説明

脱臭装置及び脱臭方法

【課題】 別の臭気を発生させることがなく脱臭効率に優れた脱臭装置を提供する。
【解決手段】 臭気成分を含む被処理ガスを装置内に取り込む吸入部10と、臭気成分を含む被処理ガスから臭気成分を除去する脱臭部20と、清浄ガスを排出する排出部30とを備え、脱臭部20は、被処理ガスに散水して臭気成分を処理水に溶解させる散水部21と、臭気成分が溶解された処理水を電気分解することにより臭気成分を分解除去する電気分解部22と、装置内に脱臭のための処理水を循環させる処理水循環部23と、電気分解されるときの処理水に含有される電解質濃度を硫酸塩3%〜10%及び無機塩化物0.01%〜3%に調整する電解質濃度調整部24とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造工程等で発生する臭気成分を含むガスを無臭化するための脱臭装置及び脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造工場では、鋳造工程等で発生する臭気成分を含むガスを無臭化する方策が採られている。従来の脱臭システムとしては、臭気成分を含んだガスと薬液とを接触させることによりガス中の悪臭成分を除去する、薬液脱臭処理システムが知られている。
【0003】
しかし、薬液脱臭処理システムによれば、硫酸、苛性ソーダなどの劇物を薬液として使用するため、システム管理に労力を要し、処理後の廃液や廃棄物も有害であるため特別な廃液処理等を講じる必要があるといった問題があった。また、システムを構成する装置が大型化して、エネルギーロスが大きく、工場内の設備環境を悪化させるといった問題もあった。
【0004】
このような事情から新たな脱臭方法が模索されており、例えば、臭気物質を液中に溶解させて電気分解することにより臭気物質を分解して除去する電気分解による脱臭方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【0005】
電気分解による脱臭方法は、水にプラスとマイナスの電極を浸漬して通電することで水の分解を行い、分解による副生成物で水中に溶解した有機成分等を分解除去して浄化脱臭するものである。しかし、水だけでは導電性が低く、水だけの電気分解では膨大な消費電力が必要となることから、電解質を添加して導電性を向上させることが一般的であり、電解質としては食塩(NaCl)が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−154231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電解質を食塩とした場合、臭気物質を分解することができても、その代償として塩素臭を発生させてしまうという問題がある。一方、このような別の有害臭気を発生させることのない電解質を用いるとしても、一定の水浄化能力が得られるものの、食塩を電解質とした場合ほどの結果を得ることはできない。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、別の臭気を発生させることがなく脱臭効率に優れた脱臭装置及び脱臭方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る脱臭装置は、臭気成分を含む被処理ガスから臭気成分を除去して清浄ガスを排出する脱臭装置であって、装置内に脱臭のための処理水を循環させる水循環手段と、被処理ガスに散水して臭気成分を処理水に溶解させる散水手段と、臭気成分が溶解された処理水を電気分解することにより臭気成分を分解除去する電気分解手段と、電気分解されるときの処理水に含有される電解質濃度を硫酸塩3%〜10%及び無機塩化物0.01%〜3%に調整する電解質濃度調整手段とを備えることを特徴とする。このとき、電解質濃度調整手段は、硫酸塩と無機塩化物とをそれぞれ別々に添加して濃度調整をすることとしてもよいし、あらかじめこの濃度範囲となるように混合させておくとしてもよい。
【0010】
このように、電気分解に用いる電解質を硫酸塩と無機塩化物とを混合させたものとして、その濃度を調整することで、別の臭気を発生させることがなく脱臭効率に優れた脱臭装置が実現される。
【0011】
また、本発明は、臭気成分を含む被処理ガスから臭気成分を除去して清浄ガスを排出する脱臭方法であって、脱臭のための処理水を循環させる水循環ステップと、被処理ガスに散水して臭気成分を処理水に溶解させる散水ステップと、臭気成分が溶解された処理水を電気分解することにより臭気成分を分解除去する電気分解ステップとを含み、電気分解ステップにおいて、電気分解されるときの処理水に含有される電解質濃度を硫酸塩3%〜10%及び無機塩化物0.01%〜3%に調整することを特徴とする脱臭方法として実現することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る脱臭装置によれば、電気分解における電解質として硫酸塩と無機塩化物とを混合させたものを用い、その濃度を調整することで、塩素臭などの別の臭気を発生させることなく、かつ、優れた脱臭能力を発揮する脱臭装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】脱臭システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0014】
1 脱臭装置
10 吸入部
20 脱臭部
21 散水部
22 電気分解部
23 処理水循環部
24 電解質濃度調整部
30 排出部
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る脱臭システムの機能的な構成を示すブロック図である。
【0017】
脱臭装置1は、シェルマシンや低圧鋳造機から発生するガス中に含まれるヤニ成分や粉塵、砂を除去するとともに、ガス中に含まれる臭気成分(例えば、アンモニア、ホルムアルデヒド、フェノールなど)を除去して無臭化し、大気中へ排出する装置であり、吸入部10、脱臭部20及び排出部30を備えている。
【0018】
吸入部10は、シェルマシン等で発生しブロア等によって送風されてくる被処理ガスを装置内に取り入れる機能を有し、例えば、吸引ファンにより実現される。
【0019】
脱臭部20は、被処理ガスを取り込んで、臭気成分を水(処理水)に溶解させて電気分解により無臭化するもので、散水部21、電気分解部22、処理水循環部23及び電解質濃度調整部24を備えている。
【0020】
散水部21は、装置内に取り込まれた被処理ガスに散水して、被処理ガスに含まれる臭気成分を処理水に溶解させるもので、散水ノズルにより実現される。
【0021】
電気分解部22は、電気分解で処理水に溶解された臭気成分を分解して除去するもので、電極等を有する電気分解装置により実現される。
【0022】
処理水循環部23は、脱臭部20内で処理水を循環させるもので、電気分解のための水槽や散水部21へ処理水を供給するためのパイプ等により実現される。
【0023】
電解質濃度調整部24は、循環される処理水の電解質濃度を調整する機能を有し、例えば電解質濃度センサ、濃度調整のための水を流入させるバルブやバルブの開閉を制御する制御装置等により実現される。
【0024】
排出部30は、脱臭部20で無臭化された被処理ガス(清浄ガス)を外気に排出する機能を有し、具体的には送風ファンがこれに該当する。
【0025】
このように構成される脱臭装置1において、電解質濃度調整部24は、電解質として硫酸塩と無機塩化物とを混合させたものを用い、液中の硫酸塩濃度を3%〜10%、液中の無機塩化物濃度を0.01%〜3%に調整する。硫酸塩だけを電解質として用いた場合、ある程度の水浄化能力が得られるものの、化学的酸素要求量(COD:Chemical Oxygen Demand)の値は一定値で飽和してしまう。しかし、電解質として硫酸塩に無機塩化物を添加して混合させたものを用いることにより、水浄化能力および脱臭能力が向上することとなる。このとき、硫酸塩の濃度が3%を下回ると、電解質としてのイオン濃度が不足するため分解能力が劣ることになる。一方、硫酸塩の濃度が10%を超えると、処理水への硫酸塩溶解度が飽和に近付いて臭気成分の吸収力が低下し、脱臭能力が低下することになる。また、無機塩化物の濃度が0.01%を下回ると、臭気成分の吸収力と水浄化能力が平衡状態となって、水質浄化がそれ以上進行しなくなる。一方、無機塩化物の濃度が3%を上回ると、塩素が過剰発生して塩素臭が強くなり脱臭装置としては不適となってしまう。以上のことから、電解質濃度調整部24は、液中の硫酸塩濃度を3%〜10%、液中の無機塩化物濃度を0.01%〜3%とした電解質を用いることとしている。なお、硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。また、無機塩化物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウムなどを用いることができる。
【実施例】
【0026】
上記実施形態における構成と同じ構成の脱臭装置で、吸入部から取り込まれる入口での臭気濃度が1200の条件で、電気分解時の電解質濃度と臭気濃度との関係について試験を行った。その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
比較例1〜4は、電解質として無機塩化物(食塩)のみを用いた場合の試験例である。無機塩化物のみを用いた場合、濃度が1%を超えたあたりから過剰な塩素ガスが発生し、塩素臭の臭気濃度が上昇するため、脱臭装置として成立しないことがわかる。
【0029】
比較例5〜10は、電解質として硫酸塩(硫酸ナトリウム)のみを用いた場合の試験例である。硫酸塩を用いる場合は、比較例6〜9に示されるように、硫酸塩濃度を3%〜10%の範囲内が好ましいことがわかる。
【0030】
発明例1〜4では、硫酸塩濃度を一定の濃度として、添加する無機塩化物の濃度を調整した試験例を示しており、ここから添加すべき無機塩化物の濃度は、0.01%〜3%の範囲内とすべきで、好ましくは0.01%〜1%であることがわかる。
【0031】
なお、発明例4よりも比較例7や比較例8の方が、臭気濃度のみを比べた場合に臭気除去の点で優れているが、COD値で示される水浄化能力を含めて考慮すると発明例4の方が総合的に優れた結果を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る脱臭装置は、塗装装置やメッキ装置などの臭気ガスを発生させる工業関連装置の脱臭装置として有用であり、臭気ガスが発生する鋳造工場等の低圧鋳造機の脱臭装置として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気成分を含む被処理ガスから臭気成分を除去して清浄ガスを排出する脱臭装置であって、
装置内に脱臭のための処理水を循環させる水循環手段と、
被処理ガスに散水して臭気成分を処理水に溶解させる散水手段と、
臭気成分が溶解された処理水を電気分解することにより臭気成分を分解除去する電気分解手段と、
電気分解されるときの処理水に含有される電解質濃度を硫酸塩3%〜10%及び無機塩化物0.01%〜3%に調整する電解質濃度調整手段とを備える
ことを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
臭気成分を含む被処理ガスから臭気成分を除去して清浄ガスを排出する脱臭方法であって、
脱臭のための処理水を循環させる水循環ステップと、
被処理ガスに散水して臭気成分を処理水に溶解させる散水ステップと、
臭気成分が溶解された処理水を電気分解することにより臭気成分を分解除去する電気分解ステップとを含み、
電気分解ステップにおいて、電気分解されるときの処理水に含有される電解質濃度を硫酸塩3%〜10%及び無機塩化物0.01%〜3%に調整する
ことを特徴とする脱臭方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−230027(P2011−230027A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100762(P2010−100762)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000225027)特殊電極株式会社 (26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】