説明

腎臓透析を受ける患者を治療するための方法及び組成物

本発明は、血液透析及び/又は腹膜透析治療を受ける患者を治療するための方法及び組成物に関する。本発明の方法は、治療を必要としている患者に対して、本明細書に記載される式(II)のチオール又は還元可能なジスルフィド化合物の有効量を、透析を受ける前又は受ける間に投与することを含む。本発明の組成物は、透析液及び有効量の式(II)のチオール又は還元可能なジスルフィド化合物を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年9月21日に提出された米国特許出願番号第10/945,810号の一部継続出願であり、この文献の開示は、言及することによりその全体が本明細書において組み入れられる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、血液透析又は腹膜透析(一般に腎臓透析といわれる)を受ける患者(又は罹患動物)を治療するための方法及び組成物に関する。この方法は、有効量のジスルフィド又はチオール含有化合物を、透析処置を受けるより前に又は受けている間に患者に投与することを包含する。この組成物は、透析液及び有効量のチオール又は還元可能なジスルフィド化合物を含む。
【0003】
(発明の背景)
血液透析(本明細書において、以下、腎臓透析、又は単に「透析」と称する)は、機能する腎臓と同様の様式において、蓄積された老廃物及び毒素を血液から除去するために、ヒト患者に対して(及び小型のペット動物に対しても)行われる医療処置である。人間又は動物の腎臓が、1又はそれ以上の多くの急性もしくは慢性の疾患又は状態に起因して適切に機能しなくなる(例えば、糖尿病、糸球体腎炎及び高血圧は、腎不全の発症に関連すると一般に認識されている病状である)と、毒素が血流中に蓄積される。
【0004】
このような蓄積された老廃物及び毒素化合物(主として、尿素、尿酸及びその類似体、及びクレアチニンなどの他の窒素含有化合物;並びにカリウム、リン、ナトリウム、塩化物及び血液由来の他の無機質などの過剰量の成分)を除去できないと、体内組織及び器官系が低下し、放置されると最終的には死に至る。
【0005】
透析は、病院施設又は診療所において行われてよく、又は、外来患者を対象に、自宅で処置を行うために訓練を受ける場合もある。従来の血液透析及び腹膜透析という2つの主要なタイプの透析が、定期的に行われる。従来の血液透析では、患者は、(動静脈フィステル、移植片(graft)を介して、又はカテーテルによって)透析装置につながれる。透析装置は、汚染血液を患者から透析器(ダイアライザー)へ送り込む機能を有し、この透析器において、汚染血液は、透析液によって濾過され、それにより、蓄積された老廃物(例えば、尿素)の濃度を低下させ、その後患者に戻される。従来の血液透析は、通常3〜6時間を要し、普通は週に数回、診療所又は病院において行われる。血液透析を受ける患者においては、血液透析治療の有効性及びタイミングを監視するためのみならず、その患者がこの処置を受ける医療上の必要性を評価するために、定期的な検査が行われる。
【0006】
腹膜透析では、カテーテルの一端を患者の腹部に挿入し、他方の端部を透析液の供給源に接続する。代表的な腹膜透析交換において、透析液は、カテーテルを通じて患者の腹腔に導入され、所定の期間の間、腹腔にとどまらせる(「居住、貯留(dwell)」と呼ばれる)。この期間の間、腹腔は透析液で満たされ、老廃物及び過剰な体液は腹膜を通過する。ここで、老廃物及び過剰な体液が透析液と遭遇して、透析液後に体内から排出される際に、老廃物及び過剰な体液が除去される。この排出/充填(draining/filling)過程(「サイクル(cycle)」)は、通常一日に数回繰り返され、この過程には一晩中の長い貯留も含まれる。腹膜透析の有効性及びタイミングを監視するために、定期的な検査が行われる。
【0007】
代表的な血液透析液及び腹膜透析液は、デキストロース(グルコース)を含み、前記透析液は、各患者のニーズによって決められる、ある量の塩及び他の溶解された無機質、並びに電解質も含む。透析液は、腹腔中の浸透圧を増加させるために機能して、過剰な体液及び老廃物を血液から腹腔へ最大限拡散させる。透析液はまた、排出過程の間、老廃物を除去するために拘束し、そして必要な無機質(ミネラル)及び電解質を体内に与える役割も果たす(多くの腎不全患者は、必要な無機質(ミネラル)が不足している食事を受けるので、無機質(ミネラル)を別途摂取しなければならない。)。
【0008】
メスナ(Mesna、2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム(sodium 2-mercaptoethene sulfonate))及びジメスナ(dimesna、2,2’−ジチオビスエタンスルホン酸二ナトリウム(disodium 2,2’-dithiobis ethane sulfonate))は、公知の治療用化合物であり、これまでに、広範な種類の治療的使用が明らかにされてきた。メスナ及びジメスナは共に、様々な型の癌患者を治療するために使用される細胞傷害性(細胞毒性(cytotoxic))薬物の投与に付随する、ある特定の型の毒性に対する保護効果が示されている。
【0009】
特に、メスナは、1980年9月2日に発行された米国特許第4,220,660号明細書に開示されているようなイフォスファミド(ifosfamide)、オキサザホスホリン(oxazaphosphorine)、メルファラン(melphalane)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、トロホスファミド(trofosfamide)、スルホスファミド(sulfosfamide)、クロランブシル(chlorambucil)、ブスルファン(busulfan)、トリエチレンチオホスファミド(triethylene thiophosphamide)、トリアジクォン(triaziquone)などの細胞傷害性薬剤の毒作用の緩和に際し、ある程度首尾よく使用されている。
【0010】
ジメスナの改善された毒性プロファイル(toxicity profile)は、さらに、この化合物の有用性を際立たせる。
【0011】
さらに、各化合物の薬理学的データ(pharmacological profile)によると、適切な条件が維持される場合、メスナ及びジメスナは、主要な治療用薬物を著しい程度に時期を早めて不活性化させないことが示される。
【0012】
メスナ及びジメスナの分子構造を、それぞれ、下記構造式A及び構造式Bに示す。
【0013】
(A) HS−CH−CH−SONa
(B) NaSO−CH−CH−S−S−CH−CH−SONa
示されるように、ジメスナは、メスナの二量体であり、その酸化のための最適条件は、血漿中で見られるように、わずかに塩基性(pH〜7.3)で酸素の豊富な環境において現れる。グルタチオンレダクターゼなどの還元剤の存在下、穏やかな酸性で低酸素の条件、例えば、腎臓における一般的な条件において、主な成分はメスナである。
【0014】
メスナは、毒性のヒドロキシ(又はアコ)基に無毒なスルフヒドリル部分(又は基(moiety))が置換することによって、多くの細胞傷害性薬剤に対する保護剤として作用する。この作用は、メスナ及びオキサザホスホリンの併用投与において、並びにジメスナを特定の白金系薬剤及び/又はタキサンとともに投与する場合において、特に明白である。
【0015】
ジメスナ、及びいくつかの類似体は、哺乳類種において有利な毒性プロファイルを有する。ジメスナは、一般的な食卓塩の許容経口LD50(3750mg/kg)よりも高い投与量で、マウス及びイヌに静脈内投与されており、このような投与量では副作用を生じない。第I相臨床試験において、ジメスナは、40g/mを超える投与量で安全にヒトに投与されている。
【0016】
メスナ、及び遊離チオール部分を有する他の類似体は、本明細書に記載される2種類の化合物の、薬理学的により活性な還元型を形成する。これらの化合物は、それらの活性を、適当な構造の末端脱離基(通常、ヒドロキシ、アコ又は超過酸化物)の位置する場所で、末端基に対して遊離チオール部分の高度に極性な構成を置換するために与えられることにより、明白に示される。メスナはまた、遊離チオール部分を含む天然に存在する生化学物質(システイン、グルタチオン、ホモシステインなど)と、ジスルフィドヘテロ共役(disulfide heteroconjugate)を形成することができる。
【0017】
ジメスナ及び他の治療用ジスルフィド類は、高い細胞内濃度のグルタチオン及び他の生理学的チオール類を介して行われる非酵素的チオール転移反応(SN2)によって細胞内で還元され、それにより、細胞内において遊離のチオール類をより高い濃度に産生する。薬理学的に活性な遊離のチオール類の一時的な生成は、しばしば細胞の損傷を引き起こす遊離基(フリーラジカル)及び他の求核化合物を除去するように作用する。ジメスナもまた、遊離基(フリーラジカル)を直接除去することが示されており、治療的効果を与え得る。
【0018】
このプロファイルは、ジメスナが白金錯体系抗腫瘍薬物の毒作用を首尾よく制御及び緩和することを説明する際に特に重要である。シスプラチン(cis−ジアンミンジクロロ白金)での作用機構は、米国特許第5,789,000号明細書に説明されており、この文献の開示は、言及することによりその全体が本明細書において組み入れられる。
【0019】
メスナ、ジメスナ、及びこれらの類似体は、一般に入手可能な出発原料から、この分野において許容可能な周知の経路を用いて合成される。このような方法の1つは、下記式(I)で表されるジメスナなどの化合物を生成するための二工程(又は二段階)の単一容器(シングルポット)合成プロセスを含む。
【0020】
−S−R (I)
(式中、Rは、水素、−X−低級アルキル、又は−X−低級アルキル−Rであり;
は、−低級アルキル−Rであり;
及びRは、各々個々に−SOM又は−POであり;
Xは存在しないか、又はXは硫黄であり;及び
Mは、アルカリ金属である)
本明細書において用いられる「低級アルキル」とは、炭素数1〜8のアルキル基を意味する。
【0021】
この方法は、二工程(又は二段階)の単一容器合成プロセスを本質的に含み、これによりアルキルスルホン酸(又は塩)、又はアルケニルスルホン酸(又は塩)を、所望の式(I)の化合物に変換する。メスナの場合、前記方法は一工程(又は一段階)で行われる方法であり、この一工程(又は一段階)の方法では、硫化アルカリ金属又硫化水素との反応によって、アルキル又はアルケニルスルホン酸(又は塩)を、メスナ又はメスナ誘導体に変換する。
【0022】
所望の最終生成物がジメスナ又はジメスナ誘導体である場合、二工程(又は二段階)の単一容器での方法を必要とする。工程(又は段階)1は、上記のとおりである。この方法の工程(又は段階)2は、工程(又は段階)1と同じ反応容器内で行われ、この工程(又は段階)の間に形成されるメスナを精製又は単離する必要はない。工程(又は段階)2は、周辺値(環境値)(ambient value)を超える圧力及び温度(1平方インチあたり少なくとも20ポンド(psi)及び少なくとも60℃)の上昇に加え、容器内への酸素ガスの導入を含む。ジメスナ又はその誘導体は、本質的に定量的な収量(quantitative yield)で形成される。
【0023】
メスナ又はジメスナ、あるいはそれらの誘導体及び類似体の製造には、従来技術において周知及び立証された他の方法を用いてもよい。
【0024】
(発明の要約)
本発明の一態様は、哺乳類の患者における腎臓透析の治療効果を高める方法である。この態様は、血液透析又は腹膜透析を受けているか又は受けようとしている哺乳類の患者に、薬理学的に有効量の下記式(II)の化合物を投与することを含む。前述の化合物は、透析による無毒化プロセスの効果又は有効性を増大させるのに役立つ。
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、Rは、水素、低級アルキル又は
【0027】
【化2】

【0028】
であり;
及びRは、各々個々に−SO、−PO2−2+、又は−PO2−2+であり;
及びRは、各々個々に水素、ヒドロキシ又はスルフヒドリルであり;
各mは、個々に1、2、3、4、5又は6であって、ただし、mが1であるとき、Rは水素であり;及び
Mは、水素又はアルカリ金属イオンである)
又はその薬学的に許容可能な塩。
【0029】
本発明の他の態様は、透析液;及び
下記式(II)の化合物:
【0030】
【化3】

【0031】
(式中、Rは、水素、低級アルキル又は
【0032】
【化4】

【0033】
であり;
及びRは、各々個々に−SO、−PO2−2+、又は−PO2−2+であり;
及びRは、各々個々に水素、ヒドロキシ又はスルフヒドリルであり;
各mは、個々に1、2、3、4、5又は6であって、ただし、mが1であるとき、Rは水素であり;及び
Mは、水素又はアルカリ金属イオンである)
又はその薬学的に許容可能な塩で構成される腎臓透析組成物である。
【0034】
式(II)の化合物は、血液透析又は腹膜透析のプロセスで付随的に利用される場合、透析の効果又は有効性を増大させて、患者の体内に毒性レベルまで蓄積されているかもしれない種々の代謝老廃物を除去することにより、患者の血液を無毒化させるのに役立つ。
【0035】
本発明の方法にしたがって投与されるべき式(II)の化合物の薬理学的有効量は可変であり、個々の患者のニーズ(又は必要性)及び/又は患者の反応(又は応答)に依存する。この有効量は、投与されるべき式(II)の化合物の型(又は種類)に基づいても異なるものであり、ジスルフィド類では、通常、有効な治療のためにチオール類よりも高い用量を必要とする。また、透析処置のタイプ(すなわち、血液透析又は腹膜透析)は、投与された式(II)の化合物の有効量に影響を及ぼす。
【0036】
しかし、式(II)の化合物の優れた毒性プロファイルに起因して、多量のこの化合物を、持続点滴静注(continuous IV drop)又は複数回経口投与などによって投与してもよく、この投与は、この病状の治療のために使用される他の薬物に通常付随する副作用の危険性を伴わない。
【0037】
したがって、本発明の目的は、透析治療の効果又は有効性を安全にかつ効率的に高める組成物及び方法を提供することにある。
【0038】
別の目的は、透析治療を受けているか又は受けようとしている患者に対してチオール又は還元可能な(又は還元性)ジスルフィドを投与することによって透析処置の効率又は成績を高めるための組成物又は方法を提供することにある。
【0039】
他の目的は、以下の記述を読むことにより明らかとなるであろう。
【0040】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本明細書に記載する好ましい実施形態は、完全であることを意図するものではなく、開示された正確な形態に本発明を限定することを意図するものでもない。これらの好ましい実施形態は、本発明の原理並びにその適用及び実用的使用を説明することにより、当業者がその教示を最善に理解できるように選択及び記載される。
【0041】
本発明の方法は、腎臓透析治療を受けているか又は受けようとしている患者に対して、有効量の式(II)の化合物を投与することを含む。式(II)の化合物の有効量は、必然的に個々の患者の反応又は応答に依存する。式(II)の化合物は本質的に毒性がなく、患者の体内から速やかに除かれるので、多量の式(II)の化合物を、通常、安全に投与することができる。
【0042】
好ましい式(II)の化合物は、式中:
が、水素、低級アルキル又は
【0043】
【化5】

【0044】
であり;
及びRが、各々個々に−SO、又は−PO2−2+であり;
及びRが、各々個々に水素又はスルフヒドリルであり;
各mが、個々に1〜5であって、ただし、mが1であるとき、Rは水素であり;及び
Mが、水素又はアルカリ金属イオンである化合物であるか;又は
その薬学的に許容可能な塩である。
【0045】
より好ましい式(II)の化合物は、式中:
が、水素、低級アルキル又は
【0046】
【化6】

【0047】
であり;
及びRが、各々個々に−SO、又は−PO2−2+であり;
及びRが、各々個々に水素であり;
各mが、個々に2〜4であり;及び
Mが、水素又はアルカリ金属イオンである化合物であるか;又は
その薬学的に許容可能な塩である。
【0048】
さらにより好ましくは、式(II)の化合物はジスルフィド類である。このことは、対応するチオール類及びチオエーテル類と比較した場合に、ジスルフィド化合物は、より多量に、安全にかつ効果的に与えられ得ることによる。最も好ましい化合物は、2,2’−ジチオビスエタンスルホン酸二ナトリウム(ジメスナ又はTavocept(商標))であり、この化合物は、透析バッグ中の液体1リットルあたりの添加量約0.1g〜約270gの好ましい用量で投与される。
【0049】
本発明の別の好ましい実施形態は、血液透析治療を開始する前に、式(II)の化合物を患者に投与することである。式(II)の化合物は、通常、透析の開始前に所定の期間、好ましくは治療開始の5分〜1時間前に、最も好ましくは治療開始の15分〜30分前に投与される。この治療方法では、式(II)の化合物は、好ましくは患者の体表面積の約1g/m〜約80g/mの量で患者に投与される。
【0050】
あるいは、式(II)の化合物は、血液透析装置中に含まれる透析液に添加されてもよい。前述のように、さらにより好ましい式(II)の化合物はジスルフィド類であり、血液透析に利用されるこれらの化合物の好ましい有効量は、約0.1g/L〜約270g/Lの範囲にわたる。式(II)の化合物を透析液に添加する場合、好ましい有効量は、透析液に対する式(II)の化合物の濃度として定義され、濃度は約0.1mg/mL〜約270mg/mLの範囲である。
【0051】
患者に非経口的に投与するために、式(II)の化合物を適切な溶媒(最も好ましくは、理想的に発熱物質を含まない(pyrogen-free)滅菌水)に溶解して、溶液を調製する。1又はそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を添加して、有効な処方物を調製してもよいし、その溶液の取り扱い性及び投与性を向上させてもよい。次いで、得られた処方物を、静注(intravenous push)により、腔内に、又は点滴(drip infusion)もしくは他の容認された医療処置により投与してもよい。
【0052】
経口投与のために、式(II)の化合物は、好ましくは、1又はそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤、充填剤(filler)及び/又は希釈剤と組み合わせられる。経口投与形態としては、ピル又は丸剤(pills)、キャプレット(caplets)、錠剤及びその他が挙げられる。あるいは、式(II)の化合物を、ゼラチンカプセルなどの飲み込み又は嚥下可能な(deglurable)容器に収容してもよいし、透析の開始前に、患者が飲用する水に溶解してもよい。透析治療が数時間よりも長く続く場合には、追加用量の式(II)の化合物を繰り返してもよい。
【0053】
血液透析の間、注意深い監視及び分析を定期的に行い、必要に応じて追加用量を投与する。腹膜透析は、ほとんどの場合が患者及び介助者によって自宅で行われ、その間、透析の有効性及び必要に応じてなされる治療の調整を評価するためにも、監視を行ってもよい。
【0054】
本発明による組成物には、いずれの代表的な透析液又は特定の患者のニーズに合わせた透析液が包含される。透析液は、一例として、発熱物質を含まない滅菌水、デキストロース、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及び/又は他のカチオンで構成されてもよく、これらのカチオンは、塩化物、酢酸塩、乳酸塩、及び/又は他のアニオンとの塩などとして存在していてもよいが、この例に限定されるものではない。透析液の正確な組成は医師によって指図され、患者の具体的な臨床検査値(laboratory value)及び病状に依存する。代表的な好ましい透析液は、約50g/Lの量のデキストロース、約5g/Lの量の塩化ナトリウム、約2.5g/Lの量の乳酸ナトリウム、約1g/Lの量の塩化カルシウム及び約0.5g/Lの量の塩化マグネシウムで構成されてもよい。本発明は、透析液に対して式(II)の化合物を0.1g/l〜270g/lの範囲の量で添加することによって、その透析液の性能又は効率を高めることに関する。
【0055】
以下の非限定的で仮想的な実施例は、本発明をさらに説明するために示される。
【0056】
実施例1
持続携行型腹膜透析(CAPD)
CAPDを受けようとする患者に、腹部カテーテルを取り付ける。カテーテルの開放端を、2Lの透析液バッグに接続する。この透析液は、溶解された以下の成分を含む:100gのデキストロース:10gの塩化ナトリウム;5gの乳酸ナトリウム;2gの塩化カルシウム;1gの塩化マグネシウム;及び40gのジメスナ。
【0057】
この透析液を、バッグから患者の腹部へと流し、バッグを取り外す。この透析液を患者の腹部で4〜6時間の間「貯留(dwell)」させ、その後カテーテルを再びバッグに接続して、この液を腹部からバッグへと排出する。この過程を、一日に2〜4回繰り返し、そして患者の就寝直前に再び行い、その際に、透析液を腹部に6〜8時間貯留する。透析の効率を測定又は評価するため、及び必要に応じて治療を変更するために、使用済みの透析液を時々分析してもよい。
【0058】
上記の記載は、決して本発明を限定するものではなく、上記の特許請求の範囲内において改変され得ると解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の患者における腎臓透析の治療効果を高める方法であって、透析を受けているか又は受けようとしている哺乳類の患者に、有効量の下記式(II)の化合物:
【化1】

(式中、Rは、水素、低級アルキル又は
【化2】

であり;
及びRは、各々個々に−SO、−PO2−2+、又は−PO2−2+であり;
及びRは、各々個々に水素、ヒドロキシ又はスルフヒドリルであり;
各mは、個々に1、2、3、4、5又は6であって、ただし、mが1であるとき、Rは水素であり;及び
Mは、水素又はアルカリ金属イオンである)
又はその薬学的に許容可能な塩を投与する方法。
【請求項2】
式(II)の化合物が、透析液の構成成分として患者に投与される請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(II)の化合物が、透析液中に約0.1g/L〜約270g/Lの有効濃度で含まれるジメスナである請求項2記載の方法。
【請求項4】
式(II)の化合物が、患者が血液透析又は腹膜透析処置を受けるより前に、前記患者に直接投与される請求項1記載の方法。
【請求項5】
式(II)の化合物が、透析液中に約1g/L〜約200g/Lの有効濃度で含まれるジメスナである請求項2記載の方法。
【請求項6】
式(II)の化合物が、持続携行型腹膜透析液の成分として患者に投与される請求項1記載の方法。
【請求項7】
式(II)の化合物が、血液透析液の成分として患者に投与される請求項1記載の方法。
【請求項8】
式(II)の化合物において、
が、水素、低級アルキル又は
【化3】

であり;
及びRが、各々個々に−SO、又は−PO2−2+であり;
及びRが、各々個々に水素又はスルフヒドリルであり;
各mが、個々に1〜5であって、ただし、mが1であるとき、Rは水素であり;及び
Mが、水素又はアルカリ金属イオンである;又は
その薬学的に許容可能な塩である請求項1記載の方法。
【請求項9】
式(II)の化合物において、
が、水素、低級アルキル又は
【化4】

であり;
及びRが、各々個々に−SO、又は−PO2−2+であり;
及びRが、各々個々に水素であり;
各mが、個々に2〜4であり;及び
Mが、水素又はアルカリ金属イオンである;又は
その薬学的に許容可能な塩である請求項1記載の方法。
【請求項10】
式(II)の化合物が、ジスルフィド又はその薬学的に許容可能な塩である請求項1記載の方法。
【請求項11】
式(II)の化合物が、患者が透析を受けるより前に、前記患者に投与される請求項1記載の方法。
【請求項12】
式(II)の化合物が、患者の体表面積の約1g/m〜約80g/mの量で投与される請求項11記載の方法。
【請求項13】
式(II)の化合物がメスナである請求項12記載の方法。
【請求項14】
式(II)の化合物がジメスナである請求項12記載の方法。
【請求項15】
透析液;及び
下記式(II)の化合物:
【化5】

(式中、Rは、水素、低級アルキル又は
【化6】

であり;
及びRは、各々個々に−SO、−PO2−2+、又は−PO2−2+であり;
及びRは、各々個々に水素、ヒドロキシ又はスルフヒドリルであり;
各mは、個々に1、2、3、4、5又は6であって、ただし、mが1であるとき、Rは水素であり;及び
Mは、水素又はアルカリ金属イオンである)
又はその薬学的に許容可能な塩で構成される腎臓透析組成物。
【請求項16】
式(II)の化合物において、
が、水素、低級アルキル又は
【化7】

であり;
及びRが、各々個々に−SO、又は−PO2−2+であり;
及びRが、各々個々に水素又はスルフヒドリルであり;
各mが、個々に1〜5であって、ただし、mが1であるとき、Rは水素であり;及び
Mが、水素又はアルカリ金属イオンである;又は
その薬学的に許容可能な塩である請求項15記載の腎臓透析組成物。
【請求項17】
式(II)の化合物において、
が、水素、低級アルキル又は
【化8】

であり;
及びRが、各々個々に−SO、又は−PO2−2+であり;
及びRが、各々個々に水素であり;
各mが、個々に2〜4であり;及び
Mが、水素又はアルカリ金属イオンである;又は
その薬学的に許容可能な塩である請求項15記載の腎臓透析組成物。

【公表番号】特表2008−513493(P2008−513493A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532607(P2007−532607)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/033631
【国際公開番号】WO2006/034262
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(500175967)バイオニューメリック・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテッド (27)
【Fターム(参考)】