説明

脳波とfMRIとの同時連続測定システム、それに用いるクロック・デバイダ、このクロック・デバイダを備えた脳波測定装置及びfMRI装置

【課題】脳機能計測(fMRI)を行うと共に、同時に脳波測定を行う。
【解決手段】脳波とfMRIとの同時連続測定システムである。本発明のシステムは、脳波を測定する脳波測定装置と、磁気共鳴イメージングによって脳機能計測を行うfMRI装置とを備え、fMRI装置の時計機能に基づいて、脳波測定装置における脳波データを収集するサンプリングタイミングで、fMRI装置におけるfMRIデータを収集するための傾斜磁場変化における画像アーチファクトの波形が基線上になるように、脳波サンプリングパルスを発生する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用画像診断装置である磁気共鳴イメージング(MRI)装置を用いて脳機能計測(functional MRI:機能MRIもしくはfMRIと称する)を行うと共に、これと同時に生体現象としての脳波測定を行うための、脳波とfMRIとの同時連続測定システムに関するものであり、更に、それに用いるクロック・デバイダ、このクロック・デバイダを備えた脳波測定装置及びfMRI装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
今日における脳科学の目的は、脳という器官がいかにして「心」を創造するのかということを解き明かすことであり、この解き明かした結果を脳と心の医学に役立てることにあろう。さて、この目的を達成するため、脳を研究するためのいくつかの方法論がある。現在において主流であるのは、分子遺伝学的方法および画像解析的方法である。このうち、後者の画像解析的方法の目的は、脳機能、すなわち知覚、注意、記憶等の認知機能が脳のどこでどのように実現されているか、ということを探求することである。
【0003】
さて、これまでの歴史の中で、この脳機能を画像解析的に研究する測定方法として、表1に示すように、種々の測定方法が存在する。これらの測定方法は、表1の上段に示されている電気・磁気的活動を測定する方法と、表1の下段に示されている血流動態を測定する方法とに分けられる。このうちの前者の方法においては、時間分解能が良好であるが、空間分解能が悪く、後者の方法はその逆であることが理解される。さらに、数々の脳機能の根本は、無数のニューロン群の電気活動からなっている。従って、脳内の電気活動を直接測定して、脳機能を検討することが最も望ましい。この観点からすると、血流動態は、脳活動を観測する上で、間接的測定方法といわなければならない。
【0004】
【表1】

【0005】
ところで、知覚、認知、記憶等の個々の単位的脳機能は、極めて短時間のうちに完了する。つまり、数10msec から数100msec のうちに、脳機能は完了してしまう。従って、脳機能研究においては、この瞬間に生じる脳機能を捕捉できる能力を持つ、何等かの画像測定方法を当然使用すべきである。つまり、msec 単位の時間分解能を有する測定法が必要となる。このような高速画像測定方法の要件を満たす方法は表1に2つしかない。すなわち、それは脳波と脳磁図である。
【0006】
脳磁図と異なり、長い歴史を持つ脳波研究では、これまでヒト脳機能に関する莫大な知見が集積されてきた(表2参照)。しかし、脳波も脳磁図も、その空間分解能が劣悪な上に、脳深部を検索する能力に乏しい。従って、短時間に脳機能の電気・磁気現象を捕捉することができても、その現象が脳のどこでどのように生じているのかを、検討することは殆どできなかった。
【0007】
一方、脳血流動態を用いる測定方法は、脳活動を脳の断層画像上において観測すること(マッピング)が可能であるという優位点が存在する。しかし、血流動態は、脳機能活動そのもの(電気活動)ではなく、それを間接的に支えている機能(酸素、グルコース供給・消費)である。従って、血流動態の観測は、脳機能を間接的に捕えるに過ぎない。しかも、血流動態の決定的に不利な点は、時間分解能が劣悪なことである。すなわち、PET(Positron Emission Tomography :陽電子放射断層撮影法)、SPECT (Single Photon Emission Computed Tomography :単一光子放出型コンピュータ断層撮影法)等の測定方法では、雑多な認知機能の集合体を観測することしかできなかった。
【0008】
このような状況下において、新たにfMRI(functional Magnetic Resonance Imaging:機能的MRI)という測定方法が確立された。このfMRIは、血流動態を表わすBOLD(Blood Oxygen Level Dependent)信号という、血液内の還元ヘモグロビンの密度によって局所磁場変化を生じ、それに伴ってNMR(核磁気共鳴)信号が変化することを利用して、脳内賦活部位をマッピングする測定方法である。この測定方法は、他の画像法と比較して、格段に時間分解能、空間分解能に優れていることが明らかである(表1参照)。また、この測定方法によって、1秒以下の脳機能を脳の断層画像上に描き出すことが可能になった。
【0009】
さて、従来のfMRI実験では、運動、認知、注意、記憶課題などのもっぱらヒトの行動指標に基づく統計処理を通じて、上記の指標に相関する脳内賦活部位を検討してきた。しかしながら、fMRIと組み合わせたときに、脳機能解析を可能とするのは、上記のような行動指標だけではない。さまざまなヒト生理指標がfMRIの時間分解に対応する。このことに注目すれば、上記ヒト生理指標と相関する脳内賦活部位を検討すること、つまり、ヒト生理指標の脳断層画像上へのマッピングが可能となるはずである。
【0010】
特に、脳波研究は、長い歴史をもち、ヒト脳機能に関する莫大な知見集積がありながら、マッピング研究が困難であった。この脳波とfMRIとを組み合わせることによって、脳波学からみた脳研究に新たな可能性を与えることができよう。すなわち、睡眠脳波上のハンプ(hump)、スピンドル(spindle )、てんかん異常波としてのスパイク(spike )やシャープ・ウェーブ(sharp wave)、また誘発電位、事象関連電位などのさまざまな脳波現象を、MRI 断層画像上へマッピングすることが可能となる(表2参照)。このことは、従来のPETやSPECT等の方法で不可能であったことであり、脳科学研究を大いに進展させることができることが期待される。
【0011】
【表2】

【0012】
しかし、fMRIを用いた現在までの研究にあっては、この類の研究は、技術的な問題からほとんど行われていない。というのは、このような研究を可能にするには、脳波とfMRIを同時に測定しなければならないからである。
【0013】
前述した脳波とfMRIとの同時連続測定は、極めて困難なことである。すなわち、MRIのヘッドコイル内に脳波電極を装着した被験者をセットアップして、通常の方法で脳波とfMRIとの同時測定を行う場合、図17に示すような、fMRIの撮像に起因する、2000μV以上にも及ぶ巨大なアーチファクトが出現する。このような波形を詳細に検討すると、fMRIの撮像部分と非撮像部分に様相の異なるアーチファクトが存在することが確認される。非撮像部分(静磁場のみ)は、バリストカルジオグラム(Ballistocardiogram)と称するアーチファクトが出現する。このアーチファクトは、心拍動が頭部を微細に拍動させ、頭部に装着した電極と、頭部が形成する閉回路を振動させることにより、ファラディの法則に基づき起電力が生じることによるアーチファクトである。一方、fMRIの撮像中は、遥かに激しく巨大なアーチファクトが認められる。このアーチファクトは、撮像に必要な傾斜磁場の変化(GR)と電磁波(RF)とによる直接の画像アーチファクトおよびバリストカルジオグラムを加えたアーチファクトである(表3参照)。
【0014】
【表3】

【0015】
従来、このようなバリストカルジオグラムに基づくアーチファクトに対する解決方法として、(1)双極誘導、(2)ヒョース変換(Hjorth Transform)、 (3)空間フィルタ、(4)バイト・バー(Bite Bar)による頭部固定、(5)ツイストペア・ケーブル、(6)アーチファクト加算平均の減算等の手法が、提案されている。これらの方法のうち、シンプルで応用範囲の狭い双極誘導による手法ではなく、単極誘導による頭部固定法に注目して、従来放射線科における癌治療時における患部の固定に用いられてきた減圧クッション・システム(Vacuum Cushion System )を使用することによって、拍動による静磁場におけるバリストカルジオグラムを効果的に抑制することが可能となった。そして、fMRIの撮像を行っていない間隙(1〜2秒間)を利用することにより、すなわちfMRIの撮像と脳波測定とを交互に行うことにより、脳波を測定することが可能となった(図18参照)。
【0016】
しかし、fMRIの撮像と脳波測定との交互測定(図18参照)によれば、fMRIの撮像中においては、その時に発生する大きな画像アーチファクトに阻まれて、その間における適正な脳波を観察するとは困難である。この場合、自発的な、あるいはオペレータがコントロールできないような被験者の脳波現象は、前記fMRIの撮像時間内に生じる可能性も十分あるにも拘らず、巨大な画像アーチファクトに阻まれて、その脳波現象を捕えることができなくなる。従って、このような自発的脳波現象等を捕捉するためには、脳波とfMRIとの完全同時な連続測定が必要である。
【0017】
そこで、本発明者は、鋭意研究並びに試作を重ねた結果、従来における脳波とfMRIとの交互測定とは全く異なり、脳波およびfMRIを連続かつ並行して実行することができる、全く新規な脳波とfMRIとの同時連続測定システムの開発に成功した。
【0018】
すなわち、脳波とfMRIとの連続測定を実現する際に、最も大きな問題は、fMRIの撮像中における傾斜磁場の変化および電磁波照射に基づく巨大な画像アーチファクトが生じることである(図19参照)。すなわち、fMRIの撮像中には、図19に示すような2500μVに達する棘状の画像アーチファクトが認められる。なお、図19においては、1度のfMRIの撮像で、20枚のスライス撮像を行っているが、その1つ1つの棘が1枚のスライス撮像における画像アーチファクトの波形を示している。
【0019】
元来、生体信号である脳波と機械的アーチファクトとでは、それぞれの振幅、周波数が大きく異なっている。そこで、通常の脳波測定で用いるよりも遥かに高い20kHzのサンプリング周波数を用いて、前述した画像アーチファクトを詳細に観察すると、実際のfMRIによる脳波上の画像アーチファクトは、図20に示すような波形特性を有することが確認された。すなわち、図20においては、1枚のスライスを撮像する時間(100msec )に見られる画像アーチファクトの波形を示す。そして、この波形群の全てがローパス・フィルタによる処理によって、図19における画像アーチファクトの1つの棘に相当している。
【0020】
ところで、通常の脳波測定のパラメータでは、通常の脳波検査室で用いるローパス・フィルタのカットオフ周波数は100Hz程度である。このような低いカットオフ周波数では1つから数個の棘として認識される画像アーチファクトも、20kHzのサンプリング周波数のもとで、カットオフ周波数を3000Hzとすれば、図20に示すように、0〜3000Hzの変化を含む複雑な波形を呈する画像アーチファクトとして確認することができた。ここで重要なことは、このアーチファクト波形と実際のシーケンス・プログラムの内容とを比較検討すると判るのであるが、画像アーチファクト内のそれぞれの棘状コンポーネントが、プログラム内の傾斜磁場変化や、電磁波照射に精密に対応しているということである(図20参照)。
【0021】
このような比較から、次の事項がそれぞれ結論付けられる。
(1)画像アーチファクト内の殆どの棘状コンポーネントは、傾斜磁場変化に対応している。そのタイミングは、μsec 単位でプログラムされたシーケンスのタイミングと精密に一致すること。
(2)電磁波照射に対応する画像アーチファクトの振幅は、傾斜磁場変化に対応する画像アーチファクトの振幅と比較すると、遥かにその振幅は小さい。すなわち、傾斜磁場変化による画像アーチファクトが、40,000μV程度であるのに対して、電磁波に基づくものは視認上、バックグラウンド・ノイズ程度から数100μVであるに過ぎないこと。
(3)傾斜磁場変化に基づく画像アーチファクトの波形は、原理的にファラディの法則に基づいている。従って、画像アーチファクトの波形は、元の傾斜磁場変化の微分波形に成っていること。
【0022】
以上の結論に基づいて、本発明者は、検討を重ねた結果、fMRIのシーケンス・プログラムを予め知っていれば、画像アーチファクト内における1つ1つの棘の出現時点、その持続、形を予測することができることが解った。逆にいえば、前記結論の知識に基づいてfMRIのシーケンス・プログラムを変更し、自由に画像アーチファクトの波形をコントロールすることが可能である。つまり、脳波サンプリングのタイミングと画像アーチファクトの出現時点、その持続、形をコントロールすることによって、画像アーチファクトの振幅を減衰させることができることを突き止めた。
【0023】
しかるに、通常の脳波測定においては、デジタル・サンプリングが行われ、そのサンプリング周期は、一般に1msec (サンプリング周波数Fs =1000Hz)程度で、等間隔である。つまり1msec 毎に脳波データが1点づつサンプルされていくわけである。また、前述した図20に示す画像アーチファクト波形の中において、周期1msec で脳波をサンプリング(サンプリング周波数Fs =1000Hz)していくとすれば、図20の波形が100msec の間に生じる波形であることを考慮すると、脳波データは図20における100msec の間に100個の点としてサンプリングされることになる。そうすると、あるサンプル点は画像アーチファクト波形の基線付近にあり、またあるサンプル点は画像アーチファクト波形のピークの途中にあり、さらにある点は画像アーチファクト波形のピークにあるという事態が生じる。そして、どのサンプル点が画像アーチファクトのどの付近に位置するかは、ほぼ偶然に決まるに過ぎない。
【0024】
そこで、本発明者は、前記(1)〜(3)の結論による知識に基づいて、fMRIの元々のシーケンス・プログラムを変更・調整することによって、結果として出現する画像アーチファクトが、1msec の間隔で必ず波形の基線付近に戻ってくるようなシーケンスの開発に成功し、本発明を完成するに至った。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
仍って、本発明の目的は、医療用画像診断装置である磁気共鳴イメージング(MRI)装置を用いて脳機能計測(fMRI)を行うと共に、これと同時に生体現象としての脳波測定を行うための、脳波とfMRIとの同時連続測定システムを提供することにある。また、本発明は、脳波とfMRIとの同時連続測定システムに用いるクロック・デバイダ、このクロック・デバイダを備えた脳波測定装置及びfMRI装置を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムは、脳波を測定する脳波測定装置と、磁気共鳴イメージングによって脳機能計測を行うfMRI装置とを備え、fMRI装置の時計機能に基づいて、fMRI装置におけるfMRIデータを収集するための傾斜磁場変化における画像アーチファクトの波形が基線上に位置するときに、脳波測定装置における脳波データを収集するサンプリングタイミングを与えるように、脳波サンプリングパルスを発生するように構成したことを特徴とする。
【0027】
このシステムでは、前記脳波サンプリングパルスによって脳波データを収集するサンプリングタイミングにおいて前記画像アーチファクトの波形が基線位置に戻るように、前記fMRI装置におけるfMRI測定データを収集するための傾斜磁場変化を規定する前記fMRIシーケンスを設定したことを特徴とする。
また、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムは、脳波を測定する脳波測定装置と、磁気共鳴イメージングによって脳機能計測を行うfMRI装置とを備え、fMRI装置におけるfMRIデータを収集するための傾斜磁場変化を発生するタイミングの設定を行うためのクロック信号を発生するデジタル・シンセサイザを設け、このデジタル・シンセサイザのクロック信号に基づいて脳波測定装置における脳波データを収集する脳波サンプリングパルスを発生するクロック・デバイダを設け、前記クロック・デバイダにより、fMRIデータを収集するための傾斜磁場変化における画像アーチファクトの波形が基線上に位置するときに、脳波データを収集するサンプリングタイミングを与えるように、所定サンプリング周波数からなる脳波サンプリングパルスを発生するように構成したことを特徴とする。
【0028】
このシステムでは、前記脳波サンプリングパルスを発生するクロック・デバイダにおいて、脳波サンプリングパルスの発生を開始するためfMRIシーケンスの開始を示すfMRIトリガー信号を入力するように設定して、前記fMRI装置におけるfMRIデータを収集するための傾斜磁場変化を行うfMRIシーケンスの開始と、前記脳波サンプリングを開始するタイミングとを同期させるように構成したことを特徴とする。
【0029】
さらに、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムは、前記脳波測定装置と前記fMRI装置とにおいて、それぞれ同時連続測定された脳波データとfMRIデータとを、それぞれ記録すると共に、これらのデータに基づいて脳波現象解析を行い、MRI断層画像上へのマッピング処理および表示を行うように構成することができる。
【0030】
また、本発明に係るクロック・デバイダは、傾斜磁場変化を発生させ、磁気共鳴によって被検体のイメージング情報を得るfMRI装置と、上記被検体の脳波を上記fMRI装置によるイメージング情報取得時に測定する脳波測定装置とを具備する脳波とfMRIとの同時連続測定システムに適用されるクロック・デバイダであって、前記傾斜磁場変化に同期する原クロックと前記fMRI装置による計測シーケンスの開始を示すトリガー信号とを前記fMRI装置から取得し、これら原クロックとトリガー信号とに基づき、前記傾斜磁場変化に起因する画像アーチファクト波形が基線上に位置するときのそれぞれのタイミングを前記脳波測定装置における脳波測定のサンプリングタイミングとするパルスを生成し、この生成したパルスを前記脳波測定装置へ与えることを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る脳波測定装置は、傾斜磁場変化を発生させ、磁気共鳴によって被検体のイメージング情報を得るfMRI装置と、上記被検体の脳波を上記fMRI装置によるイメージング情報取得時に測定する脳波測定装置とを具備する脳波とfMRIとの同時連続測定システムに適用されるクロック・デバイダを内蔵した脳波測定装置であって、前記クロック・デバイダは、前記傾斜磁場変化に同期する原クロックと前記fMRI装置による計測シーケンスの開始を示すトリガー信号とを前記fMRI装置から取得し、これら原クロックとトリガー信号とに基づき、前記傾斜磁場変化に起因する画像アーチファクト波形が基線上に位置するときのそれぞれのタイミングを前記脳波測定装置における脳波測定のサンプリングタイミングとするパルスを生成し、このパルスを前記脳波測定に供することを特徴とする。
【0032】
更に、本発明に係るfMRI装置は、傾斜磁場変化を発生させ、磁気共鳴によって被検体のイメージング情報を得るfMRI装置と、上記被検体の脳波を上記fMRI装置によるイメージング情報取得時に測定する脳波測定装置とを具備する脳波とfMRIとの同時連続測定システムに適用されるクロック・デバイダを内蔵したfMRI装置であって、前記クロック・デバイダは、前記傾斜磁場変化に同期する原クロックと前記fMRI装置による計測シーケンスの開始を示すトリガー信号とを前記fMRI装置から取得し、これら原クロックとトリガー信号とに基づき、前記傾斜磁場変化に起因する画像アーチファクト波形が基線上に位置するときのそれぞれのタイミングを前記脳波測定装置における脳波測定のサンプリングタイミングとするパルスを生成し、このパルスを前記脳波測定装置へ与えることを特徴とする。
【0033】
このfMRI装置では、前記fMRI装置の計測シーケンスにおける傾斜磁場変化波形のピーク部分を平坦に形成し、前記平坦部分が前記脳波測定のサンプリングタイミングとなるように、計測シーケンスを設定したことを特徴とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムの実施例を、添付図面を参照して説明する。各図において、同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0035】
1.基本原理
まず、脳波とfMRIとの同時連続測定を行う場合、脳波測定のサンプル点の設定に際し、fMRIの撮像中に生じる画像アーチファクトとの関係において、次のような基本事項を決定した。
(A)電磁波そのものは、画像アーチファクトに大きな影響を及ぼしていないことから、電磁波は無視して、傾斜磁場のタイミングのみに注目した。
(B)次に、傾斜磁場変化波形の微分である画像アーチファクトが、1msec の間隔で必ず基線付近に戻ってくるようにする。このためには、
(C)傾斜磁場の変化時間(傾斜磁場に変化が生じている時間であって、傾斜磁場変化の微分値がゼロでない部分)が、1msec を超えないようにする。
(D)それぞれの傾斜磁場変化(傾斜磁場が基線上に位置する時間であって、傾斜磁場変化の微分値がゼロである部分)は、1msec 以上の間隔を生じるようにする。
(E)その他可能な限り、傾斜磁場変化の回数が少ないシンプルなシーケンスとする。
【0036】
前記基本事項(A)〜(E)に基づいて、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムのfMRI装置において用いる計測シーケンスのプログラミングを設定した。具体的には、表4にの左側に示される従来から実施されている典型的なブリップ型(Blip type )のfMRIシーケンスに対し、本発明の実施例に係るfMRIシーケンスは、表4の右側にステッピング・ストーン・シーケンス(Stepping Stone Sequence )として示されている。本発明の実施例に係るfMRIシーケンスは、それぞれ以下の理由に基づいてブリップ型(Blip type )のfMRIシーケンスを修正変更した。表4は、上記2つのシーケンスの比較を示す。なお、表4において、数字の単位はμsec である。
【0037】
【表4】

【0038】
表4に示される本発明の実施例に係るfMRIシーケンスにおける修正点の修正理由は、次の通りである。
(a)前記基本事項(E)の目的に対応して、読出し(Readout )傾斜磁場に前置する2つのスポイラー(Spoiler 1,Spoiler 2 )を1つ(Spoiler 2 )のみにしてシンプルにした。
(b)スポイラー(Spoiler 1 )、p10(準備傾斜磁場)、スライス選択、反および再位相(Dephasing & Rephasing )傾斜磁場、読出し(Readout )傾斜磁場のタイミング、および持続時間を、表4に示すように変更し、この実施例における脳波のサンプリングタイミングにおいて、傾斜磁場の変化が生じている状況をなくした。また、これらの磁場変化の間に適当な空き時間(表4中の“static time ”欄参照)を設けて、この実施例における脳波のサンプリングタイミングにおいて、傾斜磁場の変化が生じている状況をなくし、前記基本事項(B)、(C)、(D)の目的を実現した。
(c)読出し(Readout )傾斜磁場に関しては、その波形が単なる正弦波(sine curve)を描かせるのではなくて、半周期毎に基線上に戻ってくる時に、400μsec の平坦な時間、所謂「肩」を描くように設定した。これを実現するために、読出し傾斜磁場変化のプログラミングにおいて、正弦波がピークに達したときに、400μsec の静止時間を設けた。これによって、上記平坦部分を有する略正弦波の微分値である画像アーチファクト波形においては、基線近傍に平坦部分を生じ、この平坦部分において脳波のサンプリングを容易にすることができる〔図1の読出し傾斜磁場の波形部分を参照〕。なお、上記平坦部と隣接する傾斜部分は600μsec であり、読出し(Readout )傾斜磁場における波形の1周期は1msec である。
(d)fMRIシーケンスには2つのタイプがある。その第1ものは、1ボリューム・スキャン(volume scan )を終えると、コンピュータの処理がオペレーションシステム(Operation System )に戻り他のタスクを実行するタイプのものである。第2のものは、1ボリューム・スキャン毎にオペレーションシステムへ処理を戻さずに連続してfMRIシーケンスの処理に専念するタイプのものである。本発明では、脳波計との精確な同期をとるために、後者のタイプのシーケンスを採用した。
【0039】
このようにして、新たに設定されたシーケンスの波形が、図1に示す通りであり、これが本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定に関するシーケンスの波形である。以上の通り、fMRI装置の計測シーケンスにおける傾斜磁場変化波形のピーク部分を平坦に形成し、前記平坦部分において前記脳波測定のサンプリングが行われるように、計測シーケンスを設定した。別の言い方をするならば、脳波サンプリングパルスによって脳波データを収集するサンプリングタイミングにおいて上記画像アーチファクトの波形が基線上に戻るように、fMRI装置におけるfMRI測定データを収集するための傾斜磁場変化を規定するfMRIシーケンスを設定した。
【0040】
図2の(a)、(b)、(c)は、図1に示すシーケンスの波形に対応し、シーケンスの傾斜磁場変化における画像アーチファクトの波形とサンプル点の関係を示すものである。すなわち、図2の(a)は、前記シーケンスの傾斜磁場変化を示す波形図であり、図2の(b)は、前記傾斜磁場変化の波形を微分した波形で、想定される画像アーチファクトの波形図であり、そして図2の(c)は、前記画像アーチファクト波形を1msec 毎にサンプリング(サンプリング周波数Fs =1000Hz)する場合のサンプル点をそれぞれ示す図であり、サンプル点は全て基線上にあることを示している。
【0041】
従って、このように脳波とfMRIとの同時測定に際して、計測シーケンスを適切に設定し、脳波のサンプリングタイミングを適切に選べば、脳波のサンプリングタイミングが棘状の画像アーチファクト上に位置することはなく、基線の近傍のみにおいてサンプリングを行うことが可能となり、後述するように、脳波とfMRIとの同時連続測定を適正かつ円滑に達成することが可能となる。
図3は、本発明によるサンプリングのより詳細なる表現であり、表4において説明したステッピング・ストーン・シーケンスの概略図である。図1においては1軸の電磁石(Gr)の変化に対応した波形を示したのに対し、この図3においては3軸の電磁石(Gs、Gp、Gr)の変化に対応した波形を示す。図3における3Aは、ステッピング・ストーン・シーケンスにおけるRF(電磁波)と傾斜磁場パルスの一連の図を示しており、RFはRFパルスを示し、Gsはスライス選択傾斜磁場を示し、Gpは位相エンコーディング傾斜磁場を示し、Grは読出し傾斜磁場を示す。
【0042】
そして同図3において、aはファット−サチュレーション・パルス、bはスライス選択RF、cはスポイラー、dはスライス選択傾斜磁場、eは反位相及び再位相傾斜磁場、fは読出し傾斜磁場(1000Hzのディジタル化レートによるEEG(脳波図)サンプリングポイント)である。
【0043】
また、図3における3Bは、上記各Gs、Gp、Grの傾斜磁場パルスの微分波形を総和して得られる画像アーチファクト波形の想定例を示している。この3Bにおいては、EEG信号用にディジタルサンプリングされた点(1000Hzのディジタル化レート)が、上記アーチファクト波形上にスーパーインポーズされて示されている。これによれば、全てのサンプル点はアーチファクト・スパイクを避けていることが分かる。
【0044】
更に、図3における3Cは、図3の3Aにおける前部分の拡大図である。図3の3Aにおいては、各RFのタイミング及び傾斜磁場パルスが描かれている。また、図3における3Dは、図3の3Aにおける読出し傾斜磁場の拡大図である。この拡大図によれば、読出し傾斜磁場パルスの頂上部における400μsecの静止時間が、画像アーチファクト内に、安定的にフェーズ・ロックされたEEGサンプリングを許容するサンプリング棚を生み出していることが分かる。
【0045】
2.システム構成
図4は、前述した基本原理に基づいて構成した、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定を行うシステムの典型的な一実施例を示す概略システム構成図である。本実施例における脳波とfMRIとの同時連続測定システムは、fMRIの画像データを得るためのfMRI装置10と、脳波測定装置30と、脳波現象解析・表示装置40とから基本的に構成されている。
【0046】
前記fMRI装置10は、制御部10Aと電磁波照射室10Bを備える。制御部10Aは、傾斜磁場波形発生器12と、電磁波波形発生器13とfMRIデータ収集部14とを備え、CPU15と相互接続され、所要のシーケンス制御を行うように構成されている。CPU15は図示しないキーボード等からの入力を受けて、上記のようにfMRIシーケンスが行われるように、パラメータの設定を制御部10Aに対して行う。また、fMRI装置10の電磁波照射室10Bは、適宜にフィルタ・プレート11で囲繞されており、この電磁波照射室10Bには、マグネット・コイル部16と電磁波照射部18とが配置されている。そして、前記マグネット・コイル部16に対しては、制御部10Aの傾斜磁場波形発生器12から上記のfMRIシーケンスによる傾斜磁場信号が、傾斜磁場電力増幅器17により電力増幅されて供給されるように構成されている。また、前記電磁波照射部18に対しては、制御部10Aの電磁波波形発生器13から送出される電磁波信号が、送信信号発生部24及び電磁波電力増幅器19を介して供給される。これにより、電磁波照射部18からは高周波が発生される。これに応えて被検体(被検者)から得られるfMRI信号が電磁波照射部18における受信コイルで受信でき、これが受信部26へ送られて増幅されA/D変換されてfMRIデータ収集部14へ送られる。
【0047】
fMRI装置10は、図示しないキーボードによるキー入力に応じて起動され、これに応じて制御部10Aがシステム制御部20を起動する。システム制御部20は、fMRIシーケンスの開始を送信信号発生部24と受信部26へ通知すると共に、fMRIシーケンスの開始を示すfMRIトリガー信号をクロック・デバイダ28へ送出する。送信信号発生部24には、高周波の周波数と位相に高い精度と安定性を与えることを目的として、デジタル・シンセサイザ22からクロックが供給されている。このデジタル・シンセサイザ22は、fMRI装置10の時計機能を司っており、予め設定した所定周波数(例えば4MHz)のクロックを制御部10Aへ与えると共にクロック・デバイダ28へ送出している。
【0048】
一方、前記脳波測定装置30は、fMRI装置10の電磁波照射室10Bに配置された脳波計電極31から電磁波フィルタ32を介して脳波信号を受け取り、前置増幅器33にて増幅を行い、A/D変換器36にてディジタル信号へ変換して脳波データ収集部37で脳波データとする。
【0049】
上記A/D変換器36は、切換スイッチ39を介して脳波データ同期処理部34内に設けられたサンプリングパルス発生器38と上記クロック・デバイダ28とに選択的に接続される。
【0050】
fMRI装置10のfMRIデータ収集部14に収集されたfMRIデータと、前記脳波測定装置30の脳波データ収集部37に収集された脳波データとは、脳波現象解析・表示装置40のデータ記録・解析処理部42へ送られ、処理されて表示部44において表示される。データ記録・解析処理部42は、fMRIデータおよび脳波データのそれぞれ個別記録と共に、総合的解析を行うものであり、表示部44において、それぞれ記録されたデータの表示ないし短時間脳波現象のMRI断層画像上へのマッピング表示等を実行可能に構成されている。
【0051】
このシステム構成において、脳波とfMRIとの同時連続測定を実現するために、切換スイッチ39はクロック・デバイダ28の出力を選択して、脳波測定装置30の同期処理部34におけるA/D変換器36へ供給する。このクロック・デバイダ28の出力であるサンプリングパルスFs は、上記に説明した脳波のサンプリング(1msec 毎)を実現するため、1000Hzとされている。この周波数は、fMRI装置10のデジタル・シンセサイザ22により出力される予め選択した所定周波数(例えば4MHz)のfMRIクロックと、システム制御部20より出力されるfMRIトリガーとに基づき、クロック・デバイダ28が生成するものである。
【0052】
脳波とfMRIとの同時連続測定を適切に行うためには、前述したように、fMRIシーケンスによる画像アーチファクトと、脳波サンプリングとのタイミングが適正に同期していることが必要である。少しでもタイミングがずれていると、脳波のサンプル点の幾つかは、基線部分から離れて画像アーチファクトのピークと重なる難点がある。そこで、fMRIシーケンスによる画像アーチファクトと、脳波サンプリングを適正に同期させ、例えば1msec 毎に平坦な基線近傍で必ず脳波のサンプル点を得るために、(1)fMRIシーケンスのスタートと脳波サンプリングのスタートとのタイミングを高精度に一致(同期)させることと、(2)その後の両者間における時間的なずれを生じない高精度の同期が維持されることが必要である。
【0053】
一般的に、MRIスキャナと脳波計とは、それぞれ内部に独自の時計機能(水晶発振子)を備えており、これによって所要のタイミング処理を行っている。しかしながら、本発明のようにμsec 単位の高精度の同期を必要とするシステムにおいては、それぞれの時計機能について同期を維持させることは困難であり、単一の時計機能とすることが必要である。
【0054】
そこで、本実施例においては、fMRIシーケンスによる画像アーチファクトと、脳波サンプリングとのタイミングについて、時間的なずれを生じない高精度の同期を行う手段として、クロック・デバイダ28を設けたことを特徴とする。このクロック・デバイダ28は、fMRI装置10に設けられたデジタル・シンセサイザ22によって発生されるクロック(4MHz)を使用し、このクロックを脳波サンプリングのためのサンプリングパルスとして、所要の周波数(1000Hz)に分周して使用する。
【0055】
単一の時計機能により、fMRIシーケンスによる画像アーチファクトと、脳波サンプリングとのタイミングについて、同期を維持させることが可能であっても、サンプリングのスタートの瞬間が適正に同期(一致)していないと、折角にfMRIシーケンスを前述のように変更設定したにも拘らず、画像アーチファクトの波形が基線近くに位置するタイミングでの脳波のサンプル点を得ることができなくなる。
【0056】
そこで、本実施例においては、手動スイッチによりfMRI装置10と脳波測定装置30の同時起動が実現される構成となっている。そして、fMRIシーケンスが開始されるタイミングにおいて、fMRI装置10のシステム制御部20からfMRIトリガー信号が出力される。このトリガー信号と前述したクロック(4MHz)に基づいて、所要の周波数(例えば1000Hz)を得る分周動作が行われ、その結果において得られるパルスを脳波サンプリングのためのサンプリングパルスとして脳波測定装置30へ供給するように構成した。
【0057】
クロック・デバイダ28の構成と動作とを、図5および図6を参照して説明する。図5は、クロック・デバイダ28の主要構成を示す概略ブロック回路図であり、図6は、クロック・デバイダ28の動作説明用の各部における信号のタイムチャートである。
まず、fMRI装置10と脳波測定装置30の同時起動を行う手動スイッチ(例えば、fMRI装置10の図示せぬキーボード)によるキー入力がなされると、手動リセット信号S1 が到来し、RSフリップフロップ283のセットとRSフリップフロップ284のリセットが実現される。この後にfMRI装置10のデジタル・シンセサイザ22から供給されるfMRIクロック (4MHz)S2 と、fMRI装置10から供給されるfMRIトリガー信号S3 とが、それぞれ入力されるように設定されている(図6参照)。そして、このクロック・デバイダ28は、fMRIクロック(4MHz)S2 を入力するクロックカウンタ281と、遅れ時間カウンタ282とを備える。前記fMRIトリガー信号S3 の立ち上がりによってRSフリップフロップ283がリセットされる。そして、遅れ時間カウンタ282は、RSフリップフロップ283の出力に基づいてセットするように構成されている。また、RSフリップフロップ284はクロックカウンタ281の出力、手動リセット信号S1 、遅れ時間カウンタ282の出力信号に基づいて動作し、所要のサンプリングパルスSp を出力するように構成されている。なお、図5において、参照符号OR1、OR2、OR3、OR4は、それぞれOR回路を示す。
【0058】
前記構成からなるクロック・デバイダ28の動作機能につき、図6に示す動作信号のタイムチャートを参照して説明する。クロック・デバイダ28に対し、手動リセット信号S1 が入力されて、RSフリップフロップ283がセットされ、RSフリップフロップ284がリセットされる。その後にfMRI内部クロック(4MHz)信号S2 〔図6の(a)参照〕が入力され、次にfMRIシーケンスの開始と同時に立ち上がるfMRIトリガー信号S3 が入力される〔図6の(b)参照〕。そして、このfMRIトリガー信号S3 の立ち上がりによってRSフリップフロップ283がリセットされ、これに応じて遅れ時間カウンタ282がリセット解除され〔図6の(c)参照〕、遅れ時間カウンタ282がfMRIクロックS2 のカウントを開始する。遅れ時間カウンタ282には、予め設定された遅れ時間Nが設定されている。この遅れ時間Nは、fMRIトリガー信号S3 がfMRIシーケンスの開始と同時に立ち上がるのではなく、実際には、fMRIトリガー信号S3 の立ち上がりのときから、上記遅れ時間NのときにfMRIシーケンスが開始されるため、fMRIシーケンスの開始とサンプリングパルスSp の立ち下がりタイミングを一致させるために設けられた時間である。遅れ時間カウンタ282のカウントが上記遅れ時間Nに達すると〔図6の(d)参照〕、遅れ時間カウンタ282がそれぞれT−T端子の信号にパルスを発生させCCR端子の信号を立ち下げる〔図6の (e)、(f)参照〕。これにより、RSフリップフロップ283がセットされると共にクロックカウンタ281がリセットされ〔図6の(i)参照〕、更にRSフリップフロップ284がセットされてサンプリングパルスSp が出力される〔図6の(j)参照〕。実際には、RSフリップフロップ284の出力が立ち下がる。
【0059】
クロックカウンタ281は予め設定されたカウント数80〔図6の(g)参照〕をカウントしたときに「80」端子にパルスを出力し、RSフリップフロップ284をリセットし、RSフリップフロップ284の出力が立ち上がり、サンプリングパルスSp が出力される〔図6の(j)参照〕。その後、クロックカウンタ281はfMRIクロックS2 のカウントを続け、予め設定されたカウント数4000〔図6の(g)参照〕のときに「4000」端子にパルスを出力し、RSフリップフロップ284をセットすると共に自らをリセットする動作を繰り返す。かくして、このサンプリングパルスSp は、所謂のサンプリング周波数(例えば1000Hz)で出力される〔図6の(i)、(j)参照〕。なお、前記クロック・デバイダ28の動作に際しては、クロック・デバイダ28と脳波測定装置30との間に接続配置される切換スイッチ39は、サンプリングパルス発生器38との接続を遮断し、クロック・デバイダ28と接続することにより、前記クロック・デバイダ28から出力されるサンプリングパルスSp に基づいて、fMRI装置10と同期して脳波の連続的な測定が円滑に行われる。
【0060】
なお、前述した実施例において、前記クロック・デバイダ28では、fMRI内部クロックの周波数を4MHzに設定した場合、サンプリングパルスのサンプリング周波数を、1000Hzに設定することを例示したが、本発明のシステムにおいては、例えば500Hz〜5000Hzの範囲において、本発明の基本原理で述べた基本事項(A)〜(E)を満足する数値、例えば500Hz、2000Hz、2500Hz、5000Hz等に設定することができる。
【0061】
また、前記クロック・デバイダ28でのサンプリングパルスのサンプリング周波数の設定に際しては、脳波測定装置30での設定サンプリング周波数(例えば1000Hz)より高次の周波数設定(例えば20kHZ)を行い、脳波測定装置30において所要のサンプリング周波数設定器(図示せず)により、分周したサンプリング周波数(例えば1000Hz)を得るように構成することも可能である。
【0062】
3.臨床例とその効果
前記構成からなる本実施例の脳波とfMRIとの同時連続測定システムにより、ヒト被験者に対する臨床テストを行った。まず、ヒト被験者において、本発明によるfMRIシーケンスを使用して、画像アーチファクト測定を行ったところ、図7に示すように、ヒト被験者の測定においても、サンプリングのタイミングを適切に選べば、棘状の画像アーチファクト付近ではなく、基線の近傍のみをサンプル点とすることができることが確認された。すなわち、図7において、1msec 毎に必ず基線付近に画像アーチファクトが戻ってくるため、1msec 毎に脳波サンプリングを行うと、ほぼ基線付近の画像アーチファクトのあまりないサンプル点(○印)だけをサンプリングできることが確認できる。
【0063】
次いで、本実施例の脳波とfMRIとの同時連続測定システムにより、脳波測定を行ったところ、図8に示すような脳波測定結果EEG1が得られた。また、この脳波測定結果EEG1を、従来の方法による脳波とfMRIとの同時連続測定結果EEG2を、図8上において比較対照し得るように示した。この結果、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムによれば、従来の方法に比較して、約1/5から1/10に画像アーチファクトの振幅が減衰することが確認された。
【0064】
そして、残存する低振幅の画像アーチファクトに対しては、その画像アーチファクトを加算平均し、元の画像アーチファクト波形より減算するという方法により、図9に示すような、脳波波形を得ることができた。すなわち、図9は、残存する画像アーチファクトを処理した後の、最終的に得られた脳波であり、ノイズの少ない、精度の高い脳波波形を示している。また、図9から明らかなように、fMRIの測定中においても、複数チヤンネルで脳波を適正に測定することができる。
【0065】
一方、前述したように、脳波と同時測定を行う場合におけるfMRI画像処理について、ヒト被験者に対する検証を行った。すなわち、この場合、簡単な視覚刺激課題をブロック・パラダイムにより呈示し、視覚刺激に対応する大脳局在の賦活を描出できるか否かについて、従来の典型的なfMRIシーケンスによる場合と比較して、臨床テストを行った。図10は、従来の典型的なfMRIシーケンスによる検証結果 〔図10の(a)参照〕と本発明システムによる検証結果〔図10の(b)参照〕とをそれぞれ示すものである。図10の(a)、(b)からも明らかな通り、両者共に殆ど同じ領域に賦活を示し、その分布も近似していることが確認される。従って、前記結果において、たとえ同一のヒト被験者であっても、連続したテストによる慣れの効果や覚醒度の影響により、賦活領域が異なる可能性がある中で、これほど一致した結果が得られたことは、本発明システムが通常に使用するfMRIシーケンスと同様に使用することが可能であることは明白である。
【0066】
4.比較例
なお、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムと対比するために、従来の典型的なfMRIシーケンス波形と、この波形から予測される画像アーチファクト波形を、前述した図2の(a)、(b)、(c)と対応させて、図11の(a)、(b)、(c)として示した。この場合、画像アーチファクトの振幅の高い部分をサンプリングしていることから、結果として得られた測定データに振幅の高い画像アーチファクトが混入することが確認される。
【0067】
5.応用分野
前述した構成からなる本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムによれば、得られた脳波データから、短時間脳波現象のMRI断層画面上へのマッピングを行うことができる。しかるに、脳波現象自身は、1次元の波形の集まりであるに過ぎない。この現象をMRI断層画面上へのマッピングで表現するためには、次のような手続きを必要とする。すなわち、SPM99による一般線形モデル解析(GLM)による短時間現象の解析を行う。まず、脳波測定とfMRI測定とを同時に開始する。この場合において、脳波上の関心事象は、任意の時刻に出現する。そして、処理済みの画像アーチファクトを除いた脳波を検討することによって、前記関心事象とそれが出現した時刻を知ることができる。
【0068】
次に、これらの得られた情報から、BOLD信号の時間経過を示すモデル関数を作成する。さらに、一般線形モデル解析を用いて、このモデル関数とBOLD信号の時間経過を、画像内の各ボクセル毎に統計的に探索する。このような過程を経て、この特定の脳波事象に関連する脳内部位を特定することができる。この結果、脳波上の短時間現象を、fMRIにおけるMRI断層画面上へのマッピングに置き換えた形で検討することが可能となる。
【0069】
従って、前述した本発明システムによる短時間脳波現象のMRI断層画面上へのマッピングを利用することにより、例えば次のような脳の活動状態を確認することが可能となる。
【0070】
a.てんかんの発作焦点部位のマッピング
従来の方法では、空間分解能が乏しく、脳深部の病態を検討することができず、あるいは時間分解能の劣悪さから、てんかん性異常波に純粋に関連する異常を描き出すことはできなかった。本発明システムによれば、前述したMRI断層画面上へのマッピングにより、図12の(a)に示すように、てんかん異常部位(矢印で示す白い部分)を描き出すことが可能となる。この結果は、従来の脳磁図による結果と非常によく一致していることが確認される。すなわち、図12の(b)は、脳磁図を示すものであって、脳の磁気現象に基づいて異常部位(矢印で示す白点部分)を描き出しているが、脳波とfMRIは血流動態に基づいて描き出している。このように、全く異なる独立した事象に基づいて描き出された異常部位が一致しているという事実は、本発明システムが高い信頼性を有することの証左である。従って、本発明システムは、脳外科によるてんかん治療手術前に、その焦点部位に関する極めて確度の高い情報が得られるという利点を有する。
【0071】
b.ターゲット刺激の反応に関する課題への応用
本発明システムにより、ターゲット刺激のみにボタン押し等の反応を返す課題(odd−ball課題)について、それに伴う事象関連電位を測定した。図13の(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ加算平均された事象関連電位(P300 波形)を示す特性線図である。この結果、ターゲット刺激が15%呈示時〔図13の(a)、(b)参照〕の方が、30%呈示時〔図13の(c)、(d)参照〕よりも、明らかにP300 の振幅が高いことが確認される。これらの結果は、一般に認められているP300 波形の特性と一致していることが確認された。また、これらの結果は、脳波およびfMRIの測定における脳波データの品質がある程度高いものであることを証明している。
【0072】
一方、前記課題において、前述した短時間脳波現象に対応するfMRIの賦活部位の検証を行った。図14の(a)および(b)は、それぞれターゲット刺激15%呈示時と30%呈示時のそれぞれMRI断層画像上へのマッピングによる説明図である。図14の(a)、(b)から、右側頭頂葉、右側前頭葉に賦活(矢印で示す白点部分)がそれぞれ確認される。ここで重要なことは、従来は脳波のみでこのような事象関連電位を議論していたが、本発明システムによれば、このような脳波現象を血流動態に基づくMRI断層画像上へのマッピングとして議論することができる。しかも、この場合、ターゲット刺激30%呈示時〔図14の(b)参照〕よりも15%呈示時〔図14の(a)参照〕の方が、よりBOLD信号に反映される賦活が大きいことが重要である。また、電気現象においても、BOLD信号においても、15%呈示時〔図14の(a)参照〕の方が、30%呈示時〔図14の(b)参照〕に対して、神経組織の活発な活動が示唆されている。このように、電位の大きさがそのまま賦活の広がりと程度に相関を持っていることは示唆に富んでいる。
【0073】
図15に、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定を行うシステムの第2の実施例を示す概略システム構成図が示されている。この構成例においては、脳波測定装置30Aに、クロック・デバイダ28が内蔵されている。この点を除いて、本実施例に係るシステムは、図4に示したシステムと同一の構成を有している。即ち、傾斜磁場変化を発生させ、磁気共鳴によって被検体のイメージング情報を得るfMRI装置10と、上記被検体の脳波を上記fMRI装置10によるイメージング情報取得時に測定する脳波測定装置10Aとを具備する脳波とfMRIとの同時連続測定システムである。
【0074】
このシステムにおけるクロック・デバイダ28は、傾斜磁場変化に同期する原クロック(fMRIクロック)とfMRI装置10による計測シーケンスの開始を示すトリガー信号とをfMRI装置10から取得し、原クロック(fMRIクロック)とトリガー信号とに基づき、傾斜磁場変化に起因する画像アーチファクト波形が基線上に位置するときのそれぞれのタイミングを脳波測定装置10Aにおける脳波測定のサンプリングタイミングとするパルス(サンプリングパルスSp )を生成し、この生成したパルスを脳波測定装置10AのA/D変換器36へ与える。これにより、A/D変換器36において、上記サンプリングパルスSp によるサンプリングがなされ、ディジタル化が行われる。
【0075】
このシステムによっても図4に示したシステムと同様に、fMRI装置10による撮像が行われているときにも画像アーチファクトに影響されない適切な脳波を得ることができる効果を奏する。そして、このシステムでは、脳波測定装置10Aがクロック・デバイダ28を備えるので、脳波測定装置10Aによって上記の効果を得ることができる。
【0076】
図16に、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定を行うシステムの第2の実施例を示す概略システム構成図が示されている。この構成例においては、fMRI装置100がクロック・デバイダ28を内蔵している。この点を除いて、本実施例に係るシステムは、図4に示したシステムと同一の構成を有している。即ち、fMRI装置100は、傾斜磁場変化を発生させ、磁気共鳴によって被検体のイメージング情報を得るものであり、脳波測定装置10は、上記被検体の脳波を上記fMRI装置100によるイメージング情報取得時に測定するものであり、本システムは、これらを具備する脳波とfMRIとの同時連続測定システムである。
【0077】
このシステムにおけるクロック・デバイダ28は、傾斜磁場変化に同期する原クロック(fMRIクロック)とfMRI装置100による計測シーケンスの開始を示すトリガー信号とをfMRI装置100内部から取得し、原クロック(fMRIクロック)とトリガー信号とに基づき、傾斜磁場変化に起因する画像アーチファクト波形が基線上に位置するときのそれぞれのタイミングを脳波測定装置10における脳波測定のサンプリングタイミングとするパルス(サンプリングパルスSp )を生成し、この生成したパルスを脳波測定装置10のA/D変換器36へ与える。これにより、A/D変換器36において、上記サンプリングパルスSp によるサンプリングがなされ、ディジタル化が行われる。
【0078】
このシステムによっても図4に示したシステムと同様に、fMRI装置100による撮像が行われているときにも画像アーチファクトに影響されない適切な脳波を得ることができる効果を奏する。そして、このシステムでは、fMRI装置100がクロック・デバイダ28を備えるので、fMRI装置100によって上記の効果を得ることができる。
【0079】
終わりに、本発明が含む不完全性について考察しておく。通常のディジタル信号のサンプリングにおいては、サンプリング定理を満たすことが要求される。つまり、サンプリング対象の信号に含まれる最高周波数が、サンプリング周波数の1/2 (Nyquist 周波数)以下でなければ、正しいサンプリングは行われず、エイリアシング(aliasing)が生じることになる。そこで、一般の信号測定ではそのサンプリング周波数に適合するようにアンチエイリアス・フィルタ(anti-aliasing filter)と呼ばれるローパス・フィルタを用いて、A/D変換する前段でサンプリング定理を満たすように処理している。
【0080】
さて、本発明の手法では、一例として1000Hzのサンプリング周波数を用いて脳波のサンプリングを行うことを示している。このとき、本実施例のシステムでは、アンチエイリアス・フィルタのcut-off 周波数は3000Hzにセットされる。したがって、本実施例に係る測定手法では、上記のサンプリング定理を満たすことはできない。
【0081】
そこで、fMRI測定時と非測定時においてヒト脳波測定を行って、実際にNyquist 周波数以上の信号を評価した結果を図21に示す。図21(a)はfMRI測非定時の脳波を示し、図21(b)はfMRI測定時における脳波を示す。fMRI測定時の脳波データには画像アーチファクトが混在しているため、画像アーチファクトの加算平均の減算処理を行い、アーチファクトを低減させた。図21を参照すると、fMRI測定時・非測定時ともに10Hz前後の105(μV)2 の大きな脳波信号に対して、Nyquist 周波数(この場合500Hz)以上の信号成分が0.6(μV)2 程度と非常に小さいことが分かる(それぞれの枠内の拡大図も参照のこと)。
【0082】
図21において、明らかに観察可能であるのは600Hzの信号である。しかしながら、通常われわれが脳波信号として用いるのは100Hz程度までの信号であって、それ以上の周波数を持つ信号は不必要である。ここで、最も大きな600Hzの信号成分に対し、1000Hzのサンプリング周波数によりサンプリングを行った場合には、本来の信号スペクトルとサンプリングによって生じたスペクトルの重なりは、1000Hz−600Hz=400Hzである。つまり、エイリアシングによって、恰も400Hzの信号が存在するかのように見える。しかしながら、この400Hzの信号は、われわれの関心周波数領域の外側であり、ローパス・フィルタにて除去することで問題を回避できる。
【0083】
また、エイリアシングにより0−100Hz内に生成される可能性のある信号は非常に小さく、その影響は無視できると考えられる。そこで、実際にエイリアシングの影響を観察するために、サンプリング周波数20000Hzで脳波測定をおこなったデータに対して次の二通りの処理を行った。一つは、80Hzのカットオフ周波数にてローパス・フィルタ処理を行い、次に1000Hzにダウン・サンプルした。もう一方は、1000Hzでダウン・サンプルした後に80H zにてローパス・フィルタ処理を行った。この二者において、後者にはエイリアシングを生じ、前者にはエイリアシングが生じない。図22に、上記処理結果の二者のデータを示した。二者のデータ間にほとんど差がないことがわかる。つまり、上記実施例の手法によってエイリアシングを生じる可能性があるが、実際には問題にならないことがわかる。
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては、fMRI装置の時計機能に基づいて、fMRI装置におけるfMRIデータを収集するための傾斜磁場変化における画像アーチファクトの波形が基線上位置するときに、脳波測定装置における脳波データを収集するサンプリングタイミングを与えるように、脳波サンプリングパルスを発生するように構成したので、脳波とfMRIとの同時連続測定に際し、画像アーチファクトのほぼ基線付近において脳波測定のサンプリングを行うことができ、画像アーチファクトによる影響の少ない脳波測定が可能であり、同時に脳波とfMRI装置による画像とを適切に得ることができる。
【0085】
また、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムにおいては、脳波サンプリングパルスによって脳波データを収集するサンプリングタイミングにおいて画像アーチファクトの波形が基線上に戻るように、fMRI装置におけるfMRI測定データを収集するための傾斜磁場変化を規定するfMRIシーケンスを設定したので、脳波とfMRIとの同時連続測定に際し、画像アーチファクト波形がほぼ基線付近にあるときにおいて脳波測定のサンプリングを行うことができ、画像アーチファクトによる影響の少ない脳波測定が可能であり、同時に脳波とfMRI装置による画像とを適切に得ることができる。
【0086】
さらに、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムにおいては、脳波測定装置とfMRI装置とにおいて、それぞれ同時連続測定された脳波データとfMRIデータとを、それぞれ記録すると共に、これらのデータに基づいて脳波現象解析を行い、MRI断層画像上へのマッピングの処理および表示を行うよう構成することによって、脳波上の短時間現象を、fMRIのMRI断層画像上へのマッピングに置き換えて、簡便かつ容易に検討することができる。
【0087】
また、本発明に係るクロック・デバイダは、傾斜磁場変化に同期する原クロックとfMRI装置による計測シーケンスの開始を示すトリガー信号とをfMRI装置から取得し、これら原クロックとトリガー信号とに基づき、前記傾斜磁場変化に起因する画像アーチファクト波形が基線上に位置するときのそれぞれのタイミングを脳波測定装置における脳波測定のサンプリングタイミングとするパルスを生成し、この生成したパルスを脳波測定装置へ与えるので、脳波とfMRIとの同時連続測定に際し、画像アーチファクトのほぼ基線付近において脳波測定のサンプリングを行うことができ、画像アーチファクトによる影響の少ない脳波測定が可能であり、同時に脳波とfMRI装置による画像とを適切に得ることができる。
【0088】
更に、本発明に係る脳波測定装置は、上記クロック・デバイダを内蔵するので、脳波とfMRIとの同時連続測定に際し、画像アーチファクトのほぼ基線付近において脳波測定のサンプリングを行うことができ、画像アーチファクトによる影響の少ない脳波測定が可能であり、同時に脳波とfMRI装置による画像とを適切に得ることができる。
【0089】
また、本発明に係るfMRI装置は、上記クロック・デバイダを内蔵するので、脳波とfMRIとの同時連続測定に際し、画像アーチファクトのほぼ基線付近において脳波測定のサンプリングを行うことができ、画像アーチファクトによる影響の少ない脳波測定が可能であり、同時に脳波とfMRI装置による画像とを適切に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ステッピング・ストーン・シーケンスの概略図である。
【図2】図1におけるfMRIシーケンスの傾斜磁場変化における画像アーチファクトの波形とサンプリング点との関係を示すものである。図2(a) はfMRIシーケンスの傾斜磁場変化の概略を示す波形図である。図2(b)は図2(a )の傾斜磁場波形を微分した画像アーチファクトの波形図、図2(c) は画像アーチファクトの波形のサンプル点をそれぞれ示す説明図である。
【図3】ステッピング・ストーン・シーケンスを示す図であり、3Aは同シーケンスにおけるRF( 電磁波) と3軸の電磁石の変化に対応する傾斜磁場パルスを示す図であり、3Bは3Aに示した傾斜磁場パルスの微分波形とサンプリング点の位置関係を示図であり、3Cは3Aの前部分の拡大図であり、3Dは3Aにおける読出し傾斜磁場の拡大図を示している。
【図4】本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムの第1の実施例を示す概略システム構成図である。
【図5】図4に示すクロック・デバイダの概略ブロック回路図である。
【図6】(a)〜(j)は、図4および図5におけるクロック・デバイダの動作機能を示す動作信号のタイムチャート図である。
【図7】本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムの臨床例における画像アーチファクトに対するサンプリング状態を示す波形図である。
【図8】本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムによる脳波測定の結果と従来の方法による脳波測定の結果とを比較表示した波形図である。
【図9】本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムによる画像アーチファクトを処理した後の脳波測定結果を示す波形図である。
【図10】(a)は、本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムによるfMRI画像処理の検証結果を示すものであって、従来の典型的なfMRIシーケンスによるfMRI画像の説明図である。(b)は、同じく本発明システムによるfMRI画像の説明図である。
【図11】(a)は、従来のfMRIシーケンスの傾斜磁場変化における画像アーチファクトの波形とサンプル点との関係を示すものであって、fMRIシーケンスの傾斜磁場変化を示す波形図である。(b)は、同じく傾斜磁場変化の波形を微分した画像アーチファクトの波形図、(c)は画像アーチファクトの波形のサンプル点をそれぞれ示す説明図である。
【図12】(a)は、本発明システムによりてんかん異常部位を描き出したMRI断層画像上へのマッピングを示す図である。(b)は従来の脳磁図によるてんかん異常部位を描き出した説明図である。
【図13】(a)は、ターゲット刺激のそれぞれ呈示時における加算平均された事象関連電位を示すものであって、はターゲット刺激15%呈示時のCz 電極の電位特性線図である。(b)は、同じくターゲット刺激15%呈示時のPz 電極の電位特性線図である。(c)は、同じくターゲット刺激30%呈示時のCz 電極の電位特性線図、(d)は、同じくターゲット刺激30%呈示時のPz 電極の電位特性線図である。
【図14】(a)は、ターゲット刺激のそれぞれ呈示時におけるMRI断層画像上へのマッピングを示すものであって、ターゲット刺激15%呈示時のMRI断層画像上へのマッピングを示す図である。(b)は、同じくターゲット刺激30%呈示時のMRI断層画像上へのマッピングを示す図である。
【図15】本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムの第2の実施例を示す概略システム構成図である。
【図16】本発明に係る脳波とfMRIとの同時連続測定システムの第3の実施例を示す概略システム構成図である。
【図17】従来の方法によるfMRI撮像時における脳波上の画像アーチファクトの波形図である。
【図18】従来の方法によるfMRIと脳波との交互測定を示す説明図である。
【図19】従来のfMRIと脳波との交互測定による画像アーチファクトの波形と脳波測定波形とをそれぞれ示す波形図である。
【図20】従来の方法によるfMRIシーケンスの画像アーチファクトの波形を示す波形図である。
【図21】fMRI測定時と非測定時におけるヒト脳波測定によるNyquist 周波数以上の信号を評価した結果を示す図である。
【図22】サンプリング周波数20000Hzで脳波測定をおこなったデータに対して二通りの処理を行った結果を示す波形図である。
【符号の説明】
10 fMRI装置 10A 制御部
10B 電磁波照射室 11 フィルタ・プレート
12 傾斜磁場波形発生器 13 電磁波波形発生器
14 fMRIデータ収集部 15 CPU
16 マグネット・コイル部 17 傾斜磁場電力増幅器
18 電磁波照射部 19 電磁波電力増幅器
20 システム制御部 22 デジタル・シンセサイザ
24 送信信号発生部 26 受信部
28 クロック・デバイダ 30 脳波測定装置
31 脳波計電極 32 電磁波フィルタ
33 前置増幅器 34 脳波データ同期処理部
35 増幅器 36 A/D変換器
37 脳波データ収集部 38 サンプリングパルス発生器
39 切換スイッチ 40 脳波現象解析・表示装置
42 データ記録・解析処理部 44 表示部
30A 脳波測定装置 100 fMRI装置
281 クロックカウンタ 282 遅れ時間カウンタ
283 RSフリップフロップ 284 RSフリップフロップ
OR1〜OR4 OR回路 S1 手動リセット信号
S2 fMRI内部クロック信号 S3 fMRIトリガー信号
Sp サンプリングパルス EEG1 脳波測定結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳波を測定する脳波測定装置と、磁気共鳴イメージングによって脳機能計測を行うfMRI装置とを備え、
fMRI装置の時計機能に基づいて、
fMRI装置におけるfMRIデータを収集するための傾斜磁場変化における画像アーチファクトの波形が基線上に位置するときに、
脳波測定装置における脳波データを収集するサンプリングタイミングを与えるように、脳波サンプリングパルスを発生するように構成したことを特徴とする脳波とfMRIとの同時連続測定システム。
【請求項2】
前記脳波サンプリングパルスによって脳波データを収集するサンプリングタイミングにおいて前記画像アーチファクトの波形が基線上に戻るように、前記fMRI装置におけるfMRI測定データを収集するための傾斜磁場変化を規定する前記fMRIシーケンスを設定したことを特徴とする請求項1記載の脳波とfMRIとの同時連続測定システム。
【請求項3】
脳波を測定する脳波測定装置と、磁気共鳴イメージングによって脳機能計測を行うfMRI装置とを備え、
fMRI装置におけるfMRIデータを収集するための傾斜磁場変化を発生するタイミングの設定を行うためのクロック信号を発生するデジタル・シンセサイザを設け、
このデジタル・シンセサイザのクロック信号に基づいて脳波測定装置における脳波データを収集する脳波サンプリングパルスを発生するクロック・デバイダを設け、
前記クロック・デバイダにより、fMRIデータを収集するための傾斜磁場変化における画像アーチファクトの波形が基線上に位置するときに、脳波データを収集するサンプリングタイミングを与えるように、所定サンプリング周波数からなる脳波サンプリングパルスを発生するように構成した、ことを特徴とする脳波とfMRIとの同時連続測定システム。
【請求項4】
前記脳波サンプリングパルスを発生するクロック・デバイダにおいて、脳波サンプリングパルスの発生を開始するためfMRIシーケンスの開始を示すfMRIトリガー信号を入力するように設定して、前記fMRI装置におけるfMRIデータを収集するための傾斜磁場変化を行うfMRIシーケンスの開始と、前記脳波サンプリングを開始するタイミングとを同期させるように構成したことを特徴とする請求項3記載の脳波とfMRIとの同時連続測定システム。
【請求項5】
前記脳波測定装置と前記fMRI装置とにおいて、それぞれ同時連続測定された脳波データとfMRIデータとを、それぞれ記録すると共に、これらのデータに基づいて脳波現象解析を行い、MRI断層画像上へのマッピング処理および表示を行うように構成したこと、を特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の脳波とfMRIとの同時連続測定システム。
【請求項6】
傾斜磁場変化を発生させ、磁気共鳴によって被検体のイメージング情報を得るfMRI装置と、上記被検体の脳波を上記fMRI装置によるイメージング情報取得時に測定する脳波測定装置とを具備する脳波とfMRIとの同時連続測定システムに適用されるクロック・デバイダであって、
前記傾斜磁場変化に同期する原クロックと前記fMRI装置による計測シーケンスの開始を示すトリガー信号とを前記fMRI装置から取得し、
これら原クロックとトリガー信号とに基づき、前記傾斜磁場変化に起因する画像アーチファクト波形が基線上に位置するときのそれぞれのタイミングを前記脳波測定装置における脳波測定のサンプリングタイミングとするパルスを生成し、
この生成したパルスを前記脳波測定装置へ与えることを特徴とするクロック・デバイダ。
【請求項7】
傾斜磁場変化を発生させ、磁気共鳴によって被検体のイメージング情報を得るfMRI装置と、上記被検体の脳波を上記fMRI装置によるイメージング情報取得時に測定する脳波測定装置とを具備する脳波とfMRIとの同時連続測定システムに適用されるクロック・デバイダを内蔵した脳波測定装置であって、
前記クロック・デバイダは、
前記傾斜磁場変化に同期する原クロックと前記fMRI装置による計測シーケンスの開始を示すトリガー信号とを前記前記fMRI装置から取得し、
これら原クロックとトリガー信号とに基づき、前記傾斜磁場変化に起因する画像アーチファクト波形が基線上に位置するときのそれぞれのタイミングを前記脳波測定装置における脳波測定のサンプリングタイミングとするパルスを生成し、
このパルスを前記脳波測定に供することを特徴とする脳波測定装置。
【請求項8】
傾斜磁場変化を発生させ、磁気共鳴によって被検体のイメージング情報を得るfMRI装置と、上記被検体の脳波を上記fMRI装置によるイメージング情報取得時に測定する脳波測定装置とを具備する脳波とfMRIとの同時連続測定システムに適用されるクロック・デバイダを内蔵したfMRI装置であって、
前記クロック・デバイダは、
前記傾斜磁場変化に同期する原クロックと前記fMRI装置による計測シーケンスの開始を示すトリガー信号とを前記前記fMRI装置から取得し、
これら原クロックとトリガー信号とに基づき、前記傾斜磁場変化に起因する画像アーチファクト波形が基線上に位置するときのそれぞれのタイミングを前記脳波測定装置における脳波測定のサンプリングタイミングとするパルスを生成し、
このパルスを前記脳波測定装置へ与えることを特徴とするfMRI装置。
【請求項9】
前記fMRI装置の計測シーケンスにおける傾斜磁場変化波形のピーク部分を平坦に形成し、
前記平坦部分が前記脳波測定のサンプリングタイミングとなるように、計測シーケンスを設定したことを特徴とする請求項8に記載のfMRI装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−166929(P2006−166929A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−18102(P2003−18102)
【出願日】平成15年1月27日(2003.1.27)
【出願人】(502193118)
【出願人】(502193129)株式会社フィジオテック (1)
【Fターム(参考)】