説明

脱穀装置

【課題】二番処理胴の外周の処理歯が軸形状のため処理が不充分で処理精度および処理能力が低い。
【解決手段】脱穀室11の一側に穀稈供給搬送装置12を他側に二番処理装置40を設け、該二番処理装置40は扱胴10の軸心と略平行で基部側外周に連続状の螺旋翼50を先端側外周に二番処理歯42を夫々設けた二番処理胴41を有して構成し、該二番処理装置40は前記該二番処理胴41の主として下方側に無孔の板部材により形成した処理物受体43を設け、該処理物受体43は、基部より中間所定位置までは終始所定の左右幅を有する基部側受部46に形成し、その中間所定位置より先端側は先端に至る従い左右幅を狭くなる幅狭部47に形成したことを特徴とする脱穀装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上部に扱胴を軸装した脱穀室を設け、該脱穀室の一側に穀稈供給搬送装置12を設け、脱穀室の下方に往復揺動する揺動選別棚により構成した揺動選別装置を設け、脱穀室の他側には揺動選別装置の下方の二番コンベアから還元された二番物を揺動選別棚の終端側から始端側に向けて搬送しながら処理する二番処理装置を設け、該二番処理装置は扱胴の軸心と略平行で外周には二番処理歯を設けた二番処理胴を有して構成し、該二番処理胴の基部側の下方側には板部材により形成した受体を設け、該受体の先端には網を設けた構成は、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−289659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、単に、放射方向に突出する処理歯を設け、二番コンベアから還元された二番処理物が供給される部分の下方に受体を設けているだけであるので、二番物の処理が充分でないという課題がある。
即ち、二番処理装置の基部に板部材の受体を設けているが、軸形状の処理歯のため、処理が充分に行われず、処理精度および処理能力が低い。
また、二番処理胴の先端側の下方は網体により包囲されているので、処理が充分でないうちに揺動選別棚上に落下して、揺動選別棚の選別作業の負荷が増加するという課題がある。
本願は、二番処理装置の構成を工夫し、詰まりを防止して、処理精度および処理能力を向上させるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上部に扱胴10を軸装した脱穀室11を設け、該脱穀室11の一側に脱穀室11に穀稈を供給する穀稈供給搬送装置12を設け、前記脱穀室11の下方の風選室19内に往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21を設け、前記脱穀室11の他側には前記揺動選別装置21の下方の二番コンベア26から還元された二番物を前記揺動選別棚20の始端側に向けて搬送しながら処理する二番処理装置40を設け、該二番処理装置40は扱胴10の軸心と略平行で基部側外周に連続状の螺旋翼50を先端側外周に二番処理歯42を夫々設けた二番処理胴41を有して構成し、該二番処理装置40は前記該二番処理胴41の主として下方側に無孔の板部材により形成した処理物受体43を設け、該処理物受体43は、基部より中間所定位置までは終始所定の左右幅を有する基部側受部46に形成し、その中間所定位置より先端側は先端に至る従い左右幅を狭くなる幅狭部47に形成したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、二番コンベア26により回収された還元物は二番処理装置40の基部に供給され、二番処理装置に設けた二番処理胴41の螺旋翼50と螺旋翼50の下方の処理物受体43との間で攪拌処理され、螺旋翼50および二番処理歯42により二番処理装置40の終端の二番処理物排出口に向けて搬送処理され、揺動選別棚20上に落下して再処理される。
この場合、処理物受体43は、基部より中間所定位置までは終始所定の左右幅を有する基部側受部46に形成しているが、中間所定位置より先端側は先端に至る従い左右幅を狭くなる幅狭部47に形成しているので、二番処理歯42により搬送処理中の処理物は、二番処理歯42の回転により処理物受体43の中間所定位置より揺動選別棚20上に拡散されて落下する。
また、処理物受体43は全長に亘って無孔の板部材により形成しているので、左右幅の狭くなる幅狭部47であっても網部材に比し被処理物の攪拌処理が充分に行われる。
本発明は、前記螺旋翼50は前記処理物受体43のうちの前記基部側受部46上に配置して螺旋翼50の略下半分を基部側受部46により覆い、前記螺旋翼50の先端より先側の二番処理胴41の下面は前記幅狭部47により覆ったことを特徴とする脱穀装置としたものであり、二番処理胴41の螺旋翼50は処理物受体43のうちの基部側受部46上に配置して螺旋翼50の略下半分を基部側受部46により覆っているので、螺旋翼50と基部側受部46との間で二番物は処理され、螺旋翼50の先端より先側の二番処理胴41の下面は幅狭部47により覆っているので、搬送処理中の処理物は、二番処理歯42の回転により処理物受体43の中間所定位置より揺動選別棚20上に拡散されて落下する。
本発明は、前記揺動選別棚20上には、揺動選別棚20上に落下した被処理物を前記穀稈供給搬送装置12を設けた側に誘導する前記揺動選別棚20の上面に略垂直に起立する第一案内ガイド53を設け、該第一案内ガイド53の前端部は、前記基部側受部46の下方に位置させ、第一案内ガイド53の後部に至るに従い二番処理胴41から離れるように傾斜させて設けたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、処理物受体43の中間および二番処理装置40の終端から揺動選別棚20上に落下した二番物は第一案内ガイド53により揺動選別棚20の中央に向けて誘導される。
特に、第一案内ガイド53の前端部は、処理物受体43の基部側受部46の前端位置よりも処理物受体43の基部側に配置しているので、二番処理物排出口45に至る前の幅狭部47から揺動選別棚20上に落下した被処理物は第一案内ガイド53により揺動選別棚20上に拡散させ、揺動選別棚20上での被処理物の均平化を促進する。
本発明は、前記揺動選別棚20上には、揺動選別棚20上に落下した被処理物を前記穀稈供給搬送装置12を設けた側に誘導する前記揺動選別棚20の上面に略垂直に起立する第二案内ガイド55を別途設け、第二案内ガイド55の前端部は、前記処理物受体43の前端位置と前後方向において略一致させて配置したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、二番処理装置40の終端の二番処理物排出口45から揺動選別棚20上に落下した二番物は、第二案内ガイド55により揺動選別棚20上に拡散させ、揺動選別棚20上での被処理物の均平化を促進する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、螺旋翼50と処理物受体43の基部側受部46により処理物の処理を充分に行え、処理精度および処理効率を向上させて揺動選別棚20の負荷を軽減させることができ、処理物受体43の幅狭部47により搬送処理中の処理物を処理物受体43の中間所定位置より揺動選別棚20上に拡散させて落下させて、揺動選別棚20上での被処理物の均平化を促進させることができ、選別精度および脱穀効率を高めることができる。
請求項2の発明では、請求項1の発明の効果に加えて、二番処理胴41の螺旋翼50は処理物受体43のうちの基部側受部46上に配置して螺旋翼50の略下半分を基部側受部46により覆っているので、螺旋翼50と基部側受部46との間で行われる二番物の処理精度および処理効率を向上させることができ、螺旋翼50の先端より先側の二番処理胴41の下面は幅狭部47により覆っているので、処理物受体43の中間所定位置より揺動選別棚20上に拡散させて落下させて、揺動選別棚20上での被処理物の均平化を促進させることができ、選別精度および脱穀効率を高めることができる。
請求項3の発明では、請求項1および請求項2の発明の効果に加えて、処理物受体43の中間および二番処理装置40の終端から揺動選別棚20上に落下した二番物を、第一案内ガイド53により揺動選別棚20の中央に向けて誘導することができ、揺動選別棚20上での被処理物の均平化を促進させることができ、選別精度および脱穀効率を高めることができる。
請求項4の発明では、請求項3の発明の効果に加えて、二番処理装置40の終端から揺動選別棚20上に落下した二番物を、第二案内ガイド55により揺動選別棚20の中央に向けて誘導することができ、揺動選別棚20上での被処理物の均平化を促進させることができ、選別精度および脱穀効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】脱穀装置の側面図。
【図3】揺動選別棚付近の平面図。
【図4】処理物受体付近の平面図。
【図5】脱穀装置の正面図。
【図6】二番処理胴と扱胴の正面配置概略図。
【図7】脱穀装置の側面図。
【図8】拡散処理胴を設けた脱穀装置の側面図。
【図9】同平面概略図。
【図10】同概略背面図。
【図11】排塵処理装置付近の背面図。
【図12】排塵処理装置の処理網の側面図。
【図13】同背面図。
【図14】脱穀室と排塵処理装置との間に仕切りプレートを設けた背面図。
【図15】同側面図。
【図16】脱穀室と排塵処理装置との間に設けた仕切りプレートの他の実施例の背面図。
【図17】同側面図。
【図18】脱穀室と排塵処理装置との間に設けた仕切りプレートの他の実施例の背面図。
【図19】同側面図。
【図20】脱穀室と排塵処理装置との間に回転体を設けた側面図。
【図21】同背面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施例をコンバインの図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は機体フレーム1の下方に設けた走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取部、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6はグレンタンク5の前側に設けた操縦部である。
前記脱穀装置3は、上部に扱胴10を略水平に軸装した脱穀室11を設ける。図示は省略するが、脱穀室11の一側には前記刈取部4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12の供給搬送チエン13を設けている。なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して以下説明するが、これにより構成が限定されるものではない。
扱胴10は脱穀装置3の前板14と脱穀室後板15に軸装し、扱胴10の主として下方側は扱網16により覆っている。扱網16の下方には唐箕17の唐箕ケーシング18を設ける。前記脱穀室11の下方には前記唐箕17の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室19を形成し、風選室19内には、唐箕17の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21を設ける。
揺動選別装置21は、その揺動選別棚20の始端部(前端部)を唐箕ケーシング18の上方に位置させて移送棚部22に形成する。移送棚部22の構成は任意であり、移送方向下手側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚部22の上面に突起や凹凸を設けて揺動選別装置21の移送方向下手側のシーブ23に扱網16からの落下物を移送できればよい。
【0009】
前記シーブ23は、扱網16より落下した穀粒と異物とを選別するものであり、所定間隔をおいて揺動方向に複数並設する。シーブ23は、薄い平板形状に形成し、移送方向の下手側(後側)が高くなるように傾斜させて設ける。
また、シーブ23の一部は傾斜角度を変更自在に構成している。シーブ23の下手側にはストローラック24(図3)を設ける。
揺動選別棚20の下方には一番コンベア25を設け、一番コンベア25の後側には二番コンベア26を設ける。
27は吸引排塵ファン、28は吸引排塵ファン27のケーシング、29は脱穀装置3の後側に設けたカッター装置(図15)である。
脱穀室11の側部終端側には排塵処理装置35を設ける。排塵処理装置35は前記穀稈供給搬送装置12の設置側とは反対側の扱胴10の後部側方(終端側)に設ける。排塵処理装置35は、扱胴10の軸心と略平行な排塵処理胴36を軸装し、脱穀室脱穀室11の後部に設けた排塵連通口37により脱穀室11と連通させて構成する。排塵処理胴36の始端部は中板38に軸装し、中板38と脱穀室後板15との間に前記排塵連通口37を形成している。
【0010】
前記脱穀室11の側部には前記二番コンベア26から還元された二番物を処理する二番処理装置40を設ける。二番処理装置40は、扱胴10の軸心と略平行な二番処理胴41を軸装して構成する。
二番処理胴41は、排塵処理胴36と同心状に配置する。二番処理胴41は、穀稈供給搬送装置12の搬送方向と反対に揺動選別棚20の始端部側に向けて被処理物を搬送するように構成し、扱網16の側方に位置している。
二番処理胴41の外周には二番処理歯42を設け、二番処理歯42は揺動選別棚20の始端部(前端部)側に被処理物を移送するように配置する。
二番処理胴41の基部側の主として下方には無孔の板部材により形成した処理物受体43を設ける。処理物受体43の基部は中間板38に固定する。処理物受体43の先端は脱穀装置3の前板14に向けて延設し、処理物受体43の先端と前板14との間に二番処理物排出口45を形成する。
【0011】
処理物受体43は、その中間所定位置までは終始所定の左右幅を有して基部側受部46に形成し、その中間所定位置より先端側は先端に至る従い扱胴10側の側縁が扱胴10より離れて左右幅を狭くなる幅狭部47に形成する。
そのため、処理物受体43の幅狭部47は先端側に至る従い左右幅を狭くしているので、処理物受体43上の被処理物は二番処理物排出口45に至る手前から揺動選別棚20上に落下する。
このとき、被処理物は回転する二番処理歯42により飛ばされて、処理物受体43の中間部より揺動選別棚20上に落下するので、被処理物は処理物受体43の中間部より揺動選別棚20上に分散あるいは拡散落下する。
即ち、二番処理装置40の二番処理胴41の上方は開放し、二番処理胴41の扱胴10側は扱胴10を覆う扱網16が存在し、二番処理装置40の二番処理室49は処理物受体43と脱穀装置3の側板48と扱網16とにより覆われた空間で形成され、二番処理装置40の始端側の基部側受部46上の被処理物は脱穀装置3の側板48と基部側受部46と扱網16との間で攪拌処理されて、直ちに揺動選別棚20上に落下しないが、処理物受体43の中間部より先側では幅狭部47の存在により二番処理胴41に対して扱胴10側の扱網16と幅狭部47の側縁との間に隙間が形成され、この隙間から被処理物を揺動選別棚20上に拡散落下させられる。
【0012】
即ち、実施例では、処理物受体43の基部側受部46は二番処理胴41の側方まで包囲するように水平部分と傾斜部分と立ち上げ部分とにより構成し、少なくとも、幅狭部47の最も幅の狭い部分は基部側受部46の水平部分の幅と一致させ、幅狭部47の扱胴10側の側縁と扱網16との間に隙間を形成している(図6)。
二番処理装置40の二番処理胴41の基部外周には所定長さの連続状の螺旋翼50を設ける。
二番処理装置40の二番処理胴41の基部側上方には二番コンベア26の終端に接続した二番還元装置51の先端を開口させ、二番還元装置51の先端から還元された二番物を螺旋翼50により搬送しながら処理する。
そのため、二番処理装置40の始端部で二番還元装置51の先端から還元された二番物の搬送処理能力を螺旋翼50により向上させ、詰まり発生を防止する。
この場合、螺旋翼50は前記処理物受体43のうち基部側の終始所定の左右幅を有した基部側受部46上に配置し、螺旋翼50の略下半分を基部側受部46により包囲する。一方、螺旋翼50の先端より先側の処理物受体43は先端側に至る従い左右幅を狭くした幅狭部47に形成して、前記螺旋翼50の先端より先側の二番処理胴41の下面は前記幅狭部47により包囲し、幅狭部47による揺動選別棚20上への二番被処理物の落下拡散量を増加させる。
【0013】
前記揺動選別棚20上には、揺動選別棚20上に落下した被処理物を前記穀稈供給搬送装置12を設けた側に誘導する第一案内ガイド(寄せ板)53を設ける(図7)。第一案内ガイド53は、揺動選別棚20の移送棚16の上面に略垂直に起立させて設ける。第一案内ガイド53は、揺動選別棚20上に落下した落下物を穀稈供給搬送装置12側(左側)に寄せながら後側に移送するためのものである。
第一案内ガイド53の前端部は、前記基部側受部46の下方に位置させ、第一案内ガイド53の後部に至るに従い二番処理胴41から離れるように、平面視において傾斜させて設け、揺動選別棚20上に落下した被処理物を揺動選別棚20の中央に向けて誘導する。
この場合、第一案内ガイド53の前端部は、処理物受体43の基部側受部46の前端位置よりも処理物受体43の基部側に配置する。
そのため、処理物受体43の幅狭部47を先端側に至る従い左右幅を狭くして、二番処理物排出口45に至る前の幅狭部47から揺動選別棚20上に落下した被処理物は第一案内ガイド53により揺動選別棚20上に拡散し、揺動選別棚20上での被処理物の均平化を促進し、揺動選別棚20の作用有効面積を広くでき、選別効率を向上させる。
【0014】
前記揺動選別棚20上には、揺動選別棚20上に落下した被処理物を前記穀稈供給搬送装置12を設けた側に誘導する第二案内ガイド(寄せ板)55を設ける。第二案内ガイド55の前端部は、処理物受体43の前端位置と前後方向において略一致させて配置する。
第二案内ガイド55の前端部は二番処理胴41側に位置し、第二案内ガイド55の後部は後方に至るに従い二番処理胴41から離れるように、平面視において傾斜させて設け、揺動選別棚20上に落下した被処理物を揺動選別棚20上に拡散均平させる。
第二案内ガイド55の前端部は処理物受体43の前端位置と前後方向において略一致させて配置しているので、第二案内ガイド55は処理物受体43の先端より脱穀室11の始端側で揺動選別棚20上に落下した被処理物を、揺動選別棚20の中央に向けて誘導案内させ、処理物受体43の幅狭部47から落下する被処理物との合流を抑制し、揺動選別棚20上での被処理物の均平化を促進し、揺動選別棚20の作用有効面積を広くでき、選別効率を向上させる。
【0015】
しかして、吸引排塵ファン27は揺動選別棚20のストローラック24上に設け、吸引排塵ファン27と扱胴10の終端との間には拡散処理胴60を設ける(図8〜図10)。
拡散処理胴60は吸引排塵ファン27と軸心方向を平行とし、吸引排塵ファン27と左右幅を略同一に形成する。また、拡散処理胴60は脱穀室11の脱穀排出口61の後方に設ける。
そのため、脱穀室11の終端で大半の藁屑は排塵処理装置35に入るが、それ以外の長い藁屑等が拡散処理胴60により処理され、揺動選別棚20の負荷を減少させる。拡散処理胴60は吸引排塵ファン27と左右幅を略同一に形成しているので、拡散処理胴60により処理された藁屑を吸引排塵ファン27で確実に吸引する。
拡散処理胴60への回転伝達経路は任意であるが、一例を示すと、二番コンベア26の回転が拡散処理胴60に伝達している。62は拡散処理胴60の回転軸、63はプーリー、64はカウンタ軸、65および66はプーリーである。
【0016】
従来、特開2006−262867号公報および特開平09−154395号公報には、揺動選別棚20のストローラック24上には吸引排塵ファン27を設け、吸引排塵ファン27と扱胴10の終端との間には拡散処理胴60を設けた構成が記載されている。
上記公知例では排塵処理室を備えず、拡散処理胴を脱穀装置の左右両壁間にわたって設けているが、この脱穀装置に排塵処理室を設けようとすると、この排塵処理室と拡散処理胴との一部が上下に重なり、脱穀装置の高さが高くなってコンバインが不安定になってしまう。また、排塵処理室から排出される処理物が拡散処理胴側へ入り込み、扱室排出物の拡散を妨げる課題がある。
これに対して、上記構成によれば、排塵処理室と拡散処理胴とを上下にオーバーラップさせることなく、脱穀装置の高さを低くしてコンバインの姿勢を安定させることができる。又、排塵処理室から排出される処理物が拡散処理胴側へ入り込むのを防止して適切な拡散処理によって揺動選別棚上での選別精度と脱穀効率を高めることができる。
【0017】
前記排塵処理装置35の排塵処理胴36の外周には、連続する螺旋状の処理歯70を設け、処理歯70の外周を処理網71により包囲する(図11〜図13)。図11の符号72は、処理網71の終端の取付枠を示している。
処理網71は、排塵処理胴36の軸心方向と平行な横桟73を排塵処理胴36の円周方向に所定間隔をおいて複数有し、横桟73に排塵処理胴36の軸心方向と交差する縦桟74を排塵処理胴36の軸心方向に所定間隔をおいて複数固定して構成している。
前記横桟73には内側に突出する突起75を設ける。突起75は、処理歯70の回転に抵抗を与えて、排塵処理装置35内の被処理物のうちの穀粒を単粒化させる作用を促進させる。
前記突起75は前記縦桟74の間隔より短い軸部材により形成し、軸部材の断面形状の部分が横桟73により内側に突出して、被処理物に抵抗を与える。
【0018】
また、突起75は前記縦桟74の前後間隔より短い軸部材により形成し、隣接する複数の縦桟74の間の夫々に突起75をそれぞれ設ける。
そのため、被処理物は処理歯70の螺旋回転に沿って回りながら後方へ送られ、このとき、被処理物の一部は軸状の突起75に引っ掛って、回らずに突起75に沿って移動し、突起75が途切れると、再び、処理歯70の螺旋回転に沿って回りながら後方へ送られといった複雑に移動し、排塵処理装置35内の被処理物の穀粒の単粒化を一層促進させる。
76は排塵処理装置35の終端の排出口、77は排塵物の落下を案内するガイド、78は上部包囲体である。
脱穀室11と排塵処理装置35とは、排塵連通口37により連通しているが、排塵連通口37の上部には仕切りプレート80を設ける(図14)。仕切りプレート80は、背面視において、縦状の上部案内部81の下部に下方に至るに従い排塵処理装置35の軸心側に位置するように傾斜させた下部案内部82を設けて形成する。また、仕切りプレート80は排塵連通口37と同幅に形成し、脱穀室11から排塵処理装置35への排塵物の移行を案内する。
【0019】
即ち、仕切りプレート80の下部案内部82は扱胴10と共回りする排塵物の一部を堰き止めるので、扱胴10との共回りを抑制し、扱胴10と共回りによって跳ね上げられて排藁に刺さって刺さり粒として排出されしまう4番ロスの発生を防止する。
また、仕切りプレート80の下部案内部82は扱胴10と共回りする排塵物の一部を堰き止めて排塵連通口37から排塵処理装置35へ積極的に移行させ、排塵連通口37から排塵処理装置35への移行を促進させる。
また、扱胴10と共回りする排塵物のうち仕切りプレート80の上部案内部81を通過して上部案内部81上に落下する排塵物を、仕切りプレート80の下部案内部82の傾斜により排塵処理胴36の軸に近い側に落とし、排塵処理胴36への取込を容易にする。
図16,図17は、仕切りプレート80の他の実施例であり、断面三角形状に形成し、仕切りプレート80のうちの扱胴10に面した部分が上部案内部81となり、仕切りプレート80の下面が扱胴10と共回りする排塵物の一部を堰き止める下部案内部82となり、上部案内部81と下部案内部82を結ぶ仕切りプレート80の上面が仕切りプレート80の上部案内部81を通過して落下する排塵物を排塵処理胴36の軸に近い側に落とす誘導面83に形成している。
【0020】
図18,図19は、仕切りプレート80の他の実施例であり、上部案内部81を省略し、扱胴10と共回りする排塵物の一部を堰き止めるための下部案内部82と、仕切りプレート80の上部案内部81を通過して上部案内部81上に落下する排塵物を排塵処理胴36の軸に近い側に落とす誘導面83とにより形成したものである。
また、図20,図21は、排塵連通口37の上部に回転体85を設けている。回転体85は扱胴10および排塵処理胴36と軸心方向を平行に、排塵連通口37と同幅に設ける。回転体85は回転胴の外周に放射方向に突出するツース87を設けて形成する。回転体85は、扱胴10と排塵処理胴36と同様に、図21において反時計回転させる。
回転体85は、脱穀室11の終端で持ち回る処理物を回転するツース87で引っ掛けて、排塵処理胴36に向けて積極的に移行させ、排塵連通口37から排塵処理装置35への移行を促進させる。
88は回転体85の回転軸、89は回転体85に回転伝達するプーリ、90はベルトである。
【0021】
(実施例の作用)
穀稈供給搬送装置12の供給搬送チエン13により脱穀室11に供給された穀稈は、回転する扱胴10により脱穀され、穀粒は扱網16より揺動選別装置21の揺動選別棚20上に落下し、揺動選別棚20の揺動と唐箕17の送風により選別される。
扱網16より落下しない被処理物は、脱穀室11と排塵処理装置35との間の排塵連通口37により排塵処理装置35内に入り、回転する排塵処理胴36により攪拌処理される。
揺動選別棚20で選別された穀粒は一番コンベア25により回収される。
揺動選別棚20上の藁屑等は吸引排塵ファン27により吸引排除され、吸引排塵ファン27により吸引排除されない、藁屑等はストローラック24により機外に排出される。
揺動選別棚20で選別されて二番コンベア26により回収された二番物は、脱穀室11の側部の二番処理装置40の始端側に還元される。
【0022】
二番処理装置40は、扱胴10の軸心と略平行な二番処理胴41を軸装し、二番処理胴41の基部外周には螺旋翼50を設け、二番処理胴41の基部側の主として下方には無孔の板部材により形成した処理物受体43を設けているので、二番処理装置40の始端部では螺旋翼50と処理物受体43の基部側受部46とにより充分攪拌処理され、網体の処理物受体43に比し被処理物の枝梗除去処理効率が向上させる。
この場合、二番処理装置40は、螺旋翼50のみならず所定位置に配置した二番処理歯42によっても、穀稈供給搬送装置12の搬送方向と反対に揺動選別棚20の始端部(前端部)側に向けて被処理物を移送して、揺動選別棚20の始端部上方に被処理物を落下させるので、揺動選別棚20による再選別を有効に行える。
螺旋翼50により充分攪拌処理された被処理物は、螺旋翼50により二番処理装置40の二番処理物排出口45に向けて移送されるが、処理物受体43の中間所定位置より先側は先端に至る従い左右幅を狭くなる幅狭部47に形成しているので、被処理物は回転する二番処理歯42により飛ばされて、処理物受体43の中間部より揺動選別棚20上に落下する。
【0023】
即ち、二番処理装置40の二番処理胴41の上方は開放されているが、二番処理胴41の扱胴10側は扱胴10を覆う扱網16が存在するので、二番処理装置40の始端側の基部側受部46上の被処理物は脱穀装置3の側板と基部側受部46と扱網16との間で攪拌処理されて、直ちに揺動選別棚20上に落下しないが、処理物受体43の中間部より先側では幅狭部47の存在により二番処理胴41に対して扱胴10側の扱網16と幅狭部47の側縁との間に隙間が発生し、この隙間から被処理物を揺動選別棚20上に拡散落下させられる。
したがって、処理物受体43は、無孔の板部材の基部側受部46の部分と螺旋翼50とが相俟って網体に比し被処理物の枝梗除去処理効率を向上させ、処理物受体43の中間部より先側の幅狭部47により落下拡散量を増加させられる。
二番処理装置40の二番処理胴41の螺旋翼50は、処理物受体43のうち基部側の終始所定の左右幅を有する基部側受部46により螺旋翼50の下側略半分の下面を覆っているので、二番処理装置40の始端部で二番還元装置51の先端から還元された二番物の搬送処理能力を螺旋翼50により向上させ、詰まり発生を防止する。
【0024】
処理物受体43の螺旋翼50の先端より先側の二番処理胴41の下面は、先端に至る従い扱胴10側の側縁が扱胴10より離れて左右幅を狭くなるように幅狭部47に形成しているので、扱胴10側の二番処理胴41の下面を覆う部分が減少し、幅狭部47からの被処理物の拡散落下を促進させ、揺動選別棚20上の被処理物の均平化を向上させ、揺動選別棚20の選別精度および性能を向上させる。
揺動選別棚20上には、揺動選別棚20上に落下した被処理物を前記穀稈供給搬送装置12を設けた側に誘導する第一案内ガイド53を設け、第一案内ガイド53の前端部は、処理物受体43の基部側受部46の下方に臨ませているから、二番処理装置40から揺動選別棚20上に落下した落下物を穀稈供給搬送装置12側(左側)に寄せながら後側に移送する。
そのため、処理物受体43の幅狭部47を先端側に至る従い左右幅を狭くして、二番処理物排出口45に至る前の幅狭部47から揺動選別棚20上に落下した被処理物を第一案内ガイド53により揺動選別棚20上に効率よく拡散させ、揺動選別棚20上での被処理物の均平化を促進し、揺動選別棚20の作用有効面積を広くでき、選別効率を向上させる。
【0025】
また、揺動選別棚20上には、第一案内ガイド53とは別途に、第二案内ガイド55を設け、第二案内ガイド55の前端部は、処理物受体43の幅狭部47の前端位置と前後方向において略一致させて配置しているので、第二案内ガイド55は処理物受体43の先端より脱穀室11の始端側で揺動選別棚20上に落下した被処理物を、揺動選別棚20の中央に向けて誘導案内させ、処理物受体43の幅狭部47から落下する被処理物との合流を抑制し、揺動選別棚20上での被処理物の均平化を促進し、揺動選別棚20の作用有効面積を広くでき、選別効率を向上させる。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0026】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取部、5…グレンタンク、6…操縦部、10…扱胴、11…脱穀室、12…穀稈供給搬送装置、13…供給搬送チェン、14…前板、15…脱穀室後板、16…扱網、17…唐箕、18…唐箕ケーシング、19…風選室、20…揺動選別棚、21…揺動選別装置、22…移送棚部、23…シーブ、24…ストローラック、25…一番コンベア、26…二番コンベア、35…排塵処理装置、36…排塵処理胴、37…排塵連通口、38…中板、40…二番処理装置、41…二番処理胴、42…二番処理歯、43…処理物受体、45…二番処理物排出口、46…基部側受部、47…幅狭部、48…側板、50…螺旋翼、51…二番還元装置、53…第一案内ガイド、55…第二案内ガイド、60…拡散処理胴、61…脱穀排出口、70…処理歯、71…処理網、72…取付枠、73…横桟、74…縦桟、75…突起、80…仕切りプレート、81…上部案内部、82…下部案内部、83…誘導面、85…回転体、86…ツース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に扱胴(10)を軸装した脱穀室(11)を設け、該脱穀室(11)の一側に脱穀室(11)に穀稈を供給する穀稈供給搬送装置(12)を設け、前記脱穀室(11)の下方の風選室(19)内に往復揺動する揺動選別棚(20)により構成した揺動選別装置(21)を設け、前記脱穀室(11)の他側には前記揺動選別装置(21)の下方の二番コンベア(26)から還元された二番物を前記揺動選別棚(20)の始端側に向けて搬送しながら処理する二番処理装置(40)を設け、該二番処理装置(40)は扱胴(10)の軸心と略平行で基部側外周に連続状の螺旋翼(50)を先端側外周に二番処理歯(42)を夫々設けた二番処理胴(41)を有して構成し、該二番処理装置(40)は前記該二番処理胴(41)の主として下方側に無孔の板部材により形成した処理物受体(43)を設け、該処理物受体(43)は、基部より中間所定位置までは終始所定の左右幅を有する基部側受部(46)に形成し、その中間所定位置より先端側は先端に至る従い左右幅を狭くなる幅狭部(47)に形成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
請求項1において、前記螺旋翼(50)は前記処理物受体(43)のうちの前記基部側受部(46)上に配置して螺旋翼(50)の略下半分を基部側受部(46)により覆い、前記螺旋翼(50)の先端より先側の二番処理胴(41)の下面は前記幅狭部(47)により覆ったことを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記揺動選別棚(20)上には、揺動選別棚(20)上に落下した被処理物を前記穀稈供給搬送装置(12)を設けた側に誘導する前記揺動選別棚(20)の上面に略垂直に起立する第一案内ガイド(53)を設け、該第一案内ガイド(53)の前端部は、前記基部側受部(46)の下方に位置させ、第一案内ガイド(53)の後部に至るに従い二番処理胴(41)から離れるように傾斜させて設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項4】
請求項3において、前記揺動選別棚(20)上には、揺動選別棚(20)上に落下した被処理物を前記穀稈供給搬送装置(12)を設けた側に誘導する前記揺動選別棚(20)の上面に略垂直に起立する第二案内ガイド(55)を別途設け、第二案内ガイド(55)の前端部は、前記処理物受体(43)の前端位置と前後方向において略一致させて配置したことを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−273628(P2010−273628A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130733(P2009−130733)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】