脱穀装置
【課題】搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢の乱れ、穂切れ発生、穂切れの機外排出、脱穀ロスの発生。
【解決手段】脱穀室3に、外周面に扱歯27を設けた扱胴2を軸装し、該扱胴2の外周面は、その始端部を、終端部に至るに従い大径となるテーパー部25に形成し、テーパー部25より終端側は終始略同径の同径部26に形成し、同径部26に前記扱歯27を設け、扱歯27の移動軌跡に対して所定間隔を置いて扱網10を位置させて前記脱穀室3を構成し、前記扱網10の前後両側には夫々網取付枠30を設け、網取付枠30は機体に設けた網受体に支持させて取付け、前記網取付枠30の所定位置には、網取付枠30より扱胴2の外周に近付くように突き出る土手35を設け、該土手35は、上側傾斜面36と下側傾斜面37の二面により構成した脱穀装置。
【解決手段】脱穀室3に、外周面に扱歯27を設けた扱胴2を軸装し、該扱胴2の外周面は、その始端部を、終端部に至るに従い大径となるテーパー部25に形成し、テーパー部25より終端側は終始略同径の同径部26に形成し、同径部26に前記扱歯27を設け、扱歯27の移動軌跡に対して所定間隔を置いて扱網10を位置させて前記脱穀室3を構成し、前記扱網10の前後両側には夫々網取付枠30を設け、網取付枠30は機体に設けた網受体に支持させて取付け、前記網取付枠30の所定位置には、網取付枠30より扱胴2の外周に近付くように突き出る土手35を設け、該土手35は、上側傾斜面36と下側傾斜面37の二面により構成した脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀室に外周面に扱歯を設けた扱胴を軸装し、該扱胴の外周面は、その始端部を、終端部に至るに従い大径となるテーパー部に形成し、テーパー部より終端側は終始略同径の同径部に形成し、同径部に前記扱歯を設け、扱歯の移動軌跡に対して所定間隔を置いて扱網を位置させて前記脱穀室を構成し、前記扱網の前後両側には夫々網取付枠を設け、網取付枠は機体に設けた枠状の網受体に載置するように取付けた構成は、公知である(特許文献1)
【特許文献1】特開2002−65038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例は、扱胴の前面を正面視小径に形成し、側面視において扱胴の始端部にテーパー部を形成して、扱胴の前面と搬送穀稈との衝突を避けようとしているが、扱胴の始端部をテーパー部に形成すると、テーパー部の始端部と扱網との間隔が広くなり、かえって穀稈の搬送姿勢が乱れることが判明した。
即ち、搬送穀稈の株元の搬送姿勢に乱れは、穀稈供給搬送装置による搬送中の穀稈を見ればわかるが、搬送穀稈の株元の搬送姿勢が乱れていなくても、搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢が乱れることがあり、この場合、脱穀室の外側から見えず、目視では確認できないが、穂切れが増加するという現象で搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢の乱れを顕在化することを突き止めた。
したがって、公知例では、搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢が乱れ、穂切れが増加するという課題がある。
この場合、穂切れの増加は、脱穀室の外側から目視できない搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢の乱れが原因であり、公知例では、この原因が不明のため、何の対策も講じることができなかった。
本願は、搬送穀稈の搬送姿勢を良好にして、穂切れの発生を抑制して、脱穀ロスを減少させるように工夫したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、脱穀室3に、外周面に扱歯27を設けた扱胴2を軸装し、該扱胴2の外周面は、その始端部を、終端部に至るに従い大径となるテーパー部25に形成し、テーパー部25より終端側は終始略同径の同径部26に形成し、同径部26に前記扱歯27を設け、扱歯27の移動軌跡に対して所定間隔を置いて扱網10を位置させて前記脱穀室3を構成し、前記扱網10の前後両側には夫々網取付枠30を設け、網取付枠30は機体に設けた網受体に支持させて取付け、前記網取付枠30の所定位置には、網取付枠30より扱胴2の外周に近付くように突き出る土手35を設け、該土手35は、上側傾斜面36と下側傾斜面37の二面により構成した脱穀装置としたものであり、刈り取った穀稈を穀稈供給搬送装置4により脱穀装置1の脱穀室3に供給すると、搬送穀稈は株元側が穀稈供給搬送装置4により挟持搬送され、搬送穀稈の穂先は穀稈供給口40から脱穀室3内に供給される。
扱胴2の始端部はテーパー部25に形成されているので、株元側より幾分広がる搬送穀稈の穂先はテーパー部25の始端部と扱網10との広い間隔から脱穀室3に円滑に取り込まれ、穀稈供給搬送装置4により終端側に搬送されながら回転する扱胴2の扱歯27により脱穀される。
この場合、網受体に扱網10を取付(支持)ける扱網10の前側網取付枠30の所定位置には、網受体の内面よりも扱胴2の外周面に近付くように突き出る土手35を設けているから、株元側より幾分広がる搬送穀稈の穂先は扱胴2のテーパー部25と土手35とに挟まれて徐々に狭い脱穀室3内の空間へ搬送される。
したがって、搬送穀稈の穂先は、扱胴2の前面に衝突して折曲することもなければ、株元側より広がることが原因で搬送が遅れる穂先側も、円滑に誘導されて良好な搬送姿勢のままで搬送される。
本発明は、前記土手35は、網取付枠30を中間線Lを境に一回屈曲させて終端側に至るに従い扱胴2の外周に近付くように形成させて前記上側傾斜面36および下側傾斜面37を形成し、上側傾斜面36と下側傾斜面37のうちの上側傾斜面36は平面視扱胴2のテーパー部25に対して略平行に傾斜させ、下側傾斜面37は正面視略垂直に形成した脱穀装置としたものであり、前記土手35の上側傾斜面36は扱胴2のテーパー部25に対して略平行に傾斜させているので、搬送穀稈を後方に円滑に誘導し、下側傾斜面37は正面視略垂直に形成しているので、脱穀物を下方に円滑に誘導し、脱穀効率を向上させる。
本発明は、前記土手35は、上側傾斜面36および下側傾斜面37の何れもが、扱胴2と平面視重ならないように配置した脱穀装置としたものであり、扱胴2のテーパー部25の第一扱き歯50および第二扱き歯51は、土手35の上側傾斜面36および下側傾斜面37の何れにも接触せず、搬送穀稈を円滑に良好な搬送姿勢で搬送する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、搬送穀稈の搬送姿勢を良好にできる。
請求項2の発明では、搬送穀稈の穂先の搬送姿勢を良好にできる。
請求項3の発明では、扱網10(網取付枠30)の取付を容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施例を図面により説明すると、1は脱穀装置であり、上部に扱胴2を軸装した脱穀室3を設け、脱穀室3の一側には前記刈取部により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置4の供給搬送チエン5を設けている。
前記扱胴2は、略正円の円筒形状に形成し、扱胴軸6により軸装する。7は前板、8は中間板である。
前記脱穀室3は、扱胴2の外周面を扱網10により包囲して形成し、扱網10の下方には送風唐箕11を設け、前記脱穀室3の下方には前記送風唐箕11の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室12を形成する。風選室12内には、送風唐箕11の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚13を設ける。18は一番コンベア、19は二番コンベア、20は二番還元装置、21は二番処理装置、22は二番処理胴、23は排塵処理装置、24は排塵処理胴であり、二番処理胴22と排塵処理胴24は同軸上に夫々配置している。
【0007】
扱胴2の外周面は、側面視始端部を、終端部に至るに従い大径となるテーパー部25に形成し、テーパー部25より終端側は終始略同径の同径部26に形成し、同径部26の外面には軸部材または板部材により形成した扱歯27を設ける。前記扱歯27は、各扱歯27が螺旋状に連続するように夫々配置し、脱穀されて扱網10から漏下しない脱穀物が脱穀室3の終端側に移送されるように構成している。
しかして、前記扱網10は、扱歯27の移動軌跡Kに対して所定間隔を置いて位置するように設けて(図3)、搬送穀稈を扱胴2の下面側に供給搬送して脱穀する。扱網10の前後両側には夫々網取付枠30を設け、網取付枠30は機体に設けた網受体(図示省略)に係合させて取付ける。
したがって、網取付枠30は、横板部33に縦板部34を設けて断面略逆L型形状に形成して、網受体上に穀稈供給搬送装置4を設けた側から挿入して取付ければ良いが、取付および固定手段構成は任意である。
【0008】
この場合、前側の網取付枠30の所定位置には、横板部33より扱胴2の外周に近付くように突き出る土手(ガイド)35を設ける。
前記土手35は、上側傾斜面36と下側傾斜面37の二面により構成し、土手35は、網取付枠30の横板部33を中間線Lを境に一回屈曲させて後側(終端側)に至るに従い扱胴2の外周に近付くように形成する(図5)。
土手35は脱穀室3の始端部における搬送姿勢を良好にして脱穀効率を向上させるものである。
即ち、扱胴2は、終始同径に形成すると、扱胴2の前面38(図1)と搬送穀稈とが直角に衝突して搬送が円滑に行かなくなるため、扱胴2の始端部にテーパー部25を形成しているが、テーパー部25の始端部と扱網10との間隔が広くなると、かえって穀稈の搬送姿勢が乱れることが判明した。
【0009】
この穀稈の搬送姿勢は、搬送穀稈の株元部分は搬送中の穀稈供給搬送装置4の穀稈の搬送姿勢をを見れば直ちにわかり、搬送穀稈の株元の搬送姿勢が乱れていなくても、搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢が乱れていることがあり、脱穀室3の外側から見えず、目視では確認できないが、穂切れが増加する。
そこで、扱網10の前側の網取付枠30に、始端側が低く終端側に至るに従い内側に突き出る土手35を設け、土手35により、特に、穀稈の穂先側の搬送姿勢を良好にして、穂切れを減少させ、脱穀効率を向上させる。
実施例の網取付枠30は、扱胴2の円周方向の複数分割し、ロワー網取付枠30Aとアッパー網取付枠30Bとに形成し、脱穀室3の前板8に形成した穀稈供給口40の奥側部分にてロワー網取付枠30Aとアッパー網取付枠30Bとが当接するように構成し、土手35はアッパー網取付枠30Bに設けている。
39は土手35の下側傾斜面37の奥側に形成した傾斜面である(図5)。
【0010】
また、前記土手35は、上側傾斜面36と下側傾斜面37のうちの上側傾斜面36を、扱胴2のテーパー部25に対して略平行に傾斜させ(図2、図4)、下側傾斜面37は略垂直(略鉛直)にすると(図2)、一層、搬送穀稈の穂先の取り込みおよび流れが良好となり、円滑に搬送できる。
即ち、図8、図9のように、土手35の上側傾斜面36と下側傾斜面37は手前側が高く、白抜き矢印の方向へ低く傾斜させている。
この場合、前記土手35は、少なくとも、上側傾斜面36の上縁が扱胴2の軸心より上方に間隔Aを有して位置するように(図8)、配置形成すると、処理物を同じ所で持ち回ることを抑制し、後方への送りが促進させることができて、好適である。
しかして、土手35の上方の網取付枠30の取付枠上部42には、穀粒より大なる所定の大きさの開口孔43を形成する(図10)。開口孔43は、網取付枠30の部分の脱穀室3で分離した穀粒を揺動選別棚13に落下させることができ、脱穀効率が向上して好適である。
【0011】
即ち、脱穀室3の始端部で脱穀した初期脱粒物を扱網10より漏下させて揺動選別棚13に落下供給させることができ、脱穀室3内の負荷を減少させると共に、三番物のロスを低減が図れ、脱穀効率を向上させることができる。
また、開口孔43は、上下左右に複数前記扱網10と略同じ目合いに形成すると(図10)、網取付枠30の部分で分離した穀粒を落下させることができ、脱穀効率が向上して好適である。
この場合、アッパー網取付枠30Bに取付けたアッパー扱網10Bと略同じ目合いに形成すると、アッパー扱網10Bを前方に延長したのと同じように作用を奏し、好適である。
10Aはロワー扱網である(図10)。
また、前記土手35の部分に開口孔43を設けてもよく(図11)、土手35に開口孔43を設けると、搬送穀稈の穂先付近で脱粒した穀粒を開口孔43からすぐに落下させることができ、穀粒の損傷を抑制できて、好適である。
【0012】
実施例では、上側傾斜面36に開口孔43を設けている。
また、前記開口孔43は、複数ある内の上方の開口孔43Aの開口面積を大さく、下方の開口孔43Bの開口面積を小さく形成すると(図12)、夾雑物、枝梗、カギ又は落ちにくく、単粒のみを落とすことができ、好適である。
また、実施例では、下方の開口孔43Cになるに従い順次小さく形成して、夾雑物、枝梗、カギ又は落ちにくく、単粒のみを落とすようにしている。
図13は開口孔43の他の実施例であり、搬送穀稈の移動方向に長いスリット形状に形成したものである。
スリット開口孔43Dは、上下方向(扱胴2の円周方向)には短くて幅が狭くなっているので、夾雑物、枝梗、カギ又は落ちにくく、単粒のみを落とすことができ、好適である。
【0013】
図14はスリット開口孔43Dの他の実施例であり、スリット開口孔43Dは前側が高く後側に至るに従い低く傾斜させて形成したものである。そのため、土手35の上側傾斜面36からの「流れ方向(矢印イ方向)」に対してスリット開口孔43Dが略直角に交差するようになり、処理物の流れに対して抵抗となり、スリット開口孔43Dから穀粒の回収が良好となる。
また、スリット開口孔43Dの場合、各スリット開口孔43Dの周縁に脱穀室3の内側に向かって突き出るように当業者がバーリング加工と呼ぶ切り起こし等の手段により形成した突起(突条)45を形成すると(図15、図16)、枝梗付着粒等の穀粒の分離が促進され、好適であり、また、網取付枠30の強度も向上させられる。
【0014】
なお、突起45は、脱穀状況や条件によっては、スリット開口孔43Dの周縁に脱穀室3の外側に向かって突き出るように形成してもよく(図17)、穀粒の損傷防止という作用効果も期待できる。
しかして、前記扱胴2のテーパー部25の外面には軸部材により形成した第一扱き歯50と板状の第二扱き歯51を扱胴2の円周方向に交互に設け(図8)、第二扱き歯51は始端側より終端側に至るに従い後側に位置するように扱胴2に取付けるが、始端側先端面52と終端側先端面53の境の第二扱き歯51の先端縁を頂点54とし、頂点54は扱胴2の外周に対して最も高く形成し、始端側先端面52と終端側先端面53の先端縁は何れも頂点54に向けて高くなるように形成する(図18)。
即ち、第二扱き歯51の先端周縁は、中間部の頂点54より終端側(後側)を次第に低くなるように形成しているので、第二扱き歯51の抵抗を抑制して穂切れの発生を減少させる。
【0015】
図18の鎖線Sは、始端側先端面52の周縁を延長させた仮想線を示し、始端側先端面52の周縁に対して終端側先端面53の周縁が低くなっているのを図示したものである。
図19は第二扱き歯51の他の実施例である。
しかして、第一扱き歯50と第二扱き歯51は、第一扱き歯50の頂点55より第二扱き歯51の頂点54が後方に位置するように設けると(図20)、第二扱き歯51の取り込み能力を維持したまま穂切れの発生を減少させられ、好適である。
【0016】
即ち、第一扱き歯50と第二扱き歯51は、夫々形状および大きさも相違するが、夫々の頂点55および頂点54を基準に、第一扱き歯50の頂点55より第二扱き歯51の頂点54が後方になるように取付配置することで、搬送穀稈に対して接触面積が大きい第二扱き歯51の送り能力(取り込み能力)は第一扱き歯50に比し大きくなって、その分、接触抵抗も大きく穂切れを発生させ易いが、第一扱き歯50の頂点55より第二扱き歯51の頂点54が後方に位置させることで、第一扱き歯50を先に搬送穀稈に作用させて、第二扱き歯51の取り込み能力を維持したまま穂切れの発生を減少させる。
【0017】
この場合、第一扱き歯50の頂点55は第二扱き歯51の頂点54よりも始端側に位置させる。これにより第一扱き歯50を最初に搬送穀稈に作用させられ、穂切れの発生を減少させる(図21)。
また、第一扱き歯50および第二扱き歯51と土手35との間の隙間は第一扱き歯50が大きく第二扱き歯51が小さくなるように構成すると(図21)、好適である。
【0018】
また、第二扱き歯51と土手35との間の隙間は、側面視、始端側が広く、終端に至るに従い狭く、第二扱き歯51の頂点54の部分が最も狭く形成すると(4、図22)、脱穀室3内への穀稈の取り込みが良好になって、好適である。
この場合、第二扱き歯51と土手35との間の隙間は、図22のように、第二扱き歯51の先端縁Tの一部と土手35とが平行となるように形成すると、取り込み能力を維持したまま、穂切れの発生を減少させる。
しかして、実施例の扱き歯50、51は、種々の大きさ形状に形成し、扱胴2の回転方向に、第一扱き歯50と第二扱き歯51を所定の順序で配置するが、実施例では、第一扱き歯50Aの次に第二扱き歯51Bを設け、第二扱き歯51Bの次に、大きい軸棒形状の扱き歯50の中に小さい扱き歯50を重ねて形成した第三扱き歯50Cを設け、第一扱き歯50Aの次に第二扱き歯51Bの次に第三扱き歯50Cとの順序に設けている。
【0019】
この第一扱き歯50Aの頂点55と、第二扱き歯51Bの頂点54と、第三扱き歯50Cの頂点55Aとは(図23)、図24のように、略直線Yに沿って位置するように配置構成する。
そのため、各軸棒扱き歯50と板状扱き歯51とが円滑に搬送穀稈に当たって送るので、形状の相違する扱歯であっても、穂切れを防止し、取り込み能力を向上させる。
即ち、形状の相違する扱歯であっても、作用の中心となる頂点の位置を揃えることで、穂切れを防止し、取り込み能力を向上させるのである。
なお、直線Yは扱胴2の軸心に対して所定角度傾斜させる。
また、第二扱き歯51Bの終端と、第三扱き歯50C(扱歯27)の始端とは扱胴2の軸心方向に僅かな間隔Wをおいて設けると(図26)、一層、各扱き歯50および扱き歯51の送り作用を有効に発揮させられ、好適である。
【0020】
また、土手35は、上側傾斜面36および下側傾斜面37の何れもが扱胴2と平面視重ならないように配置し、扱胴2の扱歯27および扱き歯50並びに扱き歯51との干渉を防止する。
図27〜29は、第二扱き歯51の他の実施例を示し、第二扱き歯51は基部に取付部58を設け、先端を所定の円弧形状に形成すると共に、断面円柱形状の円柱状端縁部60に形成する。
したがって、円柱状端縁部60により第二扱き歯51の先端縁が鋭利にすり減るのを防止して、耐摩耗性を向上させると共に、穂切れの発生を防止する。
なお、図27〜29では、円柱状端縁部60の位置の理解を容易にするため、円柱状端縁部60の部分に斜線を示しているが、これによって、構成が限定されるものではない。
【0021】
しかして、図30〜32は、二番コンベア19と二番還元装置20との接続部の引継メタル65の実施例であり、二番還元装置20の下方に位置する引継メタル65の底部には掃除口66を形成し、掃除口66には蓋67を設ける。蓋67は、一端の一端取付部68をメタル側に軸69により回動自在に取付け、この軸69を支点として他端取付部70を回動させてメタル側他端係止部71に係止させて装着し、反対に、蓋67をメタル側他端係止部71より外して掃除口66を開口させる。
即ち、蓋67は、下方から引継メタル65に当てている構成でありながら、一端取付部68の軸69を支点として回動させるので、開けたときに一端取付部68から外れず、落下する恐れがない。
そのため、メンテナンスが容易になる。
図中、72は吸引排塵ファン、73は排藁搬送装置、74はカッターである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】脱穀装置の側面図。
【図2】同正面図。
【図3】同正面図。
【図4】同側面拡大図。
【図5】扱網と網取付枠の展開図。
【図6】網取付枠の斜視図。
【図7】網取付枠の背面図。
【図8】網取付枠と扱胴の位置関係を示す正面図。
【図9】扱網と網取付枠の展開図。
【図10】網取付枠の他の実施例の展開図。
【図11】網取付枠の他の実施例の展開図。
【図12】網取付枠の他の実施例の展開図。
【図13】網取付枠の他の実施例の展開図。
【図14】網取付枠の他の実施例の展開図。
【図15】網取付枠の他の実施例の一部断面図。
【図16】開口孔の斜視図。
【図17】開口孔の他の実施例の一部断面図。
【図18】板状扱歯の斜視図。
【図19】板状扱歯の他の実施例の斜視図。
【図20】扱胴の平面図。
【図21】扱胴の側面図。
【図22】扱胴の側面図。
【図23】扱胴の正面図。
【図24】扱胴の平面図。
【図25】扱胴の斜視図。
【図26】扱胴の平面図。
【図27】板状扱歯の他の実施例の斜視図。
【図28】同平面図。
【図29】同断面図。
【図30】脱穀装置の側面図。
【図31】同正面図。
【図32】接続メタルの拡大図。
【符号の説明】
【0023】
1…脱穀装置、2…扱胴、3…脱穀室、4…穀稈供給搬送装置、5…供給搬送チエン、10…扱網、11…送風唐箕、12…風選室、13…揺動選別棚、18…一番コンベア、19…二番コンベア、20…二番還元装置、21…二番処理装置、22…二番処理胴、23…排塵処理装置、24…排塵処理胴、25…テーパー部、27…扱歯、26…同径部、27…扱歯、30…網取付枠、33横板部、34…縦板部、35…土手、36…上側傾斜面、37…下側傾斜面、40…穀稈供給口、42…取付枠上部、43…開口孔、45…突起、50…第一扱き歯、51…第二扱き歯、52…始端側先端面、53…終端側先端面、55…頂点、54…頂点、58…取付部、60…円柱状端縁部、65…引継メタル、66…掃除口、67…蓋、68…一端取付部、69…軸、71…メタル側他端係止部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀室に外周面に扱歯を設けた扱胴を軸装し、該扱胴の外周面は、その始端部を、終端部に至るに従い大径となるテーパー部に形成し、テーパー部より終端側は終始略同径の同径部に形成し、同径部に前記扱歯を設け、扱歯の移動軌跡に対して所定間隔を置いて扱網を位置させて前記脱穀室を構成し、前記扱網の前後両側には夫々網取付枠を設け、網取付枠は機体に設けた枠状の網受体に載置するように取付けた構成は、公知である(特許文献1)
【特許文献1】特開2002−65038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例は、扱胴の前面を正面視小径に形成し、側面視において扱胴の始端部にテーパー部を形成して、扱胴の前面と搬送穀稈との衝突を避けようとしているが、扱胴の始端部をテーパー部に形成すると、テーパー部の始端部と扱網との間隔が広くなり、かえって穀稈の搬送姿勢が乱れることが判明した。
即ち、搬送穀稈の株元の搬送姿勢に乱れは、穀稈供給搬送装置による搬送中の穀稈を見ればわかるが、搬送穀稈の株元の搬送姿勢が乱れていなくても、搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢が乱れることがあり、この場合、脱穀室の外側から見えず、目視では確認できないが、穂切れが増加するという現象で搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢の乱れを顕在化することを突き止めた。
したがって、公知例では、搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢が乱れ、穂切れが増加するという課題がある。
この場合、穂切れの増加は、脱穀室の外側から目視できない搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢の乱れが原因であり、公知例では、この原因が不明のため、何の対策も講じることができなかった。
本願は、搬送穀稈の搬送姿勢を良好にして、穂切れの発生を抑制して、脱穀ロスを減少させるように工夫したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、脱穀室3に、外周面に扱歯27を設けた扱胴2を軸装し、該扱胴2の外周面は、その始端部を、終端部に至るに従い大径となるテーパー部25に形成し、テーパー部25より終端側は終始略同径の同径部26に形成し、同径部26に前記扱歯27を設け、扱歯27の移動軌跡に対して所定間隔を置いて扱網10を位置させて前記脱穀室3を構成し、前記扱網10の前後両側には夫々網取付枠30を設け、網取付枠30は機体に設けた網受体に支持させて取付け、前記網取付枠30の所定位置には、網取付枠30より扱胴2の外周に近付くように突き出る土手35を設け、該土手35は、上側傾斜面36と下側傾斜面37の二面により構成した脱穀装置としたものであり、刈り取った穀稈を穀稈供給搬送装置4により脱穀装置1の脱穀室3に供給すると、搬送穀稈は株元側が穀稈供給搬送装置4により挟持搬送され、搬送穀稈の穂先は穀稈供給口40から脱穀室3内に供給される。
扱胴2の始端部はテーパー部25に形成されているので、株元側より幾分広がる搬送穀稈の穂先はテーパー部25の始端部と扱網10との広い間隔から脱穀室3に円滑に取り込まれ、穀稈供給搬送装置4により終端側に搬送されながら回転する扱胴2の扱歯27により脱穀される。
この場合、網受体に扱網10を取付(支持)ける扱網10の前側網取付枠30の所定位置には、網受体の内面よりも扱胴2の外周面に近付くように突き出る土手35を設けているから、株元側より幾分広がる搬送穀稈の穂先は扱胴2のテーパー部25と土手35とに挟まれて徐々に狭い脱穀室3内の空間へ搬送される。
したがって、搬送穀稈の穂先は、扱胴2の前面に衝突して折曲することもなければ、株元側より広がることが原因で搬送が遅れる穂先側も、円滑に誘導されて良好な搬送姿勢のままで搬送される。
本発明は、前記土手35は、網取付枠30を中間線Lを境に一回屈曲させて終端側に至るに従い扱胴2の外周に近付くように形成させて前記上側傾斜面36および下側傾斜面37を形成し、上側傾斜面36と下側傾斜面37のうちの上側傾斜面36は平面視扱胴2のテーパー部25に対して略平行に傾斜させ、下側傾斜面37は正面視略垂直に形成した脱穀装置としたものであり、前記土手35の上側傾斜面36は扱胴2のテーパー部25に対して略平行に傾斜させているので、搬送穀稈を後方に円滑に誘導し、下側傾斜面37は正面視略垂直に形成しているので、脱穀物を下方に円滑に誘導し、脱穀効率を向上させる。
本発明は、前記土手35は、上側傾斜面36および下側傾斜面37の何れもが、扱胴2と平面視重ならないように配置した脱穀装置としたものであり、扱胴2のテーパー部25の第一扱き歯50および第二扱き歯51は、土手35の上側傾斜面36および下側傾斜面37の何れにも接触せず、搬送穀稈を円滑に良好な搬送姿勢で搬送する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、搬送穀稈の搬送姿勢を良好にできる。
請求項2の発明では、搬送穀稈の穂先の搬送姿勢を良好にできる。
請求項3の発明では、扱網10(網取付枠30)の取付を容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施例を図面により説明すると、1は脱穀装置であり、上部に扱胴2を軸装した脱穀室3を設け、脱穀室3の一側には前記刈取部により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置4の供給搬送チエン5を設けている。
前記扱胴2は、略正円の円筒形状に形成し、扱胴軸6により軸装する。7は前板、8は中間板である。
前記脱穀室3は、扱胴2の外周面を扱網10により包囲して形成し、扱網10の下方には送風唐箕11を設け、前記脱穀室3の下方には前記送風唐箕11の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室12を形成する。風選室12内には、送風唐箕11の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚13を設ける。18は一番コンベア、19は二番コンベア、20は二番還元装置、21は二番処理装置、22は二番処理胴、23は排塵処理装置、24は排塵処理胴であり、二番処理胴22と排塵処理胴24は同軸上に夫々配置している。
【0007】
扱胴2の外周面は、側面視始端部を、終端部に至るに従い大径となるテーパー部25に形成し、テーパー部25より終端側は終始略同径の同径部26に形成し、同径部26の外面には軸部材または板部材により形成した扱歯27を設ける。前記扱歯27は、各扱歯27が螺旋状に連続するように夫々配置し、脱穀されて扱網10から漏下しない脱穀物が脱穀室3の終端側に移送されるように構成している。
しかして、前記扱網10は、扱歯27の移動軌跡Kに対して所定間隔を置いて位置するように設けて(図3)、搬送穀稈を扱胴2の下面側に供給搬送して脱穀する。扱網10の前後両側には夫々網取付枠30を設け、網取付枠30は機体に設けた網受体(図示省略)に係合させて取付ける。
したがって、網取付枠30は、横板部33に縦板部34を設けて断面略逆L型形状に形成して、網受体上に穀稈供給搬送装置4を設けた側から挿入して取付ければ良いが、取付および固定手段構成は任意である。
【0008】
この場合、前側の網取付枠30の所定位置には、横板部33より扱胴2の外周に近付くように突き出る土手(ガイド)35を設ける。
前記土手35は、上側傾斜面36と下側傾斜面37の二面により構成し、土手35は、網取付枠30の横板部33を中間線Lを境に一回屈曲させて後側(終端側)に至るに従い扱胴2の外周に近付くように形成する(図5)。
土手35は脱穀室3の始端部における搬送姿勢を良好にして脱穀効率を向上させるものである。
即ち、扱胴2は、終始同径に形成すると、扱胴2の前面38(図1)と搬送穀稈とが直角に衝突して搬送が円滑に行かなくなるため、扱胴2の始端部にテーパー部25を形成しているが、テーパー部25の始端部と扱網10との間隔が広くなると、かえって穀稈の搬送姿勢が乱れることが判明した。
【0009】
この穀稈の搬送姿勢は、搬送穀稈の株元部分は搬送中の穀稈供給搬送装置4の穀稈の搬送姿勢をを見れば直ちにわかり、搬送穀稈の株元の搬送姿勢が乱れていなくても、搬送穀稈の穂先側の搬送姿勢が乱れていることがあり、脱穀室3の外側から見えず、目視では確認できないが、穂切れが増加する。
そこで、扱網10の前側の網取付枠30に、始端側が低く終端側に至るに従い内側に突き出る土手35を設け、土手35により、特に、穀稈の穂先側の搬送姿勢を良好にして、穂切れを減少させ、脱穀効率を向上させる。
実施例の網取付枠30は、扱胴2の円周方向の複数分割し、ロワー網取付枠30Aとアッパー網取付枠30Bとに形成し、脱穀室3の前板8に形成した穀稈供給口40の奥側部分にてロワー網取付枠30Aとアッパー網取付枠30Bとが当接するように構成し、土手35はアッパー網取付枠30Bに設けている。
39は土手35の下側傾斜面37の奥側に形成した傾斜面である(図5)。
【0010】
また、前記土手35は、上側傾斜面36と下側傾斜面37のうちの上側傾斜面36を、扱胴2のテーパー部25に対して略平行に傾斜させ(図2、図4)、下側傾斜面37は略垂直(略鉛直)にすると(図2)、一層、搬送穀稈の穂先の取り込みおよび流れが良好となり、円滑に搬送できる。
即ち、図8、図9のように、土手35の上側傾斜面36と下側傾斜面37は手前側が高く、白抜き矢印の方向へ低く傾斜させている。
この場合、前記土手35は、少なくとも、上側傾斜面36の上縁が扱胴2の軸心より上方に間隔Aを有して位置するように(図8)、配置形成すると、処理物を同じ所で持ち回ることを抑制し、後方への送りが促進させることができて、好適である。
しかして、土手35の上方の網取付枠30の取付枠上部42には、穀粒より大なる所定の大きさの開口孔43を形成する(図10)。開口孔43は、網取付枠30の部分の脱穀室3で分離した穀粒を揺動選別棚13に落下させることができ、脱穀効率が向上して好適である。
【0011】
即ち、脱穀室3の始端部で脱穀した初期脱粒物を扱網10より漏下させて揺動選別棚13に落下供給させることができ、脱穀室3内の負荷を減少させると共に、三番物のロスを低減が図れ、脱穀効率を向上させることができる。
また、開口孔43は、上下左右に複数前記扱網10と略同じ目合いに形成すると(図10)、網取付枠30の部分で分離した穀粒を落下させることができ、脱穀効率が向上して好適である。
この場合、アッパー網取付枠30Bに取付けたアッパー扱網10Bと略同じ目合いに形成すると、アッパー扱網10Bを前方に延長したのと同じように作用を奏し、好適である。
10Aはロワー扱網である(図10)。
また、前記土手35の部分に開口孔43を設けてもよく(図11)、土手35に開口孔43を設けると、搬送穀稈の穂先付近で脱粒した穀粒を開口孔43からすぐに落下させることができ、穀粒の損傷を抑制できて、好適である。
【0012】
実施例では、上側傾斜面36に開口孔43を設けている。
また、前記開口孔43は、複数ある内の上方の開口孔43Aの開口面積を大さく、下方の開口孔43Bの開口面積を小さく形成すると(図12)、夾雑物、枝梗、カギ又は落ちにくく、単粒のみを落とすことができ、好適である。
また、実施例では、下方の開口孔43Cになるに従い順次小さく形成して、夾雑物、枝梗、カギ又は落ちにくく、単粒のみを落とすようにしている。
図13は開口孔43の他の実施例であり、搬送穀稈の移動方向に長いスリット形状に形成したものである。
スリット開口孔43Dは、上下方向(扱胴2の円周方向)には短くて幅が狭くなっているので、夾雑物、枝梗、カギ又は落ちにくく、単粒のみを落とすことができ、好適である。
【0013】
図14はスリット開口孔43Dの他の実施例であり、スリット開口孔43Dは前側が高く後側に至るに従い低く傾斜させて形成したものである。そのため、土手35の上側傾斜面36からの「流れ方向(矢印イ方向)」に対してスリット開口孔43Dが略直角に交差するようになり、処理物の流れに対して抵抗となり、スリット開口孔43Dから穀粒の回収が良好となる。
また、スリット開口孔43Dの場合、各スリット開口孔43Dの周縁に脱穀室3の内側に向かって突き出るように当業者がバーリング加工と呼ぶ切り起こし等の手段により形成した突起(突条)45を形成すると(図15、図16)、枝梗付着粒等の穀粒の分離が促進され、好適であり、また、網取付枠30の強度も向上させられる。
【0014】
なお、突起45は、脱穀状況や条件によっては、スリット開口孔43Dの周縁に脱穀室3の外側に向かって突き出るように形成してもよく(図17)、穀粒の損傷防止という作用効果も期待できる。
しかして、前記扱胴2のテーパー部25の外面には軸部材により形成した第一扱き歯50と板状の第二扱き歯51を扱胴2の円周方向に交互に設け(図8)、第二扱き歯51は始端側より終端側に至るに従い後側に位置するように扱胴2に取付けるが、始端側先端面52と終端側先端面53の境の第二扱き歯51の先端縁を頂点54とし、頂点54は扱胴2の外周に対して最も高く形成し、始端側先端面52と終端側先端面53の先端縁は何れも頂点54に向けて高くなるように形成する(図18)。
即ち、第二扱き歯51の先端周縁は、中間部の頂点54より終端側(後側)を次第に低くなるように形成しているので、第二扱き歯51の抵抗を抑制して穂切れの発生を減少させる。
【0015】
図18の鎖線Sは、始端側先端面52の周縁を延長させた仮想線を示し、始端側先端面52の周縁に対して終端側先端面53の周縁が低くなっているのを図示したものである。
図19は第二扱き歯51の他の実施例である。
しかして、第一扱き歯50と第二扱き歯51は、第一扱き歯50の頂点55より第二扱き歯51の頂点54が後方に位置するように設けると(図20)、第二扱き歯51の取り込み能力を維持したまま穂切れの発生を減少させられ、好適である。
【0016】
即ち、第一扱き歯50と第二扱き歯51は、夫々形状および大きさも相違するが、夫々の頂点55および頂点54を基準に、第一扱き歯50の頂点55より第二扱き歯51の頂点54が後方になるように取付配置することで、搬送穀稈に対して接触面積が大きい第二扱き歯51の送り能力(取り込み能力)は第一扱き歯50に比し大きくなって、その分、接触抵抗も大きく穂切れを発生させ易いが、第一扱き歯50の頂点55より第二扱き歯51の頂点54が後方に位置させることで、第一扱き歯50を先に搬送穀稈に作用させて、第二扱き歯51の取り込み能力を維持したまま穂切れの発生を減少させる。
【0017】
この場合、第一扱き歯50の頂点55は第二扱き歯51の頂点54よりも始端側に位置させる。これにより第一扱き歯50を最初に搬送穀稈に作用させられ、穂切れの発生を減少させる(図21)。
また、第一扱き歯50および第二扱き歯51と土手35との間の隙間は第一扱き歯50が大きく第二扱き歯51が小さくなるように構成すると(図21)、好適である。
【0018】
また、第二扱き歯51と土手35との間の隙間は、側面視、始端側が広く、終端に至るに従い狭く、第二扱き歯51の頂点54の部分が最も狭く形成すると(4、図22)、脱穀室3内への穀稈の取り込みが良好になって、好適である。
この場合、第二扱き歯51と土手35との間の隙間は、図22のように、第二扱き歯51の先端縁Tの一部と土手35とが平行となるように形成すると、取り込み能力を維持したまま、穂切れの発生を減少させる。
しかして、実施例の扱き歯50、51は、種々の大きさ形状に形成し、扱胴2の回転方向に、第一扱き歯50と第二扱き歯51を所定の順序で配置するが、実施例では、第一扱き歯50Aの次に第二扱き歯51Bを設け、第二扱き歯51Bの次に、大きい軸棒形状の扱き歯50の中に小さい扱き歯50を重ねて形成した第三扱き歯50Cを設け、第一扱き歯50Aの次に第二扱き歯51Bの次に第三扱き歯50Cとの順序に設けている。
【0019】
この第一扱き歯50Aの頂点55と、第二扱き歯51Bの頂点54と、第三扱き歯50Cの頂点55Aとは(図23)、図24のように、略直線Yに沿って位置するように配置構成する。
そのため、各軸棒扱き歯50と板状扱き歯51とが円滑に搬送穀稈に当たって送るので、形状の相違する扱歯であっても、穂切れを防止し、取り込み能力を向上させる。
即ち、形状の相違する扱歯であっても、作用の中心となる頂点の位置を揃えることで、穂切れを防止し、取り込み能力を向上させるのである。
なお、直線Yは扱胴2の軸心に対して所定角度傾斜させる。
また、第二扱き歯51Bの終端と、第三扱き歯50C(扱歯27)の始端とは扱胴2の軸心方向に僅かな間隔Wをおいて設けると(図26)、一層、各扱き歯50および扱き歯51の送り作用を有効に発揮させられ、好適である。
【0020】
また、土手35は、上側傾斜面36および下側傾斜面37の何れもが扱胴2と平面視重ならないように配置し、扱胴2の扱歯27および扱き歯50並びに扱き歯51との干渉を防止する。
図27〜29は、第二扱き歯51の他の実施例を示し、第二扱き歯51は基部に取付部58を設け、先端を所定の円弧形状に形成すると共に、断面円柱形状の円柱状端縁部60に形成する。
したがって、円柱状端縁部60により第二扱き歯51の先端縁が鋭利にすり減るのを防止して、耐摩耗性を向上させると共に、穂切れの発生を防止する。
なお、図27〜29では、円柱状端縁部60の位置の理解を容易にするため、円柱状端縁部60の部分に斜線を示しているが、これによって、構成が限定されるものではない。
【0021】
しかして、図30〜32は、二番コンベア19と二番還元装置20との接続部の引継メタル65の実施例であり、二番還元装置20の下方に位置する引継メタル65の底部には掃除口66を形成し、掃除口66には蓋67を設ける。蓋67は、一端の一端取付部68をメタル側に軸69により回動自在に取付け、この軸69を支点として他端取付部70を回動させてメタル側他端係止部71に係止させて装着し、反対に、蓋67をメタル側他端係止部71より外して掃除口66を開口させる。
即ち、蓋67は、下方から引継メタル65に当てている構成でありながら、一端取付部68の軸69を支点として回動させるので、開けたときに一端取付部68から外れず、落下する恐れがない。
そのため、メンテナンスが容易になる。
図中、72は吸引排塵ファン、73は排藁搬送装置、74はカッターである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】脱穀装置の側面図。
【図2】同正面図。
【図3】同正面図。
【図4】同側面拡大図。
【図5】扱網と網取付枠の展開図。
【図6】網取付枠の斜視図。
【図7】網取付枠の背面図。
【図8】網取付枠と扱胴の位置関係を示す正面図。
【図9】扱網と網取付枠の展開図。
【図10】網取付枠の他の実施例の展開図。
【図11】網取付枠の他の実施例の展開図。
【図12】網取付枠の他の実施例の展開図。
【図13】網取付枠の他の実施例の展開図。
【図14】網取付枠の他の実施例の展開図。
【図15】網取付枠の他の実施例の一部断面図。
【図16】開口孔の斜視図。
【図17】開口孔の他の実施例の一部断面図。
【図18】板状扱歯の斜視図。
【図19】板状扱歯の他の実施例の斜視図。
【図20】扱胴の平面図。
【図21】扱胴の側面図。
【図22】扱胴の側面図。
【図23】扱胴の正面図。
【図24】扱胴の平面図。
【図25】扱胴の斜視図。
【図26】扱胴の平面図。
【図27】板状扱歯の他の実施例の斜視図。
【図28】同平面図。
【図29】同断面図。
【図30】脱穀装置の側面図。
【図31】同正面図。
【図32】接続メタルの拡大図。
【符号の説明】
【0023】
1…脱穀装置、2…扱胴、3…脱穀室、4…穀稈供給搬送装置、5…供給搬送チエン、10…扱網、11…送風唐箕、12…風選室、13…揺動選別棚、18…一番コンベア、19…二番コンベア、20…二番還元装置、21…二番処理装置、22…二番処理胴、23…排塵処理装置、24…排塵処理胴、25…テーパー部、27…扱歯、26…同径部、27…扱歯、30…網取付枠、33横板部、34…縦板部、35…土手、36…上側傾斜面、37…下側傾斜面、40…穀稈供給口、42…取付枠上部、43…開口孔、45…突起、50…第一扱き歯、51…第二扱き歯、52…始端側先端面、53…終端側先端面、55…頂点、54…頂点、58…取付部、60…円柱状端縁部、65…引継メタル、66…掃除口、67…蓋、68…一端取付部、69…軸、71…メタル側他端係止部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀室(3)に、外周面に扱歯(27)を設けた扱胴(2)を軸装し、該扱胴(2)の外周面は、その始端部を、終端部に至るに従い大径となるテーパー部(25)に形成し、テーパー部(25)より終端側は終始略同径の同径部(26)に形成し、同径部(26)に前記扱歯(27)を設け、扱歯(27)の移動軌跡に対して所定間隔を置いて扱網(10)を位置させて前記脱穀室(3)を構成し、前記扱網(10)の前後両側には夫々網取付枠(30)を設け、網取付枠(30)は機体に設けた網受体に支持させて取付け、前記網取付枠(30)の所定位置には、網取付枠(30)より扱胴(2)の外周に近付くように突き出る土手(35)を設け、該土手(35)は、上側傾斜面(36)と下側傾斜面(37)の二面により構成した脱穀装置。
【請求項2】
請求項1において、前記土手(35)は、網取付枠(30)を中間線(L)を境に一回屈曲させて終端側に至るに従い扱胴(2)の外周に近付くように形成させて前記上側傾斜面(36)および下側傾斜面(37)を形成し、上側傾斜面(36)と下側傾斜面(37)のうちの上側傾斜面(36)は平面視扱胴(2)のテーパー部(25)に対して略平行に傾斜させ、下側傾斜面(37)は正面視略垂直に形成した脱穀装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記土手(35)は、上側傾斜面(36)および下側傾斜面(37)の何れもが、扱胴(2)と平面視重ならないように配置した脱穀装置。
【請求項1】
脱穀室(3)に、外周面に扱歯(27)を設けた扱胴(2)を軸装し、該扱胴(2)の外周面は、その始端部を、終端部に至るに従い大径となるテーパー部(25)に形成し、テーパー部(25)より終端側は終始略同径の同径部(26)に形成し、同径部(26)に前記扱歯(27)を設け、扱歯(27)の移動軌跡に対して所定間隔を置いて扱網(10)を位置させて前記脱穀室(3)を構成し、前記扱網(10)の前後両側には夫々網取付枠(30)を設け、網取付枠(30)は機体に設けた網受体に支持させて取付け、前記網取付枠(30)の所定位置には、網取付枠(30)より扱胴(2)の外周に近付くように突き出る土手(35)を設け、該土手(35)は、上側傾斜面(36)と下側傾斜面(37)の二面により構成した脱穀装置。
【請求項2】
請求項1において、前記土手(35)は、網取付枠(30)を中間線(L)を境に一回屈曲させて終端側に至るに従い扱胴(2)の外周に近付くように形成させて前記上側傾斜面(36)および下側傾斜面(37)を形成し、上側傾斜面(36)と下側傾斜面(37)のうちの上側傾斜面(36)は平面視扱胴(2)のテーパー部(25)に対して略平行に傾斜させ、下側傾斜面(37)は正面視略垂直に形成した脱穀装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記土手(35)は、上側傾斜面(36)および下側傾斜面(37)の何れもが、扱胴(2)と平面視重ならないように配置した脱穀装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2007−215476(P2007−215476A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39508(P2006−39508)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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