説明

腫瘍由来樹状細胞阻害因子アンタゴニストおよびToll様レセプターアゴニストの併用を使用する、癌を処置するための方法

【課題】異常な免疫応答から生じると考えられる疾患(特に癌)を処置すること。
【解決手段】樹状細胞(DC)は、抗原特異的免疫反応において重要な役割を果たす。疾患状態(癌を含む)を処置するための材料および方法が提供され、この方法は、宿主から樹状細胞を刺激することによって、疾患による活性化刺激に対する応答性を低下させる。特に、哺乳動物において癌を処置するための方法を提供し、この方法は、この哺乳動物に、有効量の腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストを、有効量のToll様レセプター(TLR)アゴニストと組み合わせて投与する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、疾患状態(特に癌)の処置における、樹状細胞(DC)の操作および活性化のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
樹状細胞(DC)は、生得的免疫応答および適応的免疫応答を開始および調節することにおいて、重要な役割を果たす(Banchereauら、1998、Nature 392:245−252)。癌に関して、樹状細胞は、腫瘍抗原をサンプリングおよび提示し得、そして腫瘍特異的細胞傷害性T細胞をプライムし得る(Chiodoniら、1999、J.Exp.Med.190:125−133)。さらに、樹状細胞は、抗腫瘍免疫応答において役割を果たすサイトカインであるインターロイキン−12(IL−12)、腫瘍壊死因子α(TNFα)およびインターフェロンα(IFNα)の重要な供給源であり得る(Banchereauら、1998、Nature 392:245−252)。従って、近年、研究者らは、癌の処置におけるDCの活性を調査しようと試みてきた(例えば、Mehta−Damaniら、1994,J.Immunology 153:996−1003;Hsuら、1996,Nature Medicine 2:52;Murphyら、1996,The Prostate 29:371;Mehta−Damaniら、1994,J.Immunology 153:996−1003;Dallalら、2000,Curr.Opin.Immunol.12:583−588;Zeidら、1993,Pathology 25:338;Furihaton ら、1992,61:409;Tsujitaniら、1990,Cancer 66:2012;Gianniら、1991,Pathol.Res.Pract.187:496;Murphyら、1993,J.Inv.Dermatol.100:3358を参照のこと)。
【0003】
適切な免疫応答を誘導するために、樹状細胞は、病原体、死細胞および/またはT細胞によって送達される活性化シグナルを受容しつつ、抗原発現の部位にてリクルートされ、抗原を取り込み、そして二次リンパ器官に移動しなければならない。いくつかの研究が、ヒト腫瘍におけるDCの状態に取り組んでおり、そして腫瘍内または癌患者における、損傷したDC機能を報告している(Bellら、1999,J.Exp.Med.190:1417−1426;Scarpinoら、2000,Am.J.Pathol.156:831−837;Lespagnardら、1999,Int.J.Cancer 84:309−314;Enkら、1997,Int.J.Cancer 73:309−316)。さらに、いくつかの研究において、活性化DCの観察は、陽性の予後因子であった(Enkら、1997,Int.J.Cancer 73:309−316)。従って、腫瘍において樹状細胞の活性化を増強することは、癌を処置するための有用な方法であり得る。
【0004】
腫瘍は、DCのナビゲーションを妨害するか、または必要な活性化シグナルを提供できないことによって、免疫系を逃れ得る(Vicariら、2001,Seminars in Cancer Biology,印刷中)。特に、腫瘍は、病原体関連分子パターン(Pathogen Associated Molecular Pattern (PAMP))の多くを発現しないようであり(Medzhitovら、2000,Sem.Immunol.12:185−188)、この病原体関連分子パターンは、DC活性化を誘発する(Reisら、2001,Immunity 14:495−498)。
【0005】
近年、Toll様レセプター(TLR)分子が、PAMPに対するレセプターの重要なクラスとして同定されている。Toll様レセプター(TLR)は、微生物病原体に特異的な分子パターンを認識する(Aderemら、2000,Nature 406:782−787)。10種の別個のTLR分子が、ヒトにおいて記載されている。WO 98/50547(1999年11月12日公開)は、TLR2〜10を開示している。現在公開された命名は、ヒトにおいて10種の別個のTLRを含むことに、注目すべきである。これらのうち9種は、WO 98/50547のTLR−2〜TLR−10であるが、数字は一致していない(Kadowakiら、2001,J.Exp.Med.194:863−869)。
【0006】
微生物分子によって誘発されるTLRを介したシグナル伝達は、DCを強力に活性化して、同時刺激分子(CD80およびCD86)をアップレギュレートし(Hertzら、2001,J.Immunol.166:2444−2450)、そして、炎症促進性サイトカイン(TNF−α、IL−6およびIL−12)を産生する(Thoma−Uszynskiら、2001,J.Immunol.154:3804−3810)。現在、多数の研究が、TLRタンパク質(細菌リポポリサッカリド(TLR−4)、フラジェリン(TLR−5)、リポタイコ酸(TLR−2)およびポリI:C(TLR−3)を含む)に対するリガンドとして作用する、広範な種々の化学的に多様な細菌産物を同定している。より具体的には、TLR−9は、免疫刺激性細菌性CpG DNAについてのリガンドであることが示されている(Hemmiら、2000,Nature 408:740745;Wagner,2001,Immunity 14:499−502)。
【0007】
さらに、腫瘍は、DCの分化または機能を阻害する因子の分泌を促進する。癌においてDC機能を阻害し得る腫瘍関連因子のうちの1つは、IL−10である。多数のヒトの原発性腫瘍または転移が、インターロイキン−10(IL−10)を分泌することが、報告されている(Chouaibら、1997,Immunol.Today 18:4993−497)。この因子は、DC機能の強力な調節因子として記載されている。実際、IL−10は、IL−12産生を負に調節し得、そしてDCのT細胞同時刺激能を阻害し得る(DeSmedtら、1997,Eur.J.lmmunol.27:1229−1235;Cauxら、1994,Int.Immunol.6:1177−1185)。しかし、DC阻害シグナル(例えば、IL−10)をアンタゴナイズして、DCの活性化を改善する能力、従って、癌に対する宿主免疫応答を改善する能力は、いまだ未知である。
【0008】
癌治療の現在利用可能な方法(例えば、外科的治療、放射線療法、化学療法および免疫生物学的方法)は、限られた成功を得ているか、または深刻かつ所望されない副作用を生じるかのいずれかである。多数の臨床的に診断された固形腫瘍(ここで、この腫瘍は、局在化した増殖である)において、外科的除去は、主な処置手段とみなされている。しかし、手術後およびいくらかの遅延期間後に、しばしば、元の腫瘍が転移しているのが見られ、その結果、癌浸潤の二次的部位が全身に広がっており、そして患者は二次的癌増殖の後に死亡する。化学療法は、癌の処置において広く使用されているが、これは、通常、細胞増殖の防止に基づく全身的処置である。従って、化学療法は、全ての増殖している細胞(正常な細胞を含む)に影響を与え、所望でなく、かつしばしば深刻な副作用を導く、非特異的な処置様式である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、異常な免疫応答から生じると考えられる疾患(特に癌)を処置するための新規方法についての必要性が存在する。特に、腫瘍浸潤樹状細胞の活性化を促進する因子の解明は、腫瘍特異的免疫応答を増強するための、樹状細胞の操作を可能にする。樹状細胞の操作を介した、免疫応答の調節のための方法および治療は、これらの疾患の処置において有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、腫瘍浸潤樹状細胞の活性化を促進することによる、癌のような疾患に対する免疫治療のための材料および方法を提供することによって、上記の必要性を満たす。IL−10アンタゴニストとTLR−9アゴニストとの併用投与は、有効な癌治療であることが現在発見されている。従って、本発明は、癌を処置する方法を提供し、この方法は、有効量のTLRアゴニストと組み合わせて、有効量の腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストを、このような処置を必要とする個体に投与する工程を包含する。
【0011】
好ましい実施形態において、腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストは、樹状細胞機能を阻害することが公知である、以下の腫瘍関連因子のいずれかのアンタゴニストであり得る:IL−6、VEGF、CTLA−4、OX−40、TGF−β、プロスタグランジン、ガングリオシド、M−CSFおよびIL−10。より好ましくは、この腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストは、IL−10アンタゴニストである。より好ましくは、このIL−10アンタゴニストは、IL−10サイトカインの直接的アンタゴニストまたはIL−10レセプターのアンタゴニストのいずれかである。特定の実施形態において、この腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストは、抗体もしくは抗体フラグメント、低分子またはアンチセンスヌクレオチド配列である。より好ましくは、この腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストは、抗IL−10レセプター抗体である。
【0012】
特定の実施形態において、TLRアゴニストは、低分子、組換えタンパク質、抗体もしくは抗体フラグメント、ヌクレオチド配列またはタンパク質−核酸配列である。好ましい実施形態において、このTLRアゴニストは、TLR−9のアゴニストである。より好ましくは、TRLアゴニストは、免疫刺激ヌクレオチド配列である。なおより好ましくは、この免疫刺激ヌクレオチド配列は、CpGモチーフを含む。最も好ましくは、この免疫刺激ヌクレオチド配列は、以下からなる群より選択される:CpG 2006(表2および配列番号1);CpG 2216(表2および配列番号2);AAC−30(表2および配列番号3);ならびにGAC−30(表2および配列番号4)。この免疫刺激ヌクレオチド配列は、ホスホロチオエート改変のような構造的改変によって安定化され得るか、またはカチオン性リポソーム中にカプセル化されて、インビボの薬物動態および腫瘍標的化を改善し得る。
【0013】
特定の実施形態において、この腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストは、静脈内、腫瘍内、皮内、筋内、皮下または局所的に投与される。
【0014】
いくつかの実施形態において、この腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストおよびTLRアゴニストは、融合タンパク質の形態で投与されるか、または他の方法で互いに連結される。
【0015】
本発明の方法は、少なくとも1つの腫瘍関連抗原の投与をさらに含み得る。腫瘍抗原は、融合タンパク質の形態で送達され得るか、またはTLRアゴニストおよび/または腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストに連結され得る。
【0016】
本発明のなお別の局面において、活性化因子(例えば、TNF−α、IFN−α、RANK−LまたはRANKのアゴニスト、CD40−LまたはCD40のアゴニスト、41BBLまたは41BBのアゴニスト、あるいはTNF/CD40レセプターファミリーのメンバーの他の推定リガンド/アゴニスト)もまた、投与される。
【0017】
本発明のなお別の局面において、サイトカインは、腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストと組み合わせて、これらの前またはこれらと同時にのいずれかで、投与される。1つの好ましい局面において、これらのサイトカインは、組換えタンパク質または組換え融合タンパク質または送達ベクターのいずれかとして使用される、GM−CSFまたはG−CSFまたはFLT−3Lである。これらの因子の投与は、前駆体からの特定のサブセットのDCの生成を刺激し、それによって、腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストおよびTLRアゴニストの組み合わせを用いた活性化を受けやすい腫瘍浸潤樹状細胞の数を増加させる。
【0018】
本発明のなお別の局面において、選択されたケモカインが、腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストの前にかまたはこれらと同時に投与される。1つの好ましい局面において、これらのケモカインは、組換えタンパク質または組換え融合タンパク質または送達ベクターのいずれかとして使用される、CCL13、CCL16、CCL7、CCL19、CCL20、CCL21、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12からなる群より選択される。最も好ましい局面において、このケモカインは、腫瘍内注射後に直接か、組換え抗体のような標的化構築物を介してか、または腫瘍への優先的送達を可能にする特定の小胞中のカプセル化を介してかのいずれかで、腫瘍に送達される。ケモカインの投与は、DCの特定のサブセットの腫瘍への補充を促進し、それによって、腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストとTLRアゴニストとの組み合わせを用いた活性化を受けやすい腫瘍浸潤樹状細胞の数を増加させ得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
癌を処置する方法であって、該方法は、そのような必要のある個体に、有効量の腫瘍由来樹状細胞(DC)阻害因子アンタゴニストを、有効量のTLRアゴニストと組み合わせて投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストが、IL−6アンタゴニスト、VEGFアンタゴニスト、CTLA−4アンタゴニスト、OX−40アンタゴニスト、TGF−Bアンタゴニスト、プロスタグランジンアンタゴニスト、ガングリオシドアンタゴニスト、M−CSFアンタゴニスト、およびIL−10アンタゴニストからなる群より選択される、方法。
(項目3)
前記腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストが、IL−10アンタゴニストである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記IL−10アンタゴニストが、IL−10のアンタゴニストおよびIL−10レセプターのアンタゴニストからなる群より選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)
項目4に記載の方法であって、前記IL−10アンタゴニストが、以下:
a)組換え体;
b)天然のリガンド;
c)低分子;
d)抗体または抗体フラグメント;
e)アンチセンスヌクレオチド配列;あるいは
f)可溶性IL−10レセプター分子、
である、方法。
(項目6)
前記抗体が、モノクローナル抗体である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記抗体が、抗IL−10Rモノクローナル抗体である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記TLRアゴニストが、以下:
a)組換え体;
b)天然のリガンド;
a)免疫刺激性ヌクレオチド配列;
b)低分子;
c)精製された細菌抽出物;
d)不活性化された細菌調製物、
である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記TLRアゴニストが、TLR−9のアゴニストである、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記TLRアゴニストが、免疫刺激性ヌクレオチド配列である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記免疫刺激性ヌクレオチド配列が、CpGモチーフを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記免疫刺激性ヌクレオチドが、CpG 2006(配列番号1)、CpG 2216(配列番号2)、AAC−30(配列番号3)、およびGAC−30(配列番号4)からなる群より選択される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記免疫刺激性ヌクレオチド配列が、ホスホロチオネート−改変のような構造改変によって安定化される、項目10に記載の方法。
(項目14)
前記免疫刺激性ヌクレオチド配列が、カチオン性リポソームにカプセル化される、項目10に記載の方法。
(項目15)
前記腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストが、抗IL−10Rモノクローナル抗体であり、そして前記TLRアゴニストがCpG 2006(配列番号1)である、項目1に記載の方法。
(項目16)
項目1に記載の方法であって、該方法が、前記腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストを送達部位に持続放出させる物質を投与する工程をさらに包含する、方法。
(項目17)
前記腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストが、静脈内投与、腫瘍内投与、皮内投与、筋肉内投与、皮下投与または局所投与される、項目1に記載の方法。
(項目18)
少なくとも1つの腫瘍関連抗原を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記腫瘍関連抗原が、TLRアゴニストに連結する、項目18に記載の方法。
(項目20)
項目18に記載の方法であって、前記腫瘍関連抗原が、以下:Melan−A、チロシナーゼ、p97、β−HCG、GalNAc、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−4、MAGE−12、MART−1、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC18、CEA、DDC、黒色腫抗原gp75、HKer 8、高分子量黒色腫抗原、K19、Tyr1およびTyr2、pMel 17遺伝子ファミリーのメンバー、c−Met、PSA、PSM、α−フェトプロテイン、甲状腺ペルオキシダーゼ、gp100、NY−ESO−1、p53ならびにテロメラーゼからなる群より選択される、方法。
(項目21)
項目1に記載の方法であって、前記処置される癌が、以下:黒色腫、乳癌、膵臓癌、結腸癌、肺癌、神経膠腫、肝細胞癌、子宮内皮癌、胃癌、腸癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、卵巣癌、精巣癌、肝臓癌、頭部および頸部の癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、眼の癌、膀胱癌、神経膠芽腫、ならびに転移性の癌腫からなる群より選択される、方法。
(項目22)
活性剤を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記活性剤が、IFNα、TNFα、RANKリガンド/アゴニスト、CD40リガンド/アゴニストまたはTNF/CD40レセプターファミリーの別のメンバーのリガンド/アゴニストからなる群より選択される、項目22に記載の方法。
(項目24)
血液樹状細胞の数を増加させるサイトカインを投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目25)
前記樹状細胞増殖因子が、FLT3−L、GM−CSFおよびG−CSFからなる群より選択される、項目24に記載の方法。
(項目26)
樹状細胞上で活性なサイトカインを腫瘍に送達する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目27)
項目26に記載の方法であって、前記ケモカインが、以下:CCL21、CCL3、CCL20、CCL16、CCL5、CCL25、CXCL12、CCL7、CCL8、CCL2、CCL13、CXCL9、CXCL10およびCXCL11からなる群より選択される、方法。
(項目28)
前記ケモカインが、ケモカインまたはその生物学的に活性なフラグメントもしくはその改変体および標的化部分を含む標的化構築物を用いて前記腫瘍に送達される、項目26に記載の方法。
(項目29)
項目28に記載の方法であって、前記標的化部分が、以下:
a)少なくとも10個のアミノ酸のペプチド;
b)タンパク質;
c)低分子;
d)ベクター;および
e)抗体またはそのフラグメント、
からなる群より選択される、方法。
(項目30)
前記腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストが、互いに連結する、項目1に記載の方法。
(項目31)
前記腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストが、腫瘍関連抗原にさらに連結される、項目30に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、C26−6CK腫瘍浸潤樹状細胞が、骨髄由来樹状細胞と比較して、LPS+抗CD40+IFNγの組み合わせに対して非応答性であることを示す。図1Aは、FACS(DC11cポジティブ細胞でゲート)による、MHCクラスII、CD40およびCD86の表面発現の分析の結果を示す。図1Bは、Brefeldin Aとの2.5時間のインキュベーションを含む、20時間後のCD11c+細胞による、IL−12p40の細胞内発現を示す。図1Cは、混合白血球反応を示す。図1Dにおいて、IL−12p70を、特異的ELISAによって、LPS+IFNγ+抗CD40を用いた活性化後の培養物上清において測定した。
【図2】CpG 1668+抗IL−10Rの組み合わせが、C26−6CK腫瘍浸潤樹状細胞において、IL−12およびTNFαを回復した。C26−6CK腫瘍由来のTIDCを、抗CD11c磁気ビーズを使用して富化し、そしてGM−CSFおよび種々の組み合わせのLPS、IFNγ抗CD40、抗IL10RおよびCpG 1668の存在下で、一晩培養した。IL−12p70およびTNFαのレベルを、特異的ELISAによって、培養物上清において測定した。
【図3】CpG 1668+抗IL−10Rの組み合わせは、DC浸潤C26−6CK腫瘍のMLR刺激能力を回復した。C26−6CK腫瘍由来のTIDCを、抗CD11c磁気ビーズを使用して富化し、GM−CSFおよび種々の組み合わせのLPS、IFNγ抗CD40、抗IL10RおよびCpG 1668の存在下で、一晩培養した。次いで、細胞を照射し、そして一定数の富化した同種異系T細胞(3×10のT細胞)の存在下で、種々の数で5日間培養した。増殖を、放射性チミジン取り込みによって、培養の最後の18時間の間に測定した。
【図4】親C26腫瘍由来の腫瘍浸潤樹状細胞ならびに異なる組織学的起源の腫瘍由来の腫瘍浸潤樹状細胞は、LPS+IFNγ+抗CD40の組み合わせに対して非応答性であるが、CpG 1668+抗IL−10Rに応答して、IL−12を産生する。示された腫瘍由来のTIDCを、抗CD11c磁気ビーズを使用して富化し、GM−CSF、LPS+IFNγ+抗CD40、または抗IL10R+CpG 1668の存在下で、一晩培養した。図4は、Brefeldin Aとの2.5時間のインキュベーションを含む、20時間後の培養細胞における、IL−12p40の細胞内発現およびCD11cの表面発現を示す。
【図5】図5は、C26−6CK腫瘍モデルにおける、CpG1668+抗IL10R抗体の治療効果を示す。7週齢のメスBALB/cマウス群に、5×10のC26−6CK細胞を皮下注射し、そして腫瘍接種の7日後に始まる3週間にわたって、1週間に2回の250μgの精製抗IL10R抗体の腹腔内注射および毎週の10μgのCpG 1668の腫瘍内注射の併用で、処置した。
【図6】図6は、C26腫瘍モデルにおける、CpG 1668+抗IL10R抗体の治療効果を示す。7週齢のメスBALB/cマウス群に、5×10のC26細胞を皮下注射し、そして腫瘍接種の7日後に始まる3週間にわたって、250μgの精製抗IL10R抗体の腹腔内注射および5μgのCpG 1668の腫瘍内注射の併用で毎週処置した。
【図7】図7は、B1F0黒色腫腫瘍モデルにおける、CpG1668+抗IL10R抗体の治療効果を示す。7週齢のメスC57BL/6マウス群に、5×10のB16F0細胞を皮下注射し、そして腫瘍接種の7日後に始まる3週間にわたって、250μgの精製抗IL10R抗体の腹腔内注射および5μgのCpG 1668の腫瘍内注射の併用で毎週処置した。
【図8】図8は、別のIL−10アンタゴニストであるモノクローナル抗IL10抗体が、TLR−9アゴニストであるCpG 1668と組み合わせて、DC浸潤C26−6CK腫瘍によるIL−12の産生を誘導し得ることを示す。C26−6CK腫瘍由来のTIDCを、抗CD11c磁気ビーズを使用して富化し、GM−CSFまたは抗IL10R+CpG 1668または抗IL10+CpG 1668の存在下で、一晩培養した。図8は、Brefeldin Aとの2.5時間のインキュベーションを含む、20時間後の培養細胞における、IL−12p40の細胞内発現およびCD11cの表面発現を示す。
【図9】図9は、別の腫瘍由来DC阻害因子であるPGEが、DC活性化を可能にするためにアンタゴナイズされ得ることを示す。骨髄由来DCを、(インドメタシン処理した)PGE2を含む腫瘍上清の存在下または非存在下で培養した。次いで、異なるDCを、抗IL10R抗体の存在下または非存在下で、LPS、IFNγおよび抗CD40抗体の組み合わせを用いた活性化の後に、成熟マーカーの発現およびIL−12産生について試験した。
【図10】図10は、C26−6CK結腸癌腫腫瘍モデルにおける、CpG 1668+インドメタシンの治療効果を示す。8週齢のメスBALB/cマウス群に、5×10のC26−6CK細胞を皮下注射し、そして腫瘍接種の7日後に始まる3週間にわたる、5μgのCpG 1668の腫瘍内注射、および/または5日目〜28日目の、飲用水中5μg/mlのインドメタシンの併用で、毎週処置した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に引用される全ての参考文献は、その全体が参考として援用される。
本発明は、腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストとTLRアゴニストとの併用投与が、腫瘍発達のいくつかのインビボモデル(C26−6CK、C26およびB16F0を含む)において、強力な治療活性を有するという驚くべき発見に一部基づく。IL−10アンタゴニストおよびTLR−9アゴニストの併用投与は、そうでなければ活性化に対して無反応性である腫瘍浸潤樹状細胞が、IL−12およびTNFαを産生し、そして改善された腫瘍抗原特異的免疫応答を誘導することを可能にすることが、現在発見されている。さらに、腫瘍保有動物へのIL−10アンタゴニストおよびTLR−9アゴニストの投与は、腫瘍の拒絶を誘導し得ることが、現在発見されている。
【0021】
多数の報告が、腫瘍内のDCの活性化状態に取り組んでいる。1つのこのような報告では、GM−CSFおよびCD40Lを発現するように形質導入されたマウスC26結腸癌腫瘍が、成熟した表現型を有するDCによってひどく浸潤され、そして、腫瘍の割合は、初期増殖後に退縮された(Chiodoniら、1999,J.Exp.Med 190:125−133)。6Cカインを発現するように操作された同じC26細胞は、未熟DCによって浸潤された(Vicariら、2000,J.Immunol 165 :1992−2000)。DCの活性化および続く成熟は、免疫応答の開始に決定的な事象であるので、C26−6CK腫瘍浸潤樹状細胞の活性化が腫瘍拒絶を生じ得ると考えられた。予期せぬことに、それらの腫瘍浸潤DCは、共刺激分子の上方調節、混合白血球反応においてT細胞を刺激する能力、ならびにIL−12およびTNFαを生成する能力を読み出しとして使用して、抗CD40アゴニスト抗体を介してCD40による刺激に応答しないことが見い出された。それらは、細菌刺激LPS(TLR−4のリガンド)にも、サイトカインIFNγにも、LPS、IFNγ、および抗CD40抗体の組み合わせにも応答しなかった。
【0022】
従って、本発明者らが使用した特定の刺激因子を考慮する場合、腫瘍由来因子が、腫瘍浸潤DCの不応状態を誘導することが、本発明者らによって仮定された。従って、この不応状態を阻害し得る因子の根絶が、有用な癌療法を生じ得た。IL−10(DC阻害シグナル)が多くのヒト腫瘍によって分泌されるという報告を考慮して(Chouaibら、1997,Immunol.Today 18:493−497;De Smedtら、1997,Eur.J.Immunol.27:1229−1235;Cauxら、1994,Int.Immunol.6:1177−1185)、本発明者らは、IL−10の拮抗が、DC活性化、および従って、癌に対する宿主免疫応答を改善し得るか否かを試験した。しかし、IL−10レセプターをブロッキングする抗体(抗IL10R)でのマウスの処置は、C26結腸癌腫瘍またはそのC26−6CK改変体の発達に対してほとんど影響しないことが見い出された(後者は、ケモカインCCL21/SLC/6Cカインを発現させるためにVicariら、2000,J.Immunol.165:1992−2000において記載されるように操作された:(実施例IVおよび図5を参照のこと))。実際、実施例IIおよびIIIに示されるように、抗IL10R抗体は、LPS+IFNγ+抗CD40での腫瘍浸潤DCの活性化に対して全く影響を有さないか、または最小限の影響を有する。
【0023】
続いて、本発明者らは、他の活性化シグナル(特にtoll様ファミリーの病原関連分子パターンレセプターであるが、TLR−4とは異なるレセプターを介して媒介されたシグナル)が、腫瘍浸潤樹状細胞において有効であり得ると仮定した。特に、本発明者らは、マウスにおけるCpG 1668(TLR−9のリガンド)の効果を研究した(Hemmiら、2000,Nature 408:740−745)。しかし、本発明者らは、CpG 1668が、腫瘍浸潤樹状細胞の活性化(実施例IIおよびIII)またはマウスにおける樹立皮下腫瘍の処置(実施例V〜VII)のいずれにおいても最低限の効果でしかないことを観察した。
【0024】
しかし、著しく違って、本発明者らは、CpG 1668と抗IL10Rとの組み合わせが、C26−6CK腫瘍浸潤DCによるIL−12p70およびTNFαの産生を誘導し、そしてMLRにおけるそれらDCの刺激能を大いに増強するとの驚くべき発見をした(実施例IIおよびIIIを参照のこと)。続いて、CpG 1668+抗IL10R抗体の組み合わせは、C26−6CK腫瘍を有するマウスにおいて有意な抗腫瘍効果を示した(実施例V)。さらに、LPS+IFNγ+抗CD40抗体の組み合わせではなく、CpG 1668および抗IL10R抗体の組み合わせが、同様に、親C26腫瘍および他の組織学的起源の腫瘍(B16メラノーマおよびLL2肺癌)由来の腫瘍浸潤DCにおいてIL−12産生を誘導し得た(実施例IVを参照のこと)。CpG 1668+抗IL10Rの組み合わせはまた、C26およびB16F0腫瘍モデルにおいて抗腫瘍活性を示した(実施例VIおよびVII)。
【0025】
従って、本発明は、腫瘍浸潤樹状細胞の活性化を通じて、哺乳動物において癌を処置する方法であって、当該哺乳動物に、有効量のTLRアゴニストと組み合わせて、有効量の腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストを投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0026】
本明細書中で定義される場合、「腫瘍由来樹状細胞(DC)阻害因子アンタゴニスト」とは、結合アッセイまたは機能アッセイにおいて、腫瘍細胞によって分泌され、かつ樹状細胞機能を阻害することが公知である因子の作用をブロックすることが示される因子である。
【0027】
本明細書中で定義される場合、「TLRアゴニスト」は、Bauerら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:9237−9242に記載されるようなtoll様レセプター(「TLR」)を活性化する任意の分子である。特に好ましい実施形態では、TLRアゴニストは、Hemmiら、2000,Nature 408:740−745およびBauerら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:9237−9242に記載されるような、TLR9のアゴニストである。
【0028】
(1.腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニスト)
用語「腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニスト」は、腫瘍浸潤DCにおいて不応状態を誘導する腫瘍由来因子の作用をブロックする任意の因子を包含する。このような腫瘍由来因子の例としては、IL−6、VEGF、CTLA−4、OX−40、TGF−β、プロスタグランジン、ガングリオシド、M−CSF、およびIL−10(Chouaibら、1997,Immunol Today 18 :493−497)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストは、活性化刺激因子の存在下の腫瘍樹状細胞に対するそれらの効果を分析することにより同定され得る。有効量の腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストの存在下で、腫瘍樹状細胞は成熟プロセスを受け、この後、サイトカイン(例えば、IL−12、TNFα、IFNα)の産生、または成熟樹状細胞によって代表的に発現される分子(例えば、CD80、CD86、CD83およびDC−Lamp)の発現の測定が行われ得る。あるいは、腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストの効果は、樹状細胞成熟を阻害することが報告された腫瘍起源の精製または非精製因子の存在下で活性化される、腫瘍から単離されたものではない、ヒト樹状細胞の活性化を分析する際に、観察され得る。
【0030】
腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストは、例えば、抗IL−10モノクローナル抗体が、IL−10の作用をブロックするように、DC阻害因子それ自体に対して、または、例えば、抗IL−10Rモノクローナル抗体がDC上のそのレセプターを通じたIL−10のシグナル伝達を妨害するように、DC阻害因子が腫瘍浸潤DCに対するそれらの正常な効果を有することを妨害する任意の他の手段によって、作用し得る。
【0031】
腫瘍由来DC阻害因子のアンタゴニストは、抗体に由来し得るか、または抗体フラグメントを含み得る。さらに、結合アッセイまたは機能アッセイにおいてレセプターの活性化を阻害することが示される任意の小分子、アンタゴニスト、アンチセンスヌクレオチド配列、遺伝子送達ベクター(例えば、アデノウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター)に含まれるヌクレオチド配列は、この定義内に入る。所定の標的(例えば、腫瘍関連分子(例えば、レセプター))に特異的に結合する小分子についていかにしてスクリーニングするかは、当該分野において周知である。例えば、Meetings on High Throughput Screening,International Business Communications,Southborough,MA 01772−1749を参照のこと。同様に、膜貫通ドメインを欠くレセプターの可溶性形態が使用され得る。最後に、対応するレセプターに強く結合するが、生物学的活性を本質的に欠く、腫瘍由来DC阻害因子の変異体アンタゴニスト形態が、使用され得る。
【0032】
本発明の特に好ましい実施形態においては、腫瘍由来DC阻害因子アンタゴニストは、IL−10アンタゴニストである。用語「IL−10アンタゴニスト」は、IL−10の活性を阻害する、IL−10それ自体のアンタゴニスト、およびIL−10レセプターのアンタゴニストの両方を包含する。本発明において有用であるIL−10アンタゴニストの例としては、米国特許第5,231,012号(1993年7月27日発行)(IL−10およびIL−10アンタゴニストに関する)および米国特許第5,863,796号(1999年1月26日発行)(IL−10レセプターおよびIL−10レセプターアンタゴニストに関する)(これらは共に、本明細書中に参考として明確に援用される)に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
(2.TLRアゴニスト)
微生物由来のTLRのいくつかのアゴニスト(例えば、リポ多糖、ペプチドグリカン、フラジェリンおよびリポテイコ酸)が記載されている(Aderemら、2000,Nature 406:782−787;Akiraら、2001,Nat.Immunol.2:675−680)。これらのリガンドのいくつかは、TLRの異なるパターンを発現する異なる樹状細胞サブセットを活性化し得る(Kadowakiら、2001,J.Exp.Med.194:863−869)。従って、TLRアゴニストは、TLRアゴニスト特性を有する微生物剤の任意の調製物であり得る。例えば、ペニシリン殺傷連鎖球菌因子OK−432は、リポテイコ酸(TLR結合を通じてTh1サイトカインの産生を誘導し得る)を含む(Okamotoら、2000,Immunopharmacology 49:363−376)。以下の表1は、いくつかの公知のTLRリガンドを列挙する:
(表1)
(公知のTLRリガンド)
【0034】
【表1】

LTA:リポテイコ酸
LPS:リポ多糖
PG:ペプチドグリカン。
【0035】
非翻訳DNAの特定のタイプは、TLRを活性化することにより免疫応答を刺激することが示されている。特に、CpGモチーフを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、広範に開示されており、リンパ球を活性化することが報告されている(例えば、米国特許第6,194,388号を参照のこと)。本明細書中で使用される場合、「CpGモチーフ」とは、非メチル化シトシン−グアニン(CpG)ジヌクレオチドとして定義される。CpGモチーフを含む免疫刺激性オリゴヌクレオチドはまた、本発明の方法に従ってTLRアゴニストとして使用され得る。
【0036】
多くの免疫刺激性ヌクレオチド配列は、当該分野において記載されており、標準アッセイ(これは、免疫応答の種々の局面(例えば、サイトカイン分泌、抗体産生、NK細胞活性化およびT細胞増殖)を示す)を用いて容易に同定され得る。例えば、米国特許第6,194,388号および同第6,207,646号;WO98/52962;WO98/55495;WO97/28259;WO99/11275;Kriegら、1995,Nature 374:546−549;Yamamotoら、1992J.Immunol.148:4072−4076;Ballasら、1996,J.Immunol.157(5)1840−1845;Klinmanら、1997,PNAS 93(7):2879−83;Shimadaら、1986,Jpn.J.Cancer Res.77:808−816;Cowderyら、1996,J.Immunol.156:4570−75;Hartmannら、2000、J.Immunol.164(3):1617−24を参照のこと。
【0037】
免疫刺激性ヌクレオチド配列は、6塩基または塩基対より大きな任意の長さであり得る。免疫刺激性ヌクレオチド配列は、改変(例えば、3’OH基または5’OH基の改変、ヌクレオチド塩基の改変、糖成分の改変、およびホスフェート環の改変)を含み得る。免疫刺激性ヌクレオチド配列は、一本鎖または二本鎖DNA、ならびに一本鎖または二本鎖RNA、あるいは他の改変ポリヌクレオチドであり得る。免疫刺激性ヌクレオチド配列は、1つ以上のパリンドローム領域を含んでも含まなくてもよい。
【0038】
免疫刺激性ヌクレオチド配列は、従来のポリヌクレオチド単離手順を用いて単離され得るか、または当該分野で周知である技術および核酸合成装置(酵素的方法、化学的方法、および大きなオリゴヌクレオチド配列の分解を包含するが、これらに限定されない)を用いて合成され得る。(例えば、Ausubelら、1987およびSambrookら、1989を参照のこと)。
本発明の方法において有用である免疫刺激性ヌクレオチド配列の例としては、米国特許第6,218,371号;米国特許第6,194,388号;米国特許第6,207,646号;米国特許第6,239,116号およびPCT公開番号WO00/06588(University of Iowa);PCT公開番号WO01/62909;PCT公開番号WO01/62910;PCT公開番号WO01/12223;PCT公開番号WO98/55495;およびPCT公開番号WO99/62923(Dynavax Technologies Corporation)(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)に開示されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
特に、米国特許第6,194,388号(University of Iowa)は、少なくとも以下の式を含むオリゴヌクレオチドを含む免疫刺激性核酸を開示する:
5’ XCGX 3’
ここで、CおよびGは、非メチル化であり、ここでXは、GpT、GpG、GpA、ApA、ApT、ApG、CpT、CpA、CpG、TpA、TpT、およびTpGからなる群から選択されるジヌクレオチドであり、そしてXは、TpT、CpT、ApT、TpG、ApG、CpG、TpC、ApC、CpC、TpA、ApAおよびCpAからなる群から選択されるジヌクレオチドであり、そしてここで少なくとも1つのヌクレオチドは、リン酸骨格改変を有する。細胞への取り込みを容易にするために、好ましいCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、サイズが8〜40塩基対の範囲にあるとして記載される。この式に入る免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、本願発明の方法において有用である。
【0040】
WO99/62923は、本発明と併用して使用され得る免疫刺激性ヌクレオチド配列のさらなる例を開示する。特に、中央CG配列を含むヘキサマー配列またはヘキサヌクレオチドを含む改変免疫刺激性ヌクレオチド配列(ここで、C残基は、求電子(electron−withdrawing)部分を有するC−5および/またはC−6への付加により改変される)が開示される。
【0041】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、インビボ分解に対して比較的耐性にする構造改変により安定化され得る。安定化改変の例としては、ホスホロチオエート改変(すなわち、少なくとも1つのホスフェート酸素が硫黄に置換される)、非イオン性DNAアナログ(例えば、アルキルホスホネートおよびアリールホスホネート(ここで、荷電されたホスホネート酸素が、アルキル基またはアリール基に置換される))、ホスホジエステルおよびアルキルホスホトリエステル(ここで、荷電された酸素部分が、アルキル化される)が挙げられる。片方の末端または両末端にジオール(例えば、テトラエチレングリコールまたはヘキサエチレングリコール)を含むオリゴヌクレオチドもまた、ヌクレアーゼ分解に対して実質的に耐性であることが示されている(米国特許第6,194,388号(University of Iowa)を参照のこと)。
【0042】
免疫刺激性ヌクレオチド配列はまた、標的細胞表面へのより高いアフィニティー結合を生じる、かつ/または標的細胞による細胞取り込みの増大を生じる送達複合体中にカプセル化され得るか、またはこの送達複合体に結合され得る。免疫刺激性ヌクレオチド配列送達複合体の例としては、ステロール(例えば、コレステロール)、脂質(例えば、カチオン性脂質、ビロソーム(virosome)またはリポソーム)、または標的細胞特異的結合因子(例えば、標的細胞特異的レセプターにより認識されるリガンド)との会合が挙げられる。好ましい複合体は、標的細胞による内在化の前に重大な脱共役を防ぐように、インビボで十分に安定でなければならない。しかし、この複合体は、オリゴヌクレオチドが機能的形態で放出されるように、細胞内で適切な条件下で切断可能であるべきである(米国特許第6,194,388号;WO99/62923)。
【0043】
特に好ましい実施形態では、TLRアゴニストは、TLR9のアゴニストであり、例えば、Hemmiら、2000,Nature 408:740−745およびBauerら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:9237−9242に記載される。これまで、TLR−9について公知のリガンドは、マウスにおいてCpG1668(TCCATGACGTTCCTGATGCT)(配列番号5)およびヒトにおいてCpG 2006(TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT)(配列番号1)のような、CpGモチーフを含む非メチル化オリゴヌクレオチド配列である(Bauerら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:9237−9242)。以下の表2は、TLR9の好ましいアゴニストを列挙する:
(表2)
【0044】
【表2】

上記に加えて、TLRまたはそのフラグメントを使用するリガンドスクリーニングは、他の分子(レセプターに対する結合親和性を有する低分子を含む)を同定するために行われ得る。例えば、Meetings on High Throughput Screening,International Business Communications,Southborough,MA 01772−1749を参照のこと。次いで、引き続く生物学的アッセイは、推定アゴニストが活性を提供し得るか否かを決定するために利用され得る。化合物が、本質的な刺激活性を有する場合、これは、レセプターを活性化し得、従って、リガンドの活性を刺激する(例えば、シグナル伝達を誘導する)という点でアゴニストである。
【0045】
本明細書中で使用される場合、TLRアゴニストの「有効量」は、所望の生物学的効果を誘発する量である。特に、有効量は、腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストの有効量と組み合わせた場合、腫瘍浸潤DCの活性化を誘発するに十分である量である。
【0046】
腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストの「有効量」は、所望の生物学的効果を誘発する量である。特に、有効量は、有効量のTLRアゴニストと組み合わされた場合、腫瘍浸潤DCの活性化を誘発するに十分な量である。
【0047】
「組み合わせた」投与は、同時投与または連続投与の両方をいう。腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストは、同じ部位または異なる部位に送達または投与され得、同時または48時間を超えない遅延の後に投与され得る。同時または組み合わせの投与は、本明細書中で使用される場合、腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストおよび/または抗原が、(a)同時、または(b)一般的処置スケジュールの経過の間の異なる時間のいずれかに被験体に投与されることを意味する。後者の場合、その2つの化合物は、意図される効果を達成するために適した十分に近いときに投与される。
【0048】
本発明を実施するに当たって使用される腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストは、天然産物と同一のアミノ酸配列を有する組換えタンパク質、あるいは天然産物由来ではあるが、その薬物動態特性を変化させ、そして/または本来のDC活性化または抗腫瘍特性を保持しつつ、新たな生物学的特性を付加する改変を含む組換えタンパク質であり得る。
【0049】
腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストの送達様式は、注射(静脈内、腫瘍内、皮内、筋肉内、皮下、または局所的注射を含む)によってであり得る。
【0050】
本発明の特に好ましい実施形態において、この腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストおよびTLRアゴニストは、腫瘍関連抗原と組み合わせて投与される。本発明において使用するための腫瘍関連抗原としては、Melan−A、チロシナーゼ、p97、β−HCG、GalNAc、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−4、MAGE−12、MART−1、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC18、CEA、DDC、黒色腫抗原gp75、HKer8、高分子量黒色腫抗原、K19、Tyr1およびTyr2、pMel 17遺伝子ファミリーのメンバー、c−Met、PSA、PSM、α−フェトプロテイン、甲状腺ペルオキシダーゼ、gp100、NY−ESO−1、テロメラーゼおよびp53が挙げられるが、これらに限定されない。この列挙は、網羅的であることが意図されるのではないが、単に、本発明の実施において使用され得る抗原の型の例示であることが意図される。
【0051】
腫瘍関連抗原とは異なる他の抗原は、これらの抗原に対する特定の免疫応答を増大させるために、腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストおよびTLRアゴニストとともに投与され得る。これらの抗原としては、細菌、ウイルス、真菌、寄生生物により発現される、ネイティブ分子または改変分子が挙げられるが、これらに限定されない。この抗原はまた、アレルゲンおよび自己抗原を含み得、この場合、腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストとTLRアゴニストとの組み合わせは、例えば、Th2型免疫応答をTh1型免疫応答に変換する、より都合の良い結果に向う免疫応答を再指向するために、抗原とともに投与される。
【0052】
抗原の異なる組み合わせが使用され得、これらの組み合わせは、異なる人種グループ、性別、地理的分布、および疾患段階を有する最適な機能を示す。本発明の1つの実施形態において、少なくとも2以上の異なる抗原が、腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストとTLRアゴニストとの組み合わせの投与とともに投与される。
【0053】
腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニストは、互いと組み合わせて投与され得るか、そして/または抗原と共に投与され得るか、あるいは種々の様式で互いにまたは抗原に連結され得る(例えば、WO98/16247;WO98/55495;WO99/62823を参照のこと)。例えば、TLRアゴニストおよび/または腫瘍由来DC阻害性因子および/または抗原は、互いに対して空間的に近く投与されてもよいし、混合物として投与されてもよい(すなわち、溶液中)。連結は、多くの方法(結合体化、キャプシド化、プラットホームへの固定もしくは表面への吸着を通じる方法が挙げられる)において達成され得る。
【0054】
TLRアゴニストを腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストおよび/または抗原に結合体化するために、種々の方法が使用され得る。会合は、共有結合的相互作用および/または非共有結合的相互作用(高親和性および/または低親和性相互作用を含む)を介し得る。TLRアゴニストおよび腫瘍由来DC阻害性因子を連結し得る非共有結合的相互作用の例としては、イオン結合、疎水性相互作用、水素結合およびファンデルワールス相互作用が挙げられるが、これらに限定されない。腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストがタンパク質または抗体であり、TLRアゴニストが、免疫刺激性ポリヌクレオチドである場合、例えば、その結合体のペプチド部分は、当該分野で周知の方法を使用する固体支持体化学によって、免疫刺激性ポリヌクレオチドの3’末端に結合され得る(例えば、Haralambidisら,1990a,Nucleic Acids Res.18:493−499およびHaralambidisら,1990b,Nucleic Acids
Res.18:501−505を参照のこと)。あるいは、潜在的反応性官能基(例えば、アミンまたはカルボキシル基、シトシン塩基のC5)を有する「リンカーアーム」の組み込みは、ペプチド連結についての取っかかりを提供する(Ruth,4th Annual Congress for Recombinant DNA Research,p.123)。免疫刺激性ポリヌクレオチドのペプチドへの連結はまた、高親和性、非共有結合相互作用(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン複合体)によって形成され得る。
【0055】
ビオチニル基は、例えば、オリゴヌクレオチドの改変塩基に結合され得る(Rogetら,Nucleic Acids Res.(1989)17:7643−7651)。ストレプトアビジン部分のペプチド部分への組み込みは、ストレプトアビジン結合体化ペプチドと、ビオチン化ポリヌクレオチドとの非共有結合複合体の形成を可能にする。
【0056】
DCの成熟をさらに活性化または刺激する様に設計される部分が、有利には、投与され得る。このような薬剤の例は、TNF−α、IFN−α、RANK−LまたはRANKのアゴニスト、CD40−LまたはCD40のアゴニストである。このような活性化剤は、TLRアゴニストとともに、以下に関与し得るさらなる成熟シグナルを提供し得る:i)組織からリンパ器官に向かって、排出リンパを通じてDCの移動を駆動すること、およびii)免疫応答、特に、抗腫瘍応答(例えば、IL−12およびIFNα(Banchereauら,1998,Nature 392:245−252))を増強する分子を分泌するようにDCを活性化すること。
【0057】
GM−CSF、G−CSFまたはFLT3−Lはまた、有利には、本発明の方法において投与され得る。GM−CSF、G−CSFまたはFLT3−Lは、循環DCのメンバーを増大させる(このDCは、次いで、腫瘍中に局所的に増員され得る)目的で投与され得る。このプロトコルは、少なくとも5〜7日間の間、GM−CSF、G−CSFまたはFLT3−Lでの全身的な予備処置を含む。別の方法は、GM−CSF、G−CSFまたはFLT3−Lの局所的投与によりDC−前駆体(単球、DCの類プラスマ細胞前駆体(plasmacytoid precursors of DC)(これは、次いで、同じ部位に送達された抗原を拾い上げ得る))のDCへの局所的分化を支持することである。
【0058】
さらに、ケモカインまたは複数のケモカインの組み合わせは、有利には、本発明の腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストとTLRアゴニストとの組み合わせにおいて投与される。有利な効果を有することが示されたケモカインとしては、CCL21、CCL3、CCL20、CCL16、CCL5、CCL25、CXCL12、CCL7、CCL8、CCL2、CCL13、CXCL9、CXCL10、CXCL11が挙げられる(例えば、Sozzaniら,1995,J.Immunol.155:3292−3295;Sozzaniら,1997,J.Immunol.159:1993−2000;Xuら,1996,J.Leukoc.Biol.60;365−371;MacPhersonら,1995,J.Immunol.154:1317−1322;Roakeら,1995,J.Exp.Med 181:2237−2247および欧州特許出願EP 0 974 357 A1(1998年7月16日に出願され、2000年1月26日に公開)を参照のこと)。一般に、腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニスト、TLRアゴニストおよび/または活性化剤および/またはサイトカインは、薬学的キャリア中の腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストおよびTLRアゴニストおよび/または抗原および/または活性化剤および/またはサイトカインの有効量を含む薬学的組成物として投与される。これらの試薬は、例えば、生理学的に無害な安定化剤および賦形剤とともに、従来の薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤(例えば、免疫原性アジュバント)中でさらなる活性成分または不活性成分と、治療用途のために組み合わされ得る。薬学的キャリアは、本発明の組成物を患者に送達するために適した、任意の適合性の非毒性物質であり得る。
【0059】
サイトカインおよび/またはケモカインは、必要に応じて、ケモカインまたはサイトカインまたはその生物学的に活性なフラグメントもしくは改変体および標的化部分を含む標的構築物を使用して、腫瘍に送達され得る。本明細書中で言及される場合「標的化部分」は、腫瘍関連抗原または腫瘍の非癌性成分によって具体的に表される構造(例えば、腫瘍血管系)を認識または標的化する部分である。標的化部分の例としては、腫瘍関連抗原または腫瘍の非癌性成分によって具体的に表される構造を認識または標的化するペプチド、タンパク質、低分子、ベクター、抗体または抗体フラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、この標的化部分は、ペプチド、タンパク質、低分子、ベクター(例えば、ウイルスベクター)、抗体または抗体フラグメントである。より好ましい実施形態において、標的化部分は、抗体または抗体フラグメントである。最も好ましい実施形態において、標的化ベクターは、ScFvフラグメントである。
【0060】
標的化部分は、ヒトにおいて以下に記載されてきたように、腫瘍細胞によって発現される抗原に特異的であり得る:例えば、葉酸レセプターについて(Melaniら,1998,Cancer Res.58:4146−4154)、Her2/neuレセプター、上皮増殖因子レセプターおよびCA125腫瘍抗原(Glennieら,2000,Immunol.Today 21:403−410)。いくつかの他の腫瘍抗原は、標的として使用され得、優先的に発現されるか、独特に発現されるか、過剰発現されるか、または腫瘍の悪性細胞によって成熟形態で発現されるかのいずれかである(Boonら,1997,Curr.Opin.Immunol.9:681−683)。これらとしては、以下が挙げられ得る:Melan−A、チロシナーゼ、p97、β−HCG、GalNAc、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−4、MAGE−12、MART−1、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC18、CEA、DDC、黒色腫抗原gp75、HKer 8、高分子量黒色腫抗原、K19、Tyr1およびTyr2、pMel 17遺伝子ファミリーのメンバー、c−Met、PSA、PSM、α−フェトプロテイン、甲状腺ペルオキシダーゼ、gp100、インスリン様増殖因子レセプター(IGF−R)、テロメラーゼおよびp53。この列挙は、網羅的であることを意図するのではないが、単に本発明の実施において使用され得る抗原の型の例示であることを意図する。あるいは、標的部分は、悪性細胞とは異なる腫瘍の成分によって、および特定の腫瘍血管において優先的に発現される抗原に特異的であり得る。αvインテグリンのファミリー、VEGFレセプターおよびプロテオグリカンNG2は、このような腫瘍血管関連抗原の例である(Pasqualiniら,1997,Nat.Biotechnol.15:542−546)。
【0061】
原発性癌および転移性癌の両方は、本発明に従って処置され得る。処置され得る癌の型としては、黒色腫、乳癌、膵臓癌、結腸癌、肺癌、神経膠腫、肝細胞癌、子宮内膜癌、胃癌、腸の癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、卵巣癌、精巣癌、肝臓癌、頭部および頸部の癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、眼の癌、膀胱癌、神経膠芽腫、および転移性癌が挙げられるが、これらに限定されない。用語「癌腫」とは、上皮組織または内分泌組織の悪性疾患をいい、呼吸器系癌腫、胃腸系癌腫、尿生殖器系癌腫、前立腺癌種、内分泌系癌腫、および黒色腫が挙げられる。この用語のように、転移性は、本明細書中で使用される場合、局所的リンパ節から離れた部位への腫瘍の拡がりとして規定される。
【0062】
有効な治療に必要な試薬の量は、多くの異なる要因に依存し、これらの要因としては、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、および投与される他の医薬品が挙げられる。従って、処置の投薬量は、安全性および有効性を最適化するように力価測定されるべきである。特定の癌の処置のための有効用量を試験する動物は、ヒトの投薬量のさらなる推定指標を提供する。種々の考案が、例えば、Gilmanら(編)(1990)GoodmanおよびGilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics,第8版、Pergamon Press;およびRemington’s Pharmaceutical Sciences,第17版(1990),Mack Publishing Co.,Easton,PAに記載されている。投与方法は、これらの文献中および以下で議論される(例えば、静脈内、腹腔内、または筋肉内投与、経皮的拡散など)。薬学的に受容可能なキャリアとしては、以下が挙げら得る:水、生理食塩水、緩衝液、および例えば、Merck Index,Merck&Co.,Rahway,New Jerseyに記載される他の化合物。徐放性処方物または徐放装置は、連続投与のために使用され得る。
【0063】
腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストおよび/またはTLRアゴニスト剤についての投薬量範囲は、アゴニスト/アンタゴニストの形態に依存して変化する。例えば、IL−10レセプター抗体の有効用量は、代表的には、約0.05〜約25μg/kg/日、好ましくは、約0.1〜約20μg/kg/日、最も好ましくは、約1〜約10μg/kg/日の範囲である。TLRアゴニストのような免疫原性組成物について、その量は、TLRアゴニストの形態、個体、どのような状態が処置されるべきか、および当業者に明らかな他の要因に基づいて変化し得る。考慮されるべき要因としては、抗原性、TLRアゴニストが複合体化されるかどうか、またはアジュバントもしくは送達分子に共有結合されるかどうか、投与経路および投与される免疫用量の回数が挙げられる。このような要因は、当該分野で公知である。適切な投薬量範囲は、樹状細胞の所望の活性化を提供する範囲である。一般に、免疫刺激性オリゴヌクレオチドの投薬量範囲は、例えば、以下のうちのほぼいずれかであり得る:0.1〜100μg、0.1〜50μg、0.1〜25μg、0.1〜10μg、1〜500μg、100〜400μg、200〜300μg、1〜100μg、100〜200μg、300〜400μg、400〜500μg。あるいは、この用量は、以下のうちのほぼいずれかであり得る:0.1μg、0.25μg、0.5μg、1.0μg、2.0μg、5.0μg、10μg、25μg、50μg、75μg、100μg。従って、用量範囲は、以下のうちのほぼいずれかの下限を有する:0.1μg、0.25μg、0.5μgおよび1.0μg;および以下のほぼいずれかの上限を有する:25μg、50μgおよび100μg。これらの組成物において、ISS含有ポリヌクレオチド対抗原のモル比は、変動し得る。各患者に与えられる絶対量は、例えば、バイオアベイラビリティー、クリアランス速度および投与経路のような薬理学的特性に依存する。
【0064】
一般的に、処置は、化合物の最適用量未満のより小さな投薬量で開始される。その後、投薬量は、最適な効果がその状況下で達成されるまで、少量ずつ増大される。
【0065】
特定の状況についての適切な投薬量および投与レジメンの決定は、当該分野の技術範囲内である。
【0066】
ベクターによって投与される腫瘍由来DC阻害性因子アンタゴニストおよびTLRアゴニストの投薬量は、主に、使用される特定のベクターの有効性および患者の状態、ならびに処置される患者の体重または体表面積に依存する。用量の大きさはまた、特定のベクターまたは特定の患者の形質導入された細胞型の投与に付随する任意の有害な副作用の存在、性質および程度により決定される。処置において投与されるベクターの有効量の決定にあたって、医師は、ベクターの循環血漿レベル、ベクターの毒性、疾患の進行、および抗ベクター抗体の産生を評価する。核酸の代表的な用量は、投与経路および遺伝子送達系に大きく依存する。送達方法および投薬量に依存して、約1μg〜100mgまたはそれ以上に容易に範囲が決められ得る。一般に、ベクターに由来する裸の核酸の用量等価物は、代表的な70kgの患者について約1μg〜100μgであり、ウイルス粒子を含むベクターの用量は、治療的核酸の等価な量を得るために計算される。
【0067】
本願発明の実施におけるGM−CSF、G−CSFまたはFLT−Lの好ましい生物学的に活性な用量は、循環CD14/CD13前駆体細胞の数の最大限の増大;DC前駆体および成熟DCの表面上の抗原提示分子の発現;T細胞に対する抗原提示活性;および/または成熟DC機能と一致する抗原依存性T細胞応答の刺激を誘導するその投薬の組み合わせである。皮下投与に使用されるGM−CSFの量は、代表的には、約0.25μg/kg/日〜約10.0μg/kg/日、好ましくは、約1.0〜8.0μg/kg/日、最も好ましくは、2.5〜5.0μg/kg/日の範囲である。特定の患者についての有効量は、上記に示すパラメーターの1つ以上の大きな変化を測定することによって確立され得る。
【実施例】
【0068】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって示され得る。
【0069】
(実施例1)
(C26−6CK腫瘍浸潤樹状細胞は、骨髄由来樹状細胞に比較した場合、LPS+抗−CD40+IFNγの組み合わせに非応答性である)
この実施例において、本発明者らは、DC浸潤C26−6CK腫瘍が、混合された白血球反応(MLR)におけるIL−12産生能力またはIL−12刺激能力を、骨髄由来DC(図1)と比べて考慮する場合、LPS+IFNγ+抗−CD40抗体に対して応答しないことを示した。全ての腫瘍細胞培養を、10% FCS(Gibco−BRL)、1mM hepes(Gibco−BRL)、Gentallin(Schering−Plough,Union,NJ)、2×10−5M β−2 メルカプトエタノール (Sigma,St Louis,MO)を補充したDMEM(Gibco−BRL,Life Technologies,Paisley Park,Scotland)中で実施した。全ての細胞培養を、5% COで、湿潤化されたインキュベーター中で、37℃で実施した。C26結腸癌およびTSA乳腺癌は、Mario Colombo(Istituto Nazionale per lo Studio e la Cura dei Tumori,Milano,Italy)によって提供された。B16F0黒色種およびLL2肺癌腫を、American Type Culture Collection(LGC,Strasbourg,France)から得た。マウスケモカイン6Ckine/SLC/CCL21を安定して分泌するように操作されたC26−6CK細胞株は、本発明者らによって以前に記載された(Vicariら、2000,J.Immunol.165:1992−2000)。C26−6CK腫瘍由来のTIDCを、抗−CD11c磁気ビーズ(Myltenyi Biotec Gmbh,Germany)を使用して富化した。骨髄由来DCを、骨髄前駆体をGM−CSF(Schering−Plough,Union,NJ)およびTNFα(R & D Systems,Minneapolis,MN)と共に5日間培養することによって得た。活性化を、10ng/ml LPS(Sigma,St Louis,MO)、20ng/ml IFNγ(R & D Systems)および20μg/ml精製FKG45.5アゴニスト抗−CD40抗体(AG Rolink,Basel Institute for Immunology,Switzerlandからのある種の贈与物)を培養培地に添加することによって、一晩実施した。図1Aは、FACS(CD11c陽性細胞に対してゲートされた)によるMHCクラスII、CD40およびCD86の表面発現の分析を示す。図1Bは、20時間(Brefeldin Aと共に2.5時間インキュベーションすることを含む)後のCD11c+細胞によるIL−12p40の細胞内発現を示す。図1Cにおいて、LPS+IFNγ+抗−CD40で刺激された混合白血球反応TIDCまたは骨髄由来DCを照射し、そして一定数の富化された同種異系T細胞(3×10
T細胞)の存在下で変動数で5日間培養した。増殖を、培養の最後の18時間の間の放射性チミン取り込みによって測定した。図1Dは、LPS+IFNγ+抗−CD40で活性化後の、特異的ELISAによる培養上清のIL−12 p70の測定を示す。
【0070】
これらの合わせた結果は、樹状細胞浸潤C26−6CK腫瘍が、LPS+IFNγ+抗−CD40の組合せでの刺激の際に、樹状細胞の代表的な機能(すなわち、同種異系T細胞を刺激する能力およびIL−12を分泌する能力)を獲得し得ないことを示唆する。これらの弱った機能は、腫瘍と樹状細胞の相互作用の結果でありそうである。
【0071】
(実施例II)
(CpG 1668+抗−IL10R組み合わせは、C26−6CK腫瘍浸潤樹状細胞におけるIL−12およびTNFαを回復する)
この実施例において、本発明者らは、CpG 1668および抗−IL10R抗体の組み合わせ投与が、C26−6CK腫瘍浸潤樹状細胞においてIL−12およびTNFαを回復することを示した(図2)。
【0072】
C26−6CK腫瘍からのTIDCを、抗−CD11c磁気ビーズを使用して富化した。活性化を、GM−CSF 10ng/mlの存在下で一晩実施した。アクチベーターを、10ng/mg LPS、20ng/ml IFNγ、20μg/ml FKG45.5アゴニスト抗−CD40抗体、5μg/ml CpG 1668(配列:TCC−ATG−ACG−TTC−CTG−ATG−CT(ホスホロチオエート改変)MWG Biotech,Germany)および10μg/mlの抗−IL10R(クローン1B13A、Castroら、2000,J. Exp.Med.192:1529−1534)で使用した。IL−12、p70およびTNFαを、24時間刺激後、特異的ELISAを使用して、培養上清において測定した。
【0073】
全部で、これらの結果は、CpG 1668は、それ自体、C26−6CK腫瘍浸潤DCによるIL−12産生を誘導しないことを示す。抗−IL10Rは、それ自体効果を有さない(示さず)か、またはLPS+IFNγ+抗−CD40と合わせた場合、最小の効果を有する。抗−IL10RとCpG 1668との組み合わせのみが、C26−6CK腫瘍浸潤DCから生体活性なIl−12およびTNFαの有意な産生を誘導し得た。
【0074】
(実施例III)
(CpG 1668+抗−IL10Rの組み合わせは、C26−6CK腫瘍浸潤樹状細胞においてMLR刺激能力を回復する)
この実施例において、本発明者らは、CpG 1668と抗−IL−10レセプター抗体との組み合わせた投与が、MLR刺激能力を回復することを示した。
【0075】
C26−6CK腫瘍由来のTIDCを、抗−CD11c磁気ビーズを使用して富化し、GM−CSFおよびLPS、IFNγ抗−CD40、抗−IL10RとCpG 1668との種々の組み合わせを使用して一晩培養した。次いで、細胞を、照射し、一定数の富化された同種異系T細胞(3×10 T細胞)の存在下で、5日間、変動数で培養した。増殖を、培養の最後の18時間の間、放射性チミジン取り込みによって測定した。結果は、腫瘍浸潤DCが、MLRアッセイにおいて弱い刺激物質細胞であるが、これらの刺激能力が、CpG1668で最小に増強され得、抗−IL10R+LPS+IFNγ+抗−CD40の組み合わせでさらに増強され、そして抗−IL10RとCpG 1668との組み合わせで最高に増強されることを示す。従って、この実施例は、抗−IL10R+CpG 1668が、MLRにおけるDC刺激能力を回復する最も適切な組み合わせであることを示す。これは、インビボでのナイーブなT細胞のより良いプライミングに解釈され得、従って、癌を処置するためのIL−10アンタゴニストとTLR9アゴニストとの組み合わせを使用する場合、腫瘍に対してより良いT細胞媒介免疫応答に解釈され得る。
【0076】
(実施例IV)
(C26野生型由来の腫瘍浸潤樹状細胞および他の組織学的(histiological)性質由来の腫瘍は、LPS+IFNγ+抗−CD40に非応答性であるが、CpG
1668+抗−IL10Rに応答してIL−12を産生する)
この実施例は、C26野生型由来腫瘍浸潤樹状細胞および他の組織学的性質由来の腫瘍が、LPS+IFNγ+抗−CD40に非応答性であるが、CpG 1668+抗−IL10Rに応答してIL−12を産生することを示す。
【0077】
C26結腸癌細胞、B16黒色腫およびLL2肺癌腫瘍由来のTIDCは、全て皮下で増殖し、抗−CD11c磁気ビーズを使用して富化し、GM−CSFおよびLPS、IFNγ、抗−CD40、抗−IL10RとCpG 1668の種々との組み合わせの存在下で、一晩培養した。20時間(Brefeldin Aと共に2.5時間インキュベーションすることを含む)後の、IL−12p40の細胞内発現 対 CD11cの表面発現のFACS分析。図4は、C26−6CK腫瘍について見出されるように、親C26腫瘍および異なる組織学的起源の腫瘍から単離されたDCが、LPS、IFNγ、抗−CD40での活性化に対して応答せず、IL−12を産生することによってTLR−9アゴニストCpG 1668と抗−IL10Rとの組み合わせに対して応答することを示す。従って、これらの観察は、IL10アンタゴニストとTLR−9アゴニストとの組合せが、種々の腫瘍において有効な療法であることを示唆する。
【0078】
(実施例V)
(C26−6CK腫瘍モデルにおけるCpG1668+抗−IL10R抗体の治療効果)
1×10 C26−6CK腫瘍細胞を、7匹の8週齢雌マウスBALB/cの群において、0日目にs.c.で移植し、以下のように処置した:
10μgのCpG 1668細胞を、7日目、14日目、および21日目で、腫瘍周辺(腫瘍が小さすぎる場合)または腫瘍内に注射した。
【0079】
250μgの抗−IL10R精製抗体を、7日目に開始して、1週間に2回腹腔内に注射した(24日目に中止した)。コントロール抗体は、精製GL113抗体であった。
【0080】
腫瘍発達を、触診およびカリパスを使用した腫瘍測定によって、1週間に3回評価した。腫瘍容積=I×L×0.4であり、Iは、小直径であり、Lは、大直径である。マウスを、腫瘍が、1500mmを超えた場合または人道的基準のために屠殺した。
【0081】
図5は、コントロール抗体または抗−IL10R抗体を単独で注射された全てのマウスが、7〜10日以内に腫瘍を発達させたことを示し、結局、約4週間で動物の屠殺を導いた。TLR−9アゴニストCpG 1668の注射は、1/7のマウスが、腫瘍を発達しなかったので、わずかな効果を有した。さらに、生存は、このCpG 1668群において僅かにより良好であり、腫瘍の平均容積は、3週間後のコントロール群より小さかった。対照的に、CpG 1668と抗−IL10Rとの組合せで処置されたマウスは、触知可能な腫瘍を発達するが、7匹のうち6匹のマウスについてこれらの腫瘍を拒絶した。続いて、これらのマウスは、残りの実験について腫瘍を有さないままであった。これらの結果は、TLR−9アゴニストとIL−10アンタゴニストとの組み合わせが、C26−6CKモデルにおいて治療価値を有することを示し、このことは、この組合せが、ヒトを含む他の腫瘍を処置するために使用され得ることを示唆する。
【0082】
(実施例VI)
(CpG 1668+抗−IL10R抗体のC26腫瘍モデルにおける治療効果)
5×10 C26腫瘍細胞を、7匹の8週齢雌マウスBALB/cの群において0日目で、s.c.移植し、以下のように処置した:
5μgのCpG 1668を、7日目、14日目、および21日目に腫瘍内に注射した。
【0083】
250μgの抗−IL10R精製抗体を、7日目、14日目、および21日目に腹腔内注射した。コントロール抗体は、精製GL113抗体であった。
【0084】
腫瘍発達を、触診およびカリパスを使用した腫瘍測定によって、1週間に3回評価した。腫瘍容積=I×L×0.4であり、Iは、小直径であり、Lは、大直径である。マウスを、腫瘍が、1500mmを超えた場合または人道的基準のために屠殺した。
【0085】
図6は、コントロール抗体、CpG1668または抗−IL10R抗体を単独で注射された全てのマウスが、7日以内に腫瘍を発達させたことを示し、結局、約3〜4週間で動物の屠殺を導いた。対照的に、CpG 1668と抗−IL10Rとの組合せで処置されたマウスは、触知可能な腫瘍を発達するが、7匹のうち6匹のマウスについてこれらの腫瘍を拒絶した。続いて、これらのマウスは、残りの実験について腫瘍を有さないままであった。これらの結果は、TLR−9アゴニストとIL−10アンタゴニストとの組み合わせが、C26モデルにおいて治療価値を有することを示し、このことは、この組合せが、ヒトを含む他の腫瘍を処置するために使用され得ることを示唆する。
【0086】
(実施例VII)
(B16F0黒色腫モデルにおけるCpG1668+抗−IL10R抗体の治療効果)
5×10 B16F0腫瘍細胞を、7匹の8週齢雌マウスC57BL/6の群において、0日目にs.c.で移植し、以下のように処置した:
5μgのCpG 1668細胞を、7日目、14日目、および21日目で、腫瘍内に注射した。
【0087】
250μgの抗−IL10R精製抗体を、7日目、14日目、および21日目に腹腔内に注射した。コントロール抗体は、精製GL113抗体であった。
【0088】
腫瘍発達を、触診およびカリパスを使用した腫瘍測定によって、1週間に3回評価した。腫瘍容積=I×L×0.4であり、Iは、小直径であり、Lは、大直径である。マウスを、腫瘍が、1500mmを超えた場合または人道的基準のために屠殺した。
【0089】
図7は、コントロール抗体、CpG1668または抗−IL10R抗体を単独で注射された全てのマウスが、7日以内に腫瘍を発達させたことを示し、結局、約3〜4週間で動物の屠殺を導いた。CpG 1668単独は、生存に対して、わずかな効果を有した。対照的に、CpG 1668と抗−IL10Rとの組合せで処置されたマウスは、触知可能な腫瘍を発達するが、7匹のうち6匹のマウスについてこれらの腫瘍を拒絶した。続いて、これらのマウスは、残りの実験について腫瘍を有さないままであった。これらの結果は、TLR−9アゴニストとIL−10アンタゴニストとの組み合わせが、B16F0モデルにおいて治療価値を有することを示し、このことは、この組合せが、ヒトを含む他の腫瘍を処置するために使用され得ることを示唆する。
【0090】
(実施例VIII)
C26−6CK腫瘍由来の腫瘍浸潤DCは、抗−IL10抗体とCpG 1668との組み合わせに応答してIL−12を産生し得る。
【0091】
C26−6CK腫瘍由来のTIDCを、抗−CD11c磁気ビーズを使用して富化し、GM−CSFおよび抗−IL10精製抗体とCpG 1668との種々の組み合わせの存在下で一晩培養した。20時間(Brefeldin Aと共に2.5時間インキュベーションすることを含む)後の、IL−12p40の細胞内発現 対 CD11cの表面発現のFACS分析。
【0092】
図8は、CpG 1668と抗−IL10Rとの組み合わせが、C26−6CK腫瘍浸潤樹状細胞におけるIL−12産生を誘導し得ることを示し、このことは、IL10それ自体のアンタゴニストが、有効量のTIR−9アゴニストと組み合わせる場合に、癌の処置において有効であることを示唆する。
【0093】
(実施例IX)
(骨髄由来DC活性化のC26腫瘍由来の上清による阻害を、抗−IL10Rおよび/またはインドメタシン(シクロオキシゲナーゼのインヒビター)によって回復し得る)
骨髄由来DCを、C26腫瘍由来の10%v/vの上清の存在下または非存在下で、5日間、骨髄前駆体をGM−CSFおよびTNFαと共に培養することによって得た。腫瘍上清を調製するために、BALB/cマウスにおいて皮下増殖した0.5cmのC26腫瘍を、切除し、切り刻み、次いで、10ml DMEM中で48時間培養した。得られた上清を、0.2μmで濾過し、使用の前に凍結した。この上清は、特異的ELISA(R&D Systems)によって決定されるように、0.25ng/mlのIL−10および50ng/mlのPGEを含んだ。上清中のPGE2合成を阻害するために、シクロオキシゲナーゼのインヒビター(インドメタシン(Sigma))を、48h培養の間、1μg/mlで添加した。
【0094】
5日後、骨髄DCを、10μg/mlの抗IL10R抗体の存在下または非存在下で、最適用量のLPS、IFNγおよび抗−CD40抗体の異なる組み合わせを用いて活性化した。DCの活性化を、FACSによる共刺激分子CD40およびCD86の発現によって測定し、そして細胞内染色によって検出されるIL−12の産生によって測定した。
【0095】
図9は、C26腫瘍上清が、DC活性化を阻害し得ることを示す。インドメタシンまたは抗−IL10Rの存在下で作られる上清のDC培地への添加によって効果が部分的に軽減される一方、両方の組み合わせは、CD40およびCD86のアップレギュレーションならびにIL−12発現を十分回復し得る。
【0096】
これらの実験は、シクロオキシゲナーゼの産物(特に、プロスタグランジン)がまた、腫瘍由来DC阻害性因子であることを強く示唆する。
【0097】
(実施例X)
(CpG 1668+インドメタシンのC26−6CK腫瘍モデルにおける治療効果)
5×10 C26−6CK腫瘍細胞を、7匹の6週齢雌マウスBALB/cの群において0日目で、s.c.移植し、以下のように処置した:
5μgのCpG 1668を、7日目、14日目、および21日目に腫瘍内に注射した。
【0098】
飲料水中の5μg/mlのインドメタシンを、5日目に開始し、28日目まで自由摂取。
【0099】
腫瘍発達を、触診によって、1週間に3回評価した。マウスを、腫瘍が、1500mmを超えた場合または人道的基準のために屠殺した。
【0100】
図10は、全てのコントロールマウスが、7日以内に腫瘍を発達させたことを示し、結局、約3〜4週間で動物の屠殺を導いた。CpG群またはインドメタシン群における1/7のマウスのみが、腫瘍を発達させなかった。対照的に、CpG 1668とインドメタシンとの組合せで処置されたマウスの4/7は、腫瘍を発達しなかった。これらの結果は、TLR−9アゴニストとシクロオキシゲナーゼのインヒビターとの組合せが、C26−6CKモデルにおいて治療価値を有することを示し、このことは、この組合せが、ヒトを含む他の腫瘍を処置するために使用され得ることを示唆する。
【0101】
本発明の多くの改変およびバリエーションは、本発明の意図および範囲を逸脱することなくなされ得、このことは、当業者に明らかである。本明細書中に記載される特定の実施形態は、例のみのために提供され、本発明は、添付の特許請求の範囲の用語に加えてこのような特許請求の範囲が権利を与える等価物の全範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−53140(P2010−53140A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274004(P2009−274004)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【分割の表示】特願2003−546932(P2003−546932)の分割
【原出願日】平成14年11月26日(2002.11.26)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】