説明

膨張食品の製造方法

【課題】本発明の目的は、上記の問題を防止または軽減する、改善された膨張食品の固化方法を提供することである。
【解決手段】第一温度及び第一圧力にある軟質の膨張食品組成物を、第二温度にある固化領域に移動させる工程(ここで、前記第二温度は前記第一温度よりも低温である);次いで、前記第一圧力よりも低圧の第二圧力にある固化領域において、前記軟質の膨張食品組成物を冷却及び固化させる工程を含む、膨張食品の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張食品の製造方法、特に固化した膨張食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膨張食品(すなわち、空気及び/または他の気体;例えば二酸化炭素または窒素を包含する食品)は既知である。これらは、食品組成物に直接気体を添加することによって、例えば機械的に攪拌し、さらに任意に該食品を減圧下におくことによって、または加圧下で気体を注入し、続いて圧力を放圧すること(例えば押出)によって、形成することができる。あるいは(または前記との組み合わせにおいて)、化学剤(例えば重炭酸ナトリウム)を食品組成物に導入して、この剤によって該食品組成物中において気体を発生させてもよい。
【0003】
膨張食品の生成において、とりわけ困難なのは、所望のテクスチャー及び、該食品が人の消費を企図したものであることから、所望の食感(mouthfeel)に必要な、要求される膨張の程度に見合う生成物を得ることである。過度の膨張は、該食品に空洞を生じる恐れがある。逆に、該膨張食品が、適切に固化する前につぶれることのないように注意せねばならない。これは、膨張が高温で行われた場合には、この場合該食品を注意深く制御した条件下で固体化させなければならないため、特に問題である。例えば、膨張が高温にて真空下で行われるならば、該食品の水分含量が固化するに充分なほど減少するまで、真空が維持されねばならない。別の方法においては、膨張食品は、冷却前に一時間以上高温(およそ100℃)におくことによってその水分含量を減少させることによって安定化される。こうした処理には時間及び費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の問題を防止または軽減する、改善された膨張食品の固化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様によれば、第一温度及び第一圧力にある軟質の膨張食品組成物を、第二温度にある固化領域に移動させる工程(ここで、前記第二温度は前記第一温度よりも低温である);次いで、前記第一圧力よりも低圧の第二圧力にある固化領域において、前記軟質の膨張食品組成物を冷却及び固化させる工程を含む、膨張食品の製造方法が提供される。
【0006】
本発明の第二の態様によれば、第一温度及び第一圧力にあり、少なくとも部分的に膨張した状態であってもよく、蒸発可能な膨張剤を含む、軟質の膨張食品組成物を、第二温度にある固化領域に移動させる工程(ここで、前記第二温度は前記第一温度よりも低温である);次いで、前記第一圧力よりも低圧の第二圧力にある固化領域において、前記蒸発可能な膨張剤の蒸発によって該食品組成物を膨張または更に膨張させるように、前記軟質の膨張食品組成物を冷却及び固化させる工程を含む、固化した膨張食品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここに用いるところの、食品組成物に関する「軟質」とは、膨張していてもよいが可撓性状態にあり、よって膨張(またはさらなる膨張)または収縮することができるような食品組成物に関する。
【0008】
好ましくは、第一温度は、典型的には70乃至150℃の範囲内とする。第一圧力は、好ましくは、実質的に大気圧である。
【0009】
第二温度は、好ましくは10乃至50℃の範囲内であるが、典型的には環境温度である。第二圧力は、好ましくは2×104乃至7×104Paの範囲、更に好ましくは3.3×104乃至5×104Paの範囲内とする。
【0010】
好ましくは、固化領域は、実質的に第二温度及び第二圧力に維持され、よって該方法が連続的に行えるようにする。更に好ましくは、固化領域は、入口及び出口を備え、軟質の食品組成物が該入口から固化領域に入り、固化した膨張食品が出口から出てくるように配置されていることとする。
【0011】
一の実施態様においては、食品組成物は、ベルトコンベヤによって固化領域を通過させられる。該食品組成物の固化領域における在留時間は、コンベヤの速度によって制御されてもよい。軟質の食品組成物の固化に必要とされる時間は、10分未満であって、約3分間と短くすることもできる。
【0012】
最初の膨張(すなわち、固化領域に導入される前の膨張)は、少なくとも部分的に加熱及び/または減圧(例えば、部分真空の適用または、比較的高圧の領域から比較的低圧の領域へとダイを通す押出)によって行われもよい。
【0013】
一般的に、食品組成物の膨張は、該組成物中に包含される膨張剤を必要とする。好適な膨張剤には、ナトリウムまたは重炭酸アンモニウム等の化学膨張剤、臨界超過二酸化炭素または窒素、圧縮空気または水等のガス状のまたは蒸発可能な膨張剤が含まれる。
【0014】
本発明の第一の態様による方法では、一以上の化学及び/またはガス状もしくは蒸発可能な膨張剤が、当該食品組成物の成分として含まれていてもよい。
【0015】
本発明の第二の態様による方法では、一以上の化学及び/またはガス状の膨張剤が、臨界超過二酸化炭素または窒素、あるいは水から好ましく選択される、蒸発可能な膨張剤に加えて、当該食品組成物の成分として含まれていてもよい。
【0016】
存在するならば、蒸発可能な膨張剤の蒸発が、該食品組成物の冷却及び固化を補助するであろう。
【0017】
食品組成物は、前述の条件下で混合された場合に、可撓性状態で膨張することが可能で、膨張状態の物理特性を維持して固形化または固化することが可能な塊を形成する、あらゆる成分または成分混合物を(膨張剤に加えて)含有してもよい。好ましくは、該食品組成物は菓子組成物であって、一般的に、ココア固体、糖、他の炭水化物(例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び多糖類)、麦芽粉乳、麦芽抽出物、脱脂粉乳、全脂乳粉、マルトデキストリン、植物オイルまたは脂肪、デンプン、グルテン、カゼイン、ペクチン、ゴム及びゼラチン等の結合剤、風味剤及び着色剤から選択される一以上の成分を(膨張剤に加えて)含有するものである。
【0018】
食品組成物には、該食品組成物が所望の形状の小片、例えばバーもしくは「ボール」(すなわち、ほぼ球状の小片)に形成される、起泡処理をおこなってもよい。こうした成形処理は、膨張前に該食品組成物を型に流し込むことを含んでもよい。あるいはまた、成形処理が、膨張してはいるが軟質の食品組成物に行われても(例えば押出に次いで、膨張組成物を切り分け、任意にタンブリングによってボールに成形されても)よい。
【0019】
前記第一の態様の好ましい実施態様においては、軟質の膨張食品組成物は、押出により、好ましくは押出クッカーを使用して成形される。
【0020】
前記第一の態様の特に好ましい実施態様においては、押出された軟質食品組成物を、小片に切り分け、タンブリングによってボールに成形するが、この処理の間に、該膨張食品組成物を、固化領域への移動に先立ち第一温度に加熱する。
【0021】
固化に続き、該膨張食品小片は、実装のために移送しても、さらなる処理を施しても、例えばチョコレートコーティング組成物等により被覆を施してもよい。
【0022】
本発明を、以下の実施例において、より詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
配合(重量(kg))
砂糖 57.9 乾燥コーンシロップ 36.1 上記の配合に従ってバッチを計量し、リボンブレンダー中で混合した。生じた組成物を、21kg/時間の速度にて11-section Wenger TX52 ツイン共回転スクリュー押出クッカー(twin co-rotating screw extrusion cooker)の供給ゾーンにのセクション1に添加した。この例においては、該押出機のセクション6には、周囲環境に開放された通気孔が設けられている。該押出機のシャフトスピードは210rpmであって、押出モーター荷重は48%であった。セクション1乃至3における押出温度は30℃乃至40℃に、セクション4乃至6においては140℃乃至150℃に、更にセクション6乃至11においては60℃乃至65℃に維持した。42DEコーンシロップ(4kg)中の重炭酸ナトリウム(6kg)新たに調製したスラリーを、2.3kg/時間の速度で押出機の開口通風孔にポンプ注入した。セクション11からの1030kPaにおける塊を、環状ダイから押出して、連続的なロープを成形した。
【0024】
ダイから(大気圧の領域へ)放出されるロープを、デンプンフィーダーの下を通過させてデンプンで被覆し、バネ付きナイフによってカットして小さな円柱状の小片を製造した。これらを振動コンベヤに移し、約120℃の温度及び均一な膨張構造を有する、ほぼ球形の小片を形成した。該小片を70℃において平衡させ、「軟質」状態とした後、振動コンベヤから真空オーブン(温度20℃及び圧力6×104Pa)に移して、該小片を冷却し、固化させた。3分間のみの維持時間の後、オーブンから除去したところ、該小片はカリカリであり、その均一な膨張構造を維持していた。
【0025】
(実施例2)
配合(重量(kg))
グラニュー糖 37.9 乾燥グルコースシロップ固体42DE 25.2 脱脂粉乳 29.0 低脂肪(11%)ココア粉末 7.9 上記の配合に従ってバッチを計量し、リボンブレンダー中で混合した。生じた組成物を、50kg/時間の速度にて11-section Wenger TX52 ツイン共回転スクリュー押出クッカー(twin co-rotating screw extrusion cooker)の供給ゾーンにのセクション1に添加した。この例においては、該押出機のセクション6には、周囲環境に開放された通気孔が設けられている。該押出機のシャフトスピードは150rpmであって、押出モーター荷重は89%であった。セクション1乃至3における押出温度は30℃乃至40℃に、セクション4乃至6においては55℃に、更にセクション6乃至11においては60℃に維持した。42DEコーンシロップ(4kg)中の重炭酸ナトリウム(6kg)新たに調製したスラリーを、2.5kg/時間の速度で押出機の開口通風孔にポンプ注入した。セクション11からの2760kPaにおける塊を、環状ダイから押出して、連続的なロープを成形した。
【0026】
ダイから(大気圧の領域へ)放出されるロープを、デンプンフィーダーの下を通過させてデンプンで被覆し、バネ付きナイフによってカットして小さな円柱状の小片を製造した。これらを振動コンベヤに移し、約105℃の温度及び均一な膨張構造を有する、ほぼ球形の小片を形成した。該小片を90℃において平衡させ、「軟質」状態とした後、振動コンベヤから真空オーブン(温度20℃及び圧力5×104Pa)に移して、該小片を冷却し、固化させた。3分間のみの維持時間の後、オーブンから除去したところ、該小片はカリカリであり、その均一な膨張構造を維持していた。
【0027】
(実施例3)
配合(重量(kg))
糖 46 乾燥グルコースシロップ 46 粉乳 0.5 水 0.3 上記の配合に従ってバッチを計量し、zブレードミキサー中で混合し、重い生地を生成させた。混合処理により、生地の温度が75乃至80℃に上昇した。この生地を、冷温のテーブル上に延ばし、細片に切り分けた。これを冷却した成形ロールを通して供給し、薄いウェブによって連結した成型物を製造した。成形されたウェブは脆くなるまで冷却し、成型物をタンブリングによって別個の小片に分離させた。こうして形成された小片を、回転式熱風アプリケーター中で70乃至80℃の温度にて平衡させ、次いで、20乃至40℃の温度及び5×104Paの圧力に維持された連続する真空チャンバに移送した。
【0028】
これらの条件下で、小片中の水分が蒸発し、小片を膨張させた。蒸発冷却作用により、該小片は、そのガラス転移温度(約70℃)未満に冷却され、これらをおよそ3分間後に移動させた。1%未満の水分含量を持つに至った該小片は、カリカリであって、均一な膨張構造を維持していた。
【0029】
(比較例1)
実施例1を繰り返したが、ボールへの成形の後、該小片を大気圧にて20℃に冷却した。生じた小片は、幾分膨張が失われたことにより実施例1のものよりも密であり、均一な膨張構造を維持は失われていた。該小片は、皺の寄った外観を有していた。
【0030】
(比較例2)
実施例1を繰り返したが、ボールへの成形の後、該小片をマルチパスドライヤー中において、101℃及び大気圧にて感想させ、次いで環境温度に冷却した。均一な膨張構造が冷却後に維持されるには、少なくとも35分間の乾燥時間が必要であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固化した膨張食品の製造方法において、第一温度及び第一圧力にある軟質の膨張食品組成物を、第二温度にある固化領域に移動させる工程(ここで、前記第二温度は前記第一温度よりも低温である);次いで、前記第一圧力よりも低圧の第二圧力にある固化領域において、前記軟質の膨張食品組成物を冷却及び固化させる工程を含む方法。
【請求項2】
固化した膨張食品の製造方法において、第一温度及び第一圧力にあり、少なくとも部分的に膨張した状態であってもよく、蒸発可能な膨張剤を含む、軟質の膨張食品組成物を、第二温度にある固化領域に移動させる工程(ここで、前記第二温度は前記第一温度よりも低温である);次いで、前記第一圧力よりも低圧の第二圧力にある固化領域において、前記蒸発可能な膨張剤の蒸発によって該食品組成物を膨張または更に膨張させるように、前記軟質の膨張食品組成物を冷却及び固化させる工程を含む方法。
【請求項3】
前記蒸発可能な膨張剤が、臨界超過二酸化炭素または窒素、あるいは水から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第一温度が、70乃至150℃の範囲にある、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第一圧力が、実質的に大気圧である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第二温度が、10乃至50℃の範囲にある、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第二圧力が、2×104乃至7×104Paの範囲にある、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第二圧力が、3.3×104乃至5×104Paの範囲にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固化領域が、実質的に第二温度及び第二圧力に維持される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
固化領域が、入口及び出口を備え、軟質の食品組成物が該入口から固化領域に入り、固化した膨張食品が出口から出てくるように配置されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
食品組成物が、ベルトコンベヤによって固化領域を通過させられる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
食品組成物の、固化領域における在留時間が、コンベヤの速度によって制御される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
化学膨張剤が、組成物の成分として含まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ガス状のまたは蒸発可能な膨張剤が、該組成物に導入される、請求項1に、または請求項1に付随する場合は請求項3乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
膨張が、少なくとも部分的に、加熱及び/または減圧によって行われる請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
食品組成物が、菓子組成物である、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
菓子組成物が、ココア固体、糖、他の炭水化物、麦芽粉乳、麦芽抽出物、脱脂粉乳、全脂乳粉、マルトデキストリン、植物オイルまたは脂肪、デンプン、グルテン、カゼイン、ペクチン、ゴム及びゼラチン等の結合剤、風味剤及び着色剤から選択される一以上の成分を含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
食品組成物が、該食品組成物を所望の形状の小片に成形する成形処理を受ける、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記成形処理が、膨張の前に食品組成物を型に流し込む工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
成形処理が、膨張しているが軟質の、食品組成物に行われる、請求項18の方法。
【請求項21】
軟質の膨張食品組成物が、押出によって成形される、請求項1に、または請求項1に付随する場合は請求項3乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
押出された軟質の膨張食品組成物が、小片に切り分けられ、タンブリングによってボールに成形され、その処理の間、固化領域に移動させる前に、膨張食品組成物を第一温度に加熱する、請求項21に記載の方法。

【公開番号】特開2012−70747(P2012−70747A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251456(P2011−251456)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【分割の表示】特願2000−593200(P2000−593200)の分割
【原出願日】平成12年1月17日(2000.1.17)
【出願人】(501281180)カドベリー・ホールディングス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】