説明

脳波双極子解析装置、脳波双極子解析方法、脳波双極子解析用プログラム及び該プログラムを記憶した記憶媒体

【課題】脳内双極子の位置とベクトル成分とを脳波計測に対応して実時間で高速解析処理する脳波双極子解析装置を提供する。
【解決手段】本発明の脳波双極子解析装置は、脳波計測用の複数の電極2と、各電極2の計測電位を増幅する多チャンネルの脳波用増幅器4と、増幅後の電位をディジタルデータに変換するA/D変換器5と、予め構築した脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列及び脳内に仮定した任意数の双極子の初期位置のデータを格納したファイルシステム14と、電位の実測データと、ファイルシステム14から読み込んだ伝達行列及び初期位置のデータとを使用し最小二乗法による解析処理を複数の副計算機8A、8B・・・8Nによる初期位置毎の並列処理により行い、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する解析処理手段6を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波双極子解析装置、脳波双極子解析方法、脳波双極子解析用プログラム及び該プログラムを記憶した記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳内の起電力を少数の電流双極子で近似し、各双極子の位置とベクトル成分を頭表皮上に配置した複数の電極で実測される電位分布から最小二乗法を使用して決定する手法は等価双極子法と呼ばれ、脳内活動の非侵襲的な推定方法として以前から利用されている。これは脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と実測の電位分布との二乗誤差を最小とするように各双極子の位置とベクトル成分を決定する手法である。
【0003】
一つの双極子は、6個の自由度(位置とベクトル成分に関してそれぞれ3個)を持つため、N個の双極子を使った場合には二乗誤差は6N変数の関数となるが、ベクトル成分が頭皮上の電位分布と線形関係にあることを利用すると二乗誤差を最小化する問題は双極子の位置(3N変数)のみに依存する評価関数を最小化する問題に還元される。
【0004】
評価関数の最小化にはシンプレックス法に代表される繰返し法に頼らざるを得ない。つまり、適当な初期位置から出発し、評価関数が減少する方向に双極子を少しずつ移動させて行く手法である。
【0005】
このため、双極子を移動させる度に電位計算を繰り返す必要がある。更に、評価関数は複数の極小点を持つ可能性があり、真の最小点を高い確率で見出すため、複数の初期位置から出発して最小化を繰返し、得られる複数の結果の中から評価関数を最小とするものを選ぶ、という手法が用いられている。
【0006】
以上、二種類の要因により、電位分布計算の回数は膨大なものとなる。電位計算の高速化のためには頭蓋モデルとしては単純なものを採用することが好ましいが、電位計算の精度を向上させるには現実の頭蓋を良く近似表現する複雑なモデルが望まれる。実際には計算速度と計算精度との兼ね合いから実形状の3層頭蓋モデルが採用されることが多く、こうした3層頭蓋モデルをはじめそれ以外の多層の頭蓋モデルに特化した高速な電位計算手法が提案されている。
【0007】
以上の事柄は以下の文献に詳述されている。
Tbshimitsu Musha & Yoshiwo Okamoto:Forward and Inverse Problems of EEG Dipole Localization,Critical Reviews in Biomedical Engineering,vol.27,no.3-5,189-239,1999
【0008】
脳内双極子の位置とベクトル成分を決定する従来技術として、例えば特許文献1に開示された等価双極子装置が提案されている。特許文献1の等価双極子装置は、頭蓋内の空洞部、頭蓋骨等の種々の物質による計算誤差を補正し、正確な脳内双極子の位置とベクトル成分を推定するように構成したものである。
【0009】
しかし、この特許文献1の場合においても、電界分布計算の回数は膨大であり、更に補正演算も必要であるため、双極子解析の実時間解析を実現し得る高速処理を実現することは容易ではない。
【特許文献1】特公平7−79804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、脳内の双極子についての双極子解析には膨大な計算が必要であることから、従来においては実時間解析を実現し得る高速処理が可能な脳波双極子解析装置、方法が存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とするように各双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する脳波双極子解析装置であって、被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極と、予め構築した脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列及び脳内に仮定した任意数の双極子の初期位置のデータを格納したファイルシステムと、前記複数の電極による電位の実測データと、前記ファイルシステムから読み込んだ伝達行列及び初期位置のデータとを使用し最小二乗法による解析処理を複数の計算機による初期位置毎の並列処理により行い、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する解析処理手段と、解析結果を出力する出力手段とを有することを最も特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
請求項1乃至3記載の発明によれば、頭部内への非侵襲な構成の基に、頭部における頭皮表面上に配置した複数の電極で測定される電位分布から脳内の起電力を近似する双極子の位置とベクトル成分を計算機による並列処理を実行することで実時間で高速決定(推定)し、決定結果を実時間で表示したり印刷したり、更には記憶保持することが可能な脳波双極子解析装置を提供することができる。
【0013】
請求項4乃至6記載の発明によれば、本発明の脳波双極子解析装置を使用して脳内の起電力を近似する双極子の位置とベクトル成分を、並列的な双極子解析処理を実行することで実時間で高速決定(推定)し、決定結果を実時間で表示したり印刷したり、更には記憶保持することが可能な脳波双極子解析方法を提供することができる。
【0014】
請求項7乃至9記載の発明によれば、伝達行列の決定、脳内に仮定する双極子の初期位置のデータの設定、脳波実測データの取得、これらに基づく高速な解析処理からなる一連の処理を実行し、脳内の起電力を近似する双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定(推定)し、決定結果を実時間で表示したり印刷したり、更には記憶保持する処理を的確に実現できる脳波双極子解析用プログラムを提供することができる。
【0015】
請求項10乃至12記載の発明によれば、本発明の脳波双極子解析装置を使用した高速処理可能な脳波双極子解析方法を実現することができるコンピュータシステムを容易に構築することができる記憶媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、脳内双極子の位置とベクトル成分とを脳波計測に対応して実時間で高速解析処理する脳波双極子解析装置を提供するという目的を、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とするように各双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する脳波双極子解析装置であって、被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極と、各電極を効率的に配置するための電極キャップと、各電極の計測電位を増幅する多チャンネルの脳波用増幅器と、増幅後の電位をディジタルデータに変換するA/D変換器と、予め構築した脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列及び脳内に仮定した任意数の双極子の初期位置のデータを格納したファイルシステムと、前記A/D変換器から出力される電位の実測データと、前記ファイルシステムから読み込んだ伝達行列及び初期位置のデータとを使用し最小二乗法による解析処理を複数の計算機による初期位置毎の並列処理により行い、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する解析処理手段と、解析結果を可視的に出力する出力手段とを有する構成に実現した。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明の実施例を詳細に説明する。
図1、図2は、本発明の実施例に係る実時間処理が可能な脳波双極子解析装置1の構成を示すものである。
本発明の実施例に係る脳波双極子解析装置1は、被験者の頭部30における頭皮上に配置された脳波計測用の複数の電極2と、各電極2を効率的に配置するための電極キャップ3と、前記各電極2の電位を増幅する多チャンネルの脳波用増幅器4と、脳波用増幅器4の出力をディジタルデータに変換するA/D変換器5と、A/D変換器5から出力される電位データを取り込み、実時間の双極子解析用のプログラム(詳細は後述する)に基く最小二乗法による双極子解析、そのための前処理、初期設定等を行う解析処理手段6を構成する主計算機7及び複数の副計算機8A、8B・・・8N(Nは正の整数)と、図2に示すように解析処理手段6の処理結果を表示するための表示装置9と、処理結果を印刷するプリンタ10と、処理結果を記憶する記憶手段であるハードディスク、CD−RAM等の補助記憶部11と、脳組織の導電率等のデータを指定するためのデータ入力を行うキーボード等の入力部12とからなる入出力機器13と、前記解析処理手段6の計算処理に必要な各種データを記憶するためのデータ格納ファイルを含むファイルシステム14とを有している。
【0018】
主計算機7は、図2に示すように、前記副計算機8A、8B・・・8Nとの間で各種データの交信を行うための副計算機用インターフェース21と、前記A/D変換器5、表示装置9、プリンタ10、補助記憶部11、入力部12からなる入出力機器13及びファイルシステム14用の入出力インターフェース22と、詳細は後述する処理を実行可能な実時間の双極子解析用のプログラムを格納したプログラム格納部23と、前記処理プログラムの実行、計算処理等を行うCPU24と具備している。
【0019】
この主計算機7は、実時間の双極子解析のための前処理、すなわち実時間の双極子解析を実施する前にその計算に必要な各種のデータを設定したり、初期設定、すなわち計算開始の直前にそれらのデータを副計算機8A、8B・・・8Nに配信する処理を実行し、更に前記複数の電極2による実測データに基づき実時間で双極子解析処理を実行するようになっている。
【0020】
次に、本実施例に係る脳波双極子解析装置1を使用し、双極子解析用のプログラムに基づいた実時間処理による脳波双極子解析方法について詳述する。
【0021】
本実施例に係る脳波双極子解析方法は、図3に示すように、脳波双極子解析に先立ち双極子解析用のプログラムに基づいて脳内の双極子d(図1に白丸を付して示す)から頭皮上への電位の伝達状態を記述する伝達行列を求める前処理(ステップS10)、解析処理手段6による解析処理のための初期設定(ステップS20)、解析処理手段6による解析処理(ステップS30)、解析結果の出力(ステップS50)の各過程を含んで実現される。以下これら各過程について項目別に説明する。
【0022】
図4を参照して前処理(ステップS10)について説明する。双極子計算に際しては脳内の双極子dから頭皮上の電位への伝達行列が必要である。伝達行列は、頭蓋モデルと頭皮上での電極配置で決まり例えばn行m列の行列で記述される。また、前記頭蓋モデルは各組織分画の形状と導電率によって決まる。
【0023】
(a)頭蓋モデル(頭蓋形状モデル)の設定(ステップS11)
被検体(被験者)の頭部30のMRI画像、あるいはX線CT画像が利用できる場合は、これらの断層像から被験者に個人適合する頭蓋モデルを構築する。このような断層像が利用できない場合は、標準の頭蓋モデルを被検体に合わせて変形する。つまり、被検体の眉間・外後頭隆起間距離、左右両耳介前点間距離、及び頭皮沿いに眉間から頭項を経て外後頭隆に至るまでの距離を計測し、これらが一致するように標準モデルを各軸方向に伸長圧縮して頭蓋モデルを構築する。
【0024】
(b)各組織の導電率の指定(ステップS12)
3層頭蓋モデルであれば、脳組織、骨組織及び表皮の導電率を指定し、4層頭蓋モデルではそれらに加えて脳脊髄液の導電率を指定する。必要ならば通流実験等によって得られる導電率を使用するが、通常は標準値を採用する。
【0025】
(c)電極配置の設定(ステップS13)
国際標準の10・20法に基づいて電極を配置する場合には、頭蓋モデルを基に主計算機7の内部で自動的に電極位置を算出する。独自の手法で電極を配置する場合には、個々の電極位置を計測してそのデータを主計算機7に入力する。
【0026】
(d)各データのデータファイルへの格納(ステップS14)
上述した頭蓋モデル、導電率、電極配置の各データを前記ファイルシステム14のデータ格納ファイルへ格納する。
【0027】
(e)伝達行列の計算(ステップS15)
主計算機7は、ファイルシステム14のデータ格納ファイルに格納した頭蓋モデル、導電率、電極配置の各データを使用して伝達行列を計算する。通常、伝達行列の計算は、各被検体に対して1度だけ実施すれば良い。ただし、電極配置を変更した場合や、開頭術等で頭蓋の形状や導電率分布が変化した場合には再度の計算が必要となる。
【0028】
(f)計算結果の格納(ステップS16)
主計算機7は、計算し求めた伝達行列を前記ファイルシステム14のデータ格納ファイルへ格納する。
【0029】
次に、図5を参照して初期設定(ステップS20)について説明する。
主計算機7は、ファイルシステム14のデータ格納ファイルに予め設定され格納された双極子の初期位置のリストを読み込む(ステップS21)この場合初期位置がN通りある場合には、主計算機7は高速処理を実現するためにN個の副計算機8A、8B・・・8Nにそれぞれ異なる初期位置のデータを配信する(ステップS22)。
次に、主計算機7はデータ格納ファイルから当該被検体の伝達行列のデータを読み込み(ステップS23)、ステップS22の処理で初期位置を配布した全ての副計算機8A、8B・・・8Nに伝達行列のデータを配信する(ステップS24)。その結果、主計算機7はオペレータによる計算開始指令の待機状態となる。
【0030】
次に、図6を参照して双極子解析(ステップS30)について説明する。
主計算機7は、オペレータによる計算開始指令があると(ステップS31)以下の手順を繰り返し実行する。すなわち、主計算機7は、まずA/D変換器5に変換開始指令を送信する(ステップS32)。これにより、A/D変換器5は各電極2から出力される脳波の実測データをディジタルデータに変換して、主計算機7の入出力インターフェース22へ送る。
【0031】
主計算機7は、A/D変換器5のディジタルデータを取り込み(ステップS33)、次にオフセット、ドリフト除去の処理を行う(ステップS34)。すなわち、脳波の測定にどのような電極2を使うにせよ分極電位の変動等に起因するオフセットやドリフトの混入は避けられない。例えば、適当な刺激に対する誘発脳波をオフラインで双極子解析する場合には、刺激前の適当な時間区間における電位の平均値を零とするように脳波のベースラインを決定できるが、実時間で双極子解析では脳電位を零とすべき明確な時間帯は存在しない。このため、適当な時間長Tを指定し、時刻tで測定された電位分布を双極子解析する場合には、時刻t−Tから時刻tまでの平均値が零となるようにベースラインを決定するものである。
【0032】
次に、主計算機7は、オフセット、ドリフト除去処理後の電位分布データをN個の副計算機8A、8B・・・8Nに配信し(ステップS35)、更に計算開始指令を出す(ステップS36)。
【0033】
各副計算機8A、8B・・・8Nは、計算開始指令に基づき予め配信された異なる初期位置のデータ及び伝達行列のデータと、オフセット、ドリフト除去処理後の電位分布データを使用し、各々双極子解析処理を並列で実行する(ステップS37)。具体的には、最小二乗法に基づき、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とするような双極子解析処理を実時間で実行する。この場合、極小値に収束するまでの繰返し回数は初期値によって異なり、最も多くの繰返しを要した初期値からの計算時間が全体の計算時間を決定するが、繰返しの上限を設定しておけば、計算完了までの最大の時間を保証することができる。
【0034】
次に、各副計算機8A、8B・・・8Nは、双極子解析の処理結果を各々主計算機7に送信する(ステップS38)。主計算機7は、各副計算機8A、8B・・・8Nからの処理結果を収集し、その中から最適な処理結果(電位分布の実測値と計算値との二乗誤差を最小とするものの中の最も小さいもの)を選択して、頭部30内の各双極子の実際の位置とベクトル成分を実時間で決定(推定)する(ステップS39)。
【0035】
主計算機7は、更に必要に応じて最適な処理結果を可視的に出力するための処理、すなわち表示装置9による表示のための出力処理、プリンタ10による印刷のための出力処理を行い、更には、前記補助記憶部11への書き込み処理等を行う(ステップS40)。
【0036】
この後、オペレータによる停止命令があれば(ステップS41)、一連の処理を終了し、停止命令が無ければステップS2以降の処理を繰り返す。
【0037】
以上説明した本実施例の脳波双極子解析装置1を使用し、双極子解析用のプログラムに基づいた実時間処理による脳波双極子解析方法によれば、頭部30内への非侵襲な構成の基に、この頭部30における頭皮表面上に配置した複数の電極2で測定される電位分布から脳内の起電力を近似する双極子の位置とベクトル成分を副計算機8A、8B・・・8Nによる並列処理を実行することで実時間で高速決定(推定)し、決定結果を実時間で表示したり印刷したり、更には記憶保持することが可能となる。
【0038】
また、上述したように、予め設定した被検体の頭蓋モデルと被検体の頭皮上の複数の電極2の配置により脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列を求める処理と、脳内に仮定する双極子の初期位置のデータを設定する処理と、被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極2からの実測データを得る処理と、伝達行列、初期位置のデータ、実測データを基に最小二乗法による解析処理を初期位置毎の並列処理により行い、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する処理とを行う脳波双極子解析用プログラムにより、脳内の起電力を近似する双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定(推定)し、決定結果を実時間で表示したり印刷したり、更には記憶保持する処理を的確に実現できる。
【0039】
更に、前記脳波双極子解析用プログラムを、例えばCD−ROM、DVD−ROM等の記憶媒体に記憶し、コンピュータ読み取り可能とすることで、この記憶媒体を用いて、本実施例の脳波双極子解析装置1を使用した高速処理可能な脳波双極子解析方法を実現することができるコンピュータシステムを容易に構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明における上述した最適な処理結果は、BCI(Brain Computer Interface)データとして活用することも可能である。また、本発明において、主計算機は個の副計算機を兼ねることができ、その場合には、N個の初期位置に対してN個の計算機(主計算機とN−1個の副計算機)があれば良い。高速性を重要視しない場合には、一つの計算機(主計算機)が複数の副計算機の役割を演ずることで安価なシステムを構築することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例に係る脳波双極子解析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係る脳波双極子解析装置の主計算機、入出力機器の詳細を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係る脳波双極子解析方法の全体の処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例に係る脳波双極子解析方法の前処理の内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例に係る脳波双極子解析方法の初期設定の内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例に係る脳波双極子解析方法の双極子解析処理の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
d 脳内の双極子
1 脳波双極子解析装置
2 電極
3 電極キャップ
4 脳波用増幅器
5 A/D変換器
6 解析処理手段
7 主計算機
8A 副計算機
8B 副計算機
8N 副計算機
9 表示装置
10 プリンタ
11 補助記憶部
12 入力部
13 入出力機器
14 ファイルシステム
21 副計算機用インターフェース
22 入出力インターフェース
23 プログラム格納部
24 CPU
30 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とするように各双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する脳波双極子解析装置であって、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極と、
予め構築した脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列及び脳内に仮定した任意数の双極子の初期位置のデータを格納したファイルシステムと、
前記複数の電極による電位の実測データと、前記ファイルシステムから読み込んだ伝達行列及び初期位置のデータとを使用し最小二乗法による解析処理を複数の計算機による初期位置毎の並列処理により行い、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する解析処理手段と、
解析結果を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする脳波双極子解析装置。
【請求項2】
脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とするように各双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する脳波双極子解析装置であって、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極と、
各電極を効率的に配置するための電極キャップと、
各電極の計測電位を増幅する多チャンネルの脳波用増幅器と、
増幅後の電位をディジタルデータに変換するA/D変換器と、
予め構築した脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列及び脳内に仮定した任意数の双極子の初期位置のデータを格納したファイルシステムと、
前記A/D変換器から出力される電位の実測データと、前記ファイルシステムから読み込んだ伝達行列及び初期位置のデータとを使用し最小二乗法による解析処理を複数の計算機による初期位置毎の並列処理により行い、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する解析処理手段と、
解析結果を可視的に出力する出力手段と、
を有することを特徴とする脳波双極子解析装置。
【請求項3】
脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とするように各双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する脳波双極子解析装置であって、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極と、
各電極を効率的に配置するための電極キャップと、
各電極の計測電位を増幅する多チャンネルの脳波用増幅器と、
増幅後の電位をディジタルデータに変換するA/D変換器と、
予め構築した脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列及び脳内に仮定した任意数の双極子の初期位置のデータを格納したファイルシステムと、
前記A/D変換器から出力される電位の実測データと、前記ファイルシステムから読み込んだ伝達行列及び初期位置のデータとを使用し最小二乗法による解析処理を複数の計算機による初期位置毎の並列処理により行い、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する解析処理手段と、
解析結果を可視的に出力する表示装置及びプリンタ及び解析結果を記憶する記憶手段と、
を有することを特徴とする脳波双極子解析装置。
【請求項4】
予め設定した被検体の頭蓋モデルと被検体の頭皮上の複数の電極の配置により脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列を求める過程と、
脳内に仮定する双極子の初期位置のデータを設定する過程と、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極からの実測データを得る過程と、
前記伝達行列、初期位置のデータ、実測データを基に最小二乗法による解析処理を初期位置毎の並列処理により行い、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する過程と、
を有することを特徴とする脳波双極子解析方法。
【請求項5】
予め設定した被検体の頭部の各組織分画の形状及び導電率によって定まる頭蓋モデルと被検体の頭皮上の複数の電極の配置により脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列を求める過程と、
脳内に仮定する双極子の初期位置のデータを設定する過程と、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極から出力されディジタル変換された実測データを得る過程と、
前記伝達行列、初期位置のデータ、実測データを基に最小二乗法による解析処理を初期位置毎の並列処理により行い、各並列処理結果の中から脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で選定する過程と、
選定結果を可視的に出力する過程と、
を有することを特徴とする脳波双極子解析方法。
【請求項6】
予め設定した被検体の頭部の各組織分画の形状及び導電率によって定まる頭蓋モデルと被検体の頭皮上の複数の電極の配置により脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列を求める過程と、
脳内に仮定する双極子の初期位置のデータを設定する過程と、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極から出力されディジタル変換された実測データを得る過程と、
前記伝達行列、初期位置のデータ、実測データを基に最小二乗法による解析処理を初期位置毎の並列処理により行い、各並列処理結果の中から脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で選定する過程と、
選定結果の表示処理、印刷処理、記憶処理を行う過程と、
を有することを特徴とする脳波双極子解析方法。
【請求項7】
予め設定した被検体の頭蓋モデルと被検体の頭皮上の複数の電極の配置により脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列を求める処理と、
脳内に仮定する双極子の初期位置のデータを設定する処理と、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極からの実測データを得る処理と、
前記伝達行列、初期位置のデータ、実測データを基に最小二乗法による解析処理を初期位置毎の並列処理により行い、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する処理と、
を行うことを特徴とする脳波双極子解析用プログラム。
【請求項8】
予め設定した被検体の頭部の各組織分画の形状及び導電率によって定まる頭蓋モデルと被検体の頭皮上の複数の電極の配置により脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列を求める処理と、
脳内に仮定する双極子の初期位置のデータを設定する処理と、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極出力されディジタル変換された実測データを得る処理と、
前記伝達行列、初期位置のデータ、実測データを基に最小二乗法による解析処理を初期位置毎の並列処理により行い、各並列処理結果の中から脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で選定する過程と、
選定結果の可視的な出力処理と、
を行うことを特徴とする脳波双極子解析用プログラム。
【請求項9】
予め設定した被検体の頭部の各組織分画の形状及び導電率によって定まる頭蓋モデルと被検体の頭皮上の複数の電極の配置により脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列を求める処理と、
脳内に仮定する双極子の初期位置のデータを設定する処理と、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極出力されディジタル変換された実測データを得る処理と、
前記伝達行列、初期位置のデータ、実測データを基に最小二乗法による解析処理を初期位置毎の並列処理により行い、各並列処理結果の中から脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で選定する処理と、
選定結果の表示、印刷及び記憶の各処理と、
を行うことを特徴とする脳波双極子解析用プログラム。
【請求項10】
予め設定した被検体の頭蓋モデルと被検体の頭皮上の複数の電極の配置により脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列を求める処理と、
脳内に仮定する双極子の初期位置のデータを設定する処理と、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極からの実測データを得る処理と、
前記伝達行列、初期位置のデータ、実測データを基に最小二乗法による解析処理を初期位置毎の並列処理により行い、脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で決定する処理と、
を行う脳波双極子解析用プログラムを記憶したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項11】
予め設定した被検体の頭部の各組織分画の形状及び導電率によって定まる頭蓋モデルと被検体の頭皮上の複数の電極の配置により脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列を求める処理と、
脳内に仮定する双極子の初期位置のデータを設定する処理と、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極出力されディジタル変換された実測データを得る処理と、
前記伝達行列、初期位置のデータ、実測データを基に最小二乗法による解析処理を初期位置毎の並列処理により行い、各並列処理結果の中から脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で選定する過程と、
選定結果の可視的な出力処理と、
を行う脳波双極子解析用プログラムを記憶したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項12】
予め設定した被検体の頭部の各組織分画の形状及び導電率によって定まる頭蓋モデルと被検体の頭皮上の複数の電極の配置により脳内の双極子から頭皮上への電位の伝達行列を求める処理と、
脳内に仮定する双極子の初期位置のデータを設定する処理と、
被検体の頭皮上に配置する脳波計測用の複数の電極出力されディジタル変換された実測データを得る処理と、
前記伝達行列、初期位置のデータ、実測データを基に最小二乗法による解析処理を初期位置毎の並列処理により行い、各並列処理結果の中から脳内に仮定した双極子が発生する電位分布と、実測の電位分布との二乗誤差を最小とする最適な脳内の双極子の位置とベクトル成分を実時間で選定する処理と、
選定結果の表示、印刷及び記憶の各処理と、
を行う脳波双極子解析用プログラムを記憶したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−325754(P2006−325754A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151416(P2005−151416)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(505192202)有限会社ブレインリサーチ アンド デベロップメント (2)
【出願人】(505192040)グリーン スタンプ アメリカ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Green Stamp America Inc.
【住所又は居所原語表記】777 3rd Avenue 18th floor New York N.Y. 10017 U.S.A.
【Fターム(参考)】