説明

腫瘍崩壊性ワクシニアウイルスの併用癌療法

本発明の態様は、チミジンキナーゼ欠損ワクシニアウイルスを含む方法に指向する。該方法は、ワクシニアウイルスによる治療の後に再灌流について腫瘍を評価する工程、および再灌流が検出された場合に抗血管新生剤を投与する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.発明の分野
本発明は全体として、腫瘍学およびウイルス学の分野に関する。より特に、本発明は、ポックスウイルス、具体的には、癌治療に適した腫瘍崩壊性ワクシニアウイルスを含むポックスウイルス、および抗血管新生剤と併用したそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
II.背景
正常な組織恒常性は、細胞増殖および細胞死の高度に調節されたプロセスである。細胞増殖または細胞死の不均衡は癌状態に進展することがある(Solyanik et al., 1995; Stokke et al., 1997; Mumby and Walter, 1991; Natoli et al., 1998; Magi-Galluzzi et al., 1998)。例えば、子宮頚部癌、腎臓癌、肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、および脳癌は、結果となって現れる多くの癌の数例にしかすぎない(Erlandsson, 1998; Kolmel, 1998; Mangray and King, 1998; Mougin et al., 1998)。実際に、癌の発生率は非常に高いために、米国のみで毎年500,000人を超える人が癌で死亡している。
【0003】
現在、よく見られる多くの癌タイプの治療には有効な選択肢がほとんどない。ある特定の個体の治療経過は、診断、疾患の発症段階、ならびに患者の年齢、性別、および身体全体の健康などの要因に左右される。癌治療の最もありふれた選択肢は、外科手術、放射線療法、および化学療法である。外科手術は、癌の診断および治療において中心的な役割を果たしている。典型的には、生検にはおよび癌の成長の除去のために、外科的なアプローチが必要とされる。しかしながら、癌が転移しかつ広範にある場合、外科手術によって治癒する可能性は低く、別のアプローチを取らなければならない。
【0004】
複製選択性の腫瘍崩壊性ウイルスは癌治療に有望である(Kirn et al., 2001)。これらのウイルスは、複製依存性および/またはウイルス遺伝子発現依存性の腫瘍崩壊効果によって直接的な腫瘍細胞死を引き起こすことができる(Kirn et al., 2001)。さらに、ウイルスは、宿主内で抗腫瘍性の細胞性免疫の誘導を増強することができる(Todo et al., 2001; Sinkovics et al., 2000)。これらのウイルスはまた、抗腫瘍有効性を増強するために腫瘍内で治療用導入遺伝子を発現するように操作することもできる(Hermiston,2000)。しかしながら、この治療アプローチにも大きな制約がある。
【0005】
従って、癌治療のためのさらなる療法が必要とされている。腫瘍崩壊性ウイルスの使用は潜在的な発展分野である。
【発明の概要】
【0006】
インビトロ研究から、ソラフェニブおよび類似のキナーゼ阻害剤は、培養細胞株においてポックスウイルス、ワクシニアウイルス、特に、JX-594と併用された場合に、これらのウイルスの有効性を抑制することが分かっている。インビトロでの知見に反して、前臨床効果モデルから、ソラフェニブとJX-594を併用すると、実際には、いずれかの剤のみより優れた効果を示すことが分かっている。従って、本発明の様々な局面は、これらの予想外の知見を、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、またはJX-594ウイルスと、抗血管新生剤、例えば、キナーゼ阻害剤、ソラフェニブ、スーテント、または類似化合物の組み合わせを用いたインビボ療法として適用することに関する。
【0007】
本発明の態様は、抗血管新生剤の有効量を投与する工程を含む、ポックスウイルス療法が以前に行われた対象において癌を治療する方法に関する。ある特定の局面において、治療中の腫瘍が血管再生していることが判定される。さらなる局面において、ポックスウイルスはワクシニアウイルスである。なおさらなる局面において、ワクシニアウイルスは、GM-CSFを発現するワクシニアウイルスである。または、ワクシニアウイルスは機能的チミジンキナーゼ遺伝子を欠如している。ある特定の局面において、ワクシニアウイルスはJA-594である。
【0008】
ある特定の態様は、抗血管新生療法を強化すること、特に、失敗に終わっているか、耐性を生じているか、応答しないか、または部分的に応答する患者に対する抗血管新生療法を強化することに関する。本明細書で使用する「強化する」、「強化」、「療法を強化する」、「治療効果が強化される」、および「治療効果を強化する」という用語は、以下の生理学的効果:治療剤と相加的または相乗的な細胞傷害様式で作用することによる治療剤の細胞傷害活性の増加もしくは増強;治療剤の抗癌活性に対する癌細胞もしくは腫瘍の感作;および/または療法の抗血管新生有効性の回復もしくは療法に対する腫瘍の感受性の回復の1つまたは複数を生じることと本明細書において定義される。本発明の態様は、癌治療のための治療剤としての抗血管新生剤を含む。ある特定の局面において、抗血管新生療法を強化する方法は、抗血管新生療法に対して非感受性であるか、抗血管新生療法に対して耐性を生じているか、または抗血管新生療法に十分に応答していない患者に、抗血管新生療法の治療効果を強化する量のポックスウイルスを投与する工程を含む。さらなる局面において、抗血管新生療法は、キナーゼ阻害剤、ソラフェニブ、スーテント、または類似化合物である。本発明の方法はまた、耐性の患者もしくは非応答性の患者または抗血管新生療法後に癌を再発している患者を特定する工程も含んでもよい。ある特定の局面において、抗血管新生療法(抗血管新生キナーゼ阻害剤であるソラフェニブ、スーテントまたは類似化合物)に対して耐性であるか、寛容性であるか、または非感受性の患者に、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、またはJX-594ウイルスの感作量が投与される。感作量とは、治療に対する治療応答、つまり医師または科学者によって判定される治療応答を示さない腫瘍を、同じ療法または類似の療法に応答できるようにするのに十分な量である。
【0009】
「療法耐性の」癌および腫瘍は、抗血管新生癌療法に対して耐性になっている癌を指す。「療法感受性の」癌は療法に対して応答性である(腫瘍成長の低下、腫瘍壊死、腫瘍縮小、腫瘍血管閉塞などの応答臨床パラメータが検出可能または測定可能である)。当業者であれば、癌の中には、特定の剤に対して療法感受性であるが、他の剤には療法感受性でないものもあることを理解するであろう。
【0010】
ある特定の局面において、抗血管新生剤はキナーゼ阻害剤である。他の局面において、キナーゼ阻害剤はRafキナーゼ経路を阻害する。特定の局面において、キナーゼ阻害剤は、ソラフェニブ、スーテント、または類似の抗血管新生キナーゼ阻害剤である。
【0011】
ある特定の態様は、腫瘍が血管再生しているかどうか判定される工程をさらに含む方法に関する。ある特定の局面において、血管再生は、腫瘍の非侵襲的画像化、例えば、磁気共鳴画像法(MRI)によって判定される。ある特定の局面において、磁気共鳴画像法はダイナミック造影MRI(DCE-MRI)である。
【0012】
前記方法のある特定の局面では、抗血管新生剤は、1回目、2回目、3回目、4回目、5回目のまたはそれより多いワクシニアウイルス投与から少なくとも2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後、10週間後またはそれより以降に、この間にある全ての値および範囲を含めて投与される。
【0013】
ある特定の局面において、腫瘍は、脳腫瘍、頭頸部癌腫瘍、食道腫瘍、皮膚腫瘍、肺腫瘍、胸腺腫瘍、胃腫瘍、結腸腫瘍、肝臓腫瘍、卵巣腫瘍、子宮腫瘍、膀胱腫瘍、精巣腫瘍、直腸腫瘍、乳腺腫瘍、腎臓腫瘍、または膵臓腫瘍である。さらなる局面において、腫瘍は肝細胞癌または結腸直腸癌である。
【0014】
ある特定の局面において、前記方法は、対象に対して最初にポックスウイルス療法、ワクシニアウイルス療法またはJX-594ウイルス療法を行う工程をさらに含む。さらなる局面において、ウイルス療法は、腫瘍塊への注射または血管内投与によって行うことができる。特定の局面において、ウイルスは腫瘍脈管構造に注射される。ある特定の局面において、ウイルス療法は、複数のモダリティー、例えば、血管内療法および腫瘍内療法などを介して行うことができる。
【0015】
ある特定の態様は、ソラフェニブを肝腫瘍に投与する工程を含む、患者の該腫瘍または肝臓または他の臓器における転移性腫瘍を治療するための方法であって、該腫瘍が、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、またはJX-594ウイルスによって以前に治療された、方法に関する。本発明の方法はまた、腫瘍が再灌流を起こしているかどうか判定する工程も含んでもよい。
【0016】
ある特定の局面は、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、またはJX-594ウイルスの有効量を投与する工程、および抗血管新生剤を投与する工程を含む、原発腫瘍または転移性腫瘍(治療が行われた場所から遠位にある臓器または組織において発生する腫瘍である、転移性腫瘍)のいずれかである肝腫瘍を治療する方法に関する:。ある特定の局面において、抗血管新生剤はキナーゼ阻害剤である。さらなる局面において、キナーゼ阻害剤はソラフェニブまたはスーテントである。
【0017】
ある特定の態様は、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、またはJX-594ウイルスの有効量を投与する工程を含む、肝腫瘍を治療する方法であって、該腫瘍が、再灌流について評価され、かつ再灌流を起こしている場合にはソラフェニブ療法の候補であると判定される、方法に関する。
【0018】
なおさらなる局面は、(a)再灌流を検出するために、抗癌療法によって治療されたことのある腫瘍を、該腫瘍の非侵襲的画像化によって評価する工程; および(b)再灌流が検出されたかまたは再灌流が疑われる腫瘍に、抗血管新生剤、例えば、ソラフェニブもしくはスーテント、または類似のキナーゼ阻害剤の有効量を投与する工程を含む、腫瘍を有する患者を治療する方法に関する。JX-594および抗血管新生剤、例えば、ソラフェニブまたはスーテントまたは類似のキナーゼ阻害剤の組み合わせによって腫瘍を治療するために画像化は必要とされない。
【0019】
JX-594は、選択的に癌細胞の中で複製し、癌細胞を破壊するように設計された標的化腫瘍崩壊性ポックスウイルスである。直接的な腫瘍崩壊に加えて顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)発現も腫瘍内の腫瘍血管閉塞を刺激する。
【0020】
本発明のある特定の態様は、チミジンキナーゼ欠損ワクシニアウイルスの投与を含む方法に関する。ある特定の局面において、前記方法は、治療されている腫瘍中の細胞、または投与部位から離れている他の腫瘍中の細胞の腫瘍崩壊を誘導するのに十分な量の、TK欠損性の、GM-CSFを発現する、複製能のあるワクシニアウイルスベクター(例えば、JX-594)を対象に投与する工程を含む。ワクシニアウイルスを投与した後に、抗血管新生チロシンキナーゼ阻害剤などの抗血管新生剤が投与されてもよい。
【0021】
チロシンキナーゼ阻害剤は、スニチニブ(SU11248;スーテント(登録商標))、SU5416、SU6668、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、AEE788、ZD6474、ZD4190、AZD2171、GW786034、ソラフェニブ(BAY43-9006)、CP-547,632、AG013736、YM-359445、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、EKB-569、HKI-272、およびCI-1033からなる群より選択されてもよい。ソラフェニブ(Nexavar, Bayer)は、原発性腎臓癌(進行腎細胞癌)および進行原発性肝臓癌(肝細胞癌)の治療に認可された薬物である。ソラフェニブは、いくつかのチロシンプロテインキナーゼの低分子阻害剤である。ソラフェニブは、Raf/Mek/Erk経路(MAPキナーゼ経路)を標的とする。従って、この経路を標的とする他のキナーゼ阻害剤もJX-594と組み合わせて有用であると考えられる。
【0022】
ある特定の局面において、対象には、少なくとも1x107、1x108、2x108、5x108、1x109、2x109、5x109、1x1010、5x1010、1x1011、5x1011、1x1012、5x1012またはそれ以上のウイルス粒子またはプラーク形成単位(pfu)が、前記の数値の間にある様々な値および範囲を含めて投与される。0.1mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、100mL、500mL、1000mLまたはそれ以上のウイルス用量を、前記の数値の間にある全ての値および範囲を含めて投与することができる。1つの局面において、用量は、例えば、少なくとも約2pg/mL、少なくとも約5pg/mL、少なくとも約10pg/mL、少なくとも約40pg/mL、少なくとも約50pg/mL、少なくとも約100pg/mL、少なくとも約200pg/mL、少なくとも約500pg/mL、少なくとも約1,000pg/mL、少なくとも約5,000pg/mL、少なくとも約10,000pg/mL、少なくとも約15,000pg/mL〜少なくとも約20,000pg/mL、多くても約2pg/mL、多くても約5pg/mL、多くても約10pg/mL、多くても約40pg/mL、多くても約50pg/mL、多くても約100pg/mL、多くても約200pg/mL、多くても約500pg/mL、多くても約1,000pg/mL、多くても約5,000pg/mL、多くても約10,000pg/mL、多くても約15,000pg/mL〜多くても約20,000pg/mL、または約2pg/mL、約5pg/mL、約10pg/mL、約40pg/mL、約50pg/mL、約100pg/mL、約200pg/mL、約500pg/mL、約1,000pg/mL、約5,000pg/mL、約10,000pg/mL、約15,000pg/mL〜約20,000pg/mLであり、前記の数値の間にある全ての値および範囲を含む、患者の血清中に検出可能なレベルのGM-CSFを生じさせるのに十分な用量である。ウイルスの一用量は、その間の全ての値を含む、0.1時間、0.5時間、1時間、2時間、5時間、10時間、15時間、20時間、または24時間にわたって対象または腫瘍に投与される量を指すことが意図される。用量は経時的に広がってもよく、別々の注射により広がってもよい。典型的には、複数の用量が、同じ一般的な標的領域に、例えば、腫瘍の近くにおいて、または静脈内投与の場合では対象の血流またはリンパ系の特定の流入点において投与される。ある特定の局面において、ウイルス用量は、1本の針に複数の口を設けた針、もしくは注射器とつながっている複数の尖った先、またはその組み合わせを備えた注射器具によって送達される。さらなる局面において、ワクシニアウイルスベクターは、2回、3回、4回、5回、またはそれ以上投与される。なおさらなる局面において、ワクシニアウイルスは、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日もしくはそれ以上、または1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間もしくはそれ以上にわたって投与される。
【0023】
ある特定の局面において、対象はヒトである。対象は癌および/または腫瘍に罹患していてもよい。ある特定の態様において、腫瘍は、治療前に切除不能であり、かつ治療後に切除可能でもよい。ある特定の局面において、腫瘍は肝臓上に位置するか、または肝臓内に位置する。他の局面において、腫瘍は、脳癌腫瘍、頭頚部癌腫瘍、食道癌腫瘍、皮膚癌腫瘍、肺癌腫瘍、胸腺癌腫瘍、胃癌腫瘍、結腸癌腫瘍、肝臓癌腫瘍、卵巣癌腫瘍、子宮癌腫瘍、膀胱癌腫瘍、精巣癌腫瘍、直腸癌腫瘍、乳房癌腫瘍、または膵臓癌腫瘍でもよい。他の態様において、腫瘍は膀胱腫瘍である。なおさらなる態様において、腫瘍は黒色腫である。腫瘍は、再発性、原発性、転移性および/または多剤耐性の腫瘍でもよい。ある特定の態様において、腫瘍は肝細胞腫瘍であるか、または別の組織もしくは位置に由来する転移した腫瘍である。ある特定の局面において、腫瘍は肝臓内にある。
【0024】
ある特定の局面において、患者は腫瘍再灌流についてモニタリングされる。ある特定の局面では、患者のモニタリングまたは評価は、非侵襲画像化または低侵襲画像化、例えば、磁気共鳴画像法による。再灌流が検出されたかまたは再灌流が疑われた場合には、患者に、抗血管新生チロシンキナーゼ阻害剤などの抗血管新生剤を投与することができる。ある特定の局面において、チロシンキナーゼ阻害剤はソラフェニブまたは類似の剤である。抗血管新生剤は、ポックスウイルスウイルス療法から、少なくとも1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後、10週間後、11週間後、12週間後、13週間後もしくはそれ以降に、長くても約1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後、10週間後、11週間後、12週間後、13週間後もしくはそれ以降に、または約1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、8週間後、9週間後、10週間後、11週間後、12週間後、13週間後もしくはそれ以降に投与することができる。
【0025】
ある特定の局面において、前記方法は、対象に対してさらなる癌療法を行う工程をさらに含む。さらなる癌療法は、化学療法、生物学的療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、抗血管療法、寒冷療法、毒素療法および/または外科手術でもよく、その組み合わせを含んでもよい。なおさらなる局面において、外科手術は、経動脈的化学塞栓術(TACE法、Vogl et al., European Radiology 16(6): 1393, 2005を参照されたい)を含む。前記方法は、ワクシニアウイルスベクターの第2の投与をさらに含んでもよい。本発明の方法は、治療前に、治療中に、もしくは治療後に、またはその組み合わせで、腫瘍細胞の生存を評価する工程をさらに含んでもよい。ある特定の態様において、ウイルスは、血管内に、腫瘍内に、またはその組み合わせで投与される。さらなる局面において、投与は、腫瘍塊への注射による投与である。なおさらなる態様において、投与は、腫瘍脈管構造への注射または腫瘍脈管構造の領域内への注射による投与である。なおさらなる態様において、投与は、腫瘍に隣接するリンパ系または脈管構造系への注射による投与である。ある特定の局面において、前記方法は、投与前または投与中に腫瘍を画像化する工程を含む。ある特定の局面において、患者には、ワクシニアウイルスワクチンで予め免疫されるか、または予め免疫されない。さらなる局面において、対象は天然で免疫無防備状態でもよく、臨床的に免疫無防備状態でもよい。
【0026】
ある特定の局面において、ウイルスは、注射された腫瘍内の細胞の少なくとも15%、注射された腫瘍内の細胞の少なくとも20%、注射された腫瘍内の細胞の少なくとも30%、注射された腫瘍内の細胞の少なくとも30%、注射された腫瘍内の細胞の少なくとも40%、注射された腫瘍内の細胞の少なくとも50%、注射された腫瘍内の細胞の少なくとも60%、注射された腫瘍内の細胞の少なくとも70%、注射された腫瘍内の細胞の少なくとも80%、または注射された腫瘍内の細胞の少なくとも90%において、細胞または癌細胞の死または壊死を誘導するのに十分な量で投与される。
【0027】
本発明のさらなる局面において、前記方法は、ワクシニアワクチンによる対象の前治療を排除することができる。例えば、対象は、本明細書に記載の療法を行う、1日前、2日前、3日前、4日前、5日前もしくはそれより前に、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前もしくはそれより前に、1ヶ月前、2ヶ月前、3ヶ月前、4ヶ月前、5ヶ月前もしくはそれより前に、または1年前、2年前、3年前、4年前、5年前もしくはそれより前に、ワクチン接種する必要がない。ある局面では、注射されていない腫瘍または癌に治療用ウイルスが感染し、従って、局部投与および全身播種の両方によって患者が治療される。
【0028】
本願全体を通じて本発明の他の態様が議論される。本発明のある局面に関して議論されたいずれの態様も本発明の他の局面に当てはまり、逆の場合も同様である。実施例の項の中の態様は、本発明の全ての局面に適用可能な本発明の態様であると理解される。
【0029】
「阻害する」、「低下させる」、もしくは「阻止」という用語、またはこれらの用語の任意の語尾変化は、特許請求の範囲および/または明細書において用いられた場合、望ましい結果を得るための任意の測定可能な減少または完全な阻害を含む。
【0030】
「1つの(a)」および「1つの(an)」という語句の使用は、特許請求の範囲または明細書において「含む(comprising)」という用語と共に用いられた場合、「1つ」を意味することがあるが、「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは1を超える」という意味とも一致する。
【0031】
本明細書において議論された任意の態様は本明細書の任意の方法または組成物に関して実施できることが意図され、逆の場合も同様である。さらに、本発明の方法を実現するために、本発明の組成物およびキットを使用することができる。
【0032】
本願全体を通じて、「約」という用語は、ある値が、この値を求めるために用いられている装置または方法の誤差の標準偏差を含むことを示すために用いられる。
【0033】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指す、すなわち、選択肢が互いに相反することを指すように明確な指示が出されていない限り、「および/または」を意味するように用いられるが、この開示は、選択肢のみと「および/または」を指す定義を裏付ける。
【0034】
本明細書および特許請求の範囲において使用する「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの、含む(comprising)の任意の形)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」および「有する(has)」などの、有する(having)の任意の形)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」および「含む(include)」などの、含む(including)の任意の形)、または「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの、含有する(containing)の任意の形)という語句は包括的またはオープンエンドであり、さらなる、列挙されなかった要素または方法の工程を排除しない。
【0035】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は本発明の特定の態様を示しているが、この詳細な説明から本発明の精神および範囲の中で様々な修正および変更が当業者に明らかになるので、例示にすぎないことが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
添付の図面は、本明細書の一部をなし、本発明のある特定の局面をさらに証明するために含まれる。これらの図面の1つまたは複数を、本明細書において示された特定の態様の詳細な説明と組み合わせて参照することによって、本発明をさらに深く理解することができる。
【図1】JX-594複製はインビトロではソラフェニブの存在下で阻害される。様々な感染多重度(MOI)でJX-594のみを、またはJX-594と10μΜソラフェニブをPLC/PRF/5細胞に添加した。24時間の感染後に、Vero細胞においてプラークアッセイ法によって滴定するために、細胞および上清を収集した。
【図2】ソラフェニブはJX-594のプラーク形成および複製を阻害する。漸増濃度のソラフェニブの非存在下または存在下で、A2780細胞またはHepG2細胞の単層をJX-594に感染させた。上パネルは、オリジナルの単層におけるプラーク形成および新たなウイルス粒子(バースト)の生成を測定した実験を示す。下パネルは、細胞傷害レベル未満の濃度がウイルス複製の阻害に有効であることを示す。データは、対照(JX-594なし、ソラフェニブなし)に対するパーセントとして表した。エラーバーは複数の実験の標準偏差である。
【図3】ソラフェニブとの併用療法は、CT26皮下固形腫瘍に対するJX-594の効果を増強する。上パネルは、CT2皮下腫瘍マウスにおける併用効果前臨床試験の研究デザインを示す。中央のパネルには、それぞれの状態のカプラン・マイヤー生存曲線を示した。下パネルには腫瘍体積に対する効果を示した。
【図4】マウスB16転移性黒色腫モデルにおけるソラフェニブとの併用療法はJX-594の効果を増強する。上パネルは、B16マウス腫瘍モデルにおける併用効果前臨床試験の研究デザインを示す。下パネルは、各群において発症した平均肺転移数を示す。
【図5】HCC異種移植片モデルにおいてJX-594の後にソラフェニブを用いると優れた効果が認められる。チャートは、各群の治療スケジュールを示している。グラフは、経時的な各群の平均腫瘍サイズ(mm3)をプロットしている(バーは平均の標準誤差である)。
【図6】JX-594の後にソラフェニブを用いた場合の抗血管効果。上パネルは、HepG2異種移植片モデルにおいてJX-594の後にソラフェニブを用いた前臨床試験の研究デザインを示す。下パネルは腫瘍中の平均血管数を示す。(3つの200×視野を計数した)。エラーバーは標準誤差である。
【図7】血管閉塞を示すHCC患者のDCE-MRIスキャン。
【図8】腫瘍内注射部位から離れた部位における応答を示すDCE-MRIスキャン。
【図9】腫瘍内注射部位から離れた部位における応答を示すDCE-MRIスキャン。
【図10】Choi評価を含む患者応答の概要を示す。
【図11】患者1702-ソラフェニブ治療の4週間後および8週間後のDCE-MRI画像(3種類の平面を示した。それぞれの平面について4週間の画像および8週間の画像がある)。
【図12】患者1705-JX-594治療の前および5日後のDCE-MRI画像:ソラフェニブ治療の前および4週間後のDCE-MRI画像。
【図13】患者1712-ソラフェニブ治療の前および4週間後のDCE-MRI画像。
【図14】患者11301-腎細胞癌が肝臓に転移した患者の評価。
【図15】JX-594およびソラフェニブを連続して用いて観察された腫瘍安定化およびエンハンスメントの減少を示す(患者1705)。
【図16】JX-594の後にソラフェニブによって治療した患者(患者1705)における著しい壊死誘導を示す。
【図17】JX-594およびソラフェニブを用いた連続療法後の生存腫瘍体積の減少を示す。
【図18】JX-594第2相臨床試験に登録された肝細胞癌患者のDCE-MRIスキャンから、ソラフェニブを開始して10日後に非注射肝外腫瘍における灌流が消失したことが分かった。JX-594投与(1回の静脈内投与および2回の腫瘍内投与)が終了した後に、患者にソラフェニブを与えた。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明は、癌を治療するための腫瘍崩壊性ポックスウイルスの使用に関する。特に、ある特定の程度の腫瘍崩壊を実現するための、GM-CSFを発現するワクシニアウイルスの使用が説明される。別の局面において、血管形成した腫瘍または血管形成している腫瘍の治療により有効な治療レジメンにおいて、ワクシニアウイルスを使用することができる。ある特定のレジメンは、腫瘍崩壊性ワクシニアウイルスを用いて治療した後の抗血管新生剤の使用である。ある特定の局面において、治療レジメンは、ワクシニアウイルスが腫瘍の血管虚脱を誘導した後の、腫瘍の血管再生に起因する再灌流を評価するための腫瘍の画像化を含む。ある特定の局面において、ワクシニアウイルスは、JX-594ウイルス(TKマイナスの、GM-CSFを発現するワクシニアウイルス)である。
【0038】
I.治療レジメンおよび薬学的製剤
本発明の一態様において、JX-594などの腫瘍崩壊性ワクシニアウイルスを送達することによって癌などの過剰増殖疾患を治療する方法が意図される。
【0039】
前記方法は、腫瘍崩壊性ワクシニアウイルスまたは抗血管新生剤を含む薬学的組成物の有効量を投与する工程を含む。薬学的有効量とは、腫瘍崩壊-癌細胞の破壊もしくは溶解-および/または腫瘍の血管形成の阻害もしくは新脈管構造の破壊を誘導するのに十分な量と定義される。この用語は、腫瘍の成長または大きさの遅れ、阻害、または縮小を含み、場合によっては、腫瘍の根絶を含む。ある特定の局面において、ワクシニアウイルスの有効量は、腫瘍への治療用ウイルスの全身性播種、例えば、注射を行っていない腫瘍への感染をもたらす。
【0040】
A.併用治療
本発明の化合物および方法は、癌を含む過剰増殖疾患/状態の状況において用いられてもよく、ある特定の投与順序で、投与間で様々な間隔をあけて用いられてもよい。GM-CSF発現ワクシニアウイルスなどの本発明の組成物を用いた治療の有効性を高めるために、これらの組成物と癌治療において有効な抗血管新生剤および他の剤を組み合わせることが望ましい。例えば、癌治療は、本発明の治療用化合物と抗血管新生剤を併用して実施することができる。
【0041】
様々な組み合わせが用いられてもよい。例えば、ワクシニアウイルスJX-594などのポックスウイルスは「A」であり、二次的な抗血管新生療法は「B」である。
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0042】
本発明のポックスウイルス/ワクシニアベクターの投与は、ポックスウイルス治療の毒性がもしあればそれを考慮に入れて、このような療法の一般的な投与プロトコールに従う。ワクシニアウイルスによる治療の後に、ワクシニアウイルスによって治療された腫瘍の新生血管形成または該腫瘍の再灌流を効果的に治療するために、抗血管新生剤が投与される。この治療サイクルは必要に応じて繰り返されることが予想される。様々な標準療法ならびに外科的介入を、記載の癌療法または腫瘍細胞療法と組み合わせて適用できることも意図される。
【0043】
「抗血管新生」剤は、例えば、細胞の死滅、細胞におけるアポトーシスの誘導、血管新生に関与する細胞の増殖速度の低下、および腫瘍または癌細胞への血液供給の効果的な減少によって腫瘍における血管新生に対して負に影響を及ぼすことができる。抗血管新生剤の例には、ソラフェニブ、スーテントおよび類似化合物、レチノイド酸およびその誘導体、2-メトキシエストラジオール、ANGIOSTATIN(商標)、ENDOSTATIN(商標)、スラミン、スクアラミン、組織メタロプロテアーゼ阻害物質-1、組織メタロプロテアーゼ阻害物質-2、プラスミノゲン活性化因子阻害因子-1、プラスミノゲン活性化因子阻害因子-2、軟骨由来阻害剤、パクリタキセル、血小板第4因子、硫酸プロタミン(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(クイーンクラブ(queen crab)の殻から調製される)、硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(sp-pg)、スタウロスポリン、例えば、プロリン類似体((I-アゼチジン-2-カルボン酸(LACA)、シスヒドロキシプロリン、d,I-3,4-デヒドロプロリン、チアプロリン、α-ジピリジル、フマル酸β-アミノプロピオニトリル、4-プロピル-5-(4-ピリジニル)-2(3h)-オキサゾロンを含むマトリックス代謝モジュレーター;メトトレキセート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン-血清、chimp-3、キモスタチン、β-シクロデキストリンテトラデカサルフェート、エポネマイシン;フマギリン、チオリンゴ酸金ナトリウム、d-ペニシラミン(CDPT)、β-1-抗コラゲナーゼ-血清、α2-抗プラスミン、ビサントレン、ロベンザリット二ナトリウム、n-2-カルボキシフェニル-4-クロロアントラニル酸二ナトリウムまたは「CCA」、サリドマイド;血管新生抑制ステロイド、カルボキシアミノイミダゾール;メタロプロテイナーゼ阻害剤、例えば、BB94が含まれるが、これに限定されない。他の抗血管新生剤には、抗体、例えば、これらの血管新生増殖因子:bFGF、aFGF、FGF-5、VEGFアイソフォーム、VEGF-C、HGF/SF、およびAng-1/Ang-2に対するモノクローナル抗体が含まれる。Ferrara N. and Alitalo, K 「Clinical application of angiogenic growth factors and their inhibitors」 (1999) Nature Medicine 5:1359-1364。他の抗血管新生剤はVEGF転写阻害剤を含んでもよい。
【0044】
血管新生は既存の毛細血管から新しい血管が形成することであり、広範囲の生理学的プロセスおよび病理学的プロセスにおいて極めて重要な一連の事象である。多くの疾患が新脈管構造の形成と関連している。血管新生は、異常もしくは無秩序な細胞増殖を特徴とする病態または異常もしくは無秩序な細胞増殖に関連する病態、例えば、腫瘍を含む様々な病態の重要な特徴である。過剰な血管新生が関与する病態には、例えば、癌(固形腫瘍および血液腫瘍の両方)が含まれる。癌患者は血管新生-腫瘍血管形成の阻害から利益を得ることができる。
【0045】
血管新生は新生組織の成長に重要である。100年超にわたって、腫瘍は正常組織より多くの血管があると観察されてきた。いくつかの実験研究は、原発腫瘍の成長と転移にはともに新生血管形成が必要であることが示唆されている。活発な腫瘍成長に必要な病的血管新生は一般的には持効性および持続性であり、最初に血管新生表現型が獲得されることが、様々な固形腫瘍タイプおよび造血腫瘍タイプの発症によく見られる機構である。血管網を動員および維持することができない腫瘍は、典型的には、インサイチューでは無症候性の病変として活動を停止しつづける。転移も血管新生依存性である。すなわち、腫瘍細胞が転移するのに成功するためには、一般的に、原発腫瘍中の脈管構造に侵入し、循環をくぐり抜け、標的臓器の微小血管系の中に捕らえられ、この脈管構造から出て、標的臓器において増殖し、標的部位において血管新生を誘導する。従って、血管新生は、転移カスケードの開始ならびに終了に必要であるように考えられる。
【0046】
従って、新生物の成長および転移に対する血管新生の重要性は治療的取り組みの標的を提供する。適切な抗血管新生剤は、腫瘍関連血管新生に影響を及ぼすように、腫瘍関連血管新生の開始を遅延することによって、または腫瘍の新生血管形成の持続可能性を遮ることによって直接的に作用してもよく、間接的に作用してもよい。
【0047】
さらなる抗癌剤には、生物学的剤(生物療法)、化学療法剤、および放射線療法剤が含まれる。より一般的には、これらの他の組成物は、細胞を死滅させる、または細胞増殖を阻害するのに有効な併用量で提供されると考えられる。
【0048】
典型的には、ワクシニアウイルス療法は、数日から数週間の間隔をあけて他の剤の前に行われる。他の剤およびポックスウイルスが細胞に別々に適用される態様では、剤およびポックスウイルスが、細胞に対して有利に組み合わされた効果を発揮できるように、一般的には、有効な期間がそれぞれの送達の間に終わらないことを確実にする。このような場合、細胞と両モダリティーを接触させるのは、どちらかのモダリティーを接触させて約2〜20週間以内に行ってもよいことが意図される。状況によっては、治療期間を大幅に延ばすことが望ましいこともある。この場合、それぞれの投与の間の期間は、数日(2日、3日、4日、5日、6日、または7日)〜数週間(1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、または8週間)である。
【0049】
ワクシニアウイルスおよび抗血管新生剤によって対象を治療することに加えて、従来の癌療法を含むさらなる療法を使用することができる。
【0050】
1.化学療法
癌療法は、化学物質に基づく治療および放射線に基づく治療の両方を用いた様々な併用療法も含む。併用化学療法には、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロランブシル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチン(transplatinum)、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキセート、テマゾロミド(Temazolomide)(DTICの水性型)、または前記の任意の類似体もしくは誘導変異体が含まれる。化学療法と生物学的療法の併用は生物化学療法として知られる。
【0051】
2.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広範に用いられてきた他の因子には、γ線、X線、および/または腫瘍細胞への放射性同位体の指向性送達と一般に知られているものが含まれる。DNA損傷因子の他の形態は、マイクロ波および紫外線なども意図される。これらの因子は全て、DNA、DNA前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に広範囲の損傷をもたらす可能性が最も高い。X線の線量の範囲は、長期間(3〜4週間)では1日線量50〜200レントゲンから1回線量2000〜6000レントゲンに及ぶ。放射性同位体の線量の範囲は多種多様であり、同位体半減期、発せられる放射線の強度およびタイプ、ならびに新生細胞による取り込みに左右される。
【0052】
「接触した」および「曝露した」という用語は細胞に適用される場合、治療用構築物および化学療法剤もしくは放射線療法剤が標的細胞に送達されるプロセス、または標的細胞に直接並べて配置されるプロセスについて説明するために本明細書において用いられる。細胞を死滅および静止させるために、両剤とも、細胞の死滅または細胞分裂の阻止に有効な組み合わせた量で細胞に送達される。
【0053】
3.免疫療法
免疫療法は、一般的には、癌細胞を標的化および破壊するために、免疫エフェクター細胞および分子を使用することに頼っている。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞表面上の、あるマーカーに特異的な抗体でよい。抗体は単独で療法のエフェクターとして役立ってもよく、細胞を実際に死滅させるように他の細胞を動員してもよい。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)と結合され、単に、標的化剤として役立ってもよい。または、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を有するリンパ球でもよい。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。治療モダリティーの組み合わせ、すなわち、直接的な細胞傷害性活性と、ある特定のポックスウイルスポリペプチドの阻害または低下は、癌の治療において治療上の利益を提供すると考えられる。
【0054】
4.外科手術
癌を有する人の約60%が何らかのタイプの外科手術を受けるであろう。外科手術には、予防的手術、診断的手術または進行期分類のための手術、治癒的手術、および姑息的手術が含まれる。治癒的手術は、本発明の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法、および/または代替治療などの他の治療と併用することができる癌治療である。
【0055】
治癒的手術には、癌組織の全てまたは一部を物理的に除去、摘出、および/または破壊する切除が含まれる。腫瘍の切除は、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除去することを指す。腫瘍の切除に加えて、外科手術による治療には、レーザー手術、冷凍外科、電気外科、および顕微鏡下で行う手術(モース外科)が含まれる。本発明は、表層部の癌、前癌、または付随的な量の正常組織の除去と併用できることがさらに意図される。
【0056】
癌の細胞、組織、または腫瘍の一部または全てが摘出されると、身体に空洞が形成されることがある。さらなる抗癌療法によるその領域の灌流、直接注射または局所適用によって、治療が行われてもよい。このような治療は、例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎もしくは7日毎、または1週間毎、2週間毎、3週間毎、4週間毎および5週間毎、または1ヶ月毎、2ヶ月毎、3ヶ月毎、4ヶ月毎、5ヶ月毎、6ヶ月毎、7ヶ月毎、8ヶ月毎、9ヶ月毎、10ヶ月毎、11ヶ月毎もしくは12ヶ月毎に繰り返されてもよい。これらの治療はまた様々な投与量の治療でもよい。
【0057】
5.他の剤
現行の方法と併用して使用するための療法の別の形には、患者の組織を高温(106°Fまで)に曝露する処置であるハイパーサーミアが含まれる。局部ハイパーサーミア、局所ハイパーサーミア、または全身ハイパーサーミアの適用には、外部加温装置または内部加温装置が関与してもよい。局部ハイパーサーミアは、腫瘍などの小さな領域に熱を加えることを伴う。熱は、体外の装置からの腫瘍を標的とする高周波によって外部から発生させてもよい。内部の熱は、薄い加温ワイヤまたは温水を満たした中空管、埋め込み型マイクロ波アンテナ、または高周波電極を含む滅菌プローブを含んでもよい。
【0058】
局所療法の場合には患者の臓器または四肢が加温され、これは磁石などの高エネルギーを発する装置を用いて行われる。または、患者の血液の一部を取り出し、加温した後に、内部加温を行う領域に灌流する。癌が全身に広がっている症例では、全身加温も行ってもよい。この目的のために、温水ブランケット、ホットワックス、誘導コイル、およびサーマルチャンバが用いられてもよい。
【0059】
ホルモン療法もまた、本発明または前記の他の任意の癌療法と併用されてもよい。ホルモンの使用は、乳房癌、前立腺癌、卵巣癌、または子宮頚癌などの特定の癌の治療において、テストステロンまたはエストロゲンなどの特定のホルモンのレベルを低下させるために、またはその効果を遮るために使用することができる。
【0060】
B.投与
腫瘍を治療する場合に、本発明の方法は、腫瘍崩壊性ワクシニアウイルスを投与し、次に、しばらく経った後、抗血管新生剤を含む組成物を投与する。当然、投与経路は、腫瘍の位置および種類によって変わり、例えば、皮内投与、経皮投与、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、皮下投与、局所投与(例えば、腫瘍の近くへの投与、特に、腫瘍の脈管構造または腫瘍の隣接する脈管構造の近くへの投与)、経皮的投与、気管内投与、腹腔内投与、動脈内投与、膀胱内投与、腫瘍内投与、吸入、灌流、洗浄、および経口投与を含む。組成物は、特定の投与経路について製剤化される。
【0061】
孤立性で接近可能な固形腫瘍については、腫瘍内注射または腫瘍脈管構造に直接注射することが特に意図される。局部投与、局所投与、または全身投与も適している場合がある。>4cmの腫瘍の場合、投与される体積は約4〜10ml(好ましくは10ml)であるのに対して、<4cmの腫瘍の場合、約1〜3mlの体積が用いられる(好ましくは3ml)。単一用量として送達される複数回注射は約0.1〜約0.5mlの体積からなる。ウイルスを約1cm間隔で腫瘍に複数回注射において投与することができる。外科的介入の場合、手術不能の腫瘍を切除できるようにするために、本発明は手術前に用いられてもよい。適宜、例えば、カテーテルを腫瘍または腫瘍脈管構造に移植することによって、連続投与が適用されてもよい。このような連続灌流は、治療開始後に、約1〜2時間、約2〜6時間、約6〜12時間、約12〜24時間、約1〜2日、約1〜2週間、またはそれ以上、行われてもよい。一般的には、連続灌流による治療用組成物の用量は、一回または複数回の注射によって与えられる用量と同等であり、灌流が行われる期間にわたって調節される。本発明の治療用組成物を投与するために、特に、肝腫瘍、黒色腫および肉腫の治療において本発明の治療用組成物を投与するために、四肢灌流または器官灌流を使用できることがさらに意図される。
【0062】
治療レジメンも異なってもよく、しばしば、腫瘍タイプ、腫瘍の位置、疾患の進行、ならびに患者の健康および年齢に左右される。あるタイプの腫瘍はより積極的な治療を必要とするが、同時に、ある特定の患者は負担の重いプロトコールに耐えられない。治療用製剤の公知の有効性および(毒性がもしあれば)毒性に基づいて、このような判断を下すのに、医師が最も適していると考えられる。
【0063】
ある特定の態様では、治療されている腫瘍は、少なくとも最初は、切除可能でなくてもよい。治療用ウイルス構築物を用いて治療すると、外縁が縮小するために、または特に侵襲性の、ある特定の部分が無くなることによって、腫瘍の切除可能性が高まることがある。治療後に、切除が可能となってもよい。切除後にさらに治療を行うと、腫瘍部位に残存する微小疾患を無くすのに役立つと考えられる。
【0064】
治療は様々な「単位用量」を含んでもよい。単位用量は、所定量の治療用組成物を含有する量と定義される。投与される量ならびに特定の経路および製剤は、臨床分野の当業者の技術の範囲内である。単位用量は1回の注射で投与される必要はなく、所定の期間にわたる連続注入からなってもよい。本発明の単位用量は、都合よく、ウイルス構築物のプラーク形成単位(pfu)で表されることがある。単位用量は、103pfu、104pfu、105pfu、106pfu、107pfu、108pfu、109pfu、1010pfu、1011pfu、1012pfu、1013pfuおよびそれ以上に及ぶ。または、ウイルスの種類および達成可能な力価に応じて、1〜100、10〜50、100〜1000、あるいは約1x104まで、約1x105まで、約1x106まで、約1x107まで、約1x108まで、約1x109まで、約1x1010まで、約1x1011まで、約1x1012まで、約1x1013まで、約1x1014まで、もしくは約1x1015まで、または少なくとも約1x104、少なくとも約1x105、少なくとも約1x106、少なくとも約1x107、少なくとも約1x108、少なくとも約1x109、少なくとも約1x1010、少なくとも約1x1011、少なくとも約1x1012、少なくとも約1x1013、少なくとも約1x1014、もしくは少なくとも約1x1015、あるいはそれ以上の感染性ウイルス粒子(vp)が、前記の数値の間にある全ての値および範囲を含めて、腫瘍または腫瘍部位に送達される。
【0065】
C.注射可能な組成物および製剤
本発明においてポックスウイルスゲノムの全てまたは一部をコードする発現構築物またはウイルスを癌または腫瘍細胞に送達するのに好ましい方法は、腫瘍内注射による方法である。しかしながら、腫瘍内注射の代わりに、本明細書において開示される薬学的組成物を、米国特許第5,543,158号;米国特許第5,641,515号および米国特許第5,399,363号(それぞれ全体が参照により本明細書に特に組み入れられる)に記載の通りに非経口的投与、静脈内投与、皮内投与、筋肉内投与、経皮投与、さらには腹腔内投与することができる。
【0066】
核酸構築物の注射液は、発現構築物が、注射に必要な特定の注射針ゲージを通過できる限り、注射器または溶液の注射に用いられる他の任意の方法によって送達することができる。新規の注射針のない注射システムが最近記載されており(米国特許第5,846,233号)、溶液を保持するためのアンプルチャンバを規定するノズル、およびノズルから溶液を送達部位に押し出すためのエネルギー装置を備える。所定量の溶液を正確に任意の深さで複数回注射するのを可能にする注射器システムも、遺伝子療法における使用について記載されている(米国特許第5,846,225号)。
【0067】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合されて、水中で調製することができる。分散液もまた、グリセロール中、液体ポリエチレングリコール中、およびその混合物中、ならびに油中で調製することができる。通常の保管条件および使用条件の下では、これらの調製物は、微生物の増殖を阻止する防腐剤を含有する。注射可能な使用に適した薬学的形態には、滅菌した水溶液もしくは分散液、および滅菌した注射可能溶液もしくは分散液の即時調製のための滅菌散剤が含まれる(全体が参照により本明細書に特に組み入れられる、米国特許第5,466,468号)。すべての場合で、形態は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に液状でならなければならない。形態は、製造および保管の条件下で安定でなければならず、細菌および菌類などの微生物の汚染作用から守らなくてはならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、ならびに/または植物油を含有する、溶媒または分散媒でもよい。例えば、レシチンなどのコーティングを用いることによって、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持することによって、および界面活性剤を用いることによって、適当な流動性を維持することができる。微生物の活動は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって阻止することができる。多くの場合、等張性剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に使用することによって可能になる。
【0068】
水溶液における非経口投与の場合、例えば、溶液は、必要に応じて適切に緩衝化しなければならず、液体希釈剤は、まず最初に、十分な食塩水またはグルコースで等張にしなければならない。これらの特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腫瘍内投与、および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することができる滅菌水性媒質は、本開示を考慮すれば当業者に公知であろう。例えば、1投与量を等張NaCl溶液1mlに溶解し、皮下注入液1000mlに添加するか、提案された注入部位に注射してもよい(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035〜1038頁および1570〜1580頁を参照されたい)。投与量のある程度のばらつきは、治療を行っている対象の状態に応じて必ず生じる。いずれにしても、投与を担当している人によって、個々の対象1人1人に適した用量が決定される。さらに、ヒトへの投与の場合、調製物は、FDAの生物製剤部(Office of Biologics)の基準により求められるような無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の基準を満たさなければならない。
【0069】
滅菌注射可能溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記の様々な他の成分と共に、適当な溶媒中に取り込み、その後に、濾過滅菌することによって調製される。一般的には、分散液は、様々な滅菌活性成分を、上記の基本分散媒および必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに取り込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液の調製のための滅菌散剤の場合、好ましい調製方法は、予め濾過滅菌された溶液から活性成分および任意のさらなる望ましい成分の粉末を生じる真空乾燥法および凍結乾燥法である。
【0070】
本明細書において開示される組成物は中性または塩の形で製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、酸添加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)が含まれ、これは、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸を用いて形成されるか、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩も、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第2鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から得ることができる。溶液が製剤化されると、投与製剤に適合するやり方で、および治療に有効な量で投与される。製剤は、注射可能溶液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で簡単に投与される。
【0071】
本明細書で使用する「担体」は、任意のおよび全ての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイドなどを含む。薬学的に活性な物質のための、このような媒質および剤の使用は当技術分野において周知である。従来のどの媒質または剤も活性化合物と適合しない場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性成分も組成物に組み入れることができる。
【0072】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という句は、ヒトに投与された場合にアレルギー反応または同様の有害な反応を生じない分子的実体および組成物を指す。活性成分としてタンパク質を含有する水性組成物の調製は当技術分野においてよく理解されている。典型的には、このような組成物は、液体溶液または懸濁液いずれかの注射液として調製される。液体の溶液または懸濁液にした後に注射するのに適した固体形態も調製することができる。
【0073】
II.ワクシニアウイルスJX-594
ポックスウイルスは、何世紀もわたって、この科の名前の由来となった痘瘡ウイルス(天然痘)が作り出す特徴的な痘痕で知られている。天然痘は、2000年以上前に中国および極東において最初に出現したようである。幸運にも、命にかかわることが多いこのウイルスは現在、根絶されており、最後の自然大発生は1977年にソマリアで起こった。
【0074】
ポックスウイルスのウイルス粒子は卵状または煉瓦状であり、長さが約200〜400nmである。外面は平行な列になった隆起があり、時としてらせん状に並んでいる。粒子は極めて複雑であり、100種類超の異なるタンパク質を含有している。細胞外型は2枚の膜を含有するのに対して(EEV-細胞外エンベロープビリオン)、細胞内粒子は内膜しか有さない(IMV-細胞内成熟ビリオン)。コアを取り囲む外面は、脂質およびタンパク質からなり、コアは、きつく圧縮された核タンパク質からなる。抗原的にもポックスウイルスは非常に複雑であり、特異的抗体および交差反応抗体を両方とも誘導する。粒子には少なくとも10種類の酵素が存在し、大部分が核酸代謝/ゲノム複製に関与している。
【0075】
ポックスウイルスのゲノムは130〜300Kbpの直鎖二本鎖DNAである。ゲノムの末端には、いくつかの縦列反復配列を有する末端ヘアピンループがある。いくつかのポックスウイルスゲノムが配列決定されており、必須遺伝子のほとんどがゲノム中心部に位置しているのに対して、必須でない遺伝子は末端に位置している。ポックスウイルスゲノムには約250の遺伝子がある。
【0076】
このウイルスはゲノム複製に必要な全ての機能を獲得しているほど十分に複雑であるので、複製は細胞質内で行われる。細胞はある程度寄与するが、この寄与がどういったものかは明らかでない。しかしながら、除核細胞ではポックスウイルスの遺伝子発現およびゲノム複製は起こるが、成熟は遮られるので、細胞にはある程度の役割があることが分かる。
【0077】
ポックスウイルスの受容体は、一般には知られていないが、おそらく複数あり、かつ異なる細胞タイプ上にある。ワクシニアの場合、可能性が高い受容体の1つがEGF受容体である(McFadden, 2005)。侵入も複数の機構が伴うことがある。脱外被は2段階で起こる。(a)粒子が細胞に入り、細胞質内に入る際に外膜が取り除かれる、および(b)粒子のさらなる脱外被が起こり、コアが細胞質に入る。
【0078】
細胞質に入ると、コアに関連するウイルス酵素によって遺伝子発現が行われる。発現は2つの局面に分けられ:ゲノムの約50%に相当する早期遺伝子がゲノム複製前に発現され、後期遺伝子がゲノム複製後に発現される。発現の時間制御は、活性がDNA複製に左右される後期プロモーターによってもたらされる。ゲノム複製は、高分子量コンカテマー形成につながるセルフプライミング(self-priming)を伴うと考えられている。後に、高分子量コンカテマーは、ウイルスゲノムを作るために切断および修復される。ウイルスの組み立ては細胞骨格内で起こり、おそらく、細胞骨格タンパク質(例えば、アクチン結合タンパク質)との相互作用を伴う。細胞質内の封入体がウイルス粒子に成熟する。細胞間伝播は、感染伝播とは別の機構であり得る。全体的に見て、この大きく複雑なウイルスの複製はかなり速く、平均して12時間しかかからない。
【0079】
少なくとも9種類のポックスウイルスがヒト疾患の原因となるが、痘瘡ウイルスおよびワクシニアが最もよく知られている。痘瘡株は大痘瘡(致死率25〜30%)および小痘瘡(同じ症状であるが死亡率1%未満)に分けられる。両ウイルスとも感染は天然では呼吸器経路によって起こり、全身感染であり、様々な症状を生じるが、痘瘡に特徴的な膿疱および皮膚瘢痕が最も目立つ。
【0080】
A.ワクシニアウイルス
ワクシニアウイルスは、約190Kbpの直鎖二本鎖DNAゲノムを有し、約250の遺伝子をコードする、大きく複雑なエンベロープウイルスである。ワクシニアは、天然痘を根絶したワクチンとして役割を果たしたことがよく知られている。天然痘が根絶された後に、科学者らは、遺伝子を生物組織に送達するための道具(遺伝子療法および遺伝子工学)としてワクシニアを用いることを研究してきた。ワクシニアウイルスは、宿主細胞の細胞質でしか複製しないためにDNAウイルスの中では独特のウイルスである。従って、この大きなゲノムは、ウイルスDNA複製に必要な様々な酵素およびタンパク質をコードする必要がある。複製中に、ワクシニアは、外膜が異なる数種類の感染型:細胞内成熟ビリオン(IMV)、細胞内エンベロープビリオン(IEV)、細胞結合性エンベロープビリオン(CEV)、および細胞外エンベロープビリオン(EEV)を産生する。IMVは最も豊富な感染型であり、宿主間の伝播を担っていると考えられている。他方で、CEVは細胞間の伝播において役割を果たしていると考えられおり、EEVは、宿主生物内での広範囲の播種に重要だと考えられている。
【0081】
ワクシニアウイルスは、牛痘の原因となるウイルスと密接な関係がある。ワクシニアの正確な起源は分かっていないが、ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、および痘瘡ウイルス(天然痘の原因作用物質)は全て共通の祖先ウイルスから生じたというのが最も一般的な見解である。ワクシニアウイルスは最初にウマから単離されたという推測もある。ワクシニアウイルスの感染は穏やかであり、典型的には、健常個体では無症候性であるが、軽度の発疹および発熱を引き起こすことがあり、致死率は極めて低い。ワクシニアウイルス感染に対して生じた免疫応答があると、致死性の天然痘感染が阻止される。このため、ワクシニアウイルスは、天然痘に対する生ウイルスワクチンとして用いられた。ワクシニアウイルスワクチンは天然痘ウイルスを含有しないため安全であるが、時々、特に、ワクチンが免疫無防備状態である場合に、ある特定の合併症および/またはワクチン副作用が生じることがある。
【0082】
前記の通り、ワクシニアウイルスは、多数の外来タンパク質を発現するように操作されてきた。このようなタンパク質の1つが顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、すなわちGM-CSFである。GM-CSFは、顆粒球(好中球、好酸球、および好塩基球)ならびにマクロファージを産生するように幹細胞を刺激する、マクロファージによって分泌されるタンパク質である。ヒトGM-CSFは、アミノ酸残基23(ロイシン)、27(アスパラギン)、および39(グルタミン酸)でグリコシル化されている(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,073,627号を参照されたい)。GM-CSFはモルグラモスチム、または、このタンパク質が酵母細胞において発現された場合にはサルグラモスチム(商標登録Leukine(商標登録))とも知られる。これらは、化学療法後に、白血球、特に、顆粒球およびマクロファージの産生を刺激する薬として用いられる。GM-CSFを発現するワクシニアウイルスは以前に報告されている。しかしながら、これは腫瘍崩壊剤ではなく、単にGM-CSFの送達ベクターと考えられた。従って、それは、有意な腫瘍崩壊を実現できる投与量より少ない投与量で患者に投与されてきた。本明細書では、ある態様において1x108のpfuまたは粒子を超える濃度で投与される、GM-CSF発現ワクシニアウイルスの使用が説明される。
【0083】
ワクシニアウイルスは、参照により本明細書に組み入れられるAusubel et al., 1994の中でEarl and Mossによって記載された方法を用いて増殖させることができる。
【0084】
III.核酸組成物
ある特定の態様において、本発明はワクシニアウイルスおよびその変異体に関する。
【0085】
A.ウイルスポリペプチドの変異体
本発明のワクシニアウイルスベクターによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、置換変異体、挿入変異体、または欠失変異体でもよい。ウイルスポリペプチドをコードする遺伝子の変異は、野生型と比較して、ポリペプチドの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500個、またはそれ以上の非連続アミノ酸または連続アミノ酸に影響を及ぼしてもよい。ワクシニアウイルスがコードする様々なポリペプチドは、Rosel et al., 1986、Goebel et al., 1990、およびGenBankアクセッション番号NC001559を参照することによって同定することができる。これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0086】
欠失変異体は、ネイティブタンパク質または野生型タンパク質の1つまたは複数の残基を欠いている。1つ1つの残基を欠失してもよく、ドメイン(例えば、触媒ドメインまたは結合ドメイン)の全てまたは一部を欠失してもよい。切断型タンパク質を作製するために、(置換または挿入によって)コード核酸配列に停止コドンが導入されてもよい。挿入変異体は、典型的には、ポリペプチドの非末端点に材料を付加することを伴う。これは、免疫反応性エピトープの挿入を含んでもよく、単に、1つまたは複数の残基の挿入を含んでもよい。融合タンパク質と呼ばれる末端付加も作製することができる。
【0087】
置換変異体は、典型的には、タンパク質の中の1つまたは複数の部位におけるアミノ酸を別のアミノ酸に交換することを含み、ポリペプチドの1つまたは複数の特性を調節しながら、他の機能もしくは特性も消失させるように、または他の機能もしくは特性を消失させないように設計されてもよい。置換は、保存的置換、すなわち、あるアミノ酸が類似する形状および電荷のアミノ酸で置換されてもよい。保存的置換は当技術分野において周知であり、例えば、アラニンからセリンへの変更;アルギニンからリジンへの変更;アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへの変更;アスパラギン酸からグルタミン酸への変更;システインからセリンへの変更;グルタミンからアスパラギンへの変更;グルタミン酸からアスパラギン酸への変更;グリシンからプロリンへの変更;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへの変更;イソロイシンからロイシンまたはバリンへの変更;ロイシンからバリンまたはイソロイシンへの変更;リジンからアルギニンへの変更;メチオニンからロイシンまたはイソロイシンへの変更;フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニンへの変更;セリンからスレオニンへの変更;スレオニンからセリンへの変更;トリプトファンからチロシンへの変更;チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへの変更;およびバリンからイソロイシンまたはロイシンの変更を含む。または、置換は、ポリペプチドの機能または活性に影響を及ぼすような非保存的置換でもよい。非保存的な変更は、典型的には、極性アミノ酸または荷電アミノ酸などの化学的に似てない特性を有する残基を、非極性アミノ酸または無電荷アミノ酸で置換することを含み、逆の場合も同様である。
【0088】
「機能的に等価なコドン」という用語は、同じアミノ酸をコードするコドン(以下の表1を参照されたい)を指すために本明細書において用いられる。
【0089】
(表1)コドン表

【0090】
アミノ酸配列および核酸配列は、さらなる残基、例えば、さらなるN末端アミノ酸もしくはC末端アミノ酸または5'配列もしくは3'配列を含んでもよいが、タンパク質発現に関連する生物学的タンパク質活性の維持を含めて前記の基準を配列が満たしている限り、本質的には依然として、本明細書において開示される配列の1つに示される配列であることも理解されるであろう。末端配列の付加は特に核酸配列に適用され、核酸配列は、例えば、コード領域の5'部分または3'部分に隣接する様々な非コード配列を含んでもよく、遺伝子内で生じることが知られている様々な内部配列、すなわち、イントロンを含んでもよい。
【0091】
以下は、等価な、さらには改善された第二世代の分子を作り出すための、タンパク質のアミノ酸の変更に基づく議論である。例えば、抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位などの構造との相互作用結合能力を相当量失うことなく、タンパク質構造のある特定のアミノ酸を他のアミノ酸で置換することができる。タンパク質の生物機能活性を規定するのはタンパク質の相互作用能および相互作用性であるので、ある特定のアミノ酸置換をタンパク質配列およびその基礎となるDNAコード配列において行い、それにもかかわらず、同様の特性を有するタンパク質を作製することができる。従って、下記の通り、生物学的有用性または活性を相当量失うことなく、遺伝子のDNA配列に様々な変更を加えることができることが本発明者らによって意図される。表1は、特定のアミノ酸をコードするコドンを示している。
【0092】
このような変更を行う際に、アミノ酸ハイドロパシー指数が考慮されることがある。タンパク質への相互作用的生物機能の付与におけるアミノ酸ハイドロパシー指数の重要性は、当技術分野のバイトおよびKyte and Doolittle, 1982において一般に理解されている。アミノ酸の相対的なハイドロパシー特徴が、結果として得られるタンパク質の二次構造に寄与し、次に、この二次構造が、タンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などの相互作用を規定すると受け入れられている。
【0093】
類似のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて効果的になされ得ることも当技術分野において理解されている。参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,554,101号は、隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大局所平均親水性がタンパク質の生物学的特性と相関すると述べている。米国特許第4,554,101号に詳しく記載した通りに、以下の親水性値:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)がアミノ酸残基に割り当てられている。
【0094】
アミノ酸は、類似の親水性値を有する別のアミノ酸で置換することができ、それでもなお、生物学的に等価かつ免疫学的に等価なタンパク質を生成できることが理解される。このような変更において、親水性値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のアミノ酸の置換が特に好ましく、±0.5以内のアミノ酸の置換がさらに特に好ましい。
【0095】
前記で概説した通り、アミノ酸の置換は、概して、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば、その疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいている。様々な前記の特徴を考慮に入れた例示的な置換が当業者に周知であり、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンを含む。
【0096】
B.ネイティブタンパク質または改変タンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明は、タンパク質またはポリペプチドの全てまたは一部を発現することができる、細胞から単離可能なポリヌクレオチドに関する。本発明のある態様において、本発明は、ある特定の機能的なウイルスポリペプチドを欠くウイルスを生じるように特異的に変異されたウイルスゲノムに関する。このポリヌクレオチドは、ウイルスアミノ酸配列の全てまたは一部を含有するペプチドまたはポリペプチドをコードしてもよいか、あるいは、このようなウイルスポリペプチドをコードしないように操作されても、または少なくとも1つの機能または活性が低下した、減弱したもしくは存在しないウイルスポリペプチドをコードするように操作されてもよい。組換えタンパク質を発現細胞から精製して、活性タンパク質を得ることができる。ワクシニアウイルスのゲノムならびにコード領域の定義は、Rosel et al., 1986; Goebel et al., 1990;および/またはGenBankアクセッション番号NC 001559に見られる。これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0097】
本明細書で使用する「DNAセグメント」という用語は、ある特定の種の総ゲノムDNAから取り出されて単離されているDNA分子を指す。従って、ポリペプチドをコードするDNAセグメントは、野生型ポリペプチドコード配列、多型ポリペプチドコード配列、または変種ポリペプチドコード配列を含有するが、哺乳動物またはヒトの総ゲノムDNAから取り出されて単離または精製されている、DNAセグメントを指す。「DNAセグメント」という用語には、ポリペプチド、ポリペプチドより小さなDNAセグメント、および、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスなどを含む組換えベクターが含まれる。
【0098】
本願において使用する「ポックスウイルスポリヌクレオチド」という用語は、総ゲノム核酸から取り出されて単離されている、ポックスウイルスポリペプチドをコードする核酸分子を指す。同様に、「ワクシニアウイルスポリヌクレオチド」は、総ゲノム核酸から取り出されて単離されている、ワクシニアウイルスポリペプチドをコードする核酸分子を指す。「ポックスウイルスゲノム」または「ワクシニアウイルスゲノム」は、ヘルパーウイルスの存在下または非存在下で、宿主細胞に供給するとウイルス粒子を生じることができる核酸分子を指す。このゲノムは、野生型ウイルスと比較して、組換えにより変異されていてもよく、変異されてなくてもよい。
【0099】
「cDNA」という用語は、メッセンジャーRNA(mRNA)をテンプレートとして用いて調製されたDNAを指すことが意図される。ゲノムDNA、またはゲノムに由来する、プロセシングされていないもしくは部分的にプロセシングされたRNAテンプレートから重合されたDNAとは対照的に、cDNAを使用する利点は、cDNAが主に対応タンパク質のコード配列を含有する点にある。最適な発現に非コード領域が必要とされる場合、またはイントロンなどの非コード領域をアンチセンス戦略の標的としようとする場合など、完全ゲノム配列または部分ゲノム配列が好ましい時もある。
【0100】
ある特定の種に由来するある特定のポリペプチドが、わずかに異なる核酸配列を有するが、それにもかかわらず、同じタンパク質をコードする天然変異体によって表すことができることも意図される(前記の表1を参照されたい)。
【0101】
同様に、単離または精製された野生型ポリペプチド遺伝子または変種ポリペプチド遺伝子を含むポリヌクレオチドは、野生型ポリペプチドコード配列または変種ポリペプチドコード配列を含み、ある特定の局面では、他の天然の遺伝子またはタンパク質コード配列から実質的に単離された調節配列を含む、DNAセグメントを指す。この点で、「遺伝子」という用語は、機能的なタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする単位(適切な転写、翻訳後修飾、または局在化に必要な任意の配列を含む)を指すのを簡単にするために用いられる。当業者に理解される通り、この機能的な用語は、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、および変種を発現するか、または発現するように適合されてもよい、ゲノム配列、cDNA配列、およびさらに小さな操作された遺伝子セグメントを含む。
【0102】
ネイティブポリペプチドまたは改変ポリペプチドの全てまたは一部をコードする核酸は、以下の長さ:10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1095、1100、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、9000、10000個、またはそれ以上のヌクレオチド、ヌクレオシド、もしくは塩基対の、このようなポリペプチドの全てまたは一部をコードする連続した核酸配列を含有してもよい。
【0103】
「組換え」という用語は、ポリペプチドまたはある特定のポリペプチドの名前と共に用いられてもよく、これは、概して、インビトロで操作されている核酸分子、またはこのような分子の複製産物である核酸分子から生成されたポリペプチドを指す。
【0104】
本発明において用いられる核酸セグメントは、コード配列自体の長さに関係なく、他の核酸配列、例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、さらなる制限酵素部位、マルチクローニングサイト、他のコードセグメントなどと組み合わせることができ、その結果、全長はかなり変化することがある。従って、ほぼ全ての長さの核酸断片を使用できることが意図され、全長は、好ましくは、目的の組換えDNAプロトコールにおける調製のしやすさおよび使いやすさによって制限される。
【0105】
本発明の核酸構築物は、任意の供給源に由来する完全長ポリペプチドをコードしてもよく、コード領域の転写物が切断型となるように、切断型ポリペプチド、例えば、切断型ワクシニアウイルスポリペプチドをコードしてもよいことが意図される。次に、切断型転写物は切断型タンパク質に翻訳されてもよい。タグまたは他の異種ポリペプチドが改変ポリペプチドコード配列に付加されてもよく、ここで、「異種」は改変ポリペプチドと同一でないポリペプチドを指す。
【0106】
ある特定の他の態様において、本発明は、本明細書において同定された(および/または参照により組み入れられる)配列で示された配列に由来する連続核酸配列を配列内に含む、単離されたDNAセグメントおよび組換えベクターに関する。しかしながら、このような配列は、野生型に対して活性が変化しているタンパク質産物を生じるように変異されてもよい。
【0107】
本発明は、これらの同定された配列の特定の核酸配列およびアミノ酸配列に限定されないことも理解されるであろう。従って、組換えベクターおよび単離されたDNAセグメントは、ポックスウイルスコード領域それ自体、選択された変化および改変を基本コード領域の中に有するコード領域を様々に含んでもよく、さらに大きなポリペプチドをコードするのにもかかわらずポックスウイルスコード領域を含んでもよく、変異体アミノ酸配列を有する生物機能的に等価なタンパク質またはペプチドをコードしてもよい。
【0108】
本発明のDNAセグメントは、生物機能的に等価なポックスウイルスタンパク質およびポックスウイルスペプチドを包含する。このような配列は、核酸配列内に天然に生じることが知られているコドン重複性および機能等価性の結果として生じることがあり、タンパク質はこのようにコードされる。または、機能的に等価なタンパク質またはペプチドは、組換えDNA技術を適用することによって作り出されてもよい。ここで、交換されるアミノ酸の特性の考察に基づいて、タンパク質構造の変化を操作することができる。人為的に設計される変化は、部位特異的変異誘発法を適用することによって、例えば、タンパク質の抗原性への改善を導入するように部位特異的変異誘発法を適用することによって導入することができる。
【0109】
C.ポックスウイルスポリヌクレオチドの変異誘発
様々な態様において、ポックスウイルスポリヌクレオチドは変化または変異誘発されてもよい。変化または変異は挿入、欠失、点変異、逆位などを含んでもよく、ある特定の経路または分子機構または特定のタンパク質(例えば、チミジンキナーゼ)の調節、活性化、および/または不活化をもたらしてもよく、加えて、遺伝子産物の機能、位置、または発現の変化をもたらしてもよく、特に、遺伝子産物を機能しないようにしてもよい。ポックスウイルスの全てまたは一部をコードするポリヌクレオチドの変異誘発が用いられる場合、様々な標準的な変異誘発手順によって達成することができる(Sambrook et al., 1989)。
【0110】
変異は、化学的変異原または物理的変異原への曝露後に誘導されてもよい。このような変異誘導剤には、電離放射線、紫外線、ならびに多様な化学物質、例えば、アルキル化剤および多環式芳香族炭化水素が含まれる。前記の化学物質は全て、直接的にまたは間接的に(一般的には、代謝による生体内変換の後に)核酸と相互作用することができる。このような作用物質によって誘導されたDNA損傷は、影響を及ぼしたDNAが複製または修復される際に塩基配列を改変し、従って、変異につながり得る。変異はまた、特定の標的化方法を用いることによって部位特異的な変異でもよい。
【0111】
D.ベクター
ポックスウイルスゲノムにおいて変異を生じさせるために、ネイティブポリペプチドおよび改変ポリペプチドは、ベクター内に含まれる核酸分子によってコードされてもよい。「ベクター」という用語は、外因性核酸配列を、複製可能な細胞に導入するために挿入することができる担体核酸分子を指すために用いられる。核酸配列は「外因性」でもよい。「外因性」は、核酸配列が、ベクターが導入される細胞にとって外来のものであること、または細胞内の配列と相同であるが、通常見られない宿主細胞核酸内の位置にあることを意味する。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、ならびに人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者であれば、Sambrook et al., (1989)およびAusbel et al., 1994に記載の標準的な組換え技法によってベクターを構築するのに十分な装備を持っているであろう。Sambrook et al., (1989)およびAusubel et al., 1994は両方とも参照により本明細書に組み入れられる。ベクターは、改変ゲロニンなどの改変ポリペプチドをコードすることに加えて、タグまたは標的化分子などの非改変ポリペプチド配列をコードしてもよい。
【0112】
「発現ベクター」という用語は、遺伝子産物の少なくとも一部をコードする転写可能な核酸配列を含有するベクターを指す。場合によっては、次に、RNA分子はタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。他の場合では、これらの配列は翻訳されず、例えば、アンチセンス分子またはリボザイムが生成される。発現ベクターは、ある特定の宿主生物における機能的に連結されたコード配列の転写に必要であり、おそらく翻訳に必要な核酸配列を指す様々な「制御配列」を含有してもよい。ベクターおよび発現ベクターは、転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、他の機能も果たし以下で説明される核酸配列を含有してもよい。
【0113】
1.プロモーターおよびエンハンサー
「プロモーター」は、転写の開始および速度を制御する核酸配列の領域である制御配列である。プロモーターは、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子などの調節タンパク質および調節分子が結合し得る遺伝因子を含有してもよい。「機能的に配置された」「機能的に連結された」、「制御下にある」、および「転写制御下にある」という句は、プロモーターが、核酸配列の転写開始および/または発現を制御するために、核酸配列に対して正しい機能的な位置および/または方向にあることを意味する。プロモーターは「エンハンサー」と共に用いられてもよく、用いられなくてもよい。エンハンサーは、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用調節配列を指す。
【0114】
プロモーターは遺伝子または配列と天然で関連しているものでもよく、コードセグメントおよび/またはエキソンの上流に位置する5'非コード配列を単離することによって得ることができる。このようなプロモーターは「内因性」プロモーターと呼ばれることがある。同様に、エンハンサーは核酸配列と天然で関連しているものでもよく、核酸配列の下流に位置してもよく、上流に位置してもよい。または、コード核酸セグメントを組換えプロモーターまたは異種プロモーターの制御下に置くことによって、ある特定の利益が得られる。組換えプロモーターまたは異種プロモーターは、天然環境において核酸配列と通常関連していないプロモーターを指す。組換エンハンサーえまたは異種エンハンサーも、天然環境において核酸配列と通常関連していないエンハンサーを指す。このようなプロモーターまたはエンハンサーは、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、ならびに他の任意の原核細胞、ウイルス細胞、または真核細胞から単離されたプロモーターまたはエンハンサー、ならびに「天然」ではないプロモーターまたはエンハンサー、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメントおよび/または発現を変える変異を含有するプロモーターまたはエンハンサーを含んでもよい。プロモーターおよびエンハンサーの核酸配列を合成により生成することに加えて、配列は、本明細書において開示される組成物と共に、組換えクローニング技術および/またはPCR(商標)を含む核酸増幅技術を用いて生成されてもよい(米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号を参照されたい。それぞれ参照により本明細書に組み入れられる)。さらに、配列を、直接、ミトコンドリア、葉緑体などの核でない細胞小器官の中で転写および/または発現させる制御配列も使用できることが意図される。
【0115】
もちろん、発現のために選択された細胞タイプ、細胞小器官、および生物においてDNAセグメントを効率的に発現させるプロモーターおよび/またはエンハンサーを使用することが重要な場合もある。分子生物学の当業者であれば、タンパク質を発現させるために、プロモーター、エンハンサー、および細胞タイプの組み合わせを用いることを通常知っている。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al. (1989)を参照されたい。使用されるプロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、誘導性プロモーター、および/または導入されたDNAセグメントを高レベルに発現させるのに適切な条件下で、例えば、組換えタンパク質および/または組換えペプチドの大規模産生に有利な条件下で有用なプロモーターでよい。プロモーターは異種プロモーターでもよく、内因性プロモーターでもよい。
【0116】
組織特異的なプロモーターまたはエレメントの正体、ならびにその活性を特徴付けるアッセイ法は当業者に周知である。このような領域の例には、ヒトLIMK2遺伝子(Nomoto et al., 1999)、ソマトスタチン受容体2遺伝子(Kraus et al., 1998)、マウス精巣上体レチノイン酸結合遺伝子(Lareyre et al., 1999)、ヒトCD4(Zhao-Emonet et al., 1998)、マウスα2(XI)コラーゲン(Tsumaki, et al., 1998)、D1Aドーパミン受容体遺伝子(Lee, et al., 1997)、インシュリン様増殖因子II(Wu et al., 1997)、ヒト血小板内皮細胞接着分子-1(Almendro et al., 1996)、およびSM22αプロモーターが含まれる。
【0117】
2.開始シグナルおよび内部リボソーム結合部位
コード配列が効率的に翻訳されるには、特定の開始シグナルも必要とされる場合がある。これらのシグナルには、ATG開始コドンまたは隣接配列が含まれる。ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルを設けることが必要な場合がある。当業者であれば、このことを容易に決定し、必要なシグナルを設けることができるであろう。インサート全体の翻訳を確実にするために、開始コドンが望ましいコード配列の読み枠と「インフレーム」でなければならないことは周知である。外因性の翻訳制御シグナルおよび開始コドンは天然のものでもよく、合成のものでもよい。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメントの含有によって増強することができる。
【0118】
本発明のある特定の態様において、多重遺伝子のメッセージまたはポリシストロニックなメッセージを作り出すために、配列内リボソーム進入部位(IRES)エレメントの使用が用いられる。IRESエレメントは、5'メチル化Cap依存性翻訳のリボソームスキャニングモデルを迂回し、内部部位で翻訳を開始することができる(Pelletier and Sonenberg, 1988)。ピコルナウイルス科の2つのメンバー(ポリオおよび脳心筋炎)に由来するIRESエレメントが記載されており(Pelletier and Sonenberg, 1988)、哺乳動物メッセージに由来するIRESも記載されている(Macejak and Sarnow, 1991)。IRESエレメントは異種オープンリーディングフレームと連結することができる。それぞれIRESによって分けられた複数のオープンリーディングフレームを一緒に転写して、ポリシストロニックなメッセージを作り出すことができる。IRESエレメントによって、それぞれのオープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のためにリボソームに接近することができる。1種類のプロモーター/エンハンサーを用いて1本のメッセージを転写するように、複数の遺伝子を効率的に発現させることができる(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,925,565号および同第5,935,819号を参照されたい)。
【0119】
3.マルチクローニングサイト
ベクターは、マルチクローニングサイト(NCS)を含んでもよい。マルチクローニングサイトは、複数の制限酵素部位を含有する核酸領域であり、どの制限酵素部位も、ベクターを消化するために標準的な組換え技術と共に使用することができる(参照により本明細書に組み入れられる、Carbonelli et al., 1999, Levenson et al., 1998、およびCocea, 1997を参照されたい)。「制限酵素消化」は、核酸分子の特定の位置でしか機能しない酵素による核酸分子の触媒的切断を指す。これらの制限酵素の多くは市販されている。このような酵素の使用は当業者に広く理解されている。往々にして、外因性配列がベクターに連結できるように、MCS内で切断する制限酵素を用いて、ベクターは直線化または断片化される。「連結」は、2つの核酸断片間でホスホジエステル結合を形成するプロセスを指す。2つの核酸断片は互いに連続してもよく、連続してなくてもよい。制限酵素および連結反応を伴う技法は組換え技術の当業者に周知である。
【0120】
4.スプライシング部位
ほとんどの転写された真核生物RNA分子は、一次転写物からイントロンを除去するRNAスプライシングを受ける。転写物を適切にプロセシングして、タンパク質を発現するために、ゲノム真核生物配列を含有するベクターはドナースプライシング部位および/またはアクセプタースプライシング部位と必要とする場合がある(参照により本明細書に組み入れられる、Chandler et al., 1997を参照されたい)。
【0121】
5.終結シグナル
本発明のベクターまたは構築物は、一般的には、少なくとも1つの終結シグナルを含む。「終結シグナル」または「ターミネーター」は、RNAポリメラーゼによるRNA転写の特異的な終結に関与するDNA配列からなる。従って、ある特定の態様において、RNA転写物の生成を終わらせる終結シグナルが意図される。望ましいメッセージレベルを得るために、ターミネーターがインビボで必要な場合がある。
【0122】
真核生物システムにおいて、ターミネーター領域はまた、新たな転写物を部位特異的に切断して、ポリアデニル化部位を曝露するのを可能にする特定のDNA配列も含んでよい。これは、約200のA残基(ポリA)の配列を転写物の3'末端に付加するように、特殊な内因性ポリメラーゼにシグナルを送る。このポリAテールで修飾されたRNA分子は安定性が高いように見られ、より効率的に翻訳される。従って、真核生物を伴う他の態様において、ターミネーターはRNA切断のためのシグナルを含むことが好ましく、ターミネーターシグナルはメッセージのポリアデニル化を促進することがより好ましい。ターミネーターおよび/またはポリアデニル化部位エレメントは、メッセージレベルを増強するのに、および/またはカセットから他の配列への読み過ごしを最小限にするのに役立ち得る。
【0123】
本発明における使用が意図されるターミネーターには、本明細書に記載のまたは当業者に公知の任意の公知の転写ターミネーターが含まれる。これには、例えば、遺伝子終結配列、例えば、ウシ成長ホルモンターミネーター、またはウイルス終結配列、例えば、SV40ターミネーターが含まれるが、これに限定されない。ある特定の態様において、終結シグナルは、転写可能な配列または翻訳可能な配列が欠けたもの、例えば、配列が切断されたために転写可能な配列または翻訳可能な配列が欠けたものでもよい。
【0124】
6.ポリアデニル化シグナル
発現、特に、真核生物での発現において、典型的には、転写物の適切なポリアデニル化をもたらすためにポリアデニル化シグナルが組み込まれる。ポリアデニル化シグナルがどういったものであるかは本発明の実施の成功に重要だと考えられておらず、および/またはこのような任意の配列を使用することができる。好ましい態様には、便利な、および/または様々な標的細胞において良好に機能することが知られている、SV40ポリアデニル化シグナルおよび/またはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが含まれる。ポリアデニル化は転写の安定性を高めてもよく、細胞質への輸送を容易にしてもよい。
【0125】
7.複製起点
宿主細胞においてベクターを増殖させるために、ベクターは、1つまたは複数の複製起点部位(しばしば「ori」と呼ばれる)を含有してもよい。複製起点部位は、複製が開始する特定の核酸配列である。または、宿主細胞が酵母であれば、自己複製配列(ARS)を使用することができる。
【0126】
8.選択マーカーおよびスクリーニングマーカー
本発明のある特定の態様において、本発明の核酸構築物を含有する細胞は、発現ベクター内にマーカーを含めることによってインビトロまたはインビボで同定することができる。このようなマーカーは同定可能な変化を細胞に付与し、それにより、発現ベクターを含有する細胞を容易に同定できるようになる。一般的には、選択マーカーは、選択を可能にする特性を付与するものである。正の選択マーカーは、マーカーが存在すると細胞の選択が可能になるものであるのに対して、負の選択マーカーは、マーカーが存在すると細胞の選択が妨げられるものである。正の選択マーカーの一例は薬物耐性マーカーである。
【0127】
通常、薬物選択マーカーの含有は、形質転換体のクローニングおよび同定を助ける。例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン(zeocin)、およびヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子が有用な選択マーカーである。条件実施に基づいて形質転換体の識別を可能にする表現型を付与するマーカーに加えて、比色分析を基本原理とするGFPなどのスクリーニングマーカーを含む他のタイプのマーカーも意図される。または、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などのスクリーニング可能な酵素を使用することができる。当業者であれば、免疫マーカーを、おそらくFACS分析と共に使用する方法も知っているであろう。使用されるマーカーは遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現できさえすれば、重要だと考えられていない。選択マーカーおよびスクリーニングマーカーのさらなる例は当業者に周知である。
【0128】
E.宿主細胞
本明細書で使用する「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養」という用語は同義に使用することができる。これらの全ての用語は、任意のおよび全ての次世代である子孫も含む。全ての子孫は、故意の変異または故意でない変異のために同一でなくてもよいことが理解される。異種核酸配列の発現という状況において、「宿主細胞」は原核細胞または真核細胞を指し、ベクターを複製することができる、および/またはベクターがコードする異種遺伝子を発現することができる任意の形質転換可能な生物を含む。宿主細胞は、ベクターまたはウイルスのレシピエントとして使用することができ、ベクターまたはウイルスのレシピエントとして用いられてきた(外因性ポリペプチドを発現しなければ、ベクターとしての資格がない)。宿主細胞には、改変タンパク質コード配列などの外因性核酸が宿主細胞に移動または導入されるプロセスを指す「トランスフェクト」または「形質転換」がなされてもよい。形質転換細胞は、初代対象細胞およびその子孫を含む。
【0129】
宿主細胞は、望ましい結果がベクターの複製であるか、またはベクターによりコードされる核酸配列の一部もしくは全ての発現であるかに応じて、原核生物に由来してもよく、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む真核生物に由来してもよい。非常に多くの細胞株および培養物が宿主細胞として使用するために入手可能であり、生きている培養物および遺伝物質の保存機関として働く組織であるアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)を通じて入手することができる(www.atcc.org)。適切な宿主は、ベクターバックボーンおよび望ましい結果に基づいて当業者により決定することができる。例えば、プラスミドまたはコスミドは、多くのベクターの複製用の原核宿主細胞に導入することができる。ベクターの複製用および/または発現用の宿主細胞として用いられる細菌細胞には、DH5α、JM109、およびKC8、ならびに多数の市販の細菌宿主、例えば、SURE(登録商標)コンピテント細胞およびSOLOPACK(商標)Gold細胞(STRATAGENE(登録商標), La Jolla, Calif)が含まれる。または、ファージウイルスの宿主細胞として大腸菌LE392などの細菌細胞を使用することができる。適切な酵母細胞には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。
【0130】
ベクターの複製用および/または発現用の真核宿主細胞の例には、HeLa、NIH3T3、Jurkat、293、Cos、CHO、Saos、およびPC12が含まれる。様々な細胞タイプおよび生物に由来する多くの宿主細胞が利用可能であり、当業者に公知である。同様に、ウイルスベクターが、真核宿主細胞または原核宿主細胞、特に、ベクターの複製または発現を許容する細胞と共に使用することができる。
【0131】
一部のベクターは、原核細胞および真核細胞の両方におけるベクターの複製および/または発現を可能にする制御配列を使用することがある。当業者であれば、細胞を維持し、ベクターの複製を可能にするために、前記の全ての宿主細胞をインキュベートする条件をさらに理解しているであろう。ベクターの大規模生成ならびにベクターがコードする核酸およびそのコグネイトポリペプチド、タンパク質、またはペプチドの生成を可能にする技法および条件も理解されており、公知である。
【0132】
F.遺伝子導入法
本発明の組成物を発現させる適切な核酸送達法は、本明細書に記載または当業者に公知の通り、核酸(例えば、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを含むDNA)を細胞小器官、細胞、組織または生物に導入することができる実質的に任意の方法を含むと考えられている。このような方法には、例えば、マイクロインジェクション(参照により本明細書に組み入れられる、Harland and Weintraub,1985;米国特許第5,789,215号)を含む、注入(米国特許第5,994,624号、同第5,981,274号、同第5,945,100号、同第5,780,448号、同第5,736,524号、同第5,702,932号、同第5,656,610号、同第5,589,466号、同第5,580,859号、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる);エレクトロポレーション(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,384,253号);リン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb, 1973; Chen and Okayama, 1987; Rippe et al., 1990);DEAE-デキストラン後のポリエチレングリコールの使用(Gopal, 1985);ダイレクトソニックローディング(direct sonic loading)(Fechheimer et al., 1987);リポソームを介したトランスフェクション(Nicolau and Sene, 1982; Fraley et al., 1979; Nicolau et al., 1987; Wong et al., 1980; Kaneda et al., 1989; Kato et al., 1991);微粒子銃(PCT出願WO94/09699およびWO95/06128;米国特許第5,610,042号;同第5,322,783号、同第5,563,055号、同第5,550,318号、同第5,538,877号、および同第5,538,880号。それぞれ参照により本明細書に組み入れられる);炭化ケイ素繊維を用いた攪拌(Kaeppler et al., 1990;米国特許第5,302,523号および同第5,464,765号。それぞれ参照により本明細書に組み入れられる);アグロバクテリウム(Agrobacterium)を介した形質転換(米国特許第5,591,616号および同第5,563,055号。それぞれ参照により本明細書に組み入れられる);またはPEGを介したプロトプラスト形質転換(Omirulleh et al., 1993;米国特許第4,684,611号および同第4,952,500号。それぞれ参照により本明細書に組み入れられる);乾燥/阻害を介したDNA取り込み(Potrykus et al., 1985)によるDNAの直接送達が含まれるが、これに限定されない。これらの方法などの技法を適用することによって、細胞小器官、細胞、組織、または生物を、安定してまたは一過的に形質転換することができる。
【0133】
G.脂質成分および脂質部分
ある特定の態様において、本発明は、核酸、アミノ酸分子、例えば、ペプチド、または別の低分子化合物に関連する1種類または複数の種類の脂質を含む組成物に関する。本明細書において議論される任意の態様において、前記の分子は、ポックスウイルスポリペプチドまたはポックスウイルスポリペプチドモジュレーター、例えば、ポックスウイルスポリペプチドの全てもしくは一部をコードする核酸、またはポックスウイルスポリペプチドモジュレーターの全てもしくは一部をコードするアミノ酸分子でもよい。脂質は、特徴として、水不溶性であり、有機溶媒で抽出可能な物質である。本明細書に具体的に記載されたもの以外の化合物が当業者により脂質と理解されており、本発明の組成物および方法に包含される。脂質成分および非脂質は互いに共有結合により結合してもよく、非共有結合により結合してもよい。
【0134】
脂質は天然の脂質でもよく、合成の(すなわち、人間が設計または生成した)脂質でもよい。しかしながら、脂質は、通常、生物学的物質である。生物学的脂質は当技術分野において周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテル結合およびエステル結合した脂肪酸を有する脂質ならびに重合可能な脂質、ならびにその組み合わせを含む。
【0135】
脂質と関連する核酸分子またはアミノ酸分子、例えば、ペプチドは、脂質を含有する溶液中に分散されてもよく、脂質と共に溶解されてもよく、脂質と共に乳化されてもよく、脂質と混合されてもよく、脂質と組み合わされてもよく、脂質に共有結合されてもよく、懸濁液として脂質中に含有されてもよく、または別の方法で脂質と関連してもよい。本発明の脂質または脂質/ポックスウイルス関連組成物は特定の構造に限定されない。例えば、本発明の脂質または脂質/ポックスウイルス関連組成物は溶液中に単に散在されてもよく、おそらく、サイズまたは形状が均一でない凝集物を形成する。別の例では、本発明の脂質または脂質/ポックスウイルス関連組成物はミセルとして二重層構造で存在してもよく、「崩壊した」構造を伴って存在してもよい。非限定的な別の例において、リポフェクタミン(Gibco BRL)-ポックスウイルスまたはSuperfect(Qiagen)-ポックスウイルス複合体も意図される。
【0136】
ある特定の態様において、脂質組成物は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%、またはおよびその中から得られる任意の範囲の、ある特定の脂質、脂質型成分、または非脂質成分、例えば、薬物、タンパク質、糖、核酸、または本明細書において開示される、もしくは当業者に公知の他の材料を含んでもよい。非限定的な例において、脂質組成物は、約10%〜約20%の中性脂質、および約33%〜約34%のセレブロシド、および約1%のコレステロールを含んでもよい。別の非限定的な例において、リポソームは、約4%〜約12%のテルペン、約10%〜約35%のホスファチジルコリン、および約1%の薬物を含んでもよく、ミセルの約1%は具体的にはリコペンであり、リポソームの約3%〜約11%は他のテルペンを含む。従って、本発明の脂質組成物は、脂質、脂質型、または他の成分のいずれかを任意の組み合わせまたはパーセント範囲で含んでもよいことが意図される。
【実施例】
【0137】
IV.実施例
以下の実施例は、本発明の様々な態様を例示する目的で示され、本発明を限定するものであると、いかようにも意図されない。当業者であれば、目的を実施し、記載された目標および利点、ならびに本明細書に内在する目的、目標、および利点を得るために、本発明は良好に適合されることを容易に理解するであろう。本実施例は、本明細書に記載の方法と共に、好ましい態様を現在代表するものであり、例示であり、本発明の範囲を限定するものと意図されない。当業者であれば、特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲内の変更および本発明の精神に包含される他の使用を考え付くであろう。
【0138】
JX-594によって誘導される血管閉塞およびその後の再灌流の機構を評価するために、マウスHCCモデルにおいて前臨床試験を行った。ソラフェニブが再灌流を遮る能力を評価した。第2相臨床試験では、HCC患者をJX-594腫瘍内注射によって2週間毎に3サイクルにわたって治療した。ベースライン、5日目、および8週目に、ダイナミック造影(dce)-MRIおよびDW-MRIによって腫瘍サイズ、血流、および密度を評価した。8週目に部分的な腫瘍再灌流を有する2人の患者は、標準的なソラフェニブ療法を開始し、連続DCE-MRIスキャンが行われた。
【0139】
マウスHCCモデルにおいてJX-594をIT投与またはIV投与した後に、腫瘍血管閉塞が証明された。血管閉塞はウイルス複製に依存した。ウイルスからのmGM-CSF発現および好中球浸潤がこの効果を増強した。時間とともに腫瘍周辺部に再灌流が証明され、腫瘍における高いVEGFレベルと相関関係にあった。アジュバントソラフェニブ療法が血管新生を阻害し、剤単独を超える著しく改善した抗腫瘍効果につながった。JX-594によって治療したHCC患者は、肝臓内の注射腫瘍および非注射腫瘍の両方で急性の腫瘍血管閉塞および壊死を示した。8週目の評価の後にソラフェニブアジュバント療法を行うと、2人の患者において劇的なかつ持続性の腫瘍壊死および血管閉塞が認められた。ソラフェニブを単独で投与したHCC患者からの連続MRIスキャンの調査から、これらの知見は、JX-594によって前処置した患者に特有のものであることが証明された。
【0140】
腫瘍は高い変異率を有し、従って、どの療法に対しても複雑な応答につながる高度の異質性を有し得るため、別々の作用機構を有するある特定の抗癌剤を組み合わせることは有用であることができる。腫瘍崩壊性ウイルス療法とソラフェニブの組み合わせが安全かつ有効であるかどうか判定するために、インビトロ前臨床実験およびインビボ前臨床実験を行った。
【0141】
実施例1
インビトロデータ-ソラフェニブはJX-594を阻害する
ヒトHCC細胞株PLC/PRF/5においてJX-594をソラフェニブと組み合わせて試験した。PLC/PRF/5ヒトHCC細胞株はJX-594複製を助ける。しかしながら、JX-594感染の2時間前、JX-594感染中、またはJX-594感染の2時間後にソラフェニブ(10μΜ)を添加すると、バーストサイズは1/100まで減少した(図1)。ヒト卵巣癌細胞株A2780およびヒトHCC株HepG2でも、JX-594をソラフェニブと組み合わせて試験した。
【0142】
細胞培養およびソラフェニブ調製:
ヒト腫瘍細胞株A2780(卵巣)およびHepG2(HCC)はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手した。10%FBSおよび1%pen/strepを添加したDMEM中で細胞を培養した。細胞を、5%CO2を含む加湿インキュベーターに入れて37℃で増殖させた。インビトロで使用するために、ソラフェニブをDMSO(Sigma-Aldrich Corp.)に1mg/mlの濃度まで溶解し、10%胎仔ウシ血清を添加したDMEMに溶解して適切な最終濃度(100ng/ml、250ng/ml、500ng/ml、1000ng/ml、および2500ng/ml)までさらに希釈した。最終溶液中のDMSOは0.2%(v/v)を超えなかった。
【0143】
プラーク形成、バーストアッセイ法、および細胞生存率:
A2780細胞またはHepG2細胞を6ウェルプレートに4x105細胞/ウェルで播種し、一晩放置した。次いで、100pfuのJX-594を各ウェルに添加し、2時間感染させた。感染が終わったら、培地を除去し、最終濃度が0μg/mL、0.1μg/mL、0.25μg/mL、0.5μg/mL、1.0μg/mL、および2.5μg/mLのソラフェニブを含有する3%カルボキシメチルセルロースDMEMオーバーレイを添加した。3日後に、プレートをクリスタルバイオレットで染色し、プラークを計数した。同時に、複製(バーストサイズ)を評価するために、6ウェルプレートを前記の通りに調製した。染色およびプラーク計数の代わりに、ウイルス精製のために各ウェルから細胞を回収した。3回の凍結融解の後に超音波処理を行うことによって細胞を溶解し、その後に、プラークアッセイ法によってウイルスを滴定するために、粗ウイルス溶解産物の連続希釈液をA2780細胞に添加した。さらに、細胞生存率に対するソラフェニブの直接的効果を評価するために、細胞を96ウェルプレートにプレートし、ソラフェニブのみとインキュベートした。生細胞によるテトラゾリウム塩からホルマザンクロマゲン(chromagen)への還元に基づく比色アッセイ法(Cell Counting Kit-8, Donjindo Laboratories, Kumamoto, Japan)によって、細胞生存率を求めた。
【0144】
結果:
細胞傷害レベル未満のソラフェニブ濃度は、A2780およびHEPG2腫瘍細胞株におけるウイルス増殖および複製を阻害することができる(図2)。さらなる実験から、SNU423、SNU398、SNU475、SNU449、SNU387を含む他のヒトHCC株およびヒト骨肉腫株U20Sにおいて、ソラフェニブはJX-594複製を阻害することが分かった。
【0145】
ソラフェニブはマルチキナーゼ阻害剤であり、細胞内セリン/スレオニンキナーゼRaf-1およびB-Rafを阻害することによってRasシグナル伝達経路(RAS/RAF/MEK/ERK)を阻害することができる。一般的には、癌ではRas/Raf経路が活性化され、その結果、チミジンキナーゼ(TK)などのS期遺伝子を含むE2F応答性遺伝子の転写が活性化される(Hengstschlager et al., 1994)。JX-594は、ウイルスTK遺伝子の不活性化によって弱毒化されているワクシニアウイルスである。この変異は、高レベルの細胞TKを有する細胞(すなわち、構成的E2F活性化につながる異常活性化経路を有する癌細胞)において選択的に複製するように設計されている。従って、ソラフェニブおよびJX-594は両方とも、Ras経路が活性化されている癌細胞を標的とするように設計されているが、インビトロにおけるこれらの療法の同時投薬が活性化Ras経路に依存するウイルス複製の阻害をもたらすことができる。
【0146】
実施例2
インビボデータ-ソラフェニブはJX-594を増強する
インビトロでの知見に反して、前臨床効果モデルから、ソラフェニブとJX-594の組み合わせの効果は剤単独より優れていることが分かった。
【0147】
ソラフェニブはインビボでマウスCT26原発腫瘍に対するJX-594活性を増強する:
皮下移植CT26結腸直腸腫瘍細胞のイムノコンピテントマウスモデルにおいて、JX-594とソラフェニブの組み合わせを試験した。Balb/cマウスに3x105個のCT26細胞を皮下注射し、11日後、ソラフェニブ単独(10mg/kg p.o. 2週間、毎日)、JX594単独(108 pfu IV 1週間、週3回)、または併用(JX594の後にソラフェニブまたはソラフェニブの後にJX594)を用いて治療を開始した(n=4/群) (図3、上パネル)。対照動物にはPBSのみを与えた。この実験のために、マウスGM-CSFを発現するJX-594バージョンを使用した。エンドポイントまで週2回、腫瘍を測定した。治療後、各時点での各研究群の生存率を示した(図3、真ん中のパネル)。治療後、各時点での各研究群の平均腫瘍体積を示した(図3、下パネル)。JX-594とソラフェニブの組み合わせはJX-594単独と比較して生存を延ばし、腫瘍量を減少させた。JX-594とソラフェニブの組み合わせはまたソラフェニブ単独の動物と比較して腫瘍量も減少させた。好ましいレジメンは、JX-594の後のソラフェニブであった。
【0148】
ソラフェニブはインビボでマウスB16黒色腫肺小結節に対するJX-594活性を増強する:
JX-594とソラフェニブの組み合わせを、B16黒色腫腫瘍のイムノコンピテントマウスモデルにおいて試験した。C57BL/6マウスに3x105個のB16-F10-LacZ細胞をIV注射し、ソラフェニブ単独(HD:10mg/kg、LD:50μg/kg p.o. 2週間、毎日)、JX594単独(107 pfu IV 1週間、週3回)、または併用(LDまたはHDソラフェニブの後にJX-594 IV)によって治療した(n=5/群)(図4、上パネル)。治療の終了時に、マウスを屠殺し、B16表面小結節を検出するために肺を固定および染色した(n=5/群)。各群について、研究終了時の腫瘍小結節の平均数を示した(図4)。50μg/kg p.o.ソラフェニブ+JX-594群では、B16腫瘍はJX-594単独群またはソラフェニブ単独群と比較して有意に少なかった。
【0149】
ソラフェニブはインビボでヒトHCC異種移植片モデルに対するJX-594活性を増強する:
SCIDマウスに皮下HepG2ヒト肝細胞癌異種移植片腫瘍を移植した。腫瘍が約12〜14mm最大直径のサイズに達したら、マウスを無作為化して、6つの治療群(n=8/群)(1)PBS単独、(2)ソラフェニブ単独(400μgを用いた標準的な毎日の腹腔内投薬)、(3)JX-594単独(静脈内治療。107pfu、毎週、合計6回の投与)、(4)JX-594およびソラフェニブを用いた同時治療、(5)ソラフェニブの後にJX-594、ならびに(6)JX-594(2回投与)の後にソラフェニブの1つにした。
【0150】
カリパスを用いて腫瘍サイズを測定し、倫理上の目的で腫瘍量が許容限度に達した場合に、マウスを安楽死させた。JX-594の後にソラフェニブを用いるレジメンは、腫瘍成長および腫瘍増殖停止時間の点で対照または剤単独より優れていた。さらに、この順序は、ソラフェニブの後のJX-594および同時治療より優れていた(図5)。
【0151】
A.血管閉塞の前臨床HCC腫瘍モデル研究
実験方法、パイロット実験:
パイロット実験は、HepG2モデルにおいてJX-594の後にソラフェニブを用いると急性血管閉塞が誘導されることを示すためにデザインした。3つの群を使用した(それぞれn=5匹の動物)。群1にはPBSのみを与えた。群2には、単一用量の106pfu JX-594を静脈内(IV)投与した。かつ群3には、単一用量の106pfu JX-594を腫瘍内(IT)投与した。VEGFレベルおよびGM-CSFレベルを測定するために、D5において血清試料を収集した。安楽死前に、腫瘍灌流を視覚化するためにマウスに蛍光マイクロスフェアを注射した。分析のために、切除した腫瘍を3つの部分に分けた。(1)VEGFタンパク質レベルを測定するために、瞬間凍結試料、(2)マイクロスフェアおよび血管マーカーCD31を視覚化するために、凍結腫瘍切片のOCT包埋試料調製物、ならびに(3)組織学的分析のために、ホルマリン固定/パラフィン包埋試料。
【0152】
実験方法、血管分布研究:
この研究は、血管分布に対する長期的効果を追跡し、HepG2モデルにおけるJX-594+/-ソラフェニブの効果を評価した。HepG2(ヒトHCC株)腫瘍をヌードマウスに皮下移植した。剤単独および併用を試験するために、動物を7つの治療群(n=5/群)に無作為化した。(図6)に詳しく記載したスケジュールで、群をJX-594(106pfu腫瘍内、D1およびD8)ならびに/もしくはソラフェニブ(400μg i.p.、毎日、D15〜D29)またはPBS(対照)によって治療した。カリパスを用いて、腫瘍を週2回、測定した。VEGFレベルおよびGM-CSFレベルを測定するために、血清試料をD1、D8、D15、D22、およびD29に収集した。D22またはD35にマウスを安楽死させた。安楽死前に、腫瘍灌流を視覚化するためにマウスに蛍光マイクロスフェアを注射した。分析のために、切除した腫瘍を3つの部分に分けた。(1)VEGFタンパク質レベルを測定するために、瞬間凍結試料、(2)マイクロスフェアおよび血管マーカーCD31を視覚化するために、凍結腫瘍切片のOCT包埋試料調製物、ならびに(3)組織学的分析のために、ホルマリン固定/パラフィン包埋試料。
【0153】
結果:
CD31染色OCT腫瘍切片において血管を計数した。200×倍率の3つの視野における平均血管数を(図6)に示した。ソラフェニブ単独は一過的な血管数減少を引き起こしたが(29日目)、時が経つにつれて血管数は再び増えた(35日目)。しかしながら、JX-594の後にソラフェニブを与えた動物では、D35での血管数はソラフェニブ単独群と比較して少なかった。このことは、腫瘍脈管構造に対する併用の効果が長く続くことを示唆している。
【0154】
B.臨床データ
JX-594は、選択的に癌細胞の中で複製し、癌細胞を破壊するように設計された画期的な標的化腫瘍崩壊性ポックスウイルスである。直接的な腫瘍崩壊に加えて顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)発現も動物腫瘍モデルにおける腫瘍血管閉塞を刺激する。肝細胞癌患者におけるJX-594療法後の腫瘍血管閉塞を評価した。さらに、JX-594後の再灌流を阻止するためにソラフェニブを用いたアジュバント抗血管新生療法の実現可能性を、肝細胞癌(HCC)の前臨床研究および臨床研究の両方において研究した。
【0155】
方法:
JX-594によって誘導された血管閉塞およびその後の再灌流の機構を評価するために、マウスHCCモデルにおいて前臨床試験を行った。ソラフェニブが再灌流を遮る能力を評価した。第2相臨床試験では、HCC患者を、JX-594腫瘍内注射によって2週間毎に3サイクルにわたって治療した。ベースライン、5日目、および8週目に、ダイナミック造影(DCE)-MRIおよびDW-MRIによって腫瘍サイズ、血流、および密度を評価した。8週目に部分的な腫瘍再灌流を有する5人の患者は、標準的なソラフェニブ療法を開始し、連続dce-MRIスキャンが行われた。
【0156】
知見:
マウスHCCモデルにおいてJX-594をIT投与またはIV投与した後に腫瘍血管閉塞が生じる。血管閉塞はウイルス複製に依存した。ウイルスからのmGM-CSF発現および好中球浸潤がこの効果を増強した。時間とともに腫瘍周辺部に再灌流が証明され、腫瘍における高いVEGFレベルと相関関係にあった。アジュバントソラフェニブ療法が血管新生を阻害し、剤単独を超える著しく改善した抗腫瘍効果につながった。JX-594によって治療されたHCC患者は、肝臓内の注射腫瘍および非注射腫瘍の両方で急性の腫瘍血管閉塞および壊死を示した。8週目の評価の後にソラフェニブを用いてアジュバント療法を行うと、少なくとも3人の患者において劇的なかつ持続性の腫瘍壊死および血管閉塞が認められた。ソラフェニブを単独で投与した15人のHCC患者からの連続MRIスキャンの調査から、これらの知見は、JX-594によって前処置した患者において増強および強化されることが証明された。
【0157】
JX-594はHCC腫瘍において急性の血管閉塞および壊死を引き起こし、後のソラフェニブ療法に対してHCCを感作させる。JX-594の後にソラフェニブを用いる無作為化対照試験対ソラフェニブ単独の無作為化対照試験を示した。腫瘍崩壊性ポックスウイルスの後に抗血管新生剤を用いる連続療法レジメンは有望である。
【0158】
序論:
標的化腫瘍崩壊性ポックスウイルスJX-594は選択的に癌細胞の中で複製するので、腫瘍組織内でウイルス子孫の生成、腫瘍細胞の壊死、放出、蔓延が起こる。JX-594はまた、腫瘍崩壊に起因する抗腫瘍免疫を増強するためにGM-CSF導入遺伝子を発現するように操作されている。ワクシニアバックボーンは、本質的には、EGFR-ras経路依存性およびインターフェロンに対する腫瘍耐性のために腫瘍選択性である。固有の治療指数はTK欠失によって増幅される。JX-594複製は細胞TKに依存し、細胞TKは癌では細胞周期異常によって高レベルになっている。難治性肝臓腫瘍患者におけるJX-594第1相臨床試験からの結果から、JX-594複製の安全性、効果、および機械的概念証明(mechanistic proof-of-concept)、全身播種、ならびに生物学的に活性なGM-CSF発現が証明された。最近公表された前臨床試験から、腫瘍崩壊性ウイルス療法が急性腫瘍血管閉塞も誘導できることが証明された(Breitbach, et al. 2007)。
【0159】
本発明者らは、腫瘍崩壊性ポックスウイルスJX-594が腫瘍血管閉塞を引き起こし、このウイルスからのGM-CSF発現が好中球の動員および活性化を増強して抗血管効果を増大させると考えている。前臨床試験後に、本発明者らは、異常に血管の多い腫瘍タイプであるHCCを有する患者において腫瘍血管閉塞を評価する。前臨床研究および臨床研究から、血管形成した腫瘍周辺部が後で進行する可能性が証明された。
【0160】
ソラフェニブは、腎細胞癌(RCC)および肝細胞癌(HCC)治療のために認可された経口マルチキナーゼ阻害剤である。ソラフェニブは、表面チロシンキナーゼ受容体(VEGF-R、PDGF-R)および細胞内セリン/スレオニンキナーゼ(Raf-1、B-Raf)を阻害し、従って、マルチメカニズム抗癌剤である。ソラフェニブは、癌細胞において通常、活性化され、細胞増殖を促進するRasシグナル伝達経路(RAS/RAF/MEK/ERK)を直接阻害することによって腫瘍細胞に影響を及ぼすことができる。ソラフェニブもVEGF-R阻害に起因する抗血管新生効果を介して腫瘍成長を弱めることができる。スーテント(スニチニブ/SU11248)は、血管内皮増殖因子(VEGF)の作用を阻害し、抗血管新生効果を有する別の標的化癌療法である。これは、腎細胞癌および消化管間質腫瘍(GIST)の治療のために認可された。
【0161】
本発明者らは、JX-594後の再灌流が、HCC患者における使用に認可されている抗血管新生剤ソラフェニブまたはRCC患者における使用に認可されているスーテントによって遮られると考えている。本発明者らは、この仮説を前臨床HCCモデルおよびJX-594療法終了後の5人の患者において試験した。
【0162】
C.材料および方法
研究の認可および登録:
研究プロトコールおよびインフォームドコンセントフォームは、米国FDA、韓国FDA、および韓国、釜山にある釜山大学医学部付属病院の施設内審査・感染対策委員会(Institutional Review and Infection Control Committees)にる認可を受けた。このプロトコールは、ワールドワイドウェブを介してclinicaltrials.gov.に登録された。
【0163】
患者の選択:
医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)ガイドラインに従って、患者からインフォームドコンセントを得た。組み入れ規準には、標準療法による治療にもかかわらず進行した(難治性の)肝臓内の切除不能、注射可能な肝細胞腫瘍(原発性HCC)、正常な造血機能(白血球数>3、x109細胞/L、ヘモグロビン>100g/L、血小板数>60x109細胞/L)、および臓器機能(クレアチニン<132.6μmol/L、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)<2・5の正常上限、Child-PughクラスAまたはBを含む)、平均余命>16週、ならびにカルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)>70が含まれた。除外基準には、肝外腫瘍、腫瘍>10cm最大直径、高いワクチン接種合併症(例えば、免疫抑制、湿疹)リスク、4週間以内の免疫抑制剤または癌治療剤による治療、急速進行性の腹水、妊娠または授乳が含まれた。
【0164】
JX-594の製造および調製:
JX-594は、ヒトCSF2遺伝子およびLacZ遺伝子をそれぞれ、合成初期後期プロモーターおよびp7・5プロモーターの制御下でTK遺伝子領域に挿入することによって改変されたワクシニアWyeth株である。臨床試験材料(CTM)を、医薬品の製造および品質管理に関する基準(GMP)ガイドラインに従ってVero細胞において作製し、スクロース勾配遠心分離法によって精製した。ゲノム対pfu比は約70:1であった。JX-594を、10%グリセロール、138mM塩化ナトリウムを含むリン酸緩衝食塩水,pH7・4において製剤化した。最終製品の品質管理放出試験には、無菌性、エンドトキシン、および抗力のアッセイ法が含まれた。CTMをGM-CSFタンパク質濃度についても試験し、陰性であった(検出下限<14,000pg/mL)。JX-594を、標的腫瘍の推定総体積の25%に相当する体積の0・9%生理食塩水で希釈した。
【0165】
JX-594治療手順:11301(スーテント患者)を除く全てのIT患者:
切除不能なHCCを有する患者を無作為化して、2種類の用量レベル(108pfuまたは109pfu)のうち1つを与えた。ほぼ球状の腫瘍には、いくつかに分岐したQuadrafuse注射針を用いたイメージングガイド下腫瘍内注射を介して、不規則な形状の腫瘍には、21ゲージPEIT(経皮エタノール注射、マルチポア;HAKKO Medicals; Tokyo, Japan)針によってJX-594を投与した。2週間毎に3サイクルにわたって腫瘍(n=1〜5)に注射した。サイクル1において注射した同じ腫瘍に、後の各サイクルにおいて注射をした。
【0166】
JX-594後のソラフェニブ療法および腫瘍応答評価:
研究をして8週間後に、患者はJX-594 IT臨床試験を終了した。この後に、一部の患者(患者1702、1705、1002、1712、1713)には標準的なソラフェニブ治療(400mg 1日2回 p.o.)を与えた。JX-594治療に対する応答を評価するのに用いられた同じ手順を用いてDCE-MRI画像化によって、これらの患者における腫瘍を追跡した。
【0167】
JX-594治療手順、IV JX-594、IT JX-594、ソラフェニブの順で治療した患者:
切除不能なHCCを有する患者に、JX-594レベル(109pfu)の2種類の用量を与えた。1回目の投与(1日目)の場合、JX-594を静脈内注入によって60分間にわたって投与した。2回目の投与および3回目の投与(8日目および22日目)の場合、ほぼ球状の腫瘍には、いくつかに分岐したQuadrafuse注射針を用いたイメージングガイド下腫瘍内注射を介して、または不規則な形状の腫瘍には、21ゲージPEIT(経皮エタノール注射、マルチポア;HAKKO Medicals; Tokyo, Japan)針によって、JX-594を投与した。25日目から、患者は経口ソラフェニブ療法(400mg 1日2回 p.o.)を模倣した。生存腫瘍組織を有する患者には、12週目にJX-594をIT注射した(このブースター注射の2〜3日前、このブースター注射の間、およびこのブースター注射の4〜5日後に、ソラフェニブ治療は一時中断した)。応答を評価するために、画像化(CT、DECE MIR、および/またはPET-CT)をベースライン、25日目、6週目、および/または12週目に行った。
【0168】
JX-594治療、患者11301(スーテント患者):
患者11301には、肝臓に転移した腎細胞癌があった。21ゲージPEIT針を用いた腫瘍内注射によって肝臓腫瘍を治療した。患者に、合計4回のJX-594(109pfu/用量)を3週間あけて与えた(=4サイクル)。2回の治療サイクル毎に、造影CTスキャニングを行い、RECIST基準およびChoi基準を用いて6週目の応答評価を行った。患者は、RECIST基準による安定病態(SD)およびChoi応答(42%のHU減少)を経験した(Park et al., 2008)。
【0169】
スーテント治療:
引き続き、患者11301は進行して、続けてスーテント治療が与えられた。患者に、3コースの50mg/日(4週間継続、2週間中断)、次に、3コースの37.5mg/日(4週間継続、2週間中断)を与え、25mg/日(2週間継続、1〜2週間中断)のスケジュールで維持した。
【0170】
腫瘍血管分布および応答評価:
DCE MRI(ダイナミック造影磁気共鳴画像法)を、スクリーニング(ベースライン)、5日目(任意)、および8週目に行った。ソラフェニブを与えた患者には、ソラフェニブ治療を開始して4週間後および/または8週間後にDCE MRIを行った。DCE MRIは、腫瘍サイズ、血管分布、および壊死を評価する。スクリーニング/ベースラインDCE MRIは、腫瘍増殖停止時間および奏効率を求めるための基準として使用した。5日目(任意)DCE MRIを用いて、急性血管閉塞などの初期効果を評価した。腫瘍進行状況およびJX-594に対する腫瘍応答は、8週目の再診時に、修正RECIST基準および修正Choi基準によって放射線学的に評価した。MRIスキャンにおいて肝細胞癌を評価する専門知識のある放射線科医が独立して画像を検査した。肝内腫瘍を評価するために、客観的な「完全」抗腫瘍応答または「部分的」抗腫瘍応答を有する対象の割合を、修正RECIST、および修正Choi基準によって測定された応答(最長直径の合計の>10%減少および/またはMRIにおける平均腫瘍シグナル強度の>15%減少として定義した)に基づいて求めた。
【0171】
修正RECISTによる腫瘍応答:
腫瘍応答および腫瘍進行を測定するためのRECISTに対する修正は以下の通りであった。治療中または治療後に肝臓内に発症した新たな腫瘍を測定した。これらの最大直径を、全ての肝内腫瘍の最大直径の合計に算入した。しかしながら、肝臓内の新たな腫瘍は、進行それ自体のエビデンスとみなさなかった。このRECIST基準修正の理由は以下の通りである。放射線撮影によって最初に検出できなかった腫瘍塊にJX-594が感染すると、その腫瘍は、炎症および/または壊死のために新しい腫瘍かつ/または進行した腫瘍のように見える場合がある。しかしながら、これらの変化は真の腫瘍進行を表すものではない。さらに、治療目標は肝内腫瘍量を管理することであったので、腹部において肝外に検出された新たな腫瘍に注目し(場所を記録した)が、全体応答の決定に算入しなかった。従って、腫瘍の応答または進行は、測定可能な肝内腫瘍の最長直径の合計によって求められ、以下の通りに求められた。完全寛解(CR):全ての腫瘍の消失。部分寛解(PR):腫瘍のLD合計の少なくとも30%の減少。ベースライン合計LDを基準とする。進行性疾患(PD):腫瘍のLD合計の少なくとも20%の減少。ベースライン合計LDを基準とする。安定病態(SD):PRとするには縮小が十分でなく、PDとするには増加が十分でない。ベースライン合計LDを基準とする。
【0172】
修正Choi基準による腫瘍応答:
Choi応答基準は腫瘍直径に加えて腫瘍密度の変化を考慮に入れ(対RECIST)、この有用性を裏付けるデータが公表されている(Choi et al. 2004)。Choi et al. (2004)が消化管間質腫瘍において記載した通り、初期研究から、JX-594によって治療された肝臓腫瘍はサイズ減少が同時に起こることなく大きな内部壊死を発症できることが分かっている。従って、肝内腫瘍も測定し、修正Choi基準を用いて応答を評価した。DCE MRIが、腫瘍応答測定に使用した画像化モダリティーであったので、基準の修正は必要である。MRIには、CTのハウンスフィールド単位と同様のコントラスト密度測定の標準化システム(standardized system)がないので、ベースラインおよび治療後の腫瘍のパーセントエンハンスメントの比較は、関心対象領域(ROI)シグナル強度(SI)測定を用いて行った。スクリーニング/ベースラインDCE MRIは応答を求めるための基準として使用した。修正Choi基準による応答は、注射腫瘍の最長直径の合計の>10%減少および/またはMRIにおける注射腫瘍の平均シグナル強度の>15%減少と定義した。平均MRIシグナル強度(SI)を腫瘍のパーセントとして測定した。
【0173】
MRI画像化プロトコール:
プロトコールに定められた時点で、各患者に、ダイナミック造影磁気共鳴画像法(DCE MRI)を含む腹部MRIを行う。画像化は、1.5T MRシステムまたは3.0T MRシステムにおいて、患者を仰臥位にして肝臓の全範囲が画像化されるように配置されたボディ/トルソアレイコイルを用いて行う。肝臓の上に誘電体パッド(dielectric pad)を置いてもよい。
【0174】
典型的には、患者の再診間で画像化パラメータを固定する。以下のシーケンスは許容可能なパラメータ範囲を列挙するが、患者に初回スキャンを行ったら、これらのパラメータを後の全てのスキャンにおいて使用しなければならない。さらに、同じMRIスキャナーを用いて患者をスキャンしなければならない。
【0175】
静脈内ラインを開始した後に、生理食塩水をKVOで流しながら、実行可能な最大ゲージカテーテルを末梢静脈に入れて調べる。または、自動造影剤注入器と適合するPICCラインまたは外部静脈カテーテルポートを有する患者の場合、静脈にアクセスするために、これらを使用してもよい。細胞外ガドリニウムキレート造影剤を、自動注入器を介して0.1mmol/kgの用量および2cc/秒の速度で静脈内大量瞬時投与注射によって投与した後に、20cc食塩水をすぐに注射する。CRFでは、注射速度もしくは用量からのずれまたは造影剤血管外漏出に注意する。
【0176】
1.5テスラMRシステム用の画像化プロトコール:
以下のパルスシーケンスを行う。
【0177】
造影前の画像化:
(1)2Dアキシャル同位相(In Phase)および逆位相(Opposed Phase)T1:T1強調スポイルドグラジエントエコー(T1-weighted spoiled gradient echo)(SPGR)デュアル位相アキシャル画像(TR:できるだけ短く;TE:2.1および4.2;フリップ角(FA):80〜90度、スライス厚5〜7mm、スライスギャップ最大1mm;位相エンコード160〜192、256x256に内挿;視野を患者の体型に合わせて最適化する、300〜450mm。(2)2D FSE T2アキシャル:TR:3500〜5000msec(有効);TE:60〜88msec;位相エンコード:160〜256x256;視野は患者の体型に合わせて最適化する、300〜450mm;スライス厚、5〜7mm;最大スライスギャップ1mm;画像化は脂肪抑制を用いて行わなければならない。呼吸同期法または他の体動抑制法が推奨される。
【0178】
DCE-MRI:
(3)3D T1ダイナミック画像化:このシーケンスの合計6セットを行う:1回の造影前、4回の造影直後、および1回の5分遅延画像セット。3D T1強調脂肪抑制収集のパラメータは以下の通りである:TR=2.0〜4.5msec;TE=1.42〜2.0msec;フリップ角、8〜12°;位相エンコード160〜192、512x512に内挿する;視野を患者の体型に合わせて最適化する、300〜450mm;内挿セクション厚(interpolated section thickness)、1.5〜3mm;肝臓を完全にカバーするスラブ厚。
【0179】
最初のコントラスト増強収集(肝動脈位相)のタイミングを求めるために、1〜2mL試験大量瞬時投与量の造影剤を投与し、循環時間(動脈増強のピークとなる時間)を収集遅延時間として設定する。または、動脈位相増強を求めるために自動タイミングソフトウェアが利用可能であれば、これも使用することができる。4回の造影後ダイナミックシーケンスを、各収集の間に40秒の時間空白をあけて行う。注射して5分後に、さらなる遅延シーケンスも収集する(合計5回の造影後シーケンス)。全ての収集を、施設での診療に基づいて吸息または呼息いずれかの呼吸停止中に行う。システムは、造影前シーケンスと造影後シーケンスの間でチューニングを変えない。CRFでは、この画像化プロトコールからのずれに注意する。
【0180】
3.0テスラMRシステム用の画像化プロトコール:
以下のパルスシーケンスを行う。
【0181】
造影前の画像化:
(1)T1w 2Dアキシャル同位相(IP)および反対位相(Out-of-Phase)(OP):デュアル位相スポイルドグラジエントエコー(SPGR)
FOV:体型に合わせて最適化する、300〜450mm;TR:肝臓をカバーする最小値;TE:同位相および逆位相TEにおけるデフォルト;フリップ角:80〜90度;スライス厚:5〜7mm;ギャップ:0〜1mm(0mmギャップが好ましい);周波数マトリクス:320;位相エンコード:160〜224、512x512に内挿;脂肪飽和:オフ;帯域幅:デフォルト設定。
【0182】
(2)T2w 2DアキシャルSSFSE
FOV:前記の(1)と同じものを使用する;TR:完全な肝臓を画像化するのに有効な最短のTR;TE 有効:60〜88msec;スライス厚:(1)と同じものを使用する;ギャップ:(1)と同じものを使用する;周波数マトリクス:320;位相エンコード:160〜224、512x512に内挿;脂肪飽和:オフ。
【0183】
(3)T2w 2DアキシャルFSE
この場合、呼吸同期法を用いた自由呼吸下または息止め下の画像化を使用することができる。しかしながら、これは患者試験の中で統一される。例えば、呼吸同期法を用いてベースラインで患者をスキャンするのであれば、後の全てのMR試験では、このシーケンスと共に呼吸同期法が用いられる。呼吸同期法が用いられるのであれば、12〜20のエコートレインレングスを使用しなければならならず、同様に、最適なシグナル対ノイズのために十分な励起/収集でなければならない。息止め下のT2画像化が行われる場合には、24〜32のエコートレインレングスおよび1回の収集を行う。FOV:前記の(1)と同じものを使用する。TR 有効:3500〜5000;スライス厚:(1)と同じものを使用する;ギャップ:(1)と同じものを使用する;周波数マトリクス:320;位相エンコード:160〜224、512x512に内挿;脂肪飽和:オン。DCE MRI
【0184】
(4)T1w 3Dアキシャルスポイルドグラジエントエコー(SPGR)
FOV:前記の(1)と同じものを使用する;TR:2〜5msec;TE:1.4〜2.5;フリップ角:8〜15;スライス厚:1.5〜3mm内挿;スラブ厚:肝臓全体をカバーする;周波数マトリクス:288〜320;位相エンコード:160〜224、512x512に内挿;脂肪飽和:オン。スキャンの回数:合計5回(1回の造影前スキャンおよび4回の造影後スキャン、その後に、造影剤を注射して5分後に5回目のスキャン)。全てのスキャンを、標準的な施設での診療1回につき息を吸って止めるか、吐いて止めて呼吸停止中に行う。
【0185】
D.臨床試験データ:JX-594治療後、5日目の腫瘍および結腸直腸癌腫瘍における血管閉塞
灌流CTによって測定された急性血管閉塞は、JX-594腫瘍内注射によって直接治療された腫瘍において以前に見られた(Liu et al., 2008)。本発明者らは、JX-594治療に応答した血管閉塞および腫瘍壊死の経過を追跡するために、腫瘍灌流低下を追跡するDCE MRI分析を適用した。5日目の任意のDCE-MRIスキャニングによる新たな臨床試験に登録した16人の患者のうち13人に、このようなスキャンを行った。肝細胞癌(HCC)患者において、さらなる血管閉塞症例がある(図7)。
【0186】
以前に分析されたHCC例では、腫瘍灌流低下を引き起こすために腫瘍に直接注射することが必要だと思われていた(図1、Liu et al., 2008)。このデータから、JX-594の遠隔適用に応答して非注射腫瘍において血管閉塞が起こるとは予想されなかった。今や、本発明者らは初めて、この応答を得るために全ての腫瘍に注射する必要はなく、離れている非注射腫瘍も血管閉塞することを示す(図8および図9)。
【0187】
さらに、本発明者らは、HCCより血管形成が少なく(図9)、従って、潜在的に血管が変化する可能性が低いと考えられている腫瘍タイプである、結腸直腸癌(CRC)の肝臓をベースとする転移を有する患者において証明された通りに、非HCC腫瘍においてJX-594が血管閉塞を引き起こすことができることを明示している。
【0188】
例 1703:
患者1703は肝細胞癌を有し、JX-594第2相臨床試験に登録された。単一の大きな腫瘍の中にJX-594を注射した(109pfu/用量)。5日後に、DCE MRIは急性血管閉塞を示した(上部の黒色パネルおよび白パネル)(図9)。下パネルは、血管閉塞/腫瘍壊死の程度を定量するために用いられたセグメンテーション分析の一例を示す(下パネル)(図7)。
【0189】
例 1708:
患者1708は、肝臓の中に複数の腫瘍がある肝細胞癌を有し、JX-594第2相臨床試験に登録された。肝臓腫瘍の全てではないが一部にJX-594を注射した(108pfu/用量の総用量)。5日後に、DCE MRIは、肝臓をベースとする注射腫瘍および非注射腫瘍において急性壊死/血管閉塞を示した。図8は、JX-594治療前およびJX-594治療後の両方の画像を含む2種類の平面を示す。
【0190】
例 0204:
患者0204は結腸直腸癌があり、肝臓、肺およびリンパ節に存在する転移があり、JX-594第2相臨床試験に登録された。肝臓転移の全てではないが一部にJX-594を注射した(109pfu/用量の総用量)。5日後に、DCE MRIは、肝臓をベースとする注射腫瘍および非注射腫瘍において急性壊死/血管閉塞を示した(図9)。
【0191】
E.臨床試験データ:JX-594はソラフェニブおよびスーテントの抗VEGF療法を強化する
JX-594治療終了後8週目に再灌流を示した5人の患者は、続いて標準的なソラフェニブ投薬(400mg 1日2回)を受けた。Choi応答の向上が見られた(表A)。これらの応答は、JX-594治療単独に対する全ての初期Choi応答を上回っていた(図11、図12、および図13)。
【0192】
(表A)JX-594の後にソラフェニブによって治療した患者におけるChoi応答の向上

【0193】
例 ソラフェニブ単独「対照群」(図を含む):
歴史的に見て、ソラフェニブ単独に対するRECIST奏効率は1〜2%である(Llovet et al., 2008; Cheng et al., 2009)。Choi基準によって評価された局所対照群については、JX-594を与えず、ソラフェニブを与えたHCC患者のChoi応答を評価した。5人のJX-594患者のうち4人を治療した病院において、同じ期間に他の26人の患者にソラフェニブを与えた。応答評価の前に7人の患者が死亡し、15人の患者のChoi応答を評価した。ソラフェニブ単独患者のうち2人しかChoi+応答を示さなかった(合計26人;15人をChoi応答について評価した)。これらの患者はいずれもソラフェニブ療法と一緒に放射線療法を受けていたことに留意すべきである。比較すると、この期間中にJX-594療法の後にソラフェニブ療法が与えられた2人の患者にはChoi+応答があった(図10)。これは、腫瘍に対するソラフェニブ効果の驚くべきかつ並外れた改善である。
【0194】
MRIスキャンを用いて腫瘍壊死を評価したソラフェニブ単独臨床試験では、いくつかの肝腫瘤は中心腫瘍壊死を示し、平均腫瘍壊死がベースラインでは9.8%から数回の治療コース後には27%と中等度に増加した(Abou-Alfa et al., 2006)。
【0195】
例 1702:
患者1702は肝細胞癌を有し、JX-594第2相臨床試験に登録され、3回のJX-594腫瘍内投与(2週間あけて与えた109pfu/用量)が与えられた。この患者は、修正Choi基準を用いてJX-594に対する応答を評価できなかったが、8週目スキャンは、修正RECIST基準を用いて注射腫瘍において安定病態(SD)を示したが、新たな腫瘍が発生したために進行性疾患(PD)を示した。従って、続いて、患者1702には、8週間にわたる標準的なソラフェニブ治療コース(200mg 1日2回 p.o.)を与えた。ソラフェニブ治療の4週間後および8週間後に撮影したDCE MRIスキャンは急性腫瘍壊死を示した。図は、3種類の平面を示した。左側の画像は、ソラフェニブ治療の4週間後からの画像であり、右側の画像は、ソラフェニブ治療の8週間後からの画像である(図11)。
【0196】
例 1705:
患者 1705は肝細胞癌を有し、JX-594第2相臨床試験に登録された。JX-594を最初に投与して5日後に、DCE MRIによって、著しい灌流低下から腫瘍に血管閉塞が生じたことが確認された(上パネル)。JX-594投与(2週間あけて与えた108pfu/用量の3回の腫瘍内投与)が終了した後に、8週目スキャンは修正CHOI基準により応答を示したが(-36%)、修正RECIST基準により進行性疾患(PD)を示した。従って、続いて、患者 1705には、4週間にわたる標準的なソラフェニブ治療コース(400mg 1日2回 p.o.)を与えた。4週目に撮影したDCE MRIスキャンは急性腫瘍壊死を示した(下右パネル)。(図12、図15、図16)。
【0197】
例 1712:
患者1712は肝細胞癌を有し、JX-594第2相臨床試験に登録された。JX-594投与(2週間あけて与えた109pfu/用量の3回の腫瘍内投与)が終了した後に、8週目スキャンは修正CHOI基準により応答を示したが(-33%)、修正RECIST基準により進行性疾患(PD)を示した。患者1712には、4週間にわたる標準的なソラフェニブ治療コース(400mg 1日2回 p.o.)を与えた。4週目に撮影したDCE-MRIスキャンは急性腫瘍壊死を示した(図13)。
【0198】
例 11301、スーテント患者:
スーテントは、VEGF活性および血管新生を阻害する、腎細胞癌(RCC)に対して認可された別の標的化癌療法である。患者11301は、肝臓に転移したRCCを有し、肝臓をベースとする腫瘍を治療するためのJX-594第1相臨床試験に登録された。2コースのJX-594投与(3週間あけて与えた109pfu/用量の腫瘍内投与)が終了した後に、6週目の評価はRECISTにより安定病態を示した。患者には、もう2回のJX-594治療コースを与えたが、1個の肝臓腫瘤および大きな(14cm)腹部腫瘤が進行した。従って、次に、患者1705にスーテント療法を行った。低ヘモグロビンおよび肝臓転移の程度に基づいて患者の予後は不良であった(Motzer et al., 2006)。驚いたことに、この後に、患者の腫瘍の全てが完全寛解した(図14)。全身PETスキャニングはシグナルを示さなかった。JX-594治療後の生存は3年+である(患者は今なお生存している)。比較すると、10cmを超える腫瘍におけるスーテント単独の歴史上のRCC完全寛解率は0%である。予後不良のRCC患者のうち、3年間生存した患者は5%未満である。
【0199】
例 JX16-HCC-03、IV+IT+IT+ソラフェニブ患者:
患者JX16-HCC-03は肝細胞癌を有し、JX-594第2相臨床試験に登録された。JX-594投与(1回の静脈内投与および2回の腫瘍内投与)が終了した後に、患者にソラフェニブを与えた。ソラフェニブを開始して10日後に、DCE-MRIスキャンは非注射肝外腫瘍における灌流消失を示した(図18)。
【0200】
本明細書に開示および請求された組成物および方法は全て、本開示を考慮して過度の実験なく作成および実施することができる。本発明の組成物および方法が好ましい態様に関して説明されたが、本発明の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および/または方法ならびに本明細書に記載の方法の工程または工程の順序に変更を加えることができることは当業者に明らかであろう。さらに具体的には、化学的および生理学的の両方に関連しているある特定の剤を本明細書に記載の剤の代わりに使用することができ、同時に、同一の結果または類似の結果が得られることは明らかであろう。当業者に明らかな、このような全ての類似の代用および変更は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神、範囲、および概念の範囲内と考えられる。
【0201】
参照文献
以下の参照文献は、例示的な手順の詳細または本明細書に記載のものを補足する他の詳細を示す程度まで、参照として本明細書に特に組み入れられる。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗血管新生剤の有効量を投与する工程を含む、ポックスウイルス療法が以前に行われた対象において癌を治療する方法。
【請求項2】
ワクシニアウイルス療法が、GM-CSFを発現するワクシニアウイルスを含んでいた、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ワクシニアウイルスが機能的チミジンキナーゼ遺伝子を欠如している、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記抗血管新生剤がキナーゼ阻害剤である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記キナーゼ阻害剤がRafキナーゼ経路を阻害する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記キナーゼ阻害剤がソラフェニブである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
腫瘍が血管再生しているかどうか判定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
腫瘍の血管再生を判定する工程が、該腫瘍の非侵襲的画像化による、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記非侵襲的画像化が磁気共鳴画像法(MRI)である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記磁気共鳴画像法がダイナミック造影MRI(dce-MRI)である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
ワクシニアウイルス投与から少なくとも5週間後、6週間後、7週間後または8週間後に、前記抗血管新生剤を投与する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記腫瘍が、脳腫瘍、頭頸部癌腫瘍、食道腫瘍、皮膚腫瘍、肺腫瘍、胸腺腫瘍、胃腫瘍、結腸腫瘍、肝臓腫瘍、卵巣腫瘍、子宮腫瘍、膀胱腫瘍、精巣腫瘍、直腸腫瘍、乳房腫瘍、腎臓腫瘍、または膵臓腫瘍である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記腫瘍が肝細胞癌または腎癌である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記腫瘍が転移した癌腫である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記転移した癌腫が結腸または腎臓の転移した癌腫である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記対象に対して最初にワクシニアウイルス療法を行う工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記ワクシニアウイルス療法を行う工程が腫瘍塊への注射を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記ワクシニアウイルスを行う工程が腫瘍脈管構造への注射を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記ワクシニアウイルスが、血管内に投与されるか、腫瘍内に投与されるか、または血管内および腫瘍内の両方に投与される、請求項16記載の方法。
【請求項20】
ソラフェニブを肝腫瘍に投与する工程を含む、患者において該腫瘍を治療するための方法であって、
該腫瘍が、
(i)GM-CSFを発現するワクシニアウイルスによって以前に治療され、かつ
(ii)再灌流を起こしていると判定された、
方法。
【請求項21】
(a)GM-CSFを発現するワクシニアウイルスの有効量を投与する工程;および
(b)再灌流を起こしていると判定された腫瘍にソラフェニブを投与する工程
を含む、肝腫瘍を治療する方法。
【請求項22】
GM-CSFを発現するワクシニアウイルスの有効量を投与する工程を含む、肝腫瘍を治療する方法であって、
該腫瘍が再灌流について評価され、かつ該腫瘍が、再灌流を起こしている場合にはソラフェニブ療法の候補であると判定される、方法。
【請求項23】
(a)再灌流を検出するために、抗癌療法によって治療されたことのある腫瘍を、該腫瘍の非侵襲的画像化によって評価する工程;および
(b)再灌流が検出された腫瘍に、ソラフェニブの有効量を投与する工程
を含む、腫瘍を有する患者を治療する方法。
【請求項24】
ポックスウイルスの有効量を投与する工程を含む、抗血管新生療法に対して患者を感作させる方法。
【請求項25】
前記患者が以前に抗血管新生療法に失敗している、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記ポックスウイルスがワクシニアウイルスである、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記ワクシニアウイルスがGM-CSFを発現する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記抗血管新生療法が抗血管新生キナーゼ阻害剤療法である、請求項24記載の方法。
【請求項29】
前記抗血管新生キナーゼがソラフェニブまたはスーテントである、請求項28記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2013−504601(P2013−504601A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529005(P2012−529005)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/048829
【国際公開番号】WO2011/032180
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(507160001)ジェンネレックス インコーポレイティッド (2)
【Fターム(参考)】