説明

脳移行型融合ポリペプチド

【課題】脳移行活性を有する融合タンパク質、該融合タンパク質の製造方法、並びに、該融合タンパク質を成分とする薬剤を提供する。
【解決手段】移行後も活性を保ったまま脳への移行を可能とする、特定のアミノ酸配列を有する脳移行性ペプチド(BTタグ)と、任意のタンパク質、酵素、抗体、生理活性ポリペプチド、マーカータンパク質との融合タンパク質。前記融合タンパク質を含む、脳疾患治療剤、脳疾患診断薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳移行活性を有する融合タンパク質、該融合タンパク質の製造方法、並びに、該融合タンパク質の利用に関する。
【背景技術】
【0002】
高次機能中枢をつかさどる脳は、血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB)と呼ばれるバリヤー構造によって物質や細胞の輸送を制限されている。そのため外科的手術を除いては効果的に治療を行い難い部位であった。血流中を循環する単球などの白血球を採取し成体動物に移植を行っても、血液脳関門が外的因子によって破綻した場合を除いて脳実質内へ移行しないことが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
また、薬物などを経口摂取しても注射などにより投与しても、血液脳関門が存在するため、脳は、ほかの臓器に比べて有効濃度が得られにくい特徴がある。一方、大量投与することにより有効な濃度を脳内で確保することが可能にはなるが、末梢血液中には大過剰の薬物を注入することになり、腎障害や肝障害などの副作用の問題が生じる。そこで、脳への選択的薬物輸送のシステムを開発することが必要となり、実際に多くの研究がなされてきている。
【0004】
従来、中枢神経疾患領域の医薬候補化合物の開発は、分子量500程度までの低分子化合物であれば、脂溶性を高めてやればある程度血液脳関門を通過するようになるという、脳の血管内皮細胞の性質を利用した、薬物そのものの化学修飾による脳移行性の増大をはかるものであった。しかし、このような方法論では薬物の脳移行性が最大数倍程度改善するものの、全体としてはほとんど誤差範囲に留まるにすぎないという結果である。これは、末梢臓器への物質の浸透が血管内皮細胞の細胞間隙を通過するのに対して、脳の血管内皮細胞は細胞間隙が密着帯という特殊な構造を形成し細胞間隙からの血液成分の浸透がほとんどみられないため、脳への物質輸送は脂溶性の化学修飾を行い直接細胞膜にとけ込ませて浸透させるということを行わなければならない。つまり、脳への物質輸送は末梢臓器と違って迂回路がないため、正面突破により細胞の中を浸透させるということを行う方法論である。しかしそのメカニズムが異なるため、効率が数千から数万倍低く、したがって、脳特異的な薬物輸送とはいえない。
【0005】
さらに、最近では、がん、神経変性疾患、関節リウマチなどの治療薬として、低分子化合物ばかりでなく、タンパクや抗体が有用であることが判明し、これらを治療手段として開発する必要性が高まっているが、このような高分子量の物質は上記低分子化合物以上に血液脳関門に妨げられて、ほとんど脳移行性が望めないとされていた。
これまでのところ、ポリペプチドを脳特異的に効率的に移行させる技術は知られていなかった。
【0006】
なお、本出願の発明に関連する先行技術文献情報を以下に示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Imai, F., Sawada, M., Suzuki, H. et al. Neurosci Lett 237 1 pp.49-52 (1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、脳移行活性を有する融合タンパク質、該融合タンパク質の製造方法、並びに、該融合タンパク質を成分とする薬剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究の結果、ポリペプチドと脳移行性ペプチド(BTタグ)との融合タンパク質が、動物を用いた実験から実際に脳へ移行することを見出した。
また、本発明者による実験から、BTタグと融合させることによって作製された酵素活性を有するタンパク質が、脳へ移行した後も、実際に酵素活性を有することが確認された。
【0010】
本発明は、脳移行活性を有する融合タンパク質、該融合タンパク質の製造方法、並びに、該融合タンパク質を成分とする薬剤に関し、より具体的には、
〔1〕 以下の(i)〜(iii)のいずれかに記載のポリペプチドと、任意のポリペプチドとが融合した構造のポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド、
(i) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(ii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(iii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
〔2〕 任意のポリペプチドが酵素である、〔1〕に記載のポリペプチド、
〔3〕 任意のポリペプチドが抗体である、〔1〕に記載のポリペプチド、
〔4〕 任意のポリペプチドが生理活性ポリペプチドである、〔1〕に記載のポリペプチド、
〔5〕 任意のポリペプチドがマーカータンパク質である、〔1〕に記載のポリペプチド、
〔6〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
〔7〕 発現可能な状態で任意のポリペプチドをコードするDNAと、以下の(i)〜(iii)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNAとが結合した構造のDNAを含む発現ベクター、
(i) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(ii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(iii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
〔8〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のポリペプチド、または〔7〕に記載の発現ベクターを含む、脳疾患治療剤、
〔9〕 〔5〕に記載のポリペプチドを含む、脳疾患診断薬、
〔10〕 以下の工程(a)〜(c)を含む、脳移行活性を有する組換えタンパク質の製造方法、
(a)発現可能な状態で任意のタンパク質をコードするDNAと、以下の(i)〜(iii)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNAとが結合した構造のDNAを含む発現ベクターを作製する工程
(i) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(ii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(iii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(b)前記発現ベクターを細胞へ導入する工程
(c)前記ベクターからの発現産物を回収する工程
を、提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
脳疾患に対して薬効を奏するポリペプチドとBTタグとを融合させた本発明のタンパク質を、脳疾患等を有する患者へ投与することにより、該タンパク質を効果的に脳へ移行させ、脳内において治療効果を発揮させることが可能である。
【0012】
また、BTタグとルシフェラーゼ等のマーカータンパク質との融合タンパク質は、脳疾患診断薬として有用である。例えば、脳内分子(レセプター等)への親和性を有する診断用分子と、本発明のルシフェラーゼタンパク質とBTタグが融合した脳移行性タンパク質(BT-Luciferase)とを結合させた物質を投与し、当該物質について脳内のルシフェラーゼ活性(発光)を指標にモニターすることによって、脳内分子の分布や結合活性を測定することが可能である。即ち、本発明の融合ポリペプチドは、脳疾患等の診断へ応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コーディング配列のN末端側にHA-Tag配列、C末端側にBT-Tag配列が付加され、さらにそのC末端側にpET101ベクター由来のV5タグとHis-6タグが結合したタンパク質を発現するベクターの構造を模式的に示す図である。
【図2】上段にpET101-Ctag-hRluc++ベクター(BTタグありルシフェラーゼ)の構造を、下段にpET101-Contl-hRluc++ベクター(BTタグなしルシフェラーゼ)の構造を模式的に示す図である。ルシフェラーゼをコードする配列をpET101-CtagおよびpET101-Contに挿入し、BTルシフェラーゼを発現するプラスミドpET101-Ctag-hRluc++、およびControlルシフェラーゼを発現するプラスミドpET101-Contl-hRluc++ を構築した。
【図3】BTタグと結合した組換えルシフェラーゼ遺伝子の構造を模式的に示す図である。pET101-Contl-hRluc++により発現されるControlルシフェラーゼ、およびpET101-Ctag-hRluc++により発現されるBTルシフェラーゼのタグ構成を示す。ControlルシフェラーゼではN末よりMyc-hRLuc-V5-His の順に、BTルシフェラーゼでは HA-hRluc-BT-V5-Hisの順にタグが付加される。
【図4】BTタグありルシフェラーゼ(BTルシフェラーゼ)のアミノ酸配列を示す図である。下線はHA-Tag配列、点線はルシフェラーゼ配列、囲い枠中の文字は導入された変異アミノ酸、二重下線はBTタグ配列(配列番号:4)、斜体はV5配列を表す。C末端にHis×6配列を有する。
【図5】BTタグなしルシフェラーゼ(Controlルシフェラーゼ)のアミノ酸配列を示す図である。下線はMyc-Tag配列、点線はルシフェラーゼ配列、囲い枠中の文字は導入された変異アミノ酸、斜体はV5配列を表す。C末端にHis×6配列を有する。
【図6】組換えタンパク質の発現をウェスタンブロッティング(Western Blotting)によって検出した結果を示す写真である。発現プラスミドを保有するE.coli BL21 StarTM(DE3細胞)を37℃で培養し、IPTG添加によって発現を誘導した。菌体のCytoplasm分画をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離してウェスタンブロッティングを行い抗hRluc抗体で検出することによってルシフェラーゼの発現が確認された。
【図7】精製されたルシフェラーゼをSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し銀染色で検出した結果を示す写真である。組換えルシフェラーゼをHis-Tagを利用したアフィニティクロマトグラフィーで精製した。精製標品をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し銀染色で検出したところ、ほぼ単一のおよそ40kdのバンドが検出された。従って、目的のタンパク質が精製されていることが確認された。
【図8】ControlルシフェラーゼおよびBTルシフェラーゼの精製工程における酵素活性(比活性)の変化を示す図である。酵素活性測定にはRenilla Luciferase Assay System (Promega, E2810 or E2820) を用いた。タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミンを標準としBradford assayを用いて測定した。
【図9】動物へ投与された本発明の融合ポリペプチドの脳移行性を示す図である。ControlルシフェラーゼおよびBTルシフェラーゼの脳および肝臓への移行率を示した。本発明の融合ポリペプチドは脳へ移行した(脳移行活性を有する)ことが示された。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、脳移行活性を有する融合ポリペプチドを提供する。本発明の融合ポリペプチドの好ましい態様としては、任意のポリペプチドと脳移行性ペプチド(BTタグ)とが融合(結合)した構造のポリペプチドである(本明細書において「本発明の融合ポリペプチド」と記載する場合あり)。
【0015】
本発明において脳移行性ペプチド(BTタグ)とは、例えば、以下の〔配列1〕に記載のアミノ酸モチーフ配列、より好ましくは〔配列2〕に記載のアミノ酸モチーフ配列、または〔配列3〕に記載のアミノ酸モチーフ配列を例示することができる(WO 2005/014625)。
【0016】
〔配列1〕X1−(RまたはK)−X3−X4、または
X4−X3−(RまたはK)−X1
【0017】
式中、
X1はS(セリン)、T(トレオニン)、N(アスパラギン)、P(プロリン)、V(バリン)またはL(ロイシン);
X3は任意のアミノ酸;
X4はG(グリシン)、S(セリン)、T(トレオニン)、C(システイン)、N(アスパラギン)、L(ロイシン)、Q(グルタミン)、またはY(チロシン);
を表す。
【0018】
〔配列2〕 X1−(RまたはK)−X3−X4、または
X4−X3−(RまたはK)−X1
【0019】
式中、
X1はS(セリン)、T(トレオニン)、N(アスパラギン)、P(プロリン)、またはV(バリン)〔ただし、X1は、さらに好ましくはSまたはT〕;
X3は任意のアミノ酸;
X4はG(グリシン)、S(セリン)、T(トレオニン)、C(システイン)、N(アスパラギン)、Q(グルタミン)、またはY(チロシン)〔ただし、X4は、さらに好ましくはT、QまたはC〕;
を表す。また、上記(RまたはK)は、さらに好ましくはRである。一般的に、これらアミノ酸(G、S、T、C、N、Q、Y)は、非電荷極性アミノ酸に分類される。
【0020】
〔配列3〕 X1−(RまたはK)−X3−X4、または
X4−X3−(RまたはK)−X1
【0021】
式中、
X1はS(セリン)、T(トレオニン)、P(プロリン)、またはL(ロイシン);
X3は任意のアミノ酸;
X4はG(グリシン)、S(セリン)、T(トレオニン)、C(システイン)、L(ロイシン)、またはQ(グルタミン);
を表す。
【0022】
なお、本明細書におけるアミノ酸は、一般的に使用される一文字表記にならって記載した(例えば、Rはアルギニン、Kはリシン)。また、一般的な記載方法にならい、N末からC末方向の順にアミノ酸配列を記載した。
【0023】
本発明のBTタグは、環状構造を有するポリペプチドであってもよい。BTタグとして、例えば、環状領域を構成するポリペプチドの中に上記モチーフ配列を有する環状ポリペプチドを挙げることができる。上記モチーフ配列を構成するアミノ酸は、互いに隣接する4アミノ酸残基から構成される。これら隣接するアミノ酸同士は、通常、ペプチド結合(アミド結合)を形成する。
【0024】
本明細書における上記〔配列1〕〜〔配列3〕の、「−」は、通常、ペプチド結合を意味する。
【0025】
また、(表1)に記載した脳移行活性を有するポリペプチドは、例えば、以下の特徴を有する。
環状構造を形成し得るポリペプチド領域(即ち、両端のシステインを除くアミノ酸配列)において、(1)全てのポリペプチドには塩基性アミノ酸のKまたはRが含まれ、(2)残りのアミノ酸残基は、10種のアミノ酸〔G、A、V、L、S、T、P、Q、H、N〕のいずれかから構成される。
【0026】
従って、本発明のBTタグの好ましい態様においては、環状領域を有するポリペプチドであって、該環状領域に少なくとも1以上の塩基性アミノ酸残基(KまたはR)を有し、かつ、該環状領域の残りのアミノ酸残基がアミノ酸残基〔G、A、V、L、S、T、P、Q、H、N〕から選択される(通常、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは100%)ことを特徴とする(この特徴を、本明細書において「特徴1」と記載する場合あり)。
【0027】
BTタグのさらに好ましい態様においては、上記「特徴1」を有するポリペプチドであって、本発明のモチーフ配列(〔配列1〕〜〔配列3〕)を含むポリペプチドである。
【0028】
また、本発明において脳移行モチーフ配列を含むポリペプチドとしては、例えば、以下のポリペプチドが挙げられる。
(a)塩基性アミノ酸残基(KまたはR)を10%以上含有する、脳移行活性を有するポリペプチド。
(b)環状ペプチド領域を有するポリペプチドであって、該環状ペプチド領域において塩基性アミノ酸残基(KまたはR)が10%以上含まれる、脳移行活性を有するポリペプチド。
(c)環状ペプチド領域を有するポリペプチドであって、該環状ペプチド領域に少なくとも1以上の塩基性アミノ酸残基(KまたはR)を有する、脳移行活性を有するポリペプチド。
【0029】
本発明の好ましい態様においてBTタグの長さは、特に制限されないが、例えば100アミノ酸以内であり、好ましくは50アミノ酸以内であり、より好ましくは4〜30アミノ酸であり、さらに好ましくは4〜15アミノ酸であり、さらに好ましくは4〜9アミノ酸であり、最も好ましくは4〜7アミノ酸である。
【0030】
また好ましい態様においては、本発明のポリペプチドは以下の(A)および/または(B)の機能(活性)を有することを特徴とする。
(A)トランスマイグレーション(トランスサイトーシス)誘導活性
(B)脳の血管内皮細胞と結合する活性
【0031】
上記(A)における「トランスマイグレーション」とは、ある分子が脳へ侵入する際に、血管内皮細胞の細胞間隙を通過するのではなく、血管内皮細胞内を通過する現象を言う。これは「trans-endothelial cell migration」、「trans cellular pathway」、もしくは「トランスサイトーシス」とも呼ばれ、このメカニズムによって血管内皮細胞を通過する分子(細胞等)は、その表面にシグナル分子を持ち、血管内皮細胞表面上にある受容体を介して血管内皮細胞に上記現象を誘導するものと考えられる。
【0032】
本発明のBTタグは、血管内皮細胞に上記トランスマイグレーションを誘導する活性を有するものと考えられる。即ち、本発明のBTタグは、トランスマイグレーションを誘導するためのシグナル分子としての役割を担うものと考えられる。
【0033】
また、上記シグナル分子は、トランスマイグレーションの初期段階において脳の血管内皮細胞と(例えば、該細胞上の受容体と)結合するものと考えられる。従って、好ましい態様においては、本発明のBTタグは、脳の血管内皮細胞と結合する活性を有することを特徴の一つとする。
【0034】
任意の被検分子について、上記(A)のトランスマイグレーション誘導活性を有するか否か、あるいは、上記(B)の脳の血管内皮細胞と結合するか否かは、当業者においては公知の方法を利用して適宜評価することができる。一例を示せば、蛍光標識を施した被検分子を血管内に投与し、脳の血管内皮細胞の凍結切片を蛍光顕微鏡によって観察することにより評価することができる。例えば、蛍光標識された分子が付着した血管内皮細胞が観察されれば、被検分子は上記(B)の活性を有するものと判定され、また、蛍光標識された被検分子が血管内皮細胞内において観察されれば、被検分子は上記(A)の活性を有するものと判定される。
【0035】
また、上記蛍光標識方法以外にも、アイソトープ標識、PETリガンドによる標識、マグネタイトなどと結合させてMRIで検出する方法等が挙げられる。上記in vivo法以外のその他の態様としては、例えば、血管内皮細胞の培養系を用いてBBBモデルを作製し、上記被検分子を投与することによっても、トランスマイグレーション誘導活性を評価することができる。透過が確認できれば、上記(A)の活性を有するものと判定され、また、洗浄後に血管内皮細胞に接着していれば、上記(B)の活性を有するものと判定される。また、上記「脳の血管内皮細胞」とは、例えば、マウスMBEC4、市販のヒト由来脳血管内皮細胞BBEC、牛脳由来の一時培養血管内皮細胞等の細胞、また末梢血管由来血管内皮細胞とアストロサイトを共培養しBBB様機能を誘導したもの等を示すことができる。当業者においては任意のポリペプチドについて、これらの細胞を利用して、上記(A)または(B)の活性の有無を評価することが可能である。
【0036】
本発明においてBTタグとは、具体的には、以下の配列、または該配列において両末端のシステイン残基を除いた配列からなるポリペプチドを好適に示すことができる。
【0037】
(表1)
名称 アミノ酸配列
T2J001 CSNLLSRHC (配列番号:1)
T2J002 CSLNTRSQC (配列番号:2)
T2J003 CVAPSRATC (配列番号:3)
T2J004 CVVRHLQQC (配列番号:4)
T2J004V3L CVLRHLQQC (配列番号:5)
T2J006 CRQLVQVHC (配列番号:6)
T2J007 CGPLKTSAC (配列番号:7)
T2J008 CLKPGPKHC (配列番号:8)
T2J009 CRSPQPAVC (配列番号:9)
T2J012 CNPLSPRSC (配列番号:10)
T2J013 CPAGAVKSC (配列番号:11)
T2J013V6L CPAGALKSC (配列番号:12)
【0038】
具体的なアミノ酸配列(例えば、配列番号:1〜12)が開示された場合においては、当業者であれば、これらアミノ酸配列を基に、一部のアミノ酸が改変された配列からなるポリペプチドを作製し、当該ポリペプチドについて、脳移行活性を有するか否かを評価することにより、本発明のBTタグを適宜選択することが可能である。所望のポリペプチドについて脳移行活性の有無を評価する方法は、例えば、被検ポリペプチドを動物の頚動脈へ投与し、該動物の脳内へ移行するか否かを評価することにより行うことができる。
【0039】
本発明の脳移行活性を有する融合ポリペプチドは、上記BTタグと任意のポリペプチドが融合(結合)した構造のポリペプチドである。
【0040】
本発明における「融合」(結合)とは、好ましくは、ペプチド結合によって結合された状態を指す。本発明におけるBTタグと任意のポリペプチドとの「結合」もしくは「融合」とは、任意のポリペプチドの末端にBTタグが結合(融合)された状態のみに限定されず、例えば、任意のポリペプチドの中途にBTタグが挿入された状態をも包含する。
【0041】
本発明における脳移行活性を有する融合ポリペプチドの好ましい態様としては、以下の(i)〜(iii)のいずれかに記載のポリペプチドと、任意のポリペプチドとが融合した構造のポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチドである。
(i) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(ii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(iii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
【0042】
上記(iii)において「数個」とは、少数の個数を言うが、例えば、2〜9個、好ましくは2〜7個、より好ましくは2〜5の範囲を意味し、より好ましくは2もしくは3である。
【0043】
また本発明において、「脳移行活性を有する」とは、脳以外の部位へ投与された際に、脳へ移行する活性をいう。例えば、血液脳関門を透過する活性を有することも、本発明における「脳移行活性を有する」に含まれる。本発明の融合ポリペプチドは、例えば、この血液脳関門透過能を指標とすることによって、他のポリペプチドと区別することが可能である。
【0044】
所望のポリペプチドについて血液脳関門透過能の有無は、例えば、マウス脳毛細血管内皮細胞であるMBEC4を用いたBBBモデルを利用して、適宜評価することができる。また、任意のポリペプチドについて脳移行活性を有するか否かは、例えば、実験動物等を用いて検討することも可能である。即ち、被検ポリペプチドをマウス等の被検動物の静脈(例えば、尾静脈等)から投与し、脳において被検ポリペプチドの存在の有無を検出することにより、評価することができる。静脈へ投与した細胞が脳へ移行していれば(例えば、脳において被検ポリペプチドが検出されれば)、該ポリペプチドは脳移行活性を有するものと判定される。
【0045】
上記方法において使用可能な生物は、血液脳関門を有する動物であれば特に制限されないが、通常、哺乳動物であり、好ましくは、マウス、ラット、スナネズミ、ネコ、ウシ、サル等である。
【0046】
また本発明のポリペプチドは、組換えタンパク質由来ポリペプチド、または化学合成ポリペプチド等のいずれのポリペプチドであってもよい。当業者においては、任意のアミノ酸配列からなるポリペプチドを合成することが可能である。例えば、上記のアミノ酸配列または上記アミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換されたアミノ酸配列を有するようなポリペプチドの合成は、当業者に公知の方法、例えば、市販のポリペプチド合成機等を利用して適宜実施することができる。
【0047】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた、本発明に含まれる。上記ポリヌクレオチドとは、通常、DNAまたはRNAの双方が含まれる。即ち、本発明のポリヌクレオチドをコードするDNA、および該DNAの転写産物であるRNAは、本発明に包含される。
【0048】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドが挿入されたベクター、本発明のポリヌクレオチドまたは該ベクターを保持する宿主細胞、および該宿主細胞を利用した本発明のポリペプチドの製造方法を提供する。
【0049】
本発明のベクターとしては、挿入したDNAを安定に保持するものであれば特に制限されず、例えば宿主に大腸菌を用いるのであれば、クローニング用ベクターとしてはpBluescriptベクター(Stratagene社製)などが好ましい。本発明のポリペプチドを生産する目的においてベクターを用いる場合には、特に発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、試験管内、大腸菌内、培養細胞内、生物個体内でポリペプチドを発現するベクターであれば特に制限されないが、例えば、試験管内発現であればpBESTベクター(プロメガ社製)、大腸菌であればpETベクター(Invitrogen社製)、培養細胞であればpME18S-FL3ベクター(GenBank Accession No. AB009864)、生物個体であればpME18Sベクター(Mol Cell Biol. 8:466-472(1988))などが好ましい。ベクターへの本発明のDNAの挿入は、常法により、例えば、制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応により行うことができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 11.4-11.11)。
【0050】
本発明のベクターが導入される宿主細胞としては特に制限はなく、目的に応じて種々の宿主細胞が用いられる。ポリペプチドを発現させるための細胞としては、例えば、細菌細胞(例:ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌)、真菌細胞(例:酵母、アスペルギルス)、昆虫細胞(例:ドロソフィラS2、スポドプテラSF9)、動物細胞(例:CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowes メラノーマ細胞)および植物細胞を例示することができる。宿主細胞へのベクター導入は、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 9.1-9.9)、リポフェクタミン法(GIBCO-BRL社製)、マイクロインジェクション法などの公知の方法で行うことが可能である。
【0051】
宿主細胞において発現したポリペプチドを小胞体の内腔に、細胞周辺腔に、または細胞外の環境に分泌させるために、適当な分泌シグナルを目的のポリペプチドに組み込むことができる。これらのシグナルは目的のポリペプチドに対して内因性であっても、異種シグナルであってもよい。
【0052】
本発明のポリペプチドの回収は、本発明のポリペプチドが培地に分泌される場合は、培地を回収する。本発明のポリペプチドが細胞内に産生される場合は、その細胞をまず溶解し、その後にポリペプチドを回収する。組換え細胞培養物から本発明のポリペプチドを回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法を用いることができる。
【0053】
本発明のBTタグは、脳移行活性を付与させたい任意のポリペプチドに対して、N末側またはC末側のいずれの末端へ結合させ、あるいは(脳移行活性を付与させたい)任意のポリペプチドの配列中に挿入してもよいが、C末側への結合が好ましい。
【0054】
また、BTタグは任意のポリペプチドとリンカー(ペプチドリンカー等)を介して結合させてもよい。例えば、scFvに対してBTタグを結合させる場合には、scFvの二つの抗原結合ドメインの中間に配置するリンカー配列にBTタグを入れることも可能である。
【0055】
脳移行活性を付与させたいポリペプチドが、3次構造を形成する場合には、BTタグが当該タンパク質の表面部へ露出するように該ポリペプチドと結合されていることが好ましい。また、脳移行活性を付与させたいポリペプチドが構造上ループをなすことが予想される領域がある場合は、当該ループ領域へBTタグを入れることが好ましい。
【0056】
本発明の融合ポリペプチドの精製を効率的に行うために、本発明のポリペプチド中に検出用タグが含まれるように、本発明の融合ポリペプチドを構築することができる。例えば、一般的に精製用あるいは検出用タグとして用いられる各種タグを適宜利用することができる。具体的には、HAタグ、mycタグ、V5タグ、HISタグ等を例示することができる。
【0057】
検出用タグを利用した場合の本発明の融合タンパク質の構造の一例を図3に示す。当業者であれば検出用タグの結合部位について、適切な部位を選択して、本発明の融合タンパク質を適宜設計することが可能である。
【0058】
本発明においてBTタグと結合させるポリペプチドは、任意のポリペプチドであってよい。その長さは特に制限されないが、例えば、4〜50程度のアミノ酸からなるポリペプチド、51〜200程度のアミノ酸からなるタンパク質、または、200以上のアミノ酸からなる大型のタンパク質等を例示することができる。
【0059】
また、本発明においてBTタグと結合させるポリペプチドは、例えば、酵素活性を有するポリペプチド、生理活性を有するポリペプチド、抗体、マーカータンパク質(レポータータンパク質)等を例示することができる。ここで「抗体」には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、さらにFabまたは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物を含むFabフラグメント等が含まれるが、好ましくは単鎖ペプチド抗体である。
【0060】
上記抗体は、当業者に公知の方法により調製することが可能である。ポリクローナル抗体であれば、例えば、次のようにして得ることができる。抗原のポリペプチドあるいはそのGSTとの融合タンパク質をウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、本発明のポリペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより調製する。また、モノクローナル抗体であれば、例えば、マウスなどの小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分離し、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティーカラム等により精製することで、調製することが可能である。
【0061】
本発明において、BTタグと融合させるポリペプチドとして、酵素活性を有するポリペプチドあるいは生理活性を有するポリペプチドを好適に挙げることができる。例えば、脳疾患に対して治療効果を有する酵素あるいは生理活性ポリペプチドとBTタグとを結合させた本発明の融合ポリペプチドは、体内へ投与することにより脳へ効率的に移行し、脳で治療効果を奏することが期待される。例えばパーキンソン病の脳で不足している酵素や、ゴーシェ病などリソゾーム病で欠損している酵素(通常の酵素補充療法(セレザイム)は脳の病変には無効である)、あるいは、脳虚血後であれば活性酸素分解酵素等、さらにアルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中などの神経変性病変に対しては、神経保護作用を有する神経栄養因子や細胞増殖因子をBTタグと結合させることにより、本発明の融合ポリペプチドを作製することができる。本発明の上記ポリペプチドは、上記脳疾患に対して治療効果を奏することが期待される。
【0062】
本発明において、BTタグと融合させるポリペプチドとして、脳内病変部に結合する活性を有する抗体を好適に挙げることができる。例えば、脳疾患に対して治療効果を有する抗体とBTタグとを結合させた本発明の融合ポリペプチドは、体内へ投与することにより脳へ効率的に移行し、脳で治療効果を奏することが期待される。例えばアルツハイマー病の原因因子と考えられているベータアミロイド(Aβ)に結合する抗体や、グリオブラストーマなど脳腫瘍、もしくは乳がんや肺がんの転移性脳腫瘍のがん細胞に対する抗体、リンパ腫細胞に対する抗体、がんの血管新生を阻害する抗血管新生因子抗体、プリオンタンパクに対する抗体をBTタグと結合させることにより、本発明の融合ポリペプチドを作製することができる。本発明の上記ポリペプチドは、上記脳疾患に対して治療効果を奏することが期待されるほか、脳内病変を描出する診断用分子としても用いることができる。抗体は必ずしも全長でなくともよく、Fab断片や、scFv抗体やDiabodyなどの低分子化抗体でもよい。
【0063】
また、本発明においてBTタグと融合させるポリペプチドとして、マーカータンパク質を好適に用いることができる。BTタグとマーカータンパク質との融合タンパク質は、脳疾患診断薬として有用である。本発明において利用可能なマーカータンパク質としては、一般的に公知の種々のマーカータンパク質が挙げられるが、例えば、ルシフェラーゼ、GFP、アザミグリーン、パーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等を例示することができる。
【0064】
本発明の好ましい態様としては、例えば、脳内分子(レセプター等)への親和性を有する診断用分子と、本発明のルシフェラーゼタンパク質とBTタグが融合した脳移行性タンパク質(BT-Luciferase)とを結合させ、脳内のルシフェラーゼ活性(発光)をモニターすることにより、脳内分子の分布や結合活性を測定することが可能である。即ち、脳疾患についての種々の検査・診断へ応用することができる。
【0065】
従って、本発明は、本発明の融合ポリペプチドまたは本発明のベクターを有効成分として含む脳疾患診断薬を提供する。本発明の診断薬としては、例えば、BTタグが結合したマーカータンパク質に対して、さらに脳疾患関連因子と親和性を有する診断用分子が結合した物質を有効成分として含有する薬剤が挙げられる。本発明における「マーカータンパク質」には、BTタグが結合したマーカータンパク質に対して、さらに任意の分子が結合した構造のポリペプチドが含まれる。
【0066】
また、癌細胞に結合する作用のある分子(例えば、抗体、EGF断片等)と、BTタグが融合したマーカータンパク質とを結合させることによって、当該物質を脳転移診断に用いることも可能である。本発明の上記診断薬を個体へ投与し、脳内のマーカータンパク質をモニターする工程を含む、脳疾患もしくは脳転移を診断(モニター)する方法もまた、本発明に含まれる。
【0067】
また本発明は、本発明の融合ポリペプチドの製造方法を提供する。本発明の製造方法の好ましい態様としては、任意のポリペプチドにBTタグを結合させる工程を含む方法である。
【0068】
本発明のポリペプチドは、任意のポリペプチドと本発明のBTタグとの融合タンパク質をコードするDNAを用いて、組換えペプチドとして作製することが可能である。即ち、融合ポリペプチドを作製する方法は、本発明のBTタグをコードするDNAと、脳移行活性を付与させたいポリペプチドをコードするDNAとをフレームが一致するように連結して、これを発現ベクターに導入し、宿主で発現させる方法が挙げられる。
【0069】
例えば、以下の工程(a)〜(c)を含む方法によって作製することができる。
(a)発現可能な状態で任意のタンパク質分子をコードするDNAと、BTタグをコードするDNAとが結合した構造のDNAを含む発現ベクターを作製する工程
(b)前記発現ベクターを細胞へ導入する工程
(c)前記ベクターからの発現産物を回収する工程
【0070】
より具体的には、本発明は以下の工程(a)〜(c)を含む、脳移行活性を有する組換えタンパク質の製造方法に関する。
(a)発現可能な状態で任意のタンパク質をコードするDNAと、以下の(i)〜(iii)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNAとが結合した構造のDNAを含む発現ベクターを作製する工程
(i) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(ii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(iii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(b)前記発現ベクターを細胞へ導入する工程
(c)前記ベクターからの発現産物を回収する工程
【0071】
さらに、本発明の融合ポリペプチドは、任意のポリペプチドに対してBTタグを結合させることによって作製することも可能である。
【0072】
また、本発明の融合ポリペプチドは、上述のように作製された組換えポリペプチドの一部の領域を環状化させることも可能である。例えば、BTペプチドとして配列番号:1〜12に記載のポリペプチドを用いた場合には、該ポリペプチドの両末端におけるC(システイン)のSH基(チオール基)同士をジスルフィド結合させることにより、当該領域を環状化させることができる。
【0073】
また、本発明の融合ポリペプチドをコードするベクターを利用することにより、所望の遺伝子(例えば、治療用タンパク質をコードする遺伝子)によってコードされるポリペプチドを脳へ移行させることも可能である。例えば脳疾患に対して治療効果を有するタンパク質をコードする遺伝子とBTタグをコードするDNAとが連結した構造のDNAを、上記ベクターに担持させることにより、該タンパク質を効率的に脳へ移行させ、有効な治療効果を発揮させることが可能である。該遺伝子を担持させたベクター自体も、脳疾患治療剤として期待される。
従って本発明には、例えば、遺伝子治療用ベクターに、治療用タンパク質をコードする遺伝子(治療遺伝子)とBTタグをコードするDNAとが連結した構造のDNAが担持されたベクターからなる、脳疾患治療剤が含まれる。
【0074】
本発明の薬剤の治療対象となる脳疾患には、例えば、脳神経疾患のほか、脊髄神経疾患、あるいは多発性硬化症のような髄鞘の疾患が含まれ、さらには各種脳腫瘍あるいは他の臓器に原発した腫瘍に基づく転移性脳腫瘍なども含まれる。
【0075】
本発明の薬剤は、本発明の融合ポリペプチド、もしくは本発明のベクターを成分とするもの、あるいは、公知の製剤学的製造法によって、製剤化されたものであってもよい。例えば、薬剤として一般的に用いられる適当な担体、または媒体、例えば滅菌水や生理食塩水、植物油(例、ゴマ油、オリーブ油等)、着色剤、乳化剤(例、コレステロール)、懸濁剤(例、アラビアゴム)、界面活性剤(例、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系界面活性剤)、溶解補助剤(例、リン酸ナトリウム)、安定剤(例、糖、糖アルコール、アルブミン)、または保存剤(例、パラベン)、等と適宜組み合わせて、生体に効果的に投与するのに適した注射剤、経鼻吸収剤、経皮吸収剤、経口剤等の医薬用製剤、好ましくは注射剤に調製することができる。例えば、注射剤の製剤としては、凍結乾燥品や、注射用水剤等で提供できる。
【0076】
体内への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などのほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、または経口的に当業者に公知の方法により行うことができる。
【0077】
本発明は、本発明の融合ポリペプチド、または本発明のベクターを個体へ投与することを特徴とする、脳疾患の治療方法に関する。治療対象の動物は、好ましくは血液脳関門を有する動物であり、通常、哺乳動物であり、好ましくは、ヒト、あるいは、サル、イヌ、ネコ等の非ヒト動物を挙げることができる。
【0078】
また、本発明の好ましい態様においては、本発明の融合ポリペプチドをPETイメージング(PET検査等)に利用することが挙げられる。例えば、本発明においてBTタグと結合させる任意のポリペプチドをPET核種で標識させることにより、PETイメージングに利用可能な物質を作製することができる。PET核種で標識された本発明のポリペプチドは、脳への移行の様子を、脳の生体イメージング画像解析によって観察することができる。
【0079】
上記「PET核種」は、一般的なPET検査に利用されるポジトロン核種を好適に用いることができる。具体的には、11C(炭素-11)、13N(窒素-13)、15O(酸素-15)、18F(フッ素-18)、62Cu(銅-62)、68Ga(ガリウム-68)、82Rb(ルビジウム-82)等を例示することができる。
【0080】
本発明の好ましい態様においては、本発明の融合ポリペプチドを成分とするPET検査用試薬を提供する。BTタグとPET核種で標識されたポリペプチドとを結合する工程を含む、PET検査用試薬の製造方法もまた本発明に含まれる。
【0081】
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0083】
〔実施例1〕BTルシフェラーゼ発現ベクターの構築
(1)ルシフェラーゼ遺伝子
ルシフェラーゼ遺伝子は、Promega社から販売されているレポータープラスミドpGL4.70[hRluc]に含まれているSea pansy(ウミシイタケ、Renilla reniformis)由来の合成レポーター遺伝子hRlucを使用した。この遺伝子はレポーターとして使用するため、コドンが哺乳類細胞での発現に最適化されたうえ不要な発現調節配列を除去されているが、全体のアミノ酸配列は、2番目のアミノ酸がThrからAlaに変わっている(コンセンサスKozak配列とするため)以外は変更ない。本酵素はCoelenterazineを基質として発光する。
【0084】
ウミシイタケのルシフェラーゼは、動物の血液中での安定性が高くない(血清による不活化の半減期がマウス血清中で0.9時間、ラット血清中で0.4時間)と報告され、変異を導入することにより動物の血清中での安定性を改善することが報告されている(Loening, A. M., Protein Engineering, Design & Selection vol. 19 no. 9 pp. 391-400, 2006)ので、安定性向上のため124番目のCysからAlaへの変異と143番目のAlaからMetへの変異の2か所の変異(C124A/A143M)を導入した。変異導入はQuikChange(登録商標) Site-Directed Mutagenesis Kit (STRATAGENE 200519)の方法を用いて行った。ルシフェラーゼ遺伝子クローンのプラスミドDNAをテンプレート(Template)とし、変異配列を含みそれを取り囲む前後の配列をもつ相補的なプライマー(Primer)を用いてベクター全長の増幅を行い、次に、DpnI(メチル化した4塩基認識する制限酵素)で処理をすることにより、テンプレートを切断した。PCRによって増幅された変異(mutation)入りの産物だけが残り、これをトランスフォーメーションすることにより変異が導入されたクローンを得た。
【0085】
変異導入に用いたプライマーの配列および増幅条件は次のとおりである。
<C124A変異の場合>
C124A_sense(センスプライマー)
GACTGGGGGGCTGCTCTGGCCTTTCAC(配列番号:13)
C124A_Antisense(アンチセンスプライマー)
GTGAAAGGCCAGAGCAGCCCCCCAGTC(配列番号:14)
【0086】
PCR条件
dNTP 2μM each
Taq 0.625 U/25μl scale reaction
Template 100 ng or 10 ng
Primer 0.2μM
【0087】
増幅Program
95℃ 30 sec

(95℃ 20 sec→55℃ 10 sec→72℃ 7 min) 30 cycles

72℃ 4 min
【0088】
<A143M変異の場合>
A143M_sense(センスプライマー)
GGCCATCGTCCATATGGAGAGTGTCGTGGACG(配列番号:15)
A143M_Antisense(アンチセンスプライマー)
CGTCCACGACACTCTCCATATGGACGATGGCC(配列番号:16)
【0089】
PCR条件
dNTP 2μM each
Taq 0.625 U/25μl scale reaction
Template 100 ng
Primer 0.3μM
【0090】
増幅Program
98℃ 30 sec
(98℃ 20 sec→68℃ 7min) 30 cycles
68℃ 4min
【0091】
(2)BT-Tagつきベクターの作製
・N末HA-Tag−C末BT-Tag付加型ベクターの作製
次の2本の合成DNAをアニールすることにより、HA-Tag配列とBT-Tag配列をコードし、それらTag配列の間にGGATCC(BamHI切断部位)とCTCGAG(XhoI切断部位)が隣接して配置されている二本鎖DNAを作製した。
【0092】
Cterm_BT-tag_sense
5’CACCATGGCGTATCCGTACGATGTTCCGGACTACGCCGGATCCGGACTCGAGTGCGTGGTGCGTCATCTGCAGCAGTGT3’(配列番号:17)
Cterm_BT-tag_antisense 5’ACACTGCTGCAGATGACGCACCACGCACTCGAGTCCGGATCCGGCGTAGTCCGGAACATCGTACGGATACGCCATGGTG3’(配列番号:18)
【0093】
この二本鎖DNAをTOPO反応を用いてpET101/D-TOPO (InVitrogen) のTOPO部位に挿入することによりpET101-Ctagを作製した。pET101-CtagをBamHIとXhoIで切断し、BamHI末端とXhoI末端を持つタンパク質コーディング配列をここへ挿入することによりコーディング配列のN末端側にHA-Tag配列、C末端側にBT-Tag配列が付加され、さらにそのC末端側にはpET101ベクター由来のV5タグとHis-6タグがつながったタンパク質を発現するベクターが構築される(図1)。
【0094】
・N末Myc-Tag―C末control型ベクターの作製
同様に、次の2本の合成DNAをアニールすることによりMyc-Tag配列―control配列をコードする二本鎖DNAを作製しTOPO反応を用いてpET101/D-TOPOのTOPO部位に挿入することによりpET101-Contを作製した。
【0095】
Control-tag_sense
5’CACCATGGCGGAACAGAAACTGATTAGCGAAGAGGATCTGGGATCCGGACTCGAG3’(配列番号:19)
Control-tag_antisense 5’CTCGAGTCCGGATCCCAGATCCTCTTCGCTAATCAGTTTCTGTTCCGCCATGGTG3’(配列番号:20)
【0096】
pET101-ContにBamHI末端とXhoI末端を持つコーディング配列を挿入するとコーディング配列のN末端側にMyc-Tag配列、C末端側にベクター由来のV5タグとHis-6タグがつながったタンパク質を発現するベクターが構築される。
【0097】
これらベクターにコーディング配列を挿入すれば、金属キレートカラムによる精製が容易に行える。また、同一個体にBTタグ付きタンパク質と対照(Control)タンパク質を同時に投与して、N末端側のHA-TagもしくはMyc-Tagを利用してCaptureし、C末端側に共通のV5タグを利用して検出するサンドイッチELISAを行うことにより、BTタグ付きタンパク質と対照タンパク質の脳や脳以外の臓器への移行性を同一個体で独立に個体間のばらつきを排除して測定することが可能となる利点がある。
【0098】
(3)ルシフェラーゼ遺伝子の発現ベクターへの挿入
C124AとA143Mの2つの変異を導入したhRluc遺伝子クローンのプラスミドDNAをテンプレートとし、BamHI切断配列を持つプライマーとXhoI切断配列をもつプライマーを用いてPCR反応を行いhRlucをコードする配列を増幅することによってコーディング配列の両端に制限酵素切断部位を導入した。
【0099】
hRluc-tag_Fw: 5’- catt GGATCC GCTTCCAAGGTGTACGACCC(配列番号:21)(下線BamHI切断配列)
hRluc-tag_Rv: 5’- gtaa CTCGAG CTGCTCGTTCTTCAGCACGC(配列番号:22)(下線XhoI切断配列)
【0100】
pET101-CtagベクターおよびpET101-ContベクターをBamHIとXhoIでdouble digestionした。また上記PCRによって制限酵素切断部位を導入したhRlucコーディング配列も同様にBamHIとXhoIでdouble digestionした。これらのDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分離し、ゲルを切り出して精製し、Ligationを行い、DH10Bにトランスフォーメーションを行った。得られたコロニーをスクリーニングし、目的とする発現ベクターpET101-Ctag-hRluc++ およびpET101-Contl-hRluc++ を得た。
【0101】
以上により構築された2つのコンストラクトの模式図を図2および図3に示す。該発現ベクターの塩基配列をそれぞれ配列番号:23、25に示す。タンパク質コーディング領域のアミノ酸配列を、それぞれ図4、5に示す。
【0102】
〔実施例2〕組換えタンパク質の発現と精製
(1)組換えタンパク質の発現
・培養:
発現ベクターpET101-Ctag-hRluc++ もしくはpET101-Contl-hRluc++を発現用の大腸菌株BL21 Star (DE3)にトランスフォーメーションし発現用の菌株を得た。この菌株をLB broth(100 micro g/ml ampicillin.含)中37℃でOD 600=0.5程度まで増殖させたのち、IPTGを終濃度0.1 mMになるように添加し、さらに37℃で4時間培養した。細胞を遠心分離で集め凍結(−80℃)した。
【0103】
(2)組換えタンパク質の精製
精製操作は基本的に4℃で行った。
・Cytoplasm 分取:
凍結した大腸菌体に培養液の5分の1量のWash buffer (WB: 50 mM Sodium phosphate, 300 mM NaCl, pH 7.0)を添加して室温で1時間激しく振盪し融解した。氷冷し、Sonication, 5 sec×3 times, 4℃、により菌体を破砕したのちTritonXを最終濃度0.1%になるように添加した。4℃で1時間緩やかに混和した後遠心分離して上清を回収した。得られたCytoplasm分画をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離しWestern Blottingを行ったところ、抗hRluc抗体と反応するタンパク質が認められ、発現が確認された(図6)。
【0104】
・アフィニティクロマトグラフィー精製:
組換えタンパク質はHis-Tagを利用したアフィニティクロマトグラフィーで精製した。上のCytoplasm分画をTALON spin column (Clontech, Cat #635603)にかけて精製を行った。TALON spin Column 1本につきCytoplasm分画10 ml(培養液50 mL相当)を反応させ、Wash bufferで洗浄した後、Elution buffer (EB: 50 mM Sodium phosphate, 300 mM NaCl, 150 mM imidazole, pH 7.0) 0.5 mlで2回溶出した。
【0105】
動物に投与するための試料としては、上記Elution bufferで溶出したフラクションをPD-10 column (Amersham)を用いて溶媒交換を行い、1 x PBSに溶媒を変換した。精製されたルシフェラーゼをSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、銀染色で検出したところ、ほぼ単一のおよそ40 kdのバンドを示した(図7)。
【0106】
・タンパク質濃度と酵素活性測定:
精製した組換えタンパク質のタンパク質濃度を、ウシ血清アルブミンを標準としBradford assayを用いて測定した。この時点でゲル電気泳動による分析のために一部を抜き、残りはキャリアタンパク質としてウシ血清アルブミンを0.25%になるように添加し4℃で保存した。活性測定にはRenilla Luciferase Assay System (Promega, E2810 or E2820) を用いた。BTルシフェラーゼの場合、1 pmol〜0.01 fmol/assay の範囲のタンパク質量について活性(RLU)を測定し、標準曲線を作成した。精製工程における比活性の変化を図8に示した。
【0107】
〔実施例3〕BTルシフェラーゼの動物への投与と脳移行性の測定
(1)動物への投与
BTルシフェラーゼについて、標準曲線から1×106 RLUの活性を持つタンパク質量を算出し、その1000倍量をマウス1匹当たりの投与量とした(500〜600 pmol/mouse)。ControlルシフェラーゼはBTルシフェラーゼと同じタンパク質量を投与した。BTルシフェラーゼ、Controlルシフェラーゼともに、決定した投与量が200μLの溶液に含まれるようにPBSで希釈した(投与直前に行った)。投与sampleの一部を−80℃で保存し、組織内濃度の解析時にcontrolとして使用した。
【0108】
組換えルシフェラーゼをマウスの尾静脈から投与し、投与10分後および30分後にdiethyletherで麻酔により屠殺し開胸して心臓から採血した。あらかじめ37℃に温めたEDTA 0.1 mMを含む1xPBSで心臓から全身の灌流を行った。血液試料はEDTAを添加混合し、遠心分離して血漿とした。灌流後に臓器(脳、肝臓、肺、腎臓)を採取した。血漿と臓器を−80℃で保存した。
【0109】
(2)臓器へ移行したルシフェラーゼの測定
各臓器を200mg程度取り、臓器重量を測定、その4倍量の氷冷した精製水を添加しホモジナイズした。遠心して上清を回収し、臓器重量の5倍ホモジネートとした。
非投与Negative-control動物の臓器ホモジネートに、投与に用いた組換えルシフェラーゼsampleを添加して活性を測定し、標準曲線を作成した。100 fmol〜1 amol/assay程度の範囲を測定した。測定には臓器ホモジネート40μLを用いた。
【0110】
組換えルシフェラーゼを投与した動物の臓器ホモジネート40μLについて活性を測定し、標準曲線にあてはめてsample中に含まれていたルシフェラーゼ量を求めた。この値より測定に供したサンプル量やホモジネート作成時の希釈を計算して、臓器1 gあたりに含まれるルシフェラーゼ量(C)を算出した。個体あたりの投与量(injected dose; ID)に対する臓器移行率(% ID / g tissue)を、[(C) / injected dose] ×100 として求めた。
算出されたBTルシフェラーゼおよびコントロールルシフェラーゼの脳および肝臓への移行率(% ID / g tissue) を表1および図9に示す。
【0111】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)〜(iii)のいずれかに記載のポリペプチドと、任意のポリペプチドとが融合した構造のポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド。
(i) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(ii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(iii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
【請求項2】
任意のポリペプチドが酵素である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
任意のポリペプチドが抗体である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
任意のポリペプチドが生理活性ポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
任意のポリペプチドがマーカータンパク質である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
発現可能な状態で任意のポリペプチドをコードするDNAと、以下の(i)〜(iii)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNAとが結合した構造のDNAを含む発現ベクター。
(i) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(ii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(iii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプチド、または請求項7に記載の発現ベクターを含む、脳疾患治療剤。
【請求項9】
請求項5に記載のポリペプチドを含む、脳疾患診断薬。
【請求項10】
以下の工程(a)〜(c)を含む、脳移行活性を有する組換えタンパク質の製造方法。
(a)発現可能な状態で任意のタンパク質をコードするDNAと、以下の(i)〜(iii)のいずれかに記載のポリペプチドをコードするDNAとが結合した構造のDNAを含む発現ベクターを作製する工程
(i) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(ii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(iii) 配列番号:1〜12のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が付加、欠失、もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、脳移行活性を有するポリペプチド
(b)前記発現ベクターを細胞へ導入する工程
(c)前記ベクターからの発現産物を回収する工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−115102(P2011−115102A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276496(P2009−276496)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(503287867)プロテウスサイエンス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】