説明

自動プログラミング装置及びその動作プログラム

【課題】 従来のものより少ない情報量で多様な加工領域形状を定義することができる自動プログラミング装置を提供すること。
【解決手段】 データを取り込む入力装置111と、データを記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶された底面形状の輪郭を構成する一連の稜線の稜線データ、及びこの稜線に関連した側面形状を特定する稜線の属性データにより、底面形状を定義する底面形状定義処理部131と、底面形状の稜線データ及び属性データとから特定される面を側面形状として生成する側面形状生成処理部132と、底面形状定義処理部131により定義された底面形状、及び側面形状生成処理部により生成された側面形状に基づいて加工領域形状を生成して記憶装置に記憶する加工領域形状生成処理部134と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、NC工作機械の動作を制御するNC自動プログラムを効率的に生成するための自動プログラミング装置及びその動作プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のようなNC工作機械用の自動プログラミング装置では、従来、加工領域を定義する際に、以下のような方法を採用していた。すなわち、加工領域を定義する際に輪郭形状を用い、同一寸法の丸み付け円弧または面取り形状を挿入する際には、所定範囲内のコーナの1つ1つを指定していた。そして、このようにしてコーナを指定した後も、寸法を入力する設問文に対して同じ数値を1つ1つ入力しなければならず、コーナ部形状の挿入操作に多大の時間を要するという問題があった。
【0003】
この問題を解決する方法としては、輪郭形状を特定するためのパートプログラムを予め作成しておき、そのパートプログラムから得られる形状を画面に表示し、タブレット装置を用いて、画面上でコーナ指定したい所定範囲内の形状を複数ピックし、さらに丸み付けの寸法とコーナの角度範囲を一括して入力するという方法が従来提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、この方法においても問題を有しており、その問題は、加工領域を輪郭形状のみで定義しているため、加工領域形状としてはその輪郭形状を指定経路に沿って押出した、指定経路に垂直な断面が同一形状であり、また上面と下面が同一形状であるような押出し形状しか定義できないことである。
【0005】
さらに特許文献1に開示の方法については、事前に所望の輪郭形状を特定するための形状を定義し、そのパートプログラムを作成したうえで改めて所望の輪郭形状を定義しなければならない、といった問題や、コーナ部形状の挿入操作にはタブレット装置が必要である、といった問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−59803号公報(図3〜図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の自動プログラミング装置における加工領域定義方法では、加工領域を輪郭形状のみで定義しているため、加工領域形状としてはその輪郭形状を指定経路に沿って押出した、指定経路に垂直な断面が同一形状であるような押出し形状しか定義できないという問題点があった。
【0008】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、操作者の手間を軽減し、従来のものより少ない情報量で多様な加工領域形状を定義することができる自動プログラミング装置及びその動作プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動プログラミング装置は、データを取り込む入力装置と、データを記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶された底面形状の輪郭を構成する一連の稜線の稜線データ、及び稜線に関連した側面形状を特定する稜線の属性データにより、底面形状を定義する底面形状定義処理部、底面形状の稜線データ及び属性データとから特定される面を側面形状として生成する側面形状生成処理部、及び底面形状定義処理部により定義された底面形状、及び側面形状生成処理部により生成された側面形状に基づいて加工領域形状を生成して記憶装置に記憶する加工領域形状生成処理部を含む加工領域定義部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の自動プログラミング装置によれば、底面形状だけでなく側面形状の形状幾何データを定義できることから、従来の加工領域形状として生成される押出し形状のように指定経路に垂直な断面が同じとなるような形状以外の形状も定義でき、所望の加工に適した多様な形状を加工領域形状として定義できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明にかかる自動プログラミング装置の装置構成をデータ処理の流れに沿って示すブロック図である。
【図2】図2は、一例として示す製品形状の斜視図である。
【図3−1】図3−1は、図2の加工除去領域の底面形状を定義する稜線定義表を示す図である。
【図3−2】図3−2は、図3−1の稜線定義表に定義された底面形状の詳細を示す図である。
【図4】図4は、稜線定義表で定義された側面形状を説明するための図である。
【図5】図5は、稜線定義表で定義される加工領域形状を説明するための図である。
【図6−1】図6−1は、側面形状に関する属性データが装置により自動的に設定される様子を示す図のうち、所定の稜線に対して次の稜線が接線連続である一例を示す図である。
【図6−2】図6−2は、同じく、所定の稜線に対して次の稜線が接線連続である他の例を示す図である。
【図6−3】図6−3は、所定の稜線とこれに隣接する次の稜線の稜線定義表を示す図である。
【図6−4】図6−4は、同一Rチェックボタンの正面図である。
【図7−1】図7−1は、側面形状に関する属性データを設定する様子を示す図のうち、隣接する稜線間のコーナ部を滑らかにするために形状修正を行う様子を説明するための図である。
【図7−2】図7−2は、図7−1に示す稜線の稜線定義表を示す図である。
【図7−3】図7−3は、形状判定ボタンの正面図である。
【図8】図8は、不正形状を説明するための縦断面図である。
【図9−1】図9−1は、図8に示す不正形状の稜線定義表である。
【図9−2】図9−2は、表示装置の画面にアラーム表示する様子を示す図である。
【図10−1】図10−1は、実施の形態2の製品形状及び加工領域形状を示す斜視図である。
【図10−2】図10−2は、図10−1の加工領域形状を含む部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる自動プログラミング装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる自動プログラミング装置の装置構成をデータ処理の流れに沿って示すブロック図である。図中矢印はデータの流れを示す。図1において、自動プログラミング装置101は、入力装置111、対話式操作処理部121、加工領域定義部130、及びNCプログラム生成部140から構成されている。さらに加工領域定義部130は、底面形状定義処理部131、側面形状生成処理部132、上面形状生成処理部133、及び加工領域形状生成処理部134から構成されている。また、NCプログラム生成部140は、加工工程分割処理部141、加工ユニット定義処理部142、及びNCプログラム生成処理部143から構成されている。
【0014】
自動プログラミング装置101は、入力装置111及び表示装置112に加えて、図1には示さないが、演算装置(CPU)や記憶装置といったハードウェアを備えている。そして、上記各処理部は、実際には所定のプログラムが記憶装置に記憶された状態で装置に搭載されている。つまり、各処理部の動作は、演算装置によって動作する所定のプログラム動作と考えてよい。
【0015】
自動プログラミング装置101は、入力装置111から、製品形状、素材形状や材質、工具データ、加工条件データ、加工領域を定義するための底面形状データなどNCプログラム生成に関するデータを取り込み、必要に応じて記憶装置にこれらデータを記憶させながら、対話式操作処理部121において、操作者との対話方式による編集を行って、これらの取り込んだ各種データを用いて素材から製品を機械加工するためのNCプログラムを生成する。
【0016】
なお、図1の自動プログラミング装置101により生成されたNCプログラムは、NCプログラム解析処理部151により解析され、NC装置を動作させるNC指令としてNC装置102に渡され、NC指令に基づいた処理が実行される。
【0017】
このように本実施の形態の自動プログラミング装置101においては、入力装置111から取り込まれた各種データを基に、対話式操作処理部121により対話形式でデータを編集・生成し、加工領域形状の底面形状データのように加工領域に関するデータは加工領域定義部130に、一方、工具データ、加工条件データなどのようにNCプログラム生成に関するデータはNCプログラム生成部140に渡される。
【0018】
そして、加工領域定義部130では、対話式操作処理部121より渡された加工領域に関するデータから、素材から製品を得るために素材から除去される領域である加工除去領域を含む、加工の対象となる加工領域を定義する。
【0019】
〈底面形状定義処理部〉
底面形状定義処理部131では、対話式操作処理部121から渡された、底面形状の輪郭を構成する一連の稜線データである以下のデータにより、まず、底面形状の基準となる輪郭形状を生成する。すなわち、
・底面形状を構成する稜線の種類(直線、円弧、など)、
・稜線の領域範囲(直線の場合は始点と終点の座標値、円弧の場合は始点と終点と中心点の座標値と半径値、など)、
・生成される側面形状と上面形状のチェックのための製品形状、
・各々の稜線に関連した形状変形のためのデータ(隣接する稜線のコーナ部を滑らかに繋げたい場合に挿入する丸み形状データ)、
・側面形状を特定するためのデータ(面の種類、傾き、など)、
・上面形状を特定するためのデータ(面の種類、底面形状との距離、など)、
が設定された稜線の属性データ、
により、底面形状の基準となる輪郭形状を生成する。
【0020】
底面形状の稜線データの設定においては、ある稜線を設定するときに既に設定された稜線のうちで隣接する稜線(第1の稜線と第2の稜線)がある場合に、これら第1の稜線と第2の稜線が接線連続であるか否かを判断し、接線連続であれば、ある稜線の属性データには隣接稜線の側面形状に関する属性データと同じ内容が自動的に設定され、さらに、2つの稜線を滑らかに繋げるためにコーナ部を形状変形するための丸み形状のデータが設定できないようにする。これにより、所望の加工領域形状に適した側面形状を容易に生成できる。
【0021】
〈対話式操作処理部及び同一属性データの設定〉
底面形状のコーナ部の形状変形を全てのコーナ部に同じように適用したい場合には、対話式操作処理部121からの操作により、同一コーナ設定を例えばボタンにより選択すれば、底面形状を構成する全てのコーナ部に関連する稜線の属性データに反映される。また、側面形状の傾斜を全て同じにしたい場合には、同様にして対話式操作処理部121から同一傾き設定を選択すれば、底面形状を構成する稜線の属性データに反映される。これにより、所望の加工領域形状に適した側面形状をさらに容易に生成できる。
【0022】
〈表示装置及びアラームメッセージ〉
なお、これらのデータから特定される側面形状や上面形状が、以下に説明するような不正形状である場合には、表示処理部135により表示装置112に不正形状である旨のアラームメッセージや不正形状を回避するための適切な値が提示される。そのため、操作者は提示された内容に基づいて、入力を取りやめたり、適切な情報を入力し直したりすることができる。このデータ入力操作は、対話式操作処理部121を介して適切な情報となるまで反復可能とされている。
【0023】
〈不正形状〉
不正形状とは、生成される加工領域形状が幾何学的に矛盾していたり製品形状領域と干渉したりするなど実際に加工する加工形状として正しくないときのことを言い、例えば、側面形状の場合にあっては、側面形状に関する属性データとして、設定された面の種類や傾きにより生成されうる側面形状が、製品形状領域の内部と干渉するかどうかを判断する。そして、もし干渉する場合は実際に加工した際、削りすぎとなってしまう。このように形状が、加工形状として正しくないとき、不正形状と判断する。
【0024】
〈側面形状生成処理部〉
側面形状生成処理部132は、関連する底面形状の稜線データとその属性データから側面形状を生成する。具体的には、稜線を含み、かつ、属性データに設定されている面の種類であり、傾斜角度が設定されている場合には、底面形状の法線ベクトルを基準にして傾斜角度だけ傾いた面を生成し、側面形状とする。さらに、関連する稜線データの属性に丸み形状データが設定されている場合には、隣接する稜線に関連する隣接側面との境界部分に円錐形状を挿入する。
【0025】
〈上面形状生成処理部〉
上面形状生成処理部133においても、関連する底面形状の稜線データとその属性データから上面形状を生成する。上面形状の生成においては、底面形状の稜線から構成される輪郭形状を含む面を基準として、設定されている種類の面であり、加工領域側(底面の法線ベクトルの正の向き)に、設定された位置に面を生成し、上面形状とする。
【0026】
〈加工領域形状生成処理部〉
加工領域形状生成処理部134においては、底面形状定義処理部131、側面形状生成処理部132、上面形状生成処理部133から得られた、底面形状、側面形状、上面形状データにより、加工領域形状を生成する。なお、本実施の形態において、上面形状生成処理部133は省略することができる。上面形状生成処理部133が省略された場合、加工領域形状生成処理部134は、上面形状データを得ることができない。このようなとき、加工領域形状生成処理部134は、上面形状生成処理部133に替わって、底面形状の稜線から構成される輪郭形状を含む面を基準として、加工領域側に、設定された距離だけ離れた面を生成し、上面形状とする。
【0027】
上記のように、上記各処理部は、具体的には演算装置(CPU)によって動作する所定のプログラム動作により実現される。そして、特に加工領域定義部130を構成する、底面形状定義処理部131、側面形状生成処理部132、上面形状生成処理部133、及び加工領域形状生成処理部134は、プログラミング言語にて記載されたプログラムであり、これらプログラムは、自動プログラミング装置101を動作させるためのプログラムを構成している。
【0028】
〈NCプログラム生成部〉
一方、NCプログラム生成部140では、対話式操作処理部121より渡されたNCプログラム生成に関するデータと加工領域定義部130で定義された加工領域からNCプログラムを生成する。
【0029】
〈加工工程分割処理部〉
加工工程分割処理部141は、例えば、工作機械がメイン主軸とサブ主軸を有する場合に、メイン主軸で行う第1工程およびサブ主軸で行う第2工程のように主軸ごとに加工工程を分割し、メイン主軸のみを有する場合には、メイン主軸が把持する素材の箇所により工程を分割する。
【0030】
〈加工ユニット定義処理部〉
加工ユニット定義処理部142は、加工工程分割処理部141で定義された各加工工程に対して、加工モードと呼ばれる旋削加工、点加工、面加工、面取り加工などで構成される加工作業を連続的な加工が行われる加工単位(以下、加工ユニットという)に定義する。
【0031】
〈NCプログラム生成処理部〉
NCプログラム生成処理部143においては、加工ユニット定義処理部142で定義された各加工ユニットに対してNCプログラムを生成し、さらに必要ならばNC装置の動作がスムーズに行われるように生成したプログラムを編集する。
【0032】
〈稜線定義表〉
図2は、一例として示す製品形状の斜視図であり、直方体状の被工作物に対して図2中上方から概略四角錐台形状の穴を削る所謂ポケット形状の加工領域形状として、加工除去領域R10を定義する加工領域形状を例として説明する。本実施の形態では、加工領域形状の定義データを設定する際には表形式で行う。この表を本明細書では稜線定義表と呼ぶ。
【0033】
図3−1は、加工除去領域R10の底面形状を定義する稜線定義表の定義例を示す図である。図3−2は、図3−1の稜線定義表に定義された底面形状の詳細を示す図である。図3−1及び図3−2において、
・稜線定義表の1段目のデータが表す点(Px11、Py11、Z0)を点P11、
・稜線定義表の2段目のデータが表す点(Px12、Py12、Z0)を点P12、
・稜線定義表の3段目のデータが表す点(Px13、Py13、Z0)を点P13、
・稜線定義表の4段目のデータが表す点(Px14、Py14、Z0)を点P14、
・点P11と点P12からなる直線をE11、
・点P12と点P13からなる直線をE12、
・点P13と点P14からなる直線をE13、
・点P14と点P11からなる直線をE14、
・稜線E11に関連する側面形状を定義する面形状が平面であり、底面形状を含む平面の法線ベクトルに対する傾きの大きさがT11、同様に、
・稜線E12に関連する側面形状が平面であり傾きがT12、
・稜線E13に関連する側面形状が平面であり傾きがT13、
・稜線E14に関連する側面形状が平面であり傾きがT14、
であり、これら側面形状を定義する面形状のデータはそれぞれの稜線の属性データとして設定される。
【0034】
図4は、底面形状を含む平面SB1に対して傾きがT11である側面SS11を表した図である。図5は底面形状を含む平面SB1に対して平行、かつ加工領域側(底面の法線ベクトルの正の向き)にL0の距離だけ離れた位置にある、面の種類が平面であるような上面形状ST1の説明図であり、さらに、斜線部分の領域は、本例での加工除去領域R10に相当する加工領域形状に相当する。図5に矢印で示す取り代L0は加工深さ方向及び加工深さの大きさを示し、底面形状に対する上面形状の位置により定義され、図5の例では底面形状と上面形状の距離に相当し、上面形状を定義する面形状のデータとして稜線の属性データに含まれる。
【0035】
〈自動的に設定される側面形状に関する属性データ〉
図6は、側面形状に関する属性データが装置により自動的に設定される様子を説明する図であり、そのうち、図6−1は、稜線E41に対して次の稜線E42が接線連続である一例を示す図である。図6−2は、稜線E41に対して次の稜線E42が接線連続である他の例を示す図である。図6−3は、稜線E41と稜線E42の属性データの稜線定義表を示す図である。図6−4は、同一Rチェックボタンの正面図である。
【0036】
所望の加工領域形状が隣接する側面形状の境界部分に丸みがついているような場合は、図6−3に示すように、表中のCNR列である底面形状を構成する形状要素のコーナ部の丸み・面取り設定欄により丸み設定を行う。また、全てのコーナ部に同じ大きさの丸みをつけたい場合には、図6−4に示す同一Rチェックボタンを操作することにより、同一Rチェック欄をONにすれば、表中の1段目の形状要素データの丸み設定欄に設定されているRの大きさが全ての形状要素の丸み設定欄に反映される。
【0037】
所望の加工領域形状の側面形状の傾きを設定するさいには、表中の所定の属性情報として側面形状の傾き設定欄により傾き設定を行うが、全ての側面形状において同じ傾きを設定したい場合には、図6−4に示す同一Rチェックボタンと同種の同一傾きチェックボタン(図示せず)を操作することにより、同一傾きチェック欄をONにすれば、表中の1段目の形状要素データの傾き設定欄に設定されている傾きの大きさが全ての形状要素データの傾き設定欄に反映される。
【0038】
〈隣接する稜線の接線連続〉
さらに、図6−1及び図6−2の例に示すように、底面形状を構成する稜線を定義する際に、ひとつ前に定義した稜線E41に対して隣接する次の稜線E42が接線連続であるか否かを判断する。稜線E41に対して次の稜線E42が接線連続であるか否かは、例えば、稜線E41と稜線E42との交点における稜線E41、稜線E42の接線が一致すれば稜線E41と稜線E42は接線連続であるとする判断する。
【0039】
稜線E41と稜線E42とが接線連続である場合には、稜線E41、稜線E42に関連する側面形状どうしも滑らかに繋がることが好ましく、そのためにはそれぞれの側面形状の面の傾きが同じになるのが望ましい。よって、稜線定義表中で稜線E41の属性データとしてTPR列である側面形状の傾き設定欄に傾きT41が設定されているならば、次の稜線である稜線E42の設定では、傾き設定欄には自動的にT41が設定される。
【0040】
〈隣接する稜線間のコーナ部を滑らかにするために形状修正〉
図7−1は、側面形状に関する属性データを設定する様子を説明するための図であり、特に隣接する稜線間のコーナ部を滑らかにするために形状修正を行う様子を説明するための図である。図7−2は、図7−1に示す稜線の稜線定義表を示す図である。図7−3は、形状判定ボタンの正面図である。
【0041】
ここでは、隣接する稜線間のコーナ部を滑らかにするために形状修正を行う動作について説明する。底面形状を構成する稜線を稜線定義表から定義する際に、隣接する稜線E51と稜線E52が接線連続であるか否かを例えば前述の方法で判断する。稜線E51と稜線E52と接線連続であるか否かの判定は、例えば操作者が図7−3に示す形状判定ボタンを押すことにより実行される。
【0042】
図7−1の例に示すように、稜線E51と稜線E52が滑らかでない場合に丸み形状を挿入できるようにされている。具体的には、図7−2に示す稜線定義表のCNR列の該当するコーナ部の丸みデータ設定欄に、丸みデータであるRの半径値を設定する。
【0043】
なお、図6の例に示すように、稜線E41と稜線E42が滑らかである場合には、丸み形状を施す必要がないので、稜線定義表のCNR列の該当するコーナ部の丸みデータ設定欄に対して、値を設定できないようにする。このとき、既に設定されている場合には、アラームメッセージを表示して操作者に修正を促す。
【0044】
〈不正形状によるアラームメッセージ〉
図8は、不正形状を説明するための縦断面図である。図9−1は、図8に示す不正形状の稜線定義表である。図9−2は、表示装置の画面にアラーム表示する様子を示す図である。底面形状を構成する稜線を定義する際に、属性データの傾きによって側面形状を定義するが、図8の例に示すように、設定された傾きの大きさT61によっては側面形状SS61が製品形状R61の内部に入り込んだ所謂削りすぎと呼ばれるような加工となってしまう加工領域形状となる場合がある。
【0045】
このような不適切な加工領域形状を生成しないようにするために、図9−1に示す稜線定義表の稜線の属性データとしてTPR列である側面形状の傾き設定欄に設定された傾きが、製品形状と干渉するような側面形状を生成するような場合には、図9−2に示すように、表示装置の画面にアラームメッセージを表示して操作者に修正を促したり、干渉しない傾き値の範囲をガイド値として表示したりする。これにより、不正形状や矛盾を含む形状の生成を未然に防ぐことができ、適切な形状を生成するための適切な値がガイド値として示されるので、操作者の負荷も軽減される。
【0046】
なお、隣接する稜線が接線連続であるか否かという判断や、稜線に関連する側面形状が製品形状と干渉するか否かという判断するタイミングは、稜線定義表に値が設定されるタイミング毎に判断してもよいし、或いはまた、稜線定義表への設定が全て完了したタイミングで形状全体に関して判断してもよい。
【0047】
以上のように、本実施の形態の自動プログラミング装置によれば、底面形状だけでなく側面形状や上面形状の形状幾何データを定義できることから、従来の加工領域形状として生成される押出し形状のように指定経路に垂直な断面が同じとなるような形状以外の形状も容易に定義することができ、これにより、所望の加工に適した多様な形状を加工領域形状として定義できる。
【0048】
そのため、従来の課題であった、同一寸法の丸み付け円弧または面取り形状を挿入するコーナ部形状の挿入操作に多大の時間を要するという問題点や、その問題を解決する例えば特許文献1に記載された方法における問題点、すなわち、事前に所望の輪郭形状を特定するための形状を定義し、そのパートプログラムを作成したうえで改めて所望の輪郭形状を定義しなければならないという問題点を解消することができる。さらには、従来の課題であった、コーナ部形状の挿入操作に、タブレット装置が必要という問題点も解消することができる。
【0049】
また、本実施の形態の自動プログラミング装置によれば、底面形状と関連して側面形状や上面形状が特定されることから、定義する加工領域形状における底面形状と側面形状や上面形状の関係を特定するデータを別に持つ必要がないという特徴や、側面形状や上面形状の定義データとして底面形状のデータを利用することができるという特徴により、より少ない情報で加工領域形状を容易に定義できる、といった従来にない効果を得ることができる。
【0050】
さらには、底面形状定義処理部は、底面形状に関連した側面形状として、底面形状のそれぞれの稜線に対して、側面形状を特定するに必要なデータをこの稜線の属性データとして定義する際に、底面形状を含む平面を基準とした側面形状の傾斜角度を属性データの一つとするので、傾斜角度を属性データとして含む側面形状を定義することができる。
【0051】
また、側面形状の面の種類も属性データの一つとするので、面の種類を属性データとして含む側面形状を定義することができ、さらにまた、底面形状の稜線を側面形状が共有するか否かを表す識別子も属性データの一つとするので、稜線を側面形状が共有するか否かを属性データとして定義することができ、これら属性データの定義により、さらに少ない情報で加工領域形状を容易に定義できる。さらに、底面形状の稜線の属性データとして、それらの稜線に関連した上面形状を特定するデータを加えてもよく、底面形状、側面形状に加えて、上面形状も定義することにより、加工領域形状をさらに詳細に定義できる。
【0052】
実施の形態2.
図10−1は、実施の形態2の製品形状及びその加工領域形状を示す斜視図である。図10−2は、図10−1の加工領域形状を含む部分の断面図である。上記実施の形態1の例で示したポケット形状のような場合は、実際の加工除去領域の側面部分は製品形状に囲まれているため、加工領域形状が加工除去領域よりも大きくなると製品形状と干渉することとなる。そのため、加工領域形状の側面部分は、加工除去領域の側面(内面)部分と一致する場合が多い。
【0053】
しかしながら、図10−1、図10−2の例に示すような製品形状の場合には、底面形状BS8を構成する稜線E81〜E84のうち、稜線E81に関連する側面形状SS81のみ製品形状に囲まれているため、この側面形状SS81と製品形状との干渉のみを確認すればよい。そして、加工領域形状を定義するための底面形状SB8、及び側面形状SS81〜SS84は、図10−1、図10−2の例に示すように定義してもよい。
【0054】
このような構成の自動プログラミング装置によれば、さらに多様な加工領域形状を定義することができるとともに、不要な部分の干渉の確認を容易に削減することができ、演算部の負荷を容易に軽減することができる。
【0055】
実施の形態3.
上記実施の形態1にて説明したように、上面形状生成処理部は省略可能である。このような、上面形状生成処理部を備えていない自動プログラミング装置の場合においては、図1の構成において、加工領域形状生成処理部134は上面形状生成処理部133に替わって、底面形状の稜線から構成される輪郭形状を含む面を基準として、加工領域側に向けて、設定された距離(加工深さだけ離れた距離)だけ離れた平面を生成し、上面形状とする。このような構成の自動プログラミング装置によれば、上面形状生成処理部を備えていないものにおいても、問題なく上面形状を定義することができ、そのような装置においても多様な加工領域形状を定義することができるとともに、不要な部分の干渉の確認を容易に削減することができる。
【0056】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を構成できる。例えば、上述の実施の形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0057】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わしかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明にかかる自動プログラミング装置は、NC工作機械の動作を制御するNC自動プログラムを生成するための自動プログラミング装置に有用であり、特により少ない情報量で多様な加工領域形状を定義することが要求される自動プログラミング装置に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0059】
101 自動プログラミング装置
102 NC装置
111 入力装置
112 表示装置
121 対話式操作処理部
130 加工領域定義部
131 底面形状定義処理部
132 側面形状生成処理部
133 上面形状生成処理部
134 加工領域形状生成処理部
135 表示処理部
140 NCプログラム生成部
141 加工工程分割処理部
142 加工ユニット定義処理部
143 NCプログラム生成処理部
151 NCプログラム解析処理部
R10 加工除去領域
E11〜E14 底面形状を定義する稜線
P11〜P14 稜線E11〜E14を定義する点
T11〜T14 稜線E11〜E14に関連する側面形状の傾き
SS11〜SS14 稜線E11〜E14に関連する側面形状
SB1 底面形状を含む平面
SS1 底面形状に関連する上面形状
L0 加工深さ
E41、E42 底面形状を定義する稜線
T41 稜線E41に関連する側面形状の傾き
E51、E52 底面形状を定義する稜線
E53 接線連続でないE51、E52のコーナ部についた丸み形状
E81〜E84 底面形状を定義する稜線
SS81〜SS84 稜線E81〜E84に関連する側面形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NC自動プログラムを生成する自動プログラミング装置において、
データを取り込む入力装置と、
データを記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された底面形状の輪郭を構成する一連の稜線の稜線データ、及び該稜線に関連した側面形状を特定する稜線の属性データにより、底面形状を定義する底面形状定義処理部、
前記底面形状の稜線データ及び属性データとから特定される面を側面形状として生成する側面形状生成処理部、及び
前記底面形状定義処理部により定義された底面形状、及び前記側面形状生成処理部により生成された側面形状に基づいて加工領域形状を生成して前記記憶装置に記憶する加工領域形状生成処理部を含む加工領域定義部と、を備えた
ことを特徴とする自動プログラミング装置。
【請求項2】
前記底面形状定義処理部は、底面形状に関連した側面形状として、底面形状のそれぞれの稜線に対して、該稜線を含む側面形状を特定するに必要なデータを該稜線の属性データとして定義し、
前記側面形状生成処理部は、底面形状のそれぞれの稜線データに対して、該稜線を含み、かつ該稜線の属性データから特定される面を生成して側面形状とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動プログラミング装置。
【請求項3】
前記底面形状定義処理部は、底面形状に関連した側面形状として、底面形状のそれぞれの稜線に対して、側面形状を特定するに必要なデータを該稜線の属性データとして定義する際に、底面形状を含む平面を基準とした側面形状の傾斜角度を属性データの一つとすることを特徴とする請求項2に記載の自動プログラミング装置。
【請求項4】
前記底面形状定義処理部は、底面形状に関連した側面形状として、底面形状のそれぞれの稜線に対して、側面形状を特定するに必要なデータを該稜線の属性データとして定義する際に、側面形状の面の種類を属性データの一つとする
ことを特徴とする請求項2に記載の自動プログラミング装置。
【請求項5】
前記底面形状定義処理部は、底面形状に関連した側面形状として、底面形状のそれぞれの稜線に対して、側面形状を特定するに必要なデータを該稜線の属性データとして定義する際に、底面形状の稜線を側面形状が共有するか否かの識別子を属性データの一つとすることを特徴とする請求項2に記載の自動プログラミング装置。
【請求項6】
前記底面形状定義処理部は、底面形状に関連した側面形状として、底面形状のそれぞれの稜線に対して、側面形状を特定するに必要なデータを該稜線の属性データとして定義する際に、第1の稜線と該第1の稜線に隣接する第2の稜線が滑らかに繋がる場合に、前記第1の稜線及び第2の稜線に各々対応する側面形状どうしも滑らかに繋がるように属性データを自動的に定義する
ことを特徴とする請求項2に記載の自動プログラミング装置。
【請求項7】
前記底面形状定義処理部は、底面形状に関連した側面形状として、底面形状のそれぞれの稜線に対して、側面形状を特定するに必要なデータを該稜線の属性データとして定義する際に、第1の稜線と該第1の稜線に隣接する第2の稜線が滑らかに繋がる場合に、前記第1の稜線及び第2の稜線に各々対応する側面形状どうしが滑らかに繋がるように形状を変形するために必要な属性データを定義できるようにされている
ことを特徴とする請求項2に記載の自動プログラミング装置。
【請求項8】
前記加工領域定義部は、前記底面形状の稜線データ及び属性データとから特定される面を上面形状として生成する上面形状生成処理部をさらに含み、
前記加工領域形状生成処理部は、前記底面形状定義処理部により定義された底面形状、前記側面形状生成処理部により生成された側面形状、及び前記上面形状生成処理部により生成された上面形状に基づいて前記加工領域形状を生成する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の自動プログラミング装置。
【請求項9】
表示装置と、
データを設定することにより、形状が不正となったり他のデータとの関連性に矛盾が生じたりする場合に、表示装置にアラームメッセージを表示したり、不正形状や矛盾を含む形状が生じないための適切な値の範囲を表示したりする表示処理部と、をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の自動プログラミング装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の自動プログラミング装置を動作させる動作プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【公開番号】特開2010−262528(P2010−262528A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113727(P2009−113727)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】