説明

腸内環境改善作用を有する組成物

【課題】血液透析患者用の補助栄養組成物を提供することを課題とし、さらには通性嫌気性菌に偏った血液透析患者の腸内環境を偏性嫌気性菌が増殖しやすい環境にすることで、便秘を改善する補助栄養組成物を提供すること。
【解決手段】L−カルニチン、オリゴ糖及び食物繊維を含有してなることを特徴とする補助栄養組成物であり、さらにコエンザイムQ10或いはビフィズス菌を含有する組成物であり、血液透析患者、便秘症患者或いはダイエット用に使用され、エネルギー代謝の改善剤、腸内環境の改善剤としての組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析患者、便秘症患者等が使用することにより、腸内環境を効果的に改善することができる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の飽食の世界にあっては、食生活の偏りが認められ、逆に種々の栄養素の必要性が謳われてきており、各種の栄養素を含有する栄養補助食品、いわゆるサプリメントが数多く発売されている。
【0003】
そのなかでもL−カルニチンは、肝臓における脂肪酸の酸化を促進する物質であると報告されて以来、ミトコンドリアの膜を通過する活性型脂肪酸の担体として作用することが明らかになり、心臓や骨格筋に主として存在し、脂質代謝、特に脂肪酸酸化と密接な関係がある重要な栄養素である。また、最近では脂肪酸化のみならず、脂肪酸合成、ケトン体形成、グリセライド合成等広く脂質代謝に関連することが明らかにされ、さらに、虚血心、不整脈に対する効果も報告されている。
【0004】
L−カルニチンは、脂肪酸代謝のみならず、虚血心、不整脈等にも効果があり、高脂血症を始めとする成人病対策にも有効であると考えられている重要な低分子物質であり、血液透析患者に多くみられる筋痙攣、易疲労感、脱力感、心機能低下などは、このL−カルニチンの欠乏が関係しているといわれている。しかしながら、L−カルニチンは、加齢と共にその生合成量も低下してきており、血液透析患者においては通常の食事では充分に補充することができないものであり、したがって、L−カルニチンを効果的に補充する必要がある。
【0005】
ところで、血液透析患者にあっては、一般的に健常人に比較して血中のトリメチルアミンの濃度が高値であることが報告されている。トリメチルアミンは通常、カルニチン、コリン等が腸内細菌により分解されることによって産生すると考えられており、産生されたトリメチルアミンは、腸管から吸収され、肝臓で酵素により酸化されて、臭いのないトリエチルアミン N−オキサイドとなって尿中に排泄される。しかしながら、血液透析患者では、尿中への排泄がないため、血中にトリメチルアミンが留まり、時として魚臭様の体臭の原因となる場合もある。
【0006】
1984年にReboucheらは、ラットを用いてカルニチンの吸収に関する検討を報告している(非特許文献1)。すなわち、通常のラットに対して経口的に、或いは静脈内にカルニチンを投与し、その分解率を比較し、同時に、無菌的に飼育されているラットにカルニチンを経口投与し、通常のラットとの分解率を比較している。それによると、尿中のカルニチン分解物(トリメチルアミン N−オキサイド)の生成率は、「通常ラットの経口投与」>「通常ラットの静脈内投与」>「無菌ラットの経口投与」の順となり、カルニチンの分解には腸内細菌の影響が強いものであることが示唆されている。
【0007】
また、同じ経口投与であっても、低用量(95μg/kg)のカルニチンの投与は、高用量(136mg/kg)のカルニチンの投与に比較して組織中への移行率は高く、尿中及び糞中への排泄率は低いものであった。
【0008】
さらに、1991年Reboucheらは、ヒトにラベルしたカルニチンを経口投与して実験を行い、投与後ラベル化したカルニチンの尿中及び糞便中への出現を11日間に亘って観察している(非特許文献2)。その結果、ラベル体の尿中及び糞便中への排泄率は、それぞれ47%及び55%であったとされている。主な代謝物は、トリメチルアミン N−オキサイド(尿中に排泄され、投与量の8〜48%)とγ−ブチロベタイン(糞便から排泄され、投与量の0.44〜45%)であり、尿中排泄される総カルニチンは、摂取量の16〜23%であり、糞便中から排泄される総カルニチンは、微量なもの(2%以下)でしかなかった。
このことは、経口投与されたカルニチンは、生体内吸収される以外、そのまま腸管を素通りして大腸において腸内細菌により分解され、トリメチルアミンとして吸収され、肝臓で酸化を受けトリメチルアミン N−オキサイドとなり、尿中に排泄されるものである。
【0009】
したがって、血液透析患者にあっては、尿中排泄が行われないことから、血中トリメチルアミン濃度を低下させて、かかる腎毒性物質の生成を減少させてやるためには、投与されたカルニチンの腸管での腸内細菌による分解を極力抑えてやる必要があるといえる。すなわち腸内の環境を改善させ、カルニチンの分解を抑制してやる必要がある。
【0010】
一方、ある種のオリゴ糖が、ヒトにとって有益な腸内細菌であるビフィズス菌(ビフィドバクテリウム:Bifidobacterium)や乳酸菌であるラクトバチルス(Lactobacillus)で資化されることが明らかになり、オリゴ糖を継続的に摂取することで、ビフィズス菌の増殖が増大し、腸内細菌叢を改善することが報告されている。
この腸内細菌叢であるビフィズス菌或いは大腸菌について、オリゴ糖の存在下カルニチンを添加して培養を検討したところ、大腸菌はカルニチンを分解するものの、ビフィズス菌自体は、カルニチンを分解しないものであった。
【0011】
また、ビフィズス菌と大腸菌をキシロオリゴ糖とカルニチンを添加した培地で混合培養すると、大腸菌の増殖には変化がないものの、ビフィズス菌については、何も添加しないビフィズス菌単独培養に比較して、大きく増殖する傾向が認められた。
さらに、ビフィズス菌と大腸菌をキシロオリゴ糖とカルニチンを添加した培地で混合培養すると、培地中に加えたカルニチンの分解が,大腸菌単独で培養したときよりも抑制されることが認められた。
【0012】
ビフィズス菌と大腸菌を、カルニチンを添加させ、糖類を含まない培地で混合培養すると、ビフィズス菌は増殖しないが、大腸菌は増殖することが認められた。なお大腸菌の増殖に伴って、培地中のカルニチンは完全に分解されていた。これに対して、ビフィズス菌のみを、カルニチンを添加させ、糖類を含まない培地で培養した場合には、ビフィズス菌の増殖は認められず、また添加したカルニチンも分解しないものであった。
【0013】
これらの事実は、腸内細菌叢であるビフィズス菌及び大腸菌について、ある種の糖類の添加により資化され、大腸菌の増殖に変化はないものの、ビフィズス菌の増殖を顕著に増大させ、その増殖によりカルニチンの分解が抑制されていることを示していることに他ならない。
【0014】
また、血液透析患者は、カリウム、水分の摂取制限があるために、食物繊維を豊富に含む野菜、果物を充分量摂取することができない。また、血中カリウム、リンの濃度を下げる薬剤を服用する機会も多く、これらの薬剤の副作用によって便秘が増悪されている。このために、腸内の保水を行い、便量を増やすために食物繊維の補充により腸内環境を改善することも重要な要素である。
【0015】
さらに、コエンザイムQ10(CoQ10)は、一般名:ユビデカレノンとして、ヒドロキノン体やユビクロメノールなどを生成する物質として知られている。このコエンザイムQ10は、補酵素として生物活性をもつだけでなく、酸素利用効率を改善させる作用を有するビタミン様作用物質として知られている。また、代謝性強心薬でもあり、軽度及び中程度のうっ血性心不全改善薬などの薬理効果が認められている。
【0016】
このコエンザイムQ10は加齢により欠乏しやすくなり、また高齢者に多い心疾患、例えば、虚血性心疾患等の予防、または症状の軽減のためにも、栄養素としてのコエンザイムQ10を補給することが望ましい。一般的に、コエンザイムQ10は魚類、肉類や海草に多く含まれていることが知られているが、天然食品素材でコエンザイムQ10の含有量が高いものはごく限られており、したがって、通常の食事において天然食品素材からの不足分を補う量のコエンザイムQ10を補給することは困難である。
【0017】
このように、コエンザイムQ10もエネルギー産生の場で非常に重要な役割を担っているばかりでなく、抗酸化作用を発揮することから、血液透析による酸化ストレスに晒されている患者にはなくてはならない成分でもある。
【非特許文献1】Biochemistry, 23(26):6422-6426(1984)
【非特許文献2】Metabolism, 40(12):1305-1310(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって本発明は、上記の検討結果をベースとして、一義的には血液透析患者用の補助栄養組成物を提供することを課題とし、特に嫌気性菌に偏った血液透析患者の腸内環境を嫌気性菌が増殖しやすい環境にすることで、便秘を改善する補助栄養組成物を提供することを課題とする。
さらに本発明は、かかる腸内環境の改善により、血液透析患者、便秘症患者或いはダイエット用に使用することができる補助栄養組成物を提供することを課題とする。
また、加えてエネルギー代謝の改善剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる課題を解決するための本発明は、基本的態様として、以下の構成からなるものである。
(1)L−カルニチン、オリゴ糖及び食物繊維を含有してなることを特徴とする補助栄養組成物;
(2)さらにコエンザイムQ10を含有することによる上記(1)に記載の組成物;
(3)血液透析患者、便秘症患者或いはダイエット用に使用することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組成物;
(4)エネルギー代謝の改善剤としての上記(1)又は(2)に記載の組成物;
(5)腸内環境の改善剤としての上記(1)又は(2)に記載の組成物;
(6)さらにビフィズス菌を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物;
である。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、腸内環境を改善する補助栄養組成物が提供され、特に血液透析患者、便秘症患者或いはダイエット用の補助栄養組成物として効果的なものである。
具体的には、本発明が提供する補助栄養組成物は、特に摂取したL−カルニチンの生体内、すなわち腸内での分解を抑え、また、コエンザイムQ10によるエネルギー代謝を改善し、血液透析患者にみられる酸化ストレスを回避する利点を有している。
また、血液透析患者の不足しがちな食物繊維を補充するものでもあり、腸内の保水を確保し、便量を増やすものであり、したがって、ダイエット用の栄養補助食品としても極めて効果的なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、上記したように、基本的には、L−カルニチン、オリゴ糖及び食物繊維を含有してなることを特徴とする血液透析患者、便秘症患者或いはダイエット用の補助栄養組成物であり、特に、血液透析患者の不足する各種栄養素を効果的に補充する補助栄養組成物である。
【0022】
上記の組成物を構成するL−カルニチンとしては、L−カルニチン又はアセチル L−カルニチン、ブチリル L−カルニチン、バレリル L−カルニチン或いはイソバレリル L−カルニチンから選択されるアルカノイル L−カルニチン又はその薬理学的に許容される塩を挙げることができる。そのような塩としては、酒石酸塩、フマル酸塩、マグネシウムクエン酸塩、塩酸塩等を挙げることができるが、なかでも、L−カルニチン酒石酸塩は、そのもの自体に吸湿性がなく好ましく使用することができる。
【0023】
本発明が提供する補助栄養組成物にあっては、かかるL−カルニチンを10〜500mg程度摂取するように配合するのがよい。
【0024】
また本発明の栄養補助食品においては、腸内におけるL−カルニチンの分解を抑制するために、腸内におけるビフィズス菌の増殖を増大させるものであり、そのためにはL−カルニチンと共にオリゴ糖を摂取するよう配合することを必須とする。
本発明にいうオリゴ糖とは、一般にブドウ糖や果糖などの単糖類が2〜10個程度結びついたものを総称する。したがって、二糖類であるショ糖、乳糖、麦芽糖等も、分子構造からオリゴ糖ということになる。そのなかでも本発明においてはキシロビオースを主成分とするキシロオリゴ糖を用いるのがよい。
【0025】
このオリゴ糖は、腸内ビフィズス菌を強力に増殖させると共に、腸内において腸内細菌により発酵すると、酢酸や乳酸などの有機酸を産生し、腸内環境を酸性にする。また産生された酢酸や乳酸などの有機酸は腸を刺激し、蠕動運動を活発化し、便秘の改善が行われるものと考えられる。
【0026】
本発明の組成物におけるオリゴ糖の最大の作用は、腸内細菌であるビフィズス菌を腸内で増殖させ、それによるL−カルニチンの分解を抑制させることにある。
また、上記したように、血液透析患者にあっては、尿中排泄が行われないことから、血中トリエチルアミン濃度を低下させ、かかる腎毒性物質の生成を減少させるべく、投与されたカルニチンの腸管での腸内細菌による分解を極力抑制させることにある。
【0027】
かかる点を以下の試験例により確認をした。
試験例1:大腸菌(E. coli)によるL−カルニチンの分解に対するビフィズス菌の作用の検討
【0028】
[目的]
経口摂取されたL−カルニチンは小腸で吸収されるが、未吸収L−カルニチンは腸内細菌により代謝分解され、分解物は腸管から吸収されることが報告されている。
キシロオリゴ糖は、大腸内でビフィズス菌によって資化されることが知られており、キシロオリゴ糖存在下で大腸菌と混合培養したときに、大腸菌の増殖が抑制されるかどうかを検討する。
【0029】
[方法]
(1)ブドウ糖を最終濃度が0.5%となるよう添加したPYF培地10mLに、大腸菌またはビフィズス菌を接種し、嫌気的に37℃、18〜24時間静置培養した。
(2)実験群の1群、2群及び3群の培地は、PYF培地(ブドウ糖不含有)10mLを主体に、L−カルニチンを最終濃度0.4mg/mLとなるように添加し、さらに、キシロオリゴ糖を最終濃度0.5%となるよう添加した。
また、実験群の4群、5群及び6群の培地は、PYF培地(ブドウ糖不含有)10mLを主体に、L−カルニチンを最終濃度0.4mg/mLとなるように添加し、キシロオリゴ糖の添加は行わなかった。
上記の(1)の大腸菌を、PYF培地(ブドウ糖不含有)で10,000倍に希釈し、1群、3群、4群及び6群に0.1mLずつ加えた。
また、上記(1)のビフィズス菌を、1群、2群、4群及び5群に0.1mLずつ加えた。
これらの条件を表にまとめると下記表1のようになる。
【0030】
【表1】

+:添加あり
−:添加なし
【0031】
上記の各実験群の培地を、嫌気的条件下で37℃、20〜24時間培養した。なお、試験は、各群n=3で行った。
(3)20〜24時間培養後、各培養液中の大腸菌及びビフィズス菌の生菌数を、大腸菌はTS寒天培地を用いて好気的条件下に37℃/24時間培養し;ビフィズス菌にあっては、BL寒天培地を用いて嫌気的条件下に37℃/48時間培養し、その各コロニー数を測定した。
(4)残りの培養液を遠心分離し、菌体と上清とに分け、上清のpHを測定した後上清中のL−カルニチン濃度を測定した。
【0032】
[結果]
それらの結果を下記表2及び3にまとめて示した。
表2:培養液中の生菌数(菌数/mL)
【0033】
【表2】

【0034】
表3:培地中のpHと総カルニチン濃度、及び培養後の上清のpHと総カルニチン濃度
【0035】
【表3】

【0036】
以上の結果からも良く判明するように、大腸菌は、キシロオリゴ糖の存在の有無に拘わらず増殖し、添加したL−カルニチンをことごとく分解していた。ビフィズス菌は、キシロオリゴ糖存在下ではキシロオリゴ糖を代謝し、酸を産生し増殖したが、キシロオリゴ糖の存在しない条件下では増殖できず、また、いずれの条件下においてもL−カルニチンの分解はなかった。
キシロオリゴ糖を添加した条件で大腸菌とビフィズス菌を混合培養したものでは、キシロオリゴ糖によりビフィズス菌の増殖が増大され、培地が酸性サイドになっていることで大腸菌の増殖が抑えられ、その結果、L−カルニチンの分解が抑制されたことがよく理解される。
【0037】
これに対して、キシロオリゴ糖を添加しない条件下で、大腸菌とビフィズス菌を混合培養したものでは、ビフィズス菌が増殖できないため、大腸菌の増殖が抑制されず、増殖した大腸菌によりL−カルニチンが分解されつくされていた。このことから、キシロオリゴ糖を特異的に資化するビフィズス菌を増殖させることの重要性が理解できる。
【0038】
以上の試験結果から、本発明におけるオリゴ糖の最大の作用として、腸内でビフィズス菌を増殖させ、それによるL−カルニチンの分解を抑制させる特徴が良く判明した。
その場合のオリゴ糖としてキシロオリゴ糖を300〜3000mg含有させればよい。
【0039】
また、本発明が提供する補助栄養組成物にあっては、食物繊維を配合することを特徴とする。かかる食物繊維の配合は、一緒に摂取するオリゴ糖と共に有益な腸内における乳酸菌及びビフィズス菌の増殖が増大し、カルニチンの分解率を低下させることとなる。
そのような食物繊維としては、好ましくは難消化性デキストリンを挙げることができ、その摂取量は、1日に取るべき食物繊維量15〜21gのうち、不足しているといわれ留量が5〜9gであることから、1日当たりの量として2000〜8000mg含有するのがよい。
【0040】
また、本発明が提供する補助栄養組成物においては、更にコエンザイムQ10を配合することができる。かかるコエンザイムQ10にあっては、1〜100mg摂取するように配合されていればよい。すなわち、コエンザイムQ10は、上記したように、加齢と共に欠乏しやすい成分であり、また血液透析患者では、血液透析によるコエンザイムQ10の損失が多いことから、これらの不足を補い、エネルギー代謝を改善するものであり、その様な目的に使用するのに充分な量として、1〜100mgを摂取するよう配合されていればよい。
【0041】
すなわち、コエンザイムQ10はエネルギー産生の場で非常に重要な役割を担っている物質であり、抗酸化作用を発揮することから、血液透析による酸化ストレスに晒されている患者にはなくてはならない成分でもある。しかしながら、血液透析患者は、週3回行う血液透析により、低分子物質であるL−カルニチン、コエンザイムQ10等の成分を失っていることとなるが、これらの成分は、加齢と共にその生合成量も低下してきており、血液透析患者においては通常の食事では充分に補充することができず、したがって、効果的に補充する必要がある。
【0042】
本発明が提供する栄養補助食品は、腸内におけるビフィズス菌及び乳酸菌の増殖を増大させ、腸内環境を改善させることで、腸内におけるL−カルニチンの分解を抑制するものである。そのためにL−カルニチンと共にオリゴ糖及び食物繊維を摂取するよう配合されるものである。さらにエネルギー代謝の改善を目的として、更にコエンザイムQ10を配合するものである。これにより、腸内ビフィズス菌及び乳酸菌を強力に増殖させ、有益な腸内細菌による発酵により酢酸や乳酸などの有機酸が産生され、腸を刺激し、蠕動運動を活発化することにより便秘の改善が行われる。
【0043】
このように、本発明が提供する栄養補助組成物は、腸内細菌であるビフィズス菌を腸内で増殖させ、それによるL−カルニチンの分解を抑制させることにあるが、腸内ビフィズス菌を補充する点で、さらにビフィズス菌を含有させることもできる。
すなわち、血液透析患者の腸内細菌叢には、有益なビフィズス菌や乳酸菌が健常人に比して非常に少なく、大腸菌が健常人に比して非常に多いことが知られている。そこで、血液透析患者に対しては、有益なビフィズス菌を補充し、L−カルニチンの分解を抑制し、さらに腸管を酸性側に傾き、蠕動運動が活発化し、便秘の改善が行われるものである。
【0044】
以上のとおり、本発明の補助栄養組成物にあっては、基本的には、L−カルニチン、オリゴ糖及び食物繊維を含有してなり、さらにコエンザイムQ10或いはビフィズス菌を含有することを特徴とする血液透析患者、便秘症患者或いはダイエット用の栄養補助食品であり、血液透析患者の不足する各種栄養素を効果的に補充する栄養補助組成物である。かかる組成物を摂取した場合には、摂取したL−カルニチンの生体内、すなわち腸内での分解を抑え、また、コエンザイムQ10による血液透析患者にみられる酸化ストレスを回避するものである。
また、血液透析患者の不足しがちな食物繊維を補充するものでもあり、腸内の保水を確保し、便量を増やすものであり、したがって、ダイエット用の栄養補助組成物としても極めて効果的なものである。
【0045】
実施例1:錠剤としての栄養補助食品
配合処方:
L−カルニチン 200mg
コエンザイムQ10 30mg
ビフィズス菌 10億個
キシロオリゴ糖 700mg
難消化性デキストリン 3000mg
以上の配合処方により1日3回摂取の栄養補助食品としての錠剤を作製した。
【0046】
実施例2〜7:
下記の表4に記載の配合処方により、1日3回摂取の栄養補助食品としての錠剤を作製した。
【0047】
【表4】

単位:mg(1日分量を示す)
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、一義的には血液透析患者用の不足するL−カルニチン或いはコエンザイムQ10を補い、脂質エネルギー代謝を高め、骨格筋、心筋の動きを向上させると共に、酸化のストレスに晒されている血液透析患者の抗酸化作用を高める作用を有する補助栄養組成物が提供される。
本発明の栄養補助組成物は、通性嫌気性菌に偏った血液透析患者の腸内環境を偏性嫌気性菌が増殖しやすい環境にすることで、便秘を改善する組成物であり、血液透析患者に限らず、便秘症患者の便秘を改善するものでもある。
また、食物繊維を補充するものでもあり、腸内の保水を確保し、便量を増やすものであり、したがって、ダイエット用の栄養補助組成物としても効果的なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−カルニチン、オリゴ糖及び食物繊維を含有してなることを特徴とする補助栄養組成物。
【請求項2】
さらにコエンザイムQ10を含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
血液透析患者、便秘症患者或いはダイエット用に使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
エネルギー代謝の改善剤としての請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
腸内環境の改善剤としての請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
さらにビフィズス菌を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。

【公開番号】特開2007−161638(P2007−161638A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359262(P2005−359262)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】