説明

脱穀装置

【課題】扱室の終端側に設けられた従来構成の排塵経路では、多量の藁屑が持ち回りされるので、ささり粒の十分な回収処理効果が得られず、4番ロスの多発を招く問題がある。
この発明の課題は、選別室と排塵処理室とに通ずる排塵経路を仕切抵抗板を挟んで前後に設けることにより、扱室終端側での藁屑などの排塵処理効果並びにささり粒の回収効果を高め、回収率の高揚を図ることにある。
【解決手段】本発明は、扱胴2を内装軸架せる扱室3の終端側には、扱室下方の選別室20及び排塵処理胴24を内装軸架せる排塵処理室25の始端に通ずる第1排塵経路9と、この第1排塵経路幅と略同等若しくはそれよりも幅狭の第2排塵経路10を仕切抵抗板7を挟んで前後に配置構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやハ−ベスタ等に利用される脱穀装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されているように、扱室の終端側には、扱室内で発生した排塵処理物を扱室下方の選別室内に案内落下させ、また、扱室一側に設けた排塵処理胴室内に送り込んで再処理する排塵経路が設けられている。
【特許文献1】特開2003−125635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の排塵経路の構成では、多量の藁屑が持ち回りされるので、ささり粒の十分な回収処理効果が得られず、4番ロスの多発を招く問題がある。
この発明は、上記問題点を解消することにあり、扱室終端側での藁屑などの排塵処理を効果的に行い、特に、排塵経路内でのささり粒の回収効果を高め、回収率の高揚を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するために、次の如き技術手段を講じた。すなわち、請求項1記載の本発明は、扱胴(2)を内装軸架せる扱室(3)の終端側には、扱室下方の選別室(20)及び排塵処理胴(24)を内装軸架せる排塵処理室(25)の始端に通ずる第1排塵経路(9)と、この第1排塵経路幅と略同等若しくはそれよりも幅狭の第2排塵経路(10)を仕切抵抗板(7)を挟んで前後に配置して設けてあることを特徴とする。
【0005】
扱室(3)内で発生した多量の排塵処理物は、扱室終端側に至って第1排塵経路(9)を扱胴回転方向に流動しながら下方の選別室(20)内に案内落下されるものと、扱室一側の排塵処理室(25)内へ導入されるものとに別れ、第1排塵経路9内で処理しきれない排塵物は排塵処理室25内へ導かれて行く。第2排塵経路(10)では、回転する扱胴(2)の扱歯(1)によって掻き落されるささり粒が下方の選別室内へ案内落下されると共に、ここで発生した未処理物を含む藁屑などは、前側の第1排塵経路(9)から仕切抵抗板(7)を乗り越えてきた一部の排塵処理物と一緒になって排塵処理室(25)内へ送り込まれて再処理されることになる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、請求項1において、前記第2排塵経路(10)は、複数の搬送ガイド体(10b)を扱胴回転方向に沿って所定間隔おきに配設した構成としてあることを特徴とする。
【0007】
第2排塵経路内では、所定間隔おきに配設する複数の搬送ガイド体(10b)によって案内されるので、掻き落とされるささり粒の濾過作用がスムースに行われ、藁屑の詰りもなく、扱胴の回転によりスムースに排塵処理室(25)内へ導かれることになり、排塵処理胴(24)による取り込み作用が良好に行える。
【発明の効果】
【0008】
要するに、請求項1の本発明によれば、扱室(3)の終端側には、扱室下方の選別室(20)及び排塵処理室(25)の始端に通ずる第1排塵経路(9)と、この第1排塵経路幅と略同等若しくはそれよりも幅狭の第2排塵経路(10)を仕切抵抗板(7)を挟んで前後に配設してあるので、第1排塵経路(9)では、扱室(3)内で多量に発生する排塵処理物の処理を行い、第2排塵経路(10)では主としてささり粒の処理作用を行うことができ、両経路で藁屑の処理を分担しながら、下方の選別室内へ案内落下されない藁屑のみ排塵処理室内へ導いて処理することができる。従って、藁屑の排塵案内処理と、ささり粒の回収処理が効果的に行えるので、4番ロスの低減、回収率の向上を図ることができる。
【0009】
また、請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、特に、第2排塵経路(10)内では、複数の搬送ガイド体(10b)によって案内されるので、掻き落とされるささり粒の濾過作用がスムースに行われるばかりでなく、藁屑の流れもスムースであり、扱胴の回転によって排塵処理室内へ確実に導かれることになり、ささり粒の回収効果並びに藁屑の排塵案内処理効果をより高めることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、図1に示すコンバインの構成について述べる。
走行クロ−ラWを具備する車体上には、前部に昇降可能な刈取部Hを、後部に脱穀装置(脱穀部)Dを搭載している。刈取部Hの横側部にはキャビンC付運転部が設置され、その後方にはグレンタンクGが装備されている。
【0011】
つぎに、脱穀装置Dの構成につき説明する。扱歯1付き扱胴2を内装軸架せる扱室3の前側板5と中側板6との間における下半周部に沿って受網4を張設している。扱室3の終端側における前記中側板6と後側板8との間には、扱室下方の選別室及び排塵処理胴を内装軸架せる排塵処理室の始端に通ずる第1排塵経路9と、この第1排塵経路幅と略同等若しくはそれよりも幅狭の第2排塵経路10を仕切抵抗板7を挟んで前後に配置して設けた構成としている。前側の第1排塵経路9は、連続した搬送ガイド板9aに濾過孔9bを開口して設けた構成とし、後側の第2排塵経路10は、排塵処理室側の搬送ガイド板10aと、扱胴回転方向に沿って所定間隔おきに配設した数個の搬送ガイド体10b…とからなり、各ガイド体10b…間の間隙部10cから穀粒の濾過作用を行い、各ガイド体10b…及びガイド板10a上面に沿って排塵処理室への藁屑の送り案内作用がスム−スに行えるように構成している。排塵処理室側の第1搬送ガイド板9a及び第2搬送ガイド板10aは、共に断面形状を同じくし、排塵処理室側連通口端部の延長線を排塵処理胴24の軸芯より下方位置とすることで、排塵処理胴への送塵が容易に行えるようにしている。
【0012】
また、第2排塵経路の各ガイド体10b…は、図6に示すように、仕切抵抗板7から後方に向けて片持ち状に突設され、且つ、該ガイド体の扱胴回転方向に対する後面側(上手側)が傾斜して後端側に向かうほど間隙部10cが幅広くなるように構成してあり、これにより、穀稈が第2排塵経路を後方に移送されるに伴い下方の揺動選別棚21上への濾過空間が拡大されるので、穀稈より除去された4番物などは、速やかに穀稈から離されるようになり、4番ロスの低減を図ることができる。なお、かかる実施例では、各間隙部10c…の間隙幅がL1<L2<L3(図8参照)となるよう穂先側(排塵処理室側)が狭く、株元側(フィ−ドチエン側)ほど幅広くしてあり、株元側に多いささり粒の漏下促進を図るようにしている。また、第1排塵経路9においては、濾過孔9bを形成する横桟部9cを狭くして濾過面積を可能な限り拡大しているのに対し、第2排塵経路10の各ガイド体10b…の幅は、前記横桟部9cより幅広くすることで、扱歯が穀稈内部に入り込んだ際に穀稈が下方に逃げて扱ぎ残り回収ムラが発生したり、ささり粒除去の効率が低下するのを防止している。
【0013】
第1排塵経路9部は、連続した搬送ガイド板10aにて構成してあるのに対し、第2排塵経路10部は、穀稈の株元側(フィ−ドチエン側)に位置して株元ガイド体10dを設けてあり、この株元ガイド体10dと各搬送ガイド体10b…と搬送ガイド板10aとによって不連続なガイド体構成とし、扱胴軸を中心とする仮想円弧状に配設した構成としている。また、この株元ガイド体10dは、下端側に屈曲点Qを持ち、屈曲点より株元側を急傾斜として藁屑の流れを良くし、屈曲点より穂先側は選別室内に入り込ませて、ガイド体10b側へ向かうように構成している。
【0014】
扱室3の上方部を覆う扱胴カバ−は13は、扱胴軸方向に平行な軸芯回りに揺動開閉可能に構成されている。また、扱室3の扱ぎ口側には、該扱ぎ口に沿って穀稈の株元側を挟持搬送するフイ−ドチエン14とこの上側に対設する挟持レ−ル14aを配設している。この挟持レール14aは扱胴カバー13側に装着して該カバーと共に揺動開閉する構成としている。扱室の前側には穀稈供給口15があり、扱室の後側には穀稈排出口16が開口され、後側板8からは布やゴム等の弾性材からなる穀粒飛散防止体17が垂下して設けられている。
【0015】
扱室3下方の選別室20には、揺動選別棚21が架設されてあり、扱室受網4からの濾過物及び前記排塵経路9,10からの濾過物を受け入れてふるい選別する構成としている。
【0016】
扱室3のフィードチエン14側とは反対側一側には2番処理胴22を内装軸架した2番処理室23を並設し、2番処理胴22の後方にはこれと同一軸芯上において排塵処理胴24を内装軸架した排塵処理室25を構成して設けている。排塵処理胴24は、扱室3の第1・第2排塵経路9,10部からの処理物を受け入れて後方に搬送しながら処理し、2番処理胴24は、2番還元装置30からの2番処理物を前方に向けて搬送しながら処理する構成としている。前記排塵処理胴24の始端部には第1・第2排塵経路9,10に対応する連通口幅にわたって取込スパイラー26を設けて、取り込んだ処理物を速やかに処理室内後方に向けて送塵する構成としている。
【0017】
第2排塵経路10の排塵処理胴24側の取込み口上方に飛散防止カバー体31を設けてあり、扱室側からの排塵物の取込みが良好に行えるようにしている。そして、この飛散防止カバー体31は、仕切抵抗板7と後側板8とにわたって連結するように構成している。仕切抵抗板7と後側板8間の排塵経路部10を飛散防止カバー体31と搬送ガイド板10aとで連結することで、剛性が高まり、後側板を扱胴下方部を開放した構成としても上下の捩じれに対する強度が確保できる。
【0018】
排塵処理室25内への処理物の取込角度は、第1排塵経路9の取込角度α1(図7参照)を第2排塵経路10の取込角度α2(図8参照)より大きくしている。第1排塵経路9部においては、扱室前方部より導かれた処理物を停滞させることなく排塵処理室内へ導いて後方に送塵するよう取込角度を大きくし、扱室異音や扱室負荷の増加を防止している。逆に、第2排塵経路10部においては、ささり粒の回収や扱ぎ残り粒の回収を主として行っており、排塵処理室内へ導かれる処理量も少ないので、前記飛散防止カバー体31の設置によって取込角度を小さくしている。
【0019】
排塵処理室25内には、排塵経路9,10から導入される排塵処理物を処理室内後方に向けて案内処理する送塵リード板28を送り方向所定角度に傾斜させて設けている。この送塵リード板28は、図12に示すように、排塵処理胴24始端側の取込スパイラー26に対応するリード板28a…と、該排塵処理胴の中間部位から終端(後端)側にかけて植設した処理歯群27…に対応するリード板28b…とからなり、排塵経路9,10に対応する送塵リード板28a…の送塵角θ1をこれより後方にかけての送塵リード板28b…の送塵角θ2よりも大きくしている。取込スパイラー26の送塵角θ3は送塵リード板28aの送塵角θ1と略同一角としている。従って、取込スパイラー26と送塵リード板28a…との共同作用によって取り込んだ処理物を停滞させることなく速やかに処理室内後方に向けて送塵することができる。
【0020】
図13及び図14に示す実施例は、第1排塵経路9の搬送ガイド板9aと第2排塵経路10の搬送ガイド板10a及び各搬送ガイド体9b…を一体的に形成し、上方より仕切抵抗板7を設けるように構成したもので、各々を別々に構成するものに比べ製作が容易で安価に実施することができる。
【0021】
また、図15に示すように、仕切抵抗板7は、排塵処理室25への連通口までとし、排塵処理胴24の対向面側及びその上方まで延出されていないため、取込み面積が拡大し、取込スパイラー26による取込み作用が良好となる。更に、仕切抵抗板7は、扱胴2下方の穀稈通過部で扱歯1とのラップ代を設けることで、第1排塵経路に導かれた処理物を後方の第2排塵経路側への送塵を阻止しながら効率よく排塵処理室内へと送塵することができる。また、扱胴の回転方向より排塵処理胴の近傍部で最もラップ代を大きくしておくと、上記効果がより高まることになる。
【0022】
更に、図15に示すように、上記仕切抵抗板7は、選別室20の幅内において搬送ガイド板9a下面より下方に突出しないように構成することで、搬送ガイド板と揺動選別棚21との上下間隔が狭くとも、揺動選別棚より移送される被選別物や排塵経路部から濾過する処理物が引っ掛ったり停滞したりする不具合が発生しにくくなる。また、前記仕切抵抗板7と同一位置延長線上における扱胴カバー13の内面に仕切板12を設けることで、扱胴上方部まで持ち上げられた処理物が扱室終端部の除去されにくい株元側に入り込んでそのまま4番ロスとなるのを防止することができる。
【0023】
なお、図16に示す実施例において、各搬送ガイド体9b…は、送塵上手側、下手側両面とも、送塵方向(扱胴回転方向)で且つ扱胴軸方向後方に向かうほど傾斜(傾斜角S1,S2)するように構成することで、搬送穀稈が引っ掛ったり、折れたりするのを防止でき、穀稈を伸ばし、扱歯が良好に穀稈内部に入り込み作用することになり、しかも、各ガイド体間の濾過空間を拡大でき、穀稈より除去された穀粒を速やかに下方の揺動選別棚上に落下させることができ、4番ロスの低減を図ることができる。
【0024】
揺動選別棚21は、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、図2に示すように、選別方向上手側から移送棚21a、チャフシ−ブ21b、ストロ−ラック21cの順に配置し、且つ、前記チャフシ−ブ21bの下方にグレンシ−ブ21dを配置して設けた構成としている。
【0025】
また、揺動選別棚21の下方には選別方向の上手側から順に、唐箕33と、1番移送螺旋34、2番移送螺旋35と、その上方一側に吸引排塵フアン36を設けて選別室20を構成している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コンバインの側面図
【図2】脱穀装置の左側断面図
【図3】脱穀装置の要部の右側面図
【図4】脱穀装置の要部の平面図
【図5】脱穀装置の要部の左側面図
【図6】同上要部の平面図
【図7】脱穀装置の要部の切断正面図
【図8】同上要部の切断正面図
【図9】同上要部の切断背面図
【図10】脱穀装置の要部の斜視図
【図11】排塵処理装置の要部の左側断面図
【図12】同上要部の右側断面図
【図13】脱穀装置の別実施例を示す斜視図
【図14】同上要部の斜視図
【図15】同上脱穀装置の切断正面図
【図16】脱穀部の要部の平面図
【符号の説明】
【0027】
1 扱歯
2 扱胴
3 扱室
7 仕切抵抗板
9 第1排塵経路
10 第2排塵経路
10a 排塵ガイド板
10b 排塵ガイド体
20 選別室
24 排塵処理胴
25 排塵処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(2)を内装軸架せる扱室(3)の終端側には、扱室下方の選別室(20)及び排塵処理胴(24)を内装軸架せる排塵処理室(25)の始端に通ずる第1排塵経路(9)と、この第1排塵経路幅と略同等若しくはそれよりも幅狭の第2排塵経路(10)を仕切抵抗板(7)を挟んで前後に配置して設けてあることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記第2排塵経路(10)は、複数の搬送ガイド体(10b)を扱胴回転方向に沿って所定間隔おきに配設した構成としてあることを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−267627(P2007−267627A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94512(P2006−94512)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】