説明

脳切片作製用切断装置及び脳切片の作製法

【課題】
煩雑で高価な装置を使う必要なく、しかも脳の大きさや脳形状等を気にすることなく、安定した形で脳を固定でき、かつ、脳の一定軸に対する垂直な切断面を有する脳切片を容易に短時間で作製可能とすること。
【解決手段】
脳切片作製用切断装置であって、
脳を正置状態で受ける脳固定板を有する本体部と、
前記脳固定板が当該脳固定板の長手方向にスライド可動できるように、当該脳固定板の幅間隔で一対である壁板を有する切断部と
を備えることを特徴とする装置及び脳切片の作製法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳切片作製用切断装置及び脳切片の作製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳切片作製用切断装置としては、例えば、マウスやラット用の「ブレインスライサ」、「ブレインマトリックス」等と呼ばれているような、脳の形にくりぬかれたアクリル、ステンレススチール、アルミ、亜鉛製のブロック内に脳サンプルを入れ、当該ブロック内に等間隔(1mm、2mm又は3mm)にスリットが刻まれており、当該スリット内にカミソリ刃を落とすだけで新鮮な脳のスライスが得られる製品が知られている(例えば、非特許文献1及び2参照。)。
【0003】
また他には、不規則な組織の塊を、断面がCTやMRI、PET走査に用いる走査面と同じ方向を持つ板状に切り分けるための組織包埋装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。当該装置では、包埋装置を用いて、組織の塊をアルギニン酸塩プラスチックポリマーに包埋することにより、組織の塊は形の定まった整形外表面を持たせて、断面装置に順応させている。このようにして、例えば、脳、腎臓等の不規則な表面を持つ組織と臓器とを再現可能にかつ任意の方向に切断することが可能としている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】http://www.muromachi.com/products/aster.html
【非特許文献2】http://www.muromachi.com/products/btree.html
【特許文献1】特表2002-533670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の前者装置では、脳の背腹を逆にした状態で、凡そ合致する脳形状を有する鋳型の凹部に脳背面の湾曲部側から脳を設置し固定する必要があるために、例えば、各種の実験動物を用いた薬剤の毒性試験のような、多様な実験動物の各発達段階等に応じた脳の大きさや、発達異常等で前後方向や左右方向で形態的な異常が存在する脳形状
等に合致する鋳型の凹部を有するものを予め多数準備しておかなければならず、研究者・作業者等の実験準備上での負担となっていた。同時に、上記のように合致する鋳型の凹部を有するものが見出せない場合には、安定した形で脳を鋳型の凹部に固定できないために、脳の一定軸に対する垂直な切断面を有する脳切片を作製することが容易ではなかった。
一方、上記の後者方法では、組織を包埋する操作が必須となるために、煩雑で高価な装置を使う必要があり、また研究者・作業者等による当該装置における操作法の修得や、実際に脳切片を作製する作業等に多くの時間がかかってしまう等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、かかる状況下において鋭意検討した結果、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.脳切片作製用切断装置であって、
脳を正置状態で受ける脳固定板を有する本体部と、
前記脳固定板が当該脳固定板の長手方向にスライド可動できるように、当該脳固定板の幅間隔で一対である壁板を有する切断部と
を備えることを特徴とする装置(以下、本発明装置と記すこともある。);
2.前記切断部が有する一対である壁板は、脳切断のための切断部材の直線上下動を正確にかつ滑らかに案内可能とする端側部を有する壁板であることを特徴とする前項1記載の装置;
3.前記切断部が有する一対である壁板は、脳の大きさに合った脳固定板の幅間隔に応じて設置可能な一対である壁板であることを特徴とする前項1乃至2のいずれかの前項記載の装置;
4.前記本体部が有する脳固定板が、スライドガラスであることを特徴とする前項1乃至3のいずれかの前項記載の装置;
5.前記本体部は、前記脳固定板の表面上に正置された脳の底面を上方から観察可能とするためのミラー板を具備することを特徴とする前項1乃至4のいずれかの前項記載の装置;
6.前記本体部は、前記脳固定板の表面上に正置された脳の底面を上方から観察可能とするための照明手段を具備することを特徴とする前項1乃至5のいずれかの前項記載の装置;
7.前記本体部は、前記脳固定板のスライド方向に対して垂直方向に、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線を具備することを特徴とする前項1乃至6のいずれかの前項記載の装置;
8.前記本体部は、前記脳固定板の長手方向に沿った中央に、脳正中軸に対応する基準線を具備することを特徴とする前項1乃至7のいずれかの前項記載の装置;
9.脳切片の作製法であって、
(1)脳切片作製用切断装置が備える本体部の脳固定板の表面上に脳を正置させる第一工程、
(2)前記脳固定板を長手方向にスライド可動させて、脳切片切断のための部位を特定する第二工程、
(3)脳切断のための切断部材を、脳切片作製用切断装置が備える切断部の壁板であって前記脳固定板が当該脳固定板の長手方向にスライド可動できるように当該脳固定板の幅間隔で一対である壁板の端側部に沿って直線上下動をさせることにより、脳切断面を得る第三工程
(4)第二工程及び第三工程を繰り返すことにより、脳切片を切り出す第四工程
を有することを特徴とする方法(以下、本発明方法と記すこともある。);
10.第一工程における前記脳固定板の表面が、予め流動性を有する固着材が薄く広げた後の脳固定板の表面であることを特徴とする前項9記載の方法;
11.前記固着材が、寒天溶液又はゼラチン溶液であることを特徴とする前項10記載の方法;
12.第一工程において、脳の底面に存在する脳正中軸を、脳切片作製用切断装置が備える本体部の前記脳固定板の長手方向に沿った中央に具備する脳正中軸に対応する基準線に合わせて、前記脳固定板の表面上に脳を正置させることを特徴とする前項8乃至11のいずれかの前項記載の方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明装置及び本発明方法により、煩雑で高価な装置を使う必要なく、しかも脳の大きさや脳形状等を気にすることなく、安定した形で脳を固定できるために、脳の一定軸に対する垂直な切断面を有する脳切片を容易に短時間で作製することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、脳切片作製用切断装置及び脳切片の作製法に関する。
まず本発明装置について説明するが、本発明装置は、脳切片作製用切断装置であって、脳を正置状態で受ける脳固定板を有する本体部と、前記脳固定板が当該脳固定板の長手方向にスライド可動できるように、当該脳固定板の幅間隔で一対である壁板を有する切断部とを備えることを特徴としている。
【0009】
本体部は、脳を正置状態で受ける脳固定板を当該本体部のスライド面部の上に有している。脳の背面は丸く湾曲しているが、これに対して脳の底面は前端から後端までが凡そ一定な平面を形成しており、当該脳底面を基準面として平面上に安定して脳を置くことが可能である。ここで「正置状態」とは、当該脳底面を基準面として平面上に脳が安定して置かれた状態を意味している。
【0010】
脳固定板は、その短手方向に脳の大きさに合った幅を有し、かつ、その長手方向に前記本体部のスライド面部の上をスライド可動に適するような長さを有する。勿論、当該スライド可動に対して、多様な実験動物の脳の大きさや形状等は何ら影響を及ぼすものではない。
【0011】
本体部のスライド面部及び脳固定板は、例えば、後述するような、前記脳固定板の表面上に正置された脳の底面を上方からミラー板等を介して観察可能とするために、例えば、アクリル、ガラス等の透明度の高い材料からなる部材であることがよい。より具体的には、好ましい脳固定板としては、スライドガラス等を挙げることができる。
【0012】
切断部は、前記脳固定板の幅間隔で一対である壁板を有している。当該壁板は、脳の大きさに合った幅を有する脳固定板の幅間隔に応じて前記本体部のスライド面部の上に平行状態からなる一対である状態で垂直に設置されている。さらに当該一対である壁板は、前記本体部のスライド面部の上に固定されていてもよいが、脳の大きさに合った幅を有する脳固定板の幅間隔に応じてスライド可動させた後に固定可能となるような手段を有する設置可能な一対である壁板であってもよい。
【0013】
前記切断部が有する一対である壁板は、例えば、カミソリ、ナイフ等の脳切断のための切断部材(切断刃)の直線上下動を正確にかつ滑らかに案内可能とする端側部を有しており、当該端側部の存在によって切断部材(切断刃)を正しく配向させることができ、これにより脳切片の正しい切断面を正確に得ることが可能となる。
【0014】
本発明装置において、前記本体部は、前記脳固定板の表面上に正置された脳の底面を上方から観察可能とするためのミラー板を具備することがよい。このようなミラー板は、脳切片切断のための部位を特定するためのものであるため、歪及び濁りの少なくかつフラットな表面からなるものがよい。
本体部のスライド面部及び脳固定板の下部(下層)に設置されたミラー板に写し出された脳の底面(即ち、前記脳固定板の表面上に正置された脳の底面)の構造を上方から観察しながら、後述するような案内基準線(即ち、前記脳固定板のスライド方向に対して垂直方向に具備された、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線:例えば、図1中の(1)〜(7)で示された案内基準線)に基づいて脳切片切断のための部位を特定することができる。
【0015】
本発明装置において、前記本体部は、前記脳固定板の表面上に正置された脳の底面を上方から観察可能とするための照明手段を具備することがよい。
前記本体部の内部(好ましくは下部(下層))に淡い光を与える照明手段、例えば、シャーカッセン(フィルムを透過光で見るための蛍光板)のようなものを光源の前に設置することにより脳底面が適切に照らされ、その像が鏡に適正に映し出されるために、脳切片の切断をより正確に行える。因みに、照明が強い場合には目に入る光量が多くなり、脳切片の切断を困難にする虞があるため、すりガラス等で光源を覆い光量を弱めて使用することがよい。
【0016】
本発明装置において、前記本体部は、前記脳固定板のスライド方向に対して垂直方向に、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線を具備することがよい。当該案内基準線としては、例えば、前記切断部が有する一対である壁板における脳切断のための切断部材(切断刃)の直線上下動を正確にかつ滑らかに案内可能とする端側部の存在位置に沿った一本の糸を挙げることができる。当該糸は、ミラー板に写し出された脳切片切断のための部位を的確に特定可能とするための糸であり、観察時の邪魔にならない太さで、かつ、見やすい色であることが好ましい。また当該案内基準線は、前記本体部に細い線の傷をつけ、これに色塗りすることにより形成させてもよい。
【0017】
本発明装置において、前記本体部は、前記脳固定板の長手方向に沿った中央に、脳正中軸に対応する基準線を具備することがよい。当該基準線としては、例えば、前記切断部が有する一対である壁板から等距離に存在する一本の糸を挙げることができる。当該糸は、ミラー板に写し出された脳切片切断のための部位を的確に特定可能とするための糸であり、観察時の邪魔にならない太さで、かつ、見やすい色であることが好ましい。また当該基準線は、前記本体部に細い線の傷をつけ、これに色塗りすることにより形成させてもよい。
【0018】
次に本発明方法について説明するが、本発明方法は、脳切片の作製法であって、(1)脳切片作製用切断装置が備える本体部の脳固定板の表面上に脳を正置させる第一工程、(2)前記脳固定板を長手方向にスライド可動させて、脳切片切断のための部位を特定する第二工程、(3)脳切断のための切断部材を、脳切片作製用切断装置が備える切断部の壁板であって前記脳固定板が当該脳固定板の長手方向にスライド可動できるように当該脳固定板の幅間隔で一対である壁板の端側部に沿って直線上下動をさせることにより、脳切断面を得る第三工程、(4)第二工程及び第三工程を繰り返すことにより、脳切片を切り出す第四工程、を有することを特徴とする方法(即ち、本発明方法)等も含み、これをも提供するものである。
【0019】
本発明方法では、第一工程における前記脳固定板の表面が、予め流動性を有する固着材が薄く広げた後の脳固定板の表面であることがよい。前記固着材としては、透明性を有しかつ簡単に切断可能であり、さらに脳への浸透性が低く脳に対して影響の少ないものがよい。具体的には例えば、寒天溶液又はゼラチン溶液等を挙げることができる。前記固着材として寒天溶液を用いる場合には、約3〜3.5重量%の寒天溶液等が好ましく挙げられる。
寒天溶液の具体的な調製方法としては、例えば、ナカライテスク社製の寒天末1gを量り取り、これに30mlの蒸留水を加える。得られた混合物を約70℃まで加熱し、攪拌しながら寒天末を全て溶解させる。完全溶解後、約45℃まで溶液内の温度を下げ、これを約1〜2ml分、前記脳固定板の表面に薄く広げる。次いで素早く、当該脳固定板の表面上に脳を正置させる。この場合、後述のように、脳の底面に存在する脳正中軸を、脳切片作製用切断装置が備える本体部の前記脳固定板の長手方向に沿った中央に具備する脳正中軸に対応する基準線に合わせて、前記脳固定板の表面上に脳を正置・固着させることが好ましい。
【0020】
本発明方法では、第一工程において、脳の底面に存在する脳正中軸を、脳切片作製用切断装置が備える本体部の前記脳固定板の長手方向に沿った中央に具備する脳正中軸に対応する基準線に合わせて、前記脳固定板の表面上に脳を正置させればよい。
【0021】
本発明方法では、第ニ工程において、前記脳固定板を長手方向にスライド可動させて、脳切片切断のための部位を特定すればよい。具体的には例えば、本体部が前記脳固定板の表面上に正置された脳の底面を上方から観察可能とするためのミラー板を具備する場合には、本体部のスライド面部及び脳固定板の下部(下層)に設置されたミラー板に写し出された脳の底面(即ち、前記脳固定板の表面上に正置された脳の底面)の構造を上方から観察しながら、案内基準線(即ち、前記脳固定板のスライド方向に対して垂直方向に具備された、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線:例えば、図1中の(1)〜(7)で示された案内基準線)に基づいて脳切片切断のための部位を特定することができる。
【0022】
本発明方法では、第三工程において、脳切断のための切断部材を、脳切片作製用切断装置が備える切断部の壁板であって前記脳固定板が当該脳固定板の長手方向にスライド可動できるように当該脳固定板の幅間隔で一対である壁板の端側部に沿って直線上下動をさせることにより、脳切断面を得ればよい。具体的には例えば、切断部が有する一対である壁板は、例えば、カミソリ、ナイフ等の脳切断のための切断部材(切断刃)の直線上下動を正確にかつ滑らかに案内可能とする端側部を有しており、当該端側部の存在によって切断部材(切断刃)を正しく配向させることができ、これにより脳切片の正しい切断面を正確に得ることが可能となる。
【0023】
本発明方法では、第四工程において、前記の第二工程及び前記の第三工程を繰り返すことにより、脳切片を切り出せばよい。前記の第二工程における脳固定板の長手方向でのスライド可動の幅を適宜調整することにより、所望の厚さの脳切片を切り出すことが可能であり、また所望の脳切片切断のための部位で脳切片を切り出すことも可能である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明をより詳細に説明するため、実施例を挙げて説明するが本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1
本発明装置及び本発明方法の実施態様の一つを図1〜4のとおり例示する。
【0026】
まず、化学物質が投与された実験動物を安楽死させ、当該実験動物の頭部皮膚を正中より左右に切開し、ほねバサミを用いて頭蓋骨を切除した後、慎重に脳を摘出する。摘出した脳は、生のまま又はホルマリン液等により固定して用いる。摘出された脳の大きさは、週齢で異なるが、8週齢のラットでは約21mm長×15mm幅×10mm厚である。このようにして脳切片作製のための脳を調製した。
次いで、本体部(148mm長×148mm幅×27.6mm厚)から取り外された脳固定板であるスライドガラス(76.1mm長×26mm幅×1.2mm厚)(図3中にある(4))の表面に少量(約1〜2ml)の溶解した寒天溶液(約45℃)を薄く広げた後、脳底部において観察された脳正中軸(図1中の左図にある(8))を、前記固定板の長手方向に沿った中央に存在させた基準線(図3中にある(5))に一致させて脳(正中)を正置状態(図4中の左上図)で固着させる(図4中の右上図)。
当該脳固定板を本体部に設置した後、本体部のミラー板(89mm長×89mm幅×2mm厚)(図3中にある(2))に写し出される脳底部の目標構造(図1中の右図)に、本発明装置が備える切断部の壁板(26.6mm長×13.1mm幅×2.2mm厚)(図3中にある(3))の端側部が一致するように、前記脳固定板をその長手方向にスライドさせる。このようにして、脳切片切断のための部位(図1中の(1)〜(7))を特定する。
脳切断のための切断部材であるカミソリを、前記切断部の壁板であって前記脳固定板が当該脳固定板の長手方向にスライド可動できるように当該脳固定板の幅間隔で一対である壁板(図3中にある(3))の端側部に密着させながら、脳に対する圧迫を少なく保った状態で直線上下動をさせる(図4中の左下図)ことにより、脳切断面(図2中の(1)〜(7))を得る。
さらに、このような操作を繰り返すことにより、所望の脳切片が容易に短時間で切り出される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明装置及び本発明方法により、煩雑で高価な装置を使う必要なく、しかも脳の大きさや脳形状等を気にすることなく、安定した形で脳を固定できるために、脳の一定軸に対する垂直な切断面を有する脳切片を容易に短時間で作製することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、ラット脳の脳切片の切断部位を示した図である。左の図は、脳上側からの脳切片の切断部位を示した図であり、また右の図は、脳底側からの脳切片の切断部位を示した図である。尚、図中の(1)〜(7)は脳固定板のスライド方向に対して垂直方向に、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線を表しており、また図中の(8)は脳正中軸に対応する基準線を表している。
【図2】図2は、ラット脳の脳切片の切断部位を示した図である。尚、図中の(1)〜(7)は脳固定板のスライド方向に対して垂直方向に、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線を表している。
【図3】本発明装置の一例の構成を示した図である。当該図には、上段に上面図、左下段に側面図、右下段に正面図の順に3つの図面を含んでいる。尚、図中の(1)はスライド面部を表しており、(2)はミラー板を表しており、(3)は壁板を表しており、(4)は脳固定板を表しており、(5)は案内基準線(即ち、前記脳固定板のスライド方向に対して垂直方向に具備された、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線)及び案内基準線(即ち、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線)を表しており、(6)は照明装置を表している。
【図4】本発明装置及び本発明方法の一例の概要を示した図(写真)である。左上段は、脳を正置状態で受ける脳固定板を有する本体部、及び、当該脳固定板の表面上に正置された脳を示した写真であり、右上段は、脳固定板の表面上に脳が正置された本発明装置の全景を示した写真であり、左下段は、脳切断のための切断部材を脳切片作製用切断装置が備える切断部の壁板であって前記脳固定板が当該脳固定板の長手方向にスライド可動できるように当該脳固定板の幅間隔で一対である壁板の端側部に沿って直線上下動をさせることにより、脳切断面を得る工程を示した写真であり、右下段は目的とする部位でスライスされた脳切片を示した写真である。
【符号の説明】
【0029】
(1)スライド面部
(2)ミラー板
(3)壁板
(4)脳固定板
(5)案内基準線(即ち、前記脳固定板のスライド方向に対して垂直方向に具備された、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線)及び案内基準線(即ち、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線)
(6)照明装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳切片作製用切断装置であって、
脳を正置状態で受ける脳固定板を有する本体部と、
前記脳固定板が当該脳固定板の長手方向にスライド可動できるように、当該脳固定板の幅間隔で一対である壁板を有する切断部と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記切断部が有する一対である壁板は、脳切断のための切断部材の直線上下動を正確にかつ滑らかに案内可能とする端側部を有する壁板であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記切断部が有する一対である壁板は、脳の大きさに合った脳固定板の幅間隔に応じて設置可能な一対である壁板であることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかの請求項記載の装置。
【請求項4】
前記本体部が有する脳固定板が、スライドガラスであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの請求項記載の装置。
【請求項5】
前記本体部は、前記脳固定板の表面上に正置された脳の底面を上方から観察可能とするためのミラー板を具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの請求項記載の装置。
【請求項6】
前記本体部は、前記脳固定板の表面上に正置された脳の底面を上方から観察可能とするための照明手段を具備することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの請求項記載の装置。
【請求項7】
前記本体部は、前記脳固定板のスライド方向に対して垂直方向に、脳切片切断のための部位を特定可能とする案内基準線を具備することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの請求項記載の装置。
【請求項8】
前記本体部は、前記脳固定板の長手方向に沿った中央に、脳正中軸に対応する基準線を具備することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかの請求項記載の装置。
【請求項9】
脳切片の作製法であって、
(1)脳切片作製用切断装置が備える本体部の脳固定板の表面上に脳を正置させる第一工程、
(2)前記脳固定板を長手方向にスライド可動させて、脳切片切断のための部位を特定する第二工程、
(3)脳切断のための切断部材を、脳切片作製用切断装置が備える切断部の壁板であって前記脳固定板が当該脳固定板の長手方向にスライド可動できるように当該脳固定板の幅間隔で一対である壁板の端側部に沿って直線上下動をさせることにより、脳切断面を得る第三工程
(4)第二工程及び第三工程を繰り返すことにより、脳切片を切り出す第四工程
を有することを特徴とする方法。
【請求項10】
第一工程における前記脳固定板の表面が、予め流動性を有する固着材が薄く広げた後の脳固定板の表面であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記固着材が、寒天溶液又はゼラチン溶液であることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
第一工程において、脳の底面に存在する脳正中軸を、脳切片作製用切断装置が備える本体部の前記脳固定板の長手方向に沿った中央に具備する脳正中軸に対応する基準線に合わせて、前記脳固定板の表面上に脳を正置させることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかの請求項記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−38466(P2006−38466A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214118(P2004−214118)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】