説明

脱色剤

本発明は、無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶形(crystalline form)、AおよびC型結晶多形、これらの結晶形の一つ以上を含有する処方物ならびに皮膚を明るくするためのそれらの使用に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶形(crystalline form)に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトにおける皮膚の色は、メラノサイト(melanocyte)として知られる一群の細胞内で行われる複雑な一連の細胞のプロセスによっている。メラノサイトは、表皮の下部に位置し、それらの機能は、紫外線放射の傷害作用から体を守る色素メラニンを合成することである。
【0003】
皮膚の色素沈着がなされるメカニズム、メラニン形成(melanogenesis)は、以下の主要な段階:チロシン→L−ドーパ→ドーパキノン ドーパクロム→メラニンを含む。このシリーズの初めの2つの反応は、酵素チロシナーゼ(tyrosinase)により触媒される。チロシナーゼの活性は、α−メラノサイト刺激ホルモンおよびUV線の作用により促進される。
【0004】
典型的には、メラニン形成は、より暗い皮膚の色調(即ち、黄褐色)に導く。しかしながら、メラニン形成は、望ましくない色素沈着パターンにも同様に導きかねない。このような望ましくない色素沈着の例としては、加齢斑(age spots)、肝斑(liver spots)、黒皮症(melasma)、色素沈着過度(hyperpigmentation)等が挙げられる。これは、メラニン形成を阻害する化合物を発見する研究に導いた。この研究の標的の一つは、メラニンの生成における最初の段階を触媒する酵素チロシナーゼである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許第6,132,740号は、チロシナーゼ阻害剤のクラスを開示する。これらの化合物は、4−シクロアルキルレゾルシノール類である。’740号特許にて開示される一つの化合物は、4−シクロペンチルレゾルシノールである。’740号特許の実施例2は、無定形の4−シクロペンチルレゾルシノールの調製を具体的に説明する。この化合物は効力あるチロシナーゼ阻害剤であるが、臨床的展開を支持するために必要とされる量では容易に生産することができない。実施例2の合成は、4−シクロペンチルレゾルシノールの相当な量の種々の位置異性体を生ずる。このような異性体の例としては、2−シクロペンチルレゾルシノール、4,6−ジシクロペンチルレゾルシノール、2,4−ジシクロペンチルレゾルシノール等が挙げられる。4−シクロペンチルレゾルシノールをその位置異性体から分離することは困難である。
【0006】
結晶形の4−シクロペンチルレゾルシノールは、その合成で生じる位置異性体から容易に分離することができる。無水4−シクロペンチルレゾルシノールのこれらの結晶形は、代表的には、臨床的または工業的規模での取り扱い及び処方に対して無定形形態よりもより適合的である。結晶形の4−シクロペンチルレゾルシノールの別の利点は、当業者には容易に明白となろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、無水4−シクロペンチルレゾルシノールの新規な結晶形が発見された。二つの異なる形が、現在までに発見されている。これらの結晶形は、AおよびC型と呼ばれる。4−シクロペンチルレゾルシノールの構造を、式I:
【化1】

により示す。
【0008】
A型結晶多形の単結晶の構造を決定した。この単結晶の構造に基づいて、粉末X線回折図を、A型結晶多形について計算した。A型結晶多形のIRスペクトルも、測定した。これらの全ての値を、下記に報告する。
【0009】
C型結晶多形の単結晶の構造を決定した。この単結晶の構造に基づいて、粉末X線回折図を、C型結晶多形について計算した。この結晶多形のIRスペクトルを、測定した。これらの全ての値を、下記に報告する。
【0010】
無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶形は、皮膚を明るくするために用いることができる(即ち、脱色剤(depigmentation agent)として)。より特定の態様において、一つ以上の結晶形が、明るくする必要がある皮膚の部分に患者が直接塗布することができる局所剤形に組み込まれる。
【0011】
更なる態様において、本発明は、皮膚を明るくするために製品の使用法を消費者に助言する説明書と共に小売流通用に包装された、これらの一つ以上の結晶形を含有する製品に関する。
【0012】
A)背景
同一の化学構造を有する化合物は、異なる物理的形態で存在することができる。例えば、これらの化合物は、個体、液体、または気体として存在することができる。固体の形態は、無定形であるかもしれないし、又は明確な結晶形として存在し得る。異なる結晶形は、しばしば異なる物理的性質(即ち、生物学的利用能、溶解度、融点等)を有する。
【0013】
これらの異なる結晶形は、結晶多形と呼ばれる。結晶多形の構造を決定する一方法は、単結晶X線分析である。この分析において、化合物の結晶状態が、もとのその単位格子に相対した単位格子の寸法、空間群、および化合物における全原子の原子位置を含むいくつかの結晶学的パラメーターにより説明される。
【0014】
この技術を用い、無水4−シクロペンチルレゾルシノールの二つの結晶多形があることが発見された。これらの二つの結晶状態の単位格子の寸法および空間群の比較を、下記の表IおよびIVに示す。単結晶X線分析のより詳細な考察は、インターナショナル テーブルズ フォー X−レイ クリスタログラフィー(International Tables for X-ray Crystallography), IV巻, 55,99,149頁バーミングハム:キノッチ出版(Birmingham:
Kynoch Press), 1974, G. M.シェルドリック(Sheldrick), SHELXTL. ユーザー マニュアル(User Manual),
ニコレット インスツルーメント社(Nicolet Instrument Co.), 1981ならびにグルスカー(Glusker)およびツルーブラッド(Trueblood)によるクリスタル ストラクチャー アナリシス(Crystal
Structure Analysis), 第二版;オックスフォード大学出版(Oxford University press):ニューヨーク,1985に見ることができる.
【0015】
単結晶X線分析は、名前が示唆するように、X線ビームの中に置かれた唯一つの結晶に限定される。多数の結晶に関する結晶学的データを集めるために粉末X線回折と普通呼ばれる技法も開発された。
【0016】
単結晶の構造決定において生成したデータは、当業者が粉末X線回折図を計算するのを可能にする。この変換は、単結晶実験が通常単位格子の寸法、空間群、および原子位置を測定することために、可能である。これらのパラメーターは、特定の結晶多形について粉末図を計算する基礎を提供する。これは、SHELXTL Plus(商標)コンピュータープログラム(リファランス マニュアル バイ シーメンス アナリティカル X−レイ インスツルーメント(Reference Manual by Siemens Analytical X-ray Instrument), 10章, 179−181ページ,1990)のようなコンピューターソフトウェアの補助、、あるいはW.クラウス(Kraus)およびG.ノルゼ(Nolze)によるパウダー セル(Powder
Cell), ベルリン, ドイツ, 1999により成し遂げることができる。
【0017】
単結晶データを粉末回折グラフに変えるこの技術を用いて、A型およびC型の両者の結晶多形についてX線回折図のグラフを得た。これらの計算の結果を、下記の図IおよびIIに示す。
【0018】
B)評価方法
単結晶X線分析および計算X線回折図を、下記に説明する通りに決定した。
【0019】
i)単結晶X線分析
適切な結晶多形(即ち、AまたはC)の単結晶を、ランダム配向(random orientation)で載せた。予備試験およびデータ収集を、ブルッカーAXS社(Bruker AXS, Inc.), マジソン(Madison),
WIから入手可能なブルッカーSAMRT IK CCD回折計(diffractometer)上でMo Kα放射を用いて行う。データ収集のため格子定数(cell
constants)およびオリエンテーションマトリックス(orientation matrix)を、3<θ<28°の範囲の6145鏡映(reflections)の設定角を用いた最小二乗細分(refinement)から得た。構造は、直接法により解明した。構造を、F上の全マトリックス最小二乗により絞った。A型結晶多形の結晶構造を、293Kで測定し、空間群P2/cにて解明し、0.10の最終R(F>2σ)へと絞った。C型結晶多形の結晶構造を、160Kで測定し、空間群P−1にて解明し、0.08の最終R(F>2σ)へと絞った。
【0020】
ii)計算X線回折図
計算XRPD図を、パウダーセル(PowderCell)v.2.3を用い単結晶原子座標、単位格子パラメーター、および対称から得た。A型結晶多形の計算図を、293K(20℃)で収集した単結晶データから得、一方、C型のデータを160K(−113℃)で収集した。ブラッグ−ブレタノ(Bragg-Bretano)配置、および0.02°2θステップサイズでの、Cu放射のXRPD図を生成した。FWHM=f(u、v、w)(ここで、u=0、v=0、およびw=0.005)の偽-フォークト(pseudo-Voigt2)プロフィールを用いた。スケーリング因子は用いなかった。
【0021】
実験X線粉末回折(XRPD)は、無水4−シクロペンチルレゾルシノールの特定の結晶形が結晶多形A型であるかC型であるかを決定する別の手段である。計算XRPD図は、実験XPRD図におそらく出現するであろうピークを示す。当業者は、実際の実験XPRD図に存在するピークの相対強度が、特定の結晶の選択配向(preferred orientation)により変化するかもしれないことを理解するであろうが、XPRD実験は、これらの作用を最小にする技術を用いて行うことができる。このような技術としては、例えば、分析前の試料の粉砕、分析中の試料のスピニング(spinning)もしくはロッキング(rocking)、またはエアリア検出器(area
detector)を備えた回折計の利用が挙げられる。
【0022】
従って、単に、実験XPRDが、図IまたはIIに示される計算XPRDと同一ではないからといって、結晶がA型またはC型結晶多形ではないということを意味しない。下記で考察されることであるが、計算図から同定された選択された特徴的ピークの存在を用いて無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶形が結晶多形A型であるかC型であるかを決定することができる。
【0023】
iii)赤外線吸収スペクトル
IRスペクトルを、ニクロエツ(Nicloet)210FT分光計によりKBrディスクとして記録する。
【0024】
iv)融点
本明細書で述べられる全ての融点は、コフラー(Kofler)ホットステージ(hot stage)(偏光フィルター下での観察)により測定しており、未補正である。
【0025】
v)Ortep→図IVに示した結晶学的図面は、プログラムORTEPを用いて得た。
【0026】
多数の方法論を、無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶形が結晶多形A型であるかC型であるかを測定するのに用いることができる。A型およびC型結晶多形は、それらの単結晶構造に基づいて同定することができる。計算図は、特に実験XPRDと合せて用いる場合、特定の結晶形を特徴付ける代替手段を提供する。別の代替手段は、本出願物の中に含まれる開示に基づき当業者に容易に明白となろう。
【0027】
C)A型結晶多形
無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶形の一つは、A型結晶多形である。それは、65−66.5℃の融点を有する。A型結晶多形の構造は、293Kで単結晶X線分析により決定された。単位格子パラメーターを、下記の表Iに示す。表IIは、原子座標および同形置換(isotropic displacement)パラメーターを示す。表IIIは、水素座標および同形置換パラメーターを示す。
表I
空間群および単位格子パラメーター
型 A
結晶系 単斜
空間群 P2/c

単位格子の寸法
a(Å) 9.582±0.001
b(Å) 9.379±0.001
c(Å) 11.076±0.001
β() 97.405±0.002
体積(Å) 987±1
Z(分子/単位格子) 4
密度(g/cm) 1.20g/cm
【表1】

【表2】

【0028】
単結晶X線分析により得られるデータは、X線回折図の計算を可能にした(即ち、計算XPRD)。これらの計算の結果を、図Iに示す。これらの計算は、A型結晶多形と関連している特徴的ピークの決定を可能にした。特徴的ピークは、C型結晶多形または4−シクロペンチルレゾルシノールの一水和物のI型結晶多形のX線回折図に出現する任意のピークと重ならないピークである(この結晶形の完全な説明のためには、参照により本明細書に含めるものとする米国特許出願番号第60/446665号参照のこと)。
【0029】
度数2θ(近似)で表されるA型結晶多形の特徴的ピークは、13.3、18.7、19.7、27.4、および29.8にある。請求項を含む本出願物における近似2θ値へのいずれの言及も、記載された2θ値±0.2°2θを意味する。293K(20℃)の温度で実験X線回折に供された無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶試料におけるこれらの特徴的ピークの一つ以上の存在は、試料がA型結晶多形であることを確認するのに十分である。更なる態様において、実験X線回折に供された無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶試料におけるこれらのピークの二つ、三つ、四つ、または五つ以上の存在は、試料がA型結晶多形であることを確認するのに十分である。更に特定の態様において、18.7および19.7度2θ(近似)での特徴的ピークの存在は、結晶物質がA型結晶多形であることを確認するのに十分である。得られた図上に選択配向の持ち得る影響を最小にするために、上述した通りに任意の実験X線回折を行うべきである。
【0030】
図Iの精査によって、更なるピークがA型結晶多形の任意の試料に存在するかもしれないということが分る。上記で同定された特徴的ピークを含む計算図で同定されたピークのリストを下記表IVに掲げる。表IVに示したデータは、実験X線回折図の解釈を助けるのに用いるべきである。データは、一つ以上の選択されたピークがないことにより無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶試料がA型結晶多形ではないと結論を下すのに用いるべきではない。
【表3】

【0031】
A型結晶多形は、赤外線吸収分光法によっても調べられた。この結晶多形のIRスペクトルを、図IIIに示す。選択されたIRバンドは、A型結晶多形に特有である(即ち、C型結晶多形に存在しない)と同定された。A型は、以下の特有の吸収バンド(υmax/cm−1):1094.7m、971.1s、930.4w、838.3m、799.8w、および748.1wを示す。
【0032】
D)C型結晶多形
C型結晶多形は、今日までに同定された無水4−シクロペンチルレゾルシノールの第二の結晶形である。それは、63.2−66.5℃の融点を有する。その構造は、160Kで単結晶X線分析により決定された。単位格子パラメーターを、下記の表Vに示す。表VIは、原子座標および同形置換パラメーターを示す。表VIIは、水素原子座標および同形置換パラメーターを示す。
表V
C型結晶多形の空間群および単位格子パラメーター
型 C
結晶系 三斜
空間群 P−1

単位格子の寸法
a(Å) 9.180±0.002
b(Å) 9.534±0.002
c(Å) 10.831±0.002
α() 87.493(3)
β() 89.029(3)
γ() 84.045(3)
体積(Å) 942±1
Z(分子/単位格子) 4
密度(g/cm) 1.26g/cm
【表4】

【表5】

【表6】

【0033】
単結晶X線分析により得られるデータは、X線回折図の計算を可能にした(即ち、計算XPRD)。これらの計算の結果を、図IIに示す。これらの計算は、C型結晶多形と関連している特徴的ピークの決定を可能にした。特徴的ピークは、A型結晶多形または4−シクロペンチルレゾルシノール(上記で定義した)の一水和物のI型結晶多形のX線回折図に出現する任意のピークと重ならないピークである。度数2θ(近似)で表されるC型結晶多形の特徴的ピークは、15.4、20.4、22.0、および23.3にある。160Kの温度で実験X線回折に供された無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶試料におけるこれらの特徴的ピークの一つ以上の存在は、試料がC型結晶多形であることを確認するのに十分である。更なる態様において、実験X線回折に供された無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶試料におけるこれらのピークの二つ、三つ、または四つ以上の存在は、試料がC型結晶多形であることを確認するのに十分である。得られた図上に選択配向の持ち得る影響を最小にするために、上述した通りに任意の実験X線回折を行うべきである。
【0034】
図IIの精査によって、更なるピークがC型結晶多形の任意の試料に存在するかもしれないということが分る。上記で同定された特徴的ピークを含む計算図で同定されたピークのリストを下記表VIに掲げる。表VIに示したデータは、無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶試料にて行われた実験X線回折分析の解釈を助けるためにだけ用いるべきである。データは、一つ以上の選択されたピークがないことにより無水4−シクロペンチルレゾルシノールの結晶試料がC型結晶多形ではないと結論を下すのに用いるべきではない。
【表7】

【0035】
C型結晶多形は、赤外線吸収分光法によっても調べられた。この結晶多形のIRスペクトルを、図IIIに示す。選択されたIRバンドは、C型結晶多形に特有である(即ち、A型結晶多形に存在しない)と同定された。C型は、以下の特有の吸収バンド(υmax/cm−1):931.8w、および749.1sを示す。
【0036】
E)調製法
【化2】

4−シクロペンチルレゾルシノール、並びにそのAおよびC型結晶多形は、反応スキームIに描かれる、当業者等に同様に知られる方法により調製することができる。
【0037】
初めの工程は、4−シクロペンチルレゾルシノールの調製である。これは、それらの両方を参照により本明細書に含めるものとする米国特許第6,132,740号、および米国特許出願番号第60/446,665号に説明されている通りに成し遂げることができる。ポリリン酸のような触媒の存在下で過剰のシクロペンタノールとレゾルシノールを反応させ、混合物を反応が完了するまで加熱するフリーデル−クラフツ反応を行う。4−シクロペンチルレゾルシノールは、抽出により回収することができる。抽出物の有機相の蒸発により、4−シクロペンチルレゾルシノールとその位置異性体の混合物を得る。一水和物形態の4−シクロペンチルレゾルシノールは、水および、トルエンのような適切な再結晶溶媒の添加により直接結晶化することができる。
【0038】
結晶無水4−シクロペンチルレゾルシノールを得るためには、‘665号出願物中で上述された単離および回収手順を修正する必要がある。一水和物の溶液を、共沸蒸留のような適切な技術を用いて乾燥する。その結果できた無水物溶液を濃縮し、その結果できた油状物質を再結晶溶媒に溶解し、冷却し、そしてA型結晶多形を溶液から結晶化させる。一つの適切な再結晶溶媒は、ヘプタンとトルエンの混合物である。ヘプタンに対するトルエンの比率は、広く変えることができる。A型結晶多形は、当業者に公知のとおり、濾過、または蒸発により単離することができる。
【0039】
C型結晶多形は、当業界で同様に知られている技術を用い、A型結晶多形を蒸気吸着結晶化(vapour adsorption crystallization)に供することにより得ることができる。このような結晶化の更なる考察のために、読者の注意は、フォーゲルズ ハンドブック オブ プラクティカル オーガニック ケミストリー(Vogel's
Handbook of Practical Organic Chemistry), A.I.フォーゲル(Vogel)に向けられる。A型結晶多形は、室温でトルエンのような溶媒およびペンタンのような貧溶媒(anti-solvent)に溶解することができる。C型結晶多形は、この溶媒混合物から結晶化する。C型結晶多形は、当業界で知られていることではあるが、蒸発または濾過により回収することができる。AおよびC型結晶多形を得る他の方法は、本出願物の教示に基づいて熟練者に容易に明白になるであろう。
【0040】
F)薬理学および用量
上記で指摘したように、米国特許第6,132,740号は、4−シクロペンチルレゾルシノールの薬理を説明する。それは、チロシナーゼ阻害剤であり、メラノサイトによるメラニンの生成を阻害(即ち、メラニン形成の阻害)するのに用いることができる。A型およびC型結晶多形も、チロシナーゼ阻害剤(以後“化合物”)である。それらは、メラニン形成を阻害するために‘740号特許にて説明される同じ方法で用いることができる。従って、本化合物は、不適切に色素沈着している皮膚の部分を明るくするのに用いることができる。
【0041】
このような不適切な色素沈着の例としては、日光性(solar)および単純(simple)黒子(lentigines)(加齢/肝斑を含む)、黒皮症/肝斑(chloasma)ならびに炎症後色素沈着過度が挙げられる。本化合物は、消費者により所望される場合、より明るい皮膚の色調を誘導するように非病的状態で皮膚のメラニン含量を減少させるため、またはUV照射に露出された皮膚におけるメラニン蓄積を妨げるためにも用いることができる。それらは、皮膚の色調を明るくし再色素沈着を防止するために皮膚の剥皮剤(peeling
agents)(グリコール酸またはトリクロロ酢酸顔面剥皮剤(face peels)を含む)と組み合わせて用いることもできる。
【0042】
本化合物は、再色素沈着を防止するため、太陽もしくはUVが誘導する皮膚の黒ずみから保護するため、または皮膚のメラニンを減少させるそれらの能力及びそれらの皮膚の漂白作用を増強するためにサンスクリーン(UVAまたはUVB遮断剤blockers))と組み合わせて用いることもできる。本発明に用いる化合物は、4−ヒドロキシアニソールと組み合わせて用いることもできる。本発明に用いる化合物は、皮膚のメラニンを減少させるそれらの能力及びそれらの皮膚の漂白作用を促進または増強する、アスコルビン酸、その誘導体および、アスコルビン酸に基づく製品(例えば、アスコルビン酸マグネシウム)または酸化防止メカニズムを有する他の製品(例えば、レスベラトロール)と組み合わせて用いることもできる。
【0043】
一般的指針として、本化合物は、局所的に投与する。それらは、脱色または明るくする必要がある皮膚の部分に直接塗布する。約0.1から10w/w%の本化合物を含有するクリーム剤、ローション剤、軟膏剤、ゲル剤等のような局所処方物を調製する。次いで、本化合物を、1日1から4回患部に塗布する。本化合物を全身的に投与する場合は、約0.1mg/kgから約100mg/kgを、任意選択で分割量として毎日投与する。
【0044】
G)医薬処方物
所望であれば、本化合物は、担体を用いることなく直接投与することができる。しかしながら、投与を容易にするために、それらは、代表的には、製薬担体中に処方される。同様に、それらは、最も代表的には、外皮用、または美容用担体中に処方される。この出願において、用語“外皮用担体”および“美容用担体”は、相互交換可能に用いている。それらは、皮膚または毛への直接投与用に設計された処方物(即ち、局所的処方物)を指す。
【0045】
経口投与には、本化合物は、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、メルツ剤(melts)、散剤、懸濁剤、または乳剤のような固形または液状製剤中に処方することができる。固形単位剤形は、例えば、表面活性剤、滑沢剤ならびにラクトース、白糖およびトウモロコシデンプンのような不活性賦形剤を含有する普通のゼラチンタイプのカプセル剤であってもよいし、または徐放製剤であってもよい。
【0046】
別の態様において、本化合物は、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、またはゼラチンのような結合剤、バレイショデンプンまたはアルギン酸のような崩壊剤、ならびにステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤と組み合せて、ラクトース、白糖およびトウモロコシデンプンのような従来の錠剤基剤を用いて錠剤化することができる。液状製剤は、水性または非水性の薬学的に許容することのできる溶媒中に本有効成分を溶解することにより調製され、当業界で公知であるが、懸濁化剤、甘味剤、着香剤、および保存剤も含有することができる。
【0047】
非経口投与には、本化合物は、生理学的に許容することのできる製薬担体中に溶解し、液剤または懸濁剤のいずれかとして投与することができる。適切な製薬担体の具体例は、水、生理食塩水、デキストロース溶液、フルクトース溶液、エタノール、または動物、植物、もしくは合成起源の油類である。当業界で公知であるが、製薬担体は、保存剤、緩衝剤等も含有することができる。本化合物がくも膜下投与される場合、当業界で公知であるが、それらは、脳脊髄液に溶解することもできる。
【0048】
しかしながら、代表的には、本化合物は、局所投与に適した処方物中に組み込まれる。当業界で公知のいずれの局所的処方物も用いることができる。このような局所的処方物の例としては、ローション剤、スプレー剤、クリーム剤、軟膏剤(ointments)、軟膏剤(salves)、ゲル剤等が挙げられる。局所的処方物を調製する実際の方法は、公知であるか、または当業者等に明白であり、レミングトンズ ファーマシューティカル サイエンスイズ(Remington's
Pharmaceutical Sciences), 1990(上記);およびファーマシューティカル ドセッジ フォームズ アンド ドラッグ デリバリー システムズ(Pharmaceutical
Dosage Forms and Drug Delivery Systems), 第6版, ウィリアムズ(Williams)&ウィルキンス(Wilkins) (1995)に詳細に述べられている。
【0049】
更なる態様において、上述した処方物は、小売流通用に包装することができる(即ち、キットまたは製品)。パーケージは、皮膚を明るくするために製品の使用法を患者に助言する説明書を含む。このような説明書は、箱上に印刷されていてもよいし、べつべつの一枚刷りの印刷物であってもよいし、または処方物を入れている容器の側面上に印刷されている等でもよい。
【0050】
H)実施例
以下の実施例は、本発明を更に具体的に説明するために提供される。それらは、いかなる様式であっても本発明を限定すると解釈すべきではない。
【実施例】
【0051】
実施例I
この実施例は、A型結晶多形の調製のための一代替法を具体的に説明する。フラスコにレゾルシノール(400g、3.63ミリモル)、シクロペンタノール(312g、3.63ミリモル)およびリン酸(85%水溶液、1307ml)を加える。混合物を、窒素置換しながら24時間120℃に加熱する。溶液を100℃に冷やし、水(800ml)を加える。溶液を60℃に冷やし、酢酸エチル(800ml)を加える。溶液を10分間攪拌し、分液漏斗に移す。水層を分離し、酢酸エチル(800ml)で抽出する。有機相を合せ、水(2x750ml)で洗浄することができる。酢酸エチルを40−50℃で減圧下にて除去して紫色の油状物質を残す。
【0052】
この物質を168から182℃のポット温度および164から166℃の蒸気温度で減圧(1ミリバール)下で蒸留する。合せた画分(トルエン−ヘプタン)の再結晶により、無水物Aを得る。
【0053】
実施例II
攪拌棒を備えた丸底フラスコにレゾルシノール(150g、1.36モル)、シクロペンタノール(125ml、1.38モル)およびリン酸(水中の85%)を加えた。フラスコに還流冷却器を取り付け、窒素置換し、混合物を120℃(油浴温度)で26時間加熱した。この時点で求めたTLC分析は、出発レゾルシノールがまだ存在することを示した。更なるシクロペンタノール(25ml、0.28モル)を反応混合物に加え、加熱を2.5時間継続した。冷却後、混合物を水(500ml)および酢酸エチル(600ml)で希釈した。有機層を分離し、水層を酢酸エチル(3x500ml)で抽出した。合せた有機層を、過剰の炭酸水素ナトリウム飽和水溶液の慎重な添加により中和し、食塩水(300ml)で洗浄し、乾燥し(硫酸マグネシウム)、濃縮した。残分をトルエン(500ml)に溶解し、水(20ml、1.11モル、0.8当量)を加えた。溶液を約30秒間攪拌し、定期的に攪拌しながら氷/水バッチ内で冷却した。4時間後、固形物を濾過し、16時間結晶化皿の中で静置風乾して着色結晶を得た。トルエン中の再結晶により、4−シクロペンチルレゾルシノールの一水和物形態を白色板状晶として得た。4−シクロペンチルレゾルシノールの無水トルエン溶液を、共沸蒸留を通じて調製した。溶液を冷却し、ペンタンを加えた。無水物Aを、濾過により得た。融点65−66.5℃。選択したIRデータ(υmax/cm−1):1108.3s、1094.7m、977.8s、971.1s、930.4w、838.3m、826.7s、799.8w、748.1wおよび628.0w。
【0054】
実施例III
この実施例は、C型結晶多形の一調製法を具体的に説明する。生成物を融点63.2−66.5℃の樹枝状結晶として得るために3日間にわたりトルエン(溶媒)およびペンタン(貧溶媒)を用い無水物Aの蒸気吸着結晶化を通じて無水物Cを得た。選択したIRデータ(υmax/cm−1):1108.4s、977.9s、931.8w、826.8s、749.1sおよび628.0m。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、A型結晶多形の計算X線回折図を表す。
【0056】
【図2】図2は、C型結晶多形の計算X線回折図を表す。
【0057】
【図3】図3は、A型およびC型結晶多形のIRスペクトルを表す。
【0058】
【図4A】図4は、A型結晶多形の単結晶の構造のOrtep図である。
【図4B】図4は、A型結晶多形の単結晶の構造のOrtep図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水結晶4−シクロペンチルレゾルシノール。
【請求項2】
無水4−シクロペンチルレゾルシノールのA型結晶多形(polymorph)。
【請求項3】
以下のIRスペクトル吸収バンド(υmax/cm−1):1094.7m、971.1s、930.4w、838.3m、799.8w、および748.1w
を示す、請求項2の結晶多形。
【請求項4】
293Kで以下:
空間群(space group)および単位格子(unit cell)パラメーター
型 A
結晶系(crystal system) 単斜(monoclinic)
空間群 P2/c

単位格子の寸法
a(Å) 9.582±0.001
b(Å) 9.379±0.001
c(Å) 11.076±0.001
β() 97.405±0.002
体積(Å) 987±1
Z(分子/単位格子) 4
密度(g/cm) 1.2g/cm
にほぼ等しい結晶単位格子パラメーターの単結晶X線結晶学的分析を示す、請求項2の結晶多形。
【請求項5】
図Iのものと実質的に類似した実験X線回折図を示す、請求項2の結晶多形。
【請求項6】
293Kの温度で、度数2θ(近似)にて表され、13.3、18.7、19.7、27.4、および29.8から成る群から選ばれる1つ以上の特徴的ピークを有する実験X線粉末回折図を示す、請求項2の結晶多形。
【請求項7】
293Kの温度で、度数2θ(近似)にて表される18.7および19.7の特徴的ピークを有する、の実験X線粉末回折図を示す、請求項2の結晶多形。
【請求項8】
無水4−シクロペンチルレゾルシノールのC型結晶多形。
【請求項9】
以下のIRスペクトル吸収バンド(υmax/cm−1):931.8w、および749.1sを示す、請求項8の結晶多形。
【請求項10】
160Kで以下:
空間群および単位格子パラメーター
型 C
結晶系 三斜(triclinic)
空間群 P−1

単位格子の寸法
a(Å) 9.180±0.001
b(Å) 9.534±0.001
c(Å) 10.831±0.001
体積(Å) 942±1
Z(分子/単位格子) 4
密度(g/cm) 1.26g/cm
に等しい結晶単位格子パラメーターの単結晶X線結晶学的分析を示す、請求項8の結晶多形。
【請求項11】
図IIのものと実質的に類似した実験X線回折図を示す、請求項8の結晶多形。
【請求項12】
160Kの温度で、度数2θ(近似)にて表され、15.4、20.4、22.0、および23.3から成る群から選ばれる1つ以上の特徴的ピークを有する、の実験X線粉末回折図を示す、請求項8の結晶多形。
【請求項13】
請求項1−12の何れか1項に記載の化合物をその必要がある患者に投与することを含む、皮膚を明るくする方法。
【請求項14】
請求項1−12の何れか1項に記載の化合物をその必要がある患者に投与することを含む、皮膚における色素沈着を減少させる方法。
【請求項15】
1つ以上の薬学的に許容することのできる担体との混合物中に効果的な量の請求項1−12の何れか1項に記載の化合物を含む医薬処方物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−504278(P2007−504278A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530656(P2006−530656)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001587
【国際公開番号】WO2004/103940
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミティド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】