説明

脱穀装置

【課題】脱穀室からの脱穀物に排塵処理装置からの処理物の混入による選別精度および選別効率の低下。
【解決手段】脱穀室11の一側に穀稈供給搬送装置12を設け、脱穀室11の他側に始端部を脱穀室11に連通させた排塵処理装置35を設け、前記脱穀室11の後側部位に、穀稈供給搬送装置12で搬送された脱穀済みの穀稈が通過する排稈口25を設け、前記脱穀室11の下方に唐箕16からの送風と前後方向に往復揺動により穀粒と藁屑等とを選別するシーブ23を有する揺動選別棚20を設け、該揺動選別棚20には該揺動選別棚20と一体的に揺動する排塵受部材40を、前記シーブ23より所定間隔おいた上方の位置に設け、前記排塵受部材40は前後に所定幅を有すると共に、前記穀稈供給搬送装置12側の前後幅よりも前記排塵処理装置35側の前後幅を幅広に形成した脱穀装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀室の側部に、該脱穀室に始端部を連通させた排塵処理装置を設け、脱穀室の下方に揺動選別装置を設け、揺動選別棚には、脱穀室からの落下物から穀粒を選別するシーブを設け、このシーブ上方に揺動選別棚と一体的に揺動するシーブとラックからなる排塵受部材を設けた構成は、公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−290106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記公知例は、揺動選別棚の上方に排塵受部材を設けることで、脱穀室および排塵処理室からの被処理物に含まれる長尺の藁屑を分離する一方で、細かい藁屑が揺動選別棚の比較的前方に落下し、この藁屑と揺動選別棚の前方から移送されてくる穀粒を多く含む被処理物とが混ざってしまうため、選別効率が低下する課題がある。
本願は、排塵受部材の構成を工夫して、選別精度および選別効率の向上を図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、扱胴10を軸装し、該扱胴10の下側を扱網15で包囲したた脱穀室11の一側に穀稈供給搬送装置12を設け、脱穀室11の他側に始端部を脱穀室11に連通させた排塵処理装置35を設け、前記脱穀室11の後側部位に、穀稈供給搬送装置12で搬送された脱穀済みの穀稈が通過する排稈口25を設け、前記脱穀室11の下方に唐箕16からの送風と前後方向に往復揺動により穀粒と藁屑等とを選別するシーブ23を有する揺動選別棚20を設け、該揺動選別棚20には該揺動選別棚20と一体的に揺動する排塵受部材40を、前記シーブ23より所定間隔おいた上方の位置に設け、前記排塵受部材40は前後に所定幅を有すると共に、前記穀稈供給搬送装置12側の前後幅よりも前記排塵処理装置35側の前後幅を幅広に形成したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、脱穀室11で脱穀され、扱網15から落下しない藁屑は排稈口25から落下し、排塵処理装置35からの被処理物がシーブ23に向けて落下する。排稈口25および排塵処理装置35からの落下物は排塵受部材40により受け止め、既に選別処理の進んだシーブ23上の被処理物に混入させない。
特に、排塵受部材40の前後幅を穀稈供給搬送装置12側よりも排塵処理装置35側を幅広にしているので、幅広の排塵受部材40により排塵処理装置35からの落下物を受け止めている。
請求項2の発明は、前記脱穀室11の後部の前記排塵処理装置35の反対側に吸引排塵ファン33を設け、前記排塵受部材40上の前記排塵処理装置35側に偏倚した位置に、後方ほど吸引排塵ファン33側に向かう姿勢の複数の寄せ板52を並設し、最も吸引排塵ファン33側に偏倚した寄せ板52よりも吸引排塵ファン33側の排塵受部材40の部位の前後幅に対して、この最も吸引排塵ファン33側に偏倚した寄せ板52よりも前記排塵処理装置35側の排塵受部材40の部位の前後幅を広く形成したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、扱網15から落下した被処理物はシーブ23の揺動により選別され、穀粒はシーブ23の隙間から落下して回収され、藁屑はシーブ23により後方に移送され、排塵処理装置35の反対側の吸引排塵ファン33により吸引排除される。
このとき、吸引排塵ファン33は排塵処理装置35と反対側に位置するが、後方ほど吸引排塵ファン33側に向かう姿勢の複数の寄せ板52が排塵受部材40と共に揺動することによりシーブ23上の被処理物の均分化を促進させる。
この最も吸引排塵ファン33側の寄せ板52より吸引排塵ファン33側の排塵受部材40の前後幅に対して、この最も吸引排塵ファン33側の寄せ板52より前記排塵処理装置35側の排塵受部材40の部分の前後幅を幅広としていることにより、排塵処理装置35からの落下物を排塵受部材40は確実に受け止める。
請求項3の発明は、脱穀室11の後方に四番処理胴59を軸架した刺さり粒回収部60を設け、該刺さり粒回収部60の前記穀稈供給搬送装置12側の下方に搬送穀稈を支持する支持体68を設け、前記複数の寄せ板52のうち、少なくとも一つを前記支持体68の先端よりも前記排塵処理装置35側に配置したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、穀稈供給搬送装置12により搬送される穀稈は支持体68により支持されて四番処理胴59により刺さり粒回収作用を受け、複数の寄せ板52のうちの支持体68の先端よりも排塵処理装置35側に配置した寄せ板52によって、排塵受部材40上に落下した穀粒を均分化させて、シーブ23上に落下させてシーブ23により選別する。
請求項4の発明は、前記シーブ23は、前側シーブ26と後側シーブ27とに前後に分割し、前側シーブ26と後側シーブ27のうち、少なくとも、後側シーブ27の一部または全部を前記唐箕16からの送風の作用範囲内に設け、前記前側シーブ26の上方位置から前記後側シーブ27の上方位置までに亘って前記排塵受部材40を設けたことを特徴とする脱穀装置としたものであり、シーブ23の前側シーブ26と後側シーブ27のうち、少なくとも、後側シーブ27の一部または全部に下から唐箕16よりの選別風が吹き抜けて風選され、前側シーブ26の上方位置から後側シーブ27の前側の上方位置までに亘って設けた排塵受部材40が、排稈口25および排塵処理装置35からの落下物を受け止め、唐箕16からの選別風の作用を余り受けていないシーブ23上の被処理物に排稈口25および排塵処理装置35からの落下物が混入するのを防止する。
請求項5の発明は、前記排塵受部材40の上面を平坦に形成したことを特徴とする脱穀装置としたものであり、排稈口25から落下する藁屑や排塵処理装置35から落下する処理物を排塵受部材40が受け止め、排塵受部材40は平坦に形成した上面により藁屑と穀粒とを浮遊させながら選別し、さらに、左右方向に落下物を均分させる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、排塵処理装置35から落下した藁屑を多く含む落下物を排塵受部材40の前後幅を広く形成したことで、シーブ23における後寄りの部位に落下させ、シーブ23の前方から移送されてきた穀粒を多く含む被処理物と藁屑が混合されることを防止することができ、排塵処理装置35からの落下物よりも穀粒の含有率の高い排稈口25からの処理物が多く落下する排塵受部材40の穀稈供給搬送装置12側の部位を、排塵処理装置35側より前後幅を狭くしたことで、排稈口25からの被処理物を排塵処理装置35からの落下物よりもシーブ23の前寄りの部位に落下させて穀粒の回収率を高めると共に、唐箕16からシーブ23の上方へ抜ける選別風を阻害せず、揺動選別棚20の選別精度および選別効率を向上させることができる。
請求項2の発明では、排塵受部材40によりシーブ23上の被処理物に藁屑が混入するのを防止すると共に、排塵受部材40上の藁屑を寄せ板52により吸引排塵ファン33側に寄せて吸引排除でき、選別負荷を軽減して選別精度および選別効率を向上させることができる。
請求項3の発明では、脱穀室11内で穀稈に刺さり込んだ刺さり粒の回収効率を刺さり粒回収部60によって向上させつつ、刺さり粒回収部60から落下する穀粒と、排塵処理装置35から落下する処理物とを支持体68の先端よりも排塵処理装置35側に配置した寄せ板52によって分離しながら、排塵受部材40上およびシーブ23上の被処理物を均分化させることができ、選別精度および選別効率を向上させることができる。
請求項4の発明では、唐箕16からの選別風が作用しない前側シーブ26によって、扱網15から漏下した穀粒が選別風により吹き飛ばされことを防ぎながら選別し、排塵受部材40から選別風が作用する後側シーブ27の部位に被処理物を落下させることで、唐箕16からの送風作用と吸引排塵ファン33の吸引作用によって藁屑を効率的に除去でき、揺動選別棚20の選別精度および選別効率を向上させることができる。
請求項5の発明では、排塵受部材40によるシーブ23上の被処理物への藁屑混入を防止できるだけでなく、排塵受部材40が受け止めた被処理物を、平坦な排塵受部材40の上面で排塵受部材40上に十分に均分化してシーブ23へ落下させるので、排塵受部材40からシーブ23に落下する過程での唐箕16の選別風による浮遊選別を促進させることができ、選別精度および選別効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】脱穀装置の縦断側面図。
【図3】揺動選別棚の平面図。
【図4】排塵受部材を省略した揺動選別棚の平面図。
【図5】排塵受部材を破線で示した揺動選別棚の平面図。
【図6】揺動選別棚の側面図。
【図7】脱穀装置の縦断正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施例をコンバインの例にて図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取装置、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6はグレンタンク5の前方に設けた操縦部である。
前記刈取装置4は、圃場の穀稈を分草する分草装置7と、穀稈を引き起こす引起装置8と、引き起こした穀稈を切断する刈刃9等を備えている。
前記脱穀装置3は、上部に扱胴10を略水平に軸装した脱穀室11を設け、脱穀室11の一側には前記刈取装置4により刈り取った穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12の穀稈を挾持搬送する挾扼杆13Aと供給搬送チエン13Bを設けている。14は穀稈供給搬送装置12から引き継いだ脱穀済みの排藁を搬送する排藁搬送装置である。
なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0009】
扱胴10の主として下方側は扱網15により包囲し、扱網15の下方には唐箕16の唐箕ケーシング17を設ける。前記脱穀室11の下方には前記唐箕16の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室18を形成し、風選室18内には唐箕16の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21を設ける。
揺動選別装置21は、その揺動選別棚20の始端部(前端部)を唐箕ケーシング12の上方に位置させて移送棚部22に形成する。移送棚部22の構成は任意であり、移送方向下手側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚部22の上面に突起や凹凸を設けて、揺動選別装置21の移送方向下手側のシーブ(グレンシーブ)23に向けて扱網15からの落下物を移送できればよい。
前記シーブ23は脱穀室11の排稈口25の略下方よりも上手側に設けた前側シーブ26と、排稈口25の略下方から下手側に設けた後側シーブ27を有している。
【0010】
30は後側シーブ27の下手側に設けたストローラック、31は揺動選別棚20の下方所定位置に設けた一番コンベア、32は一番コンベア31の後側に設けた二番コンベア、33は吸引排塵ファン、34は吸引排塵ファン33のケーシング、35は排塵処理装置、36は二番処理装置、37は移送棚部22上に設けた始端側寄せ板であり、二番処理装置36で処理された処理物を穀稈供給搬送装置12側のシーブ23に誘導し、揺動選別棚20上の被処理物の均分化を図るものである。
しかして、揺動選別棚20のシーブ23上には排塵受部材40を設ける。排塵受部材40は、前後に所定幅を有する平板形状に形成し、シーブ23から所定間隔を置いた上方に配置する。
排塵受部材40は、排稈口25から落下する藁屑や排塵処理装置35から落下する処理物が始端側のシーブ23上に落下しないようにして、シーブ23で既に処理が進んでいる被処理物への混入を防止して、揺動選別棚20の選別効率を向上させる。
【0011】
また、排塵受部材40を平板状としているので、排塵受部材40上で藁屑と穀粒との浮遊選別効果を促進させ、また、落下物の均分化も促進させる。
排塵受部材40は、その前後幅を排塵処理装置35側が穀稈供給搬送装置12側よりも幅広に形成した構成とする。
そのため、排塵受部材40の排塵処理装置35側では、穀稈供給搬送装置12側に比し、排稈口25による脱穀室11からの落下物に加えて排塵処理装置35による処理物が合流して落下量が増加しても、排稈口25および排塵処理装置35からの落下物を受け止めて、既に選別処理の進んだシーブ23の被処理物に混入するのを防止し、選別効率を向上させられる。
この場合、排塵受部材40は、穀稈供給搬送装置12側の排稈口25からの落下物を受け留める所定幅に設定した外側の外棚部41と、排塵処理装置35側の内棚部42とを有して構成し、内棚部42の前後幅を外棚部41の前後幅より大きく(広く)形成している。
【0012】
したがって、排塵受部材40の内棚部42では、排稈口25による脱穀室11からの落下物に加えて排塵処理装置35による処理物が合流して増加した落下物を受け止めて、既に選別処理の進んだシーブ23の被処理物に混入するのを防止し、選別効率を向上させられる。
即ち、落下した藁屑を多く含む落下物を排塵受部材40の前後幅を広く形成したことで、シーブ23における後寄りの部位に落下させ、シーブ23の前方から移送されてきた穀粒を多く含む被処理物と藁屑が混合されることを防止する。
また、排塵処理装置35からの落下物よりも穀粒の含有率の高い排稈口25からの処理物が多く落下する排塵受部材40の穀稈供給搬送装置12側の部位を、排塵処理装置35側より前後幅を狭くしたことで、排稈口25からの被処理物を排塵処理装置35からの落下物よりもシーブ23の前寄りの部位に落下させて穀粒の回収率を高めると共に、唐箕16からシーブ23の上方へ抜ける選別風を阻害しない。
【0013】
前記外棚部41の前縁43および後縁44と、前記内棚部42の前縁45と後縁46とは、夫々直線状に形成する。
この外棚部41の前縁43は内棚部42の前縁45よりも前方に位置させ、外棚部41の後縁44は、内棚部42の後縁46よりも後方に位置させ、外棚部41の前縁43と後縁44との前後幅は、内棚部42の前縁45と後縁46との前後幅より大きく形成する。
また、外棚部41の前縁43と内棚部42の前縁45との間に前側傾斜縁47を、外棚部41の後縁44と内棚部42の後縁46との間に後側傾斜縁48を夫々形成している。
【0014】
この場合、内棚部42の前縁45は前記脱穀室11の後部に設けた前記排塵処理装置35と連通させる排塵連通口50の下方まで延出させると、排塵処理装置35の排塵連通口50の部分で落下する落下物を受け止めて、既に選別処理の進んだシーブ23の被処理物に混入するのを防止し、選別効率を向上させられる。
脱穀室11の後部の前記排塵処理装置35の反対側に吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口51を開口させ、前記排塵受部材40上の前記排塵処理装置35側に偏倚した位置に、後方ほど吸引排塵ファン33側に向かう姿勢の複数の寄せ板52を並設し、最も吸引排塵ファン33側の寄せ板52より吸引排塵ファン33側の排塵受部材40の前後幅に対して、この最も吸引排塵ファン33側の寄せ板52より前記排塵処理装置35側の排塵受部材40の部分の前後幅を幅広とする。
【0015】
そのため、脱穀室11および排塵処理装置35からの処理物を、幅広の排塵受部材40の内棚部42で受け止め、寄せ板52により拡散させるので、選別精度および選別効率向上させられる。
前記寄せ板52は、平面視、後側に至るに従い穀稈供給搬送装置12側に位置させて傾斜させる。
即ち、吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口51に向けて寄せ板52を傾斜させて設ける。
そのため、吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口51を穀稈供給搬送装置12側に片寄せて設けても、吸引排塵ファン33の吸引作用を揺動選別棚20の選別処理に作用させられ、選別性能を向上させられる。
また、平面視の寄せ板52の傾斜角度は、揺動選別棚20の移送棚部22上に設けた始端側寄せ板37の平面視における傾斜角度と一致させると、拡散効果を向上させられ、好適である。
【0016】
この場合、寄せ板52と始端側寄せ板37とは、被処理物の均分化や拡散効果の点からは結果的に傾斜角度を一致させればよく、何れを基準にしてもよいが、吸引排塵ファン33による吸引効率を考慮すると、吸引排塵ファン33の吸引口51に向けて寄せ板52を傾斜させ、この寄せ板52の傾斜に始端側寄せ板37の傾斜を合わせると、吸引排塵ファン33による選別処理の向上も期待でき、好適である。
また、寄せ板52と始端側寄せ板37とは、平面視で平行かつ略等間隔で配置すると、始端側寄せ板37によって案内される被処理物と、各寄せ板52で案内される被処理物が混ざりにくく、均一に拡散させられ、好適である。
前記脱穀室11の後方には四番処理胴59を軸架した刺さり粒回収部60を設ける。
【0017】
即ち、前記排塵処理装置35は脱穀室11の後部に設けた排塵連通口50により扱胴10の軸心に対して交差方向に連通し、扱網15から落下しない排塵物を排塵連通口50から移送して処理するが、この排塵連通口50と側面視重なる部分を穀稈供給搬送装置12の搬送穀稈中の刺さり粒を回収する刺さり粒回収部60に形成する。
四番処理胴59は扱胴11と一体状に形成して軸装している。
刺さり粒回収部60の下方には扱網15を設けず、幅方向に複数の排出孔61を形成した受部材62を設ける。
受部材62の後側には藁屑を支持する支持体68を設け、前記排塵受部材40は前記刺さり粒回収部60および支持体68の下方に設ける。
【0018】
即ち、脱穀室11の後側に刺さり粒回収部60を形成し、刺さり粒回収部60から落下する落下物を排塵受部材40により受け止め、シーブ23上の被処理物への混入を抑制し、選別精度および選別効率向上させる。
65は脱穀室11から刺さり粒回収部60へ扱網15から落下しない被処理物が入る脱穀排出口65であり、脱穀排出口65の後側に受部材62を位置させ、受部材62の後側に支持体68を位置させる。66は脱穀排出口65に設けた受部材62に対して起立する仕切り部材であり、仕切り部材66により排塵連通口50から排塵処理装置35に排塵物の移送を誘導する。
【0019】
したがって、脱穀室11内の扱網15から落下しない藁屑のうち排塵処理装置35に入らなかった藁屑は、脱穀排出口65から刺さり粒回収部60に入り、刺さり粒回収部60の受部材62の排出孔61から落下しない藁屑が支持体68の後部から排塵受部材40上に落下するので、本実施例では支持体68の上方が排稈口25となる。
前記刺さり粒回収部60の穀稈供給搬送装置12側の下方に搬送穀稈を支持する先端を自由端に形成した支持体68を設け、前記複数の寄せ板52のうち、少なくとも一つは前記支持体68の先端よりも前記排塵処理装置35側に配置する。
そのため、排塵受部材40上の排塵処理装置35に近い場所で落下した落下物を、支持体68の先端より排塵処理装置35側に寄った位置に設けた寄せ板52が誘導するので、被処理物の拡散効果を向上させられる。
【0020】
支持体68は下側から搬送穀稈を支持して、四番処理胴59の扱歯(処理歯)70を穀稈の束に十分梳き込ませる。なお、支持体68に透孔を設け、該透孔より刺さり粒を落下させ、回収した刺さり粒が再び搬送穀稈中に刺さるのを防止する。
また、前記刺さり粒回収部60内の四番処理胴59の扱歯70は板状の所謂ソリッドツースによりに形成し、刺さり粒回収部60内において起風を促進して、搬送穀稈中の刺さり粒の回収効率を向上させるが、刺さり粒回収部60の下方に排塵受部材40を臨ませると、扱胴10の扱歯70による起風が上から下へシーブ23に吹き付けるのを排塵受部材40により遮り、シーブ23に対する唐箕16の選別風による風選に影響せず、刺さり粒の回収と唐箕16による風選とを両立させられる。
【0021】
前記排塵受部材40は、上側面を平面に形成した平板により形成し、排塵受部材40の左右両側に脚部71を設け、脚部71を揺動選別棚20の側板72に取付ける。
したがって、排塵受部材40は揺動選別棚20と一体的に揺動して藁屑と藁屑中の穀粒とを分離する。
そのため、排塵受部材40は排稈口25から排出された落下物と排塵処理装置35からの処理物を受け止めて、既に選別処理の進んだシーブ23の被処理物に混入するのを防止するだけでなく、排塵受部材40とシーブ23との上下二段の選別処理も期待でき、全体の選別効率を向上させられる。
また、排塵受部材40の左右両側には、上方に至るに従い外側に位置するように傾斜させたシール部材73を設け、左右のシール部材73の上端は脱穀装置3の左右の側板74の内面に当接または接近させる。
【0022】
そのため、排塵受部材40が落下物を受け止める際、シール部材73が落下物を誘導し、揺動選別棚20の左右両側の側板72より外側に飛散するのを防止でき、選別ロス発生を抑制する。
前記排塵受部材40は、前記唐箕ケーシング17の送風口75からの選別風が作用する揺動選別棚20の部位よりも前側に設ける。
そのため、唐箕16からの選別風がシーブ23から吹き抜ける風路を避けて排塵受部材40を配置でき、排塵受部材40の存在が揺動選別棚20のシーブ23の選別作用に悪影響を与えない。
【0023】
前記シーブ23は、排稈口25の略下方よりも上手側に設けた前側シーブ26と、排稈口25の略下方から下手側に設けた後側シーブ27とにより構成され、側面視、前側シーブ26の後端と後側シーブ27の前端との間の上方に前記排塵受部材40を位置させる。
そのため、特に、排塵処理装置35から落下する落下物がシーブ23上の被処理物へ混入するのを抑制でき、選別精度および選別効率向上させる。
なお、シーブ23の前側シーブ26および後側シーブ27は、薄い縦方向の平板形状のフィンを前後に所定間隔をおいて揺動方向に複数並設して枠体76に取付けると共に、枠体76ごと揺動選別棚20に対して着脱自在に構成している。
また、シーブ23の前側シーブ26には、拡散用移動部材77を揺動選別棚20の揺動方向に対する交差方向に往復移動するように取付け、揺動選別棚20の揺動と相俟って拡散用移動部材拡散用移動部材77は揺動選別棚20上を被処理物が終端に向かって蛇行しながら移送させて、移送距離を長くし、穀粒の回収効率の向上を期待し、また、シーブ23の付着物の除去も期待している。
【0024】
また、前側シーブ26には、拡散用移動部材拡散用移動部材77を設けているので、前記唐箕ケーシング17の送風口75より始端側の揺動選別棚20に設けることにより、唐箕16からの選別風が作用しない非作用域に前側シーブ26を設けても、前側拡散用移動部材拡散用移動部材77により被処理物を拡散させて選別することで、選別効率を十分確保できる。
そして、この前側シーブ26の上方に排塵受部材40を臨ませているので、唐箕16からの選別風が作用しない非作用域の前側シーブ26の部分への排稈口25および排塵処理装置35からの落下物の混入を防止し、選別効率を低下させない。
【0025】
(実施例の作用)
刈り取られた穀稈は、脱穀室11で回転する扱胴10により脱穀され、脱穀された被処理物は、扱網15から漏下して揺動選別棚20の始端部の移送棚部22に落下し、移送棚部22からシーブ23の前側シーブ26に移送されて選別され、更に、唐箕16からの送風と、風選室18内で往復揺動する揺動選別棚20の後側シーブ27とにより選別されて、穀粒は落下して一番コンベア31に回収される。
一番コンベア31に回収されない二番物は、二番コンベア32に回収され、二番コンベア32から二番処理装置36に還元され、二番処理装置36で処理された被処理物は揺動選別棚20の始端部上面に落下して再選別される。
【0026】
扱網15から落下しない被処理物は脱穀室11の後部に設けた排塵連通口50から排塵処理装置35内に入り、排塵処理装置35で処理されて落下する。
このように、揺動選別棚20の始端部では、脱穀室11で脱穀された穀粒と二番処理装置36で再処理された穀粒が多く落下するが、脱穀室11の後側の排稈口25や排塵処理装置35の下方では揺動選別棚20の始端部に比し藁屑が多く落下し、排稈口25や排塵処理装置35から藁屑が多く含む落下物を揺動選別棚20のシーブ23上に落下させると、折角選別の進んだ被処理物に藁屑が混入し、選別効率が低下する。
【0027】
そこで、本願では、揺動選別棚20のシーブ23の上方に所定間隔をおいて前後に所定幅を有する排塵受部材40を設けているので、排稈口25から落下する藁屑や排塵処理装置35から落下する処理物が、シーブ23で既に処理が進んでいる被処理物に混入するのを防止して、揺動選別棚20の選別効率を向上させる。
この場合、排塵受部材40は平板状とし、排塵受部材40の上面を平坦に形成しているので、排塵受部材40上で藁屑と穀粒との浮遊選別効果を促進させ、また、落下物の均分化も促進させる。
排塵受部材40は、その前後幅を排塵処理装置35側が穀稈供給搬送装置12側よりも幅広に形成した構成としているので、排塵受部材40の排塵処理装置35側では、穀稈供給搬送装置12側に比し、排稈口25による脱穀室11からの落下物に加えて排塵処理装置35による処理物が合流して落下量が増加しても、排稈口25および排塵処理装置35からの落下物を受け止めて、既に選別処理の進んだシーブ23の被処理物に混入するのを防止し、選別効率を向上させられる。
【0028】
この場合、排塵受部材40は、穀稈供給搬送装置12側の排稈口25からの落下物を受け留める所定幅に設定した外側の外棚部外棚部41と、排塵処理装置35側の内側棚部内棚部42とを有して構成し、内棚部42の前後幅を外棚部41の前後幅より大きく(広く)形成しているので、排塵受部材40の内棚部42では、排稈口25による脱穀室11からの落下物に加えて排塵処理装置35による処理物が合流して増加した落下物を受け止めて、既に選別処理の進んだシーブ23の被処理物に混入するのを防止し、選別効率を向上させられる。
排塵受部材40の内棚部42の前縁および後縁は、外棚部41の前縁および後縁より夫々前後に突出させて幅広に形成しているので、排塵処理装置35からの落下物の受け止め範囲を広くでき、シーブ23の被処理物への藁屑の混入を防止する。
【0029】
この場合、内棚部42の前縁は脱穀室11の後部に設けた排塵処理装置35と連通させる排塵連通口50の下方まで延出させると、排塵処理装置35の排塵連通口50の部分で落下する落下物を受け止められ、シーブ23の被処理物に混入するのを防止し、選別効率を向上させられる。
排塵受部材40上には上方に起立する寄せ板52を設け、寄せ板52より排塵処理装置35側の排塵受部材40を幅広の内棚部42に形成しているので、脱穀室11および排塵処理装置35からの処理物を、幅広の排塵受部材40の内棚部42で受け止め、寄せ板52により拡散させるので、選別精度および選別効率向上させられる。
寄せ板52は、平面視、後側に至るに従い穀稈供給搬送装置12側に位置させて傾斜させているので、吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口51に向けて傾斜し、そのため、吸引排塵ファン33のケーシング34の吸引口51を穀稈供給搬送装置12側に片寄せて設けても、吸引排塵ファン33の吸引作用を揺動選別棚20の選別処理に作用させられ、選別性能を向上させられる。
【0030】
しかして、脱穀室11の後部には扱胴10の軸心方向に連通する穀稈供給搬送装置12の搬送穀稈中の刺さり粒を回収する刺さり粒回収部60を設け、刺さり粒回収部60の下方の受部材62の排出孔61と受部材62の後側の支持体68との下方に排塵受部材40を設けているので、刺さり粒回収部60から落下する落下物を排塵受部材40により受け止め、シーブ23上の被処理物への混入を抑制し、選別精度および選別効率向上させる。
この場合、寄せ板52は、排塵受部材40の幅方向に複数設け、複数の寄せ板52のうち少なくとも一つは支持体68の先端よりも排塵処理装置35側に配置しているので、排塵受部材40上の排塵処理装置35に近い場所で落下した落下物を、支持体68の先端より排塵処理装置35側に寄った位置に設けた寄せ板52が誘導するので、被処理物の拡散効果を向上させられる。
【0031】
刺さり粒回収部60内の扱胴10の扱歯70は板状の所謂ソリッドツースによりに形成し、刺さり粒回収部60内において起風を促進して、搬送穀稈中の刺さり粒の回収効率を向上させるが、刺さり粒回収部60の下方に排塵受部材40を臨ませているので、扱胴10の扱歯70による起風が上から下へシーブ23に吹き付けるのを排塵受部材40により遮り、シーブ23に対する唐箕16の選別風による風選に影響せず、刺さり粒の回収と唐箕16による風選とを両立させられる。
排塵受部材40は、上面を平面に形成した平板により形成し、排塵受部材40の左右両側に脚部脚部71を設け、脚部71を揺動選別棚20の側板側板72に取付けているので、排塵受部材40は揺動選別棚20と一体的に揺動して藁屑と藁屑中の穀粒とを分離する。
【0032】
そのため、排塵受部材40は排稈口25から排出された落下物と排塵処理装置35からの処理物を受け止めて、既に選別処理の進んだシーブ23の被処理物に混入するのを防止するだけでなく、排塵受部材40とシーブ23との上下二段の選別処理も期待でき、全体の選別効率を向上させられる。
排塵受部材40の左右両側には、上方に至るに従い外側に位置するように傾斜させたシール部材73を設け、左右のシール部材73の上端は脱穀装置3の左右の側板側板74の内面に当接または接近させているので、排塵受部材40が落下物を受け止める際、シール部材73が落下物を誘導し、揺動選別棚20の左右両側の側板72より外側に飛散するのを防止でき、選別ロス発生を抑制する。
排塵受部材40は、唐箕ケーシング17の送風口75より始端側の揺動選別棚20に設けているので、唐箕16からの選別風がシーブ23から吹き抜ける風路を避けて排塵受部材40を配置でき、排塵受部材40の存在が揺動選別棚20のシーブ23の選別作用に悪影響を与えない。
【0033】
揺動選別棚20のシーブ23は、脱穀室11の排稈口25の略下方よりも上手側に設けた前側シーブ26と、排稈口25の略下方から下手側に設けた後側シーブ27とにより構成し、前側シーブ26の後端と後側シーブ27の前端との間の上方に前記排塵受部材40を位置させているので、特に、排塵処理装置35から落下する落下物がシーブ23上の被処理物へ混入するのを抑制でき、選別精度および選別効率向上させる。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【符号の説明】
【0034】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、6…操縦部、10…扱胴、11…脱穀室、12…穀稈供給搬送装置、13A…挾扼杆、13B…供給搬送チエン、15…扱網、16…唐箕、17…唐箕ケーシング、18…風選室、20…揺動選別棚、21…揺動選別装置、22…移送棚部、23…シーブ、25…排稈口、26…前側シーブ、27…後側シーブ、30…ストローラック、31…一番コンベア、32…二番コンベア、33…吸引排塵ファン、34…ケーシング、35…排塵処理装置35、36…二番処理装置36、37…始端側寄せ板37、40…排塵受部材、41…外棚部、42…内棚部、50…排塵連通口、52…寄せ板、60…刺さり粒回収部、61…排出孔、62…受部材、68…支持体、65…脱穀排出口、68…支持体、70…扱歯、71…脚部、72…側板、73…シール部材、74…側板、75…送風口、76…枠体、77…拡散用移動部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(10)を軸装し、該扱胴(10)の下側を扱網(15)で包囲した脱穀室(11)の一側に穀稈供給搬送装置(12)を設け、脱穀室(11)の他側に始端部を脱穀室(11)に連通させた排塵処理装置(35)を設け、前記脱穀室(11)の後側部位に、穀稈供給搬送装置(12)で搬送された脱穀済みの穀稈が通過する排稈口(25)を設け、前記脱穀室(11)の下方に唐箕(16)からの送風と前後方向に往復揺動により穀粒と藁屑等とを選別するシーブ(23)を有する揺動選別棚(20)を設け、該揺動選別棚(20)には該揺動選別棚(20)と一体的に揺動する排塵受部材(40)を、前記シーブ(23)より所定間隔おいた上方の位置に設け、前記排塵受部材(40)は前後に所定幅を有すると共に、前記穀稈供給搬送装置(12)側の前後幅よりも前記排塵処理装置(35)側の前後幅を幅広に形成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
請求項1において、前記脱穀室(11)の後部の前記排塵処理装置(35)の反対側に吸引排塵ファン(33)を設け、前記排塵受部材(40)上の前記排塵処理装置(35)側に偏倚した位置に、後方ほど吸引排塵ファン(33)側に向かう姿勢の複数の寄せ板(52)を並設し、最も吸引排塵ファン(33)側に偏倚した寄せ板(52)よりも吸引排塵ファン(33)側の排塵受部材(40)の部位の前後幅に対して、この最も吸引排塵ファン(33)側に偏倚した寄せ板(52)よりも前記排塵処理装置(35)側の排塵受部材(40)の部位の前後幅を広く形成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
請求項2において、脱穀室(11)の後方に四番処理胴(59)を軸架した刺さり粒回収部(60)を設け、該刺さり粒回収部(60)の前記穀稈供給搬送装置(12)側の下方に搬送穀稈を支持する支持体(68)を設け、前記複数の寄せ板(52)のうち、少なくとも一つを前記支持体(68)の先端よりも前記排塵処理装置(35)側に配置したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2または請求項3において、前記シーブ(23)は、前側シーブ(26)と後側シーブ(27)とに前後に分割し、前側シーブ(26)と後側シーブ(27)のうち、少なくとも、後側シーブ(27)の一部または全部を前記唐箕(16)からの送風の作用範囲内に設け、前記前側シーブ(26)の上方位置から前記後側シーブ(27)の上方位置までに亘って前記排塵受部材(40)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2または請求項3または請求項4において、前記排塵受部材(40)の上面を平坦に形成したことを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−165694(P2012−165694A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29430(P2011−29430)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】