説明

膜分離式活性汚泥処理装置及びその方法

【課題】有効な膜分離面積を減少させず、均一かつ安定した膜面の洗浄に必要な被処理水の流速を与え好気槽の循環を行う膜分離式活性汚泥処理装置、及びその方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の膜分離式活性汚泥処理装置10は、槽内に保持した活性汚泥18によって被処理水16を生物学的に好気処理する好気槽12と、好気処理に必要な空気を供給する散気手段20と、好気槽12内に浸漬された膜分離手段30と、を備え、好気槽12内で膜分離手段30と散気手段20を垂直方向に区分けする分離壁50を形成し、分離壁50には、散気手段20の散気によって生じる被処理水16の上昇流が水面下を側方移動して膜分離処理手段30側へ流入する上部開口52と、上部開口52から流入した上昇流が下降流となって膜分離手段30の分離膜間を通過し下方から散気手段20側へ流出する下部開口54と、を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に活性汚泥を保持した好気槽内に膜分離手段を浸漬した膜分離式活性汚泥処理装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理水中の有機物や窒素、リンなどを高効率に除去する装置として膜分離式活性汚泥処理装置が用いられている。図6はこの種の膜分離式活性汚泥処理装置100を模式的に示したものである。好気槽102には被処理水流入管102aから流入した被処理水108が満たされている。好気槽102内には活性汚泥109が予め高濃度に保持されるとともに、膜分離手段104が浸漬されている。膜分離手段104としては、両面に分離膜を張った方形の平膜を狭い間隔で横方向に多数枚、並列させた構造のものが一般的に採用されている。膜分離手段104の下方には散気手段106が配設され、ブロワ106aから供給された空気を膜分離手段106に向けて散気する。膜分離手段104には平膜を透過した処理水を装置外に排出する吸引ポンプ104aが排出管104bの途中に設けられている。
【0003】
上記の構成において、好気槽102内に流入した被処理水108は活性汚泥109によって生物学的に好気処理され、被処理水108中の有機物や窒素、リンなどが除去される。膜分離手段104では吸引ポンプ104aの吸引力によって膜分離が行われ、活性汚泥109と処理水とが固液分離される。平膜を透過した処理水は排出管104bを介して装置外に排出される。この結果、活性汚泥109が好気槽102内に留まることになり、好気処理による増殖分と合わせて、好気槽12内では活性汚泥が高濃度に保持される。
【0004】
ここで、散気手段106からの散気には3つの目的がある。
第1の目的は好気槽102内を好気性に維持することである。活性汚泥109による生物学的な好気処理には酸素が消費されるので、散気によって酸素を補給して好気槽102内の被処理水108中の溶存酸素濃度を高く維持することができる。
【0005】
第2の目的は膜分離手段104の分離膜を洗浄することである。平膜の膜面には膜分離によって活性汚泥や種々の固形分が付着、堆積し、そのまま放置すると分離膜の透過性が次第に低下するので、膜面の洗浄を目的として散気が行われる。すなわち、膜分離手段104の下方から散気された空気泡は浮力によって上昇する。その上昇過程で平膜の膜面に対して剪断力を付与し、膜面に付着、堆積した固形分を剥離させることができる。
【0006】
第3の目的は好気槽102内に被処理水108の循環流を形成することである。散気された空気泡の上昇力及び膜間水路内に気液混合液と、その外部液体との密度差を駆動力として、膜分離手段104内では被処理水108の上昇流が生じ、膜分離手段104の下方から被処理水108が吸い込まれる。膜分離手段104の上方に押し出された被処理水108は次に流路を下降し、再び膜分離手段104の下方から吸い込まれる。この被処理水108の循環過程で被処理水108と活性汚泥109とが十分に混合、接触し、活性汚泥109による好気処理が活発に進行する。
【0007】
このように膜分離式活性汚泥処理装置100は、好気槽102内で活性汚泥109による好気処理と固液分離を同時進行させることができる。このため、従前の沈殿池を備えた活性汚泥処理装置に比べて沈殿池を省略し、装置のコンパクト化と高効率化を図ることができる。
【0008】
しかしながら、上記散気の3つの目的を同時に達成するためには難しい問題がある。第1の目的を達成するためには、散気する空気泡をなるべく微細化して単位体積当たりの気液接触面積を増加させる必要がある。しかしながら、空気泡を微細化すると空気泡の上昇力が低下し、膜分離手段104の膜面に対して十分な剪断力を付与することができない。このため、第2の目的である膜面の洗浄効果が低下する。また、第3の目的である循環流の形成も不十分となる。逆に、第2、第3の目的を優先して散気する空気泡を粗大にすると被処理水108に対する酸素の溶解効率が低下し、活性汚泥による好気処理の効率も溶存酸素の不足により低下するという問題がある。
【0009】
このように第1の目的と第2、第3の目的の間には散気する空気泡の大きさに関して二律背反の関係があり、散気のみによって3つの目的を同時に達成することは困難である。
【0010】
特許文献1には、上記問題を解決するため、槽内に保持した活性汚泥によって被処理水を生物学的に好気処理する好気槽と、前記好気槽内に浸漬された膜分離手段と、前記膜分離手段の下方から空気を散気する散気手段と、前記膜分離手段で透過した処理水を排出する処理水排出手段とを備えた膜分離式活性汚泥処理装置において、前記散気手段から散気されて前記膜分離手段の上方域に到達した空気泡を回転羽根によって微細化する気泡微細化手段を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−237202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記構成の場合、微細化される前の粗大な空気泡によって好気槽の循環および、膜分離手段の洗浄を行い、その後空気泡を微細化して酸素を被処理水中に溶存させている。よって、分離膜に接触する空気泡の面積が増大すると有効な分離膜面積が減少するという問題が解決されておらず、このため分離膜後段の吸引ポンプの負荷を強くする必要が生じ、分離膜に大きな負荷を与えることになる。
【0013】
また上記構成においては、洗浄のための被処理水の流速を得るためには多大な散気量を必要とし、その結果多大な電力量が必要である。特に多数平膜を並列させた場合には、膜の各隙間に均等に散気を送ることは非常に困難である。
【0014】
さらに、膜面の洗浄に必要な被処理水の流速は処理水の膜透過水量によって決まるが、均一化が困難な散気において必要な流速を与えることは困難であり、通常過剰に散気しているため多大な電力量が必要となる。
【0015】
そこで本発明は上記問題点に着目し、有効な膜分離面積を減少させず、均一かつ安定した膜面の洗浄に必要な被処理水の流速を与え好気槽の循環を行う膜分離式活性汚泥処理装置、及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明に係る膜分離式活性汚泥処理装置は、槽内に保持した活性汚泥によって被処理水を生物学的に好気処理する好気槽と、前記好気槽内に浸漬された膜分離手段と、前記好気処理に必要な空気を供給する散気による前記好気槽内の上昇流から前記膜分離手段の膜間を上方から下方へ流れる下降流を形成させる散気手段と、を備えたことを特徴としている。
【0017】
また本発明に係る膜分離式活性汚泥処理装置は、槽内に保持した活性汚泥によって被処理水を生物学的に好気処理する好気槽と、前記好気処理に必要な空気を供給する散気手段と、前記好気槽内に浸漬された膜分離手段と、を備えた膜分離式活性汚泥処理装置において、前記好気槽内で前記膜分離手段と前記散気手段を垂直方向に区分けする分離壁を形成し、前記分離壁には、前記散気手段の散気によって生じた上昇流により、前記膜分離手段側の被処理水が前記散気手段側へ吸い込まれる下部開口と、前記下部開口からの被処理水の排出によって前記散気手段側から前記上昇流が前記膜分離手段側に下降流として流れ込む上部開口と、を設けたことを特徴としている。
この場合において、前記散気手段は、微細空気散気部と粗大空気散気部からなり、前記分離壁の側方に粗大空気散気部を形成するとよい。
【0018】
本発明の膜分離式活性汚泥処理方法は、好気槽に散気手段を備え、前記好気槽に保持した活性汚泥によって好気処理した後、処理水を膜分離手段によって膜分離する膜分離式活性汚泥処理方法であって、前記好気槽内の前記膜分離手段と前記散気手段を区分けして、前記散気手段の散気によって好気槽内に上昇流を発生させて、前記上昇流を前記膜分離手段の上部から流入させて、膜間を下降させて、前記膜分離手段の下部から排出し還流させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る膜分離式活性汚泥処理装置、及びその方法によれば、以下の効果を奏する。
第1に散気手段は、好気処理に必要な空気を供給する散気による好気槽内の上昇流から膜分離手段の膜間を上方から下方へ流れる下降流を形成させているため、分離膜に活性汚泥が堆積することを抑制するのみならず、分離膜に堆積した活性汚泥を被処理水が剥ぎ取り、好気槽内に被処理水及び活性汚泥を返流し循環させることになる。よって、均一な流れを膜面へ与えろ過を行ない易くし、散気の場合よりも効果的に分離膜の洗浄を行って単位面積当たりの膜分離の効率の低下を防止し、また散気気泡による有効膜面積の低下を防止できる。
【0020】
従来の膜分離手段の下方に散気手段を配置して散気の上昇流(散気と被処理水の気液混合相流)による洗浄と比べ、本発明の下降流は、被処理水の液単相流であるために剪断力が高くなりやすく、洗浄力を向上する効果が得られる。
【0021】
第2に散気手段は、従来の膜分離手段の下方に配置した散気手段による上向流を発生させるための散気が不要になる。このため、酸素を被処理水に溶存させる目的に特化した設計が可能である。よって活性汚泥に対する溶存酸素の供給は高効率の微細気泡散気のみで行うことになるので、散気に必要な電力を削減することができる。
【0022】
第3には処理水の膜透過水量に併せて散気手段による上向流速を変化させることが可能であるため、従来の常に散気を続ける場合とは異なり省電力化、省動力化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の膜分離式活性汚泥処理装置の実施形態を模式的に示した図である。
【図2】本発明の膜分離式活性汚泥処理装置の説明図である。
【図3】汚泥流速と膜透過水量の関係を示すグラフである。
【図4】膜分離式活性汚泥処理装置の変形例1の構成概略を示す図である。
【図5】膜分離式活性汚泥処理装置の変形例2の構成概略を示す図である。
【図6】従来の膜分離式活性汚泥処理装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の膜分離式活性汚泥処理装置及びその方法の実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1は本発明の膜分離式活性汚泥処理装置の実施形態を模式的に示した図である。図2は本発明の膜分離式活性汚泥処理装置の説明図である。図1に示すように膜分離式活性汚泥処理装置10は、好気槽12、散気手段20、膜分離手段30、分離壁50を主な構成要件としている。
【0025】
好気槽12は流入管14を介して供給された被処理水16を満たした水槽であり、槽内には所定量の活性汚泥18が保持されている。活性汚泥18は複合微生物が含まれたものである。複合微生物としては、例えば硝化細菌群、脱窒細菌群、嫌気性アンモニア酸化細菌群などがある。さらに、純粋菌株として、例えば硝化細菌、脱窒細菌、嫌気性アンモニア細菌、アオコ分解菌、PCB分解菌、ダイオキシン分解菌、環境ホルモン分解菌などが含まれる。
【0026】
好気槽12内には溶存酸素を被処理水16中に溶解させる目的で微細な空気泡(不図示)を放出可能な散気手段20が配設されている。散気手段20はブロワ22と散気管24からなり、ブロワ22から空気を供給し、散気管24から微細な空気泡(不図示)を放出して好気槽12中の溶存酸素濃度を高濃度に維持することができる。また好気槽12に保持される活性汚泥18は溶存酸素を呼吸しつつ、被処理水16中に含まれるアンモニアを硝酸性窒素にする好気処理を行うことができる。本発明の散気手段20は、好気槽12を平面視したとき、上方に後述する膜分離手段30が配置されていない箇所に配置している。
【0027】
また好気槽12内には膜分離手段30が配設され、被処理水16に浸漬されている。膜分離手段30は、両面に分離膜を張った複数の矩形の平膜32を一定の間隔を空けて並べて形成されている。隣り合う平膜同士の隙間は4〜10mm程度である。また、各平膜32の両側の側面は揃えられるとともに、側面に側板を接合して複数の平膜32を一体化させている。これにより平膜32の側面方向は封止され、上端及び下端が開口(上方開口38,下方開口39)され、平膜32の間に形成された複数の隙間は矩形の断面形状を有する。各平膜32の外部は被処理水16に接し、内部は排出管40を介して処理水吸引ポンプ42と接続されている。処理水吸引ポンプ42により吸引することで平膜32の外部と内部との圧力差を発生させ、被処理水16から活性汚泥18と処理水とを固液分離し、処理水を平膜32内部に透過させ、処理水吸引ポンプ42を通じて系外に排出する。このとき活性汚泥は平膜32の分離膜に堆積していく。この堆積の厚みが大きいほど単位面積当たりの分離膜の分離効率が低下する。
【0028】
好気槽12内の散気手段20と膜分離手段30の間には、分離壁50を設けている。分離壁50は、好気槽12内に配置した散気手段20と膜分離手段30を垂直方向に区分けする壁であり、槽内の水面下と底面近傍にそれぞれ開口(上部開口52、下部開口54)を形成している。上部開口52は、散気手段20の散気による上昇流が水面下で側方へ移動して散気手段20側から膜分離手段40側へ流入する開口であり、好気槽12の水面下付近に設けている。一方、下部開口54は、膜分離手段30の膜間を下降した下降流が排出される開口であり、好気槽12の底面付近に設けている。
【0029】
また図2に示すように膜分離手段30を好気槽12の中心に設置して、膜分離手段30を挟むように好気槽12の両側面に散気手段20の散気管24を配置し、上部及び下部開口52,54を備えた分離壁50を取り付ける構成としてもよい。
【0030】
上記構成による膜分離式活性汚泥処理装置の汚泥処理方法について以下説明する。
上記構成の膜分離式活性汚泥処理装置10において、好気槽12には被処理水16の流入管14から流入した被処理水16が張り込まれている。また好気槽12には活性汚泥18が予め高濃度に保持されている。さらに分離壁50によって好気槽12内を二分割し、それぞれ散気手段20及び膜分離手段30を配置している。膜分離手段30は両面に分離膜を張った方形の平膜32を狭いピッチで横方向に多数枚並列させた構造である。隣り合う平膜32との間隙は4〜10mmであり、この間隙を被処理水16及び活性汚泥18が通過する過程で膜分離処理が行なわれる。このとき吸引ポンプ42により吸引することで平膜32の外部と内部との圧力差を発生させ、被処理水16から活性汚泥18と処理水とを固液分離し、処理水を平膜32内部に透過させて処理槽外へ排出する。
【0031】
一方、散気手段20により好気槽12内へ散気を行うと、好気槽12内に保持された生物処理に必要な溶存酸素を供給できる。また散気手段12で散気を行うと、空気の上昇、換言するとエアリフト効果により被処理水16および活性汚泥18の上昇流が発生する。本発明の上昇流は、膜分離手段30の分離膜表面の流れ方向に十分な剪断力を与える高い流速を備えている。膜分離手段30の膜間水路内では、膜表面から膜内に浸透する膜面に対して水平方向に流れる被処理水と、分離膜の膜面に沿って上方から下方に流れる被処理水の2方向の流れが生じている。この膜面に沿って上方から下方に流れる被処理水の流れが膜表面に付着した活性汚泥を剥ぎ落とす剪断力として作用している。
【0032】
本実施形態の好気槽12では、分離膜の膜間水路内が被処理水の単相部であり、その外側の散気手段20側の槽内が被処理水と散気の気液混相部となる。気液混相部は単相部に比べ比重が下がっている。上昇流は、この単相部と気液混相部に密度差を与えることにより発生させることができる。具体的には、分離壁50の開口部の開口面積、好気槽12内の散気スペース、散気手段20による散気量などを変化させることにより密度差を調整することができる。
【0033】
この気液混相部と単相部の密度差によって発生した上昇流により、単相部(膜分離手段20)の下方では散気手段20側へ吸い込まれる被処理水の流れが生じる(矢印A)。また単相部の上方では、被処理水の排出による下方の流れによって、散気手段側から被処理水が膜分離手段側へ下降流として流れ込む(矢印B)。このように上昇流は、槽内の水面下まで上昇すると側方移動する。側方移動した上昇流は、分離壁50の上部開口52から膜分離手段30側へと流入する。このとき散気の気泡は槽外へ排出され被処理水と活性汚泥の流れとなる。上部開口52から流入した被処理水16及び活性汚泥18の上昇流は、膜分離手段30の上方開口38で下降流となる。この下降流は膜分離手段30の膜間を下方開口39に向かう流れとなり、流れ方向が逆転する。下降流の通過により、分離膜に活性汚泥が堆積することを抑制するのみならず、分離膜に堆積した活性汚泥を被処理水16に剥ぎ取らせる。下降流は下部開口54から散気手段20側へ吸い込まれて(排出されて)、再び上昇流となり好気槽12内を還流する。
【0034】
これにより、従来の散気手段による上昇流の場合よりも効果的に分離膜の洗浄を行って単位時間・単位面積当たりの膜分離の効率の低下を防止し、また散気気泡による有効膜面積の低下を防止でき、連続して安定したろ過を実現できる。
【0035】
また散気手段20は、酸素を被処理水16に溶存させる目的に特化した設計が可能である。よって、活性汚泥18に対する溶存酸素の供給は高効率の微細な空気泡による散気のみで行うことになるので、散気に必要な電力を削減することができる。
さらに、処理水の透過水量に応じて被処理水16の流速を変化させることが可能なので、従来の常に散気を続ける場合とは異なり省電力化が可能である。
【0036】
また生物処理に必要な散気によって発生した被処理水16及び活性汚泥18の上昇流によって形成される下降流によって分離膜表面に付着した活性汚泥18の洗浄に必要な活性汚泥流速を与えるようにしているため、従来のような洗浄用の散気手段を設ける必要がない。
【0037】
ところで本発明者は、分離膜面上の被処理水の速度に対する分離膜の単位時間・単位面積当たりの処理水の膜分離水量を調査した。図3は汚泥流速と膜透過水量の関係を示すグラフである。同図の横軸は膜面汚泥速度(m/s)を示し、縦軸は平均Flux(m/d)を示している。図示のように、膜面汚泥速度を上げていくほど、平均Fluxが上昇、すなわちろ過水量が上昇するため、速度を早くすると、活性汚泥の分離膜への堆積が抑制される、または堆積された分離膜が被処理水の早い流速により剥ぎ取られたものと解釈することができる。
【0038】
図4は膜分離式活性汚泥処理装置の変形例1の構成概略を示す図である。変形例1の膜分離式活性汚泥処理装置10Aの構成と、図1に示す膜分離式活性汚泥処理装置10と異なる構成は、散気手段の構成である。その他の構成は図1の膜分離式活性汚泥処理装置10と同一の構成であり、その詳細な説明を省略する。
【0039】
図4に示すように、変形例1の膜分離式活性汚泥処理装置10Aの散気手段20Aは、微細空気散気部26と粗大空気散気部28とから構成されている。微細空気散気部26と粗大空気散気部28はそれぞれ配管を介してブロア22を接続させている。
【0040】
微細空気散気部26は、酸素溶解効率の高い微細散気が可能な構成である。一方、粗大空気散気部28は、前記微細空気散気部26による散気気泡よりも大きい気泡(空気)を散気可能な構成である。また粗大空気散気部28は、微細空気散気部26よりも好気槽12内の分離壁50の側方に形成している。
【0041】
このような変形例1の構成によれば、分離壁50の側方下部に粗大気泡を散気可能な粗大空気散気部28を配置しているので、粗大気泡による上昇流速が高まり、エアリフト効果が増して、被処理水16及び活性汚泥18の上昇流による下降流の下降流速を増大させることができる。よって分離膜に活性汚泥が堆積することを抑制するのみならず、分離膜に堆積した活性汚泥を被処理水が剥ぎ取り易くなる。
【0042】
図5は膜分離式活性汚泥処理装置の変形例2の構成概略を示す図である。変形例2の膜分離式活性汚泥処理装置10Bの構成と、図4に示す膜分離式活性汚泥処理装置10Aと異なる構成は、散気手段の構成である。その他の構成は膜分離式活性汚泥処理装置10と同一の構成であり、その詳細な説明を省略する。
【0043】
図5に示すように、変形例2の膜分離式活性汚泥処理装置10Bの散気手段20Bは、微細空気散気部26と粗大空気散気部28に加えて、膜分離手段30の下方となる好気槽12の底部に第2の粗大空気散気部29を取り付けている。第2の粗大空気散気部29も微細空気散気部26と同様に配管を介してブロア22に接続させている。
【0044】
このような変形例1の構成によれば、膜分離手段30によるろ過停止時に、膜分離手段30下部に設置した第2の粗大気泡散気部29による散気を実施し、膜分離手段30に対し上昇流を形成して分離膜に付着した活性汚泥18を洗浄することができる。
【符号の説明】
【0045】
10………膜分離式活性汚泥処理装置、12………好気槽、14………流入管、16………被処理水、18………活性汚泥、20………散気手段、22………ブロア、24………散気管、26………微細空気散気部、28………粗大空気散気部、29………第2の粗大空気散気部、30………膜分離手段、32………平膜、38………上方開口、39………下方開口、50………分離壁、52………上部開口、54………下部開口、100………膜分離式活性汚泥吸引装置、102………好気槽、104………膜分離手段、106………散気手段、108………被処理水、109………活性汚泥。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内に保持した活性汚泥によって被処理水を生物学的に好気処理する好気槽と、
前記好気槽内に浸漬された膜分離手段と、
前記好気処理に必要な空気を供給する散気による前記好気槽内の上昇流から前記膜分離手段の膜間を上方から下方へ流れる下降流を形成させる散気手段と、
を備えたことを特徴とする膜分離式活性汚泥処理装置。
【請求項2】
槽内に保持した活性汚泥によって被処理水を生物学的に好気処理する好気槽と、
前記好気処理に必要な空気を供給する散気手段と、
前記好気槽内に浸漬された膜分離手段と、
を備えた膜分離式活性汚泥処理装置において、
前記好気槽内で前記膜分離手段と前記散気手段を垂直方向に区分けする分離壁を形成し、
前記分離壁には、
前記散気手段の散気によって生じた上昇流により、前記膜分離手段側の被処理水が前記散気手段側へ吸い込まれる下部開口と、
前記下部開口からの被処理水の排出によって前記散気手段側から前記上昇流が前記膜分離手段側に下降流として流れ込む上部開口と、
を設けたことを特徴とする膜分離式活性汚泥処理装置。
【請求項3】
前記散気手段は、微細空気散気部と粗大空気散気部からなり、前記分離壁の側方に前記粗大空気散気部を形成したことを特徴とする請求項2に記載の膜分離式活性汚泥処理装置。
【請求項4】
好気槽に散気手段を備え、前記好気槽に保持した活性汚泥によって好気処理した後、処理水を膜分離手段によって膜分離する膜分離式活性汚泥処理方法であって、
前記好気槽内の前記膜分離手段と前記散気手段を区分けして、
前記散気手段の散気によって好気槽内に上昇流を発生させて、
前記上昇流を前記膜分離手段の上部から流入させて、
膜間を下降させて、前記膜分離手段の下部から排出し還流させることを特徴とする膜分離式活性汚泥処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96125(P2012−96125A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51076(P2009−51076)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】