説明

腎障害抑制剤

【課題】 摂取しやすく、長期間連用しても安全な、腎障害抑制剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 (1)コタラヒム抽出物を有効成分とする腎障害抑制剤、及び、(2)コタラヒム抽出物と、デキストリン類、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール及び糖転移ビタミン類から選ばれる1種又は2種以上とを有効成分とする腎障害抑制剤を提供することにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物を用いた安全性の高い、腎障害抑制剤に関し、詳細には、コタラヒム抽出物を用いることを特徴とする腎障害抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本には20万人以上の末期腎不全患者が存在しており、その数は増加の一途をたどっている。腎不全には根本的な治療方法はなく、腎代替療法としては、血液透析、腹膜透析及び腎移植がある。しかしながら、これら代替療法はいずれも患者に、大きな負担がかかるので、それを避けるためには、可能な限り腎障害の進行を抑制して腎不全になることを阻止することが重要であり、そのための有効な腎障害抑制剤の開発が望まれている(例えば、特許文献1参照)。腎障害の改善用の組成物として、例えば、トリプトファナーゼ阻害剤(特許文献1)やビタミンD誘導体(特許文献2)なども提案されているものの、まだ、実用化には至っていない。腎障害は慢性化する場合が多く、一度、腎障害が進行し始めると、長期にわたり飲食物の摂取や運動が制限されるなど、クオリティ オブ ライフ(QOL)の低下が否めない。従って、腎障害の抑制は、長期間にわたり続ける必要があるので、摂取しやすく、長期間連用しても安全で、かつ確実な効果を示す腎障害抑制剤のさらなる開発が望まれている。
【0003】
一方、コタラヒム抽出物は、強い二糖類分解酵素の阻害作用による糖質吸収の抑制作用を有することから、血糖値上昇抑制効果を期待した糖尿病の1次予防のための食品素材としての利用が提案されている(非特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−1900号公報
【特許文献2】国際公開WO00/67758号明細書
【非特許文献1】『食品新素材有効利用技術シリーズ No.18 コタラヒム』、社団法人菓子総合技術センター発行(平成17年3月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
摂取しやすく、長期間連用しても安全な、腎障害抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために、植物抽出物について鋭意研究を続けた結果、意外にも、コタラヒム抽出物を経口摂取することにより、極めて効果的に、腎障害を抑制できることを見出した。さらに、コタラヒム抽出物によるこの効果は、デキストリン類、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール及び糖転移ビタミン類から選ばれる糖質の1種又は2種以上を併用することで、さらに増強されることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)コタラヒム抽出物を有効成分とする腎障害抑制剤、及び、(2)コタラヒム抽出物と、デキストリン類、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール及び糖転移ビタミン類から選ばれる何れか1種又は2種以上とを有効成分とする腎障害抑制剤を主な構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、コタラヒム抽出物を有効成分とする腎障害抑制剤に関するもので、本発明により、腎障害を効果的に抑制することができるので、腎障害の進行によるQOLの低下を低減でき、透析や腎臓移植を必要とする腎不全の発生やその進行を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明でいう腎障害とは、特に限定はなく、例えば、糸球体腎炎、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、腎不全(慢性腎不全)、糖尿病性腎障害、腎盂腎炎、通風腎、間質性腎炎、腎硬化症等が挙げられる。クレアチニンのクリアランスの低下が認められるなどの、これらの疾患の前段階にあるものも含む。本発明の腎障害抑制剤はとりわけ、糖尿病性腎障害に対して著効を示す。本発明の腎障害やその改善の程度の判定は、一般的な尿検査、血液検査、血圧等の測定結果に基づき判断すればよく、必要に応じて生検を行い病理学的な所見に基づいて判定してもよい。
【0010】
本発明で使用するコタラヒム抽出物とは、ニシキギ科(Celestrineae)のサラシア類に属するサラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)の植物体からの抽出物をいい、サラシア オブロンガ(Salacia oblonga)及びサラシア プリノイデス(Salacia prinoides)の植物体からの抽出物を含む。
【0011】
本発明で使用するコタラヒム抽出物調製用の植物体は、その起源や栽培方法に特に制限はなく、天然に自生するものでも、栽培されているものでもよく、これらを常法により育種して得られる変異株などでもよく、また、この植物体を抽出原料として用いる場合、その植物体の一部又は全部を用いることができる。また、これらの原料は新鮮な、すなわち、水分を含む状態であっても、凍結品であっても、或いは、乾燥させた状態であっても、これらの混合物であってもよい。
【0012】
本発明で使用するコタラヒム抽出物の製造方法としては、上記のようなコタラヒムの植物体の全体及び/又はその一部を原料とし、通常は、これに水或いは水を含む溶媒を加えて、食品工業や医薬品工業などにおいて通常一般におこなわれる抽出法により調製すればよく、コタラヒムの搾汁物を利用することも、これらを混合して利用することもできる。また、溶媒抽出の前に、上記原料を食品工業や医薬品工業などにおいて通常一般に用いられる、細断、破砕、磨砕、粉砕、圧搾、発酵、乾燥、冷凍などの1種又は2種以上を適宜組み合わせた、物理的及び/又は化学的前処理を施すことにより、当該植物体の細断物、破砕物、磨砕物、粉砕物、圧搾物、発酵物、乾燥物、或いは、凍結物を調製し、これらの何れか1種又は2種以上を抽出用の原料として使用することも随意である。また、これらの植物体の粉砕物や粉末などを、そのまま本発明の腎障害抑制剤の有効成分として使用することもできる。
【0013】
本発明で使用するコタラヒム抽出物を調製するための溶媒としては、水性溶媒(例えば水、酸性又は塩基性の水性溶媒など)、アルコール類(例えば、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール)、アセトンなどのケトン類などを使用すればよく、これらの2種類以上を適宜混合して使用することもできる。また、必要であれば、酢酸エチルなどの有機溶媒や、水性溶媒と有機溶媒を併用することもできる。なかでも、経口摂取のためには、溶媒自体の安全性の点からは、水が望ましく、水を含む混合溶媒も望ましい。水を使用したコタラヒム抽出物の調製方法としては、植物体のチップを使用した熱水循環抽出法が、腎障害の抑制作用を有する有効成分を効率良く抽出できるので、特に推奨される。また、混合溶媒としては、水とエタノールの組み合わせが特に望ましく、通常は、アルコール濃度が30〜90容積%、望ましくは40〜70容積%のものが使用される。また、これらの溶媒による抽出物は、そのままで、濃縮して、部分精製して、高度に精製して、或いは、これらを凍結乾燥、噴霧乾燥などの方法で乾燥して使用することができる。また、市販のコタラヒム抽出物やその製剤を使用することも随意である。
【0014】
本発明のコタラヒム抽出物を有効成分とする腎障害抑制剤は、デキストリン類、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール及び糖転移ビタミン類などの特定の糖質の1種又は2種以上を組み合わせて経口摂取することにより、コタラヒム抽出物のもつ腎障害の抑制作用を、さらに増強することができる。
【0015】
本発明の腎障害抑制剤において、コタラヒムの作用効果の増強のために使用するデキストリン類、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール及び糖転移ビタミン類などの糖質は、所期の効果が得られるものであればその由来や製法に制限はなく、市販のものを利用することも随意である。また、これらの糖質は、本発明の効果を損ねない範囲で、通常、シラップ、含蜜結晶粉末、含水結晶、非晶質固体などの形態から適宜選択することができる。また、これらの糖質は、本発明の所期の効果が得られるものであれば、必ずしも、高度に精製されている必要はなく、これらの糖質を調製する工程で共存する他の糖質との混合物であってもよい。但し、本発明の腎障害抑制剤は、糖尿病者も摂取の対象となることを勘案すると、有効成分以外のインスリンの分泌に影響を及ぼす単糖類やマルトオリゴ糖類はできるだけ少くなくすることが望ましく、製剤の総質量の6質量%以下が望ましく、3質量%以下が特に望ましい。
【0016】
本発明で使用するデキストリン類、プルラン及び環状四糖(α−グルカン類)は、コタラヒムの腎障害抑制作用を増強できるものであれば、特に制限はなく、分子内にα−1,6結合やα−1,3結合など、α−1,4結合以外の結合を含むものが望ましい。
【0017】
本発明で使用するデキストリン類は、具体的には、加酸焙焼法により製造されるデキストリンやこれをα−アミラーゼやグルコアミラーゼ処理して、これらの酵素の分解を受けにくい成分を高めたものや、これらを水素添加してその還元末端を還元したものなどがある。市販品としては、松谷化学工業株式会社販売(商品名「パインファイバー」、「ファイバーソル2」)や三和澱粉工業株式会社販売(商品名「サンデック」)などの製品を挙げることができる。これらのデキストリン類のなかでも、α−アミラーゼやグルコアミラーゼの分解を受けにくい水溶性食物繊維成分を、全糖質に対して、固形分換算で、30質量%以上、望ましくは60質量%以上、特に望ましくは、70質量%以上含有する糖質を、コタラヒム抽出物と併用したとき、特に優れた腎障害の抑制効果を得ることができる。
【0018】
また、当該デキストリン類の中でも、相乗効果の強さの点では、α−1,4結合に対するα−1,6−結合の比率が高い構造のものがより望ましく、同じ出願人が、国際公開WO2008/136331号明細書(特願2007−117369号明細書)で開示した、澱粉部分分解物に、バチラス サーキュランス(Bacillus circulans)PP710(独立行政法人産業技術総合研究所 微生物寄託センター、受託番号FERM BP−10771)などの産生するα−グルコシル転移酵素類を作用させてα−1,6結合やα−1,3結合などのα−1,4結合以外の結合からなる分岐構造の占有比率を増加させた多分岐グルカン類が特に望ましい。なお、本発明でいう水溶性食物繊維成分とは、「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」(平成11年4月26日付け衛新第13号厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知)により示されたプロスキー法や酵素−高速液体クロマトグラフィー法により定量される成分をいう。当該多分岐グルカン類とは、具体的には、グルコースを構成糖とするα−グルカンであって、メチル化分析において、下記(1)乃至(4)の特徴を有する構造の分岐α−グルカンをいう。
(1)2,3,6−トリメチル−1,4,5−トリアセチルグルシトールと2,3,4−トリメチル−1,5,6−トリアセチルグルシトールの比が1:0.6乃至1:4の範囲にある;
(2)2,3,6−トリメチル−1,4,5−トリアセチルグルシトールと2,3,4−トリメチル−1,5,6−トリアセチルグルシトールとの合計が部分メチル化グルシトールアセテートの60%以上を占める;
(3)2,4,6−トリメチル−1,3,5−トリアセチルグルシトールが部分メチル化グルシトールアセテートの0.5%以上10%未満である;及び
(4)2,4−ジメチル−1,3,5,6−テトラアセチルグルシトールが部分メチル化グルシトールアセテートの0.5%以上である。
とりわけ、当該α−グルカンのグルコース重合度が10以上であって、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が20未満の構造を有するものが望ましい。
【0019】
本発明で使用するプルランは、平均分子量が10,000乃至1,000,000程度のものが使用され、50,000乃至500,000程度のものが望ましい。市販品としては、食品添加物級のプルラン(株式会社林原商事販売、商品名「プルラン」)がある。
【0020】
本発明で使用する環状四糖は、国際公開WO02/10361号明細書などに記載のシクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖(以下、「シクロニゲロシルニゲロース」という場合がある。)、或いは、特開2005−95148号公報などに記載のシクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖(以下、「シクロマルトシルマルトース」という場合がある。)をいい、これらの糖質誘導体を含む。これらの糖質は前記公報に記載された方法により、澱粉を原料として調製することができ、本発明では、その調製液を、そのままで、部分精製して、或いは、高度に精製して使用することができる。
【0021】
本発明で使用するマルチトールは、所定量のマルチトールが含まれている糖質でさえあればよく、例えば、マルトース含有糖質を水素添加して得られるマルチトール含有糖質を、そのままで、部分精製して、或いは高度に精製して使用することができる。また、市販品を利用することができ、例えば、株式会社林原商事により販売されている食品級の無水結晶マルチトール(商品名、「マビット」)等を利用してもよい。
【0022】
本発明で使用するマルトトリイトール及びマルトテトライトールは、所定量のマルトトリイトール及び/又はマルトテトライトールが含まれている糖質であればよく、例えば、澱粉を加水分解して得られる各種水飴、とりわけ、低DEの水飴を水素添加して調製したマルトトリイトール及び/又はマルトテトライトール含有糖質を、そのままで、部分精製して、或いは高度に精製して使用することができる。また、市販品を利用することができ、例えば、株式会社林原商事(商品名、「HS−20」、「HS−30」、「HS−40」、「HS−60」等)により販売されているマルトトリイトール及び/又はマルトテトライトール含有糖質を利用してもよい。なお、マルチトールにも、コタラヒムの腎障害抑制作用を増強する作用があるので、本発明で使用するマルトトリイトール及び/又はマルトテトライトール含有糖質には、マルチトールが含まれていてもよい。ソルビトールにはこの増強効果が認められないので、単糖類の糖アルコール含量は低い方が望ましく、固形物換算で、糖質全体に占める割合が、6質量%を越えないものが望ましい。
【0023】
本発明で使用するラクトスクロース(4−O−β−D−ガラクトシル−2−O−α−D−グルコシル−β−D−フラクトフラノシド)は、所定量のラクトスクロースが含まれている糖質でさえあればよく、例えば、ショ糖とラクトースの混合溶液にβ−フラクトフラノシダーゼを作用させて調製したラクトスクロース含有糖質を、そのままで、部分精製して、或いは高度に精製して使用することができる。また、市販品を利用することができ、例えば、株式会社林原商事(商品名「乳果オリゴ550」、「乳果オリゴ700」など)や塩水港精糖株式会社(商品名「乳果オリゴLS−90P」、「乳果オリゴLS−55」など)により販売されているラクトスクロース含有糖質を利用してもよい。
【0024】
本発明で使用するトレハロースは、所定量のα,α−トレハロースが含まれている糖質でさえあればよく、例えば、澱粉やその部分分解に、特開平11−16931号公報などに開示された非還元性糖質酵素及びトレハロース遊離酵素を作用させて得られるα,α−トレハロース含有糖質を、そのままで、部分精製して、或いは高度に精製して使用することができる。また、例えば、株式会社林原商事により販売されている食品級の含水結晶α,α−トレハロース(商品名、「トレハ」)等を利用してもよい。
【0025】
本発明で使用する糖転移ビタミン類は、ビタミンA、ビタミンB群のビタミン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンP類(ルチン、ヘスペリジン、ナリンジン)などの配糖体をいい、コタラヒム抽出物と併用することにより、その効果を増強することのできるものであれば、その種類、製法や由来に特に制限はなく、また、市販品を使用することも随意である。効果の点からは、ビタミンC及びビタミンP類の配糖体が望ましい。経済性をいうのであれば、ビタミン類と澱粉やこれの部分分解物にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなどの糖転移活性を有する酵素を作用させて調製する方法が好適である。この方法によると、廉価な材料である澱粉から、糖転移ビタミン類が高収率で得られる。ちなみに、斯かる方法により調製された市販品としては、糖転移ルチン(株式会社林原商事販売、商品名「αGルチン」)、糖転移ヘスペリジン、(株式会社林原商事販売、商品名「林原ヘスペリジンS」)、糖転移アスコルビン酸(株式会社林原商事販売、商品名「アスコフレッシュ」)などがある。
【0026】
前記の糖質の配合割合は、これら糖質がコタラヒム抽出物の腎障害抑制作用を増強できるのであれば、特に制限はなく、通常、コタラヒム抽出物の固形分1質量部に対して、これらの糖質を固形物換算で、合計で、0.02乃至200質量部が望ましく、0.1乃至50質量部がより望ましく、0.5乃至10質量部が特に望ましい。また、これらの糖質の中では、デキストリン類、プルラン及び/又は環状四糖が、コタラヒム抽出物の持つ腎障害の抑制効果を増強する効果が強いので特に望ましい。なお、これらの糖質に、コタラヒムの作用効果を増強する以外に、整腸作用や免疫調節作用などの効果も併せて期待する場合には、上記比率よりも、コタラヒム抽出物に対する当該糖質の配合割合を、所期の効果が認められる範囲内で、適宜増量することも随意である。
【0027】
本発明の腎障害抑制剤は、コタラヒム抽出物をそのままで又は乾燥して使用することができる。また、これらに上記コタラヒムの作用効果を増強する成分や、それ以外の賦形剤や他の食品分野や医薬品分野で使用される成分の1種又は2種以上を配合して調製してもよい。
【0028】
本発明の腎障害抑制剤は、有効成分であるコタラヒム抽出物、或いは、この抽出物とデキストリン類、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール及び/又は糖転移ビタミン類の1種又は2種以上とを有効成分として、経口摂取用の組成物に含有せしめることにより、所期の効果を発揮することができる。経口摂取用組成物に含有せしめるこれらの有効成分は、対象とする経口摂取用組成物の組成やその使用目的を勘案して、原料の段階から製品が完成するまでの工程で含有せしめればよい。その方法としては、例えば、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、逆ミセル化、浸透、晶出、散布、塗布、付着、噴霧、被覆(コーティング)、注入、浸漬、固化、担持などの公知の1種又は2種以上の方法が適宜に選ばれる。また、製品完成後や飲食の際に振りかけるなどの方法であってもよい。また、このようにして調製された本発明の腎障害抑制剤は、その形状を問わず、例えば、シラップ、マスキット、ペースト、粉末、固状、顆粒、錠剤などの何れの形状であってもよく、そのままで、又は、必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、顆粒、球状、短棒状、板状、立方体、錠剤、カプセル剤など各種形状に成型して使用することも随意である。なお、コタラヒム抽出物、或いは、コタラヒム抽出物と、デキストリン類、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール及び/又は糖転移ビタミン類から選ばれる何れか1種又は2種以上とは、通常は、これらを混合して組成物に含有せしめればよく、別々に、同一の工程で、或いは、別々の工程で含有せしめることも随意である。
【0029】
本発明の腎障害抑制剤の、一日当たりの摂取量は、所期の効果が得られる量であれば特に制限はなく、通常、コタラヒム抽出物を固形物換算(コタラヒム由来の固形成分として)で、2mg/kg・体重/日以上が望ましく、5mg/kg・体重/日以上がより望ましく、40mg/kg・体重/日以上が特に望ましい。200mg/kg・体重/日以上摂取してもその効果の増強の程度は低くなり、あまり多量に毎日摂取すると肝障害などが発生するとの報告もあるので、200mg/kg・体重/日程度までにとどめておくことが推奨される。また、その摂取方法は、本発明の所期の効果が達成できるのであれば、特に制限はなく、飲食物の摂取時の血糖値の上昇を抑制する目的を併せて考慮すると、通常は、飲食品を摂取毎に、その前3時間乃至摂取後60分以内に摂取するのが望ましく、摂取前30分以内乃至摂取する飲食品と同時がより望ましく、摂取前10分以内が特に望ましく、当然、飲食品に含有せしめて摂取してもよい。
【0030】
本発明の腎障害抑制剤は、必要に応じて、上記以外にも、腎障害抑制作用、血圧降下作用、抗糖尿病作用、糖尿病の合併症や他の生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防・治療効果を有する天然成分や化学合成品を配合することができる。また、その特性を妨げない範囲で、栄養物、嗜好物、生理活性物質、添加物などを含有せしめることができる。この抗糖尿病作用、糖尿病の合併症や他の生活習慣病の予防・治療効果を有する天然成分としては、例えば、タラノキの根皮、樹皮や芽、トンブリ、ギムネマの葉、ニガウリ果実、イノコズチの根、ナンバンカラスウリの果実、アンマロクの果実、スイオウの茎葉、カワラケツメイの実、ターミナリア ベリリカ(Terminalia belirica)の果実、ミロバラン(Terminalia chebuka)の果実、ザクロの果実、タカサブロウ(Eclipta alba)の全草、グアバの葉、コウケイテンなどの粉末やこれら植物体の抽出物を挙げることができる。また、これら以外にも、例えば、ショ糖、グルコース、マルトース、α,α−トレハロースの糖質誘導体などの糖類、ソルビトール、エリスリトール、キシリトールなどの糖アルコール類、アスパルテーム、ステビア抽出物、糖転移ステビア、スクラロース、アセスルファムKなどの高甘味度甘味料、澱粉、カラギーナン、コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸などのムコ多糖体やその塩類をはじめとする多糖類、天然ガム類、カルボキシメチルセルロースなどの増粘剤、乳化剤、香料、香辛料、色素、例えば、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、アスコルビン酸、ビタミンE、ルチン・ヘスペリジン・ナリンジンなどのビタミンP類などのビタミン類やこれらビタミン類の配糖体以外の誘導体、α−リポ酸、L−カルニチン、L−シトルリンを含むアミノ酸類、CoQ10(コエンザイムQ10)、カテキンをはじめとするポリフェノール類、ヒドロキシデセン酸、アピシン、アデノシンやそのモノフォスフェイト、ジフォスフェイト或いはトリフォスフェイトなどの塩基類、ハーブエキス、南天エキス、藍エキス、プロポリスエキス、米ぬかエキス、プラセンタエキス、ローヤルゼリーエキス、酵母エキス、パフィアエキス、コリアンダーエキスなどの動植物エキス、これらエキスの粉末、生理活性物質などから選ばれる何れか1種又は2種以上を配合することも有利に実施でき、さらには、上記以外の澱粉質、糖質、コラーゲンをはじめとする蛋白質、ペプチドやこれらの部分分解物、繊維質、脂質、脂肪酸、有機酸、ミネラル(微量元素を含む)、甘味料、酸味料、調味料、防腐剤、栄養物、嗜好物、生理活性物質、薬効成分、酸化防止剤、乳化剤、pH調整剤、食品・医薬品用添加物などから選ばれる何れか1種又は2種以上を配合することも随意である。
【0031】
本発明の腎障害抑制剤は、そのまま摂取した場合だけでなく、食品や医薬品原料と組み合わせた経口摂取用組成物としても、所期の効果を発揮することができる。また、他の腎障害改善剤、血圧降下剤、抗糖尿病剤、抗高脂血症剤などと併用することにより、これらの製剤の作用効果を増強する、乃至、使用量を低減することができる。
【0032】
本発明の腎障害抑制剤を配合する経口摂取用組成物としては、具体的には、例えば、せんべい、あられ、おこし、餅類、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子、パン、ビスケット、クラッカー、ポテトチップス、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディーなどの各種洋菓子、うどん、ラーメンなど麺類、すし、五目飯など米飯類、人造肉などの穀類加工品類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、スプレッドなどのペースト類、イチゴジャム、ブルベリージャム、オレンジマーマレードをはじめとするジャム類、梅干し、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬、味噌漬などの漬物類、たくあん漬の素、白菜漬の素などの漬物の素類、ハム、ソーセージなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、天ぷらなどの魚肉製品、のり、山菜、するめ、小魚、貝などで製造されるつくだ煮類、煮豆、ポテトサラダ、昆布巻などの惣菜類、煮魚、筑前煮、おひら、なべ物などの煮物類、バター、プロセスチーズなどの乳製品、ふりかけ類、魚肉、畜肉、果実、野菜のビン詰、缶詰類、トマトジュース、スポーツ飲料、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料などの清涼飲料水、プリンミックス、ホットケーキミックス、即席麺、即席しるこ、即席スープなど即席飲食物などの各種飲食物とその原料に有利に利用できる。
【0033】
また、本発明の腎障害抑制剤は、他の腎障害抑制成分、抗糖尿病や糖尿病の合併症治療用の成分、さらには、製剤学的に許容される他の成分と共に配合して、腎障害抑制剤、さらには、抗糖尿病剤や糖尿病の合併症の治療用医薬組成物を調製することも随意である。
【0034】
このようにして製造される本発明の腎障害抑制剤やこれを含む組成物は、長期間連用しても、重篤な副作用もなく安全であり、腎障害を効果的に抑制できる。また、当該腎障害抑制剤は、糖尿病者やその予備軍における血糖値、インスリン値、HOMA−IR値やヘモグロビンA1c(以下、「HbA1c」と略記する場合がある。)値の上昇や、糖尿病性腎障害、膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制することもできるので、その結果、糖尿病に併発する高血圧、腎疾患、心血管疾患など循環器系疾患、神経疾患などの予防乃至治療を促進し、生活習慣病やメタボリックシンドロームを予防・改善し、さらには、美容、健康の維持・増進にも大きく貢献することができる。なお、本発明でいう糖尿病とは、I型及びII型の両方をいう。
【0035】
本発明の腎障害抑制剤やこれを含む経口摂取用組成物は、腎障害を抑制できることを標榜して販売することも有利に実施できる。さらには、糖尿病性腎障害や膵臓のランゲルハンス島の変性、血糖値、インスリン値、HOMA−IR値及び/又はHbA1c値の上昇を抑制できるので、このことを標榜して販売することも随意である。
【0036】
以下、実験に基づいてより詳細に本発明を説明する。
【0037】
<実験1>
<コタラヒム抽出物の経口摂取が腎障害に及ぼす影響>
コタラヒム抽出物の経口摂取が腎障害に及ぼす影響を調べる試験を、ヒトの腎障害のモデル動物であるKK−Ayマウスを使用して以下のように行った。
<試験飼料の調製>
コタラヒム抽出物として、市販のコタラヒム抽出物含有粉末(コタラヒムジャパン株式会社製、固形分あたり、コタラヒム抽出物を50質量%、賦形剤としてシクロデキストリンを50質量%含有)を使用した。また、対照として、アンマロク(Emblica officinalis)果肉の乾燥物の抽出物(株式会社林原生物化学研究所で植物体から抽出し、凍結乾燥して調製、以下「アンマロク抽出物」という。)及びスイオウ(Ipomoea batatas L.)茎葉を乾燥してミルで微粉化した粉砕物(以下、「スイオウ粉砕物」という。)を使用した。このコタラヒム抽出物、アンマロク抽出物、或いは、スイオウ破砕物のいずれかを、マウス用の市販飼料(日本クレア株式会社販売、製品版番号「CE−2」、以下「CE−2飼料」という。)に、これらの抽出物或いは粉砕物が、固形分として3質量%となるように配合し、さらに、適量の水を加えて均質になるまで混合し、ペレット状に成形した後、凍結乾燥して試験飼料を調製した(試験飼料1乃至3)。なお、アンマロク抽出物は、沸騰させた蒸留水4000質量部に粉砕したアンマロクの乾燥果肉37質量部を加えて、液量が約半分になるまで煎じて得たアンマロクの抽出液から固形分を濾過後、エバポレーターで、さらに、液量が約半分になるまで濃縮し、常法により、凍結乾燥して調製した(使用した果肉質量の約57質量%を、凍結乾燥品として回収)。
<試験方法>
KK−Ayマウス(日本クレア株式会社販売、5週齢)32匹を、CE−2飼料で1週間予備飼育した後、体重を測定し、その測定値が均等になるように、8匹ずつ4群に分けた。4群のうちの3群のマウスは、試験飼料1乃至3の何れかを与えながら5週間飼育した。また、残りの1群は、対照として、CE−2飼料のみを与えながら5週間飼育した。試験飼料給餌5週間で、マウスを剖検した。マウスは、予備飼育及び試験期間を通じて、22±2℃、12時間の明暗サイクル(点灯 7:00〜19:00)で飼育した。また試験飼料及び水は自由摂取とした。剖検による腎障害の有無を確認するため、病理所見により評価し、各項目のスコアを示すマウスの個体数を表1に示す。また、併せて膵臓のランゲルハンス島の変性の程度も評価してその結果を表1に併せて示す。さらに、下記に示す測定方法により表2に示す血液の指標を測定し、その結果を表2にまとめて示す。また、試験飼料の給餌期間中、1週間毎に、摂餌量、飲水量、体重を測定した結果を表2に併せて示す。
<病理所見のスコア化の方法及び臨床検査値の測定方法>
<病理組織評価>
剖検時、各マウスの腎臓及び膵臓を採取し、中性緩衝ホルマリン固定後、常法により病理組織切片を作製し、ヘマトキシリン−エオシン染色(H−E染色)及びPAS染色を施した。染色した各マウスの病理組織切片について、対照群と比較の上、顕微鏡観察による病理所見を以下の基準により判定し、スコア化して、腎障害及び膵臓のランゲルハンス島の変性の指標とした。
<腎臓の病理所見のスコア化方法>
腎障害の程度は腎糸球体の硬化の程度で判定した。腎糸球体の硬化が全糸球体の、50%以上で認められる(++)、25%以上50%未満で認められる(+)、25%未満にしか認められない(±)、認められない(−)の四段階で判定した。なお、腎臓の病理所見は、病理組織評価基準(例えば、アンドレア ハートナー(Andrea Hartner)ら、『アメリカン ジャーナル オブ パソロジー(American Journal of Pathology)』、第160巻、第3号、第861乃至867頁(2002年)の第862頁右欄第12乃至21行参照)に基づき判定した。
<膵臓の病理所見のスコア化方法>
膵臓のランゲルハンス島の変性はその肥大とβ細胞の変性の程度で判定した。膵臓のランゲルハンス島の肥大は、近交系マウス(C57BL/6)の膵臓のランゲルハンス島に比して、肥大している(+)、或いは、差がない(−)の2段階で評価した。また、膵臓のランゲルハンス島の変性は、中等度以上の変化が認められる(++)、軽い変化が認められる(+)、希に変化が認められる(±)、変化が認められない(−)の四段階で判定した。なお、対照及びアンマロク抽出物を摂取させたマウス各1匹で、検鏡した病理切片上に膵臓のランゲルハンス島がほとんど認められなかったため評価不能として、検体数から除外した。また、膵臓のランゲルハンス島の病理所見は、膵臓の病理組織評価基準(例えば、『実験動物の組織−その検査法と観察の要点−』、ソフトサイエンス社、1980年発行、第255頁の「表4」参照)に基づき、膵臓のランゲルハンス島の肥大やそれに伴うランゲルハンス島に存在するインスリン分泌をつかさどるβ細胞の核や細胞質の空胞化などの細胞変性(以下、「膵臓のランゲルハンス島の変性」という場合がある。)の程度を判定した。
<血糖値>
試験飼料給餌開始前(0日)及び開始から1週間毎に各マウスの尾静脈から採血して非空腹時血糖値を測定した。試験飼料給餌4週間の前日(試験飼料給餌27日目)の夕方から絶食して尾静脈採血をおこない、空腹時血糖値を測定した。血糖値は、簡易血糖値測定器(ロシュ・ダイアグノステイク株式会社販売、商品名「アドバーンテージII」)を用いて測定した。
<インスリン値>
試験飼料給餌4週間の前日の夕方から絶食したマウスの眼静脈叢から絶食の翌朝採血し、遠心分離した血清中の空腹時インスリン値を、インスリン測定キット(シバヤギ株式会社販売、商品名「レビスインスリンキット」)を用いて測定した。また、当該インスリン値に、同時に測定した空腹時血糖値を乗じ、405で除して、インスリン抵抗性の指標とされるHOMA−IR値を求めた。
<HbA1c値>
試験飼料給餌5週間(試験飼料給餌35日目)の剖検時に腹大静脈から採血して、非空腹時のHbA1c値を測定した。測定は、臨床検査機関(株式会社ファルコバイオシステムズ)に依頼した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
表1から明らかなように、対照、アンマロク抽出物或いはスイオウ粉砕物を配合した飼料を給餌したマウスでは、何れも腎糸球体硬化が進行した(スコア:+或いは++)のに対して、コタラヒム抽出物を配合した飼料を給餌したマウスでは、8匹中3匹で硬化が抑制された。また、膵臓のランゲルハンス島についても、対照給餌群では、何れのマウスにおいても肥大及び細胞変性が進行(スコア:+或いは++)しているのに対して、コタラヒム抽出物給餌群では8匹中4匹で、その肥大及び細胞変性が認められなかった。また、アンマロク抽出物給餌群及びスイオウ粉砕物給餌群でも、コタラヒム抽出物給餌群よりは弱いながら膵臓のランゲルハンス島の肥大の抑制が認められた。さらに、表2から明らかなように、コタラヒム抽出物、アンマロク抽出物或いはスイオウ粉砕物を給餌したマウスは、何れも、給餌4週間で、対照給餌群に比して、空腹時血糖値、空腹時インスリン値およびHOMA−IR値が低く抑えられており、これらの植物に、抗糖尿病作用があることが確認された。また、コタラヒム抽出物給餌群では、給餌1週間から試験終了まで、対照給餌群に比して、非空腹時血糖値の上昇が抑制され、糖尿病判定の指標の一つとされる飲水量及び摂餌量の増加も抑制された。また、給餌5週間におけるHbA1c値もコタラヒム抽出物給餌群のみが、対照給餌群に比して低値を示した。
【0041】
この結果は、ヒトにおいても、これらの植物抽出物或いは粉砕物を、食物と同時に経口摂取することにより、腎障害を抑制できることを示している。また、この腎障害抑制作用の強さの点からいえば、コタラヒム抽出物が最も強い作用を示した。さらに、コタラヒム抽出物給餌群では、膵臓のランゲルハンス島の変性抑制に加えて、非空腹時及び空腹時の血糖上昇、インスリン値、HOMA−IR値及びHbA1c値の上昇や、高血糖に伴う多飲・多食の臨床症状も抑制されており、コタラヒム抽出物は、経口摂取用の抗糖尿病剤としても極めて効果的であることが確認された。
【0042】
<実験2>
<コタラヒム抽出物の摂取量が腎障害に及ぼす影響>
腎障害をコタラヒム抽出物が効果的に抑制することが確認されたので、その摂取量がこれらの指標に及ぼす影響を調べる試験を以下のようにおこなった。すなわち、実験1と同一の飼育条件で、88匹のKK−Ayマウス(5週齢)を8匹ずつ、11群に分けて、CE−2飼料で1週間予備飼育後使用した。マウスの一日の平均摂餌量から計算して、コタラヒム抽出物の固形分として、一日当たりの摂取量が表3に示す量となるように、実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物含有粉末をCE−2飼料に配合した10種類の試験飼料を、実験1と同様に調製した。11群に分けたうちの10群のマウスは、この試験飼料の何れかを与えながら5週間飼育した。残りの1群は、対照として、コタラヒム抽出物無添加のCE−2飼料を与えて5週間飼育した(0(対照))。飼育期間中、飼料は、水と同様に自由に摂取させた。コタラヒム抽出物を含む試験飼料給餌5週間の剖検により摘出した腎臓及び膵臓のランゲルハンス島の病理所見と、非空腹時血糖値とを実験1と同じ方法で評価し、その結果を表3に併せて示す。
【0043】
【表3】

【0044】
表3から明らかなように、腎障害の抑制効果は、コタラヒム抽出物の固形分としての摂取量が、2mg/kg・体重/日以上の摂取で認められ、40mg/kg・体重/日まで、摂取量に比例してその効果が増強された。40乃至2000mg/kg・体重/日の摂取では、その効果にはほとんど差が認められなかった。また、膵臓のランゲルハンス島の変性及び非空腹時血糖値上昇も、2mg/kg・体重/日以上の摂取で、腎障害と同様に抑制が認められた。この結果は、コタラヒム抽出物を固形分として、2mg/kg・体重/日以上、望ましくは、5mg/kg・体重/日以上、特に望ましくは40mg/kg・体重/日以上経口摂取することにより、効果的に、腎障害を抑制すると共に、膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制し、非空腹時血糖値の上昇も抑制できることを物語っている。また、コタラヒム抽出物の摂取量の上限については、今回の試験では、マウスの病理所見や臨床検査値に糖尿病に起因すると思われる所見以外に異常は見いだせなかったので、少なくとも、2000mg/kg・体重/日までは安全に摂取可能と判断した。
【0045】
<実験3>
<コタラヒム抽出物と各種糖質との併用が腎障害に及ぼす影響>
実験1及び2で使用したコタラヒム抽出物含有粉末は、固形物換算で、シクロデキストリンを半量含有しているので、当該デキストリンやそれ以外の糖質が、腎障害に影響を及ぼすかどうかを確認するための試験を、KK−Ayマウスを使用して以下のように行った。また、併せて、シクロデキストリンやそれ以外の糖質が、膵臓のランゲルハンス島の変性、或いは、非空腹時血糖値に影響を及ぼすかどうかも確認した。すなわち、実験1と同一の飼育条件で、192匹のKK−Ayマウス(5週齢)を8匹ずつ、24群に分けて、CE−2飼料で1週間予備飼育後使用した。実験2と同じ方法で、マウスの1日あたりの摂餌量を勘案して、コタラヒム抽出物の1日当たりの摂取量が10mg/kg・体重、表4に示す糖質のいずれかの一日あたりの摂取量が、固形物換算で、50mg/kg・体重となるように、実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物含有粉末と当該糖質の何れかとをCE−2飼料に配合して22種類の試験飼料を調製した。対照飼料としてCE−2飼料を使用した。実験2と同様に、24群に分けたうちの22群のマウスは、この22種類の試験飼料の何れかを与えながら5週間飼育した。残りの2群は、対照飼料にコタラヒム抽出物粉末のみを添加した糖質配合前の飼料(糖質無添加(対照))又は対照飼料(CE−2飼料)のみを与えながら5週間飼育した。飼育期間中、飼料は、水と同様に自由に摂取させた。コタラヒム抽出物を含む試験飼料給餌5週間のマウスの腎障害及び膵臓のランゲルハンス島の変性の病理所見と、非空腹時血糖値とを、実験1と同じ方法で評価し、その結果を表4に併せて示す。なお、試験には、グルコース、ショ糖、ソルビトール及びアスコルビン酸は市販の試薬級のものを使用した。デキストリン類は、市販のシクロデキストリン(塩水港精糖株式会社販売、商品名「イソエリートP」)、デキストリン(松谷化学工業株式会社販売、商品名「パインファイバー」)及び後述の実施例2の方法で調製した多分岐グルカンを使用し、プルランは食品添加物級のもの(株式会社林原商事販売、商品名「食品添加物 プルラン」)を使用した。マルチトールは市販の結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、商品名「結晶マビット」、マルチトール純度99%以上)を使用した。これら以外のα,α−トレハロース、ラクトスクロース、環状四糖(シクロニゲロシルニゲロース、シクロマルトシルマルトース)、マルトトリイトール、マルトテトライトール、糖転移ビタミンP類(糖転移ルチン、糖転移ヘスペリジン)、糖転移アスコルビン酸(L−アスコルビン酸2−グルコシド)、ビタミンP類(ルチン、ヘスペリジン)及びビタミンP類は、何れも株式会社林原生物化学研究所で純度が98%以上の標品を調製して使用した。また、ビタミンP類は水への溶解性が低いため、予めエタノールに溶解して、これを適量の水に懸濁してCE−2飼料と混合した。
【0046】
【表4】

【0047】
表4から明らかなように、シクロデキストリンは、コタラヒム抽出物粉末のみを摂取させた場合(糖質無添加(対照)、シクロデキストリンの摂取量:5mg/kg・体重/日)の摂取量の10倍量をコタラヒム抽出物と同時に摂取させても、KK−Ayマウスの腎障害、膵臓のランゲルハンス島の変性及び非空腹時血糖値に対してなんら影響を及ぼさなかった。また、コタラヒム抽出物粉末と同時にグルコース、マルトース、ショ糖、マルトテトラオース、ソルビトール、ビタミンP類又はアスコルビン酸を摂取させても、腎障害、膵臓のランゲルハンス島の変性や非空腹時血糖値に対してなんら影響を及ぼさなかった。これらに対して、コタラヒム抽出物と同時にデキストリン、多分岐グルカン、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、糖転移ビタミンP類又は糖転移アスコルビン酸、とりわけ、デキストリン、多分岐グルカン、プルラン又は環状四糖を同時に摂取させた場合には、コタラヒム抽出物のみを摂取させた場合に比して、腎障害が強く抑制されると共に、膵臓のランゲルハンス島の変性及び非空腹時血糖値上昇も強く抑制された。この結果は、コタラヒム抽出物と同時にデキストリン、多分岐グルカン、プルラン、環状四糖などのグルコース重合度が4以上で、かつ、分子内にα−1,4以外の結合を有するα−グルカン類、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、糖転移ビタミンP類及び糖転移アスコルビン酸などの糖転移ビタミン類を摂取することにより、コタラヒムのもつ腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性の抑制作用や非空腹時の血糖値上昇抑制作用を、効果的に増強できることを物語っている。また、このコタラヒムの腎障害抑制作用の増強効果の強さの点では、デキストリン、多分岐グルカン、プルラン及び/又は環状四糖との併用が特に望ましいことを物語っている。
【0048】
<実験4>
<コタラヒム抽出物と同時に摂取させる糖質の摂取量が腎障害に及ぼす影響>
コタラヒム抽出物と同時に摂取させる糖質の摂取量が腎障害に及ぼす影響を調べるための試験を、実験3で、コタラヒム抽出物と同時に摂取させ場合に、コタラヒムのもつ腎障害、膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制する作用や非空腹時血糖値の上昇を抑制する作用を増強する作用が強かったデキストリン、プルラン、環状四糖又は多分岐グルカンを使用して以下のように行った。また、併せて、これらの糖質の摂取量が、膵臓のランゲルハンス島の変性、或いは、非空腹時血糖値に影響を及ぼすかどうかも確認した。すなわち、実験1と同一の飼育条件で、272匹のKK−Ayマウス(5週齢)を8匹ずつ、34群に分けて、CE−2飼料で1週間予備飼育後使用した。実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物含有粉末を、マウスの1日あたりの摂餌量を勘案して、コタラヒム抽出物の固形分として1日当たりの摂取量が10mg/kg・体重となるようにCE−2飼料に配合した。さらに、この飼料中のコタラヒム抽出物の固形分1質量部に対して、実験3で使用したデキストリン、プルラン、環状四糖又は多分岐グルカンを、固形物換算で、表5に示す割合となるように配合して32種類の試験飼料を調製した。34群に分けたうちの32群のマウスは、この32種類の試験飼料の何れかを与えながら5週間飼育した。残りの2群には、対照飼料にコタラヒム抽出物粉末のみを添加した糖質配合前の飼料(糖質無添加(対照))又は対照飼料(CE−2飼料)のみを与えながら5週間飼育した。飼育期間中、飼料は、水と同様に自由に摂取させた。コタラヒム抽出物を含む試験飼料給餌5週間のマウスの腎障害及び膵臓のランゲルハンス島の変性の病理所見と、非空腹時血糖値とを、実験1と同じ方法で評価し、その結果を表5に併せて示す。
【0049】
【表5】

【0050】
表5から明らかなように、コタラヒム抽出物と同時に、デキストリン、プルラン環状四糖又は多分岐グルカンを、何れも、固形物換算で、コタラヒム抽出物の固形分1質量部に対して、0.02乃至200質部摂取させた場合、コタラヒム抽出物のみを摂取させた場合に比して、腎障害及び膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制する作用、非空腹時血糖値上昇抑制作用のいずれもが増強されており、その抑制の増強効果は、これらの糖質を、コタラヒム抽出物の固形分1質量部に対して、0.1乃至50質部の割合で摂取させた場合により増強され、0.5乃至10質部の割合のとき最も増強された。この結果は、コタラヒム抽出物を摂取する際に、デキストリン、プルラン、環状四糖又は多分岐グルカンをはじめとする、コタラヒム抽出物のもつ作用効果を増強する作用を有する糖質を、コタラヒム抽出物の固形分1質量部に対して、0.02乃至200質部、より望ましくは、0.1乃至50質量部、特に望ましくは0.5乃至10質量部摂取することにより、コタラヒム抽出物のもつ腎障害及び膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制する作用や非空腹時の血糖値の上昇を抑制する作用を効果的に増強できることを物語っている。
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0052】
<腎障害抑制剤>
実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末2質量部、デキストリン(三和澱粉株式会社販売、商品名「サンデック#250」)3質量部、α−グルコシルステビオシド(商品名「αG−スイート」、東洋精糖株式会社販売)0.5質量部を均一に混合し、顆粒成形機にかけた後、整粒し、2gずつ分包して顆粒状の腎障害抑制剤を得た。本品は、腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、低カロリー甘味料として、カロリー摂取を制限している肥満者、糖尿病者などのための低カロリー飲食物などに対する甘味付けにも好適であり、経口摂取により、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例2】
【0053】
<腎障害抑制剤>
<多分岐グルカンの調製>
国際公開WO2008/136331号明細書(特願2007−117369号明細書)の実施例1の記載に準じて、バチラス サーキュランス(Bacillus circulans)PP710(独立行政法人産業技術総合研究所 微生物寄託センター、受託番号FERM BP−10771)をファーメンターで24時間培養して、その培養上清を回収して、硫安塩析し(80質量%飽和)、適量の20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解後、同じ緩衝液で透析、膜濃縮して、α−グルコシル転移酵素活性とα−アミラーゼ活性を含む酵素液を調製した。同じ明細書の実施例3に記載の方法に準じて、澱粉部分分解物(松谷化学株式会社販売、商品名「パインデックス#100」)を、水に濃度30質量%となるように溶解後、基質固形物1gあたりα−グルコシル転移酵素が10単位となるように、前記酵素液を添加して、40℃で48時間反応させた。この反応液を加熱して酵素反応を停止させた後、常法により、脱色、脱塩、濃縮、噴霧乾燥して、粉末状の多分岐グルカン含有糖質を得た。この多分岐グルカンは、α−1,4結合以外に、α−1,6結合やα−1,3結合の分岐構造をもち、イソマルトデキストラナーゼ消化により、固形物当たり35%のイソマルトースを生成し、酵素−HPLC法で測定すると水溶性食物繊維を、固形物当たり77%含有していた。なお、多分岐グルカンの調製に使用したα−グルコシル転移酵素の1単位とは、20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解したマルトース溶液(最終濃度1(質量/容積)%)5mlに、酵素液0.5mlを加えて、40℃で30分間酵素反応させた後、この反応液0.5mlに20mM酢酸緩衝液(pH7.0)5mlを加えて、沸騰水中で10分間加熱して、酵素反応を停止させた後、反応液中のグルコース量を、常法によりグルコースオキシダーゼ法で定量したとき、1分間に1μモルのグルコースを生成する酵素量と定義される。
【0054】
<腎障害抑制剤の調製>
実施例1のデキストリンに換えて、この粉末状の多分岐グルカン含有糖質を使用した以外は、同じ配合組成、同じ方法で、顆粒状の腎障害抑制剤を得た。本品は、腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、低カロリー甘味料として、カロリー摂取を制限している肥満者、糖尿病者などのための低カロリー飲食物などに対する甘味付けにも好適であり、経口摂取により、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても副作用がなく、安心して利用できる。また、本品又は実施例1で調製した腎障害抑制剤を、各々10名の糖尿病性腎障害のあるボランティアに16週間、毎日摂取させたところ、本品では60%、実施例1の腎障害改善剤では40%のボランティアに、何らかの腎障害の改善が認められた。
【実施例3】
【0055】
<腎障害抑制剤>
ラクトスクロース含有糖質(商品名「LS−90P」、塩水港精糖株式会社販売、固形物換算で、ラクトスクロース約90質量%含有)1質量部、プルラン0.1質量部、実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末0.25質量部、α−グルコシルステビオシド(商品名「αG−スイート」、東洋精糖株式会社販売)0.2質量部を均一に混合し、顆粒成形機にかけて、顆粒状の腎障害抑制剤を得た。本品は、腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、低カロリー甘味料として、カロリー摂取を制限している肥満者、糖尿病者などのための低カロリー飲食物などに対する甘味付けに好適であり、経口摂取により、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例4】
【0056】
<腎障害抑制剤>
下記の成分を均一に混合した後、直径6mmの杵を装着した打錠機により打錠して、1錠が約200mgの腎障害抑制剤を得た。
実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末 4質量部
マルチトール(株式会社林原商事販売、商品名「粉
末マビット」 37質量部
天然珊瑚粉末 20質量部
乳酸カルシウム 10質量部
粉末ヨーグルト 10質量部
グアーガム 12質量部
糖転移ヘスペリジン(株式会社林原商事販売、商品名
「林原ヘスペリジンS」) 20質量部
デキストリン(松谷化学工業株式会社販売、商品名
「パインファイバー」) 1質量部
本品は風味良好であり、経口摂取すれば、腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例5】
【0057】
<腎障害抑制剤>
実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末7質量部、シクロニゲロシルニゲロース(株式会社林原生物化学研究所製造、純度98%)25質量部、α,α−トレハロース35質量部、エリスリトール10質量部、ローヤルゼリー抽出物(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「林原ローヤルゼリーX」)20質量部、コエンザイムQ1010質量部、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原商事、商品名「アスコフレッシュ」)5質量部、藍抽出物(株式会社林原生物化学研究所製造)2質量部、ビタミンB1質量部、ビタミンB1質量部、ビタミンB1質量部、オレンジパウダー0.5質量部、レモンエッセンス0.1質量部を混合し、乾燥後、整粒して、2gずつ分包して腎障害抑制剤を製造した。本品は、風味が豊かで、かつ、経口摂取により腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例6】
【0058】
<腎障害抑制剤>
実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末10質量部、エリスリトール10質量部、ローヤルゼリー抽出物(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「林原ローヤルゼリーX」)20質量部、実施例2で調製した多分岐グルカン3質量部、コエンザイムQ1010質量部、ビタミンB1質量部、ビタミンB1質量部、ビタミンB1質量部、オレンジパウダー0.5質量部、レモンエッセンス0.1質量部を均質に混合し、乾燥後、整粒し、2gずつ分包して、粉末状の腎障害抑制剤を製造した。本品は、風味が豊かで、かつ、経口摂取により腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例7】
【0059】
<腎障害抑制剤>
実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末5質量部、ラクトスクロース含有糖質粉末(塩水港精糖株式会社販売、商品名「乳果オリゴLS−90P」、固形物換算で、ラクトスクロース90質量%含有)70質量部、実施例2で調製した多分岐グルカン1質量部、ローヤルゼリー抽出物(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「林原ローヤルゼリーX」)3質量部、実験1で使用したものと同じアンマロク抽出物3質量部、スイオウ粉砕物3質量部、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)3質量部、粗製海水塩化マグネシウム1質量部を混合し、乾燥後、整粒して、2gずつ分包して腎障害抑制剤を製造した。本品は、風味が豊かで、腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、腸内の菌叢を整える整腸機能に優れ、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても、副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例8】
【0060】
<腎障害抑制剤>
下記の成分を均一に混合した後、直径6mmの杵を装着した打錠機により打錠して、1錠が約200mgの腎障害抑制剤を得た。
実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末 10質量部
シクロニゲロシルニゲロース(株式会社林原生物化学研究所製造) 5質量部
α,α−トレハロース 30質量部
天然珊瑚粉末 20質量部
乳酸カルシウム 10質量部
粉末ヨーグルト 10質量部
グアーガム 12質量部
糖転移ナリンジン(株式会社林原生物化学研究所製造) 2質量部
プルラン 1質量部
本品は風味良好であり、経口摂取すれば、腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても、副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例9】
【0061】
<腎障害抑制剤>
下記の材料を配合し、常法にしたがって腎障害抑制剤(腎障害抑制剤としてのチーズクラッカー)を製造した。
実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末 5質量部
小麦粉 100質量部
油脂 9質量部
実施例2で調製した多分岐グルカン 1質量部
還元澱糖化物(株式会社林原商事販売、商品名「マイルド
シロップ」、固形物換算、でマルトトリイトールを約23質量%、
マルトテトライトールを約2%、他にマルチトールを約67質
量%、ソルビトールを約3質量%含有) 1質量部
麦芽エキス 1.3質量部
重曹 0.6質量部
チーズパウダー 13質量部
砂糖 2質量部
食塩 1質量部
炭酸アンモニウム 0.6質量部
スパイス 適量
水 33質量部
本品は、風味良好であり、経口摂取すれば、腎障害による腎機能の低下を抑制するために好適である。また、本品は、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても、副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例10】
【0062】
<腎障害抑制剤>
カカオペースト40質量部、カカオバター10質量部、砂糖34質量部、α,α−トレハロース5質量部、実施例2で調製した多分岐グルカン2質量部を混合してレファイナーに通して粒度を下げた後、コンチェに入れて50℃で2日間練り上げた。この間に、レシチン0.5質量部と実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末1質量部とを加え十分に混和分散させた。次いで、温度調節機で31℃に調節し、バターの固まる直前に型に流し込み、振動機でアワ抜きを行い、10℃の冷却トンネルを20分間くぐらせて固化させた。これを型抜きして包装し腎障害抑制剤(腎障害抑制剤としてのチョコレート)を得た。本品は、吸湿性がなく、色、光沢共によく、内部組織も良好で、口内でなめらかに溶け、上品な甘味とまろやかな風味を有するチョコレートであり、経口摂取により腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても、副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例11】
【0063】
<腎障害抑制用組成物>
実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末5質量部、ヨーグルト100質量部、シクロニゲロシルニゲロース(株式会社林原生物化学研究所製造)2質量部、α,α−トレハロース15質量部、糖転移ルチン(株式会社林原商事販売、商品名「αGルチン」)3質量部、実施例2で調製した多分岐グルカン2質量部、還元澱粉糖化物(株式会社林原商事販売、商品名「HS−20」、固形物換算で、マルチトールを約9質量%、マルトトリイトールを約10質量%、マルトテトライトールを約8質量%含有)3質量部、ヨーグルトフレーバー0.25質量部、プルラン0.05質量部及びレモンエッセンス0.1質量部に水を加えて全体を1,000質量部とする配合で、常法にしたがって、腎障害抑制剤(腎障害抑制剤としてのヨーグルト飲料)を製造した。本品は、風味が豊かで、腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、腸内の菌叢を整える整腸機能に優れたヨーグルトであり、経口摂取により非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても、副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例12】
【0064】
<腎障害抑制剤>
ガムベース2質量部を柔らかくなる程度に加熱融解し、これにマルチトール粉末2質量部、ショ糖(砂糖)粉末4質量部、糖転移ヘスペリジン1質量部、藍草の熱水抽出物粉末(株式会社林原生物化学研究所製造)0.25質量部、及び、実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末0.5質量部、実施例2で調製した多分岐グルカン0.25質量部を加え、更に適量のハッカ香料と着色料とを混合した後、常法にしたがってロールにより練り合わせ、成形することによって腎障害抑制剤(腎障害抑制剤としてのチューインガム)を得た。本品は、風味良好なチューインガムであり、経口摂取により、腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても、副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例13】
【0065】
<腎障害抑制剤>
ラクトスクロース含有水飴(株式会社林原商事販売、商品名「乳果オリゴ700」、固形分76質量%、固形物換算で、ラクトスクロースを71.5質量%含有)160質量部、ショ糖質165量部、及び、α,α−トレハロースの糖質誘導体含有水飴(株式会社林原商事販売、商品名「ハローデックス」)20質量部、実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末8質量部、実施例2で調製した多分岐グルカン1質量部に適量の水を加えて加熱溶解し、約150℃まで煮詰め、煮詰め終了後、125℃まで冷却した時点で、予め調製しておいた50質量%クエン酸溶液3質量部を混合した。この煮詰液をシュガーロープ方式で成形し、水分含量約1.5質量%の腎障害抑制剤(腎障害抑制剤としてのハードキャンディ)を製造した。本品は、風味良好なハードキャンディであり、経口摂取により、腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても、副作用がなく、安心して利用できる。
【実施例14】
【0066】
<腎障害抑制剤>
下記の成分を配合し、腎障害抑制剤(腎障害抑制剤としての経口流動食)を得た。
実験1で使用したものと同じコタラヒム抽出物粉末 5質量部
脱脂粉乳 43質量部
全粉乳 12質量部
水飴 41質量部
実施例2で調製した多分岐グルカン 0.5質量部
α,α−トレハロース 8質量部
糖転移アスコルビン酸(株式会社林原商事販売、
商品名「アスコフレッシュ」) 1質量部
ビタミンA 適量
ビタミンD 適量
塩酸チアミン 適量
リボフラビン 適量
塩酸ピリドキシン 適量
シアノコバラミン 適量
酒石酸水素コリン 適量
ニコチン酸アミド 適量
パントテン酸カルシウム 適量
酢酸トコフェロール 適量
硫酸鉄 適量
リン酸水素カルシウム 適量
アラビアガム 適量
本品を適量の水に溶解し、経口摂取すれば、通常の食事の摂取ができない患者の栄養補給が可能な上に、腎障害による腎機能の低下を抑制することができる。また、本品は、非空腹時血糖の上昇を抑制し、糖尿病にみられる腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性も抑制できるので、健康を維持・増進するための健康食品としても有用である。また、本品は、腎障害を抑制できること、糖尿病による腎障害及び/又は膵臓のランゲルハンス島の変性を抑制できることや非空腹時の血糖値の上昇を抑制できることなどを標榜して販売することも有利に実施できる。本品は長期間摂取しても、副作用がなく、安心して利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上述べたように、本発明は、コタラヒム抽出物、又は、コタラヒム抽出物と、デキストリン類、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール及び糖転移ビタミン類の何れか1種又は2種以上とを有効成分とする腎障害抑制剤に関するものである。本発明の腎障害抑制剤は、経口摂取しやすく、長期間使用しても、副作用などの心配がない。また本発明の腎障害抑制剤は、糖尿病性腎障害、膵臓のランゲルハンス島の変性、血糖値上昇、インスリン値上昇、HOMA−IR値上昇及び/又はHbA1c値上昇も抑制できるので、糖尿病やその合併症も治療・改善することができ、メタボリックシンドロームなどの糖尿病発症リスクの高いヒトの腎障害や糖尿病の発症を遅延・予防して、健康の維持・増進にも貢献することができる。したがって、本発明の腎障害抑制剤の確立は、食品業界、医薬、保健業界を含めて関連業界に与える産業的意義が極めて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コタラヒム抽出物を有効成分として含有する腎障害抑制剤。
【請求項2】
コタラヒム抽出物と共に、デキストリン類、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール及び糖転移ビタミン類から選ばれる糖質の何れか1種又は2種以上を含有する請求項1記載の腎障害抑制剤。
【請求項3】
コタラヒム抽出物1質量部に対して、デキストリン類、プルラン、環状四糖、ラクトスクロース、トレハロース、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール及び糖転移ビタミン類から選ばれる糖質の何れか1種又は2種以上を、合計で0.02乃至200質量部の割合で含有する請求項2記載の腎障害抑制剤。
【請求項4】
腎障害抑制剤が腎障害を抑制できることを標榜してなる経口摂取用である請求項1乃至3の何れかに記載の腎障害抑制剤。
【請求項5】
顆粒、粉末、カプセル又は錠剤の形態である請求項1乃至4の何れかに記載の腎障害抑制剤。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の腎障害抑制剤の膵臓のランゲルハンス島の変性抑制剤、血糖値上昇抑制剤、血中インスリン値上昇抑制剤、ヘモグロビンA1c値上昇抑制剤及び/又はHOMA−IR値上昇抑制剤としての使用。

【公開番号】特開2009−161522(P2009−161522A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313985(P2008−313985)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】