説明

臨床分析装置におけるデータ管理暗証化のための方法及び装置

【課題】使用者の対話の必要性を除く、又は最小限にするような臨床分析装置の提供。
【解決手段】データ伝送それぞれが暗証パスワード及び所定のパラメータデータ(例えば目的、分析対象物の分析値)値を含み、暗証パスワードが、データ伝送それぞれの有効性を確認するために該コンピュータシステムによって使用される臨床分析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、臨床分析装置に関し、より具体的には、臨床分析装置におけるデータ管理暗証化のための新規で改良された方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体液中の分析対象物の定量は、特定の生理的異常の診断及び維持に非常に重要である。例えば、特定の個人においては、ラクテート、コレステロール及びビリルビンを監視すべきである。とくに、体液中のグルコースの測定は、食事におけるグルコース摂取を規制する手段として体液中のグルコースのレベルを頻繁に検査しなければならない糖尿病患者にとって非常に重要である。本明細書の開示内容の残りはグルコースの測定を対象とするが、本発明の方法及び装置は、他の診断系とで使用することもできることが理解されよう。
【0003】
診断系、例えば血中グルコース系は、測定された出力(電流又は色)及び試験を実施するのに使用される試薬感知要素の既知の反応性に基づいて実際のグルコース値を計算するのに使用されるバイオセンサを含む。試験結果は通常、使用者に表示されるとともに、血中グルコースモニタのメモリに記憶される。記憶された多数の値は、例えば血中グルコースモニタの使用者のための医師による分析を可能にするために、定期的に血中グルコースモニタから別のコンピュータに伝送することが望ましい。
【0004】
このようなデータ伝送のための一つの通信プロトコルは、ASTM規格E1381−91「Specification for Low-Level Protocol to Transfer Messages Between Clinical Laboratory Meters and Computer Systems」及びASTM規格E1394−91「Standard Specifications for Transferring Information Between Clinical Meters and Computer Systems」である。ASTM規格E1381−91は低レベルデータ伝送プロトコルを定義し、ASTM規格E1394−91はデータフォーマットを定義している。
【0005】
市販されている多数の臨床分析装置が患者の使用のために利用できる。市販されている種々の臨床分析装置の間の相異のため、データ伝送の有効性を確認し、特定のタイプの臨床分析装置を識別するために、臨床分析装置におけるデータ管理暗証化のための方法及び装置が必要である。そうでなければ、患者が異なるタイプの臨床分析装置に変更するならば、その患者の医師による、相異した臨床分析装置からのデータ伝送の分析が誤った結果を提供するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の重要な目的は、臨床分析装置におけるデータ管理暗証化のための新規で改良された方法及び装置を提供し、使用者の対話の必要性を除く、又は最小限にするような方法及び装置を提供し、従来技術の構造の欠点のいくつかを解消するような方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡潔にいうならば、臨床分析装置におけるデータ管理暗証化のための方法及び装置が提供される。臨床分析装置は、測定すべき使用者サンプルを受けるためのセンサと、所定のパラメータ値を測定するために所定の試験シーケンスを実行するためのプロセッサとを含む。プロセッサには、所定のパラメータデータ値を記憶するためのメモリが結合されている。臨床分析装置による、対応するコンピュータシステムへの各データ伝送には、暗証(認定)パスワードが関連づけられている。暗証パスワードは、各データ伝送の有効性を確認するために、対応するコンピュータシステムによって読み取られる。暗証パスワードは、臨床分析装置が各データ伝送中の所定の情報を利用することによって生成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の臨床分析装置を開位置で示す拡大斜視図である。
【図2】図1の臨床分析装置を閉位置で示す拡大斜視図である。
【図3】図1の臨床分析装置に関し、本発明の臨床分析装置回路を示すブロック図である。
【図4】図1の臨床分析装置に関し、本発明のデータ管理認証方法の連続ステップの例を示す流れ図である。
【図5】図1の臨床分析装置に関し、本発明の認証パスワードを含むメッセージフォーマットの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照すると、まず図1及び2には、全体を符号10によって指定され、本発明の原理にしたがって構成された臨床分析装置が示されている。臨床分析装置10は、ベース部材14及びカバー部材16によって形成されるクラムシェル形の筐体12を含む。ベース部材14及びカバー部材16は、第一端18で回動自在に互いに取り付けられ、反対側の第二端22で掛止め部材20によって互いに固定される。表示装置24、例えば液晶表示装置(LCD)がカバー部材16によって担持されている。臨床分析装置10をオン及びオフに切り換えるには、カバー部材16に取り付けられた手動式のスライド28を、図1に示す開位置と、図2に示す閉位置との間で動かす。
【0010】
図2の閉位置又はOFF位置では、スライド28が表示装置24を覆い隠す。臨床分析装置10の使用者が指を係合させてON位置及びOFF位置を選択することができるよう、スライド28によって担持されるサムグリップ30が設けられている。このサムグリップ30はまた、スライド28のOFF位置で左から右に動かすと、システム試験作動モードを選択することができる。使用者がスライド28を図1のON位置に動かすと、表示装置が開放されるとともにセンサ32が提示される。センサ32はスロット34の中を延び、使用者が血液の滴を付けることができるよう、筐体12の外に位置する。筐体12には、使用者が、臨床分析装置10の所定の作動モードを選択し、例えば血中グルコース読み値をセット、検索及び削除し、日時及びオプションをセットするために操作するための右ボタン42及び左ボタンもしくはスイッチ44(又はスイッチA及びB)が設けられている。
【0011】
次に図3を参照すると、全体を符号50によって指定され、本発明の原理にしたがって構成された臨床分析装置回路のブロック図が示されている。臨床分析装置回路50は、マイクロプロセッサ52を、プログラム及び使用者データを記憶するための対応するメモリ54とともに含む。表示装置24がマイクロプロセッサ52によって機能的に制御される。センサ32に結合したメータ機能56が、血中グルコース試験値を記録するため、マイクロプロセッサ52によって機能的に制御される。バッテリ(図示せず)切れ状態を検出するために、バッテリモニタ機能58がマイクロプロセッサ52に結合している。所定のシステム状態を検出し、臨床分析装置10の使用者に警報表示を生成するために、警報機能60がマイクロプロセッサ52に結合している。データポート又は通信アダプタ62が、通信リンク66を介して、接続されたコンピュータシステム64との間でデータを結合する。臨床分析装置10の血液試験シーケンスモードを実行するために、スライド28の使用者ON/OFF操作に応答するライン28AのON/OFF入力がマイクロプロセッサ52に結合されている。マイクロプロセッサ52は、図4及び5に示すように本発明の方法を実行するのに適当なプログラミングを含む。
【0012】
本発明によると、図5で符号504によって指定される暗証パスワードが、臨床分析装置10による、符号500によって指定される各データ伝送又はメッセージに関連づけられている。暗証パスワード504は、各データ伝送の有効性を確認するため、対応するコンピュータシステム64によって読み取られる。暗証パスワード504は、臨床分析装置10が各データ伝送中の所定の情報を利用することによって生成される。
【0013】
図4を参照すると、ブロック400で開始する本発明のパスワード計算ステップの例が示されている。まず、ブロック402で示すように、14日間平均グルコース値を計算し、AVGとして記憶する。次に、ブロック404に示すように、深夜からの分の数を計算し(hrs*60+mins)、MINSとして記憶する。さらに、ブロック406で示すように、所定の日付、例えば1989年12月31日から今日までの日数を計算し(全年数*365+うるう年*1+本年中の経過日数)、DAYSとして記憶する。そして、ブロック408に示すように、8ビット乱数を生成し、RNDとして記憶する。最後に、ブロック410で示すように、パスワードを計算する。パスワード=RND*256+((AVG+MINS+DAYS)モジュロ256)。ブロック412に示すように、これで一連のステップが完了する。
【0014】
図5は、符号500によって指定される、臨床分析装置10から対応するコンピュータシステム64への各データ伝送に使用される本発明のメッセージフォーマットの例を示す。各データ伝送又はメッセージ500は、暗証パスワード504を含む所定のフィールドを含むメッセージヘッダ502を含む。メッセージヘッダ502の中のもう一つの所定のフィールドは、メッセージ500の当日付スタンプ506を含む。各データ伝送又はメッセージ500は、複数のデータレコード508を含む。図5には、例として5個のデータレコード508が示され、R1、R2、R3、R4及びR5とラベルを付されている。−18572の暗証パスワード504が、1997年6月16日1307時、すなわち1:07PMの日付スタンプ506とともに示されている。14日間平均グルコース値が、汎用試験ID「∧∧∧GlucoseA」を含むレコードR1の中に189と示されている。
【0015】
ASTM規格E1394−91は、メッセージヘッダ502に使用するのに有利であるヘッダレコードを定義している。暗証パスワード504は、ヘッダレコードの中の、ASTM規格E1394−91によって「アクセスパスワード」フィールドと定義される1個のフィールドに含まれる。臨床分析装置10は、暗証パスワード504を、符号付き整数16ビット値として伝送する。符号付き整数は、実際には、整数を表す一連のASCII(American National Standard Code for Information Interchange)文字として伝送される。認証パスワード504の範囲は「−32767」から「32768」までである。
【0016】
暗証パスワード504の最上位8ビットは、メッセージ500の伝送と伝送との間でランダムに変わらなければならない8ビット乱数である。暗証パスワード504の最下位8ビットは、図5のデータレコードR1に示されるように、汎用試験IDが「∧∧∧GlucoseA」であるとき、ヘッダレコード502のタイムスタンプフィールド506に含まれるメッセージの日時及び結果レコード508に含まれる14日間平均グルコース値に基づく。パスワードの計算部分は、深夜からの分の数を1989年12月31日からの日数に加算し、14日間平均グルコース値(mg/dL単位)をプラスすることによって計算される。計算の最下位8ビットだけが保持される。臨床分析装置10がグルコース値をmmol/L単位で出すならば、まず14日間平均値をmg/dL単位に変換(18を掛け、四捨五入して整数にする)してから、パスワード計算に加える。
【0017】
8ビットランダム部(最上位バイト)を8ビット計算部(最下位バイト)に連結すると、暗証パスワード504を表す16ビット値が得られる。暗証パスワード504は、−32767〜32768の範囲の値の16ビット符号付き整数として解釈される。これは、整数を表す一連のASCII文字として伝送される。
【0018】
コンピュータシステム64が特定の臨床分析装置10から伝送を受けると、コンピュータシステムは、パスワードフィールド中のASCII文字を整数に変換する。上で詳述したように、最上位8ビットを無視し、最下位8ビットを暗証パスワード504の計算に対して検証する。例えば、−18572の暗証パスワード504を、コンピュータシステム64によって計算された値と比較する。コンピュータシステム64は、図4のブロック410に示す、臨床分析装置10によって使用されるものと同じ等式を使用して暗証パスワード504を計算する。1989年12月31日から1997年6月16日の日付スタンプ日までの日数のDAYS値を、(7年*365+2うるう年*1日/うるう年+本年の経過日数(31+28+31+30+31+16)によって計算すると、=2724となる。時間計算(深夜からの分数)は((13時間*60分/時)+7分)に等しく、=787となる。計算は次のように検証される。(2724+787+189)=3700又は16進で0E74であり、最下位8ビットを16進で維持する、すなわち74を16進で維持すると、10進の116に等しい。アクセスパスワードは、10進では−18572又は16進ではB774である。結果の最下位ビットを維持すると、16進で74となり、これは10進の116に等しい。したがって、暗証パスワード504は、図5のデータ伝送メッセージ500の例で計算された値と一致する。暗証パスワード504が計算値と一致する場合のみ、臨床分析装置10は妥当(有効)なメータ(計量値)として識別される。
【0019】
図面に示す本発明の実施態様の詳細を参照して本発明を説明したが、これらの詳細は、請求の範囲で請求する発明の範囲を限定するためのものではない。
【符号の説明】
【0020】
32 センサ
52 マイクロプロセッサ
54 メモリ
62 通信アダプタ
504 暗証パスワード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床分析装置からのデータ伝送の有用性を確認するシステムであって、
使用者サンプルを受けるためのセンサ手段と、
使用者サンプルに相当する所定のパラメータデータ値を測定するために所定の試験シーケンスを実行し、少なくとも所定のパラメータデータ値に基づいて暗証パスワードを生成するプロセッサ手段と、
プロセッサ手段に結合され、所定のパラメータデータ値及び暗証パスワードを伝送するための通信手段と、
を含む臨床分析装置と、
データ伝送を受けるように構成され、データ伝送中の少なくとも所定のパラメータ値に基づいてコンピュータ決定値を決定するコンピュータシステムであって、コンピュータ決定値を暗証パスワードと比較し、データ伝送の有用性を確認するコンピュータシステムと、
を含むシステム。
【請求項2】
暗証パスワードは少なくとも所定のパラメータデータ値に基づく整数型16ビット値である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
16ビット値の最下位8ビットは少なくとも所定のパラメータデータ値に基づく請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
16ビット値の最上位8ビットは乱数に相当する、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
コンピュータシステムは、コンピュータが決定した値を暗証パスワードと比較するときに暗証パスワードの最上位8ビットを無視する、請求項2乃至4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
暗証パスワードはさらにタイムスタンプ値に基づく、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
暗証パスワードは少なくとも14日間平均グルコース値に基づく、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
それぞれのデータ伝送はメッセージヘッダに暗証パスワードを含み、所定のパラメータ値は複数のデータレコードに含まれ、データレコードはメッセージヘッダに続く、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
メッセージヘッダは、現在時刻値と14日平均グルコース値の少なくとも一つを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
臨床分析装置とコンピュータシステムは、同じ等式を用いて、それぞれ暗証パスワード及びコンピュータ決定値を決定する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−181593(P2009−181593A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119464(P2009−119464)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願平11−95657の分割
【原出願日】平成11年4月2日(1999.4.2)
【出願人】(391007079)バイエルコーポレーション (12)
【Fターム(参考)】