説明

脱酸素システム

【課題】 処理水の溶存酸素濃度を低減することである。
【解決手段】 脱気装置1と、この脱気装置1にて生成される処理水を貯留する処理水タンク2と、この処理水タンク2の処理水を使用する負荷機器3と、前記処理水タンク2の水位情報に基づき前記水位が低くなるに伴い前記脱気装置1への被処理水の供給量を多くする制御手段4とを備える脱酸素システムであって、前記制御手段4は、前記負荷機器3の処理水要求量情報に基づき、前記供給量を前記水位情報のみによる供給量よりも少なくする制御を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給水中の溶存酸素を低減する脱酸素システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などに代表される冷熱機器への給水系統では、前記冷熱機器の接水部分が給水中の溶存酸素により腐食し、前記冷熱機器が破損することを防止する目的で脱気装置が使用されている。
【0003】
前記脱気装置としては、酸素は透過するが液体は透過しない特性を有する中空糸状の高分子膜の多数本を束ねてハウジング内に収容し、これらの各高分子膜の両端部を樹脂剤で封止した構造の脱酸素モジュールを使用し、前記各高分子膜の一側へ被処理液を供給し、前記各高分子膜の他側を減圧することにより、被処理液に含まれる溶存酸素を低減させる構成の膜式脱気装置が知られている。
【0004】
この種の膜式脱気装置を用いた脱酸素システムが、特許文献1にて知られている。この脱酸素システムは、処理水タンク内の水位が第一設定水位以上のときは、検出水位に応じて被処理水の供給量を調節する流量調節運転を行ない、処理水タンク内の水位が第一設定水位から所定距離下がった第二設定水位以下のときは、全量供給運転を行なうものである。
【0005】
【特許文献1】特開平10−28963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の脱酸素システムは、処理水タンクの水位情報のみで、被処理水の供給量を制御しているので、リアルタイムに変化する負荷機器の処理水要求量が少ない時でも前記水位情報により高流量供給運転を行ってしまう。その結果、脱気装置から処理水タンクへ供給される処理水の溶存酸素濃度が高くなってしまう。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、処理水の溶存酸素濃度を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、脱気装置と、この脱気装置にて生成される処理水を貯留する処理水タンクと、この処理水タンクの処理水を使用する負荷機器と、前記処理水タンクの水位情報に基づき前記水位が低くなるに伴い前記脱気装置への被処理水の供給量を多くする制御手段とを備える脱酸素システムであって、前記制御手段は、前記負荷機器の処理水要求量情報に基づき、前記供給量を前記水位情報のみによる供給量よりも少なくする制御を行うことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、脱気装置と、この脱気装置にて生成される処理水を貯留する処理水タンクと、この処理水タンクの処理水を使用する負荷機器と、前記処理水タンクの水位情報に基づき前記水位が低くなるに伴い前記脱気装置への被処理水の供給量を多くする制御手段とを備える脱酸素システムであって、前記制御手段は、前記負荷機器の処理水要求量情報に基づき、前記処理水要求量が設定要求量より少ない時、前記供給量を前記水位に対応して設定した設定供給量よりも少なくする制御を行うことを特徴としている。
【0010】
請求項1または請求項2に記載の発明によれば、前記負荷機器の処理水要求量情報に基
づき、前記水位が低くても前記処理水要求量が少ない時は前記供給量を少なくする制御を行うので、前記処理水要求量情報による制御を行わないシステムと比較して、処理水の溶存酸素濃度を低減できる。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2において、前記制御手段は、前記脱気装置の運転開始時に高流量運転を行うことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明による効果に加えて、低流量運転による膜の詰まりが生ずることを抑制することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、処理水の溶存酸素濃度を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明は、蒸気ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などの冷熱機器における腐食の抑制,ビル,マンションなどの給水配管における赤水発生の防止,あるいは半導体製造工場の部品洗浄設備における超音波洗浄の効率化などの目的で使用される膜式の脱気装置を用いた脱酸素システムにおいて好適に実施される。この脱酸素システムは、脱気システムと称することができる。
【0015】
この発明の実施形態は、脱気装置と、この脱気装置にて生成される処理水を貯留する処理水タンクと、この処理水タンクの処理水を使用する負荷機器と、前記処理水タンクの水位情報に基づき前記水位が低くなるに伴い前記脱気装置への被処理水の供給量を多くする制御手段とを備える脱酸素システムであって、前記制御手段は、前記負荷機器の処理水要求量情報に基づき、前記供給量を前記水位情報のみによる供給量よりも少なくする制御を行うことを特徴とする脱酸素システムである。
【0016】
この脱酸素システムにおいては、前記制御手段は、基本的な第一制御として、前記水位が低くなるに伴い前記脱気装置への被処理水の供給量を多くする制御を行う。この第一制御に加えて、前記制御手段は、付加的に第二制御として、前記負荷機器の処理水要求量情報に基づき、前記供給量を前記水位情報のみによる供給量よりも少なくする制御を行う。この第二制御を行うことで、前記処理水タンクへの被処理水の供給量を少なくすることができ、前記第二制御を行わないシステムと比較して、処理水の溶存酸素濃度が低減される。
【0017】
つぎに、この実施の形態の各構成要素について説明する。前記脱気装置は、膜式脱気装置であり、気体透過膜あるいは気体分離膜を用いた,いわゆる膜式脱気装置であり、特定の構造のものに限定されない。この膜式脱気装置は、気体透過膜を、管状,中空糸状,プリーツ状,スパイラル形状(のり巻き形状)等の形状に成形し、この状態で適宜の容器に収容して1個の構成部品とした,いわゆる膜モジュールとして使用する。この脱気装置は、被処理(通水)水の供給量が少なくなると処理水の溶存酸素濃度が低くなるという特性を有している。
【0018】
前記膜モジュールの内部は、液相側と気相側とに区画されており、液相側には、脱気処理を行う被処理水(原水と称することもでき、井戸水,水道水,各種工業用水,その他液状製品等を含む)を供給する給水ポンプを備えた被処理水供給ラインと、脱気処理後の処理水を貯留する処理水タンクへ供給する処理水供給ラインとが接続されている。
【0019】
また、気相側には、この区画内を真空吸引するための減圧手段に真空吸引ラインが接続
されている。そして、前記膜モジュール内における被処理水の流通過程において、気体透過膜を介して真空吸引することにより、被処理水中の溶存気体を吸引除去し、脱気された処理水を処理水供給ラインから処理水タンクへ供給するように構成されている。前記減圧手段は、好ましくは、水封式真空ポンプとする。
【0020】
前記脱気装置は、1台の処理水量(最大容量)と負荷機器の処理水要求量(最大容量)と関係で、1台または複数台を用いる。複数台の場合は、互いに並列接続して使用する。
【0021】
前記負荷機器は、好ましくは、蒸気ボイラ,温水ボイラ,排ガスボイラ,冷却器などに代表される冷熱機器とするが、これに限定されるものではなく、ビル,マンションなどの建造物内に配設された給水設備や半導体製造工場の部品洗浄設備や食品用機器および食品関係設備を含むものである。
【0022】
前記制御手段は、好ましくは、前記脱気装置に設けた制御器と別個に設けた制御器とするが、前記脱気装置の制御器とすることができる。前記脱気装置が複数台の場合、別個に制御器を設けることなく、前記各脱気装置の制御器を相互通信可能に信号ラインまたはネットワークにて接続し、前記各脱気装置の各制御器間での信号のやりとりで、前記各脱気装置の制御を行うように構成するか、前記各脱気装置の制御器の信号を取り込み負荷機器を制御する制御器により制御を行うように構成することができる。
【0023】
この制御手段による制御は、予め記憶された処理手順により実行される。この処理手順は、前記処理水タンクの水位情報に基づき、前記水位が低くなるに伴い前記脱気装置への被処理水の供給量を多くする第一制御(基本制御と称することができる。)と、前記負荷機器の処理水要求量情報に基づき、前記供給量を前記水位情報のみによる供給量よりも少なくする第二制御(付加制御と称することができる。)とを行う制御プログラムを含むものである。前記第二制御は、好ましくは、前記処理水タンクの水位が設定値以上のときという条件を付けて行うように構成する。
【0024】
前記第二制御は、より具体的には、前記負荷機器の処理水要求量情報に基づき、前記処理水要求量が設定要求量より少ない時、前記供給量を前記水位に対応して設定した設定供給量よりも少なくする制御である。
【0025】
前記処理水要求量情報は、前記処理水タンクの二次側の情報であって、前記負荷機器側の直接情報、または前記負荷機器の負荷情報と称することができる。この処理水要求量情報としては、前記負荷機器を蒸気ボイラとした場合は、好ましくは、前記ボイラのヘッダ圧力情報または燃焼状態情報とするが、これに限定されるものではない。前記燃焼状態情報とは、たとえば低燃焼と高燃焼とを切り換え可能なボイラとした場合、過去一定時間における高燃焼運転の運転時間の割合が設定値を越えるとき、高燃焼運転過多状態(高負荷状態)と判定し、過去一定時間における高燃焼運転の運転時間の割合が前記設定値未満のとき、低燃焼運転過多状態(低負荷状態)と判定するように構成することができる。
【0026】
前記ボイラの水管の水位情報を前記処理水要求情報とする場合は、前記水管水位が設定値を越えるとき、低負荷状態と判定し、前記水管水位が設定値未満のとき、高負荷状態と判定するように構成する。また、前記ボイラの運転時間情報を前記処理水要求情報とする場合は、過去一定時間における運転時間を算出し、(運転時間/過去一定時間)>0.5のとき、高負荷運転状態と判定し、(運転時間/過去一定時間)<0.5のとき、低負荷運転状態と判定するように構成することができる。また、蒸気使用量を前記処理水要求情報とする場合は、単位時間当たりの蒸気供給量>ボイラ容量/2のとき高負荷運転状態と判定し、単位時間当たりの蒸気供給量<ボイラ容量/2のとき低負荷運転状態と判定するように構成することができる。さらに、処理水要求情報としては、前記ボイラへの給水ポ
ンプの稼働時間情報や、前記ボイラへの補給水情報とすることができる。
【0027】
前記脱気装置への被処理水の供給量制御につき説明する。この供給量制御は、流量調整手段によって行われ、段階的な流量制御または連続的な流量制御とすることができる。この段階制御を高流量と低流量の2段階で行う際には、高流量を被処理水の供給量の100%供給とした場合、好ましくは、低流量を50〜60%の供給量とするが、これに限定されるものではない。また、流量制御の段階を2段階でなく、高流量,中流量,低流量のように3以上の段階に制御するように構成することができる。
【0028】
2段階の流量制御を行うための前記流量調整手段は、前記脱気装置の脱気モジュールに対して第一弁と第二弁を並列に接続して、前記第一弁と前記第二弁の開閉により、前記両弁を開くことで高流量とし、前記第一弁を閉じることで低流量とするように構成することができる。しかしながら、これに限定されるものではない。すなわち、前記第一弁および前記第二弁に流量調整機能を持たせるのではなく、第一弁と並列に第二弁および流量調整部材を接続して、これらの弁の開閉により流量制御を行うことができる。前記第一弁および前記第二弁は、好ましくは、前記脱気装置内に設けるが、前記脱気装置外に設けることもできる。
【0029】
また、前記脱気装置に対して給水ポンプを設けて、前記給水ポンプの回転数を制御することで高流量と低流量の制御を行うように構成することができる。
【0030】
前記脱気装置を複数台とする場合、前記脱気装置への被処理水の供給量(通水量)制御は、被処理水の供給量を全数同じとする制御とするが、各脱気装置への供給量を異ならせる制御とすることができる。この場合の2段階の流量調整手段は、前記各脱気装置毎に前記第一弁および前記第二弁を設ける構成か、前記給水ポンプを設ける構成とすることができる。前記給水ポンプによる場合は、複数または全数の脱気装置に対して共通の給水ポンプを設けるか、前記各脱気装置毎に給水ポンプを設けることによって流量を調整可能である。
【0031】
さらに、この実施の形態においては、好ましくは、前記脱気装置の運転開始時に高流量運転(高流量を定格運転とした場合、定格負荷運転と称することができる。)を行う前記脱気装置の目詰まり防止制御を行うように構成する。これは、つぎの理由による。この実施の形態の脱酸素システムは、前記のように被処理水の供給量を低流量側に制御する。その結果、前記脱気装置に目詰まりを生じやすくなる。そこで、前記脱気装置の運転開始時に高流量運転とすることで、目詰まりを抑制できる。この運転開始時の高流量運転に代えて、低流量運転の継続時間が所定時間となったとき高流量運転を行うか、一定時間間隔などの所定時間間隔で定期的に高流量運転を行うように構成することができる。
【0032】
この目詰まり防止運転を複数台の脱気装置を用いるシステムに適用する場合、運転開始時に高流量運転とする脱気装置を全数とするのではなく、その一部(1台または複数台)として、高流量運転とする脱気装置をローテーションすることで、特定の脱気装置の目詰まりを防止することができる。
【実施例1】
【0033】
以下、この発明の実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この実施例1に係る脱酸素システムの概略構成図であり、図2は、同実施例1の被処理水の供給量の制御を説明するタイムチャートであり、図3は、同実施例1の制御手順の要部を説明するフローチャート図である。
【0034】
(実施例1の構成)
この実施例1に係る脱酸素システムは、互いに並列に接続される同じ構成の3台の第一〜第三脱気装置1A,1B,1C(たとえば各脱気装置の最大容量を5.0t/hとする。)からなる脱気装置1と、この脱気装置1にて生成される処理水を貯留する処理水タンク2と、この処理水タンク2内の処理水を使用する負荷機器としての6台の蒸気ボイラ3,3,…(たとえば、各蒸気ボイラの最大容量を2.5t/hとする。)と、前記処理水タンク2の水位情報および前記蒸気ボイラ3,3,…の処理水要求量情報とに基づいて前記各脱気装置1の運転状態を制御する第一制御器4とを主要部として備える。
【0035】
前記脱気装置1は、軟水器5と被処理水ライン(以下、ラインは、経路または流路と称することができる。)6,6,…によってそれぞれ接続されている。前記各脱気装置1と前記処理水タンク2とは、前記各脱気装置1から処理水を供給する第一処理水ライン7,7,…によって接続されている。
【0036】
前記各蒸気ボイラ3は、互いに並列接続され、前記処理水タンク2とは、前記各脱気装置1から処理水を供給する第二処理水ライン8,8,…によって接続されている。また、前記各蒸気ボイラ3は、それぞれ第一蒸気ライン9,9,…と、蒸気ヘッダ10と、第二蒸気ライン11とにより蒸気使用設備(図示省略)と接続されている。
【0037】
前記脱気装置1は、周知の構成の膜式脱気装置であるが、供給された被処理水を脱気処理する脱気手段としての膜モジュール(図示省略)と、前記膜モジュール内を真空吸引する水封式真空ポンプ(図示省略)などを備えている。前記膜モジュールは、中空糸状の気体透過膜(図示省略)を容器に収容したものとして構成されており、膜モジュールの内部は気体透過膜により液相側と気相側に区画されている。この膜モジュールは、その液相側には前記各被処理水ライン6が接続されており、またその気相側には真空吸引ライン(図示省略)を介して前記水封式真空ポンプが接続されている。したがって、前記膜モジュール内における被処理水の流通過程において、前記水封式真空ポンプにより気体透過膜を介して膜モジュール内を真空吸引し、被処理水中の溶存気体を吸引除去し、脱気処理された処理水を前記各第一処理水供給ライン7を介して前記処理水タンク2へ供給する構成となっている。
【0038】
そして、前記各脱気装置1A,1B,1Cには、前記膜モジュールへの被処理水の供給量を100%通水の高流量と50%通水の低流量とに制御する流量調整手段としての流量調整装置12を内蔵している。この流量調整装置12は、互いに並列接続される第一弁13および第二弁14とから構成され、前記第一弁13および前記第二弁14を開くことにより前記高流量とし、前記第一弁13を閉じ前記第二弁14を開くことで、前記低流量とするように構成している。この実施例1では、前記第一弁13および前記第二弁14の開閉により流量調整機能をなす。
【0039】
つぎに、この実施例1の制御構成について説明する。前記各脱気装置1A,1B,1Cは、前記各第一弁13,前記各第二弁14,前記各水封式真空ポンプなどを制御する個別制御器としての第二制御器15を備える。そして、前記第一制御器4は、前記処理水タンク2に設けた水位センサ16の水位情報および前記蒸気ボイラ3,3,…処理水要求量情報に基づき、予め記憶され脱気制御プログラム(図3参照)に従い、前記各第二制御器15に指令を送ることによって、前記各脱気装置1A,1B,1Cを高流量運転,低流量運転,停止に制御する。前記脱気制御プログラムは、前記処理水タンク2の水位情報に基づき、前記水位が低くなるに伴い前記脱気装置1への被処理水の供給量を多くする第一制御と、前記ボイラ3の処理水要求量情報に基づき、前記供給量を前記水位情報のみによる供給量よりも少なくする第二制御とを行う制御プログラムを含む。
【0040】
この実施例1では、前記処理水要求量情報は、図2に示すように、前記蒸気ヘッダ10
内の圧力変動に起因する燃焼状態情報としている。すなわち、過去一定時間における高燃焼運転の運転時間の割合が設定値を越えるとき、高燃焼運転過多状態(高負荷状態)と判定して前記第一制御を行う。また、過去一定時間における高燃焼運転の運転時間の割合が前記設定値未満のとき、低燃焼運転過多状態(低負荷状態)と判定して前記第二制御を行う。
【0041】
前記水位センサ16は、水圧を利用して水位を検出する構成のもので、前記処理水タンク2の底部近傍に設置し、前記処理水タンク2内の処理水の水位を検出し、この検出信号を前記第一制御器4へ出力する。
【0042】
また、前記脱気制御プログラムは、図3に示すように、前記各脱気装置1の目詰まりを防止する目詰まり防止プログラムを含んでいる。この目詰まり防止プログラムは、本脱気システムの運転開始時に高流量運転を行う制御である。前記システムの運転開始の判定は、前記第一制御器4に付設の運転操作スイッチ23のシステム運転開始操作などの前記第一制御器4からの指令,または前記各脱気装置1が有する制御に基づき行う。また、高流量運転は、前記脱気装置1の全てを同時に行うことができる。
【0043】
また、前記各蒸気ボイラ3は、高燃焼と低燃焼と運転停止との3位置燃焼制御や各蒸気ボイラ3へ処理水を供給するための給水ポンプ(図示省略)制御を個別に行う第三制御器17をそれぞれ備え、各第三制御器17は、ボイラの台数制御を行う第四制御器18と接続されている。そして、前記第四制御器18は、前記蒸気使用設備からの蒸気要求量に基づき、予め記憶したボイラ制御プログラムにより、前記蒸気ボイラ3,3,…の台数制御を行うように構成されている。前記ボイラ制御プログラムは周知のものとすることができ、たとえば、前記蒸気要求量を蒸気ヘッダ10の圧力を検出する圧力センサ19を設け、この検出圧力に応じて前記蒸気ボイラ3,3,…の運転台数を設定するプログラムとしている。この実施例1では、複数台の前記蒸気ボイラ3,3,…が前記検出圧力に応じて同時に停止,低燃焼,高燃焼を行うものとしている。
【0044】
また、この実施例1においては、前記軟水器5へ原水を供給する原水供給ライン20に原水の硬度を検出する硬度センサ21および原水の温度を検出する温度センサ22を設け、これらのセンサによる検出信号を前記第一制御器4に入力して前記各脱気装置1を制御するように構成している。なお、前記原水供給ライン20またはその上流に前記軟水器5へ原水を圧送するためのポンプシステム(図示省略)を備えている。
【0045】
(実施例1の動作)
つぎに、前記実施例1に係る前記脱酸素システムの動作について説明する。まず、前記原水供給ライン20により供給される原水は、前記軟水器5において、イオン交換により軟水化処理される。この軟水は、被処理水として前記第一処理水ライン6を通して前記脱気装置1へ供給される。脱気により生成された処理水は、前記第二処理水ライン7を通して前記処理水タンク2へ供給され、ここに貯留される。
【0046】
図2を参照して、前記各蒸気ボイラ3の稼働により、前記蒸気使用設備の蒸気使用量に基づき、前記蒸気ヘッダ10内の圧力は、図2のD線のように変化し、これに伴い、前記蒸気ボイラ3の燃焼状態は、E線のように変化し、前記蒸気ボイラ3,3,…の処理水要求量が変化する。この処理水要求量に応じた量の処理水が前記処理水タンク2から必要とする前記各蒸気ボイラ3へ供給される。その結果、各蒸気ボイラ3への処理水の供給により、前記処理水タンク2内の水位がF線のように変動する。前記第一制御器4は、目詰まり防止運転を行うとともに、前記水位と前記処理水供給量とに基づき、前記脱気装置1への被処理水供給量を制御する。
【0047】
図3を参照して、S1において、システムの運転開始が判断されると、S2へ移行して、前記各脱気装置1A,1B,1Cの各第一弁13および各第二弁14を開いて、高流量運転(100%通水)を行う。この目詰まり防止運転により、システムの運転開始時には必ず高流量運転が行われるので、前記第二制御により被処理水の供給量が抑制されるにも拘わらず、目詰まりを低減することができる。
【0048】
S1にてNOが判定されると、S3へ移行して、被処理水供給量の制御である前記第一制御および前記第二制御が行われる。この被処理水供給量の制御について、前記処理水要求量情報を考慮しない(前記第二制御を行わない)対比例と比較して図2および図3に基づき説明する。
【0049】
図2を参照して、前記処理水タンク2の水位がF線のように変化したとすると、前記対比例による制御は、つぎのように行われる。すなわち、前記処理水タンク2の水位が通水開始を設定する給水開始の第一水位Lを切ると、前記脱気装置1は、各装置の前記第一弁13および前記第二弁14を開いて、高流量運転(100%通水)を行う。そして、水位が第二水位Mに上昇すると前記第一弁13のみを閉じて、低流量運転(50%通水)を行う。水位が第三水位Hに上昇すると前記第一弁13および前記第二弁14を閉じて、通水を停止する。
【0050】
以上は、前記処理水要求量情報を考慮しない制御であるが、この実施例1では前記処理水要求量情報を考慮した制御を行う。すなわち、S3において、前記蒸気ボイラ3の燃焼状態が、E線の高燃焼過多状態の場合、すなわち低燃焼過多状態でないと判定されると、S4へ移行して前記処理水要求量情報を考慮しない制御である第一制御を行う。この第一制御の被処理水供給量制御は、H線にて示される。
【0051】
S3にて、前記低燃焼過多状態が判定されると、S5へ移行して前記第二制御が行われる。F線およびH線を参照して、前記処理水タンク2の水位が通水開始を設定する第一水位Lを切ると、前記脱気装置1は、各装置の前記第一弁13のみを開いて、低流量運転(50%通水)を行う。そして、水位が第二水位Mに上昇しても低流量運転を継続し、水位が第三水位Hに上昇後、設定時間が経過するか、前記処理水タンク2の水位が前記第二水位Mより高く、前記第三水位Hよりも低い設定水位となると前記第一弁13および前記第二弁14を閉じて、通水を停止する。
【0052】
このように、前記処理水要求量情報を考慮しない制御と比較して、一点鎖線J,で囲まれる時間だけ前記脱気装置1への被処理水供給量が低流量とされ、減少することになる。その結果、前記処理水タンク2へ供給される処理水の溶存酸素濃度が減少する。また、一点鎖線Kに示すように、低流量運転を延長することで、前記第一制御により低流量とされることにより、前記処理水タンク2への供給量が不足しないようにしている。
【0053】
このように、この実施例1では、前記第二制御を行うので、前記第二制御を行わないシステムと比較して、前記処理水タンク2に貯留される処理水の溶存酸素濃度を低減することができる。
【0054】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではなく、前記脱気装置1は複数台でなく、1台で構成することができる。また、前記蒸気ボイラ3は、複数台でなく、1台とすることができ、複数台の運転制御パターンは、前記実施例1に限定されない。さらに、前記脱気装置1の台数や前記流量調整装置12の構成は、種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の実施例1に係る脱酸素システムの概略構成図である。
【図2】同実施例1の制御動作を説明する図である。
【図3】同実施例1の要部制御手順を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B,1C 脱気装置
2 処理水タンク
3 蒸気ボイラ(負荷機器)
4 制御器(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱気装置と、この脱気装置にて生成される処理水を貯留する処理水タンクと、この処理水タンクの処理水を使用する負荷機器と、前記処理水タンクの水位情報に基づき前記水位が低くなるに伴い前記脱気装置への被処理水の供給量を多くする制御手段とを備える脱酸素システムであって、
前記制御手段は、前記負荷機器の処理水要求量情報に基づき、前記供給量を前記水位情報のみによる供給量よりも少なくする制御を行うことを特徴とする脱酸素システム。
【請求項2】
脱気装置と、この脱気装置にて生成される処理水を貯留する処理水タンクと、この処理水タンクの処理水を使用する負荷機器と、前記処理水タンクの水位情報に基づき前記水位が低くなるに伴い前記脱気装置への被処理水の供給量を多くする制御手段とを備える脱酸素システムであって、
前記制御手段は、前記負荷機器の処理水要求量情報に基づき、前記処理水要求量が設定要求量より少ない時、前記供給量を前記水位に対応して設定した設定供給量よりも少なくする制御を行うことを特徴とする脱酸素システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記脱気装置の運転開始時に高流量運転を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の脱酸素システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−229542(P2008−229542A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74802(P2007−74802)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】