膜媒体を用いた高性能ガスタービン吸込フィルター(HEPA)
【課題】複合フィルター媒体構造体及び関連する製造方法を提供する。
【解決手段】この構造体は、スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含むベース基材12を有している。また、この複合フィルター媒体構造体は、ベース基材の1つの面上に設けられた表面層20を有しており、ここでベース基材を表面層20に結合させるには加熱積層プロセスを使用することができる。表面層はミクロ多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から形成される。1つの態様において、ベース基材12と表面層20は、EN 1822試験法に従って測定して95%より大きく99.5%以下の濾過効率を与えるように構成されている。別の態様において、フィルター媒体10は、対向するローラーを用いて約90〜約140℃の温度で形成されたエンボス加工パターン又は複数の波形構造を含んでいる。
【解決手段】この構造体は、スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含むベース基材12を有している。また、この複合フィルター媒体構造体は、ベース基材の1つの面上に設けられた表面層20を有しており、ここでベース基材を表面層20に結合させるには加熱積層プロセスを使用することができる。表面層はミクロ多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から形成される。1つの態様において、ベース基材12と表面層20は、EN 1822試験法に従って測定して95%より大きく99.5%以下の濾過効率を与えるように構成されている。別の態様において、フィルター媒体10は、対向するローラーを用いて約90〜約140℃の温度で形成されたエンボス加工パターン又は複数の波形構造を含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にフィルターエレメントに関し、より詳細には波形又はエンボス加工した複合不織フィルター媒体を有するフィルターエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の公知のフィルター媒体複合構築物では、湿式製紙プロセスを取り入れて基材を製造し、またエレクトロスパン技術でフィルター媒体基材の一面又は両面に軽量のナノファイバーコーティングを設ける。通例、媒体基材は坪量が100〜120グラム/平方メートル(g/m2)であり、ナノファイバー層は坪量が0.5g/m2以下である。
【0003】
ある媒体は、ベース媒体、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜、及び電荷を帯びた不織メルトブローン層からなる第3の層を含む3つの層を有ることができるということが知られている。しかし、この電荷を帯びた不織メルトブローン層は、湿った環境に暴露されると性能が大きく低下し、その静電気が迅速に消失することが知られている。この公知の媒体は、パルス式ガスタービン吸気濾過(Gas Turbine Inlet Filtration)に必要とされる厳格な工業試験プロトコルに合わないことが認められている。
【0004】
湿式製造したガラス系媒体を有するHEPA媒体は静的ガスタービン濾過で見ることができ、非パルス式のガスタービン吸気濾過に対して機能上申し分のないことが分かっている。この湿式製造したガラス系媒体は、高圧パルス空気洗浄の応力に耐えることができないその固有の弱い強度特性のためパルス式濾過には不適切であるかもしれない。その弱い強度特性の結果、高圧パルス空気洗浄用途に使用すると媒体自体が引き裂かれるであろう。
【0005】
フィルター媒体複合構築物を用いて、各種の装置にクリーンな空気を提供することができる。かかる装置としては、タービンブレードを挙げることができる。典型的な公知のフィルター媒体は、ASHRAE 52.2−2007試験手順に従って既知の作動流量で試験したときに通例7.0mmH2Oより大きい圧力低下で0.3〜0.4μm粒子のおよそ55%の捕獲を提供する新しい又はクリーンな作動効率を有し得る。
【0006】
タービンブレードを含有する一例の装置に関して、タービンブレードを清浄に維持するように試みることは論理的である。タービンブレードの汚れと侵食はタービンの出力を低下させ、そのブレードを修理するための機能停止の頻度を増大することが知られている。タービンブレードを洗浄するための1つの現行の手順では、タービンを定期的な間隔でオフラインにしてブレードを清浄に水洗する必要がある。タービン停止時間は、タービンが作動しないので発電が抑えられるため、費用がかかり得る。タービンブレードを洗浄するためのタービン停止時間を低減又は削除するために、公知のフィルター媒体より高い効率のフィルター媒体を提供することが望ましいであろう。
【0007】
現行の技術で最良の性能は、エレクトロスパン繊維表面層をコートした標準的な湿式製造ベース媒体を用いたASHRAE 52.2によりF−9にランク付けされる。これまでのところ、最大効率は、エレクトロスピニングプロセスにより、100% 0.30ミクロンのDOP粒子を用いて試験したときに最大でおよそ75%の効率に制限されている。これは、湿式製造したベース媒体の1つの表面上にエレクトロスパン繊維の重い層を、又は同ベース媒体の両方の表面上にナノファイバー層を使用して達成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7316723号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の幾つかの例示的態様の基礎的な理解のために、以下に、本発明の簡単な要約を示す。この要約は本発明の広範な概観ではない。また、この要約は本発明の重要な要素を特定するものでも、本発明の範囲を定めるものでもない。この要約の唯一の目的は、後述するより詳細な説明の前置きとして本発明の幾つかの概念を簡単に述べることである。
【0010】
1つの態様では、本発明は、ベース基材を含む複合フィルター媒体構造を提供する。ベース基材は、スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含む。この複合フィルター媒体構造はベースの1つの面上に設けた表面層を含み、この表面層はミクロ多孔性の延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から形成される。このベース基材と表面層はEN 1822試験法に従って測定して95%より大きく99.5%以下の濾過効率を与えるように構成されている。
【0011】
別の態様では、本発明は、ガスタービン空気吸込フィルターエレメントを含む複合フィルター媒体構造を提供する。このガスタービン空気吸込フィルターエレメントは第1のエンドキャップ、第2のエンドキャップ、及びフィルター媒体を含んでいる。フィルター媒体は、スパンボンドプロセスにより複数の二成分合成繊維から形成された不織布、及びベース基材の1つの面上に設けた表面層を含んでいる。この表面層はミクロ多孔性の延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から形成される。ベース基材と表面層は、EN 1822試験法に従って測定して95%より大きく99.5%以下の濾過効率を与えるように構成されている。このフィルター媒体はさらにエンボス加工パターン又は複数の波形構造を含んでおり、このエンボス加工パターン又は波形構造は対向するローラーを用いて約90〜約140℃の温度で形成される。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、複合フィルター媒体を作成する方法を提供する。この方法は、スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から形成される不織布基材を形成することを含む。またこの方法は、加熱積層により表面層を設け、合成繊維を溶融して表面層中に入らせて複合フィルター媒体を形成することを含んでおり、その結果この複合フィルター媒体は95%より大きく99.5%以下の濾過効率を有する。
【0013】
本発明の上記及びその他の態様は、添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより、本発明が属する技術分野の当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、一例の態様の複合フィルター媒体の断面説明図である。
【図2】図2は、一例の態様によるエンボス加工用ローラーの概略図である。
【図3】図3は、図1に示したベース媒体基材の結合パターンの平面図である。
【図4】図4は、一例の態様による波形形成用ローラーの断面説明図である。
【図5】図5は、図1に示した一例の態様の複合フィルター媒体の波形形成後の断面説明図である。
【図6】図6は、図2に示したフィルター媒体を含むフィルターカートリッジの側面図である。
【図7】図7は、図6に示したフィルターカートリッジの一部分の拡大斜視図である。
【図8】図8は、図6に示したフィルターカートリッジを含むフィルターアセンブリの斜視図である。
【図9】図9は、図1の例と比較した様々な媒体の濾過効率対粒径のグラフである。
【図10】図10は、図1の例と比較した図9の様々な媒体の粒子透過百分率対粒径のグラフである。
【図11】図11は、図1の例と比較した図9の様々な媒体に対する高ダスト負荷環境における長時間にわたる圧力損失のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の1以上の態様を具体化する例示的実施形態を図面に記載し例証する。これらの図解した例は本発明に限定を課するものではない。例えば、本発明の1以上の態様は他の実施形態で、さらには他のタイプのデバイスで利用することができる。さらに、本明細書では幾つかの用語を便宜上のためにのみ使用するが、本発明に対する限定とはならない。なお、図面中、同じ要素を示すには同じ参照符号を使用する。
【0016】
本発明の1以上の態様による高性能複合フィルター媒体の例とその複合フィルター媒体の作成方法について、以下に詳細に説明する。一般に、複合フィルター媒体は、二成分合成不織ベース基材と少なくとも1つの表面層とを有する。1つの具体例において、かかる複合フィルター媒体は、フィルターエレメント又はカートリッジを構成し、パルス式のガスタービン吸込フィルターハウジング又は類似の工業濾過システムで使用したときに高まった濾過性能を提供する。また、一例において、この新しい複合フィルター媒体は、波形形成及びプリーツ加工並びに全体の組立のようなその後のプロセスを伴うフィルターカートリッジ又はフィルターエレメントを構成することもできる。フィルター媒体を波形形成すると、複合フィルター媒体の「清浄な」側と「汚れた」側の両方で低拘束気流の通路のための大きな容積が得られる。一例において、複合フィルター媒体は、the American Society of Heating、Refrigerating and Air−Conditioning Engineers(加熱冷凍エアコンディショニング工学会)(ASHRAE)52.2の試験手順に従って試験したときに0.3〜1.25μmの粒子の95%より大きく99.5%以下の保持捕獲という初期濾過効率を提供し得、これは公知のフィルター媒体と比較して約14.5%の性能の増大である。加えて、本複合媒体は、公知のフィルター媒体より低い圧力低下で95%より大きく99.5%以下の効率を与えることができる。一例において、複合フィルター媒体は約0.60〜3.05インチ水柱の抵抗(すなわち圧力低下)を有する。
【0017】
また、この複合フィルター媒体は広範で強烈なダスト負荷及び洗浄問題に暴露されたとき有益な耐久性も有し得、より高い効率を実現する。かかる有益な耐久性は現存の技術に対する改良点であり得る。この性能が改良された(例えば、95%より大きく99.5%以下の効率)1つの理由は、加熱積層プロセス中にかけられる熱と圧力により、繊維が膜の細孔内に機械的に固定されるためと考えられる。
【0018】
図1は、表面層20と組み合わせた、スパンボンドプロセスにより形成されたベース基材12の形態である、本発明の1以上の態様による複合フィルター媒体10の一例を示す。本発明の1つの態様は、基材12が、スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材であるということである。かかる二成分繊維の提供の態様はコア−シース構造体、島状構造体、又は並列構造体を介してであり得る。
【0019】
媒体基材12の不織布を作成するためには、任意の適切な二成分合成繊維を使用することができる。二成分繊維のコアとシースに適した材料としては、限定されることはないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、アラミド、及びこれらの混合物がある。二成分繊維のシースに適した材料としては、二成分繊維のコアの材料より低い融点を有する熱可塑性材料、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、アラミド、及びこれらの混合物がある。一例において、二成分繊維は様々な直径を有することができる。
【0020】
二成分繊維はジェットを介して複数の連続な繊維に溶融紡糸され、この連続繊維が均一に付着させられてランダムな三次元ウェブになる。次に、このウェブを加熱しカレンダーロールによりエンボス加工することができ、これによりウェブを熱的に結合して、固定されたスパンボンド布にする。カレンダーロールエンボス加工パターンとの接触による熱のために二成分繊維の熱可塑性シースが軟化又は溶融し、これによりカレンダーロールエンボス加工パターンの接触点のみで不織繊維が互いに結合する。温度は、少なくとも二成分繊維のより低い融点のシース部分の軟化又は融合が起こるように選択される。1つの実施形態において、この温度は約90〜約240℃である。このシース部分の溶融と再固化により、冷却後、繊維の所望の結合が起こる。
【0021】
図1は、特定の例のシート様構造を示すための複合フィルター媒体10の概略部分断面図である。図から分かるように、フィルター媒体10はベース媒体基材12と表面層20とを含んでいる。ベース媒体基材12は第1の面14と第2の面16を有する。1つの態様において、表面層20は媒体基材12の第1の面14上に設けられる。例示の図には明確に示されてはいないが、表面層20は第2の面16上に設けることもできるし、又は表面層20は第1及び第2の面14及び16の両面上に設けることもできるものと了解されたい。
【0022】
HEPA媒体の濾過表面層20は延伸ミクロ多孔性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜から作成される。この膜はこの用途向けに特別に設計され製造される。膜特性は一例の態様において坪量が0.01〜10.0g/m2、別の態様においてはおよそ2.0〜3.5g/m2である。表面層20の厚さは5〜25ミクロンの範囲であることができるが、別の態様においてこの厚さはおよそ10〜12ミクロンであることができる。積層プロセスを実施する前の表面層20の空気透過性は、0.5インチ水柱の圧力で1.0〜50立方フィート/分(cfm)の範囲であるが、別の態様においては0.5インチ水柱の圧力でおよそ9〜12cfmである。
【0023】
表面層20の膜を加熱加圧プロセスによって熱的に積層して、ベース基材12のポリエステル繊維を溶融させて表面層20のミクロ多孔性の膜中に侵入させる。積層中、表面層20の膜はベース基材12に固定されるようになり、さらなる加工処理及び複合媒体としての最終用途の厳しさに耐えるように耐久性にされる。積層プロセス中、表面層20の膜の空気透過特性は、繊維が溶融して表面層20中に入り込むことによって表面層20の膜の空気透過性が低下すると共に変化する。表面層20における膜の細孔中への熱可塑性ポリエステル繊維の機械的な固定により気流が遮断される結果、複合積層体の空気透過性はおよそ0.5インチ水柱の圧力でおよそ4〜10cfmに低下する。
【0024】
表面層20がベース基材12上に積層された後、表面層20とベース基材12の組合せは耐久性の三次元表面濾過層を提供し、これは気流を実質的に制限したり圧力低下を増大したりすることなく高い効率と微粒子の捕獲を可能とする広範な多層の蛇行した通路を有する。この多層の蛇行した通路は小さい細孔を含み得る。かかる構造は、殊に最小の厚さの二次元のナノファイバー層と比較して、パルス式濾過システムにおける機械的な力に対して極めて耐久性であることが判明した。ベース基材12と表面層20の膜は協力して、およそ0.5〜1.25ミクロンの平均最大透過粒径に対するHEPA濾過効率性能を達成する。この膜細孔構造の多層の蛇行した通路がベース基材12と相俟って、一例において5.33cm/sec又は10.5ft/minの空気流量で0.3ミクロンの粒子に対して95%より大きく99.5%以下の濾過効率が達成される。
【0025】
この媒体は、濾過及び逆洗浄操作中にフィルター媒体にかかる力によるフィルター媒体の撓みがより少ないため、圧力低下の蓄積もより小さくなり得る。また、スパンボンド波形媒体基材12は等価な又はより低い圧力低下で公知のフィルター媒体基材より効率的であり得る。スパンボンド媒体12は繊維を結合固定して布又は布基材中を提供する。1つの態様において、媒体基材12を形成するのに使用される二成分繊維は、公知のフィルター媒体を形成するのに使われる繊維より微細であることができる。加えて、ベース媒体基材12と表面層20との間の付着結合は、波形形成又はエンボス加工作業中の追加の熱加工処理のために強化され得る。
【0026】
図2は、エンボス加工プロセス用の下側と上側のエンボス加工用ローラー100、102を備えた一例の装置の概略図である。図から分かるように、ローラー100、102は、局在化した熱と圧力をかけるためにベース基材12と対になる複数の構造体を有している。図示した例において、ローラー100、102は、下側及び上側のエンボス加工用ローラー100及び102の外面108に配置された複数のリブ104とチャンネル106の対を有する。各々のリブ104と各々のチャンネル106はエンボス加工用ローラー100又は102の円周の一部分に沿って延びている。また、下側エンボス加工用ローラー100上のリブ104とチャンネル106の各々の対は、上側エンボス加工用ローラー102上の対応するリブ104とチャンネル106の対と並んでおり、これらのリブとチャンネルは、下側のローラー100上の各々のリブ104が上側ローラー102上のチャンネル106と並んで対になるように、また上側ローラー102上の各々のリブ104が下側のローラー100上のチャンネル106と並んで対になるように配列されている。これら複数のリブ104とチャンネル106の対はエンボス加工用ローラー100及び102上で交互にずれた列として間隔をおいて離れており、一例のエンボス加工パターンを定めている。
【0027】
本発明の1つの態様はベース媒体基材12の独特の結合パターンである。この結合パターンは、図2に示したカレンダーロールのエンボス加工パターンにより定めることができる。この結合領域が媒体の耐久性と機能を提供すると同時に結合点が融合したポリマーのゼロ気流の領域を作り出す。この結合パターンは、複合フィルター媒体構造の濾過効率を改良するのに役立ち得る。
【0028】
ベース基材12に対する一例の結合領域パターン31を図3に示す。このパターンは、二成分繊維を一緒に結合させて不織布ベース基材12を形成するための結合領域の複数の実質的に平行な不連続線33を有している。結合パターン31のこれらの不連続線33は、ベース媒体基材12の機械の流れ方向(縦方向の広がり)と平行な方向に作成することができる。結合領域の平行な不連続線33は互いに食い違っているので、結合領域がない位置35がある。これらの結合領域のない位置35は隣接する不連続線33の結合領域37と位置を合わせて並んでいることができる。一例において、媒体基材12におけるスパンボンド二成分繊維の結合領域37は布の面積全体の約10〜約16パーセントである。ある種の公知のスパンボンド布は約19〜24パーセントの結合領域を有し得ることは注目すべきである。より少ない結合領域では、所与の気流において、ベース媒体12の空気透過性の増大、又は逆に低い圧力低下が可能になる。1つの実施形態において、不織合成布ベース媒体12の坪量は約100〜約330g/m2であり、別の実施形態では約150〜約260g/m2である。
【0029】
表面層20は、積層プロセスなどにより、直接ベース基材12の少なくとも1つの面上に設けて、複合フィルター媒体10を形成することができる。結果として得られた複合フィルター媒体は95%より大きく99.5%以下の最小濾過効率を有する。この媒体10は、公知のフィルター媒体と比較して比較的高い空気透過性を有し、表面層の膜の繊維とベース媒体中の二成分繊維との改良された機械的接着が可能である。
【0030】
この時点で、完成した有用な複合フィルター媒体10が提供される。しかし、既に述べたように、この複合フィルター媒体に対してさらなる加工処理を施してもよい。一例として、複合フィルター媒体10は約90〜約140℃の温度で対向する波形形成用ローラーを用いて波形を付けることができる。代わりの実施形態において、複合フィルター媒体10は約90〜約140℃の温度で対向するエンボス加工用ローラーを用いてエンボス加工することができる。
【0031】
図4に示されているように、対向する輪郭の波形形成用ロールは、フィルター媒体10の断面全体にわたり均一な波形構造を生じる。下側の波形形成用ローラー40は、下側のローラー40の回りで周囲方向に延びる複数の実質的にV形状のリブ44を有する外面42を含んでいる。リブ44は、外面42が複数の頂46と谷48を有するように、下側のローラー40の外面42の幅に沿って実質的に均一な間隔をあけている。上側の波形形成用ローラー50は、上側のローラー50の回りで周囲方向に延びる複数の実質的にV形状のリブ54を有する外面52を含んでいる。リブ54は、外面52が複数の頂56と谷58を有するように、上側ローラー50の外面52の幅に沿って実質的に均一な間隔をあけている。下側のローラー40のリブ44は上側ローラー50の谷58と位置を並べており、かつ上側ローラー50のリブ54は下側ローラー40の谷48と位置を並べている。リブ44と54の幅は、下側及び上側ローラー40及び50の対向する谷48及び58の幅以下の幅を適切にすることができる。リブ44及びリブ54と谷48及び58との間の空間60は、それぞれ、下側と上側のローラー40と50の間にニップ(間隙)を定める。ニップはフィルター媒体10の厚さ未満であり、リブ44及び54とそれぞれの谷48及び58との間を通過するときのフィルター媒体10を強化する。このニップにおけるフィルター媒体10の強化は波形構造18をフィルター媒体10中に固定する。操作において、波形形成用ローラー40及び50の温度は約90〜約140℃である。
【0032】
図5も参照すると、図4の波形形成用ロールなどにより形成することができる波形構造18の一例が示されている。これら例示の波形構造18は、複合フィルター媒体10内の交互に上下する実質的にV形状の波として設定されている。波の頂点22と谷24は形成用装置を通る基材のウェブの進行方向に延びている。谷24は、高いダスト負荷でフィルター媒体10の通気を可能にして、約4インチ水柱(wc)未満の低い差圧を維持するように、少なくとも約0.02インチ(0.5mm)の有効深さDを有することができる。一例の態様において波形構造のピッチCは1インチ当たり約3〜約10の波(約1.2〜約3.9の波/cm)であり、別の態様においては約3〜約6の波/インチ(約1.2〜約2.4の波/cm)である。有効深さDと波形構造ピッチCの組合せは、高い空気速度及びダスト負荷による高い静水圧下でのプリーツの潰れを防止するのを助ける改良された接触点を提供するのに役立つ。フィルター媒体10の断面全体にわたる均一な波形構造も提供することができる。
【0033】
図6は、波形構造のフィルター媒体10から形成された一例のフィルターエレメント70の側面図である。フィルターエレメント70は第1のエンドキャップ74と対向する第2のエンドキャップ76を含んでおり、フィルター媒体10はエンドキャップ74と76との間に延びている。フィルターエレメント70は内部導管78(図8)を備えた管状の形状を有する。フィルターエレメント70に対して他の形状も提供され得るものと了解されたい。
【0034】
さらに別の例として、図7は、フィルター媒体10の2つの部分が隣接して位置する配置を示す。フィルターエレメント70の隣接するプリーツ72の波形構造18は気流のための卵形の管79を画定している。波形構造18はプリーツ72の縁に対して実質的に垂直に延びている。
【0035】
図8は、端と端をつないだ関係で対にして管板82に装着した複数のフィルターエレメント70を含むフィルターアセンブリ80の斜視図である。管板82はフィルターアセンブリ80の汚れた空気側84を清浄な空気側86から分離する。フィルターエレメント70をパルス式空気で洗浄する洗浄系88は空気供給配管92に装着された複数の空気ノズル90を含んでいる。フィルターエレメント70の内部導管78内に導かれる圧縮空気のパルスを用いて、フィルターエレメント70の回収された塵埃を洗浄する。図8に示されているように、フィルターエレメント70は内部導管78を備えた管状の形状を有することができる。フィルターエレメント70は円筒形状であるが、円錐であることもできるし、又は様々な他の形状を有することもできる。フィルターエレメント70はまた、フィルターエレメント70の構造上の完全性及び/又はフィルター媒体10に対する支持体を提供するために、内部及び/又は外部支持ライナーも含むことができる。その他の構成要素も、フィルター媒体10と共にフィルターエレメント70の部品として提供することができる。例えば、内側及び外側有孔金属ケージ、ウレタン注封(ポッティング)コンパウンド、並びにウレタンストラッピングコンパウンドも全て提供することができる。
【0036】
本発明の態様を含むフィルターエレメントはガスタービン吸気濾過システムに使用することができる。もちろん、他のシステムで、本発明の態様を含むフィルターエレメントを使用してもよい。加えて、塵埃を除去するための洗浄目的で空気をフィルターエレメント中に導くために少なくとも1つのフィルターエレメントに洗浄系を接続することができる。
【0037】
図9のグラフに示されているように、本発明の例を含めて4種の異なる媒体の濾過効率を、ASHRAE 52.2−2007試験法による濾過効率試験で比較した。図9のデータはチャート1に基づいている。比較される媒体は、(1)標準的な80/20セルロースブレンド、(2)標準的な合成品、(3)標準的な合成ナノ媒体、及び(4)本発明の例である。線202は、80%セルロースと20%ポリエステルのブレンドを含む標準的な80/20セルロースブレンドを表す。線204は、標準的な合成品、すなわち湿式製造合成品を表す。線206は、坪量が0.5g/m2未満の湿式製造合成品と厚さ0.5ミクロン未満の単一層のナノファイバー層とを有する標準的な合成ナノ媒体を表す。線208は、ミクロ多孔性ePFTE膜から形成された表面層20を有する本発明の例を表す。示したデータは、線208が、広範囲の粒径、殊に試験された小さめの粒径で、工業的に普通に使用される他の媒体より良好にサブミクロンの粒子を濾過することを例証している。他の例は、最大透過粒径ではなく大きめの粒径でのみ増大した濾過効率レベルに達するのみである。加えて、チャート1に示されているように、本発明はさらに全範囲の粒径にわたって改良された性能を示している。
【0038】
【表1】
図10は、粒子透過曲線のグラフを示す。このグラフは、図9と同じデータを用いて作成されているが、濾過効率を100%から差し引いたものであり、本発明の一例の媒体の改良された性能を例証するためにy−軸には対数目盛を使用している。すなわち、粒子透過データはフィルターを通過する粒子の割合を表す。図10のデータはチャート2に基づいている。図10で、線212は標準的な80/20セルロースブレンドを表す。線214は湿式製造合成品である標準的な合成品を表す。線216は坪量が0.5g/m2未満の湿式製造合成品と厚さ0.5ミクロン未満の単一層のナノファイバー層を有する標準的な合成ナノ媒体を表す。線218はミクロ多孔性ePFTE膜から形成された表面層20を有する本発明の例を表す。示されているデータは、線218が、広範囲の粒径で、殊に試験されている小さめの粒径で、工業的に普通に使われている他の媒体より良好にサブミクロンの粒子を濾過することを示している。
【0039】
【表2】
図11は、高ダスト負荷環境試験のグラフ表示を示す。このグラフはフィルターの可使寿命にわたるその期待される性能を例証する。HEPA媒体の圧力低下は、従来の深さ負荷媒体と比較してより遅い速度で増大しており、これは有利である。作動中の圧力低下の変化を最小にすることは、動力システム産業に対する一定の出力を維持する上で重要である。図11で、線222は標準的な80/20セルロースブレンドを表す。線224は湿式製造合成品である標準的な合成品を表す。線226は坪量が0.5g/m2未満の湿式製造合成品と厚さ0.5ミクロン未満の単一層のナノファイバー層を有する標準的な合成ナノ媒体を表す。線228はミクロ多孔性ePFTE膜から形成された表面層20を有する本発明の例を表す。この高ダスト負荷環境試験は極端な条件をシミュレートする。本発明を表す線228は、試験の初期には増大した圧力低下を有するが、フィルターの寿命の間低下した圧力増大を提供する。低減した圧力低下はエネルギーを削減するのに役立ち、プラント応用で直接コスト節約を提供することができる。ナノ媒体線226とePTFE膜線228との間の差も、図11に示された高ダスト負荷環境試験に示されている。時間が経って両方の媒体がダストで安定化された後、ナノ媒体線226は圧力損失の僅かな連続的上昇を示す。対照的に、ePTFE膜線228は経時的に傾きが比較的平坦に増大する。すなわち、ePTFE膜は増大した期間にわたってより良好に作動し、性能が劣化しない。
【0040】
フィルター媒体10の独特の構成は、部分的には波形構造の構成に起因して、濾過及び逆洗浄操作中フィルター媒体にかかる力による撓みがより少ないので、公知のフィルター媒体より耐久性が高く、より少ない圧力低下の増加をもたらす。フィルターエレメント70は、平均最大透過粒径のエアロゾル又はダスト(約0.5〜約1.25ミクロン)の捕獲が、公知のフィルターエレメントの約50〜55%と比較して、95%より大きく99.5%以下の平均効率を生じることができる。
【0041】
ePTFE膜は、ナノファイバーのような他の公知のフィルターより改良された性能を提供する。例えば、ナノファイバーとePTFE膜はいずれも表面濾過の技術を実施する。ナノ媒体の細孔構造は約8〜10ミクロンであることができる。すなわち、ナノ媒体では、低レベルの微粒子ダストがなおも濾過表面内に埋め込まれる可能性がある。しかし、ePTFE膜は、その細孔構造が約0.5〜1.25ミクロンであるので、一桁良好である。ePTFE膜は、所望の孔径を得るために延伸される固体のシートであることができる。ePTFEのサブミクロンの細孔構造を考えると、膜構造内に埋め込まれる微粒子は殆どない。従って、ePTFE膜はさらに真の表面濾過を提供し、ePTFE膜の独特の低い摩擦係数特性又は汚れが付かない性質と相俟って、ダストは媒体が清浄なときずっと有効に除去される。言い換えると、ダストはフィルター媒体複合材の表面で濾過され、ダストの濾過が最適化される結果、ダストは必要とされるときに有効に除去され、従って圧力低下は比較的低いままであり、またフィルターの連続使用中も比較的低く維持される。ePTFE膜を有する媒体は最低の圧力低下でできるだけ多くのダストを保持し濾過するように設計され、デプスフィルターは必要とされないし、使用中に洗浄する必要もない。一例において、4インチwg(水量ゲージ)で7kgを越えるダストである。
【0042】
上記例示的実施形態を参照して本発明を説明して来た。当業者には、本明細書を読み理解することで、修正及び変更が明らかであろう。かかる修正及び変更は全て特許請求の範囲に入るので、本発明の1以上の態様を含む例示的実施形態はかかる修正及び変更を包含する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にフィルターエレメントに関し、より詳細には波形又はエンボス加工した複合不織フィルター媒体を有するフィルターエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の公知のフィルター媒体複合構築物では、湿式製紙プロセスを取り入れて基材を製造し、またエレクトロスパン技術でフィルター媒体基材の一面又は両面に軽量のナノファイバーコーティングを設ける。通例、媒体基材は坪量が100〜120グラム/平方メートル(g/m2)であり、ナノファイバー層は坪量が0.5g/m2以下である。
【0003】
ある媒体は、ベース媒体、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜、及び電荷を帯びた不織メルトブローン層からなる第3の層を含む3つの層を有ることができるということが知られている。しかし、この電荷を帯びた不織メルトブローン層は、湿った環境に暴露されると性能が大きく低下し、その静電気が迅速に消失することが知られている。この公知の媒体は、パルス式ガスタービン吸気濾過(Gas Turbine Inlet Filtration)に必要とされる厳格な工業試験プロトコルに合わないことが認められている。
【0004】
湿式製造したガラス系媒体を有するHEPA媒体は静的ガスタービン濾過で見ることができ、非パルス式のガスタービン吸気濾過に対して機能上申し分のないことが分かっている。この湿式製造したガラス系媒体は、高圧パルス空気洗浄の応力に耐えることができないその固有の弱い強度特性のためパルス式濾過には不適切であるかもしれない。その弱い強度特性の結果、高圧パルス空気洗浄用途に使用すると媒体自体が引き裂かれるであろう。
【0005】
フィルター媒体複合構築物を用いて、各種の装置にクリーンな空気を提供することができる。かかる装置としては、タービンブレードを挙げることができる。典型的な公知のフィルター媒体は、ASHRAE 52.2−2007試験手順に従って既知の作動流量で試験したときに通例7.0mmH2Oより大きい圧力低下で0.3〜0.4μm粒子のおよそ55%の捕獲を提供する新しい又はクリーンな作動効率を有し得る。
【0006】
タービンブレードを含有する一例の装置に関して、タービンブレードを清浄に維持するように試みることは論理的である。タービンブレードの汚れと侵食はタービンの出力を低下させ、そのブレードを修理するための機能停止の頻度を増大することが知られている。タービンブレードを洗浄するための1つの現行の手順では、タービンを定期的な間隔でオフラインにしてブレードを清浄に水洗する必要がある。タービン停止時間は、タービンが作動しないので発電が抑えられるため、費用がかかり得る。タービンブレードを洗浄するためのタービン停止時間を低減又は削除するために、公知のフィルター媒体より高い効率のフィルター媒体を提供することが望ましいであろう。
【0007】
現行の技術で最良の性能は、エレクトロスパン繊維表面層をコートした標準的な湿式製造ベース媒体を用いたASHRAE 52.2によりF−9にランク付けされる。これまでのところ、最大効率は、エレクトロスピニングプロセスにより、100% 0.30ミクロンのDOP粒子を用いて試験したときに最大でおよそ75%の効率に制限されている。これは、湿式製造したベース媒体の1つの表面上にエレクトロスパン繊維の重い層を、又は同ベース媒体の両方の表面上にナノファイバー層を使用して達成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7316723号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の幾つかの例示的態様の基礎的な理解のために、以下に、本発明の簡単な要約を示す。この要約は本発明の広範な概観ではない。また、この要約は本発明の重要な要素を特定するものでも、本発明の範囲を定めるものでもない。この要約の唯一の目的は、後述するより詳細な説明の前置きとして本発明の幾つかの概念を簡単に述べることである。
【0010】
1つの態様では、本発明は、ベース基材を含む複合フィルター媒体構造を提供する。ベース基材は、スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含む。この複合フィルター媒体構造はベースの1つの面上に設けた表面層を含み、この表面層はミクロ多孔性の延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から形成される。このベース基材と表面層はEN 1822試験法に従って測定して95%より大きく99.5%以下の濾過効率を与えるように構成されている。
【0011】
別の態様では、本発明は、ガスタービン空気吸込フィルターエレメントを含む複合フィルター媒体構造を提供する。このガスタービン空気吸込フィルターエレメントは第1のエンドキャップ、第2のエンドキャップ、及びフィルター媒体を含んでいる。フィルター媒体は、スパンボンドプロセスにより複数の二成分合成繊維から形成された不織布、及びベース基材の1つの面上に設けた表面層を含んでいる。この表面層はミクロ多孔性の延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から形成される。ベース基材と表面層は、EN 1822試験法に従って測定して95%より大きく99.5%以下の濾過効率を与えるように構成されている。このフィルター媒体はさらにエンボス加工パターン又は複数の波形構造を含んでおり、このエンボス加工パターン又は波形構造は対向するローラーを用いて約90〜約140℃の温度で形成される。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、複合フィルター媒体を作成する方法を提供する。この方法は、スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から形成される不織布基材を形成することを含む。またこの方法は、加熱積層により表面層を設け、合成繊維を溶融して表面層中に入らせて複合フィルター媒体を形成することを含んでおり、その結果この複合フィルター媒体は95%より大きく99.5%以下の濾過効率を有する。
【0013】
本発明の上記及びその他の態様は、添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより、本発明が属する技術分野の当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、一例の態様の複合フィルター媒体の断面説明図である。
【図2】図2は、一例の態様によるエンボス加工用ローラーの概略図である。
【図3】図3は、図1に示したベース媒体基材の結合パターンの平面図である。
【図4】図4は、一例の態様による波形形成用ローラーの断面説明図である。
【図5】図5は、図1に示した一例の態様の複合フィルター媒体の波形形成後の断面説明図である。
【図6】図6は、図2に示したフィルター媒体を含むフィルターカートリッジの側面図である。
【図7】図7は、図6に示したフィルターカートリッジの一部分の拡大斜視図である。
【図8】図8は、図6に示したフィルターカートリッジを含むフィルターアセンブリの斜視図である。
【図9】図9は、図1の例と比較した様々な媒体の濾過効率対粒径のグラフである。
【図10】図10は、図1の例と比較した図9の様々な媒体の粒子透過百分率対粒径のグラフである。
【図11】図11は、図1の例と比較した図9の様々な媒体に対する高ダスト負荷環境における長時間にわたる圧力損失のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の1以上の態様を具体化する例示的実施形態を図面に記載し例証する。これらの図解した例は本発明に限定を課するものではない。例えば、本発明の1以上の態様は他の実施形態で、さらには他のタイプのデバイスで利用することができる。さらに、本明細書では幾つかの用語を便宜上のためにのみ使用するが、本発明に対する限定とはならない。なお、図面中、同じ要素を示すには同じ参照符号を使用する。
【0016】
本発明の1以上の態様による高性能複合フィルター媒体の例とその複合フィルター媒体の作成方法について、以下に詳細に説明する。一般に、複合フィルター媒体は、二成分合成不織ベース基材と少なくとも1つの表面層とを有する。1つの具体例において、かかる複合フィルター媒体は、フィルターエレメント又はカートリッジを構成し、パルス式のガスタービン吸込フィルターハウジング又は類似の工業濾過システムで使用したときに高まった濾過性能を提供する。また、一例において、この新しい複合フィルター媒体は、波形形成及びプリーツ加工並びに全体の組立のようなその後のプロセスを伴うフィルターカートリッジ又はフィルターエレメントを構成することもできる。フィルター媒体を波形形成すると、複合フィルター媒体の「清浄な」側と「汚れた」側の両方で低拘束気流の通路のための大きな容積が得られる。一例において、複合フィルター媒体は、the American Society of Heating、Refrigerating and Air−Conditioning Engineers(加熱冷凍エアコンディショニング工学会)(ASHRAE)52.2の試験手順に従って試験したときに0.3〜1.25μmの粒子の95%より大きく99.5%以下の保持捕獲という初期濾過効率を提供し得、これは公知のフィルター媒体と比較して約14.5%の性能の増大である。加えて、本複合媒体は、公知のフィルター媒体より低い圧力低下で95%より大きく99.5%以下の効率を与えることができる。一例において、複合フィルター媒体は約0.60〜3.05インチ水柱の抵抗(すなわち圧力低下)を有する。
【0017】
また、この複合フィルター媒体は広範で強烈なダスト負荷及び洗浄問題に暴露されたとき有益な耐久性も有し得、より高い効率を実現する。かかる有益な耐久性は現存の技術に対する改良点であり得る。この性能が改良された(例えば、95%より大きく99.5%以下の効率)1つの理由は、加熱積層プロセス中にかけられる熱と圧力により、繊維が膜の細孔内に機械的に固定されるためと考えられる。
【0018】
図1は、表面層20と組み合わせた、スパンボンドプロセスにより形成されたベース基材12の形態である、本発明の1以上の態様による複合フィルター媒体10の一例を示す。本発明の1つの態様は、基材12が、スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材であるということである。かかる二成分繊維の提供の態様はコア−シース構造体、島状構造体、又は並列構造体を介してであり得る。
【0019】
媒体基材12の不織布を作成するためには、任意の適切な二成分合成繊維を使用することができる。二成分繊維のコアとシースに適した材料としては、限定されることはないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、アラミド、及びこれらの混合物がある。二成分繊維のシースに適した材料としては、二成分繊維のコアの材料より低い融点を有する熱可塑性材料、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、アラミド、及びこれらの混合物がある。一例において、二成分繊維は様々な直径を有することができる。
【0020】
二成分繊維はジェットを介して複数の連続な繊維に溶融紡糸され、この連続繊維が均一に付着させられてランダムな三次元ウェブになる。次に、このウェブを加熱しカレンダーロールによりエンボス加工することができ、これによりウェブを熱的に結合して、固定されたスパンボンド布にする。カレンダーロールエンボス加工パターンとの接触による熱のために二成分繊維の熱可塑性シースが軟化又は溶融し、これによりカレンダーロールエンボス加工パターンの接触点のみで不織繊維が互いに結合する。温度は、少なくとも二成分繊維のより低い融点のシース部分の軟化又は融合が起こるように選択される。1つの実施形態において、この温度は約90〜約240℃である。このシース部分の溶融と再固化により、冷却後、繊維の所望の結合が起こる。
【0021】
図1は、特定の例のシート様構造を示すための複合フィルター媒体10の概略部分断面図である。図から分かるように、フィルター媒体10はベース媒体基材12と表面層20とを含んでいる。ベース媒体基材12は第1の面14と第2の面16を有する。1つの態様において、表面層20は媒体基材12の第1の面14上に設けられる。例示の図には明確に示されてはいないが、表面層20は第2の面16上に設けることもできるし、又は表面層20は第1及び第2の面14及び16の両面上に設けることもできるものと了解されたい。
【0022】
HEPA媒体の濾過表面層20は延伸ミクロ多孔性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜から作成される。この膜はこの用途向けに特別に設計され製造される。膜特性は一例の態様において坪量が0.01〜10.0g/m2、別の態様においてはおよそ2.0〜3.5g/m2である。表面層20の厚さは5〜25ミクロンの範囲であることができるが、別の態様においてこの厚さはおよそ10〜12ミクロンであることができる。積層プロセスを実施する前の表面層20の空気透過性は、0.5インチ水柱の圧力で1.0〜50立方フィート/分(cfm)の範囲であるが、別の態様においては0.5インチ水柱の圧力でおよそ9〜12cfmである。
【0023】
表面層20の膜を加熱加圧プロセスによって熱的に積層して、ベース基材12のポリエステル繊維を溶融させて表面層20のミクロ多孔性の膜中に侵入させる。積層中、表面層20の膜はベース基材12に固定されるようになり、さらなる加工処理及び複合媒体としての最終用途の厳しさに耐えるように耐久性にされる。積層プロセス中、表面層20の膜の空気透過特性は、繊維が溶融して表面層20中に入り込むことによって表面層20の膜の空気透過性が低下すると共に変化する。表面層20における膜の細孔中への熱可塑性ポリエステル繊維の機械的な固定により気流が遮断される結果、複合積層体の空気透過性はおよそ0.5インチ水柱の圧力でおよそ4〜10cfmに低下する。
【0024】
表面層20がベース基材12上に積層された後、表面層20とベース基材12の組合せは耐久性の三次元表面濾過層を提供し、これは気流を実質的に制限したり圧力低下を増大したりすることなく高い効率と微粒子の捕獲を可能とする広範な多層の蛇行した通路を有する。この多層の蛇行した通路は小さい細孔を含み得る。かかる構造は、殊に最小の厚さの二次元のナノファイバー層と比較して、パルス式濾過システムにおける機械的な力に対して極めて耐久性であることが判明した。ベース基材12と表面層20の膜は協力して、およそ0.5〜1.25ミクロンの平均最大透過粒径に対するHEPA濾過効率性能を達成する。この膜細孔構造の多層の蛇行した通路がベース基材12と相俟って、一例において5.33cm/sec又は10.5ft/minの空気流量で0.3ミクロンの粒子に対して95%より大きく99.5%以下の濾過効率が達成される。
【0025】
この媒体は、濾過及び逆洗浄操作中にフィルター媒体にかかる力によるフィルター媒体の撓みがより少ないため、圧力低下の蓄積もより小さくなり得る。また、スパンボンド波形媒体基材12は等価な又はより低い圧力低下で公知のフィルター媒体基材より効率的であり得る。スパンボンド媒体12は繊維を結合固定して布又は布基材中を提供する。1つの態様において、媒体基材12を形成するのに使用される二成分繊維は、公知のフィルター媒体を形成するのに使われる繊維より微細であることができる。加えて、ベース媒体基材12と表面層20との間の付着結合は、波形形成又はエンボス加工作業中の追加の熱加工処理のために強化され得る。
【0026】
図2は、エンボス加工プロセス用の下側と上側のエンボス加工用ローラー100、102を備えた一例の装置の概略図である。図から分かるように、ローラー100、102は、局在化した熱と圧力をかけるためにベース基材12と対になる複数の構造体を有している。図示した例において、ローラー100、102は、下側及び上側のエンボス加工用ローラー100及び102の外面108に配置された複数のリブ104とチャンネル106の対を有する。各々のリブ104と各々のチャンネル106はエンボス加工用ローラー100又は102の円周の一部分に沿って延びている。また、下側エンボス加工用ローラー100上のリブ104とチャンネル106の各々の対は、上側エンボス加工用ローラー102上の対応するリブ104とチャンネル106の対と並んでおり、これらのリブとチャンネルは、下側のローラー100上の各々のリブ104が上側ローラー102上のチャンネル106と並んで対になるように、また上側ローラー102上の各々のリブ104が下側のローラー100上のチャンネル106と並んで対になるように配列されている。これら複数のリブ104とチャンネル106の対はエンボス加工用ローラー100及び102上で交互にずれた列として間隔をおいて離れており、一例のエンボス加工パターンを定めている。
【0027】
本発明の1つの態様はベース媒体基材12の独特の結合パターンである。この結合パターンは、図2に示したカレンダーロールのエンボス加工パターンにより定めることができる。この結合領域が媒体の耐久性と機能を提供すると同時に結合点が融合したポリマーのゼロ気流の領域を作り出す。この結合パターンは、複合フィルター媒体構造の濾過効率を改良するのに役立ち得る。
【0028】
ベース基材12に対する一例の結合領域パターン31を図3に示す。このパターンは、二成分繊維を一緒に結合させて不織布ベース基材12を形成するための結合領域の複数の実質的に平行な不連続線33を有している。結合パターン31のこれらの不連続線33は、ベース媒体基材12の機械の流れ方向(縦方向の広がり)と平行な方向に作成することができる。結合領域の平行な不連続線33は互いに食い違っているので、結合領域がない位置35がある。これらの結合領域のない位置35は隣接する不連続線33の結合領域37と位置を合わせて並んでいることができる。一例において、媒体基材12におけるスパンボンド二成分繊維の結合領域37は布の面積全体の約10〜約16パーセントである。ある種の公知のスパンボンド布は約19〜24パーセントの結合領域を有し得ることは注目すべきである。より少ない結合領域では、所与の気流において、ベース媒体12の空気透過性の増大、又は逆に低い圧力低下が可能になる。1つの実施形態において、不織合成布ベース媒体12の坪量は約100〜約330g/m2であり、別の実施形態では約150〜約260g/m2である。
【0029】
表面層20は、積層プロセスなどにより、直接ベース基材12の少なくとも1つの面上に設けて、複合フィルター媒体10を形成することができる。結果として得られた複合フィルター媒体は95%より大きく99.5%以下の最小濾過効率を有する。この媒体10は、公知のフィルター媒体と比較して比較的高い空気透過性を有し、表面層の膜の繊維とベース媒体中の二成分繊維との改良された機械的接着が可能である。
【0030】
この時点で、完成した有用な複合フィルター媒体10が提供される。しかし、既に述べたように、この複合フィルター媒体に対してさらなる加工処理を施してもよい。一例として、複合フィルター媒体10は約90〜約140℃の温度で対向する波形形成用ローラーを用いて波形を付けることができる。代わりの実施形態において、複合フィルター媒体10は約90〜約140℃の温度で対向するエンボス加工用ローラーを用いてエンボス加工することができる。
【0031】
図4に示されているように、対向する輪郭の波形形成用ロールは、フィルター媒体10の断面全体にわたり均一な波形構造を生じる。下側の波形形成用ローラー40は、下側のローラー40の回りで周囲方向に延びる複数の実質的にV形状のリブ44を有する外面42を含んでいる。リブ44は、外面42が複数の頂46と谷48を有するように、下側のローラー40の外面42の幅に沿って実質的に均一な間隔をあけている。上側の波形形成用ローラー50は、上側のローラー50の回りで周囲方向に延びる複数の実質的にV形状のリブ54を有する外面52を含んでいる。リブ54は、外面52が複数の頂56と谷58を有するように、上側ローラー50の外面52の幅に沿って実質的に均一な間隔をあけている。下側のローラー40のリブ44は上側ローラー50の谷58と位置を並べており、かつ上側ローラー50のリブ54は下側ローラー40の谷48と位置を並べている。リブ44と54の幅は、下側及び上側ローラー40及び50の対向する谷48及び58の幅以下の幅を適切にすることができる。リブ44及びリブ54と谷48及び58との間の空間60は、それぞれ、下側と上側のローラー40と50の間にニップ(間隙)を定める。ニップはフィルター媒体10の厚さ未満であり、リブ44及び54とそれぞれの谷48及び58との間を通過するときのフィルター媒体10を強化する。このニップにおけるフィルター媒体10の強化は波形構造18をフィルター媒体10中に固定する。操作において、波形形成用ローラー40及び50の温度は約90〜約140℃である。
【0032】
図5も参照すると、図4の波形形成用ロールなどにより形成することができる波形構造18の一例が示されている。これら例示の波形構造18は、複合フィルター媒体10内の交互に上下する実質的にV形状の波として設定されている。波の頂点22と谷24は形成用装置を通る基材のウェブの進行方向に延びている。谷24は、高いダスト負荷でフィルター媒体10の通気を可能にして、約4インチ水柱(wc)未満の低い差圧を維持するように、少なくとも約0.02インチ(0.5mm)の有効深さDを有することができる。一例の態様において波形構造のピッチCは1インチ当たり約3〜約10の波(約1.2〜約3.9の波/cm)であり、別の態様においては約3〜約6の波/インチ(約1.2〜約2.4の波/cm)である。有効深さDと波形構造ピッチCの組合せは、高い空気速度及びダスト負荷による高い静水圧下でのプリーツの潰れを防止するのを助ける改良された接触点を提供するのに役立つ。フィルター媒体10の断面全体にわたる均一な波形構造も提供することができる。
【0033】
図6は、波形構造のフィルター媒体10から形成された一例のフィルターエレメント70の側面図である。フィルターエレメント70は第1のエンドキャップ74と対向する第2のエンドキャップ76を含んでおり、フィルター媒体10はエンドキャップ74と76との間に延びている。フィルターエレメント70は内部導管78(図8)を備えた管状の形状を有する。フィルターエレメント70に対して他の形状も提供され得るものと了解されたい。
【0034】
さらに別の例として、図7は、フィルター媒体10の2つの部分が隣接して位置する配置を示す。フィルターエレメント70の隣接するプリーツ72の波形構造18は気流のための卵形の管79を画定している。波形構造18はプリーツ72の縁に対して実質的に垂直に延びている。
【0035】
図8は、端と端をつないだ関係で対にして管板82に装着した複数のフィルターエレメント70を含むフィルターアセンブリ80の斜視図である。管板82はフィルターアセンブリ80の汚れた空気側84を清浄な空気側86から分離する。フィルターエレメント70をパルス式空気で洗浄する洗浄系88は空気供給配管92に装着された複数の空気ノズル90を含んでいる。フィルターエレメント70の内部導管78内に導かれる圧縮空気のパルスを用いて、フィルターエレメント70の回収された塵埃を洗浄する。図8に示されているように、フィルターエレメント70は内部導管78を備えた管状の形状を有することができる。フィルターエレメント70は円筒形状であるが、円錐であることもできるし、又は様々な他の形状を有することもできる。フィルターエレメント70はまた、フィルターエレメント70の構造上の完全性及び/又はフィルター媒体10に対する支持体を提供するために、内部及び/又は外部支持ライナーも含むことができる。その他の構成要素も、フィルター媒体10と共にフィルターエレメント70の部品として提供することができる。例えば、内側及び外側有孔金属ケージ、ウレタン注封(ポッティング)コンパウンド、並びにウレタンストラッピングコンパウンドも全て提供することができる。
【0036】
本発明の態様を含むフィルターエレメントはガスタービン吸気濾過システムに使用することができる。もちろん、他のシステムで、本発明の態様を含むフィルターエレメントを使用してもよい。加えて、塵埃を除去するための洗浄目的で空気をフィルターエレメント中に導くために少なくとも1つのフィルターエレメントに洗浄系を接続することができる。
【0037】
図9のグラフに示されているように、本発明の例を含めて4種の異なる媒体の濾過効率を、ASHRAE 52.2−2007試験法による濾過効率試験で比較した。図9のデータはチャート1に基づいている。比較される媒体は、(1)標準的な80/20セルロースブレンド、(2)標準的な合成品、(3)標準的な合成ナノ媒体、及び(4)本発明の例である。線202は、80%セルロースと20%ポリエステルのブレンドを含む標準的な80/20セルロースブレンドを表す。線204は、標準的な合成品、すなわち湿式製造合成品を表す。線206は、坪量が0.5g/m2未満の湿式製造合成品と厚さ0.5ミクロン未満の単一層のナノファイバー層とを有する標準的な合成ナノ媒体を表す。線208は、ミクロ多孔性ePFTE膜から形成された表面層20を有する本発明の例を表す。示したデータは、線208が、広範囲の粒径、殊に試験された小さめの粒径で、工業的に普通に使用される他の媒体より良好にサブミクロンの粒子を濾過することを例証している。他の例は、最大透過粒径ではなく大きめの粒径でのみ増大した濾過効率レベルに達するのみである。加えて、チャート1に示されているように、本発明はさらに全範囲の粒径にわたって改良された性能を示している。
【0038】
【表1】
図10は、粒子透過曲線のグラフを示す。このグラフは、図9と同じデータを用いて作成されているが、濾過効率を100%から差し引いたものであり、本発明の一例の媒体の改良された性能を例証するためにy−軸には対数目盛を使用している。すなわち、粒子透過データはフィルターを通過する粒子の割合を表す。図10のデータはチャート2に基づいている。図10で、線212は標準的な80/20セルロースブレンドを表す。線214は湿式製造合成品である標準的な合成品を表す。線216は坪量が0.5g/m2未満の湿式製造合成品と厚さ0.5ミクロン未満の単一層のナノファイバー層を有する標準的な合成ナノ媒体を表す。線218はミクロ多孔性ePFTE膜から形成された表面層20を有する本発明の例を表す。示されているデータは、線218が、広範囲の粒径で、殊に試験されている小さめの粒径で、工業的に普通に使われている他の媒体より良好にサブミクロンの粒子を濾過することを示している。
【0039】
【表2】
図11は、高ダスト負荷環境試験のグラフ表示を示す。このグラフはフィルターの可使寿命にわたるその期待される性能を例証する。HEPA媒体の圧力低下は、従来の深さ負荷媒体と比較してより遅い速度で増大しており、これは有利である。作動中の圧力低下の変化を最小にすることは、動力システム産業に対する一定の出力を維持する上で重要である。図11で、線222は標準的な80/20セルロースブレンドを表す。線224は湿式製造合成品である標準的な合成品を表す。線226は坪量が0.5g/m2未満の湿式製造合成品と厚さ0.5ミクロン未満の単一層のナノファイバー層を有する標準的な合成ナノ媒体を表す。線228はミクロ多孔性ePFTE膜から形成された表面層20を有する本発明の例を表す。この高ダスト負荷環境試験は極端な条件をシミュレートする。本発明を表す線228は、試験の初期には増大した圧力低下を有するが、フィルターの寿命の間低下した圧力増大を提供する。低減した圧力低下はエネルギーを削減するのに役立ち、プラント応用で直接コスト節約を提供することができる。ナノ媒体線226とePTFE膜線228との間の差も、図11に示された高ダスト負荷環境試験に示されている。時間が経って両方の媒体がダストで安定化された後、ナノ媒体線226は圧力損失の僅かな連続的上昇を示す。対照的に、ePTFE膜線228は経時的に傾きが比較的平坦に増大する。すなわち、ePTFE膜は増大した期間にわたってより良好に作動し、性能が劣化しない。
【0040】
フィルター媒体10の独特の構成は、部分的には波形構造の構成に起因して、濾過及び逆洗浄操作中フィルター媒体にかかる力による撓みがより少ないので、公知のフィルター媒体より耐久性が高く、より少ない圧力低下の増加をもたらす。フィルターエレメント70は、平均最大透過粒径のエアロゾル又はダスト(約0.5〜約1.25ミクロン)の捕獲が、公知のフィルターエレメントの約50〜55%と比較して、95%より大きく99.5%以下の平均効率を生じることができる。
【0041】
ePTFE膜は、ナノファイバーのような他の公知のフィルターより改良された性能を提供する。例えば、ナノファイバーとePTFE膜はいずれも表面濾過の技術を実施する。ナノ媒体の細孔構造は約8〜10ミクロンであることができる。すなわち、ナノ媒体では、低レベルの微粒子ダストがなおも濾過表面内に埋め込まれる可能性がある。しかし、ePTFE膜は、その細孔構造が約0.5〜1.25ミクロンであるので、一桁良好である。ePTFE膜は、所望の孔径を得るために延伸される固体のシートであることができる。ePTFEのサブミクロンの細孔構造を考えると、膜構造内に埋め込まれる微粒子は殆どない。従って、ePTFE膜はさらに真の表面濾過を提供し、ePTFE膜の独特の低い摩擦係数特性又は汚れが付かない性質と相俟って、ダストは媒体が清浄なときずっと有効に除去される。言い換えると、ダストはフィルター媒体複合材の表面で濾過され、ダストの濾過が最適化される結果、ダストは必要とされるときに有効に除去され、従って圧力低下は比較的低いままであり、またフィルターの連続使用中も比較的低く維持される。ePTFE膜を有する媒体は最低の圧力低下でできるだけ多くのダストを保持し濾過するように設計され、デプスフィルターは必要とされないし、使用中に洗浄する必要もない。一例において、4インチwg(水量ゲージ)で7kgを越えるダストである。
【0042】
上記例示的実施形態を参照して本発明を説明して来た。当業者には、本明細書を読み理解することで、修正及び変更が明らかであろう。かかる修正及び変更は全て特許請求の範囲に入るので、本発明の1以上の態様を含む例示的実施形態はかかる修正及び変更を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含むベース基材(12)と、
ミクロ多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から形成され、ベース基材(12)の1つの面上に設けられた表面層(20)と
を含む複合フィルター媒体構造体(10)であって、前記ベース基材(12)及び表面層(20)が、EN 1822試験法に従って測定して95%より大きく99.5%以下の濾過効率を与えるように構成されている、複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項2】
表面層(20)が約2.00〜約3.50g/m2の坪量を有する、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項3】
表面層(20)の厚さが約5〜25ミクロンである、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項4】
複合フィルター媒体構造体(10)が約0.60〜3.05インチ水柱の圧力低下で95%より大きく99.5%以下の分別効率を与える、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項5】
複合フィルター媒体構造体(10)が約0.3〜約1.25ミクロンの粒径を捕獲する、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項6】
複合フィルター媒体構造体(10)がさらに複数の波形構造(18)を含む、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項7】
複合フィルター媒体構造体(10)の空気透過性が0.5インチ水柱の圧力で約4.0〜約10.0立方フィート/分である、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項8】
第1のエンドキャップ(72)、
第2のエンドキャップ(74)、並びに
スパンボンドプロセスで複数の二成分合成繊維から形成された不織合成布(12)と、
ミクロ多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から形成され、ベース基材(12)の1つの面上に設けられた表面層(20)と
を含むフィルター媒体(10)
を含んでなり、
前記ベース基材(12)及び表面層(20)が、EN 1822試験法に従って測定して95%より大きく99.5%以下の濾過効率を与えるように構成されており、
前記フィルター媒体がさらに、対向するローラーを用いて約90〜約140℃の温度で形成されたエンボス加工パターン又は複数の波形構造(18)を含んでいる、
ガスタービン空気吸込フィルターエレメント(70)。
【請求項9】
表面層(20)が約2.00〜約3.50g/m2の坪量を有する、請求項8記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項10】
表面層(20)の厚さが約5〜25ミクロンである、請求項8記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項11】
複合フィルター媒体構造体(10)が、約0.60〜3.05インチ水柱の圧力低下で95%より大きく99.5%以下の分別効率を与える、請求項8記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項12】
前記複数の波形構造(18)が、複合フィルター媒体(10)の長さにわたって延びる複数の交互の頂(46、56)及び谷(48、58)を含む、請求項8記載のフィルターエレメント(70)。
【請求項13】
前記複合フィルター媒体構造体(10)が、1インチ当たり約3〜約10の波形構造(18)の波形構造ピッチ及び少なくとも約0.02インチの有効深さを有する、請求項8記載のフィルターエレメント(70)。
【請求項14】
複合フィルター媒体(10)の製造方法であって、
スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から不織布基材(12)を形成し、
加熱積層により、不織布(12)の少なくとも1つの面上にミクロ多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン膜の表面層(20)を設けて、合成繊維を表面層(20)中に溶融させて、95%より大きく99.5%以下の濾過効率を有するように複合フィルター媒体(10)を形成する
ことを含む方法。
【請求項15】
表面層(20)を設ける工程が、約2.00〜約3.50g/m2の坪量を有する表面層(20)を設けることを含んでいる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
表面層(20)を設ける工程が、約5〜25ミクロンの厚さを有する表面層(20)を設けることを含んでいる、請求項14記載の方法。
【請求項17】
複合フィルター媒体構造体(10)が約0.60〜3.05インチ水柱の圧力低下で95%より大きく99.5%以下の分別効率を与える、請求項14記載の方法。
【請求項18】
加熱積層を実施する前の表面層(20)の空気透過性が0.5インチ水柱の圧力で約9.0〜約12.0立方フィート/分である、請求項14記載の方法。
【請求項19】
複合フィルター媒体構造体(10)が約0.3〜約1.25ミクロンの最大透過粒径を捕獲する、請求項14記載の方法。
【請求項20】
さらに、複合フィルター媒体構造体(10)に波形を形成する工程を含んでいる、請求項14記載の方法。
【請求項1】
スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から形成された不織布基材を含むベース基材(12)と、
ミクロ多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から形成され、ベース基材(12)の1つの面上に設けられた表面層(20)と
を含む複合フィルター媒体構造体(10)であって、前記ベース基材(12)及び表面層(20)が、EN 1822試験法に従って測定して95%より大きく99.5%以下の濾過効率を与えるように構成されている、複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項2】
表面層(20)が約2.00〜約3.50g/m2の坪量を有する、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項3】
表面層(20)の厚さが約5〜25ミクロンである、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項4】
複合フィルター媒体構造体(10)が約0.60〜3.05インチ水柱の圧力低下で95%より大きく99.5%以下の分別効率を与える、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項5】
複合フィルター媒体構造体(10)が約0.3〜約1.25ミクロンの粒径を捕獲する、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項6】
複合フィルター媒体構造体(10)がさらに複数の波形構造(18)を含む、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項7】
複合フィルター媒体構造体(10)の空気透過性が0.5インチ水柱の圧力で約4.0〜約10.0立方フィート/分である、請求項1記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項8】
第1のエンドキャップ(72)、
第2のエンドキャップ(74)、並びに
スパンボンドプロセスで複数の二成分合成繊維から形成された不織合成布(12)と、
ミクロ多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン膜から形成され、ベース基材(12)の1つの面上に設けられた表面層(20)と
を含むフィルター媒体(10)
を含んでなり、
前記ベース基材(12)及び表面層(20)が、EN 1822試験法に従って測定して95%より大きく99.5%以下の濾過効率を与えるように構成されており、
前記フィルター媒体がさらに、対向するローラーを用いて約90〜約140℃の温度で形成されたエンボス加工パターン又は複数の波形構造(18)を含んでいる、
ガスタービン空気吸込フィルターエレメント(70)。
【請求項9】
表面層(20)が約2.00〜約3.50g/m2の坪量を有する、請求項8記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項10】
表面層(20)の厚さが約5〜25ミクロンである、請求項8記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項11】
複合フィルター媒体構造体(10)が、約0.60〜3.05インチ水柱の圧力低下で95%より大きく99.5%以下の分別効率を与える、請求項8記載の複合フィルター媒体構造体(10)。
【請求項12】
前記複数の波形構造(18)が、複合フィルター媒体(10)の長さにわたって延びる複数の交互の頂(46、56)及び谷(48、58)を含む、請求項8記載のフィルターエレメント(70)。
【請求項13】
前記複合フィルター媒体構造体(10)が、1インチ当たり約3〜約10の波形構造(18)の波形構造ピッチ及び少なくとも約0.02インチの有効深さを有する、請求項8記載のフィルターエレメント(70)。
【請求項14】
複合フィルター媒体(10)の製造方法であって、
スパンボンドプロセスを用いて複数の二成分合成繊維から不織布基材(12)を形成し、
加熱積層により、不織布(12)の少なくとも1つの面上にミクロ多孔性延伸ポリテトラフルオロエチレン膜の表面層(20)を設けて、合成繊維を表面層(20)中に溶融させて、95%より大きく99.5%以下の濾過効率を有するように複合フィルター媒体(10)を形成する
ことを含む方法。
【請求項15】
表面層(20)を設ける工程が、約2.00〜約3.50g/m2の坪量を有する表面層(20)を設けることを含んでいる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
表面層(20)を設ける工程が、約5〜25ミクロンの厚さを有する表面層(20)を設けることを含んでいる、請求項14記載の方法。
【請求項17】
複合フィルター媒体構造体(10)が約0.60〜3.05インチ水柱の圧力低下で95%より大きく99.5%以下の分別効率を与える、請求項14記載の方法。
【請求項18】
加熱積層を実施する前の表面層(20)の空気透過性が0.5インチ水柱の圧力で約9.0〜約12.0立方フィート/分である、請求項14記載の方法。
【請求項19】
複合フィルター媒体構造体(10)が約0.3〜約1.25ミクロンの最大透過粒径を捕獲する、請求項14記載の方法。
【請求項20】
さらに、複合フィルター媒体構造体(10)に波形を形成する工程を含んでいる、請求項14記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−25238(P2011−25238A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162390(P2010−162390)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(507168926)ビーエイチエイ・グループ・インコーポレーテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】BHA GROUP, INC.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(507168926)ビーエイチエイ・グループ・インコーポレーテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】BHA GROUP, INC.
【Fターム(参考)】
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