説明

自励発振駆動機構、センサおよびプローブ顕微鏡

【課題】櫛歯電極を備えた自励発振駆動機構の提供。
【解決手段】自励発振駆動機構は、直流電圧が印加された静止櫛歯電極部11aおよび可動櫛歯電極部12aを有し、可動櫛歯電極部12aの変位に応じて静電容量が変化する静電アクチュエータ1と、静電アクチュエータ1を発振子として有する共振回路部20と、共振回路部20の共振出力を帰還増幅させて自励発振させる増幅器2とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、櫛歯電極部を有する静電アクチュエータを備えた自励発振駆動機構と、その自励発振駆動機構を備えたセンサおよびプローブ顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
カンチレバーに設けられた探針と試料との微視的距離を測定する方法として、カンチレバー表面に圧電体層と電極膜との多層構造をもつ駆動機構を形成し、その駆動機構でカンチレバーをその固有振動数で屈曲振動させ、圧電体素子のアドミッタンス変化を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−194157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した駆動機構の場合には、振動を維持するために外部から交流電圧を加える必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による自励発振駆動機構は、直流電圧が印加される静止櫛歯電極部および可動櫛歯電極部を有し、可動櫛歯電極部の変位に応じて静電容量が変化する静電アクチュエータと、静電アクチュエータを発振子として有する共振回路と、共振回路の共振出力を帰還増幅させて自励発振させる増幅器とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の自励発振駆動機構において、静止櫛歯電極部および可動櫛歯電極部を有する静電アクチュエータは、フォトリソグラフィー法によりSOI基板から一体で形成したものである。
請求項3の発明によるセンサは、請求項1または2に記載の自励発振駆動機構と、自励発振駆動機構の発振周波数に基づいて、静電アクチュエータに作用する物理量を検出する検出部とを備えたことを特徴とする。
請求項4の発明によるプローブ顕微鏡は、請求項1または2に記載の自励発振駆動機構と、可動櫛歯電極部に設けられた探針と、自励発振駆動機構の発振周波数に基づいて探針を被検体に対して走査する走査手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、静止櫛歯電極部および可動櫛歯電極部を有する静電アクチュエータを発振子に用いて自励発振させるようにしたので、従来のような振動維持のための交流電圧の印加を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は本発明による第1の実施の形態を説明する図であり、自励発振駆動機構の概略構成を示すブロック図である。図1に示す自励発振駆動機構は、櫛歯ドライブ1を発振子として有する共振回路部20と、共振回路部20の共振出力を帰還増幅させて自励発振させる増幅器2と、櫛歯ドライブ1にバイアス電圧を印加する直流電源3とを備えている。共振回路部20には、後述するように負荷容量等が含まれる。
【0008】
図2は、櫛歯ドライブ1を詳細に示す斜視図である。櫛歯ドライブ1は、絶縁層を挟んだ上下2つのシリコン層からなる3層構造の基板、例えばSOI(Silicon on Insulator)ウエハを用いて、半導体微細加工技術により一体で製作される。SOIウエハは上部Si層51、SiO層52および下部Si層53で構成され、2枚のSi単結晶板の一方にSiO層52を形成し、そのSiO層52を挟むように貼り合わせたものである。
【0009】
櫛歯ドライブ1に設けられた固定部11および可動部12は上部Si層51により形成されており、これらはSOIウエハのSiO層52および下部Si層53で構成される基部13上に配置されている。上部Si層51は一部が基部13に対して庇状に加工され、可動部12はその庇状部分に形成されている。基部13上に設けられた上部Si層51は、幅の狭い弾性支持部12bにより可動部12に連結されている。すなわち、可動部12は、弾性支持部12bのみにより支持されている。
【0010】
固定部11および可動部12の各対向部には、櫛歯状凹凸部11a,12aが形成されている。固定部11側に形成された櫛歯状凹凸部11aと可動部12側に形成された櫛歯状凹凸部12aとは、隙間を介して噛合している。固定部11および可動部12の表面には、電極膜が形成されている。固定部11と可動部12との間には、直流電源3によりバイアス電圧が印加され、櫛歯状凹凸部11a,12a間には静電力が発生する。初期位置状態における櫛歯状凹凸部11a,12a間の静電容量をCとする。
【0011】
図3は、櫛歯ドライブ1における電気・機械結合系の等価回路を示す図である。先ず、バイアス電圧により電気系と機械系とが結合された櫛歯ドライブ1が、交流電圧を印加することにより所定の振動数で発振すること、すなわち、振動子として機能することを説明する。一般に、電気・機械結合系においては、電気的エネルギーおよび機械的エネルギーの保存則が成立し、ここでは、バイアス電圧が小さく、可動部12の変位量や電荷量の変動は小さいとしてモデル化して考える。
【0012】
上述したように、櫛歯状凹凸部11a,12a間には静電容量Cが生じる。この静電容量Cは、凹凸が多数形成された櫛歯状凹凸部11a,12a間におけるトータルの静電容量を表している。また、mは可動部12の質量、kはバネ定数、rは機械抵抗、vは可動部12の振動速度を表している。Mは、バイアス電圧を印加することによる機械系と電気系との間の結合係数である。例えば、櫛歯部分を平行平板電極として近似した場合には、結合係数MはM=E/εSのように表すことができる。なお、Eはバイアス電圧、εは真空の誘電率、Sは電極面積である。
【0013】
振動を励起するための交流電圧を印加すると、電気系に電流iが流れて櫛歯ドライブ1が駆動される。図3は櫛歯ドライブ1の等価回路を示したものであるが、この櫛歯ドライブ1に関して、線形近似基本方程式は式(1),(2)のように表される。なお、Cは浮遊容量であり、図3の等価回路のCをC+Cと置き換えて式を立てた。
=jω(C+C)e+(E/X)ν (1)
=jωmν+rν+kν/jω+E/X (2)
但し、iは交流電流値、eは入力交流電圧の振幅、νは可動部12の振動速度であり、fは可動部12に作用する外力を表している。また、Xは初期状態の櫛歯間距離である。
【0014】
式(1),(2)より、外力が零の場合、櫛歯ドライブ1のアドミッタンスの絶対値|Y|と角周波数ωとの関係は式(3)のように表すことができる。ここで、A=E/Xである。
【数1】

【0015】
図4は、アドミッタンス値|Y|の角周波数依存性を表すアドミッタンス曲線を示したものである。このアドミッタンス曲線は、電気・機械結合系の特性曲線になっている。一方、|Y|=ω(C+C)で表される直線(破線)は、機械系がない電気系のみの場合の特性曲線であり、式(3)において次式(4)が成り立つ場合の特性曲線を表している。
−2ω(C+C)(ωm−k/ω)=0 (4)
【0016】
式(4)を満たす角周波数ωを発振角周波数ωと呼ぶと、発振角周波数ωは、アドミッタンス曲線と|Y|=ω(C+C)で表される直線との交点における角周波数である。発振角周波数ωは共振角周波数ωに近い値であり、発振角周波数ωで櫛歯ドライブ1を駆動すると、上述したように機械系の特性がキャンセルされ、電気系のみのアドミッタンス計測が可能となる。
【0017】
なお、共振角周波数ωは、アドミッタンス曲線のピーク角周波数をωより僅かに高いところに位置しており、アドミッタンス曲線のピーク角周波数をω、凹カーブを示す部分のボトムの角周波数をωとすれば、共振角周波数ωと発振角周波数ωとの関係は、式(5)で表すことができる。
【数2】

【0018】
このように、櫛歯ドライブ1は振動子として機能することが解った。そこで、本実施の形態では、従来の水晶振動子を用いた発振回路の水晶振動子を櫛歯ドライブ1で置き換え、自励発振駆動機構を構成した。図5は水晶振動子100を2端子接続した場合の低周波水晶発振回路を示す図であり、図6は実際の回路の一例を示したものである。図6の破線で囲まれた水晶振動子100が含まれる部分を、図3のような等価回路で表される櫛歯ドライブ1で置き換える。なお、ここでは2端子接続の場合を例に説明するが、2端子接続に限らず、3端子接続の発振回路にも同様に適用することができる。
【0019】
図7は本実施の形態における自励発振駆動機構の等価回路を示したものであり、図5および6に示す回路の水晶振動子100を櫛歯ドライブ1で置き換えた場合の、発振回路全体の等価回路である。増幅器2は2段構成となっており、1段目の増幅器は入力電圧(ベース・エミッタ間電圧)Eに対して電流値(hfe/hie)Eを与える等価電流源として機能する。ここで、hieはトランジスタの入力インピーダンスであり、hfeは電流増幅率である。
【0020】
1段目の後段に配された2段目の増幅器においては、入力電圧(ベース・エミッタ間電圧)Eは次式(6)のように表される。また、2段目の増幅器の出力電流Iは、次式(7)のように表される。
=−R(hfe/hie)E …(6)
=−(hfe/hie)E=(hfe/hie …(7)
【0021】
ここで、櫛歯ドライブ1や負荷容量C1,C2を含む共振回路部20の入力と出力との関係を、2端子対回路のFマトリクスを用いて表すと、次式(8)のようになる。
【数3】

【0022】
式(8)のFマトリクスは共振回路部20の回路構成(櫛歯ドライブ1の構成)に依存して決まるものであり、Fパラメータ(A〜D)には、図3に示した等価回路の各パラメータ(C,r,m,1/k,M)が含まれている。なお、FパラメータA〜Dの物理的意味は次式(9)〜(12)に示す通りであり、Aは出力端開放時の電圧帰還率(電圧増幅率の逆)、Bは出力端短絡時の伝達インピーダンス、Cは出力端開放時の伝達アドミタンス、Dは出力端短絡時の電流帰還率(電流増幅率の逆)である。
【数4】

【0023】
また、Fマトリクスを具体的に計算することで、電流Iは次式(13)のように表される。なお、式(13)では、E=Rを用いて変形した。式(13)と式(7)とを用いると、式(14)に示すようなEとEとの関係が得られる。
【数5】

【0024】
図7に示す発振回路は、図8に示すように位相条件(Im=0)からリアクタンスがゼロとなり、かつ、振幅条件が1(Re=1)を満たす周波数で発振する。なお、(C+D/R)は図7の破線で囲まれた共振回路部20の複素インピーダンスである。図8(a)はIm部の周波数依存性の計算値を示したものであり、図8(b)はRe部の周波数依存性の計算値を示したものである。図8(a),(b)は共振周波数(共振角周波数ωに相当)を14.34kHとした場合を示したものであり、概略計算から発振は約14.51kH付近で起こることがわかる。
【0025】
《製造工程の説明》
次に、櫛歯ドライブ1の製造工程について説明する。図9の(a1)および(b1)は第1工程を示す図であり、(a1)は平面図、(b1)はI−I断面図である。第1工程では、SOIウエハの上部Si層51の表面を熱酸化法により酸化し、表面保護用の酸化膜56を形成する。なお、上部Si層51の表面を単結晶Siの主面(001)とし、図示上下方向を<010>とする。
【0026】
図9の(a2)および(b2)は第2工程を示す図であり、(a2)は平面図、(b2)はII−II断面図である。第2工程では、マスクを用いたフォトリソグラフィーにより、図9(a2)に示すようなパターン形状のレジスト層57を形成する。
【0027】
図9の(a3)および(b3)は第3工程を示す図であり、(a3)は平面図、(b3)はII−II断面図である。第3工程では、レジスト層57をマスクとして酸化膜56を部分的に除去する。さらに、パターニングされた酸化膜56をマスクの代用としてICP−RIE(inductively coupled plasma - reactive ion etching)により上部Si層51を厚さ方向にエッチングする。ICP−RIEによるエッチング作用は、SiO層52で停止するので、櫛歯状凹凸部の厚さを均一かつ高精度に形成することができる。エッチングされた部分には、SiO層52の表面が露出する。
【0028】
図9の(a4)および(b4)は第4工程を示す図であり、(a4)は平面図、(b4)はII−II断面図である。第4工程では、残存するレジスト層57を除去した後に、上部Si層51が露出している側壁に表面保護のための酸化膜58を熱酸化法で形成する。その後、可動部12が中空に支持されるような構造とするために、破線D1よりも上側の部分の下部Si層53を裏面側からICP−RIEによりエッチングした後に、その部分のSiO層52を緩衝フッ化水素溶液を用いて除去する。その結果、図2に示すような櫛歯ドライブ1が形成される。
【0029】
上述したように、櫛歯ドライブ1を静電力で振動させることにより、水晶のような圧電材料の特性を機械構造で実現することができた。また、本実施の形態の自励発振駆動機構の場合には交流電圧を印加する必要がなく、直流電圧のみで水晶振動子と同様の特性が得られる。
【0030】
従来、リソグラフィーにより水晶振動子を形成する場合には、ウェットエッチング等により水晶振動子の形状を加工制御して周波数を調整する。しかし、ウェットエッチングで加工する場合、エッチング液の濃度変動やエッチング設定時間の誤差等のために、振動部の厚さを精度良く制御するのが難しかった。そのため、周波数のバラツキが大きく、製造歩留まりが低下するという問題があった。
【0031】
一方、本実施の形態の櫛歯ドライブ1の場合には、SOI基板を半導体微細加工技術で一体に形成するため、従来の水晶振動子に比べて、加工精度が高く、特性の揃った高精度の振動子を安価に得ることができる。また、音叉型水晶振動子の場合には、音叉の間隔が100〜200μm程度であって容量変化がほとんどない。一方、櫛歯ドライバ1の場合には、水晶振動子と同程度の大きさのものであれば、5〜10μmの間隔で対向する櫛歯が数百本形成でき、容量変化が比較的大きいので浮遊容量の影響を小さく抑えることができる。
【0032】
−第2の実施の形態−
第2の実施の形態では、上述した櫛歯ドライブ1を圧力センサに応用した場合について説明する。図3に示した等価回路には機械抵抗rが含まれているが、機械抵抗rには振動している可動部12の周囲にある流体(例えば、大気中での振動であれば空気)の抵抗が含まれている。特に、櫛歯状凹凸部11a,12aにおける流体抵抗が顕著に現れる。そして、流体の圧力が変化すると機械抵抗rも変化し、発振角周波数ωが変化する。この変化を検出することで、櫛歯ドライブ1の周囲雰囲気の圧力を計測することが可能となる。
【0033】
図10は、実測により得られた圧力と周波数との関係を示す図である。例えば、図1の出力信号を受信する圧力計測部を設け、その圧力計測部に、図10に示すような相関をテーブルとして記憶する記憶部を設ける。圧力計測部では、櫛歯ドライブ1から取り込んだ周波数信号と相関テーブルとに基づいて圧力を算出する。また、圧力と周波数との相関は計測する気体の種類(粘性)によって異なる場合があるので、気体毎のテーブルを記憶しておき、計測する気体に合わせてテーブルを切り替えるようにすれば、種々の気体の圧力を計測することができる。
【0034】
このように、櫛歯ドライブ1を圧力センサとして用いることにより、小型で高精度な圧力センサを提供することができる。特に、櫛歯状凹凸部11a,12aの対を多数形成することで、水晶振動子を用いた圧力計に比べ検出感度を容易に向上させることができる。
【0035】
−第3の実施の形態−
図11は第3の実施の形態を示す図であり、第1の実施の形態で説明した櫛歯ドライブ1をプローブ顕微鏡のプローブ振動手段として用いた場合の概略構成を示すブロック図である。なお、共振回路部20の図示は省略した。また、図12は櫛歯ドライブ1の詳細を示す斜視図である。ここでは、プローブ顕微鏡の一種である原子間力顕微鏡装置(以下、AFM装置と呼ぶ)を例に説明する。
【0036】
AFM装置は、櫛歯ドライブ1と、櫛歯ドライブ1をZ方向に駆動するピエゾアクチュエータ5と、載置された試料SをXYZ方向に移動するステージ6とを備えている。図12に示すように、櫛歯ドライブ1の可動部12はAFM観察用プローブを構成しており、可動部12の先端には探針7が形成されている。櫛歯ドライブ1は、支持部4を介してピエゾアクチュエータ5に固定され、ピエゾアクチュエータ5は不図示のフレームに固設されている。
【0037】
櫛歯ドライブ1には、第1の実施の形態と同様に増幅器2および直流電源3が接続されている。AFM装置の制御演算部8には、ステージ6を駆動するステージ駆動部9と、測定結果の表示等に用いられるディスプレイ10とが接続されている。第1の実施の形態で述べたように櫛歯ドライブ1および増幅器2は発振回路を構成しており、発振回路から出力された周波数信号をに基づいて、ピエゾアクチュエータ5およびステージ駆動部12を制御し、試料Sの表面を探針7で走査する。ディスプレイ10には、計測結果が表示される。
【0038】
上記のように構成されたAFM装置では、探針7が設けられた可動部12を振動させながら探針7を試料Sにナノメーターオーダーで近接させ、探針7と試料Sとの間に働く原子間力を検出する、タッピングモードが採用されている。この原子間力は、探針7と試料Sとの距離に依存する物理量であり、原子間力の変化は上述した自励発振駆動機構の発振角周波数ωの変化として検出される。そのため、制御演算部8は、発振角周波数ωが一定となるようにピエゾアクチュエータ5をZ方向に駆動しながら、試料Sに対して探針7をX−Y方向に相対的に二次元走査させる。そして、その制御情報に基づいて試料S表面の凹凸形状を演算し、その演算結果をディスプレイ10に表示する。
【0039】
従来は、上述した特開平6−194157号公報に記載されているように、圧電アクチュエータからなるカンチレバーに交流電圧を印加して屈曲振動させ、走査時のアドミッタンス変化を検出するような構成であったため、カンチレバーを屈曲振動させるための交流電源が必要であった。しかしながら、櫛歯ドライブ1を発振子として用いる本実施の形態の場合には、櫛歯ドライブ1が自励発振で振動するので、従来のような交流電源を必要としないという利点を有する。
【0040】
なお、上述した第2の実施の形態では、本発明の自励発振駆動機構を圧力センサに応用した場合について説明したが、櫛歯ドライブ1への作用として加速度やコリオリ力などが加わった場合でも発振周波数が変化するので、これらの物理量を検出するセンサにも本発明を適用することができる。さらには、櫛歯ドライブ1に作用する力の変化を周波数変化として捉えるので、流量計や湿度計などにも応用できる。
【0041】
上述した実施の形態では、SOI基板を用いて櫛歯ドライブ1を形成したが、素材としてはSOI基板に限らない。また、製造方法に関しても上述した半導体加工技術に限らない。さらに、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0042】
以上説明した実施の形態と特許請求の範囲の要素との対応において、可動部12は可動櫛歯電極部を、固定部11は静止櫛歯電極部を、櫛歯ドライブ1は静電アクチュエータを、ピエゾアクチュエータ5,ステージ6,制御演算部8およびステージ駆動部9は走査手段をそれぞれ構成する。なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による第1の実施の形態を説明する図であり、自励発振駆動機構の概略構成を示すブロック図である。
【図2】櫛歯ドライブ1を詳細に示す斜視図である。
【図3】櫛歯ドライブ1の等価回路を示す図である。
【図4】アドミッタンス曲線を示す図である。
【図5】水晶振動子100を2端子接続した場合の低周波水晶発振回路を示す図である。
【図6】低周波水晶発振回路の具体例を示す図である。
【図7】自励発振駆動機構の等価回路を示す図である。
【図8】(a)はIm部の周波数依存性の計算値を示す図で、(b)はRe部の周波数依存性の計算値を示す図である。
【図9】櫛歯ドライブ1の製造工程を説明する図であり、(a1),(b1)は第1の工程を、(a2),(b2)は第2の工程を、(a3),(b3)は第3の工程を、(a4),(b4)は第4の工程をそれぞれ示す。
【図10】圧力と周波数との関係を示す図である。
【図11】プローブ顕微鏡の概略構成を示すブロック図である。
【図12】第3の実施の形態の櫛歯ドライブ1の斜視図を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1:櫛歯ドライブ、2:増幅器、3:直流電源、5:ピエゾアクチュエータ、6:ステージ、7:探針、8:制御演算部、9:ステージ駆動部、11:固定部、12:可動部、11a,12a:櫛歯状凹凸部、20:共振回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が印加される静止櫛歯電極部および可動櫛歯電極部を有し、前記可動櫛歯電極部の変位に応じて静電容量が変化する静電アクチュエータと、
前記静電アクチュエータを発振子として有する共振回路と、
前記共振回路の共振出力を帰還増幅させて自励発振させる増幅器とを備えたことを特徴とする自励発振駆動機構。
【請求項2】
請求項1に記載の自励発振駆動機構において、
前記静止櫛歯電極部および可動櫛歯電極部を有する静電アクチュエータは、フォトリソグラフィー法によりSOI基板から一体で形成されることを特徴とする自励発振駆動機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自励発振駆動機構と、
前記自励発振駆動機構の発振周波数に基づいて、前記静電アクチュエータに作用する物理量を検出する検出部とを備えたことを特徴とするセンサ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の自励発振駆動機構と、
前記可動櫛歯電極部に設けられた探針と、
前記自励発振駆動機構の発振周波数に基づいて前記探針を被検体に対して走査する走査手段とを備えたことを特徴とするプローブ顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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