説明

脳潅流モニタ

頭部のIPGおよびPPG信号を解析することによって脳血流を推定する方法であって、この方法は、a)心周期の少なくとも一部分内でIPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きを求めるステップと、b)心周期の少なくとも一部分内でPPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きを求めるステップと、c)PPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きに対するIPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きの比を求めるステップと、d)比から脳血流指標を計算するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、どちらも2005年6月15日に出願した2つの関連PCT特許出願PCT/IL2005/000631およびPCT/IL2005/000632の一部継続出願であり、それらからの優先権を主張する。これらのPCT出願は両方とも、2002年1月15日出願の米国特許仮出願第60/348278号から米国特許法第119条(e)項に基づく特典を主張する、2003年1月15日出願のPCT特許出願PCT/IL03/00042の一部継続出願である、2004年7月15日出願の米国特許出願第10/893570号の一部継続出願である。これらの出願の全ての開示内容を参照によって本書に援用する。
【0002】
発明の分野
発明の分野は、頭部の血流の測定に関する。
【背景技術】
【0003】
脳への血流の妨害は脳細胞の機能障害を引き起こし、妨害が長引くと脳細胞の壊死さえ引き起こすので、様々な医学的事象および処置中に、脳血流を測定する必要がある。脳細胞は他の細胞より酸素の欠乏に対して脆弱であるので、かつ脳細胞は通常、傷害後に再生することができないので、脳への血流の維持は特に重要である。
【0004】
不整脈、心筋梗塞、および外傷性出血性ショックを含め、多数の一般的な状況が脳への全般的な血流の低下を引き起こすことがある。脳への血流の突然の増加もまた重大な損傷を引き起こすことがあり、特に新生児または未熟児で発生する可能性が高いが、そのような増加は、特定の病状を持つ他の患者または外科手術中にも発生することがある。全ての場合に、脳の血流の量および流量の変化に関するデータは、脳組織の傷害のリスクおよび治療の有効性を評価するのに重要であり得る。そのようなデータの利用可能性は、脳血流を増加、減少、または安定化させるための様々な医療処置の適時の実行を可能にし、脳の永久損傷を防止するかもしれない。
【0005】
脳血流の直接かつ連続的な監視のための簡単な手段が欠如する状況で、脳血流の変化に関する情報は、血圧などの容易に測定することができる臨床パラメータを監視することによって間接的に推測される。しかし、異なる病状における血圧と脳血流との間の異なる関係のため、血圧が適切のように思われる場合でも、脳血流が不適切である状況が存在するかもしれない。脳血流はまた、神経機能を監視することによっても間接的に推測することができるが、神経機能障害は往々にしてそれが検知される頃には不可逆的になっているので、脳機能に対するその影響が依然として可逆的である間に、脳血流の変化を直接検知することがより望ましい。
【0006】
脳血流を測定するための既存の手段は複雑、高価であり、場合によって侵襲的であり、それはその有用性を制限する。研究のみで現在使用されている3つの方法は、1)放射性キセノンを頚動脈に注入して、それが脳全体に拡散するときに放出する放射線を観察するもの、2)同じく放射性物質の注入に基づく陽電子放出断層撮影、および3)部屋の大きさの高価な磁気共鳴撮像システムを使用して実行され、結果を出すのに数分を要する磁気共鳴血管造影である。これらの3つの方法は、専用の機器が利用できる病院または他のセンターでのみ実行することができ、たとえ病院環境でも、これらの方法を用いて患者を連続的に監視することは実際的でない。
【0007】
第4の方法、経頭蓋ドップラ(TCD)は超音波を使用し、侵襲的ではなく、即時結果を出す。しかし、音波が頭蓋を通過し難いため、TCDは患者の約15%で血流の正確な決定を出すことができず、検査の実施および結果の解読に長い訓練および実務を経験した専門家による高い技量が要求される。TCDの別の不利点は、それが脳の局所的血流を測定するだけであり、全体的な血流を測定しないことである。ドップラ超音波は頚動脈の血流を測定するために使用することもでき、頭部への血流の推定をもたらすが、厳密に脳への血流ではなく、また椎骨動脈による頭部への血流を含まない。椎骨動脈による血流は、それが椎骨に近接しているため、超音波で測定することが難しい。
【0008】
頭部および身体の他の部分の血流を測定するために、一般的に研究で用いられる2つの追加的技術は、電気インピーダンスプレチスモグラフィ(IPG)およびフォトプレチスモグラフィ(PPG)である。Millsの米国特許第6819950号(その開示内容を参照によって本書に援用する)は、幾つかの症状の中で特に頚動脈狭窄を検知するためのPPGの使用を記載している。Cowingsの米国特許第5694939号(その開示内容を参照によって本書に援用する)は、下肢におけるIPGの使用および指におけるPPGの使用を含む、血圧を制御するためのバイオフィードバック技術を記載している。Obergらの米国特許第5396893号(その開示内容を参照によって本書に援用する)は、PPGが患者の心拍数および呼吸数を監視するのにIPGより優れていると明記している。Belalcazarの米国特許第6832113号(その開示内容を参照によって本書に援用する)は、心臓ペースメーカを最適化することを目的として血流を測定するためのIPGまたはPPGいずれかの使用を記載している。Hovlandらの米国特許第6169914号(その開示内容を参照によって本書に援用する)は、IPGおよびPPGを含め、膣プローブによる雌性性的覚醒を監視するための様々な型のセンサの使用を記載し、かつ様々な型のセンサを組み合わせて使用することを記載している。
【0009】
Yangらの米国特許第6413223号(その開示内容を参照によって本書に援用する)は、2つのPPGセンサおよび1つのIPGセンサを含み、指に付けて使用されるプローブを記載している。動脈血流の数学モデルを用いて解析された3つのセンサからの合成データは、IPGまたはPPGだけを用いることによって得られるより正確な血流の測定値をもたらす。
【0010】
J.H.SeipelおよびJ.E.Floamは、J.Clinical Pharmacology 15、144‐154(1975)で、脳、頭蓋、頭皮、およびふくらはぎの血液循環に対する薬剤、ベタヒスチジンの効果の臨床研究の結果を提示している。IPGの1形態であるレオエンセファログラフィ(REG)を使用して、脳血流の振幅を測定した。
【0011】
上に示した特許および刊行物の全ての開示内容を参照によって本書に援用する。
【発明の開示】
【0012】
本発明の一部の実施形態の態様は、IPGデータおよび/または他のデータ、例えばEKGデータの特性に従って、選択された心周期からのデータだけを使用し、他の心周期からのデータを廃棄して、IPGデータから脳血流を決定することに関する。任意選択的に、IPGデータは、例えば上に示した関連特許出願のいずれかに記載されるように、頭部または耳に配置された電極から得られる。任意選択的に、脳血流はIPGデータおよびPPGデータの合成から決定され、IPGデータ、PPGデータ、他のデータ、またはそれらの任意の組合せの特性を用いて、IPGおよびPPGデータが使用される心周期を選択する。任意選択的に、PPGデータは、例えば上に示した関連特許出願のいずれかに記載されるように、頭部または耳に配置されたPPGセンサから得られる。任意選択的に、これらの特性は心周期の期間を含み、データは類似の期間を有する心周期に使用され、非常に異なる期間を持つ心周期は廃棄される。追加的または代替的に、特性は、IPG信号および/またはPPG信号のための各心周期および後続(または先行)する心周期の信号間の相互相関を含む。例えば、相互相関がIPG信号またはPPG信号のための閾値を超えた場合にだけ、あるいは相互相関がIPGおよびPPG信号両方に対して閾値を越えた場合にだけ、データは心周期に使用される。
【0013】
本発明の一部の実施形態の態様は、IPGデータまたはIPGおよびPPGデータの合成を使用して脳血流を測定する前に、IPGデータおよび/またはPPGデータから呼吸アーチファクトを低減することに関する。呼吸アーチファクトは、例えば心周期の特定位相のデータまたは心周期の位相の特定範囲のデータの平均が常時固定値を有するように、各心周期のデータを様々に調整することによって低減される。任意選択的に、呼吸アーチファクトはIPGデータおよび/またはPPGデータから実質的に除去される。例えばIPGおよびPPGデータから計算される脳血流の呼吸周期の位相の関数としての変化は、多くの呼吸周期で平均すると、10%未満である。任意選択的に、心周期の特定位相は、例えばR波のピークによって示されるか、あるいはIPG信号またはPPG信号の最小値によって示される拡張期である。
【0014】
本発明の一部の実施形態の態様は、PPG信号の傾き、任意選択的に最大傾きに対するIPG信号の傾き、任意選択的に最大傾きの比を脳血流の尺度として用いることに関する。この傾きは、血液の流入に強く相関すると考えられる。任意選択的に、IPGおよびPPG信号の両方に使用される最大傾きは、拡張期に続く立ち上がり縁の最大傾きである。代替的に、一方または両方の信号に使用される最大傾きは、拡張期に先行する立ち下がり縁の最大絶対値の傾きである。任意選択的に、最大傾きは、例えばそれをその心周期の信号の振幅の尺度で除算することによって正規化される。任意選択的に、結果として得られる脳血流の測定値は次いで、時間平均を使用することによって平滑化される。例えば数秒の固定時間間隔により、または固定心周期数により、例えば時間移動平均が使用される。任意選択的に、平滑化は、時間と共に変化する時間間隔にわたって、信号の特性に適応しながら行なわれる。
【0015】
したがって、本発明の例示的実施形態では、頭部のIPGおよびPPG信号を解析することによって脳血流を推定する方法であって、
a)心周期の少なくとも一部分内でIPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きを求めるステップと、
b)心周期の少なくとも一部分内でPPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きを求めるステップと、
c)PPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きに対するIPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きの比を求めるステップと、
d)比から脳血流指標を計算するステップと
を含む方法を提供する。
【0016】
任意選択的に、最大傾きまたは負の最大傾きを求めるステップは、IPGおよびPPG信号両方の最大傾きを求めることを含み、比を求めるステップは、最大傾きの比を求めることを含む。
【0017】
任意選択的に、最大傾きは心周期の立ち上がり部分内の最大値である。
【0018】
代替的に、最大傾きまたは負の最大傾きを求めるステップは、IPGおよびPPG信号両方の負の最大傾きを求めることを含み、比を求めるステップは、負の最大傾きの比を求めることを含む。
【0019】
任意選択的に、負の最大傾きは心周期の立ち下がり部分内の負の最大値である。
【0020】
本発明の1実施形態では、信号の少なくとも1つの最大傾きまたは負の最大傾きは、前記信号の振幅の尺度に正規化される。
【0021】
任意選択的に、振幅の尺度は心周期全体の前記信号の尖頭間振幅である。
【0022】
代替的に、振幅の尺度は心周期全体の前記信号の平均値である。
【0023】
任意選択的に、PPG信号は頭部の左側のPPGセンサから来る。
【0024】
追加的または代替的に、PPG信号は頭部の右側のPPGセンサから来る。
【0025】
追加的または代替的に、PPG信号は、頭部の左側のPPGセンサおよび頭部の右側のPPGセンサからの信号の平均である。
【0026】
さらに、本発明の例示的実施形態では、時間変動する脳血流を推定する方法であって、
a)頭部の時間変動IPG信号を得るステップと、
b)頭部の時間変動PPG信号を得るステップと、
c)IPGおよびPPG信号を使用して、脳血流の時間変動指標を計算するステップと、
d)IPG信号、PPG信号、および脳血流指標の1つまたはそれ以上にデータ処理を実行して、ノイズもしくはアーチファクトまたは両方を低減するステップと
を含む方法を提供する。
【0027】
本発明の1実施形態では、データ処理を実行するステップは、1つまたはそれ以上の廃棄基準を満たす心周期に対し、IPG信号、PPG信号、または両方のデータを廃棄するステップを含む。
【0028】
任意選択的に、基準は、期待される範囲外の期間を有することを含む。
【0029】
任意選択的に、期待される範囲は、心周期の平均期間の1.3倍から2倍の間の最大値を有する。
【0030】
追加的または代替的に、基準は、その心周期と後続心周期との間に閾値未満の相互相関を有するIPG信号およびPPG信号の一方または両方を含む。
【0031】
追加的または代替的に、基準は、その心周期と先行心周期との間に閾値未満の相互相関を有するIPG信号およびPPG信号の一方または両方を含む。
【0032】
任意選択的に、閾値は+0.5から+0.8の間である。
【0033】
本発明の1実施形態では、データ処理を実行するステップは、IPG信号、PPG信号、または両方の呼吸アーチファクトを低減することを含む。
【0034】
任意選択的に、脳血流指標を計算するステップは、本発明の例示的実施形態に係る方法を使用することを含む。
【0035】
本発明の1実施形態では、データ処理を実行するステップは、脳血流指標を平滑化することを含む。
【0036】
任意選択的に、平滑化は時間間隔全体の平均を求めることを含む。
【0037】
任意選択的に、平滑化は、時間の関数としての脳血流指標の挙動に応じて適応調整される時間スケールを用いることを含む。
【0038】
図面の簡単な記述
本発明の例示的実施形態を以下の節で、図面を参照しながら説明する。図面は必ずしもスケール通りではなく、異なる図面に示される同じ特徴または関連する特徴に対しては概して、同じ参照番号を使用している。
図1は、本発明の例示的実施形態に係る、脳血流を求めるための方法のフローチャートである。
図2A〜2Dは、呼吸アーチファクトがある場合と呼吸アーチファクトを除去した場合の本発明の例示的実施形態に係るIPGおよびPPG信号のグラフを概略的に示す。
図3は、本発明の例示的実施形態に係る、良好および不良の心周期中のIPGおよびPPG信号のグラフを概略的に示す。
図4は、本発明の例示的実施形態に係る、動脈内膜切除処置中の計算された脳血流指標の時間の関数としてのグラフを概略的に示す。
図5は、全ての心周期を含める効果、および本発明の例示的実施形態に従って良好な心周期だけを含める効果を示す、図4に示した脳血流指標のグラフを概略的に示す。
図6は、本発明の例示的実施形態に従って時間的に平滑化された図4に示した脳血流指標のグラフを平滑化前の指標の値と共に概略的に示す。
図7は、被験者に二酸化炭素濃度の高い空気を呼吸させることによって脳血流が高められた試験中の、本発明の例示的実施形態に係る、被験者の計算された脳血流指標の時間の関数としてのグラフを概略的に示す。
図8は、被験者が左半球の血流を増加させる認知的作業を実行する試験中の、本発明の例示的実施形態に係る、被験者の脳の左および右半球の計算された脳血流指標の時間の関数としてのグラフを概略的に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、本発明の例示的実施形態に係る、脳血流(CBF)を求めるための方法を略述するフローチャート100を示す。フローチャート100の様々なステップについて、図2、3、および4に示すデータのグラフを参照しながら説明する。
【0040】
102で、頭部の生のIPGおよびPPGデータを収集する。データは、例えば上に示した関連特許出願もしくは特許、および発明の背景で言及した刊行物のいずれかに記載された方法のいずれか、または頭部のIPGおよびPPGデータを取得するための当業界で公知のいずれかの方法を使用して収集される。例えば、IPG用の電極およびPPG用の光学センサの両方を組み込んだ複合センサが使用され、あるいは別々のセンサが使用される。任意選択的にIPG電極は、上に示した特許出願に記載される通り、頭蓋の内部のインピーダンスに対する感受性が比較的高く、頭皮のインピーダンスに対する感受性が比較的低いIPGデータを得るように、サイズおよび形状を設計され、頭部に配置される。時間の関数としての生のIPGおよびPPG信号の例を、図2Aおよび2Bのプロット202および204にそれぞれ示す。
【0041】
任意選択的に2つ以上のPPGセンサがあり、例えば頭部の両側に1つずつ、2つのPPGセンサがある。任意選択的に、2つのPPGセンサは、前頭部の左側および右側にそれぞれ配置される。本書に記載するPPG信号を使用するための方法のいずれにおいても、頭部の左側からのPPG信号、または頭部の右側からのPPG信号を使用することができ、あるいは2つのPPG信号の平均を、おそらく加重平均を使用することができる。
【0042】
104で、生のIPGおよび/またはPPG信号は任意選択的に、呼吸アーチファクトを低減するように条件付けされる。これは、例えば各心周期の最小値が図2Cおよび2Dで零に設定された一定値を有するように、信号を調整することによって行なわれる。単一心周期を構成するものを定義する方法を、106に関連して下述する。結果として得られた、プロット206に示す条件付けされたIPG信号、およびプロット208に示す条件付けされたPPG信号は、呼吸アーチファクトがほとんど無い。プロット206および208を注意して見なければ、IPG信号およびPPG信号と呼吸周期との明瞭な相関は無く、IPG信号および/またはPPG信号の呼吸周期との残留相関は任意選択的に、循環する脳血流に対し10%未満の影響を結果として生じる。任意選択的に、最小値間の値は、平均値または隣接最小値の補間値によって低減される。
【0043】
任意選択的に、106で、「良好な」心周期が選択され、他の心周期からのデータは廃棄される。任意選択的に、3つの基準のうちの1つまたはそれ以上が、幾つかの心周期からのデータを廃棄するために使用される。第1の基準は、心周期の期間が平均期間からどれだけ大きくことなるかに関係する。第2および第3の基準は、IPG信号およびPPG信号それぞれについて所与の心周期の信号の形が後続(または先行)する心周期の形からどれだけ大きく異なるかに関係する。これらの基準の1つまたはそれ以上を満足する心周期からのデータは信号を変形させる高いノイズレベルを持つ可能性が高く、あるいは脳血流の典型値をもたらさない不規則な心拍に対応するかもしれない。本発明者らは、これらの3つの基準のいずれか1つを満足する心周期のデータを廃棄することが、脳血流の正確な尺度を決定するのに特に有用であることを見出した。任意選択的に、データは、心周期が2つの基準、または3つの基準全部を満足した場合にだけ廃棄される。任意選択的に、3つの基準のうちの1つだけが、データを廃棄するための基準として使用される。任意選択的に、基準の2つだけが使用され、2つの基準のいずれかが満たされた場合にだけ、データは廃棄される。任意選択的に、3つの基準が全部使用され、基準のいずれかを満足すると、データは廃棄される。特定の心周期のデータを破棄すべきか否かを決定する他の基準を当業者は思いつくであろう。
【0044】
心周期の期間は例えばEKGデータを用いて決定され、1つのR波のピークから次のR波のピークまでの時間と定義される。R波のピークとみなされるには、ピークは任意選択的に特定の基準を満たさなければならない。例えばピークは前のR波のピークから0.3秒から1.5秒の間にある。この時間間隔内に2つ以上の局部的ピークが存在する場合、R波のピークは任意選択的に、R波のピークに期待される振幅および時間間隔に最もよく似たピークを見出すことによって得られる。期待される振幅および時間間隔は、例えばR波の前のピークの振幅および時間間隔に基づく。任意選択的に、心周期の期間を定義するためにR波のピークを使用する代わりに、またはそれに追加して、IPGデータおよび/またはPPGデータが使用される。例えば心周期の期間は、IPGおよび/またはPPG信号の1つの局部的最小値(または最大値)から次の局部的最小値(または最大値)までの時間、または信号の傾きの1つの局部的最大値(または最小値)から次の傾きの局部的最大値(または最小値)までの時間と定義される。任意選択的に、IPGまたはPPG信号の局部的最小値または最大値、またはIPGまたはPPG信号の傾きの局部的最小値または最大値は、特定の基準、例えばR波のピークを使用する場合について上述した基準と同様または同一の基準を満たさなければならない。任意選択的に、期待される範囲外の期間を有する心周期のデータは廃棄される。任意選択的に、期待される範囲の最大値は、心周期の平均期間の1.3倍から2倍の間である。例えば最大値は平均期間の1.65倍である。代替的に、期待される範囲の最大値は平均期間の1.3倍未満である。任意選択的に、期待される範囲の最小値は平均期間の0.7倍未満である。代替的に、期待される範囲の最小値は平均期間の0.7倍超である。任意選択的に、範囲に明示的な最大値は無いが、上述した通り、心周期が定義される仕方のため、どの心周期にも最低期間が存在する。
【0045】
上述した「心周期の平均期間」は任意選択的に、心周期の期間の中央値または最頻値である。平均ではなく中央値または最頻値を使用することの潜在的な利点は、中央値および最頻値が、心周期の真の期間ではなくデータのノイズを表わし得る外れ値に比較的強いことである。代替的に、「心周期の平均期間」は、心周期の期間の平均である。任意選択的に、「心周期の平均期間」は例えば幾つかの心周期または数十の心周期にわたる移動平均である。心周期の平均期間の移動平均を使用すると、時間による生理学的変化による患者の脈拍数の実際の変化に合わせて平均期間を調整するという潜在的利点がある。任意選択的に、任意選択的に患者に合わせて調整される「心周期の平均期間」の代わりに固定値が使用され、あるいは固定値は、その患者に対して決定された脈拍数に基づく。
【0046】
所与の心周期の信号(IPGまたはPPG信号のいずれか)の形が後続心周期の信号とどれだけ異なるかは、例えば2つの心周期の信号間の相互相関によって決定される。任意選択的に、相互相関がIPGおよびPPG信号の一方または片方に対する何らかの閾値未満である場合には、その心周期のデータは廃棄される。任意選択的に、閾値は+0.5から+0.8の間であり、例えば閾値は+0.7である。任意選択的に、心周期と後続心周期との間の相互相関を基準に使用する代わりに、基準は心周期と前の心周期との間の相互相関に基づく。代替的に、これら2つの相互相関のいずれかが閾値未満である場合だけ、あるいは両方の相互相関が閾値未満である場合だけ、データは廃棄される。任意選択的に、IPGおよびPPG信号の両方で相互相関(どちらが使用されようとも)が閾値未満である場合だけ、データは廃棄される。代替的に、IPG信号の相互相関が閾値未満である場合だけ、またはPPG信号の相互相関が閾値未満である場合だけ、データは廃棄される。
【0047】
図3は、条件付けされたIPGデータ302(実線曲線)および条件付けされたPPGデータ304(破線曲線)のプロット300を示す。時間間隔306および308の最初の2つの心周期については、その心周期と次の心周期との間の相互相関は、IPGデータでは明らかにIPGデータのノイズのため比較的低く、これらの心周期のデータは廃棄される。残りの心周期については、その心周期と次の心周期との間の相互相関は、IPGおよびPPG信号の両方とも比較的高く、これらの心周期のデータは廃棄されない。
【0048】
108で、データが維持された心周期のIPGおよび/またはPPGデータからCBF指標が計算される。本発明の例示的実施形態では、PPG信号の最大傾きに対するIPG信号の最大傾きの比を取ることによって、そのような心周期のCBF指標が求められる。任意選択的に、最大傾きは必ずしも心周期全体にわたる最大値である必要はなく、拡張期の後の心周期の立ち上がり縁部分の最大値である。IPGおよびPPG信号の両方の大きさ、およびしたがって両方の信号の最大傾きは一般的に、様々な要因に影響され易いことを理解されたい。これらの要因として、患者の頭部の電極およびPPGセンサの正確な位置、皮膚との接触の程度、ならびに電極位置および患者の頭部の他の場所における患者の皮膚および患者の皮下脂肪の厚さが挙げられる。IPGおよびPPG信号の最大傾きの比は脳血流の絶対尺度を提供しないかもしれないが、脳血流の相対的尺度だけは提供することができる。任意選択的に、患者が適切な脳血流を持つことが分かっているときに、例えば外科手術の前に、患者の意識があり、彼に質問することによって彼の精神状態を評価することができるときに、脳血流の尺度は、その値を観察することによって較正することができる。任意選択的に、ひとたび脳血流の尺度が較正されると、例えば外科手術が終了するまで、電極およびPPGセンサは取り外されず、または再配置されない。
【0049】
脳の動脈は顔の皮膚および頭皮の動脈より直径が一般的に大きいので、脳の血液量は一般的に収縮期の開始時に、皮膚の血液量より早くかつ高速で増加する。IPG信号は脳の血液量および皮膚の血液量の両方に対して敏感であるが、PPG信号は皮膚の血液量に対してだけ敏感であるので、IPG信号は一般的に収縮期の開始時に、PPG信号より早くかつ高速で立ち上がる。各信号の最大傾きは、この立ち上がりがいかに速く発生し、いかに高く立ち上がるかの尺度である。IPG信号の最大傾きは、脳の血流および皮膚の血流の加重和の尺度である一方、PPG信号の最大傾きは皮膚だけの血流の尺度である。IPGおよびPPG信号の最大傾きは、血液量の変化を測定するIPGおよびPPG信号の尖頭間振幅より優れたこれらの領域における血流の尺度である。血液量の変化は、ある領域に流入出する血流間の差に依存する。しかし、IPGおよびPPG信号の尖頭間振幅もまた、脳血流を測定するために有用でもある。
【0050】
IPG信号またはPPG信号のいずれかまたは両方について、別の有用な血流の尺度は、信号の振幅の尺度に正規化された信号の最大傾きである。例えば最大傾きは、その心周期の信号の尖頭間振幅で除算することによって正規化される。代替的に最大傾きは、その心周期の信号の平均値、おそらく加重平均値と、信号の最小値との間の差で除算することによって正規化される。任意選択的に加重平均値は正および負両方の加重を含み、例えば加重平均値は心周期回数における信号のフーリエ成分である。任意選択的に、例えば逐次最小間の信号の領域に正規化が行なわれる。
【0051】
発明者らは、PPG信号の最大傾きに対するIPG信号の最大傾きの比(最大傾きを正規化してもしなくても)が特定の状況で、他の手段、例えばTCDによって独立に決定される脳内の血流速度としばしばよく相関することを発見した。例えば特定の状況で、脳は、頭皮および顔の皮膚への血流に影響する末梢動脈を収縮させることによって、脳血流を増加させる。これらの場合、脳血流の増加は皮膚の血流の減少と相関し、PPG信号の最大傾きに対するIPG信号の最大傾きの比は脳血流とよく相関する。
【0052】
頭部の片側の動脈の閉塞または出血によって脳血流が低減される状況で、頭部の反対側の末梢血流は比較的一定に維持されることがある。これらの場合、特にPPG信号が頭部の罹患動脈とは反対側で測定されると、PPG信号の最大傾きに対するIPG信号の最大傾きの比も脳血流とよく相関することがある。たとえPPG信号が頭部の罹患動脈と同じ側で取られても、おそらく側副動脈が血液を頭部の片側から反対側に再配分するため、最大傾きの比は脳血流とかなりよく相関することがある。
【0053】
他の状況では、脳血流の異なる尺度が最も有用であるかもしれない。例えば、血圧の低下のために頭部への全血流が減少する場合、脳は末梢動脈を収縮させ、脳より皮膚の血流を減少させることによって補償することがある。この場合、IPG信号のみの最大傾き、またはIPGおよびPPG信号の間の最大傾きの加重差が、最大傾きの比より適正な脳血流の尺度になることがある。
【0054】
本発明の一部の実施形態では、CBF指標を求めるために異なる公式を使用する。例えば、IPGおよびPPG信号の最大傾きの比を使用する代わりに、傾きを振幅の尺度に正規化するか否かにかかわらず、最小(負の最大)傾きの比を使用する。任意選択的に、負の最大傾きは必ずしも心周期全体の最大の負ではなく、収縮期の後の心周期の立ち下がり縁部分だけの最大の負である。収縮期後の血液量の低下は、拡張期後の血液量の上昇と同様に、皮膚より脳の方が速い。IPGおよびPPG信号の最小傾きの比は、最大傾きの比の場合と同様に、脳血流に関連付けることができる。代替的に、傾きの比を取るときに、信号の1つには最大傾きを使用し、他の信号には最小傾き(またはその絶対値)を使用する。
【0055】
代替的または追加的に、CBF指標は、加重されたPPG信号をIPG信号から減算し、次いで差信号の最大傾きを取ることによって求められる。任意選択的に、加重係数は、加重PPG信号の立ち下がり縁の傾き、例えば立ち下がり縁の平均傾き、または立ち下がり縁の最も急な傾きが、IPG信号の対応する傾きに等しいことを要求することによって決定される。加重係数のこの選択は、IPG信号の立ち下がり縁が皮膚の血流によって支配される場合に適切であるかもしれない。結果として得られるCBF指標は、脳および皮膚両方の血流を減少させる血圧の低下によって生じる脳血流の変化をよりよく示し得るという潜在的な利点を有する。他方、2つの信号の傾きの比に基づくCBF指標は、2つの信号間の差の傾きに基づくCBF指標より、信号のノイズに対して敏感でないかもしれない。
【0056】
任意選択的に、CBF指標はIPG信号にのみ、またはPPG信号にのみ基づく。例えばCBF指標は各心周期における一方の信号の尖頭間振幅、または各心周期における一方の信号の最大傾きもしくは最小傾き、または信号の振幅に正規化された最大もしくは最小傾きである。
【0057】
110で、CBF指標信号は、時間的平滑化のための任意の公知のアルゴリズムを使用して、時間平均される。任意選択的に、平均化は数秒の時間スケールに対して、例えば5、10、もしくは20秒に対して、または複数の心周期に対して、例えば5、10、もしくは20回の心周期に対して行なわれる。任意選択的に、平滑化のための時間スケールは、平滑化されるデータに応じて適応的に変動する。例えば、平滑化は、線形補外により次のデータ点がどこになるかがよく予測される場合には上方に調整され、線形補外により次のデータ点がどこになるかがよく予測されない場合には下方に調整される時間間隔に対して、データを平均化することを含む。
【0058】
任意選択的に、CBF指標を複数の心周期で平均化する代わりに、それに加えて、上述した方法のいずれかを使用してCBF指標を求める前に、複数の心周期の各々のIPG信号が重畳されて一緒に平均化され、任意選択的に同じことがPPG信号に対しても行なわれる。
【0059】
図4は、平滑化されたCBF指標信号402が時間の関数としてプロットされたグラフ400を示す。CBF指標は、PPG信号の正規化された最大傾きに対するIPG信号の正規化された最大傾きの比を取ることによって計算され、正規化は各信号の尖頭間振幅を使用して行なわれた。CBF指標の平滑化は、上述の通り、適応的に変動する時間間隔に対して平均化することによって行なわれた。IPGおよびPPG信号は動脈内膜切除を受ける患者で測定され、そこで頸部の片側の総頚動脈、内頚動脈、および外頚動脈が時間406と時間408との間クランプされ、その間に動脈からプラークが除去された。使用されたPPGデータは、頭部のクランプされた動脈の反対側から取られた。時間406で、動脈がクランプされ、頭部のそちら側および脳全体への血流が減少すると、主としてIPG信号の低下のため、CBF指標信号402は低下する。時間408で、クランプされた動脈が解放されると、主としてIPG信号の上昇のため、CBF指標信号402は上昇する。時間408の後、プラークが除去された動脈は以前より高い脳血流が可能になるので、CBF指標信号は動脈がクランプされる前より高くなる。
【0060】
CBF指標を計算するこの方法は、試験した方法の中で、動脈内膜切除中の脳血流に対して一般的に最善の結果をもたらすことが、発明者らによって明らかになったことに留意されたい。しかし、頭部のクランプされた動脈と同じ側からのPPG信号を使用することを含め、CBF指標の幾つかの他の計算方法も、動脈内膜切除中の脳血流のかなり優れた指標をもたらすことも明らかになった。
【0061】
図5は、不良心周期を廃棄することのCBF指標に対する効果を表わすグラフ500を示す。グラフ500に示されたCBF指標信号は、図4に使用したのと同じデータから計算された。実線で示したCBF指標信号402は「良好」な心周期だけを使用して計算されるものであり、図4に示した信号402と同じである。良好な心周期は、心周期の期間が全ての心周期の期間中央値の1.65倍未満であり、かつIPGおよびPPG信号が両方ともその心周期と後続心周期との間に少なくとも+0.7の相互相関を有するものと定義した。破線で示すCBF指標信号502は、同じ方法で、しかし全ての心周期からの信号データを含めて計算された。信号502は、動脈がクランプされている間は低下し、動脈が解放された後はさらに高いレベルに戻る信号402と同じ一般的傾向を示すが、信号502は信号402よりかなり多くのノイズを示す。
【0062】
図6は、CBF指標に対する平滑化の効果を表わすグラフ600を示す。グラフ600にプロットされた平滑化されたCBF指標402は、図4および5にプロットされた信号402と同じである。多数の小さい星602は個々の心周期のCBF指標の値を示し、それらは平滑化された信号402よりずっと高レベルのノイズを示す。
【0063】
図7および8は、発明者らがCBF指標信号の有用性を検証するために、健康な志願者を使用して実行した2つの他の試験の結果を示す。これらの試験で、CBF指標702(図7)ならびに802および806(図8)は、PPG信号の1つの最大傾きに対するIPG信号の最大傾きの比と定義されたが、最大傾はそれぞれの信号の振幅に正規化されなかった。CBF指標を計算するこの方法は一般的に、これらの2つの試験で、正規化された最大傾きを用いた場合より、優れた結果をもたらした。平滑方法、および「良好な」心周期の定義は、図4〜6のCBF指標402の場合と同じであった。
【0064】
図7のグラフ700にプロットされたデータを生成するために使用される試験で、被験者は時間708まで通常な空気を呼吸した。時間708と時間710との間では、被験者は閉じた袋から呼吸し、その結果二酸化炭素濃度が高くなった。それは、脳血流の増加を誘発することが知られている手順である。時間710の後、被験者は通常の空気の呼吸に戻った。典型的な通常の呼気の二酸化炭素分圧40mmHgに対して、被験者が吐き出したガスの二酸化炭素の測定濃度をグラフ700に信号704としてプロットする。予想通り、二酸化炭素濃度が上昇したときにCBF指標702は上昇し、二酸化炭素濃度が低下したときに再び低下する。CBF指標702の変化は大部分がPPG信号の変化によるものであり、それは、二酸化炭素濃度が増加すると、脳への酸素の引き続き適切な供給を確保するために脳が頭部の末梢動脈を収縮させるので、低下する。脳血流の標準指標である平滑化されたTCD信号704は、二酸化炭素濃度が上昇すると、同様の上昇を示す。
【0065】
図8は、脳血流に対する認知的活動の効果を示す。CBF指標802は、頭部の左側からのPPG信号を用いて計算された。脳の対応する側の血流を調節するために、脳は頭部の左右どちらかの側の末梢動脈を別々に収縮または弛緩させることが知られているので、CBF指標802は脳の左側の血流を特異的に示唆するはずである。矢印804で示される時間に、被験者に9つの乗算の問題を提示し、頭の中でそれらを解くように要求した。暗算は主として脳の左側の活動であることが知られており、被験者が問題を解いている間、CBF指標802は約2分遅延して左脳の血流の増加を示した。対照的に、頭部の右側からのPPG信号を用いて計算されたCBF指標806はそのような増加を示さず、この期間中に右脳の血流に増加が無かったことを示唆する。CBF指標806はこの期間中にわずかな減少さえ示すことがある。両方のCBF指標の変化は主としてPPG信号の変化によるものである。
【0066】
本発明について、それを実施するための最良の態様の文脈で説明した。図面に示し、あるいは関連テキストで説明した全ての特徴が、本発明の幾つかの実施形態に係る実際の装置に存在するわけではないことを理解されたい。さらに、示した方法および装置の変形が本発明の範囲内に含まれ、それは特許請求の範囲によってのみ限定される。また、1実施形態の特徴を、本発明の異なる実施形態の特徴と共に提供することができる。本書で使用する場合、用語「有する(have)」、「含む(include)」、および「備える(comprise)」またはそれらの活用形は、「含むがそれに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。本書で使用する場合、信号の「傾き(slope)」は非正規化傾きまたは正規化傾きのどちらでもよく、例えば信号の振幅の尺度に正規化された傾きを意味することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の例示的実施形態に係る、脳血流を求めるための方法のフローチャートである。
【図2A−B】呼吸アーチファクトがある場合と呼吸アーチファクトを除去した場合の本発明の例示的実施形態に係るIPGおよびPPG信号のグラフを概略的に示す。
【図2C−D】呼吸アーチファクトがある場合と呼吸アーチファクトを除去した場合の本発明の例示的実施形態に係るIPGおよびPPG信号のグラフを概略的に示す。
【図3】本発明の例示的実施形態に係る、良好および不良の心周期中のIPGおよびPPG信号のグラフを概略的に示す。
【図4】本発明の例示的実施形態に係る、動脈内膜切除処置中の計算された脳血流指標の時間の関数としてのグラフを概略的に示す。
【図5】全ての心周期を含める効果、および本発明の例示的実施形態に従って良好な心周期だけを含める効果を示す、図4に示した脳血流指標のグラフを概略的に示す。
【図6】本発明の例示的実施形態に従って時間的に平滑化された図4に示した脳血流指標のグラフを平滑化前の指標の値と共に概略的に示す。
【図7】被験者に二酸化炭素濃度の高い空気を呼吸させることによって脳血流が高められた試験中の、本発明の例示的実施形態に係る、被験者の計算された脳血流指標の時間の関数としてのグラフを概略的に示す。
【図8】被験者が左半球の血流を増加させる認知的作業を実行する試験中の、本発明の例示的実施形態に係る、被験者の脳の左および右半球の計算された脳血流指標の時間の関数としてのグラフを概略的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部のIPGおよびPPG信号を解析することによって脳血流を推定する方法であって、
a)心周期の少なくとも一部分内でIPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きを求めるステップ;
b)心周期の少なくとも一部分内でPPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きを求めるステップ;
c)PPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きに対するIPG信号の最大傾きまたは負の最大傾きの比を求めるステップ;および
d)比から脳血流指標を計算するステップ
を含む方法。
【請求項2】
最大傾きまたは負の最大傾きを求めるステップは、IPGおよびPPG信号両方の最大傾きを求めることを含み、比を求めるステップは、最大傾きの比を求めることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
最大傾きは心周期の立ち上がり部分内の最大値である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
最大傾きまたは負の最大傾きを求めるステップは、IPGおよびPPG信号両方の負の最大傾きを求めることを含み、比を求めるステップは、負の最大傾きの比を求めることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
負の最大傾きは心周期の立ち下がり部分内の負の最大値である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
信号の少なくとも1つの最大傾きまたは負の最大傾きは、前記信号の振幅の尺度に正規化される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
振幅の尺度は心周期全体の前記信号の尖頭間振幅である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
振幅の尺度は心周期全体の前記信号の平均値である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
PPG信号は頭部の左側のPPGセンサから来る請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
PPG信号は頭部の右側のPPGセンサから来る請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
PPG信号は、頭部の左側のPPGセンサおよび頭部の右側のPPGセンサからの信号の平均である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
時間変動する脳血流を推定する方法であって、
a)頭部の時間変動IPG信号を得るステップと、
b)頭部の時間変動PPG信号を得るステップと、
c)IPGおよびPPG信号を使用して、脳血流の時間変動指標を計算するステップと、
d)IPG信号、PPG信号、および脳血流指標の1つまたはそれ以上にデータ処理を実行して、ノイズもしくはアーチファクトまたは両方を低減するステップと
を含む方法。
【請求項13】
データ処理を実行するステップは、1つまたはそれ以上の廃棄基準を満たす心周期に対し、IPG信号、PPG信号、または両方のデータを廃棄するステップを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基準は、期待される範囲外の期間を有することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
期待される範囲は、心周期の平均期間の1.3倍から2倍の間の最大値を有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
基準は、その心周期と後続心周期との間に閾値未満の相互相関を有するIPG信号およびPPG信号の一方または両方を含む請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
基準は、その心周期と先行心周期との間に閾値未満の相互相関を有するIPG信号およびPPG信号の一方または両方を含む請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
閾値は+0.5から+0.8の間である請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
データ処理を実行するステップは、IPG信号、PPG信号、または両方の呼吸アーチファクトを低減することを含む請求項12〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
脳血流指標を計算するステップは、請求項1〜11のいずれか1項に係る方法を使用することを含む請求項12〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
データ処理を実行するステップは、脳血流指標を平滑化することを含む請求項12〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
平滑化は時間間隔全体の平均を求めることを含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
平滑化は、時間の関数としての脳血流指標の挙動に応じて適応調整される時間スケールを用いることを含む請求項21または22に記載の方法。

【図1】
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【図2A−B】
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【図2C−D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−546438(P2008−546438A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516457(P2008−516457)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【国際出願番号】PCT/IB2006/050174
【国際公開番号】WO2006/134501
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507411969)オルサン メディカル テクノロジーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】