説明

腫瘍の治療のための、抗METモノクローナル抗体、フラグメント及びそのベクター、並びに対応する製品

腫瘍及び/または転移の治療のための薬物を調製するための、及び腫瘍性細胞を検出するための診断用装置の準備のための、肝細胞増殖因子の細胞外ドメインに対して産生されたモノクローナル抗体並びに抗Metモノクローナル抗体をコードしているヌクレオチド配列の少なくとも部分を含むベクター、抗Metモノクローナル抗体及び/またはそのフラグメント及び少なくとも1つのキナーゼ阻害剤を含む製品の使用が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍及び腫瘍転移に関する治療薬の調製並びにインビボ、またはインビトロにおける腫瘍細胞を検知する診断用装置のためのモノクローナル抗体、フラグメント及び/またはそれらの部分の使用、並びにモノクローナル抗体、フラグメント及び/またはそれらの部分をコードしているヌクレオチド配列の使用に関する。特に、本発明は肝細胞増殖因子受容体の細胞外領域に対して産生される抗Metモノクローナル抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌免疫療法の科学的な調査は1950年代に始まり、最初の適用はポリクローナル抗体に頼っていた。50年以上経った今日、モノクローナル抗体を用いた免疫療法は癌治療(1、2)のための有望な代替として提供し続けている。癌においてチロシンキナーゼ受容体(RTKs)を標的とするいくつかの抗体が臨床診療(3)で現在使われている。これらの抗体の作用のメカニズムは症例が異なれば異なり、そして成功した出願の例にもかかわらず、しばしば十分に理解されていない(4)。ベバシズマブ及びセツキシマブは、それぞれ血管内皮増殖因子−血管内皮増殖因子受容体(VEGF−VEGFR)及び上皮細胞増殖因子−上皮細胞増殖因子受容体を標的とし、そしてリガンド−受容体の相互作用(5、6)を防ぐことによって作用する。ハーセプチンはヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)に特有のモノクローナル抗体で、上皮細胞増殖因子受容体ファミリーの一員である。ハーセプチン効果の基礎をなしている作用のメカニズムは完全に明白となったわけではないがHER2の分解を促進することが示された。このように、腫瘍細胞(7)の表面で受容体レベルを低下させる。
【0003】
肝細胞増殖因子(HGF)のためにチロシンキナーゼ受容体をコードしているMET発癌遺伝子は、細胞増殖、浸潤及びアポトーシスからの保護を導く遺伝的プログラムを制御している。肝細胞増殖因子受容体(HGFR)の調節された活性化は腫瘍原性の性質の獲得のためにだけでなく浸潤性表現型(8)の達成のためにも重大な意味を持つ。人間の腫瘍におけるMETの役割はいくつかの実験的なアプローチから見出され、カルシノーマの遺伝的形成においてMETの活性化突然変異の発見によって明解に証明された。(9、10)。さらに、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)の恒常的活性化は孤発性癌でもまた頻繁に起こり、この研究所及び他の研究所からの研究により特別なヒストタイプ(histotypes)の腫瘍においてMET発癌遺伝子が過剰発現されるか、または自己分泌機構を経由して活性化されることが示された。その上、MET遺伝子は結腸直腸癌腫(11)の血行性転移で増幅される。Met活性化を妨げることは腫瘍形成及び転移のプロセスを阻止する挑戦的なアプローチになる。過去数年において、シグナル伝達し、HGFRそれ自体またはそのリガンドを標的としている異常なHGFRを阻止するためにいくつかの戦略が提案されている。これらのアプローチはHGF拮抗剤、HGF中和抗体、HGFRおとり、HGFRの小分子ATP結合部位阻害剤またはゲルダナマイシン、SH2ドメインポリペプチド及びリボザイム(12でチェックされる)のような小分子の使用を含んでいる。
【0004】
発明の要約
本発明は腫瘍により影響を受けた対象における腫瘍及び/または転移の治療において、並びにインビボ、またはインビトロのいずれかで腫瘍細胞を検知する診断用装置において肝細胞増殖因子受容体(HGFR)の細胞外領域に対して指向されるモノクローナル抗体の使用に関する。
【0005】
このように、本発明の目的は、薬物の調製のため、腫瘍及び腫瘍により被る場所への転移の治療のため及びインビボまたはインビトロのいずれかにおいて腫瘍細胞を検知する診断用装置のために、i)抗Metモノクローナル抗体、ii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域を含むフラグメント及び/またはiii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域または相補性決定領域(CDRs)を含む一般的に操作された抗体を使用するもので、そのうち抗Metモノクローナル抗体−抗MET−Rと称する−は先端バイオテクノロジーセンター(ABC)、細胞系統コレクション研究所(ICLC)、受託番号ICLC PD 05006をもつイタリア、ジェノバ、ラルゴ ロザンナ ベンツィ 10、GMPにおけるS.S. Banca Cellule e Colture、により寄託された融合細胞系統によって産生される。
【0006】
本発明の他の目的は、腫瘍に罹っている対象における腫瘍及び転移の治療のための薬剤の調製のための、融合細胞系統ICLC PD05006によって産生される抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域またはCDRsをコードしているヌクレオチド配列の少なくとも部分を含むベクターの使用である。
【0007】
本発明の他の目的は、i)抗Metモノクローナル抗体、ii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域を含むフラグメント及び/またはiii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域またはCDRsを含む遺伝子操作により得られた抗体並びに少なくとも1つのキナーゼ阻害剤の、腫瘍及び/または転移の治療に同時に、別々に、連続的に使用するための混合調合物としての使用である。
【0008】
本発明の他の目的は、腫瘍及び/または転移の予防及び/または治療における薬理学的に有効である化合物の同定のために、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)の細胞外ドメインの少なくとも一つの部分に結合することができる化合物をスクリーニングする方法である。
【0009】
本発明の他の目的は、インビボ、またはインビトロのいずれかで腫瘍細胞を検知する診断用ツールとして用いるように抗Met−R、それらのフラグメント及び/または抗Met−R抗体のエピトープ領域またはCDRsを含む遺伝子操作により得られた抗体の使用である。
【0010】
本発明によれば、これらの目的は、本発明に関してここに提供された技術的な説明に不可欠な部分である下記の特許請求の範囲に記載した方法によって達成される。
【0011】
図面の簡単な説明
図1
抗Met−RはHGFR活性化及びシグナル伝達を減じる。(A)HGFR活性化の評価。GTL16細胞を所定時間抗MET−Rに曝した。HGFRは細胞溶解物から免疫沈降され、そしてウェスタンブロットによって指示された抗体で調べた抗Met−R処置により、バンド密度の定量化により示されているように、受容体のダウンレギュレーションよりももっとはっきりと受容体活性化を減少させる結果となった。(B)HGFRシグナルの分析。細胞をVSV−Gまたは抗MET−Rのいずれかで前処置し、そして所定の時間HGFで刺激した。Aktリン酸化を全細胞溶解物中で評価した。上部のパネルに示されるように抗Met−Rは基底及びHGF誘導性のAkt活性化の両者を減少させた。
図2
抗Met−Rはインビトロにおける癌細胞の形質転換された表現型を阻害する。(A)GLT16細胞の足場非依存性増殖。前処理された細胞を0.5%アガーに播種した。細胞を抗MET−RまたはVSV−G抗体の所定の量の存在において維持し、そして10日後増殖したコロニーを染色した。足場非依存性増殖は抗MET−Rの少しの服用量でも徹底して阻害された。(B)浸潤アッセイ。MDA−MB−435 β4をマトリゲル被覆トランスウェル容器に播種する前に、所定の抗体を用いて24時間前処理した。低いほうの容器を、DMEM2%FBS+100ng/mlHGFで満たした。24時間後、遊走した細胞を染色し、カウントした。HGFの応答における浸潤性能力は刺激されていない細胞と比較して向上するように発現する。示されるように抗Met−R治療により細胞の浸潤が著しく減少した。
図3
抗Met−Rはインビボ(A、B)の腫瘍形成アッセイにおける癌細胞の形質転換された表現型を阻害する。ヌードマウスの皮下に1.5×10GTL16細胞を注入した。腫瘍が出現した後、同じサイズの腫瘍が示されたマウスを選抜し、VSV−Gまたは抗MET−Rのいずれかの2μg/grを週2回生体内原位置(in situ)に注入した。腫瘍の体積を異なる時点で測定した(A)。示されるように、人間の腫瘍細胞を移植されたヌードマウスにおいて抗MET−Rは腫瘍増殖を弱めた。マウスは治療の8週間後に屠殺され、腫瘍の重量を測定した(B)抗Met−Rの治療により、対照マウスよりも著しく腫瘍が小さくなった(p<0.05)。(C)HGFR活性化の評価。VSV−G(パネルA)、または抗MET−R(パネルB)で処置されたマウスからの腫瘍切片を抗−ヒトのリン酸−HGFRで染色した。
腫瘍の免疫化学的分析により抗MET−Rで処置されたマウスにおいて、活性化HGFRのレベルが強く低下したことが明らかとなった。
図4
抗Met−R治療はインビボでの腫瘍の進行を妨げる。ヌードマウスの皮下に2.5×10MDA−MB−435β4細胞を接種した。腫瘍の増殖を無処置のマウス(A)と以下で処置されたマウスを用いて評価した:10μg/gr VSV−Gを投与されたIP(B)、10μg/gr抗MET−R IP(C)、10μg/gr抗MET−R IP(D)、及び2μg/gr抗MET−R IS(E)。図(K)で示すように、抗MET−Rはヒト腫瘍細胞を移植されたヌードマウスにおいて腫瘍の増殖を阻害した。左のパネルで示されるように、抗ヒトリン酸−HGFRの免疫化学的染色を腫瘍の断片上で実施した。強いHGFR活性化は無処置マウス(F)と支配抗体で処置されたマウス(G)の両者で起こっていた。抗MET−Rの投与により腫瘍増殖の阻害と平行してHGFRの阻害を引き起こす結果となった。(L)肺転移の分析。転移は、ヘマトキシリン/エオシン染色の後、肺部の微細な観察によって数えられた。転移数の服用に依存する減少は抗MET−R治療を受けているマウスに明らかであった。(M−N)腫瘍血管新生の評価。腫瘍組織学的切片上の免疫蛍光染色は抗−マウスCD31抗体で実施された。血管の数及び面積は蛍光顕微鏡検査によって評価された。図示のとおり、血管の数及びサイズの両者は抗MET−R処置に応じて減少された。
図5
抗MET−RはHGFRのダウンレギュレーションを誘導する。GTL16細胞(A)及びMDA−MB−435 β4(B)は示された時間、抗MET−Rで処置された。全細胞溶解物の等量をウェスタンブロット法のために処理し、抗HGFR(上のパネル)または付加対照として、抗−Hsp70(下のパネル)抗体で調査した。図示のとおり、抗MET−Rは、過剰発現細胞(GTL16)及びHGFR(MDA−MB−435 β4)の正常レベルを表している細胞の両者においてHGFRのダウンレギュレーションを誘導することができた。(C)細胞表面におけるHGFRの細胞蛍光測定法による定量化。MDA−MB−435 β4細胞を培地だけ(黒いバー)またはHGF(灰色のバー)または抗MET−R(白いバー)で培養した。示された時点で、細胞を抗−エキストラHGFR抗体(anti−extra HGFR Ab)(D024)で染色した。図示のとおり、抗MET−Rは30時間の処置の後、最大限の縮小で効率的に表面のHGFRの量を減らすことができた。
図6
抗体−誘導及びリガンド−依存ダウンレギュレーションは、異なる経路をたどる。(A)HGFまたは抗MET−Rによる処置の前に、HeLa(上部パネル)及びGTL16(下部パネル)細胞をラクタシスチン(lact)またはコンカナマイシン(conc)のいずれかまたは両者で2時間前処理した。HGFRダウンレギュレーションを全細胞溶解物上で評価した。プロテアソームの存在において、リガンド−誘導HGFRのダウンレギュレーション損なわれたが、一方抗体−誘導はそうではなかった。この状態において、細胞内部分(抗−内Met)に対して指向される抗体によって唯一発見され得る60Kd切片(矢印)は細胞内に蓄積された。さらに、抗−ユビキチン抗体(B、上部パネル)でプローブすることによって、プロテアソームの分解に関係付けられる分子が予想されるように、このフラグメントはユビキチン部分でタグが付けられたことが示された。
図7
抗MET−Rはタンパク質分解性のHGFRの切断及び細胞外ドメイン(外部ドメイン)の脱落を誘導する。(A)GTL16細胞を代謝的に35Sメチオニン及び35Sシステインで標識し、それから4時間でHGFまたは抗MET−Rを用いて処理した。上澄みを集め、細胞外ドメインに対して向けられる抗HGFR抗体で免疫沈降した。ゲルは非還元(上部パネル)または還元(下部パネル)の条件下で走った。還元剤がない場合、HGFRのα及びβ鎖は複合体として遊走する一方、β−メルカプトエタノールの存在下において2つのバンドは別々に走った。図に示すように、HGFではなく、抗MET−RはHGFR外部ドメインの脱落を誘導することができた。(B)抗MET−Rは内皮細胞でまた脱落している外部ドメインを誘導する。HUVEC細胞を示された時間抗体に曝した。培地を集め、HGFRβ鎖の細胞外部分を認識している抗体を用いて免疫沈降した。同じ抗−エキストラHGFR(anti−extra HGFR)を用いてウェスタンブロットにより調べた。(C、D)HGFRの脱落は用量と時間に依存する。細胞は抗MET−R(C)の増加量または異なる時間(D)に刺激された。培地は(B)で処理した。
図8
HGFRの脱落のためにシグナル伝達の活性化は必要とされない。Cos−7細胞に異なるHGFR変異体を形質移入し48時間後、4時間抗MET−Rで処理した。全細胞溶解物と条件培地の等量をウェスタンブロッティングのために処理した。示したとおり抗Met−Rはダウンレギュレーション及びすべてのHGFR変異体の外部ドメイン脱落を誘導することができた。HGFR KD=HGFRキナーゼデッド、キナーゼ活性の欠如;HGFRダブル=2つのドッキングチロシン1349、1356が欠如し、そしてシグナルトランスデューサーを補充することができないHGFR変異体;HGFR−GFP=全細胞内部分がGFP配列に置換されたHGFR変異体。
図9
HGFR脱落外部ドメインは「おとり(decoy)」として振舞う抗Met−Rで前処理された細胞は培地においてHGFR外部ドメイン(Met ecto)の存在または非存在のいずれにおいてもHGFで刺激された。示すとおり、脱落HGFR外部ドメインはAkt活性化を損ない、そして「おとり」として振舞った。
図10
遺伝子導入を媒介されたレンチウイルスベクターによって遺伝子上に修飾された細胞は抗MET−Rを発現する。
(A)双方向性レンチウイルスベクター(統合化形)の概略図は抗MET−Rを表したものである;LTR:HIV−1末端反復配列;U3領域はR領域から位置−18で削除される。SD:スプライス供与。SA:スプライス受容体。PolyA SV40:サルウイルス40のポリアデニル化。Cte:恒常性輸送要素はサルのマソン−ファイザーウイルスに由来した。PminCMV:最小プロモーターはサイトメガロウイルスに由来した。hPGK:ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子のヒトプロモーター。PRE:ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節因子。FLAG Tag:3回繰り返されたDYKDDDKエピトープをコードしている配列。His Tag:7ヒスチジン残基をコードしている配列。
(B)抗MET−R cDNAsを保有しているレンチウイルスベクターで形質導入された2つの代表細胞系から集められた無血清培養上清(それぞれ75μlのサンプル)のウェスタンブロット解析。サンプルは還元条件下でSDS−PAGEに供され、そして対応するフィルターは抗マウスIgでプローブされた。
(C)抗MET−R cDNAsを保有しているレンチウイルスベクターで形質導入された細胞系のパネルから由来した培養上清における抗MET−Rの定量化を報告している表。
図11
組み換え抗MET−R結合はMetの細胞外ドメインと高い結合性をもって結合する。(A)異なる源(融合細胞または遺伝子上で修飾されたカルシノーマ細胞系)に由来された抗MET−Rで免疫沈降されたMet受容体を含む細胞溶解物のウェスタンブロット。免疫沈降は1から細胞培養上清で保温しているSeph.Prot.Gで実行された:無関係なMAbを生じている融合細胞;2 抗MET−R MAbを生じている2つの融合細胞;3 抗Met−R MAbのcDNAsを保有しているレンチウイルスベクターで感染されたMDA−MB435細胞 4:感染していないMDA−MB435細胞。サンプルを還元条件下でSDS−PAGEに供し、そして対応するフィルターを受容体のC末端領域に対して向けられる抗Met抗体でプローブした。(B)抗MET−R及び組み換え抗MET−RのMet受容体の細胞外ドメインに対する結合アッセイ。ヒトIg(100ng/well)に由来するFcドメインに融合した精製されたMET細胞外ドメインで被覆された96ウェルプレートを精製された抗MET−Rまたは組み換え抗MET−R(0から5,5nMまで)の増加する濃度で培養した。抗体を結合した抗マウスIg−HRPを使うことによって結合曲線が明らかとなった。結合の特異性を制御するためにFc−Ron(ヒトIgのFcドメインをRon受容体の細胞外ドメインに融合して得られたキメラタンパク質、Met受容体系統に属するタンパク質)で被覆されたウェルを使って同じアッセイを試みた。
図12
組み換え抗MET−RはHGFRのタンパク質分解性の切断及び細胞外ドメイン(外部ドメイン)の脱落を誘導する。結腸直腸癌由来の細胞系であるHCT−16を精製された抗MET−R(A)または組み換え抗MET−R(B)の示された量で、24時間の無血清条件で培養した。全細胞溶解物(上部パネル)及び細胞培養上清(下部パネル)をウェスタンブロットに続くSDS−PAGEに供した。細胞の成熟Met(p145)型の減少及び培養上清のMet外部ドメイン(p80)の同時増加を、Metβ鎖の細胞外部分に位置したドメインであることを認識するDL−21抗Met mAbを用いてフィルターをプローブしてモニターした。
図13
抗MET−Rをコードしているレンチウイルスベクターを用いた形質導入はインビトロ及びインビボにおける癌細胞の形質転換された表現型を制御する。(A)足場非依存性増殖アッセイ抗Met−Rをコードしているレンチウイルスベクターで形質導入された(抗MET−R)またはされていない(対照、WT)HCT−116細胞を0.5%の寒天に播種した。細胞を2%FCS+80ng/mlHGFで補充された培養で維持した。14日後コロニーを数えた;代表的なウェルを上欄に示す;グラフの下にコロニーの数(3通りから算出される)を表している。(B)浸潤アッセイ抗Met−Rをコードしているレンチウイルスベクターを用いて形質導入された(抗MET−R)またはされていない(対照、WT)のHCT−116細胞をマトリゲルで被覆したトランスウェルの容器上にのせた。下方容器を2%FBS+80ng/mlHGF培地で満たした。24時間後フィルターの下方部分に付着した細胞の数を数えた。写真は代表的なフィルターのフィールドである。(C)インビボにおける腫瘍潜時。抗MET−Rをコードしているレンチウイルスベクターで形質導入された(抗MET−R)またはされていない(対照、WT)HCT−116細胞を胸腺欠損ヌードマウスの側腹部に注入した(3×10cells/mouse、n=6それぞれのグループ)。腫瘍体積をノギスを用いて2日おきに評価した。腫瘍体積が15mmを超えたとき、マウスを腫瘍存在が陽性であると考えた。(D)インビボにおける腫瘍増殖。抗MET−Rをコードしているレンチウイルスベクターで形質導入された(抗MET−R)またはされていない(対照、WT)HCT−116細胞を胸腺欠損ヌードマウスの側腹部に注入した(3×10cells/mouse、n=6それぞれのグループ)。腫瘍増殖の動態について腫瘍体積をノギスで3日おきに測定することで評価した。65日目でマウスをすべて屠殺した。
図14
抗MET−Rをコードしているレンチウイルスベクターの直接的な内部腫瘍送達は腫瘍増殖を阻害した。HCT−116細胞(4×10cells/mouse)を胸腺欠損ヌードマウスの側腹部に注入した。腫瘍体積が10mmの大きさになったときレンチウイルスベクター粒子(1μgのp24/マウス)を0日目と3日目に内部腫瘤に投与した。1つのグループ(CTRL)GFPをコードしているベクター粒子を受容する一方、他のグループは抗MET−R(抗MEt−R)をコードしているベクター粒子を受容した。腫瘍増殖の動態について腫瘍体積をノギスを用いて3日おきに測定することで評価した。
図15
抗MET−Rをコードしているプラスミドのマップ。
図16
抗Met−R FLAG−Hisをコードしているプラスミドのマップ。
図17
HGFR(Met外部ドメイン)の外部細胞部分に由来するドメインの模式図。
図18
抗Met−RはIPTs領域に位置するエピトープを特異的に認識する。myc−タグを付けたおとりMet、myc−タグを付けたSEMA PSI及びmyc−タグを付けたPSI IPT1−4をコードしているレンチウイルスベクター粒子で形質導入されたMDA−MB−435の条件培地を抗MET−R抗体で免疫沈降し、そしてビオチン化抗−myc抗体を使ってウェスタンブロットにより検出した(右側パネル)。条件培地の等量をタンパク質発現の対照としてロードした(左側パネル)。CTRL:空のレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞の条件培地。おとりMet:全細胞外ドメインを発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞の条件培地。PSI−IPT:HGFRのPSI、IPT−1、IPT−2、IPT−3、IPT−4ドメインを発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞の条件培地。SEMA−PSI:HGFRのSema及びPSIドメインを発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞の条件培地。右側に分子量がKDで示されている。
図19
抗Met−RはIPT−4領域に位置するエピトープを認識する。標識されたIPT−1、IPT−2、IPT−3、IPT−4ドメインのすべてを発現しているレンチウイルスベクター粒子で形質導入されたMDA−MB−435細胞の細胞溶解物を抗MET−R抗体で免疫沈降し、そして抗−フラッグ抗体を使ってウェスタンブロットにより検出した(左側パネル);タンパク質発現の対照として、細胞溶解物の同量を抗−フラッグ抗体で免疫沈降し、同じ抗−フラッグ抗体を用いてウェスタンブロットにより検出した(右側パネル)。CTRL:空のレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞からの細胞溶解物。IPT1:HGFRのIPT−1領域を発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞からの細胞溶解物。IPT2:HGFRのIPT−2領域を発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞からの細胞溶解物。IPT3:HGFRのIPT−3領域を発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞からの細胞溶解物。IPT4:HGFRのIPT−4領域を発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞からの細胞溶解物。右側KDにおける分子量が示されている。
図20
抗Met−Rはインタクト細胞においてHGF受容体を特異的に染色する。パネルA:抗Met−R抗体を用いた流動細胞計測法により分析されたGTL−16の特性。細線:イソタイプのCTRL抗体で培養されたGTL−16;太線:抗Met−Rで培養されたGTL−16。MFI:平均蛍光強度。パネルC:蛍光色素Alexa Fluor488を用いて接合されたヤギ抗−マウスIgによって明らかにされた抗Met−R抗体を用いて標識されたGTL−16細胞の免疫蛍光分析。パネルB:抗−マウスIg/Alexa Fluor488のみで標識されたGTL−16細胞。(最初の拡大率、×63)
図21
抗Met−R重鎖の核酸(a)とアミノ酸(b)配列。CDR領域はヌクレオチドとアミノ酸配列の両者に下線が引かれている。
図22
抗MET−R軽鎖の核酸(a)とアミノ酸(b)配列。CDR領域はヌクレオチドとアミノ酸配列の両者に下線が引かれている。
【0012】
発明の詳細な説明
MET原癌遺伝子によってコードされている肝細胞増殖因子受容体は、活性化と同時に、「浸潤性の腫瘍」として知られる生物学的反応の複雑な範囲を誘導するチロシンキナーゼ受容体である(8)。これは細胞増殖の誘導と配位、転移、分化及び残存を意味する。生理的条件下で、胚発生の間、浸潤性増殖プログラムは臓器発生で中心的な役割を担うが、癌で制御が解かれたとき腫瘍の進行と転移に寄与する(13)。
【0013】
いくつかの癌遺伝型は生殖細胞系のMET遺伝子のミスセンス変異が原因であり(9、10)、また予後が悪いことにしばしば相関する固形腫瘍の大部分で不適当なHGFRの活性化が見られる(14)などのように、ヒト腫瘍におけるHGFRの関与が現在確固として樹立されている。ヒトの癌で最も頻繁な変異は、受容体の過剰発現(15)により構造性の二量化が起こり、またリガンド不在でさえも受容体が活性化することである(16)。さらなるHGFR発現は、(i)METが腫瘍性細胞に肝転移を選択的優位に与える大腸腫瘍において遺伝子の増幅、(ii)Ras、Ret及びEts(17、18)のように他の癌遺伝子によって誘導される増強された転写、(iii)低酸素−活性化型転写が原因の可能性があり、この場合、受容体の高い量が細胞をHGFに過敏化し腫瘍の浸潤を促進する(19)。
【0014】
チロシンキナーゼ受容体(RTKs)を干渉するため、2つの戦略が臨床診療において現在つかわれている:(i)チロシンキナーゼ活性を阻害している小分子を用いた処置;(ii)受容体の活性化を干渉している抗体を用いた処置。
【0015】
本発明は腫瘍治療での抗HGFR抗体の使用に関するものであり、特に抗MET−Rと呼ばれる抗Metモノクローナル抗体の使用に関するものであり、驚くべきことに、受容体のダウンレギュレーションを誘導することができるということがわかった、受託番号PD05006としてICLCに寄託された融合細胞によって産生される。
【0016】
一つの実施態様において、本発明は、腫瘍を患っている患者の腫瘍及び転移の治療のための薬剤の調製のために、モノクローナル抗体抗MET−Rを使用することを含む。
【0017】
さらなる実施態様において、本発明は、インビボまたはインビトロのいずれかで腫瘍性細胞を検知する診断装置の製造のために抗MET−R抗体を使用することに関する。
【0018】
抗Met−Rは、HGFRの細胞外ドメインに特異的なモノクローナル抗体(mAb)である(20)。このモノクローナル抗体は肝細胞増殖因子(運動性、増殖、細胞生存、浸潤、管形成及び血管新生)によって誘導されたすべての生物学的影響を引き起こすというわけではないが、しかし、運動性のみを誘導する。さらに、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子の恒常的発現を上方制御するが、しかし、長期間ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体を誘導及び維持することはできない。このmAbは二価のmAbに完全に依存し、受容体の二量化を必要とする受容体リン酸化を活性化する。
【0019】
この抗体の作用薬能力は、その治療能力を正当化するには、本質的には、十分ではない。実際、発明者が調べた異なる抗MET−Rモノクローナル抗体(DO−24)は、効果的な受容体のダウンレギュレーションを誘導することはできず、また受容体の細胞外部分の脱落を促進しない。
【0020】
抗Met−RはHGFRとHGFの相互作用を妨げないが、実施例4に示し、図5で議論されているように、HGFRのダウンレギュレーションを効果的に促進する。この相互作用はHGFRに仲介されたシグナル伝達の阻害、そして特に、抗アポトーシス応答に含まれることで知られるAkt経路の阻害に繋がる。
【0021】
以下に記す結果から明らかなように、抗MET−Rによるインビトロでの処置は、足場非依存性様式(実施例2及び図2を参照)、足場の欠如によるアポトーシスからの回避を必要とする性質で増殖するための細胞能力の機能障害を引き起こす結果となることを発明者は証明した。さらに、インビボにおいて、実施例3に詳述するように、抗MET−Rで処置された動物において、腫瘍が、増殖率の重要な変化なしでアポトーシスの増殖率を示すことを本発明者らは観察した。一方、抗体に対する応答における細胞増殖特性の修正についてはインビトロやインビボのいずれにおいても発明者は観察せず、MAPK経路の活性化において抗MET−Rの阻害効果の欠如と一致している。異なる経路を活性化するためのHGFRの能力の解離は新規ではなく、異なるHGFR変異体(21)とHGFR部分的作用薬(22)の応答ですでに示されている。
【0022】
抗体−誘導HGFRダウンレギュレーションは受容体の細胞外部分の脱落を含む。外部ドメイン脱落は、膜タンパク質の細胞外ドメインが細胞表面からタンパク分解により遊離する過程であり、したがって細胞は、環境刺激に応答して表面を急激に変化させ、可溶性制御因子を生じる。本発明者は、実施例6及び7において抗MET−Rの活性化の証拠を示している。
【0023】
本出願において発明者は、抗MET−Rが、ヌードマウスに移植された癌細胞から腫瘍の増殖と突発性転移の形成を阻害するというようなインビボで活性があるという証拠を、特に実施例3で、提供している。この実験は、癌細胞及び微小環境の両者で抗体の活性によりこれらの効果が引き起こされることを示唆している。実際、内皮細胞はHGFR(24)を発現しており抗Met−Rがこの種の細胞でもまたHGFRの脱落を誘導することを証明した(データは示されない)。一次性腫瘍の新血管新生は腫瘍増殖及び転移両者にとって絶対の必要条件であり、HGFが強力な血管新生因子(24)であることが確固として樹立されている。さらに、HGFR活性化において、VEGFの遊離と他の血管新生因子の増加が引き起こる(48−49−40)。このように、血管新生における効果は、腫瘍細胞でMet機能が阻害されることが腫瘍からそのような因子の遊離を阻害するというように、間接的であり得る。本発明の発明者は、抗MET−Rで処置した後、微小環境の血管の数の減少による、腫瘍内血管新生の重要な縮小を観察した。
【0024】
抗体に長時間曝した後、明らかな病理学的変化を示さなかったというように、宿主細胞の抗MET−Rの活性が、脾臓、骨髄、肝臓、心臓、骨及び腎臓のような異なる器官の機能性に影響を及ぼさなかったことは価値に値しない。したがって、正常及び腫瘍性細胞の両者においてHGF−Rを認識することにもかかわらず、抗MET−RはHGF−Rの過剰発現を検知し、細胞の生存能力への変化を誘導する能力を示す。
【0025】
結論として、この結果は、HGFRの抗MET−Rによって誘導されたダウンレギュレーションが免疫療法及び腫瘍を患った患者の腫瘍の治療及び転移の予防における更なる方法を提供することができる医薬組成物である抗MET−Rまたはそのフラグメントの使用のための候補メカニズムであることを示唆している。
【0026】
その上、抗Met−Rは、インビボまたはインビトロの両者において腫瘍細胞を検知するために、たとえば適した標的を用いて抗MET−Rをラベルすることによって、診断用ツールとして使用されることができる。
【0027】
本発明に従って動物における従来の方法により、または好ましくは遺伝子工学技術によって、抗MET−Rを産生することができる。
【0028】
本発明によるモノクローナル抗体抗MET−Rの使用は、遺伝子工学的ヒト化抗体及び適した診断用マーカーで標識された抗体の使用を含むことを目的としている。遺伝子工学的ヒト化抗体及びそれらの作成のための方法は当該分野で知られている。参考文献25を参照。
【0029】
抗Met−Rの使用もまた、エピトープ結合領域または相補性決定領域(CDRs)、Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)フラグメントを含むタンパク質のような、そのエピトープ結合領域を有するフラグメントの使用を含む。従来のフラグメントは、特にタンパク質分解による切断によって産生されるが、組み換えDNA技術によってだけでなく、液体または固相合成のような化学合成によって産生されることもできる。
【0030】
抗Met−Rとそのフラグメントは、送達が薬輸送の従来の方法を使って達成される可溶性タンパク質の形で、好ましくは医薬組成物で使用される。抗体抗MET−R及び/またはそのフラグメントを含む医薬組成物の投与は、当業者に知られた方法によって達成される。例えば、化合物は患者に注射されるか注入される水溶液として投与される。適当な投薬量の決定は患者の年齢及び体重を含む多くの症例に特異的な要因に依存し、当業者の専門知識の範囲内の通例の実験を含む。
【0031】
本発明の他の態様は、腫瘍に苦しむ患者の腫瘍細胞のインビボまたはインビトロでの検知のための適した診断用マーカーを用いて標識されたモノクローナル抗体抗MET−Rを含む医薬組成物の製造を含む。
【0032】
本発明は、最小のコアプロモーター(minCMV promoter)をヒトのホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子の効率的なプロモーターの上流に逆方向に連結することによって得られる合成プロモーター及びモノクローナル抗体抗MET−Rの少なくとも部分をコードしているDNAを含むDNAベクターの製造を包含する。ベクターに含まれるDNA配列は抗MET−Rの軽鎖及び/または重鎖をコードしている;DNA配列において保守的な置換基並びに5’または3’末端の両者でタグ配列の付加によって修飾された配列もまた本発明によって包含される。抗MET−Rの軽鎖及び重鎖をコードしているヌクレオチド配列はそれぞれ配列番号1及び配列番号2に示される。
【0033】
さらに、本発明者はタグ配列を抗MET−R重鎖に付加している重鎖を修飾した(配列番号3)。この配列はNichelカラムを用いてMAbを精製することができ、抗FLAG抗体(SIGMA)によって特異的に認められる。
【0034】
本発明のDNAベクターの産生は当該分野で知られたさまざまな方法によって達成され得るが、産生を実施例10で例証する。
【0035】
その他の実施態様において、本発明は、当該分野における腫瘍及び転移の治療のための医薬の調製のために、モノクローナル抗体抗MET−Rのエピトープ結合領域をコードしているDNAを含むDNAベクターを使用することを含む。本発明におけるDNAベクターの送達は遺伝子治療の既知の方法を使用することによって達成され得る。例えば参考文献(10)に示される。
【0036】
本発明の更なる実施態様において、腫瘍治療において同時、別々、または連続した使用に対する混合された調製として、抗体抗MET−R及び/またはそのフラグメント及びキナーゼ阻害剤を含む製品を含む。本発明において有利に使用され得るキナーゼ阻害剤の例は、K252Aスタウロスポリン類似体(Calbiochem−Novabiochem Intl.;36);PHA−665752(3Z)−5−[(2,6−ジクロロベンジル)スルホニル]−3−[(3,5−ジメチル−4−{[(2R)−2−ピロリジン−1−イル]カルボニル}−1H−ピロール−2−イル)メチレン]−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン(34);SU11274[(3Z)−N−(3−クロロフェニル)−3−({3,5−ジメチル−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル]1H−ピロール−2−イル}メチレン)−N−メチル−2−オキソインドールイン−5−スルホンアミド](37,38,35);SU11271[(3Z)−5−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イルスルホニル)−3−({3,5−ジメチル−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル]−1H−ピロール−2−イル}メチレン)−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン](38);SU11606[(3Z)−N−(3−クロロフェニル)−3−{[3,5−ジメチル−4−(3−モルフォリン−4−イルプロピル)−1H−ピロール−2−イル]メチレン}−N−メチル−2−オキソインドールイン−5−スルホンアミド](38)である。
【0037】
発明者は、実際、抗MET−Rによって活性化した阻害メカニズムがHGFRチロシンキナーゼ活性を必要としないことを認めた。この特徴は治療的なアプローチにおいて関連性のある優位性を意味する。臨床診療において、実際、標的分子に対する影響を向上させるために異なる薬を併用することは頻繁にある。HGFRの場合、抗体とともにキナーゼ阻害剤を併用することが可能であり、HGFR活性化とレベルの両者の働きが発揮される。これは、腫瘍の増殖及び浸潤性転移性表現型の取得の両者を防ぐ目的で、Metを過剰発現している腫瘍における標的治療の治療有効性を強化すると思われる。
【0038】
抗体である抗MET−R及び本発明による生産物のそのフラグメントは上述したように産生される。本発明による併用に使われるキナーゼ阻害剤は従来の化学合成または遺伝子工学技術によって産生され得る。
【0039】
更なる実施態様において、本発明は、肝細胞増殖因子受容体の細胞外ドメインの少なくとも一部分に結合可能な化合物のスクリーニング方法を含むもので、そのうちこれらの化合物は肝細胞増殖因子受容体に対する拮抗作用の活性を有し、かつ腫瘍及び/または転移の予防及び/または処置において薬理活性である。特に、これらの化合物は肝細胞増殖因子のダウンレギュレーションを誘導するか、または肝細胞増殖因子の細胞外ドメインの少なくとも一部分を脱落させることができる。
【0040】
本発明は実施例に制限されないものとして、望ましい実施態様に関して記載されたものである。
【0041】
抗体、阻害剤及び他の試薬
モノクローナル抗HGFR抗MET−Rは(20)にはじめて記載された。免疫沈降及びウェスタンブロット解析のために使用された他の抗体は:抗HGFR抗体DO24及びDL21(20に記載したHGFR細胞外ドメインであると認識されている);ホスホチロシンPY20(形質導入研究室)、抗ユビキチン(Babco)、抗HSP70(Stressgen)、抗ホスホAkt(Ser473、細胞シグナルテクノロジー)、抗Akt(サンタクルーズバイオテクノロジー)、抗HGFR細胞間ドメイン(C12、サンタクルーズバイオテクノロジー)である。免疫組織化学的染色は以下のものとともに実施された:抗ヒトホスホ−HGFR(細胞シグナル)及び抗マウスCD31抗体(Pharmingen)。インビトロ及びインビボでの実験のために抗小泡性口内炎ウイルス抗体(VSV−G、シグマ)がコントロールとして使用された。ラクタシスチン及びコンカナマイシンはCalbiochemから購入した。
【0042】
抗MET−Rヌクレオチド及びアミノ酸配列
配列番号1及び図21aに対応する抗MET−R重鎖ヌクレオチド配列の翻訳は図21b及び配列番号6に示されている。
【0043】
図21a及び図21b中、CDR領域に対応するヌクレオチド及びアミノ酸配列に下線を引いている;それらのアミノ酸配列は:CDR−H1:GYTFTSYW(配列番号8);CDR−H2:INPSSGRT(配列番号9);CDR−H3:ASRGY(配列番号10)。
【0044】
配列番号2及び図22aに対応する抗MET−R軽鎖ヌクレオチド配列の翻訳は図22b及び配列番号7に示されている。
【0045】
図22a及び図22b中、CDR領域に対応するヌクレオチド及びアミノ酸配列に下線を引いている;それらのアミノ酸配列は:CDR−L1:QSVDYDGGSY(配列番号11);CDR−L2:AAS(配列番号12);CDR−L3:QQSYEDPLT(配列番号13)。
【0046】
レンチウイルスベクターの製品のための293T細胞の一過性の形質導入
形質移入のおよそ24時間前に293T細胞6.0×10個を15cmシャーレに播種した。形質移入の2時間前に培地にIMDM22mlを加えて、熱不活性化FBS(10%)、ペニシリン(25U/ml)、ストレプトマイシン(25U/ml)及びグルタミン(1%)を補充した。形質移入のためのプラスミドDNAmixは以下を加えることによって準備された:ENVプラスミド(VSV−G)、9μg;PACKAGINGプラスミドpMDLg/pRRE16.2μg;REVプラスミド、6.25μg;TRANSFERベクタープラスミド#330または#331、37.5μg。プラスミド溶液を0.1×TE/dHO(2:1)で最終的に1125μlとした。2.5MのCaCl125μlを加え、5分間RTで放置した。次いで、フルスピードで攪拌し、2×HBS溶液1250μlを加え、その後即座に細胞培養に滴下して加えた。Capiで誘導されたプラスミドDNAを14−16時間培養し、その後培地を1mMのナトリウム酪酸塩(18ml/シャーレ)を加えた新しい培地と交換した。ベクター粒子を含んでいる細胞培養上清を培地交換後に30−36時間かけて収集した。収集した後、上清を2500RPMで10分間遠心分離し、0.2μmのろ紙に通して、−80℃で保存した。
【0047】
レンチウイルスベクターを含む細胞上清による標的細胞の感染
10%FBS、グルタミンを補充したフレッシュ培地に10個の細胞を播種した。感染のため、上述のようにHIV−1 Gap p24当価物のベクター粒子の最終濃度が10ないし150ng/ml(ELISAアッセイによる測定)で準備されたレンチウイルスベクター粒子を含む上清とともにポリブレン8μg/mlの存在下で細胞系を培養した。18時間後、培地を換えて細胞を増殖させた。培養が80%までコンフルエントな状態になったとき、細胞を血清なしの培地で培養し、72時間後抗MET−Rを含む上清を収集した。
【0048】
HGFRダウンレギュレーションアッセイ
細胞を10%致死性ウシ血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で維持した。抗体及びHGFによる処置はそれぞれ80μg/ml及び80ng/mlの無血清培地で行われた。示したように、刺激の前に、細胞を10μMラクタシスチンまたは100nMコンカナマイシンで2時間予め培養した。HGFR分解の解析のため細胞をLBバッファ(2%SDS、0.5Mトリス−塩酸pH=6.8)に溶解し、そして細胞溶解物のタンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて評価した。その後、等量分の全タンパク質と等量分をSDS−PAGE及びウェスタンブロッティングによって分析した。免疫沈降実験のため、プロテアーゼ阻害剤及び1mM Na−パナジン酸の存在下で、EBバッファ(20mMトリス−塩酸、pH7.4、MEDTA 5mM、NaCl 150mM、10%グリセロール、1%トリトン×−100)に細胞を溶解させた。適当な抗体による免疫沈降の後、よく洗浄した。その後、免疫沈降されたタンパク質を標準的な方法によるウェスタンブロッティングで処理した。ECL検知システム(Amersham)を用いて最終的な検知を試みた。
【0049】
HGFR脱落の代謝標識化と分析
細胞を16時間血清欠乏させ、[35S]メチオニン[35S]システイン(100μCi/ml、Amersham Corp.)で30分間パルスラベルした。メチオニン及びシステインのないDMEM培地で抗MET−RまたはVSV−GまたはHGFのいずれかを4時間処理した。条件培地を集め抗HGFR細胞外抗体とともに免疫沈降に供した。免疫沈降したタンパク質をSDS−PAGEで分離し、(26)にすでに記載したようにオートラジオグラフィを撮った。
【0050】
インビトロ生物学的アッセイ
足場非依存性増殖の評価のために抗Met−RまたはVSV−Gのいずれかの培地で48時間前処理した。その後、1500個の細胞をDMEM2%FBS及び0.5%柔らかい寒天(SeaPlaqueアガロース、BMA)に播種し、そして指示された量の抗体及びHGFの存在下で10日間維持した。増殖したコロニーをテトラゾリウム染色(47)で最終的に視覚化した。浸潤アッセイをTranswell容器(Corning社)で行った。ポリカーボネイトフィルター(8μmポアサイズ)をマトリゲル基底膜(Collaborative Research)の15μg/cmで被覆した。20nMの抗MET−RまたはVSV−Gとともに播種する前に、24時間細胞を予め培養して抗体を処理した。5×10この細胞をフィルターの上方に播種し、容器の底にHGF100ng/mlを加えてDMEM+2%FBSで培養した。48時間後、フィルターの上方を機械的に除去した。下方に遊走した細胞を固定し、染色して数えた。HGFの刺激上に遊走した細胞の数と、遊走しなかった細胞とに振り分けることにより遊走指数を得た。
【0051】
インビトロにおける抗Met−RによるHGFRの標識化
流動細胞数測定のために、10個のGTL−16細胞をPBS−EDTA0.025%で分離し、PBSで洗浄して、抗Met−R抗体の50μg/mlまたはアイソタイプ対照マウスIgの同量で15分RTの間培養した。PBSで2回洗浄した後、FITC接合ヤギ抗マウスIg(Jackson Immunoresearch laboratories)の15μg/mlで細胞を培養した。その後、細胞を洗浄し、PBS−5%BSA中に再懸濁し、流動細胞数測定(Becton Dickinson,Mountain View,CA)によって分析した。GTL−16細胞をメタノール:アセトン(3:1)中で5分間氷上で固定し、その後PBSで2%ヤギ血清で30分間ブロックした。精製された抗Met−RをPBS2%ヤギ血清中に2.5μg/mlの濃度で加えて、1時間培養し、その後PBSで3回洗浄した後、結合抗HGFR抗体をAlexa Fluor 488(分子プローブ)と抱合する抗−マウスIg4μg/mlで分離した。サンプルの分析を蛍光顕微鏡(DM−IRB,Leica Microsystes)にて行った。
【0052】
インビボ実験
Swiss CD1 バックグラウンドの6週目の免疫不全nu/nuのメスのマウスの後部即腹部の皮下に、1×10個のGTL16または2.5×10MDA−MB−435β4のいずれかを播種することによってインビボ実験を行った。腫瘍の外見上、同程度の大きさの腫瘤を患ったマウスを選択し、I.P.またはI.S.(GTL16を注射したマウスの場合、I.S.のみ)のいずれかにて、抗MET−R及び抗VSV−Gの示した量とともに週に2回播種した。処置を始めてから8週間経過後、マウスを屠殺し、腫瘍の重量を測定した。MDA−MB435β4を注入したマウスにおいて、自然転移の存在を調べるために肺を分析した。リン酸化HGFRの評価のために、抗−ホスホ−HGFR抗体(細胞シグナル、1:100)を用いてパラフィンで包埋した腫瘍切片5μmを原発腫瘍の免疫組織化学的染色した。一般的な病理学的調査のために、マソン−トリクロムプロトコル(シグマ)によるヘマトキシリン/エオシン染色の後、転移の数が肺の顕微鏡観察によって樹立された。組織−Tek OCT化合物(Sakura Finetek)で包埋されたサンプルについて、免疫組織化学によって腫瘍血管新生の評価をし、−80℃で即座に凍結させた。免疫組織化学的染色のために、ラットモノクローナル抗マウスCD31抗体(Pharmingen)が使用された。
【0053】
アポトーシスの評価
アポトーシスの形態的な評価はKerrの基準に従って評価された。壊死病巣の近くの多数の単独壊死細胞及び虚血誘導アポトーシスの原因で、壊死の領域から遠い、少なくとも1HPF(High Power Field=0.63 mm)の組織のみを信頼できるアポトーシス性の数と考えた。広範囲に及ぶ腫瘍状壊死によるケースは評価しなかった。すべてのケースを2つのカテゴリのうち1つにまとめた:10HPFにつきアポトーシス数が10以上またはそれ以下。
【0054】
プロテアーゼの阻害
抗体刺激の前に、細胞を2時間下記の阻害剤で処置した:ウロキナーゼを阻害するためのアミロライド(Sigma)4ml;ADAM及びZn−依存プロテアーゼを阻害するための1,10−フェナントロリン(Sigma)5mM;セリン及びシステインプロテアーゼを阻害するためのアプロチニン20μg/ml及びロイペプチン100μg/ml、酸性プロテアーゼを阻害するためのペプスタチンA(Calbiochem) 10μg/ml。細胞を1μM TPAで24時間処置することによりPKCを阻害した。
【0055】
スクリーニング方法
本発明は、HGFまたは他の受容体作用薬の存在または不存在において、HGFRの発現/機能/生物学的活性を調節するか、またはHGFRの細胞外ドメインの脱落を誘導するテスト化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。
【0056】
テスト化合物は、好ましくは受容体細胞外部分と相互に作用してHGFRと結合する。さらに好ましくは、テスト化合物は、テスト化合物の欠如と比較して少なくともおよそ10、好ましくはおよそ50、さらに好ましくはおよそ75、90、または100%の割合で、HGFRで媒介される生物学的活性を減少させる。
【0057】
テスト化合物はHGFRの発現をさらに抑制する。さらに好ましくは、テスト化合物が不存在の場合に比べて少なくともおよそ10、好ましくはおよそ50、さらに好ましくは75、90、または100%の割合でHGFR転写物またはタンパク質をダウンレギュレーションする。
【0058】
テスト化合物
テスト化合物は、当該分野で既知の薬理学的な作用薬、ペプチドまたはタンパク質でもよく、または薬理学的活性を有することが知られている化合物でもよい。テスト化合物は自然に生じたもの、または研究所で設計されたものでよい。それらは微生物、動物、または植物から単離されてもよく、組み換え技術によって産生されるか、または当該分野で知られた化学的方法によって合成されてもよい。所望により、テスト化合物は当該分野で知られた生物学的ライブラリー、空間的にアドレス可能な平行な固相または液層ライブラリー、逆重畳積分を必要とする合成ライブラリー方法、「1−ビーズ、1−化合物」ライブラリー方法、及び親和性クロマトグラフィー選択を用いた合成ライブラリー方法を含むがこれに限定されるものではない、コンビナトリアルライブラリーの方法のいくつかを使って得ることもできる。生物学的ライブラリーのアプローチはポリペプチドライブラリーに限定される、一方他の4つのアプローチはポリペプチド、非ポリペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーに適用できる。
【0059】
結合アッセイ
結合アッセイのためテスト化合物は、HGFR細胞外部分に結合する分子であって、該分子はHGFRの通常の生物学的活性化を妨げるような抗Met−R活性化を模倣する。このような分子の例として、以下に限定されるものではないが、小分子、ペプチドまたはペプチドのような分子を含む。
【0060】
結合アッセイにおいて、テスト化合物またはHGFR細胞外部分のいずれかは、放射性同位元素、蛍光性、化学発光、または酵素ラベル(例えば、放射性同位元素で識別されたヨウ素、放射性同位元素で識別されたリン、フルオロフォアまたは蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、西洋わさびペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)のような検出可能なラベルを含むことができる。HGFRの細胞外ドメインに結合するテスト化合物の検出は、例えば、放射性物質を直接数えることによって、シンチレーション測定によって、または検出可能な化合物に適した基質の変換を決定することによって達成され得るものであって、HGFRまたはその細胞外ドメインの部分は担体に結合しているか、または細胞によって発現されるか、当該分野でよく知られた方法に従って検知され得る。
【0061】
機能的アッセイ
テスト化合物はHGFRの生物学的効果を減少する能力に対して試験される。このような生物学的効果は本出願で記載された機能的なアッセイを用いて決定され得る。それらは足場非依存増殖アッセイ及び浸潤アッセイ(両者は実施例2及び11に詳述している)及びインビボでの形質転換された表現型の評価(実施例3、11、1に詳述している)により適用される。このように、機能的アッセイは、HGFRを発現している細胞系を用いてインビトロで行うか、またはHGFRを発現している実験的または自然に生じる腫瘍の発達を調査することが可能である動物モデルを用いてインビボで行うことができる。少なくともおよそ10、好ましくはおよそ50、さらに好ましくは75、90または100%の割合でHGFRの生物学的活性を減少させるテスト化合物は、HGFR生物学的活性を減少させるための有望な薬理学的薬剤として認識される。
【0062】
実施例
実施例1。抗Met抗体抗MET−RがHGFRシグナル伝達を阻害する。
抗Met−Rは、リガンドによる結合とは異なるエピトープであると認めるHGF受容体の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体である。このmAbは部分的な作用薬として振る舞う。なぜならば、これは肝細胞増殖因子(運動性、増殖、細胞生存、浸潤、管形成及び血管新生)によって誘導されるすべての生物学的影響を引き起こすわけではなく、運動性のみを引き起こすからである。さらに、それはウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性因子の構成的発現を上方制御するが、長期間ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性因子受容体の発現を誘導及び維持することはできない。このmAbは、mAbの二価性に強く依存し、受容体の二量化を必要とする受容体のリン酸化を活性化する。
【0063】
抗Met−R抗体が、腫瘍の過剰発現において構造的HGF受容体の活性化を阻害するためのツールとして適当かどうかという疑問に答えるために、発明者らはまず始めに、抗体に慢性的に曝された腫瘍細胞において、その生化学的及び生物学的活性を分析した。モデルとして、発明者は、HGFRが過剰発現され、それにしたがってオリゴマー形成され、恒常的に活性化されるという、人の胃のカルシノーマに由来するGTL16細胞を用いた。図1Aは、HGFR発現とチロシンのリン酸化における重要な縮小を示す。
【0064】
その後、HGFRシグナル伝達における抗体の影響を評価した。HGFRは刺激的なAkt活性化による強力な抗アポトーシスプログラムを促進することで知られているため、発明者は抗MET−R治療上のAktのリン酸化のレベルを評価した。図1Bで示すとおり、Aktのリン酸化は、基底状態及びHGFで刺激された細胞の両者で抑制された。
【0065】
HGFRによって活性化された他の重要な経路は、細胞増殖の刺激を含むことで知られているMAPK経路である。発明者らは抗体で処理された細胞中のMAPKsの活性化のレベルを調査したが、この経路の重要な抑制は観察されなかった(データは示していない)。
【0066】
実施例2。抗Met−Rはインビトロで癌の形質転換された表現型を抑制する。
細胞増殖及び形質転換された表現型における抗体の影響を足場依存性及び非依存性方法で増殖し、細胞外マトリックスを浸潤する細胞活性を測定することにより評価した。図2Aに示すように、抗体治療において足場依存性条件で増殖する細胞の活性における相違は観察されなかった。
【0067】
足場非依存性増殖は、足場の欠如によるアポトーシス、いわゆる「アノイキス」を克服する細胞の能力に強く依存する;この特徴は、通常柔らかい寒天(28)上で増殖する細胞の能力を評価することによって分析されている。HGFR活性化が細胞にこの特徴を与えることができることを多くの論文が示しているので、発明者らは0.5%の寒天にGTL16を播種し、抗MET−Rまたは対照としての無関係なアイソタイプに対応する抗体の異なる量の存在または非存在での培養を維持した。図2Bに示すように、VSV−Gで処置された、並びに処置されていない細胞は多数のコロニーを形成することができた。逆に言えば、抗MET−Rは用量依存的様式において癌細胞の足場非依存的増殖を徹底的に阻害した。GTL16細胞が、構成的HGFR活性化によって、基礎条件でさえも柔らかい寒天でコロニーを形成することが可能であること、及び抗体がHGFの存在下及び非存在下の両者においてこれらの細胞の形質転換された表現型を減らすことは興味深い。
【0068】
細胞侵襲性を阻害する抗体の能力を評価するために、発明者らは、再構成された基底膜(29)を浸潤することができる乳癌細胞系のNDA−MB−435β4について研究した。図2Cに示すように、インビトロにおいて抗MET−Rを用いたこれらの細胞の処置はHGFに対する応答において浸潤特性の用量依存的縮小を引き起こす結果となった。
【0069】
実施例3。抗Met−Rはインビボにおいて形質転換された表現型を阻害する
インビボにおける腫瘍増殖に対する抗MET−Rの活性を評価するために、発明者は免疫不全のメスのマウスnu/nuの後側腹部の皮下にGTL16細胞を接種した。このマウスに週に2回、抗MET−RまたはVSV−Gのいずれかを、生体内原位置(in situ)で投与して処置した(2μg/gr)。注射の部位に腫瘍が出現する移植後1週間、治療を開始した:比較し得る大きさの腫瘍を患っているマウスのみに4週間治療した。すべての処置と増殖の減少が抗MET−Rで処置したマウスに観察されている間、腫瘍体積をモニターし(図3A)、処置の後、マウスを死体解剖して腫瘍を切除し、秤量した。図3Bに示すように抗Met−Rで処置されたマウスにおいて、腫瘍は対照よりも顕著に縮小した(p<0.05)。アポトーシス細胞のパーセンテージがかなり上昇した間(図3D)、受容体がリン酸化された形に対して特異的抗体で染色することによって示されるように、これらの腫瘍におけるHGFR活性化のレベルは減少した(図3C)。さらに、本発明者らは腫瘍切片をヘマトキシリン/エオシンで染色した後、アポトーシス及び有糸分裂の指数を評価した。抗MET−Rで扱われたマウスから得られた腫瘍組織でアポトーシスが増加した間、有糸分裂の数がほとんど変化しなかった(データは示さない)。
【0070】
発明者はインビボにおける自発性転移のモデルシステムであるMDA−MB−435β4細胞で同じ種類の実験を行った(29)。マウスに週に2回、抗MET−Rまたは対照抗体の異なる投与量で処置し、いずれか一方を全身的に(腹膜内に1μg/grまたは10μg/gr)投与するかまたは腫瘍に(生体内原位置に2μg/gr)投与した。治療は移植した日から始まり、8週間(転移の可能性が現れる時間)行った。治療の後、マウスを死体解剖して原発腫瘍及び肺(これらの細胞が転移する確立の高い部位)の解析を行った。異なる器官(脾臓、骨髄、肝臓、心臓、骨及び肝臓)を可能性のある毒性作用を除外するために調べた。肉眼分析により抗Met−R治療が主要な腫瘍集団の増殖を阻害することが示された(図4A−E及びK)。HGFRのチロシン−リン酸化形態であることを認識している抗体による免疫組織化学的な染色により、この場合も受容体活性化の顕著な減少が示された(図4F−J)。さらに、肺切片の顕微鏡分析によって抗Met−Rの腫瘍内注入及び全身投与の両者が肺及び検査された器官で遠隔転移の出現を阻害したことが明らかとなった(図4L)。
【0071】
HGFが強力な血管新生因子であり、HGFRシグナルが腫瘍血管新生の一因となることが多くの論文で示されていたので、発明者らは抗MET−R処置と同時に腫瘍血管新生を分析した。これらの腫瘍について発明者らは血管(数はより少なく、大きさはより大きかった)及びそれらの分岐(図4M、N)の数の顕著な減少を見出した。発明者は、このように、処置の抗腫瘍及び抗転移効果は、腫瘍及び微環境の出芽血管における抗体の合同作用に由るものであると結論付けた。
【0072】
実施例4。抗Met−RはHGFRダウンレギュレーションを誘導する
抗MET−RがHGFR活性化を阻害することができるメカニズムを研究するために、発明者は抗MET−RまたはVSV−Gのいずれかを用いて、HGFR過剰発現細胞を処置した;この実施例は多くの自然に生じる腫瘍でしばしば観察されるものと似ている。図5Aで示されるように、発明者は、VSV−G処置ではなく抗MET−R処置において、時間依存方法でHGFRの全体量が減少したことを観察した。これは抗Met抗体が受容体のダウンレギュレーションを特異的に誘導することを示唆している。これらの細胞において過剰発現HGFR、HGF、リガンドが受容体のダウンレギュレーションを誘導することができないということは興味深い(図6、下方パネル)。
【0073】
発明者らは抗MET−R抗体がHGFRの標準レベルに発現している細胞でもまた受容体のダウンレギュレーションを引き起こすかどうかを検証した。図5Bの左パネルに示すように、これらの細胞もまた抗MET−RがHGFRを効果的にダウンレギュレーションした。
【0074】
細胞膜で曝されたHGFRの抗体に誘導された縮小をFACS分析によって評価した。細胞の蛍光定量分析により、抗体処置が細胞表面で発現されたHGFR量をHGFそれ自体よりも高い効率で減少させたことが示された(図5B、右側パネル)。同じアッセイにおいて同様の減少がGTL16細胞でもまた観察された(図示せず)。
【0075】
実施例5。抗Met−Rに誘導されたHGFRのダウンレギュレーションの分子メカニズム
リガンド依存性及び抗体誘導性のダウンレギュレーションは異なる経路を辿る。RTKsのリガンド依存性ダウンレギュレーションは内面化、ユビキチン化、選別エンドソーム及び最終的にリソソームまたはプロテアソーム分解(30)を含む多段階過程である。
【0076】
抗体誘導性HGFRダウンレギュレーションにどの分解経路が関与しているかを評価するために、発明者らは抗体刺激の前に、それぞれ特定の阻害剤コンカナマイシン及びラクタシスチンを用いて、ライソームまたはプロテアソームの活性を遮断した。驚くべきことに、プロテアソーム経路の阻害がリガンド誘導性HGFR分解を顕著に損なう間、抗MET−R処置による受容体ダウンレギュレーションに影響を及ぼさない(図6A、上方パネル)。このように、抗体及びリガンドは異なる分子メカニズムを経由してHGFRダウンレギュレーションを促進することを示唆している。さらに、プロテアソームの活性が損なわれたとき、基底状態でかろうじて検出可能である60Kdのフラグメントは、抗体処置(図6A、下方パネル)と同時に細胞内にかなり蓄積された。このフラグメントは、唯一抗−細胞内HGFR抗体とともにウェスタンブロットで検出され、そして受容体の細胞質ドメインに存在していた。さらに分子がプロテアソーム分解に関係していると予想されるように、60Kdフラグメントはユビキチン部分で標識された(図6B)。
【0077】
受容体の細胞外ドメイン(Ectodomain)が、抗MET−R処置と同時に細胞溶解物で検出されなかったので、発明者らはそれが「脱落」として知られる現象である、開裂の際に細胞外部に遊離することかどうかを検証した。この減少を確認するために、発明者らは細胞培養中にHGFR細胞外ドメインの存在を調べた。細胞に放射性35S−システイン及び35S−メチオニンで代謝的に標識化し、HGFまたは抗MET−Rで4時間処置した。培養液を集め、細胞外ドメインを認識している抗HGFR抗体で免疫沈降に供した。図7Aに示すように、代謝的に標識化した細胞の培地から、発明者らは、130Kdの見かけ上の分子量(細胞外αβ鎖の複合体に対応)を有する非還元条件下で走ったバンドを免疫沈降した;ゲルが還元条件下で走ったとき、複合体は80Kd(β鎖)及び45Kd(α鎖)の2つのバンドに分離した。HGF刺激がこの過程を増強しない一方、受容体の脱落は抗体結合と同時に劇的に増加した。以前のデータ(15)によると、HGFR細胞外ドメインの少量は細胞外環境に恒常的に遊離することが知られている。抗体−誘導性細胞外ドメイン脱落が、内皮細胞(図7B)のように、HGFRの標準レベルを発現している細胞で観察されることを強調することは興味深い。
【0078】
抗体の量を4時間かけて増やして細胞を処置することによって、発明者らは抗体媒介HGFR脱落が用量依存性であったことが観察された(図7C)。抗体誘導性HGFR脱落の動態解析をするために、発明者らは、細胞を同量の抗MET−RまたはVSV−Gのいずれかを異なる時間で刺激した。細胞外ドメインの増加レベルは抗MET−Rの培地で検出されたがVSV−Gで処置された細胞では検出されなかった。このことから抗体誘導性脱落は特異的でかつ時間依存性であることを示す(図7D)。
【0079】
実施例6。抗体誘導性HGFR脱落は細胞表面で起こる
エンドサイトーシスがHGFR脱落に必要かどうかを調べるために、発明者らは、クラスリン依存性エンドサイトーシスを減じて、その発現がテトラサイクリン制御システムの制御下にある、ダイナミン(Dyn K44A)の変異体を安定に形質移入した細胞を利用した。細胞を、ダイナミン変異体の発現の結果としてエンドサイトーシスを減じるために、テトラサイクリンの存在下(Ctr)または非存在下(K44A Dyn)のいずれかで48時間維持した。図7Dに示すように、抗体により誘導される脱落はクラスリン依存性エンドサイトーシスが抑制された細胞で減じなかった。
【0080】
膜タンパク質の脱落により一般的に含まれるプロテアーゼはADAMファミリーのα−セクレターゼに属する。HGFR脱落に関する酵素の同定を試みるために、キレート剤1,10−フェナントロリン、ADAMs及びZn−依存性プロテアーゼの阻害剤を抗体処置の前に細胞に加えた。この条件において、受容体脱落は影響を受けなかった(データは示さない)。これにより、HGFR細胞外ドメインのタンパク質分解がα−セクレターゼによってではなくZn−非依存性プロテアーゼによって媒介されることが示された。
【0081】
HGFRがブロット凝固に含まれる遺伝子に転写的に関係していることは知られているので、発明者らもまた血液凝固システムのプロテアーゼが細胞外ドメイン脱落の原因で起こるかどうかを調べた。しかしながら、アプロチニンとともにそれらの阻害剤は抗体誘導性HGFR細胞外ドメイン脱落を変化させなかったことから、この工程におけるプロ凝血原(procoagulant)の役割は除外された(データは示さない)。他の阻害剤(アミロライド、ペプスタチンA、ロイペプチン)のパネルを用いて、発明者らもまたウロキナーゼ、酸性プロテアーゼ、セリン及びシステインプロテアーゼ(データは示さない)のような他で知られるヒドロラーゼの関与を除外した。さらに、この酵素の高用量(1μM)及び長期間にわたる処置(24時間)でホルボールエステルTPAを用いた阻害が細胞外ドメイン脱落を減少しなかった(データは示さない)ので、発明者らは細胞外ドメインの脱落はPKCaの活性化に非依存性であることを証明した。
【0082】
すべてが適切なポジティブコントロールとともに行われた実験のこのセットは、HGFR細胞外ドメイン脱落に起因する酵素が受容体脱落を明らかに含むプロテアーゼのリスト外のものであったことを示している。
【0083】
実施例7。HGFR活性化は抗体誘導性脱落を必要としない。
発明者が以前に報告しているように、エンドフィリン、CIN85及びCb1を含む三量体複合体はHGFR(32)のリガンド依存性ダウンレギュレーションを媒介する。この複合体は、HGFR活性化と同時に受容体に補充され、エンドサイトーシス、ユビキチン化及び受容体分解を促進する。受容体活性化及びシグナル伝達が抗体依存性下方調節及び脱落を必要とするかどうかを調べるために、発明者らは抗MET−Rの能力を促進させてさまざまなHGFR変異体をダウンレギュレーションさせた。発明者らはHGFR対照または以下の変異体のいずれかのCOS−7細胞で強制発現させた:i)ATP結合ポケットでLys−Ala置換に起因して、チロシンキナーゼ活性の「死」受容体欠如をコードしているMET KD、ii)シグナル伝達を結合チロシンY1349、Y1356が欠如しているHGFRをコードしているMET「二重」、(iii)受容体の細胞内ドメイン全体をコードしている配列がGFP配列によって置換された優性陰性変異体。形質移入の48時間後、細胞を3時間抗MET−Rで処置した。細胞抽出物及び細胞外培養をウェスタンブロットによって分析した。予想外に、抗MET−Rはすべての変異体でダウンレギュレーションを引き起こし、そしてHGFR脱落を誘導することが可能であった(図8)。この実験は抗体依存性HGF受容体ダウンレギュレーションが受容体キナーゼ活性化または細胞質のトランスデューサーの補充を必要としないこと、及びすべての細胞内ドメインがこの工程に不要であることを示唆している。これは、抗体及びリガンドが異なるダウンレギュレーションメカニズムを活性化することをさらに確証している。
【0084】
実施例8。細胞外ドメインを脱落するHGFRは「おとり」として機能する
遺伝子操作により得られたHGFRの細胞外ドメインが優性陰性の「おとり」分子(33)として機能するということが示されているので、発明者らはHGFRシグナルを阻害している脱落外部ドメインの能力を試験した。抗MET−RまたはVSV−Gで72時間前処理した細胞を培地でHGFR細胞外ドメインの存在下(図9、4−6レーン)または非存在下(7−9レーン)のいずれかでHGFを用いて、異なる時間で刺激した。示したとおり、HGFR細胞外ドメインの存在下において、HGFに引き起こされるAktリン酸化はかなり損なわれた。したがって、おとり(33)のような脱落フラグメントはHGF結合の競争相手としてかつHGFR活性化を妨げる優性陰性分子として働くという考えが支持された。
【0085】
実施例9。作用薬抗MET−R抗体DO−24は細胞外ドメイン脱落を誘導しない。
この抗体の作用薬としての能力はその治療的な活性を正当化するには、本質的には、十分でない。実際、我々が調べた異なる抗MET−R分子抗体(DO−24)は受容体の細胞外部分の脱落を促進しないが受容体を完全に活性化することができる。
【0086】
実施例10。レンチウイルスを介する遺伝子導入手段による抗MET−Rの産生
発明者らは抗MET−R重または軽鎖配列を双方向性レンチウイルスベクター(51)に挿入した(図10A、15及び16)。このレンチウイルスベクターは、最小の中心的なプロモーター(minCMVプロモーター)をhPGKプロモーター(51)の上流及び逆配位に連結して得られる合成プロモーター(ACCTGGGTT、配列番号4)の存在により2つの分離cDNAの協調的な発現を引き起こす。この合成プロモーターは転写性の活性を両方向に駆動することができる抗Met−Rをコードしている2つのcDNAを一方はアンチセンス配位(軽鎖)の上流にかつセンス配位(重鎖)の下流に置くことによって、2つの独立したmRNAを協調的に産生することが可能である。発明者らは、開示したように、293T細胞の一過性の遺伝子移入を用いてベクター粒子を産生した。そして、標的細胞のゲノムを永久的に修飾するために、発明者らはベクター粒子を含む上清の細胞系に由来したカルシノーマのパネルを遺伝子導入した。遺伝子導入の後、細胞を結成欠乏状態にし、細胞培養上清を集めるために72時間培養した。抗MET−R抗体の存在をウェスタンブロット解析によって評価し(図10B)そして抗MET−R定量をELISAによって行った(図10C)。すべてのトランデュースされた細胞系は培養上清で分泌された抗MET−R抗体を産生した。抗体の産生は、細胞系の分析に依存して0.2−6μg/mlの範囲で変化した。組み換え体抗MET−R特異性を免疫沈降アッセイによって制御した(図11A)し、一方結合性をELISAアッセイによって評価した(図11B)。組み換え体抗MET−RはMet受容体を融合細胞によって従来法により産生された抗MET−Rによって得られたものと同じ範囲の結合性をもって特異的に認識することができる。さらに、抗MET−Rが融合細胞によって産生されるように、組み換え体抗MET−RはMetタンパク質分解及び細胞外ドメインの脱落を誘導することができた(図12)。
【0087】
実施例11。抗Met−Rをコードしているレンチウイルスベクターを用いた形質導入はインビトロ及びインビボにおける癌細胞の形質転換された表現型を阻害する。
発明者らは抗MET−Rをコードしているレンチウイルスベクターを用いてHCT−116細胞を形質導入した(25ng p24/ml)。遺伝子導入された細胞を、対照細胞と比較して形質転換された表現型についてインビトロ及びインビボにおける腫瘍形成の足場非依存性増殖及び浸潤特性を分析することによって試験した。足場非依存性増殖について、発明者らは0.5%の寒天上に抗MET−Rを産生する細胞及び対照としての対照細胞を播種し、培地上で15日維持されたコロニーを数えた。形質導入された細胞は、足場非依存性増殖の能力において阻害され、コロニーの数が減少し、大きさも対照で産生されたコロニーと比較して小さかった(図13A)。細胞浸潤を試験するために、発明者らは細胞が再構成された基底膜を浸潤する能力を分析した。図13Bに示すように、形質導入された細胞はそれらの浸潤特性の減少を示した。発明者らは、胸腺欠損ヌードマウスの側腹部に注入している抗MET−Rをコードしているレンチウイルスベクターで形質導入された細胞のインビボにおける腫瘍形成を調べた。図13C及びDで示されるデータは形質導入された細胞が腫瘍潜伏のようにインビボでの腫瘍形成の特性が損なわれ、腫瘍増殖が対照に比べて阻害されたことを示した。
【0088】
実施例12。抗Met−Rをコードしているレンチウイルスベクターの腫瘍内への直接投与は腫瘍増殖を阻害する。
抗MET−R遺伝子導入の有効性を正式な証拠を得るために、発明者らは、抗体をコードしているcDNAsを有するレンチウイルスベクター粒子をヌードマウスの側腹部にHCT−116細胞の皮下注射によって予め処置した腫瘍に直接投与した。抗MET−Rをコードしているベクターで処置した腫瘍は、対照ベクターで処置した腫瘍と比較してより遅い成長率を示した(図14)。
【0089】
実施例13。Met細胞外ドメイン上の抗MET−R結合部位。
抗MET−Rによって認識されるエピトープをマップするために、免疫沈降実験は肝細胞増殖因子受容体(Met細胞外ドメインとしても知られる)の異なる細胞外ドメインを使って行われた(図17):
−おとりMet(アミノ酸1−932):膜貫通型ドメインの前に切断されたヒトMetの全細胞外領域に対応する可溶性組み換え型タンパク質(Michieliら、0004);
−SEMA PSI(アミノ酸1−562):SEMAドメイン(アミノ酸1−515)(Stamosら、2004;Gherardiら、2004)及びPSI領域(アミノ酸516−562)(Kozlovら、2004)を含むおとりMetの切断された形。
−PSI IPT(アミノ酸1−24;516−932):PSI領域(アミノ酸516−562)及び4IPTドメイン(アミノ酸563−932)(Borkら、1999;Gherardiら、2004)に融合された内因性リーダー配列(アミノ酸1−24)を含んでいるおとりMetの切断された形。
【0090】
ポリヒスチジン標識及びMyc−エピトープ標識はそれぞれの分子のC−末端に加えられた。
【0091】
おとりMet配列はジーンバンク受託番号X54559(Giordanoら、1991)にコードされた配列に由来した;この配列は正確にプロセスされて、膜に位置するチロシンキナーゼタンパク質をコードするヒトMet遺伝子の主な転写物に対応する。
【0092】
他の論文はジーンバンク受託番号J02958(Parkら、1987)をコードしている配列について言及している;この番号はヌクレオチド2264からヌクレオチド2318の場所に54bpの挿入を含む選択的にスプライシングされたマイナー転写物に対応している。この転写物は正確にプロセスされず、膜に位置しないチロシンキナーゼタンパク質をコードしている(Rodriguezら、1991)。この配列によるとMetの細胞外領域はアミノ酸1−950に対応し、そして第3のIPTドメイン(IPT3)は18のアミノ酸の挿入を含んでいる。
【0093】
表1は配列X54559及びJ02958によるMetの異なる領域の位置を要約している。
【0094】
【表1】

【0095】
設計された分子のcDNAをpRRL.sin.PPT.CMV.Wpreレンチウイルスベクター(Follenziら、2000)にサブクローンした;組み換え体レンチウイルス粒子をラージスケールで産生し、ヒト腫瘍細胞系(Michieliら、2004)を形質導入するのに使用した。
【0096】
mycで標識されたおとりMet、SEMA PSI及びPSI IPTで形質導入されたMDA−MB−435の条件培地を抗MET−R抗体で免疫沈降し、そしてビオチン化された抗myc抗体を使ってウェスタンブロットにより検出した(図18、右側パネル)。同量の条件培地をタンパク質発現のための対照として加え(図18、左側パネル)、この対照は空のレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞の条件培地である。図18の右側パネルに示すように抗Met−RはおとりMet及びPSI−IPTを免疫沈降することができるが、SEMA−PSIを免疫沈降することはできない。したがって、それはIPT領域(Borkら、1999)にエピトープを認めた。
【0097】
抗体抗MET−Rによって認められるエピトープをさらに詳細にマップするため、免疫沈降実験を単一IPT領域(Borkら、1999)を用いて行った。それぞれのIPTはIPT1(アミノ酸563−656)またはIPT2(アミノ酸657−741)またはIPT3(アミノ酸742−838)またはIPT4(アミノ酸839−932)に融合した内因性のリーダー配列(アミノ酸1−24)を含むPSI−IPTの切断された形である。
【0098】
ポリヒスチジン標識及びフラッグーエピトープ標識はそれぞれの分子のC−末端に加えられた。以前に報告され、組み換え体レンチウイルス粒子がヒト腫瘍細胞系を遺伝子導入するために使用されたように、設計された分子のcDNAは同じレンチウイルスベクターにサブクローンされた。
【0099】
これらすべての組み換え体タンパク質は可溶性因子であるが、IPT2は形質導入細胞の条件培地に分泌されない。この理由のために、免疫沈降実験は細胞溶解物上で実行された。
【0100】
フラッグで標識された単一IPTで形質導入されたMDA−MB−435の細胞溶解物を抗MET−R抗体で免疫沈降し、抗フラッグ抗体を用いてウェスタンブロットによって検出した(図19、左側パネル);タンパク質発現の対照として、同量の細胞溶解物を抗フラッグ抗体で免疫沈降し、そして同じ抗フラッグ抗体を使ってウェスタンブロットにより検出した(図19、右側パネル)。
【0101】
左側のパネルに示すように、抗MET−RはIPT4を免疫沈降させることは可能であるが、他の3つのIPTドメインを免疫沈降させることはできない。抗Met−RはMET細胞外領域のIPT4ドメインを含むエピトープを認識する。
【0102】
実施例14。抗MET−RはFACS分析または免疫蛍光分析によって両者とも無処置の細胞でHGFRを認識した
ヒトの胃癌細胞系であるGTL−16を抗MET−R抗体で培養した。流動細胞計測法によって分析されたGTL−16の特性は、抗MET−RがHGFRを発現している細胞を特異的に染色することができることを明らかにした。抗Met−R抗体で標識された細胞における蛍光強度は対照細胞に関して増加した(図20、パネルA)。固定した後、免疫蛍光分析をするためにGTL−16細胞を抗Met−R抗体で培養した。染色によりMet受容体に対応する細胞表面に特異的に標識化することを明らかにした(図20、パネルB、C)。
【0103】
当然、発明の原則が同じことを維持する間、実施例によって開示され、例示されることに関して、添付された特許請求の範囲に定義されたように本発明の範囲からの逸脱することなく、構成及び実施例の詳細は広く変動するかもしれない。
【0104】
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【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】抗Met−RはHGFR活性化及びシグナル伝達を減じる。(A)HGFR活性化の評価。GTL16細胞を所定時間抗MET−Rに曝した。HGFRは細胞溶解物から免疫沈降され、そしてウェスタンブロットによって指示された抗体で調べた抗Met−R処置により、バンド密度の定量化により示されているように、受容体のダウンレギュレーションよりももっとはっきりと受容体活性化を減少させる結果となった。(B)HGFRシグナルの分析。細胞をVSV−Gまたは抗MET−Rのいずれかで前処置し、そして所定の時間HGFで刺激した。Aktリン酸化を全細胞溶解物中で評価した。上部のパネルに示されるように抗Met−Rは基底及びHGF誘導性のAkt活性化の両者を減少させた。
【図2】抗Met−Rはインビトロにおける癌細胞の形質転換された表現型を阻害する。(A)GLT16細胞の足場非依存性増殖。前処理された細胞を0.5%アガーに播種した。細胞を抗MET−RまたはVSV−G抗体の所定の量の存在において維持し、そして10日後増殖したコロニーを染色した。足場非依存性増殖は抗MET−Rの少しの服用量でも徹底して阻害された。(B)浸潤アッセイ。MDA−MB−435 β4をマトリゲル被覆トランスウェル容器に播種する前に、所定の抗体を用いて24時間前処理した。低いほうの容器を、DMEM2%FBS+100ng/mlHGFで満たした。24時間後、遊走した細胞を染色し、カウントした。HGFの応答における浸潤性能力は刺激されていない細胞と比較して向上するように発現する。示されるように抗Met−R治療により細胞の浸潤が著しく減少した。
【図3】抗Met−Rはインビボ(A、B)の腫瘍形成アッセイにおける癌細胞の形質転換された表現型を阻害する。ヌードマウスの皮下に1.5×10GTL16細胞を注入した。腫瘍が出現した後、同じサイズの腫瘍が示されたマウスを選抜し、VSV−Gまたは抗MET−Rのいずれかの2μg/grを週2回生体内原位置(in situ)に注入した。腫瘍の体積を異なる時点で測定した(A)。示されるように、人間の腫瘍細胞を移植されたヌードマウスにおいて抗MET−Rは腫瘍増殖を弱めた。マウスは治療の8週間後に屠殺され、腫瘍の重量を測定した(B)抗Met−Rの治療により、対照マウスよりも著しく腫瘍が小さくなった(p<0.05)。(C)HGFR活性化の評価。VSV−G(パネルA)、または抗MET−R(パネルB)で処置されたマウスからの腫瘍切片を抗−ヒトのリン酸−HGFRで染色した。 腫瘍の免疫化学的分析により抗MET−Rで処置されたマウスにおいて、活性化HGFRのレベルが強く低下したことが明らかとなった。
【図4】抗Met−R治療はインビボでの腫瘍の進行を妨げる。ヌードマウスの皮下に2.5×10MDA−MB−435β4細胞を接種した。腫瘍の増殖を無処置のマウス(A)と以下で処置されたマウスを用いて評価した:10μg/gr VSV−Gを投与されたIP(B)、10μg/gr抗MET−R IP(C)、10μg/gr抗MET−R IP(D)、及び2μg/gr抗MET−R IS(E)。図(K)で示すように、抗MET−Rはヒト腫瘍細胞を移植されたヌードマウスにおいて腫瘍の増殖を阻害した。左のパネルで示されるように、抗ヒトリン酸−HGFRの免疫化学的染色を腫瘍の断片上で実施した。強いHGFR活性化は無処置マウス(F)と支配抗体で処置されたマウス(G)の両者で起こっていた。抗MET−Rの投与により腫瘍増殖の阻害と平行してHGFRの阻害を引き起こす結果となった。(L)肺転移の分析。転移は、ヘマトキシリン/エオシン染色の後、肺部の微細な観察によって数えられた。転移数の服用に依存する減少は抗MET−R治療を受けているマウスに明らかであった。(M−N)腫瘍血管新生の評価。腫瘍組織学的切片上の免疫蛍光染色は抗−マウスCD31抗体で実施された。血管の数及び面積は蛍光顕微鏡検査によって評価された。図示のとおり、血管の数及びサイズの両者は抗MET−R処置に応じて減少された。
【図5】抗MET−RはHGFRのダウンレギュレーションを誘導する。GTL16細胞(A)及びMDA−MB−435 β4(B)は示された時間、抗MET−Rで処置された。全細胞溶解物の等量をウェスタンブロット法のために処理し、抗HGFR(上のパネル)または付加対照として、抗−Hsp70(下のパネル)抗体で調査した。図示のとおり、抗MET−Rは、過剰発現細胞(GTL16)及びHGFR(MDA−MB−435 β4)の正常レベルを表している細胞の両者においてHGFRのダウンレギュレーションを誘導することができた。(C)細胞表面におけるHGFRの細胞蛍光測定法による定量化。MDA−MB−435 β4細胞を培地だけ(黒いバー)またはHGF(灰色のバー)または抗MET−R(白いバー)で培養した。示された時点で、細胞を抗−エキストラHGFR抗体(anti−extra HGFR Ab)(D024)で染色した。図示のとおり、抗MET−Rは30時間の処置の後、最大限の縮小で効率的に表面のHGFRの量を減らすことができた。
【図6】抗体−誘導及びリガンド−依存ダウンレギュレーションは、異なる経路をたどる。(A)HGFまたは抗MET−Rによる処置の前に、HeLa(上部パネル)及びGTL16(下部パネル)細胞をラクタシスチン(lact)またはコンカナマイシン(conc)のいずれかまたは両者で2時間前処理した。HGFRダウンレギュレーションを全細胞溶解物上で評価した。プロテアソームの存在において、リガンド−誘導HGFRのダウンレギュレーション損なわれたが、一方抗体−誘導はそうではなかった。この状態において、細胞内部分(抗−内Met)に対して指向される抗体によって唯一発見され得る60Kd切片(矢印)は細胞内に蓄積された。さらに、抗−ユビキチン抗体(B、上部パネル)でプローブすることによって、プロテアソームの分解に関係付けられる分子が予想されるように、このフラグメントはユビキチン部分でタグが付けられたことが示された。
【図7】抗MET−Rはタンパク質分解性のHGFRの切断及び細胞外ドメイン(外部ドメイン)の脱落を誘導する。(A)GTL16細胞を代謝的に35Sメチオニン及び35Sシステインで標識し、それから4時間でHGFまたは抗MET−Rを用いて処理した。上澄みを集め、細胞外ドメインに対して向けられる抗HGFR抗体で免疫沈降した。ゲルは非還元(上部パネル)または還元(下部パネル)の条件下で走った。還元剤がない場合、HGFRのα及びβ鎖は複合体として遊走する一方、β−メルカプトエタノールの存在下において2つのバンドは別々に走った。図に示すように、HGFではなく、抗MET−RはHGFR外部ドメインの脱落を誘導することができた。(B)抗MET−Rは内皮細胞でまた脱落している外部ドメインを誘導する。HUVEC細胞を示された時間抗体に曝した。培地を集め、HGFRβ鎖の細胞外部分を認識している抗体を用いて免疫沈降した。同じ抗−エキストラHGFR(anti−extra HGFR)を用いてウェスタンブロットにより調べた。(C、D)HGFRの脱落は用量と時間に依存する。細胞は抗MET−R(C)の増加量または異なる時間(D)に刺激された。培地は(B)で処理した。
【図8】HGFRの脱落のためにシグナル伝達の活性化は必要とされない。Cos−7細胞に異なるHGFR変異体を形質移入し48時間後、4時間抗MET−Rで処理した。全細胞溶解物と条件培地の等量をウェスタンブロッティングのために処理した。示したとおり抗Met−Rはダウンレギュレーション及びすべてのHGFR変異体の外部ドメイン脱落を誘導することができた。HGFR KD=HGFRキナーゼデッド、キナーゼ活性の欠如;HGFRダブル=2つのドッキングチロシン1349、1356が欠如し、そしてシグナルトランスデューサーを補充することができないHGFR変異体;HGFR−GFP=全細胞内部分がGFP配列に置換されたHGFR変異体。
【図9】HGFR脱落外部ドメインは「おとり(decoy)」として振舞う抗Met−Rで前処理された細胞は培地においてHGFR外部ドメイン(Met ecto)の存在または非存在のいずれにおいてもHGFで刺激された。示すとおり、脱落HGFR外部ドメインはAkt活性化を損ない、そして「おとり」として振舞った。
【図10】遺伝子導入を媒介されたレンチウイルスベクターによって遺伝子上に修飾された細胞は抗MET−Rを発現する。(A)双方向性レンチウイルスベクター(統合化形)の概略図は抗MET−Rを表したものである;LTR:HIV−1末端反復配列;U3領域はR領域から位置−18で削除される。SD:スプライス供与。SA:スプライス受容体。PolyA SV40:サルウイルス40のポリアデニル化。Cte:恒常性輸送要素はサルのマソン−ファイザーウイルスに由来した。PminCMV:最小プロモーターはサイトメガロウイルスに由来した。hPGK:ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子のヒトプロモーター。PRE:ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節因子。FLAG Tag:3回繰り返されたDYKDDDKエピトープをコードしている配列。His Tag:7ヒスチジン残基をコードしている配列。(B)抗MET−R cDNAsを保有しているレンチウイルスベクターで形質導入された2つの代表細胞系から集められた無血清培養上清(それぞれ75μlのサンプル)のウェスタンブロット解析。サンプルは還元条件下でSDS−PAGEに供され、そして対応するフィルターは抗マウスIgでプローブされた。(C)抗MET−R cDNAsを保有しているレンチウイルスベクターで形質導入された細胞系のパネルから由来した培養上清における抗MET−Rの定量化を報告している表。
【図11】組み換え抗MET−R結合はMetの細胞外ドメインと高い結合性をもって結合する。(A)異なる源(融合細胞または遺伝子上で修飾されたカルシノーマ細胞系)に由来された抗MET−Rで免疫沈降されたMet受容体を含む細胞溶解物のウェスタンブロット。免疫沈降は1から細胞培養上清で保温しているSeph.Prot.Gで実行された:無関係なMAbを生じている融合細胞;2 抗MET−R MAbを生じている2つの融合細胞;3 抗Met−R MAbのcDNAsを保有しているレンチウイルスベクターで感染されたMDA−MB435細胞 4:感染していないMDA−MB435細胞。サンプルを還元条件下でSDS−PAGEに供し、そして対応するフィルターを受容体のC末端領域に対して向けられる抗Met抗体でプローブした。(B)抗MET−R及び組み換え抗MET−RのMet受容体の細胞外ドメインに対する結合アッセイ。ヒトIg(100ng/well)に由来するFcドメインに融合した精製されたMET細胞外ドメインで被覆された96ウェルプレートを精製された抗MET−Rまたは組み換え抗MET−R(0から5,5nMまで)の増加する濃度で培養した。抗体を結合した抗マウスIg−HRPを使うことによって結合曲線が明らかとなった。結合の特異性を制御するためにFc−Ron(ヒトIgのFcドメインをRon受容体の細胞外ドメインに融合して得られたキメラタンパク質、Met受容体系統に属するタンパク質)で被覆されたウェルを使って同じアッセイを試みた。
【図12】組み換え抗MET−RはHGFRのタンパク質分解性の切断及び細胞外ドメイン(外部ドメイン)の脱落を誘導する。結腸直腸癌由来の細胞系であるHCT−16を精製された抗MET−R(A)または組み換え抗MET−R(B)の示された量で、24時間の無血清条件で培養した。全細胞溶解物(上部パネル)及び細胞培養上清(下部パネル)をウェスタンブロットに続くSDS−PAGEに供した。細胞の成熟Met(p145)型の減少及び培養上清のMet外部ドメイン(p80)の同時増加を、Metβ鎖の細胞外部分に位置したドメインであることを認識するDL−21抗Met mAbを用いてフィルターをプローブしてモニターした。
【図13】抗MET−Rをコードしているレンチウイルスベクターを用いた形質導入はインビトロ及びインビボにおける癌細胞の形質転換された表現型を制御する。(A)足場非依存性増殖アッセイ抗Met−Rをコードしているレンチウイルスベクターで形質導入された(抗MET−R)またはされていない(対照、WT)HCT−116細胞を0.5%の寒天に播種した。細胞を2%FCS+80ng/mlHGFで補充された培養で維持した。14日後コロニーを数えた;代表的なウェルを上欄に示す;グラフの下にコロニーの数(3通りから算出される)を表している。(B)浸潤アッセイ抗Met−Rをコードしているレンチウイルスベクターを用いて形質導入された(抗MET−R)またはされていない(対照、WT)のHCT−116細胞をマトリゲルで被覆したトランスウェルの容器上にのせた。下方容器を2%FBS+80ng/mlHGF培地で満たした。24時間後フィルターの下方部分に付着した細胞の数を数えた。写真は代表的なフィルターのフィールドである。(C)インビボにおける腫瘍潜時。抗MET−Rをコードしているレンチウイルスベクターで形質導入された(抗MET−R)またはされていない(対照、WT)HCT−116細胞を胸腺欠損ヌードマウスの側腹部に注入した(3×10cells/mouse、n=6それぞれのグループ)。腫瘍体積をノギスを用いて2日おきに評価した。腫瘍体積が15mmを超えたとき、マウスを腫瘍存在が陽性であると考えた。(D)インビボにおける腫瘍増殖。抗MET−Rをコードしているレンチウイルスベクターで形質導入された(抗MET−R)またはされていない(対照、WT)HCT−116細胞を胸腺欠損ヌードマウスの側腹部に注入した(3×10cells/mouse、n=6それぞれのグループ)。腫瘍増殖の動態について腫瘍体積をノギスで3日おきに測定することで評価した。65日目でマウスをすべて屠殺した。
【図14】抗MET−Rをコードしているレンチウイルスベクターの直接的な内部腫瘍送達は腫瘍増殖を阻害した。HCT−116細胞(4×10cells/mouse)を胸腺欠損ヌードマウスの側腹部に注入した。腫瘍体積が10mmの大きさになったときレンチウイルスベクター粒子(1μgのp24/マウス)を0日目と3日目に内部腫瘤に投与した。1つのグループ(CTRL)GFPをコードしているベクター粒子を受容する一方、他のグループは抗MET−R(抗MEt−R)をコードしているベクター粒子を受容した。腫瘍増殖の動態について腫瘍体積をノギスを用いて3日おきに測定することで評価した。
【図15】抗MET−Rをコードしているプラスミドのマップ。
【図16】抗Met−R FLAG−Hisをコードしているプラスミドのマップ。
【図17】HGFR(Met外部ドメイン)の外部細胞部分に由来するドメインの模式図。
【図18】抗Met−RはIPTs領域に位置するエピトープを特異的に認識する。myc−タグを付けたおとりMet、myc−タグを付けたSEMA PSI及びmyc−タグを付けたPSI IPT1−4をコードしているレンチウイルスベクター粒子で形質導入されたMDA−MB−435の条件培地を抗MET−R抗体で免疫沈降し、そしてビオチン化抗−myc抗体を使ってウェスタンブロットにより検出した(右側パネル)。条件培地の等量をタンパク質発現の対照としてロードした(左側パネル)。CTRL:空のレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞の条件培地。おとりMet:全細胞外ドメインを発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞の条件培地。PSI−IPT:HGFRのPSI、IPT−1、IPT−2、IPT−3、IPT−4ドメインを発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞の条件培地。SEMA−PSI:HGFRのSema及びPSIドメインを発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞の条件培地。右側に分子量がKDで示されている。
【図19】抗Met−RはIPT−4領域に位置するエピトープを認識する。標識されたIPT−1、IPT−2、IPT−3、IPT−4ドメインのすべてを発現しているレンチウイルスベクター粒子で形質導入されたMDA−MB−435細胞の細胞溶解物を抗MET−R抗体で免疫沈降し、そして抗−フラッグ抗体を使ってウェスタンブロットにより検出した(左側パネル);タンパク質発現の対照として、細胞溶解物の同量を抗−フラッグ抗体で免疫沈降し、同じ抗−フラッグ抗体を用いてウェスタンブロットにより検出した(右側パネル)。CTRL:空のレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞からの細胞溶解物。IPT1:HGFRのIPT−1領域を発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞からの細胞溶解物。IPT2:HGFRのIPT−2領域を発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞からの細胞溶解物。IPT3:HGFRのIPT−3領域を発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞からの細胞溶解物。IPT4:HGFRのIPT−4領域を発現しているレンチウイルスベクターで形質導入されたMDA−MB−435細胞からの細胞溶解物。右側KDにおける分子量が示されている。
【図20】抗Met−Rはインタクト細胞においてHGF受容体を特異的に染色する。パネルA:抗Met−R抗体を用いた流動細胞計測法により分析されたGTL−16の特性。細線:イソタイプのCTRL抗体で培養されたGTL−16;太線:抗Met−Rで培養されたGTL−16。MFI:平均蛍光強度。パネルC:蛍光色素Alexa Fluor488を用いて接合されたヤギ抗−マウスIgによって明らかにされた抗Met−R抗体を用いて標識されたGTL−16細胞の免疫蛍光分析。パネルB:抗−マウスIg/Alexa Fluor488のみで標識されたGTL−16細胞。(最初の拡大率、×63)
【図21】抗Met−R重鎖の核酸(a)とアミノ酸(b)配列。CDR領域はヌクレオチドとアミノ酸配列の両者に下線が引かれている。
【図22】抗MET−R軽鎖の核酸(a)とアミノ酸(b)配列。CDR領域はヌクレオチドとアミノ酸配列の両者に下線が引かれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を被った患者における腫瘍及び/または転移の治療のための、薬剤製造のための、i)抗Metモノクローナル抗体、ii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域を含むフラグメント及び/またはiii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域を含む遺伝子操作により得られたまたはヒト化抗体の、使用であって、前記抗体が融合細胞系ICLC PD05006により産生された、前記(i)〜(iii)の使用。
【請求項2】
抗体、フラグメント及び/または遺伝子操作により得られた抗体が可溶性タンパク質の形態であることを特徴とする請求項1の使用。
【請求項3】
抗体及び/または遺伝子操作により得られた抗体がDNA組み換え技術、固相合成、液相合成からなるグループより選択された方法によって産生されることを特徴とする請求項1の使用。
【請求項4】
フラグメントがFab、F(ab’)、Fab’、Fv、scFv、及びエピトープ結合領域を含むタンパク質からなるグループより選択されることを特徴とする請求項1の使用。
【請求項5】
フラグメントが抗体のタンパク質切断、DNA組み換え技術、固相合成、液相合成からなるグループより選択された方法によって産生されることを特徴とする請求項1の使用。
【請求項6】
薬剤が注射によりまたは点滴により投与されることを特徴とする請求項1の使用。
【請求項7】
腫瘍が結腸直腸腫瘍及び肝臓腫瘍から選択されることを特徴とする請求項1の使用。
【請求項8】
腫瘍を被った患者における腫瘍及び/または転移の治療のための、薬剤製造のための、(i)抗Metモノクローナル抗体、(ii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域を含むフラグメント、または(iii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域を含む遺伝子操作により得られたまたはヒト化抗体をコードしているヌクレオチド配列の、使用であって、抗Metモノクローナル抗体が融合細胞系ICLC PD05006により産生されたものである、ヌクレオチド配列の使用。
【請求項9】
ヌクレオチド配列が、少なくとも(i)配列番号1及び配列番号2、(ii)1つまたはそれ以上の保存的な置換が存在する配列番号1及び配列番号2に対応するヌクレオチド配列、または(iii)配列番号8(CDR−H1)、配列番号9(CDR−H2)、配列番号10(CDR−H3)、配列番号11(CDR−L1)、配列番号12(CDR−L2)及び配列番号13(CDR−L3)を含むことを特徴とする請求項8の使用。
【請求項10】
少なくとも(i)抗Metモノクローナル抗体、(ii)抗Metモノクローナル抗体の少なくとも1つのエピトープ結合領域を含むフラグメント、または(iii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域を含む遺伝子操作により得られたまたはヒト化抗体をコードしているヌクレオチド配列を含むベクターの、腫瘍を被った対象において腫瘍及び/または転移の治療のための、薬剤の調製のための、使用であって、抗Met−モノクローナル抗体が融合細胞系ICLC PD05006によって産生されたものである、ベクターの使用。
【請求項11】
ベクターが(i)配列番号1及び配列番号2、(ii)1つまたはそれ以上の保存的な置換が存在する配列番号1及び配列番号2に対応するヌクレオチド配列、または(iii)配列番号8(CDR−H1)、配列番号9(CDR−H2)、配列番号10(CDR−H3)、配列番号11(CDR−L1)、配列番号12(CDR−L2)及び配列番号13(CDR−L3)から選択されたヌクレオチド配列を含むことを特徴とする請求項10の使用。
【請求項12】
ベクターが粒子の形態であることを特徴とする請求項10の使用。
【請求項13】
(i)抗Metモノクローナル抗体、(ii)エピトープ結合領域を含むフラグメント及び/または(iii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域を含む遺伝子操作により得られたまたはヒト化抗体並びに少なくとも1つのキナーゼ阻害剤を含む製品であって、腫瘍及び/または転移の治療において同時に、別々に、または連続した使用のための混合調合物であり、抗Metモノクローナル抗体が融合細胞系ICLC PD05006により産生されたものである製品。
【請求項14】
抗体及び/または少なくとも1つのそのフラグメントが可溶化タンパク質であることを特徴とする請求項13の製品。
【請求項15】
抗体及び/または遺伝子操作により得られた抗体がDNA組み換え技術、固相合成または液相合成からなるグループより選択された方法によって産生されたことを特徴とする請求項13の製品。
【請求項16】
フラグメントがFab、F(ab’)、Fab’、Fv、scFv、少なくともエピトープ結合領域を含むタンパク質からなるグループから選択されることを特徴とする請求項13の製品。
【請求項17】
フラグメントが抗体のタンパク質切断、固相合成または液相合成からなるグループから選択された方法によって産生されたことを特徴とする請求項13の製品。
【請求項18】
少なくとも1つのキナーゼ阻害剤がK252Aスタウロスポリン類似体;(3Z)−5−[(2,6−ジクロロベンジル)スルホニル]−3−[(3,5−ジメチル−4−{[(2R)−2−(ピロリジン−1−イルメチル)ピロリジン−1−イル]カルボニル}1H−ピロール−2−イル)メチレン]−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン;[(3Z)−N−(3−クロロフェニル)−3−({3,5ジメチル−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル]1H−ピロール−2−イル}メチレン)−N−メチル−2−オキソインドリン−5−スルホナミド];[(3Z)−5−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イルスルホニル)−3−({3,5−ジメチル−4−[(4−メチルピペラジン−1−イル)カルボニル]−1H−ピロール−2−イル}メチレン)−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン];[(3Z)−N−(3−クロロフェニル)−3−{[3,5−ジメチル−4−(3−モルフォリン−4−イルプロピル)−1H−ピロール−2−イル]メチレン}−N−メチル−2−オキソインドリン−5−スルホンアミド]からなるグループから選択されることを特徴とする請求項13の製品。
【請求項19】
注射によりまたは点滴により投与されることを特徴とする請求項13の製品。
【請求項20】
肝細胞増殖因子受容体(HGFR)の細胞外ドメインの少なくとも一部分に結合可能な化合物であって、HGFRに対して拮抗剤活性を有し、かつ腫瘍及び/または転移の予防及び/または治療において薬理学的に活性である化合物を選別するための方法であって、前記化合物の標的としてHGFRの細胞外ドメインの少なくとも一部分の使用を含む方法。
【請求項21】
化合物がHGFRダウンレギュレーションを誘導することができることを特徴とする請求項20の方法。
【請求項22】
化合物がHGFRの細胞外ドメインの少なくとも一部分の脱落を誘導することができることを特徴とする請求項20の方法。
【請求項23】
化合物がHGFRシグナルを変換することによる腫瘍性細胞のアポトーシスの増殖及び/または増強を制限することができることを特徴とする請求項20の方法。
【請求項24】
HGFRの細胞外ドメインの少なくとも一部分がおとりのMet、SEMA PSI、PSI IPT、IPT、IPT1、IPT2、IPT3、UPT4またはその組み合わせから選択されることを特徴とする請求項20〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
HGFRの細胞外ドメインの少なくとも一部分がIPT1、IPT2、IPT3、IPT4またはその組み合わせから選択されることを特徴とする請求項24の方法。
【請求項26】
HGFRの細胞外ドメインの少なくとも一部分がIPT4であることを特徴とする請求項24の方法。
【請求項27】
a)HGFRの細胞外ドメインの少なくとも一部分を発現する遺伝子を含む宿主細胞を提供し;b)前記細胞に化合物を投与し;c)前記化合物が以下:−HGFRのダウンレギュレーション、−HGFRの細胞外ドメインの少なくとも一部分の脱落、または−HGFRシグナルの変化及び腫瘍細胞増殖の制限を誘導するかどうかを決定することを特徴とする請求項20〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
(i)抗Metモノクローナル抗体、(ii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域を含むフラグメント及び/または(iii)抗Metモノクローナル抗体のエピトープ結合領域を含む遺伝子操作により得られたまたはヒト化抗体の、腫瘍細胞を検知する目的の診断用の装置の製造のための、使用であって、前記抗Metモノクローナル抗体が融合細胞系ICLC PD05006により産生されたものである、使用。
【請求項29】
抗Metモノクローナル抗体、フラグメントまたは遺伝子操作により得られたまたはヒト化抗体がマーカーに結合された、請求項28の使用。
【請求項30】
マーカーが放射性同位体、蛍光分子、化学発光トレーサーまたは分子フラッグから選択される、請求項29の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【図22a】
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【図22b】
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【公表番号】特表2009−526010(P2009−526010A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553739(P2008−553739)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051066
【国際公開番号】WO2007/090807
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508238336)メセレシス・トランスレイショナル・リサーチ・ソシエタ・アノニマ (4)
【氏名又は名称原語表記】METHERESIS TRANSLATIONAL RESEARCH S.A.
【Fターム(参考)】