説明

臨床検査データ解析表示装置

【課題】臨床検査データの項目間の隠れた関係を、少ない検査項目で明確に抽出し、未病を検知することができる臨床検査データ解析表示装置を提供する。
【解決手段】あらかじめ格納していた検査データと正常と判断させる範囲の上限・下限よりなる基準値とを基に、クライアントの検査データから健康度を判断して表示するインタラクティブインタフェースを用い、臨床検査データの項目間の隠れた関係を抽出する。この関係抽出では、各検査項目における異常回数に注目する。そのため、インタラクティブインタフェースの特徴抽出部に関係行列算出部を付加するとともに、表示制御装置と表示装置の間の表示インタフェースに関係行列表示インタフェースを追加する。これにより、ある検査項目値から他の検査項目値の推定が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断支援に関する臨床検査データ解析表示装置に関し、詳しくは、臨床検査データの検査項目間の関係を抽出し、解析と表示を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
定期的に行われる健康診断などの臨床検査データは、未病を検出するにあたり有用である。その臨床検査データに基づいてクライアントの健康状態を判断する場合、単一の検査項目の異常値だけで判断するのは無理がある。そのため、従来は、検査項目間の関係について、相関係数を用いて調べるのが主流であった。しかしながら、項目間の相関係数は一般的に小さく、臨床検査データのみを用いて明確な関係を抽出することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、臨床検査データの項目間の隠れた関係を、少ない検査項目で明確に抽出し、未病を検知することができる臨床検査データ解析表示装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するため、少なくとも、クライアントのID、各検査項目とその検査値、検査日、検査回数を含む検査データを格納する第1記憶装置と、各検査項目毎に正常と判断される範囲の下限および上限よりなる基準値を格納する第2記憶装置と、第1記憶装置に格納された検査データと第2記憶装置に格納した基準値に基づいてクライアントの健康度を判断する判断装置と、各種画面の表示を行う表示装置と、クライアントの検査データの解析結果と健康度の関係を表示装置に表示させる機能を有する表示制御装置と、オペレータの入力を受け付け、表示制御装置を介して表示部の画面表示の切り替えを含む制御を行うオペレータ入力部とを備えたインタラクティブインタフェースを用いて臨床検査データ解析および表示を行うための装置であって、
特徴抽出部に関係行列算出部を付加するとともに、表示制御装置と表示装置の間の表示インタフェースに関係行列表示インタフェースを追加し、
関係行列算出部が、
第1記憶装置に格納されている検査データを読み込むとともに、第2記憶装置に格納されている基準値を読み込み、一定回数以上の検査を受けているクライアントを抽出し、抽出されたクライアントの検査データと、検査値とそれに対応する基準値に基づいて、各検査項目について異常状態とその異常回数に調べ、クライアントと検査データを複数のグループに分類するデータ分類装置と、
データ分類装置で得られたグループを用いて、他の検査項目のグループ内の平均値を計算し、異常回数の増加にともなって、平均値が増加している、もしくは、減少している、かつ、平均値の差がすべて統計的検定法で有意か判定し、条件を満たしている検査項目を抽出する増加・減少傾向判定装置と、
増加・減少傾向判定装置により抽出された検査項目の組について、グループと平均値毎の関係を解析関数で近似し、関係係数を求める関係係数算出装置と、
関係係数算出装置で求めた関係係数を格納する関係係数記憶装置を備え、
関係行列表示インタフェースが、
オペレータ入力部による選択にしたがい、関係係数記憶装置に格納されている関係係数を読み込み、各検査項目を列および行とする表に行列形式で表示する行列表示装置と、
行列表示装置に表示された表中の行と列についてのオペレータ入力部による選択にしたがって、該当する検査項目間の関係を示すグラフを表示する個別関係表示装置と、
オペレータ入力部による複数の検査項目群の選択にしたがって、関係行列から検査項目の異常回数をマーカとして近似するマーカ近似装置と、
マーカ近似装置で近似された異常回数を表示するマーカ表示装置を備えることを特徴とする臨床検査データ解析表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、個人内の異常回数に注目することで、多くの関係数を抽出でき、より少ない検査項目で未病の傾向を調べる指標を提供できる。したがって、臨床検査データの項目間の隠れた関係を、少ない検査項目で明確に抽出できるため、実現が不可能であった検査項目値から他の検査項目値を推定することができる。また、必要検査項目を減らすことや、各検査費用を考慮することで、検査費用を抑える検査ができるなど、多くのサービルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態にかかる臨床検査データ解析表示装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】同上インタラクティブインタフェースをパーソナルコンピュータで実現した場合のハードウェアの模式的ブロック図である。
【図3】同上インタラクティブインタフェースの動作フロー図である。
【図4】ハイパーテキスト形式に書き換えた決定木の一例を示す図である。
【図5】Webブラウザに表示された決定木の一例を示す図である。
【図6】データを見せるテーブルを示す図である。
【図7】リンクされた他のクライアントの検査結果の表示を示す図である。
【図8】図1の臨床検査データ解析表示装置における関係行列算出部の動作フロー図である。
【図9】図1の臨床検査データ解析表示装置における関係行列算出部の動作フロー図である。
【図10】図1の臨床検査データ解析表示装置で求めた検査項目と異常状態になる割合の関係例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態に係る臨床検査データ解析表示装置について詳細に説明する。
【0008】
図1は、本実施形態の臨床検査データ解析表示装置の構成を模式的に示すブロック図である。この臨床検査データ解析表示装置は、大別して、医療診断支援のためのインタラクティブインタフェース10と、関係行列算出部20と、関係行列表示インタフェース30から構成される。なお、ここでは、上記の3つのブロックに分けてそれぞれ説明するが、実際には、後述の特徴抽出部に関係行列算出部を付加するとともに、後述の表示制御装置と表示装置からなる表示インタフェースに関係行列表示インタフェースを追加するものである。
【0009】
医療診断支援のためのインタラクティブインタフェース10は、本発明の発明者のグループが特願2008−226292号(平成20年9月3日出願)に係るものである。まず、このインタラクティブインタフェース10について述べる。
【0010】
インタラクティブインタフェース10は、血液等の検査データを解析した結果と健康度の関係を示し、それにより各データに関して詳細な解析を可能とするものである。ここで、健康度とは、病気にならないように自発的に健康管理するために使われる指標を意味し、そのステージは、たとえばクライアントに対してはI、II、III、IV、Vの5段階とすることができる。この場合、段階Iは理想的な健康状態、段階IIはほぼ健康な状態、段階IIIは日常生活の改善が必要な状態、段階IVは検診、日常生活の改善が不可欠な状態、段階Vは精検、治療が必要な状態とする。なお、医師や研究者に対してはさらに細かくI、II、III、IVa、IVb、IVc、Va、Vbの8段階とすることができる。
【0011】
図2は、このインタラクティブインタフェース10をパーソナルコンピュータで実現した場合のハードウェアの模式的ブロック図である。
【0012】
インタラクティブインタフェース10は、オペレータ入力部11、第1記憶装置12、第2記憶装置13、第3記憶装置14、特徴抽出部15、推論装置16、表示制御装置17および表示装置18から構成される。
【0013】
また、ハードウェア構成としては、CPU41、インタラクティブインタフェース10の動作を実行させるためのアプリケーション・プログラムが搭載されたハードディスクドライブ42、RAM43、外部とデータのやりとりを行うI/O44、マウス45、キーボード46、光学ディスクを駆動させる光学式ドライブ47、CRTや液晶ディスプレイ等よりなるディスプレイ48等から構成される。
【0014】
インララクティブインタフェース10は図示しないデータ入力部を備え、このデータ入力部は、クライアントのID、年齢、生年月日、検査日、検査項目と検査値、検査回数、医師により判断された健康度、可能性のある疾患および部位、カルテ等または電子カルテの画像情報等の入力を受け付ける。
【0015】
第1記憶装置12は、データ入力部が受け付けたデータのうちクライアントの検査項目と検査値、ID、検査日、健康度、疾患可能性部位等の検査データを第1の特徴量として記憶する。第2記憶装置13は、クライアントの検査項目の中で疾患の種類毎に関連する検査項目をそのレベルによって複数のクラスに分類し、各クラスに含まれる異常高値または異常低値をとる項目数を第2の特徴量として記憶する。第3記憶装置14は、健康度、疾患可能性部位の情報とクライアントのカルテ情報(カルテ等または電子カルテの画像情報等)を記憶する。これら第1ないし第3記憶装置12、13、14はデータベース(DB)とする。
【0016】
特徴抽出部15は、第1記憶装置12から、クライアントの検査データの解析結果と健康度との関係を表す決定木を作成するための特徴量を抽出する。
【0017】
推論装置16は、特徴抽出部15が抽出した特徴量と、第3記憶装置14が記憶している健康度および疾患可能性部位の情報をもとに、公知の機械学習あるいはパターン認識の識別関数を用いて前記決定木を求める。この決定木は例えばC4.5を用いて行うことができる。C4.5で解析を行う前に、使用するデータはC4.5で処理可能なようにフィルタで整形を行う。C4.5での解析結果はテキスト形式の決定木の形で現れる。
【0018】
表示制御部17は、推論装置16で得られた結果や後述する解析結果を表示装置18に表示させるように表示制御を行う。推論装置16により表されたテキスト形式の決定木はハイパーテキストの形式に書き換えられ、Webブラウザに表示できるようにされる。その際に、様々なリンク情報、リンク先のHTML形式のファイルもダイナミックに生成することで付け加え、決定木の上などからオリジナルのデータ等にアクセス、参照できるようにする。これにより、Webブラウザの上のインタラクティブなインタフェースによる理解しやすいデータ解析が可能になる。そのため、表示制御部17は、第1表示制御機構、第2表示制御機構、第3表示制御機構等の表示制御機構を備える。
【0019】
第1表示制御機構は、クライアント別に、検査項目およびクラス別の異常高値または異常低値をとる項目数について、異常高値または異常低値と、それ以外の正常値域の違いを区別して表示装置18に表示させる。第2表示制御機構は、クライアント別に、健康度とそれに関係の深い検査項目および異常高値または異常低値をとる項目数を関係の深さの順に表示装置18に表示させる。第3の表示制御機構は、第1表示制御機構により制御する表示内容と、第2表示制御機構により制御する表示内容とをハイパーテキストで関係づけ、表示装置18においてリンクできるようにする。
【0020】
次に、具体例を挙げてインタラクティブインタフェース10の動作を説明する。図3は動作の概略フローチャートである。
【0021】
データ入力部(図示せず)が受け付けるデータは、外部の検査データベースから取り込んでおき、新たにデータを追加し、大量のデータベースを構築する。データは、クライアント別に、クライアントID、検査日、性別、生年月日、年齢、100項目を超える検査項目とその検査値、何回目の検査であるか、健康度、疾患、疾患可能性部位等からなるものが入力され、データベース化される。健康度、疾患、疾患可能性部位等は医者が判定した結果が入力される。これらのデータは第1の特徴量として、先ず、第1記憶装置2に記憶させる。また、制御部(図示せず)は、クライアントの検査項目の中で、特定の疾患、たとえば高脂血症や腫瘍に関する検査項目を複数のクラスに分類し、各クラスに含まれる異常高値または異常低値をとる項目数を求め、それが第2の特徴量として第2記憶装置13に記憶させる。また、健康度、疾患と疾患可能部位とそれらが記入されたカルテまたは電子カルテの画像情報とテキスト情報を第3記憶装置14に記憶させる。
【0022】
特徴抽出部15は、第1記憶装置12から決定木を作成するための特徴量を抽出する。推論装置16は、特徴抽出部15が抽出した特徴量と第3記憶装置14が記憶している健康度、疾患可能性部位の情報に対してC4.5で解析を行う。その結果はテキスト形式の決定木の形で現れるので、それをハイパーテキスト形式に書き換え、Webブラウザに表示できるようにする。ハイパーテキスト形式に書き換えた決定木の一例を図4に示す。また、Webブラウザに表示された決定木の一例を図5に示す。図からわかるように、ここでは、クライアント別に診断された健康度と関連深い検査項目と検査値、異常高値または異常低値をとる項目数が関係の深さの順に表示されている。
【0023】
ここで、様々なリンク情報、リンク先のHTML形式のファイルがダイナミックに生成できるように付け加え、決定木の上などからオリジナルのデータ等にアクセス、参照できるようにする。
【0024】
推論装置16で作成した決定木およびそれに関連するデータを表示装置18に表示させる制御は表示制御装置17が行う。
【0025】
なお、前記の図5において、決定木の葉あたりの記述は、C4.5の結果とは変更してある。つまり、
・・・総蛋白(TP)>7.1:4b(9/1)
とあれば、・・・「且つ、総蛋白(TP)>7.1ならば、健康度は4b(IVb)であると読め、(9/1)は正しく分類されたのが9個で、誤って分類されたのが1個と読める。
【0026】
そして、この葉にあるノードは上記の処理の間に様々な関係を見ることで、リンクが施されたものとなっている。
【0027】
なお、図6の例では他のクライアントへのリンクは、<1004.2006−09−19,5a>等と書かれているが、これは「クライアントID1004、検査日2006年9月19日、健康度5a(Va)」と読める。
【0028】
さらに、図6において、他のクライアントのリンクをクリックすると、そのクライアントの検査結果が図7のように表示される。
【0029】
図7では、実際には、異常高値が赤で示され、異常低値が青で示されるようになっている。これにより、どこに注目してみればいいか即座にわかる。
【0030】
以上により、インタラクティブなインタフェースが実現される。
【0031】
次に、関係行列算出部20について述べる。関係行列算出部20は、データ分類装置21、増加・減少傾向判定装置22、関係係数算出装置23および関係係数記憶装置24から構成される。
【0032】
データ分類装置21は、第1記憶装置12に記憶されている検査データと第2記憶装置13に記憶されている上記検査データに対応する基準値を読み込み、検査回数がある一定回数以上のクライアントIDを抽出し、抽出されたクライアントIDに関する検査データと、対応する基準値や検査日から、データを複数のグループに分類する。例えば、各検査項目の連続する3回の検査データの異常回数を用いて、データを異常回数0回、1回、2回、3回の4つに分類する。この操作は、各検査項目毎に行う。
【0033】
増加・減少傾向判定装置22は、データ分類装置21で得られた分類毎にまとめた、他の検査項目の平均値を計算し、異常回数の増加にともなって、平均値が増加している、もしくは、減少している、かつ、平均値の差がすべて統計的検定法で有意か否か判定し、条件を満たしている項目を抽出する。すなわち、検査項目間の関係の傾向を推定する。
【0034】
関係係数算出装置23は、増加・減少傾向判定装置22において抽出された検査項目の組について、異常回数と平均値の関係を解析関数で近似し、関係係数を求める。例えば、回帰直線で近似し、それより関係係数を求める。すなわち、グループと平均値の関係を回帰直線で当てはめ、関係係数を得る。第2記憶装置13に記憶されている基準値は、性別により異なり、また、異常状態も高値、低値の2種類あるので関係係数は4つに分けて求められる。
【0035】
関係係数記憶部24は、関係係数算出装置23で求めた関係係数を記憶する。
【0036】
次に、関係行列表示インタフェース30について述べる。関係行列表示インタフェース30は、行列表示装置31、個別関係表示装置32、マーカ近似装置33およびマーカ表示装置34から構成される。
【0037】
行列表示装置31は、オペレータ入力部11からの選択にしたがい、関係係数記憶装置24に格納されている関係係数を表示する。この表示は、検査データの各検査項目を列および行とする関係行列の表で表示する。上記のように基準値が、性別により異なり、また、異常状態も高値、低値の2種類あるので、関係行列は合計4つ表示することになる。この表示はメニューで切り替えるなどできる。
【0038】
個別関係表示装置32は、オペレータ入力部11による、行列表示装置31に表示された表中の行と列の選択についての選択にしたがい該当する検査項目間の関係を表示する。検査項目間の関係は、例えば異常回数と平均値の関係を示すグラフとして表示される。その際、関係係数記憶装置24に格納されている回帰直線の関係係数を用いて、直線を提示する。
【0039】
マーカ近似装置33は、オペレータ入力部11による複数の検査項目群の選択にしたがって、関係行列から該当の検査項目の異常回数をマーカとして近似する。
【0040】
マーカ表示装置34は、マーカ近似装置33で近似された異常回数をマーカとして表示する。
【0041】
次に、本実施形態の臨床検査データ解析表示装置、特に関係行列算出部20および関係行列表示インタフェース30の動作を説明する。図8は、関係行列算出部20の動作フロー図、図9は、関係行列表示インタフェース30の動作フロー図である。
【0042】
まず、データ分類装置21で第1記憶装置12と第2記憶装置に格納されている検査データとそれに対応する基準値を読み込む。検査データは、各検査項目の値、検査日、クライアントIDからなり、基準値は、各検査項目毎に基準とする範囲(下限、上限)からなる。そして、データ分類装置21は、ある検査回数以上の検査を受けているクライアントを抽出し、抽出されたクライアントに関する検査データと、対応する基準値や検査値から、クライアントや検査データを分類する。例えば、連続する3回の検査データに注目し、各検査項目毎に値が異常である割合で、3回の検査データを0/3、1/3、2/3、3/3の4グループに分類する。分類は、すべての検査項目(以下、項目とも称する)でそれぞれ行う。
【0043】
分類の詳細は、下記の手順によって行う。
【0044】
jクライアントのt回目のi項目の値をxj,i(t)、reference rangeを基準範囲とすると、異常範囲を越えた異常状態を表すBは、下記になる。ここで、Nは総検査項目数、Nt,jはクライアントjの総検査回数、Nは、総クライアント数である。
【0045】
【表1】

【0046】
異常回数の割合rτj,iは、下記になる。
【0047】
【数1】

【0048】
【数2】

【0049】
i項目による分類は、グループ番号をk(1≦k≦M)としてGikを生成する。
【0050】
【数3】

【0051】
基準値は、性別(男・女)によって異なる場合があり、また、上限を越えた場合(異常高値)、下限を下回った場合(異常低値)があるので、それに対応してグループを作成する。
【0052】
次に、増加・減少傾向判定装置22では、得られたグループを用いて、他の項目のグループ内の平均xi,jを、下記によって計算する。
【0053】
【数4】

【0054】
そして、下記2条件が満たされる2つの検査項目の組み合わせ{i1,i2}を抽出する
・i1項目の異常回数の割合が増えることにともなって、i2項目の平均値が増加している、もしくは、減少している。
【0055】
・i2項目の平均値の差が、各グループ間、有意水準5%で、有意な差である。
【0056】
ここで、増加・減少傾向判定装置22において上記の2つの条件に合致し、抽出された項目の組の1例を図10に示す。横軸がグループGで、縦軸が平均値である。
【0057】
統計検定方法は、分散分析と多重比較(scheffe)を用いるが、項目毎に手法を変更することも可能である。
【0058】
次に、関係係数算出装置23では、増加・減少傾向判定装置22において抽出された検査項目の組について、グループGkiと平均値xi,jの関係を解析関数(例えば回帰直線)で近似し、関係係数を求める。すなわち、上記の図10の例では、グループGと平均値xの回帰直線で当てはめる(回帰直線の係数を求める)。1つの異常項目に対して、複数の項目が、増加・減少傾向判定装置22の2つの条件に当てはまる場合は重回帰直線になり、重回帰直線の係数を求める。関係係数算出装置23で求めた関係係数は関係係数記憶装置24に格納させる。
【0059】
一方、関係行列表示インタフェース30では、以下のようにして各種表示を行う。まず、行列表示装置31は、オペレータ入力部11からの選択にしたがい、各検査項目を列および行とする表に、関係係数記憶装置24に格納されている関係係数を表示する。上記したように、関係係数は、性別によって異なり、また、異常も高値、低値の2種類ある。これらの表示は、オペレータ入力部11の入力によって、性別、異常の高低の4つの組み合わせから、切り替わる。
【0060】
また、オペレータ入力部11によって、表中の行と列を選択することで、個別表示装置32が該当する項目間の関係、例えば、異常回数と平均値の関係を示すグラフを表示する。グラフ中には、基準の範囲、平均値は分散や標準偏差などによってとり得る範囲を示し、さらに、関係係数記憶装置24に格納されている回帰直線の関係係数を用いて、直線を提示する。
【0061】
さらに、オペレータ入力部11より、臨床検査項目群Xs=X,X,・・・,Xが選ばれた場合には、マーカ近似装置33において、関係行列からq個の検査項目の異常回数G1,G2,・・・,Gqを近似する、G=Ais・Xsなる重回帰直線(Aisは行ベクトル、Xsは列ベクトル)を求め、近似された異常回数をマーカとして、マーカ表示装置34において表示する。
【0062】
なお、関係行列算出部20および関係行列表示インタフェース30における各構成装置における動作は、図示しない制御部により制御される。
【符号の説明】
【0063】
10 医療診断支援のためのインタラクティブインタフェース
11 オペレータ入力部
12 第1記憶装置
13 第2記憶装置
14 第3記憶装置
15 特徴抽出部
16 推論装置
17 表示制御装置
18 表示制御装置
19 表示装置
20 関係行列算出部
21 データ分類装置
22 増加・減少傾向判定装置
23 関係係数算出装置
24 関係係数記憶装置
30 関係行列インタフェース
31 行列表示装置
32 個別関係表示装置
33 マーカ近似装置
34 マーカ表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、クライアントのID、各検査項目とその検査値、検査日、検査回数を含む検査データを格納する第1記憶装置と、各検査項目毎に正常と判断される範囲の下限および上限よりなる基準値を格納する第2記憶装置と、第1記憶装置に格納された検査データと第2記憶装置に格納した基準値に基づいてクライアントの健康度を判断する判断装置と、各種画面の表示を行う表示装置と、クライアントの検査データの解析結果と健康度の関係を表示装置に表示させる機能を有する表示制御装置と、オペレータの入力を受け付け、表示制御装置を介して表示部の画面表示の切り替えを含む制御を行うオペレータ入力部とを備えたインタラクティブインタフェースを用いて臨床検査データ解析および表示を行うための装置であって、
特徴抽出部に関係行列算出部を付加するとともに、表示制御装置と表示装置の間の表示インタフェースに関係行列表示インタフェースを追加し、
関係行列算出部が、
第1記憶装置に格納されている検査データを読み込むとともに、第2記憶装置に格納されている基準値を読み込み、一定回数以上の検査を受けているクライアントを抽出し、抽出されたクライアントの検査データと、検査値とそれに対応する基準値に基づいて、各検査項目について異常状態とその異常回数に調べ、クライアントと検査データを複数のグループに分類するデータ分類装置と、
データ分類装置で得られたグループを用いて、他の検査項目のグループ内の平均値を計算し、異常回数の増加にともなって、平均値が増加している、もしくは、減少している、かつ、平均値の差がすべて統計的検定法で有意か判定し、条件を満たしている検査項目を抽出する増加・減少傾向判定装置と、
増加・減少傾向判定装置により抽出された検査項目の組について、グループと平均値毎の関係を解析関数で近似し、関係係数を求める関係係数算出装置と、
関係係数算出装置で求めた関係係数を格納する関係係数記憶装置を備え、
関係行列表示インタフェースが、
オペレータ入力部による選択にしたがい、関係係数記憶装置に格納されている関係係数を読み込み、各検査項目を列および行とする表に行列形式で表示する行列表示装置と、
行列表示装置に表示された表中の行と列についてのオペレータ入力部による選択にしたがって、該当する検査項目間の関係を示すグラフを表示する個別関係表示装置と、
オペレータ入力部による複数の検査項目群の選択にしたがって、関係行列から検査項目の異常回数をマーカとして近似するマーカ近似装置と、
マーカ近似装置で近似された異常回数を表示するマーカ表示装置を備えることを特徴とする臨床検査データ解析表示装置。
【請求項2】
個別関係表示装置が表示する検査項目間の関係が、異常回数と平均値の関係であることを特徴とする請求項1に記載の臨床検査データ解析装置。
【請求項3】
マーカ近似装置が、関係係数記憶装置に格納されている関係係数から重回帰線を求め、異常回数を近似することを特徴とする請求項1又は2に記載の臨床検査データ解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−22857(P2011−22857A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168063(P2009−168063)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(591173198)学校法人東京女子医科大学 (48)
【Fターム(参考)】