
まず、油圧無段変速装置17は、図6、及び図7に示すように、入力プーリ18の外側に冷却ファン30を設け、回転に伴って風を起風し冷却風として風下に配置している装置を冷却する構成としている。実施例の場合、減速装置19を内装したギヤケース19bは、図7、図8、及び図9に示すように、前側の油圧無段変速装置17のケース横幅より広い横幅に形成して、冷却風が当たる面積を増やして冷却効果を高める構成としている。
【0023】
このように横幅を広くすると、前記冷却ファン30は、入力プーリ18が伝動されると、一体に回転駆動されて冷却風を起風し、風下に吹き付けることになる。
そのとき、減速装置19のギヤケース19bは、前記冷却風が油圧無段変速装置17のケース17aの外表面に当たって冷却した後、更に、風下に流れて表面に吹き付けられて冷却される。
【0024】
そして、減速装置19のギヤケース19bは、図8、及び図9に示すように、外表面に補強を兼ねた冷却用リブ31を縦横に形成し、ケースの強度を高めると共に、冷却効率を上げる構成としている。
【0025】
そして、上記減速装置19は、図6、及び図9に示すように、前記ギヤケース19bの下部を広げて、油圧無段変速装置17に循環供給する作動油のオイルタンク32を構成している。この場合、オイルタンク32は、油圧無段変速装置17に供給するために必要な充分なオイル量を確保できる容量の広さに構成している。
【0026】
このように構成すると、油圧無段変速装置17は、一体に構成している減速装置19のギヤケース19bを利用してオイルタンク32を構成することにより、別構成で専用のオイルタンクを作る必要がなく、コストダウンになる特徴がある。
【0027】
つぎに、油圧無段変速装置17と減速装置19とのオイルの循環経路は、図6、乃至図9に示すように、中間にオイルフィルタ33を設けた送り側配管34と、油圧無段変速装置17の吐出側と減速装置19のギヤケース19bの上部とを繋いだ戻り配管35とから構成している。実施例の場合、送り配管34は、図8、及び図9に示すように、減速装置19のギヤケース19bの背後に上下方向に配管し、前記冷却ファン30の冷却風がオイルフィルタ33に当たる位置に配管している。
【0028】
したがって、オイルフィルタ33は、図4に示すように、当然のこととして油圧無段変速装置17にフィルタを通して鉄分等の混入のないオイルを循環できると共に、車台14の左側(コンバインの進行方向に対して)から取外し、取付け等のメンテナンスがきわめて容易にできる特徴がある。
【0029】
そして、前記戻り配管35は、図6に示すように、ギヤケース19bの上部にオイルを戻すように連通した構成としている。したがって、減速装置19は、図6に示す内部断面図から解るように、上部に戻されたオイルが駆動されている各減速ギヤ19aを上側から順次伝わって流下し、強制潤滑方式の状態で潤滑される構成になるから、各減速ギヤ19aが円滑な回転を継続することができる特徴がある。
【0030】
つぎに、この発明に係る脱穀装置13の主要部について、実施例を説明する。
まず、扱室1は、既に説明し、図1、及び図4に示すように、穀稈供給口15を前側に向け、扱口38にはフィードチエン24を沿わせて設けた構成としている。そして、第一扱胴3と第二扱胴4とは、図1、乃至図3に示すように、前記扱室1内に第一扱胴軸5と第二扱胴軸6とにそれぞれ軸架され、しかも、両軸5、6の軸芯を同一に合わせた構成としている。そして、実施例は、扱室1の中間部分より若干後部寄りの位置にある中側板2を境にして、前側に第一扱胴3を、後側に第二扱胴4をそれぞれ位置させ、更に、扱室1は、上記第一扱胴3側の背後に二番処理室39を設けて扱室1側に開放・連通しており、第二扱胴4の背後には排塵処理室8を設けて排塵口7によって連通した構成としている。なお、両方の扱胴3,4には、それぞれ扱歯を設けるが、実施例では、第二扱胴4の扱歯を若干密に配置している。
【0031】
そして、二番処理室39には、二番処理胴40を軸架して還元されてきた二番物や扱室1から供給された未処理物を処理して、扱室1に還流したり、下方の選別室41に落下する構成としている。そして、排塵処理室8は、図面に示すように、排塵処理胴10を軸架して、前記扱室1の後部から送り込まれた排塵物を引き継いで排塵処理し、下方の選別室41に落下する構成としている。
【0032】
そして、第一扱胴軸5は、図1、及び図2に示すように、始端部を扱室1の外側に延長して入力ギヤボックス42に軸架して入力軸43から一対のベベルギヤ44,45を介して回転動力が入力される構成とし、終端部には、図2、及び図3に示すように、カップリング46にスプライン嵌合してギヤ伝動装置9を収納したギヤボックス9aに挿脱自由に連結して軸受け支持させた構成としている。
【0033】
そして、第二扱胴軸6は、図2、及び図3に示すように、始端部を同様にカップリング47に嵌合して支持し、終端部分を扱室1の後側板48に軸受け支持した構成としている。このように、第一、及び第二扱胴軸5,6は、それぞれ一方の軸端部をカップリング46,47に抜き差し可能にスプライン係合することによって扱胴3,4のメンテナンスが容易にできる利点がある。
【0034】
そして、前記ギヤ伝動装置9は、図2に示す第一実施例の場合、第一扱胴軸5の終端部に軸着した太陽歯車50を、ギヤボックス9aに軸受けした外側の遊星歯車51に噛合させ、その遊星歯車51をギヤボックス9aに設けた外側の固定内歯52に噛み合わせて増速伝動する構成としている。この場合、第一扱胴軸5の回転動力は、太陽歯車50、遊星歯車51、固定内歯52を経由してギヤボックス9aに伝動され、一体の連動側板53を介して第二扱胴4に伝動される。
【0035】
そして、第二扱胴4は、上記ギヤ伝動装置9を構成する遊星歯車機構を経由する過程で増速された回転動力を受けて伝動され、第一扱胴3より周速度が高速で伝動される。
つぎに、ギヤ伝動装置9は、図3に示す第二実施例の場合、第一扱胴軸5の終端部に軸着した太陽歯車50を、ギヤボックス9aに軸受けした外側の遊星歯車51に噛合させ、その遊星歯車51と一体の大径歯車55を第二扱胴軸6に軸着している伝動歯車56に噛み合わせて増速して伝動する構成としている。このように、図3に示す第二実施例の場合、第二扱胴4は、第二扱胴軸6に固着している伝動側板57によって伝動され、第一扱胴3より高速で回転することになるが、遊星歯車51を複数個設けた構成にすることによって、扱胴4の振動を大幅に軽減できる利点がある。
【0036】
そして、ギヤボックス9aは、既に説明し図面にも示したように、扱胴軸5,6とはカップリング46,47を介して連結し、連動側板53に連結して分割可能に構成している。したがって、ギヤボックス9aは、扱胴4を分離すると、比較的簡単に分解してメンテナンスが容易にできる構成になっている。
【0037】
以上述べたように、第一、及び第二の二つの実施例は、遊星歯車機構を利用した増速機構を採用し、それぞれ利点、特徴が多いが、これにこだわることはなく、他の増速装置を使用することは自由である。
【0038】
このように、ギヤ伝動装置9は、第一扱胴3側から第二扱胴4側に伝動する過程において増速され、第二扱胴4の周速度を第一扱胴3の周速度より高速にして回転動力を伝動する構成としている。しかしながら、第二扱胴4は、上述のように第一扱胴3の周速より高速で伝動できる構成にはしているが、排塵処理胴10の周速よりは低速で回転する伝動構成にしている。
【0039】
以上述べたように、この出願における請求項1に記載した発明の実施例は、扱室1内において、第一扱胴3には、扱室1に供給されてきた穀稈に対して、主として脱穀作用を行わせ、続いて、第二扱胴4には搬送穀稈に作用しながらささり粒を落下して機内に還元し、併せて、排塵物を適確に排塵処理室8に送り込ませる作用を分担させている。この実施例の構成では、第一扱胴3と第二扱胴4とに周速差をつけることができるから、それぞれの作用に適した回転速度を選択して脱穀装置13全体の性能を向上し効率的で機外損失を少なくし、無駄のない脱穀作業ができる特徴がある。
【0040】
そして、請求項2に記載した発明の実施例は、第一扱胴3で大部分が脱穀されて第二扱胴4側に搬送されてきた穀稈に対して、案内杆60(図1、及び図2参照)が株元に近い部分を第二扱胴4方向に押し上げるように案内して、高速で回転する扱歯が振動を与え、穀稈と穀稈との間に刺さっているささり粒を適確に取り除き、排藁と共に機外に排出される籾粒をなくして、機外損失を少なくすることができる。
【0041】
そして、請求項3に記載した発明の実施例は、請求項1、及び2に記載した実施例と同様の作用を有するものであるが、その上に加えて、扱室1内の排塵物を排塵口7から排塵処理室8に円滑に引き継がせることができる。特に、この実施例の場合、第二扱胴4は、既に説明したように、第一扱胴3より高速で回転するが、排塵処理胴10の回転速度を超えないように制限することによって、扱室1内の排塵物を排塵処理室8に送り込んで、それを排塵処理胴10が受け取るように引き継ぎながら排塵処理作用を開始することができる。
【0042】
そして、請求項4に記載した発明の実施例は、既に述べた各実施例と同様の作用を奏するが、特有の効果としては伝動構成を簡潔にまとめた特徴がある。
すなわち、この実施例は、遊星歯車機構による増速ギヤ伝動装置9を、通常、ほとんど利用することのない第二扱胴4の内部空間に収めて構成し、第一扱胴軸5から第二扱胴軸6へのギヤ伝動装置9をコンパクトに構成した優れた特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】脱穀装置の内部平面図
【図2】扱胴の内部平面図
【図3】扱胴の内部平面図
【図4】刈取伝動とフィードチエン伝動機構の側面図
【図5】伝動機構を断面して示す平面図
【図6】油圧無段変速装置と断面した減速装置の正面図
【図7】油圧無段変速装置と減速装置の平面図
【図8】油圧無段変速装置と減速装置の左側面図
【図9】油圧無段変速装置と減速装置の右側面図
【符号の説明】
【0044】
1 扱室 2 中側板
3 第一扱胴 4 第二扱胴
5 第一扱胴軸 6 第二扱胴軸
7 排塵口 8 排塵処理室
9 ギヤ伝動装置 10 排塵処理胴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室1において、中側板2を基準にして前側に第一扱胴3を、後側に第二扱胴4を、第一扱胴軸5と第二扱胴軸6とによって軸芯を同一にして軸架して設け、該扱室1は、前記第二扱胴4を軸架した部位に開口した排塵口7を介して連通した排塵処理室8と併設し、前記第一扱胴軸5と第二扱胴軸6とは、ギヤ伝動装置9によって伝動可能に接続して構成した脱穀装置。
【請求項2】
前記第二扱胴4の周速を、前記第一扱胴3の周速より高速に伝動するギヤ伝動装置9を介装して構成した請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記第二扱胴4の周速は、排塵処理室8に軸架した排塵処理胴10の周速より低速に伝動する構成とした請求項1、又は2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記第一扱胴軸5と第二扱胴軸6とを接続した前記ギヤ伝動装置9は、前記第一扱胴3、又は第二扱胴4の内部に装置して構成した請求項1記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−121944(P2006−121944A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312747(P2004−312747)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】