説明

自動二輪車

【課題】本発明は、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースを維持しつつ、盗難対策装置を設けることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】自動二輪車10に、車体フレーム11と、この車体フレーム11に設けられている乗員シート34と、この乗員シートの縁74に沿って延びる把持部80を有し車体フレーム11に取り付けられているグラブレール56と、車両の位置情報を測定するとともにこの位置情報を無線送信する盗難対策装置63と、が備えられている。盗難対策装置63は、車両を上から見たときに、少なくともその一部が車体フレーム11から外方に露出するように配置されるとともに、把持部80よりも車両幅方向内方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難対策装置が備えられている自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難対策装置として、車両に盗難検出センサと警報装置とを設け、車両が盗まれたときに、警報装置により警報音を発生するものがある。あるいは、盗難検出センサをエンジン制御部に接続し、エンジンを始動不能にするものがある。その他、上記要素に加えて、車両に全地球測位システム(GPS)と携帯電話通信部を設け、GPSで盗まれた車両の位置を探知し、携帯電話通信部で車両の位置情報を携帯電話などに送信するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1(図1、図4)参照。)。
【0003】
特許文献1の図1において、自動二輪車に、車体フレーム1(符号は、同公報のものを流用する。以下同じ。)が設けられ、この車体フレーム1の後部に、物入れボックス5が取り付けられている。
【0004】
特許文献1の図4において、物入れボックス5の内側に、盗難対策装置20が配置され、この盗難対策装置20を避けるように、物入れボックス5に、2つのヘルメットH1、H2が収納されている。
【0005】
しかし、上記物入れボックス5内に盗難対策装置20が設けられているので、物入れボックス5内の収納容量が小さくなる。
同様に、物入れボックスを備えていない自動二輪車においても、盗難対策装置を設けると、物品を配置するスペースが減少し、物品の配置の自由度に影響がでる場合がある。
物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースを維持しつつ、盗難対策装置を設けることができる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−362448公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースを維持しつつ、盗難対策装置を設けることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、前輪を操向自在に支持するとともに、後輪を揺動自在に支持する車体フレームと、この車体フレームの前部に設けられている燃料タンクと、この燃料タンクの後方にて車体フレームに設けられている乗員シートと、この乗員シートの縁に沿って延びる把持部を有し車体フレームに取り付けられているグラブレールと、車両の位置情報を測定するとともにこの位置情報を無線送信する盗難対策装置と、が備えられている自動二輪車において、盗難対策装置は、平面視にて、少なくともその一部が車体フレームから外方に露出するように配置されるとともに、把持部よりも車両幅方向内方に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、車体を上方から見たときに、グラブレールと車体フレームとにより環状部が形成され、この環状部の内側に、盗難対策装置の少なくとも一部が配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、車体フレームの車両長手方向に、乗員シートを支持する前部シート支持部および後部シート支持部とが設けられ、盗難対策装置は、前部シート支持部と後部シート支持部との間に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、盗難対策装置は、端子部が、車両幅方向内側に向くように配置され、この端子部からサブハーネスが延ばされ、このサブハーネスは、車体フレームに沿って設けられているメインハーネスに合流されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、車両長手方向に、グラブレールを車体フレームに取り付ける前部締結部と後部締結部とが設けられ、これらの前部締結部と後部締結部との間に、盗難対策装置が配置され、この盗難対策装置の上方を覆う保護プレートが、前部締結部と後部締結部のうちの少なくとも1つの締結部によって共締めされていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明では、盗難対策装置は、自車の位置を測定するGPSと、測定された位置情報を送信する携帯電話通信部とを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明では、盗難対策装置は、自車の位置を測定するGPSと、測定された位置情報を送信する携帯電話通信部と、盗難時に車体に加えられた振動を検出する加速度センサと、これらのGPS、携帯電話通信部及び加速度センサを統合制御する制御部と、GPSおよび携帯電話通信部に電力を供給する内部電源とを1つのハウジング内に備えることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明では、盗難対策装置は、盗難を検知した場合に、エンジンの始動を停止するエンジン停止機能と、灯火器を作動させて警報を発する警報機能とを有し、盗難対策装置を車体に備える電装系統に接続することにより、エンジン停止機能及び警報機能が作動可能であることを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る発明では、ハウジングは、ボックス状に形成され、ボックスの最も大きな面が水平又は水平に近い状態で配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明では、盗難対策装置は、その一部が車体フレームから外方に露出して配置されている。
かかる配置であれば、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースへの影響を抑えながら、盗難対策装置を設けることができる。
【0018】
また、盗難対策装置の一部が車体フレームから外方に露出するように配置されている。盗難対策装置の一部が外方に露出しているので、盗難対策装置の送受信感度を良好に保つことができる。
【0019】
さらに、車体フレームよりも外方に配置されている盗難対策装置の一部は、グラブレールの把持部の内側に配置されているので、露出した盗難対策装置の一部を把持部によって保護することが可能になる。
【0020】
請求項2に係る発明では、車体を上方から見たときに、グラブレールと車体フレームとにより環状部が形成され、この環状部の内側に、盗難対策装置の少なくとも一部が配置されている。
【0021】
本発明では、環状部の内側に、盗難対策装置の少なくとも一部が配置されている。車体フレームから外方に盗難対策装置の一部が露出する場合であっても、この露出した一部が環状部の内側に設けられていれば、この環状部によって盗難対策装置を保護することが可能となる。
【0022】
請求項3に係る発明では、前部シート支持部と後部シート支持部とによってシートの荷重が支持され、この前部シート支持部および後部シート支持部との間に盗難対策装置が配置されている。
【0023】
本発明では、前部シート支持部および後部シート支持部との間に盗難対策装置が配置されているので、乗員シートの強度を高めることなく、盗難対策装置への荷重負荷を低減または回避することができる。
【0024】
請求項4に係る発明では、盗難対策装置は、端子部が、車両幅方向内側に向くように配置され、この端子部からサブハーネスが延ばされ、このサブハーネスは、メインハーネスに合流されている。メインハーネスは、車体フレームに取り付けられているので、車体フレームによって、メインハーネスに合流されているサブハーネスを確実に固定することができる。サブハーネスの固定は、車体フレームに取り付けられているメインハーネスによって固定されているので、サブハーネスを確実に保持することができる。サブハーネスが確実に保持されれば、カバー類などの周辺部材の組付時に、サブハーネスとカバー類との干渉を抑制することができ、生産性を高めることが可能になる。
【0025】
請求項5に係る発明では、盗難対策装置の上方を覆う保護プレートを、グラブレールを車体フレームに取り付ける締結部によって共締めするようにした。つまり、保護プレートの締結部をグラブレールの締結部で兼ねるようにしたので、部品点数の増加と組立工数の増加を抑制しながら、盗難対策装置を保護することが可能になる。
【0026】
請求項6に係る発明では、盗難対策装置は、自車の位置を測定するGPSと、測定された位置情報を送信する携帯電話通信部とを備えている。このようなGPSおよび携帯電話通信部を備える盗難対策装置を請求項1〜請求項5の車体位置に配置することで、GPSによる人工衛星からの軌道情報の受信による車両位置の測定および携帯電話通信部による位置情報の送信を行う際に、GPSおよび携帯電話通信部の上方に金属製部材が存在しないため、電波が遮られない。このため、送受信感度が良好になり、盗難対策装置の配置自由度が低い自動二輪車であっても盗難対策装置を良好に機能させることができる。
【0027】
請求項7に係る発明では、盗難対策装置は、位置情報を検出するGPSと、検出された位置情報を送信する携帯電話通信部と、盗難時に車体に加えられた振動を検出する加速度センサと、これらのGPS、携帯電話通信部および加速度センサを統合制御する制御部と、これらのGPSおよび携帯電話通信部に電力を供給する内部電源とを1つのハウジング内に備えている。このようなGPSおよび携帯電話通信部を備えている盗難対策装置を請求項1〜請求項6の車体位置に配置することで、GPSによる人工衛星からの軌道情報の受信による車両位置の測定および携帯電話通信部による位置情報の送信を行う際に、GPSおよび携帯電話通信部の上方に金属製部材が存在しない。このため、電波が遮られないので、送受信感度が良好になり、盗難対策装置の配置自由度が低い自動二輪車であっても盗難対策装置を良好に機能させることができる。
【0028】
また、盗難対策装置のシステムを1つのハウジング内に収めるため、車両への組付性を向上させることができる。この場合に、ハウジングが大型化しても、上記の請求項1〜請求項6のような盗難対策装置配置構造を採用することで、車両前部の大型化を防止することができる。
【0029】
請求項8に係る発明では、盗難対策装置が、盗難を検知した場合に、エンジンの始動を停止するエンジン停止機能と、灯火器を作動させて警報を発する警報機能とを有する。かかる盗難対策装置を車体に備える電装系統に接続することにより、エンジン停止機能および警報機能が作動可能であるので、車体に備える電装系統に盗難対策装置を接続することにより、エンジン停止機能と警報機能とを作動させることができる。この結果、新たな機能部品を配置したり、配線を増やしたりする必要がなく、コストを抑えることができる。
【0030】
また、上述したように盗難対策装置を配置することにより、車両の基本配線への盗難対策装置の接続が、短い専用配線で済むため、車両の軽量化およびコンパクト化を図ることができる。
【0031】
請求項9に係る発明では、ハウジングが、ボックス状に形成され、ボックスの最も大きな面が水平又は水平に近い状態で配置されているので、盗難対策装置内の機能部品の配置を最適化した上で、GPSおよび携帯電話通信部に備えるアンテナの面積を確保することができ、送受信を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明に係る自動二輪車の要部左側面図である。
【図3】本発明に係る盗難対策装置の取付構造を説明する分解斜視図である。
【図4】本発明に係る盗難対策装置およびその関連部品を示す説明図である。
【図5】本発明に係る盗難対策装置のブロック図である。
【図6】本発明に係る自動二輪車の要部平面図である。
【図7】実施例2に係る自動二輪車の要部平面図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】実施例3に係る自動二輪車の要部平面図である。
【図10】実施例4に係る自動二輪車の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中および実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0034】
本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1において、自動二輪車10は、車体フレーム11がヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方に延びているメインフレーム13と、このメインフレーム13の後部上部から後方に延びているシートレール14と、ヘッドパイプ12から斜め下後方に延びているフロントフレーム15と、このフロントフレーム15の後方に設けられメインフレーム13の後部から略下方に延びているダウンフレーム16と、このダウンフレーム16の下部とシートレール14の間に掛け渡したサブフレーム17と、から構成され、フロントフレーム15とダウンフレーム16とにエンジン18が取り付けられている車両である。
【0035】
ヘッドパイプ12から斜め前下方に、フロントフォーク21が延びており、このフロントフォーク21の下端部に前輪22が取り付けられ、フロントフォーク21の上端部に前輪22を操向する操向ハンドル23が取り付けられている。
【0036】
ダウンフレーム16に、車幅方向にピボット軸25が設けられ、このピボット軸25から後方にスイングアーム26が揺動自在に延びており、このスイングアーム26の後端部に、後輪27が取り付けられ、このスイングアーム26の後部からシートレール14に向けクッションユニット28が延びており、クッションユニット28の上端部は、シートレール14に設けられているクロス部材31に取り付けられている。ここで、車体フレーム11は、エンジン18を取り付け、前輪22を操向自在に支持するとともに、後輪27を揺動自在に支持する部材である。ダウンフレーム16の下端部に、メインスタンド32が取り付けられている。
【0037】
メインフレーム13の前部には、燃料タンク33が跨るように取り付けられ、この燃料タンク33の後方で車体フレーム11に設けられているシートレール14に、乗員が着座する乗員シート34が取り付けられている。乗員シート34は、2人乗り可能なタンデムシートである。
【0038】
エンジン18の前部は、エンジンハンガ35を介してフロントフレーム15に取り付けられている。エンジン18の後部に、エンジン18へ混合気を供給するスロットル弁36が連結され、このスロットル弁36の後部に、エレメントを収納したエアクリーナケース37が連結されている。
エンジン18に、出力軸41が設けられ、この出力軸41と後輪27の間に駆動力伝達用のチェーン42が設けられ、このチェーン42によってエンジン18の駆動力が後輪27に伝達される。
【0039】
フロントフォーク21にフロントフェンダ44が設けられ、ヘッドパイプ12の前部にフロントカウル45が取り付けられ、このフロントカウル45にヘッドライト46が取り付けられている。
【0040】
ダウンフレーム16とシートレール14とサブフレーム17とで囲まれる領域に、バッテリボックス51が配置され、このバッテリボックス51にバッテリ52が収納され、バッテリボックス51の側方に、車体の側方を覆うサイドカバー53が設けられている。ダウンフレーム16は、車体フレーム11の略中央部から下方に延びている部材である。
【0041】
シートレール14の後部に、乗員が把持可能なグラブレール56が取り付けられ、乗員シート34を止めるシートステー57が取り付けられるとともに、リヤフェンダ58が取り付けられており、シートレール14の側方に、このシートレール14に取り付けられ車体の後部を覆うリヤカウル61が設けられている。
【0042】
次に、グラブレールおよびその周辺部の構成について説明する。
図2において、シートレールの上面62に、グラブレール56が取り付けられるとともに、盗難対策装置63が装着されるステー部材71が取り付けられている。
ステー部材71の前方で、シートレール14後端部の端面72に、乗員シート34を取り付けるシートステー57が設けられている。また、このシートステー57の後方で、シートレール14の上面に、乗員シートの底部73を受けるシート受け部77が設けられている。シートステー57およびシート受け部77は、各々、左右に設けられている。
【0043】
次に、グラブレールおよび盗難対策装置の取付構造について説明する。
図3において、シートレール14の後端部に、グラブレール56が取り付けられている。グラブレール56は、車両幅方向外方に延びている左前腕部81および右前腕部82と、この左前腕部81および右前腕部82の他端から乗員シート(図1、符号34)の縁に沿って後方に延びている把持部80としての左把持部83および右把持部84と、これらの左把持部83および右把持部84の後端から車両幅方向内方に延びている後腕部85と、この後腕部85の車両幅方向中心に設けられているフランジ部86と、からなり、左前腕部81および右前腕部82の一端が前部締結部としての前ボルト171、171を介してシートレール14に取り付けられ、フランジ部86が後部締結部としての後ボルト172、172を介してシートレール14に取り付けられている。把持部80は、左把持部83と右把持部84とからなり、いずれも、乗員シートの縁74に沿って設けられている。
このうち、左前腕部81と左把持部83と後腕部85と右把持部84と右前腕部82とは一体的に形成されている。
【0044】
シートレール14で、左前腕部81と左後腕部85の間には、盗難対策装置63を支持するステー部材71が取り付けられている。ステー部材71は、車両幅方向に伸びている一方のプレートとしてのクロス部91と、車両長手方向に延びている他方のプレートとしての長手部92とからなる平面視で十字形状を呈する部材であり、クロス部91の左端部に、上方に折り曲げ突設される第1突設部96が備えられ、長手部92の前端部に、上方に折り曲げ突設される第2突設部97が備えられ、長手部92の後端部に、上方に折り曲げ突設される第3突設部98が備えられ、クロス部91の右部がシートレール14に溶接止めされている。
【0045】
盗難対策装置63には、ケース体としてのハウジング111が備えられ、このハウジング111の周囲は、弾性部材112によって縦横に囲われている。この弾性部材112に、3つの凸部113が設けられ、これらの凸部113に、ステー部材71に設けた突設部96、97、98と係合する3つの係合穴105が設けられている。3つの係合穴105は、第1突設部96と係合する第1係合穴106と、第2突設部97と係合する第2係合穴107と、第3突設部135と係合する第3係合穴(図6、符号108)と、からなる。
【0046】
そして、ハウジング111に弾性部材112を取り付け、この弾性部材112に形成されている第1〜第3係合穴106、107、108を第1〜第3突設部96、97、98に各々差し込むことで、盗難対策装置63をシートレール14の後端部に設けられているステー部材71に取り付けるようにした。
【0047】
シートレール14であって、左前腕部81および右前腕部82の前方に、各々、乗員シート34を支持する前部シート支持部としてのシートステー57が取り付けられている。
また、シートレール14であって、ステー部材71の後方に、乗員シート34を支持する後部シート支持部としての左右のシート受け部77が設けられている。
【0048】
すなわち、車体フレーム11の車両長手方向に、乗員シート34を支持するシートステー57およびシート受け部77とが設けられている。そして、盗難対策装置63は、シートステー57とシート受け部77との間に配置されている。
【0049】
図2に戻って、シートステー57およびシート受け部77とによって乗員シート34の荷重が支持され、このシートステー57およびシート受け部77との間に盗難対策装置63が配置されているので、乗員シート34の強度を高めることなく、盗難対策装置63へ荷重負荷を低減または回避することができる。
次図にて、盗難対策装置のハウジング111および弾性部材112の詳細について説明する。
【0050】
図4(a)において、盗難対策装置63の平面図が示されており、図4(b)において、図4(a)の4(b)矢視図が示されている。
ハウジング111は、上面121と下面122と前面123と後面124と左面125と右面126とからなる直方体のケース体であり、右面126に、コネクタ127、128が接続される端子部174、175が設けられている。
【0051】
弾性部材112は、ハウジング111の後面124と上面121と前面123と下面122とを囲う第1保持部131と、第1保持部131から左方に延設されハウジング111の上面121と左面125と下面122とを囲う第2保持部132と、からなる部材であり、左面125に沿って第2保持部132に、第1係合穴106を有する第1凸部116が設けられ、前面123に沿って第1保持部131に、第2係合穴107を有する第2凸部117が設けられ、後面124に沿って第1保持部131に、第3係合穴108を有する第3凸部118が設けられている。これらの第1係合穴106、第2係合穴107、第3係合穴108は、各々、第1〜第3突設部96、97、98に係合される。
【0052】
かかる第1係合穴106、第2係合穴107、第3係合穴108を備えた弾性部材112にハウジング111が拘束されているので、この弾性部材112により車両の振動が吸収され、盗難対策装置63に車両の振動を伝達され難くすることができる。加えて、ハウジング111をステー部材の突設部96、97、98に確実に固定することができる。
【0053】
次に、盗難対策装置の構成について説明する。
図5において、盗難対策装置63は、位置情報を検出する全地球測位システム151(GPS151)と、盗難時に車体に加えられた振動を検出する加速度センサ153と、これらの全地球測位システム151からの位置情報JP、加速度センサ153からの加速度信号SAを統合制御する制御部154と、この制御部154交信指令SCに基づいて携帯電話基地局156へ位置情報JPを送信する携帯電話通信部152と、制御部154からのエンジン制御信号SECに基づきエンジン18(図1参照)の点火装置167に点火停止信号SSSを送って点火装置167の作動を停止させる、即ち、エンジン18を停止させるエンジン制御部157と、制御部154からの警報制御信号SACに基づき警報装置63(ヘッドランプ、ウインカ、テールランプなどの灯火器、ホーン)に警報信号SAを送って灯火器、ホーンを作動させる警報装置168と、GPS151、制御部154、携帯電話通信部152、エンジン制御部157および警報発生部158へ電力を供給する内部電源155とからなり、これらの全地球測位システム151および携帯電話通信部152に電力を供給する内部電源155とを1つのハウジング111内に備える。GPS151、制御部154、携帯電話通信部156、エンジン制御部157および警報発生部158へは、車体側のバッテリ(図1、符号52)からも電力供給が可能である。
【0054】
1つのハウジング111内に盗難対策装置63のシステムが収納されているため、車両への組付性を向上させることができる。この場合に、ハウジング111が大型化しても、上記のような盗難対策装置配置構造を採用することで、車両全体の大型化を防止することができる。
【0055】
盗難対策装置63は、盗難を検知した場合に、エンジン18の始動を停止するエンジン停止機能と、灯火器としてのヘッドライト46を作動させて警報を発する警報機能とを有し、盗難対策装置63を車体に備える電装系統に接続することにより、エンジン停止機能および警報機能が作動可能となっている。
【0056】
上記構成によれば、例えば、ヘッドライト46やエンジン制御部154など車体に備える電装系統に盗難対策装置63を接続することにより、エンジン停止機能と警報機能とを作動させることができるため、新たな機能部品を配置したり、配線を増やしたりする必要がなく既存の部品を盗難対策装置63の一部として有効に活用することができる。
【0057】
図2および図3において、ハウジング111は、ボックス状に形成され、ボックスの最も大きな面である上面121が水平に近い状態で配置されている。
ハウジング111が、ボックス状に形成され、ボックスの最も大きな面であるハウジングの上面121が水平に近い状態で配置されているので、盗難対策装置63内の機能部品の配置を最適化した上で、全地球測位システム(GPS)および携帯電話通信部に備えるアンテナの面積を確保することができ、送受信を良好に行うことができる。
【0058】
図6において、車体フレーム11に、シートレール14が設けられ、このシートレール14に、グラブレール56が取り付けられている。このグラブレール56は、乗員シートの縁74に沿って延びる把持部80を有している。
【0059】
車両長手方向前後に、グラブレール56をシートレール14に取り付ける前部締結部としての前ボルト171と後部締結部としての後ボルト172とが設けられ、これらの前ボルト171と後ボルト172との間に、盗難対策装置63が配置され、この盗難対策装置63は、車両を上から見たときに(平面視にて)、その一部が車体フレーム11に設けられているシートレール14から外方に露出するように配置されるとともに、把持部80よりも車両幅方向内方に配置されている。
【0060】
シートレール14には、サブハーネス176を止めるクランプ部材170が取り付けられているので、サブハーネス176を車体側に確実に止めることができ、乗員シート(図1、34)を組み付けたときに、サブハーネス176と乗員シート34とが干渉する心配はない。
【0061】
以上に述べた自動二輪車の作用を次に述べる。
盗難対策装置63は、その一部が車体フレーム11から外方に配置されている。盗難対策装置63は、従来、車体フレーム11の内方に配置されている場合が多かった。盗難対策装置63が車体フレーム11の内方に配置されていると、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースに影響を与える場合がある。
【0062】
この点、本発明では、盗難対策装置63は、その一部が車体フレーム11から外方に配置されている。かかる配置であれば、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車10において、物品の配置スペースへの影響を抑えながら、盗難対策装置63を設けることができる。
【0063】
加えて、車体フレームよりも外方に配置されている盗難対策装置63の一部は、グラブレールの把持部80の内側に配置されるので、露出した盗難対策装置63の一部は把持部80によって保護することが可能になる。
【0064】
さらに、盗難対策装置63は、その一部が車体フレーム11の外方に露出するように配置される。詳細には、シートレール14の上方に配置されているので、良好な送受信を行わせることができる。この場合に、盗難対策装置63は、車幅方向中心Cに対し、左側にオフセットして配置され、平面視で、その一部が乗員シートの縁74の外側に設けられているので、仮に、乗員シート34の上面に、例えば、板状の金属部材が載置された場合であっても、良好な送受信を良好に行うことができる。あるいは、シート後部に、金属製の荷物を積載した場合であっても、車体側方に盗難対策装置63が突出して配置されているので、送受信感度をある程度良好にすることができる。
【0065】
さらにまた、車体を上方から見たときに、グラブレール56と車体フレーム11とにより環状部173が形成され、この環状部173の内側に、盗難対策装置63の少なくとも一部が配置されている。盗難対策装置63の少なくとも一部は、環状部の内側173に配置されているので、この環状部173によって車両の長手方向および幅方向で盗難対策装置63を保護することが可能となる。
【0066】
盗難対策装置63は、端子部174、175が、車両幅方向内側に向くように配置され、これらの端子部174、175からサブハーネス176、176が延ばされ、サブハーネス176、176は、車体フレーム11に沿って設けられているメインハーネス177に合流されている。メインハーネス177は、車体フレーム11に取り付けられているので、車体フレーム11によってサブハーネス176、176を確実に固定することができる。サブハーネス176、176の固定を車体フレーム11によって確実に行うことで、カバー類などの周辺部材の組付時に、サブハーネス176、176とカバー類との干渉を防止することができ、生産性を高めることが可能になる。
【0067】
また、盗難対策装置63は、リヤカウル61内に配置されている。盗難対策装置63がリヤカウル61内に配置されていれば、盗難対策装置63は外観上見えなくなるので、盗難防止効果を高めるとともに、盗難対策装置63を外方から受ける衝撃などからさらなる保護が図れる。
【0068】
盗難対策装置63は、自車の位置を測定する全地球測位システム151と、測定された位置情報を送信する携帯電話通信部152とを備えるので、全地球測位システム151および携帯電話通信部152を備える盗難対策装置63を車体位置に配置することで、全地球測位システムによる人工衛星からの軌道情報の受信による車両位置の測定および携帯電話通信部152による位置情報の送信を行う際に、全地球測位システム151および携帯電話通信部152の上方に金属製部材が存在しないため、電波が遮られないので、送受信感度が良好になり、盗難対策装置63の配置自由度が低い自動二輪車であっても盗難対策装置63を良好に機能させることができる。詳細には、全地球測位システム151および携帯電話通信部152の上方は、露出しているか、あるいは、樹脂製の乗員シート34で覆われており金属製部材は存在しない。
【0069】
また、上述したように盗難対策装置63を配置することにより、車両の基本配線への盗難対策装置の接続が、短い専用配線で済むため、車両の軽量化およびコンパクト化を図ることができる。
加えて、盗難対策装置63のシステムを1つのハウジング内に収めるため、車両への組付性を向上させることができる。この際、ハウジング111が大型化しても、上記盗難対策装置配置構造を採用することで、車両前部の大型化を防止することができる。
【実施例2】
【0070】
本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図7および図8において、盗難対策装置63の上方を覆う保護プレート181が、前ボルト171と後ボルト172とによって共締めされている。その他、実施例1と大きく変わるところはなく説明を省略する。
【0071】
盗難対策装置63の上方を覆う保護プレート181を、グラブレール56を車体フレーム11に取り付ける前ボルト171と後ボルト172とによって共締めするようにしたので、部品点数の増加と組立工数の増加を抑制しながら、盗難対策装置63の上方に設けられている乗員シート34から盗難対策装置63を保護することが可能になる。
なお、保護プレート181を、前ボルト171のみ、または、後ボルト172のみによって共締めすることは差し支えない。
【実施例3】
【0072】
本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図9において、盗難対策装置63は、平面視にて、その一部が車体フレームとしてのシートレール14Cから外方に露出するように配置されるとともに、把持部83C、84Cよりも車両幅方向内方に配置されている。
【0073】
かかる配置であれば、物品の配置スペースに限りがある自動二輪車において、物品の配置スペースへの影響を抑えながら、盗難対策装置63を設けることができる。
また、盗難対策装置63の一部が車体フレーム14Cから外方に露出するように配置されているので、盗難対策装置63の送受信感度を良好に保つことができる。
【0074】
さらに、車体フレームよりも外方に配置されている盗難対策装置63は、グラブレールの把持部83C、84Cの内側に配置されているので、露出した盗難対策装置63の一部を把持部83C、84Cによって保護することが可能になる。
その他、実施例と大きく変わるところはなく説明を省略する。
【実施例4】
【0075】
本発明の実施例4を図面に基づいて説明する。
図10において、グラブレール56Dと車体フレーム11Dを構成するクロスメンバ182とにより環状部173Dが形成されている。そして、盗難対策装置63は、環状部173Dの内側に配置されている。上記構成であれば、車体フレーム11Dから外方に盗難対策装置63が露出する場合であっても、この露出した盗難対策装置63の一部が環状部173Dの内側に設けられていれば、この環状部173Dによって盗難対策装置63を保護することが可能となる。
その他、実施例と大きく変わるところはなく説明を省略する。
【0076】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の鞍乗型車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、盗難対策装置が備えられている自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0078】
10…自動二輪車、11、11C、11D…車体フレーム、22…前輪、27…後輪、33…燃料タンク、34…乗員シート、56…グラブレール、57…前部シート支持部(シートステー)、63…盗難対策装置、74…乗員シートの縁、77…後部シート支持部(シート受け部)、80、80C、80D…把持部、111…ハウジング、121…ボックスの最も大きな面(ハウジングの上面)、151…全地球測位システム(GPS)、152…携帯電話通信部、153…加速度センサ、154…制御部、155…内部電源、171…前部締結部(前ボルト)、172…後部締結部(後ボルト)、173、173D…環状部、174…端子部、175…端子部、176…サブハーネス、177…メインハーネス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を操向自在に支持するとともに、後輪を揺動自在に支持する車体フレームと、この
車体フレームの前部に設けられている燃料タンクと、この燃料タンクの後方にて前記車体フレームに設けられている乗員シートと、この乗員シートの縁に沿って延びる把持部を有し前記車体フレームに取り付けられているグラブレールと、車両の位置情報を測定するとともにこの位置情報を無線送信する盗難対策装置と、が備えられている自動二輪車において、
前記盗難対策装置は、平面視にて、少なくともその一部が前記車体フレームから外方に露出するように配置されるとともに、前記把持部よりも車両幅方向内方に配置されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
車体を上方から見たときに、前記グラブレールと前記車体フレームとにより環状部が形成され、この環状部の内側に、前記盗難対策装置の少なくとも一部が配置されていることを特徴とする請求項1記載の盗難対策装置。
【請求項3】
前記車体フレームの車両長手方向に、前記乗員シートを支持する前部シート支持部および後部シート支持部とが設けられ、前記盗難対策装置は、前記前部シート支持部と前記後部シート支持部との間に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記盗難対策装置は、端子部が、車両幅方向内側に向くように配置され、この端子部からサブハーネスが延ばされ、このサブハーネスは、前記車体フレームに沿って設けられているメインハーネスに合流されていることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の自動二輪車。
【請求項5】
車両長手方向に、前記グラブレールを前記車体フレームに取り付ける前部締結部と後部締結部とが設けられ、これらの前部締結部と後部締結部との間に、前記盗難対策装置が配置され、
この盗難対策装置の上方を覆う保護プレートが、前記前部締結部と前記後部締結部のうちの少なくとも1つの締結部によって共締めされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記盗難対策装置は、自車の位置を測定するGPSと、測定された位置情報を送信する携帯電話通信部とを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記盗難対策装置は、自車の位置を測定するGPSと、測定された位置情報を送信する携帯電話通信部と、盗難時に車体に加えられた振動を検出する加速度センサと、これらのGPS、携帯電話通信部および加速度センサを統合制御する制御部と、GPSおよび携帯電話通信部に電力を供給する内部電源とを1つのハウジング内に備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記盗難対策装置は、盗難を検知した場合に、エンジンの始動を停止するエンジン停止機能と、灯火器を作動させて警報を発する警報機能とを有し、前記盗難対策装置を車体に備える電装系統に接続することにより、前記エンジン停止機能および前記警報機能が作動可能であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項9】
前記ハウジングは、ボックス状に形成され、ボックスの最も大きな面が水平又は水平に近い状態で配置されていることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−20604(P2011−20604A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168505(P2009−168505)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】