説明

自動分析システム

【課題】
本発明の目的は、複数の分析ユニットに対して、効率的な連続測定が可能であって、特に緊急を要する検体の測定の際は、分析ユニット間の処理待ち時間を少なくできる自動分析システムを提供することにある。
【解決手段】
ラックを収納しランダムアクセス可能な複数のバッファ部を備え、少なくとも1つのバッファ部を複数の分析ユニット間のラックを搬送する経路の間に配置する構造とした自動分析システム。
【効果】
本発明によれば、複数の分析ユニットで構成される自動分析システムにおいて、再検用の検体の待機場所を充分に確保すると共に、精度管理試料や緊急検体などの測定要求に対しても、個々の分析ユニットの処理能力を最大限に発揮させ、検査依頼に迅速に対応することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の分析ユニットにて、血液,尿等の生体試料の定量,定性分析を行う自動分析システムに係り、特に緊急検体への対応等の柔軟な運用が可能な自動分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液,尿などの生体由来の試料(検体)を分析する自動分析装置においては、独立した装置を用いて分析を行ってきた。しかし、最近では、検査室での作業効率向上のために、複数の分析ユニットを接続した構成で複数項目を高処理能力で測定可能な自動分析システムが用いられてきている。
【0003】
特に多数の検体を分析処理する自動分析システムの場合には、検体の入った検体容器をラックと呼称されるホルダーに保持した状態で搬送ラインを介して複数の分析ユニットに搬送し、分析結果の出力まで自動で実行するものもある。
【0004】
その場合、ラックはベルトコンベア状の搬送ラインでラック投入口から投入された順序に従い搬送,分析されるため、至急分析の必要がある緊急検体を優先的に分析ユニットに搬送することが問題になる。
【0005】
特許文献1では、ひとつの分析ユニットに対して、ラックを往復移動できる搬送ラインと搬送ラインの両端にランダムアクセス可能なバッファを設けることで、緊急検体を優先的に搬送し、迅速に分注,分析する自動分析装置を提案している。
【0006】
【特許文献1】特開2004−279357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1でも、複数の分析ユニットが接続されている自動分析システムにおいては、搬送ラインの両端部にバッファを設けているため、検体の分析依頼状況によって、複数の分析ユニットへのラック搬送経路の切り替えや待機しているラックの追い越しができない場合があり、処理能力を落とさずに特定の分析ユニットに検体の供給を行うことや、緊急検体を優先的に特定の分析ユニットに搬送する対応が十分でない懸念があった。
【0008】
本発明の目的は、複数の分析ユニットに対して、効率的な連続測定が可能であって、特に緊急を要する検体の測定の際は、分析ユニット間の処理待ち時間を少なくできる自動分析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0010】
生体サンプルの分析を行う複数の分析ユニットと、生体サンプル,試料等が収容された試料容器を搭載したラックを複数収納でき、更に収納された任意のラックを該分析ユニットに供給できる複数のバッファと、前記バッファの少なくとも1つを、少なくとも2つの前記分析ユニット間のラックを搬送する経路の間に配置する構造とした自動分析システム。
【0011】
上記において、好ましくは、緊急性を要するラックが専用に使用するスロット数を定義可能とし、定義したスロット数分を少なくとも2つの前記バッファに対して確保し、当該スロットに緊急以外のラックを搬入しないことにより、一般の検体を測定する依頼の多い環境においても、緊急の検体が投入された際には確保したバッファ上のスロットを使用することで、分析ユニット間の検体処理待ち時間を少なくすることを可能にした。
【0012】
上記において、好ましくは、精度管理用の試料を有するラックを前記分析ユニットに供給するために通過させる専用のスロット数を定義可能とし、定義したスロット数分を前記分析ユニットに搬送するために経由する前記バッファに対して確保し、当該スロットに精度管理用以外のラックを通過させないことにより、一般の検体や緊急の検体を測定する依頼の多い環境においても、精度管理用の試料の測定が依頼された際には確保したバッファ上のスロットを通過することで、分析ユニット間の検体処理待ち時間を少なくすることを可能にした。
【0013】
上記において、好ましくは、複数の前記バッファを備え、少なくともひとつの前記バッファに収納可能なラック数を超えてラックが収納されようとした際、前記バッファ間でラックの移動が可能な搬送機構により、他のバッファにラックを移動させることにより、収納するバッファに偏りが発生した場合においても、バッファに空きスロットを作り出すことで、処理待ち時間を少なくし、更に、複数のバッファの空きスロットを全て使用可能とすることで、再検査に備える待機可能なラック数を最大とすることを可能にした。
【0014】
上記において、好ましくは、再検査のためのラックを前記バッファのいずれかに待機させる際、待機させる前記バッファ位置を当該ラックに依頼された検査項目により決定する手段を有することで、再検査のために前記分析ユニットに搬送するラックの経路を最短とし、更に、待機させる前記バッファ位置の当該決定手段の切り替えを可能とすることで、検査を行う環境に適合した搬送経路の選択を可能とした。
【0015】
分析ユニットとしては、試薬と試料を混合し、試薬の色の変化をみて試料中の成分の定量・定性分析を行う生化学分析装置,試料中の分析対象成分に特異的に結合する標識成分を含む試薬を試料と混合し、標識成分の定量・定性分析を行う免疫分析装置,測定対象の核酸と特異的にハイブリダイズする試薬を用いて分析を行う核酸分析装置等が例としてあげられるが、これに限定されることなく、生体サンプルを分析可能な装置であればどのようなものであっても良い。
【0016】
ラックとは試料を収容できる試料容器を1つ、または複数個載置可能なラックを意味する。試料容器としては試験管,採血容器等、サンプルが収容できるものであれば何でも良い。搬送機構は例えばベルトコンベアのようなラックを載置するベース自体が移動するものや、ベースは移動せず、アーム,爪のような機構でラックを把持してベース上を滑らせる構造のものが代表的なものであるが、ラックを物理的に移動できるものであれば何でも良い。
【0017】
バッファは、例えば円形のベースに複数のスロットが割り付けられ、ラックを保持することが可能で、自身が回転移動することで任意のラックを指定の分析ユニットや搬送機構の方向に向かせ、搬入または搬出するものや、スライドさせることにより任意のラックを搬入または搬出する構造のものがあげられるが、物理的にラックをランダムに収納,供給できるものであれば何でも良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば複数の分析ユニットで構成される高性能な自動分析システムにおいて、再検用の検体の待機場所を充分に確保すると共に、精度管理試料や緊急検体などの測定要求に対しても、個々の分析ユニットの処理能力を最大限に発揮させ、検査依頼に迅速に対応することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施例を図に従って説明する。
【0020】
図1を用いて本発明の一実施例である自動分析システムの構成を説明する。
【0021】
図1の一般検体投入部3には、ラックトレイ4が着脱可能に架設される。各ラックトレイには多数のラック13を並べて収納できる。各ラックトレイ上のラックは、レバー駆動部により、水平方向に駆動する可動レバー(図示せず)によって、1個ずつ供給収納ライン6に押し出される。図1の例におけるラック13は、箱型の容器ホルダーであって、5本の検体容器を保持するが、ラックの形態および保持し得る検体容器数は本実施例のものに限られるものではなく、1個以上の検体容器を保持できて搬送ライン上を移動できるものであればよく、種々の変形例を採用できる。
【0022】
一般検体投入部3に投入されるラック13は、特に緊急性を要しない通常の一般検体や標準試料または精度管理試料が入った検体容器を保持している。投入されたラック13は、供給収納ライン6により、第1バッファ1に搬送され、一度待機する。ここで、本実施形態では、供給収納ライン6に接続された第1バッファ1にて一度待機する方式としているが、第1バッファ1を通過して第2バッファ2で待機する方式としても良い。また。待機するバッファを操作部14にて選択する方式としても良い。
【0023】
ラック13が移動し得る供給収納ライン6の上流側には、緊急ラック(検体)投入口5が配設される。この緊急ラック(検体)投入口5には、緊急に処理結果(例えば分析結果)が必要な緊急検体が入った検体容器を保持したラックが投入される。緊急ラック(検体)投入口5の緊急検体受け取り位置にセットされたラックは、一度、第1バッファ1に収納され、一般検体投入部3からのラックよりも優先して分析ユニット(7,8,9)に送り込まれて分析が行われる。
【0024】
すべての分析処理が完了したラックは第1バッファ1から供給収納ライン6を経由して、ラック収納部12に収納される。
【0025】
分析ユニット7は、第1バッファ1に接続され、第1バッファ1に収納されたラックを受け取ることができる。また、分析ユニット7にて分析終了したラックは、第1バッファ1に戻される。第1バッファ1と第2バッファ2の間は、双方向に駆動可能な搬送ライン10によりラックの搬送が可能となり、第2バッファ2に収納されているラックと第1バッファ1に収納されているラックとを入れ替え可能である。ここで、本実施形態では、搬送ライン10に、ラックの方向を変えることが可能な機構を保持することにより、第1バッファ1と第2バッファ2とで、同一の方向を向いたラックが収納されるようにしているが、方向を変える機構を保持していなくても良い。
【0026】
分析ユニット8は、第2バッファ2に接続され、第2バッファ2に収納されたラックを受け取ることができる。また、分析ユニット8にて分析終了したラックは、第2バッファ2に戻される。さらに、第2バッファ2に収納されたラックは、接続ライン11により分析ユニット9に供給することも可能である。分析ユニット9にて分析終了したラックは、接続ライン11を介して第2バッファ2に戻される。
【0027】
ここで、分析ユニットの数とバッファの数は任意でよく、本実施形態では、分析ユニットが3個とバッファが2個の場合を示している。例えば、第2バッファ2から2つの分析ユニットにラックの供給を可能した場合を本実施形態としているが、分析ユニット9を取り除き、第2バッファ2から1つの分析ユニット8のみにラックを供給するような形態であっても良い。
【0028】
第1バッファ1と第2バッファ2には、それぞれ20個のラック13を保持できるスロットが用意されている。しかし、ラックを保持し得るスロット数は1個以上のラックを保持できるものであればよく、バッファ毎に異なっていても良い。スロットとはラックを保持するためのスペースである。
【0029】
第1バッファ1は、一般検体あるいは緊急検体を分析ユニット7に送り込むための機能だけではなく、緊急検体の投入時にはサンプリング中またはサンプリング待機中のラックを一時的に退避させるためのスロットを設けておくこともできる。また、分析結果を保証するための精度管理試料や、分析系の校正を行う標準試料を含むラックを常駐させることによって、必要に応じて、あるいは周期的に稼動中の分析ユニットにこれらの検体の測定を行うことに使うこともできる。さらに、第1バッファ1から第2バッファ2へラックを送り込むための通路となるスロットを設けておくこともできる。
【0030】
第2バッファ2は、分析ユニット7と分析ユニット8との間に接続され、一般検体あるいは緊急検体を第1バッファ1から分析ユニット8,9に送り込むための機能だけではなく、緊急検体の投入時にはサンプリング中またはサンプリング待機中のラックを一時的に退避させるためのスロットを設けておくこともできる。また、分析結果を保証するための精度管理試料や、分析系の校正を行う標準試料を含むラックを常駐させることによって、必要に応じて、あるいは周期的に稼動中の分析ユニットにこれらの検体の測定を行うことに使うこともできる。さらに、分析ユニット8と分析ユニット9へのラックの分配通路となるスロットを設けておくこともできる。
【0031】
緊急性を要するラックを分配,待機させるための専用スロットを、第1バッファ1と第2バッファ2の両方に設けておくこともできる。緊急用の専用スロットの個数は、操作部14から設定することができる。本実施例では、オペレータがスロット数を操作部にて変更可能としたが、システム内の記憶媒体にあらかじめスロット数を記憶しておいても良いし、外部からなんらかの手段でスロット数を読み込んでも良い。
【0032】
第1バッファ1と第2バッファ2は、分析ユニット(7,8,9)でのサンプリングが完了したラックを保持し、これらの検体の再検査要求に備えるための再検バッファとしての機能もある。再検査要求とは、分析結果が通常の検査から得られる範囲から外れた場合に、検査の信頼性を確保するために分析をやり直すための要求であり、オペレータが個別の検体に対して指定するのではなく、システムが検査結果を自動的に判断して発行する要求である。
【0033】
本実施例では、分析のサンプリングが完了したラックは、当該ラックに要求されている検査項目の最後のサンプリングを行った分析ユニットに接続されているバッファにて再検査要求に備えることとするが、待機するバッファの決定方法は、いかなる方式であっても良いし、操作部14にて、待機するバッファの決定方法を複数の方式から選択することで、切り替えても良い。
【0034】
再検査要求に備えるためのラックを待機するバッファの所定のスロットが満杯になってしまった場合、他方のバッファに空きのスロットがあれば、搬送ライン10にて満杯となったバッファに待機しているラックを他方のバッファに移動し、満杯となったバッファに空きのスロットを準備する。このようにラックを移動させることで、第1バッファ1と第2バッファ2との両方の待機用スロットが、満杯となるまで、分析のためのラックの供給を可能とする。本実施例において、移動させるラックは、最後に該当バッファに収納され待機しているラックとしているが、移動させるラックの決定方法は、いかなる方式であっても良い。
【0035】
スロット数を指定するための画面例を図2に示す。
【0036】
図2のスロット数割り付け画面201にて、精度管理用のラックを常駐させるために使用する第1バッファ1のスロットの数を[精度管理用ラック常駐スロット数指定フィールド]202に指定することができる。本実施例においては、第1バッファ1に精度管理用の常駐スロットを割り付ける構成としているが、第2バッファ2に割り付けても良いし、第1バッファ1と第2バッファ2の両方に割り付けても良い。本実施例のように1つのバッファに割り付けた場合には、精度管理用ラックを通過するためのスロットを他方のバッファに割り付けることで、他方の分析ユニットに精度管理用ラックを供給する際に待ち時間を少なくすることが可能となる。該精度管理用ラックの通過用スロット数は、[精度管理用ラック通過スロット数指定フィールド]203にて指定することができる。
【0037】
図2のスロット数割り付け画面201にて、緊急検体用のラックを通過,待機させるためのスロットの数を[緊急検体用ラックスロット数指定フィールド]204に指定することができる。本実施例においては、第1バッファ1と第2バッファ2のスロットに対して、指定されたスロット数を同数割り付け、1つの緊急用ラックに対して、両方のバッファに1スロットずつ割り付ける。これにより、指定されたスロット数分の緊急ラックについては、緊急以外のラックによるスロットの混み具合に関係無く、各分析ユニットに搬送可能とする。本実施例の他には、第1バッファ1のみに指定されたスロット数の緊急検体用ラックスロットを割り付け、第2バッファ2は固定のスロット数を緊急ラック通過用スロットとして割り付ける構成とすることも可能である。
【0038】
スロット数割り付け画面201にて指定されたスロットとラック入れ替え、通過用のスロット以外は、再検査用の待機用のスロットとして使用可能となる。
【0039】
ここで、精度管理の測定要求が集中し、精度管理用ラックの通過用スロットが精度管理用ラックにて満杯となった場合、指定以外の一般のスロットに空きがあれば、空きのスロットを使用して精度管理用ラックを搬送する。
【0040】
緊急検体用ラックに対しても同様に、緊急の測定要求が集中し、緊急検体用ラックのスロットが緊急検体用ラックにて満杯となった場合、指定以外の一般のスロットに空きがあれば、空きのスロットを使用して緊急検体用ラックを搬送する。
【0041】
図3に分析ユニット7,8,9の構成の一例を示す。図3において分析ユニットは、試薬容器収納部である試薬ディスク301と試薬分注ピペッタ302を備えた試薬系と、試料分注ピペッタ303を備えたサンプル系と、反応容器304を含んだ反応ディスク305を備えた反応系と、多波長光度計306とアナログ/デジタル(A/D)コンバータ307を備えた測定系とから構成される。
【0042】
図3において、試料容器108の設置されたラック107は第1バッファ1もしくは第2バッファ2から供給され、搬送部102によって試料吸引位置308へと搬送される。試料分注ピペッタ303は、試料容器108内の試料を吸引し、反応容器304の中に所定量分注する。
【0043】
試料液が吐出分注された反応容器304は、恒温槽309に連結された反応ディスク
305の中を第一試薬添加位置まで移動される。この時、試薬ディスク301も回転動作によって現在の分析項目に該当する試薬容器310を昇降アームに保持された試薬分注ピペッタ302の下に位置するように移動する。そして第一試薬添加位置まで移動された反応容器304には、試薬分注ピペッタ302に吸引された所定の第一試薬が加えられる。第一試薬の添加後の反応容器304は攪拌装置311の位置まで移動され、最初の攪拌が行われる。
【0044】
内容物が攪拌された反応容器304に、光源から発生された光束が通過し、多波長光度計306に入射する。そして、反応容器304の内容物である反応液の吸光度が多波長光度計306により検知される。検知された吸光度信号は、アナログ/デジタル(A/D)コンバータ307及びインターフェイスを介してコンピュータ312に供給され、試料液中の測定対象の分析項目濃度に変換される。
【0045】
測定が終了した反応容器304は、洗浄機構の位置まで移動され、反応容器洗浄機構による洗浄位置にて内部の液が排出された後に、水で洗浄され、次の分析に供される。
【0046】
図4に本発明の自動分析システムにおける緊急ラック処理フロー図を示す。
【0047】
図4では、分析ユニット7と分析ユニット9の2つの分析ユニットで測定する緊急ラックAと、分析ユニット8で測定する緊急ラックDが順番に投入された場合の処理フローを示している。
【0048】
また、以下の実施例では、分析ユニット7にて分注中の一般ラックBと、分析ユニット9にて分注中の一般ラックCが既に分析ユニット内に存在している場合を説明している。
【0049】
図4にて、最初に緊急ラック(検体)投入口5に投入された緊急ラックAは、供給収納ライン6により、第1バッファ1に搬送される402。搬送するスロットは、図2で示したスロット割り当て画面で指定した緊急検体用スロット数により確保した緊急スロットの中で空きのスロットを緊急ラックA用として割り当てる402。ステップ403にて、緊急ラックAに対する測定依頼により、測定を行う分析ユニットを決定する。最初に測定を行う分析ユニット7内にて分注中の一般ラックBが存在するか否かを判断404し、一般ラックBが存在する場合には、緊急ラックAを割り込ませるために、一般ラックBを第1バッファ1の一般用待機スロットへ収納する405。その後、緊急ラックAを分析ユニット7に供給406し、緊急ラックAに搭載された検体のサンプリングを行う。この状態において、分析ユニット8で測定する緊急ラックDが緊急ラック(検体)投入口5に投入
414された場合、緊急ラックDは、第1バッファ1内に確保されている新たな緊急用スロットD1に搬入される415。その後、第1バッファ1にて待機している一般ラックBと分注中の緊急ラックAを含む全てのラックを追い越して、第2バッファ内に確保されている新たな緊急用スロットD2に搬送される417。このように、第1バッファ1の緊急用スロットD1は、分析ユニット7の分注待ちとなっているラックを追い越し、分析ユニット8へ搬送するための通路となる。
【0050】
一方、検体のサンプリングを終了した緊急ラックAは、第1バッファ1の緊急用スロットA1に回収される。その後、待機スロットの一般ラックBを再度、分析ユニット7へ搬入し、残っている測定項目のサンプリングを継続する408。
【0051】
分析ユニット9に測定の依頼項目が残っている緊急ラックAは、第2バッファ2内に確保された緊急スロットA2へ即座に搬送される409。その後、分析ユニット9にて分注中の一般ラックCが存在するか否かを判断410し、一般ラックCが存在する場合には、緊急ラックAを割り込ませるために、一般ラックCを第2バッファ2内の一般用待機スロットへ収納する411。その後、緊急スロットA2を通過することで、第2バッファ2で待機中の全ラックと分析ユニット8にて処理中の緊急ラックDを追い越し、緊急ラックAを分析ユニット9に供給する412。このように、第2バッファ2の緊急用スロットA2は、分析ユニット9へ搬送するための通路となることにより、少ない処理待ち時間で、緊急ラックAに搭載された検体のサンプリングを分析ユニット9にて処理し、緊急ラックDに搭載された検体のサンプリングについても分析ユニット8にて並行して処理することが可能となる。
【0052】
図5に第二実施例における自動分析システムのレイアウト図を示す。
【0053】
本第二実施例では、分析ユニット53と分析ユニット55との間に第1バッファ51を配置し、分析ユニット54と分析ユニット56との間に第2バッファ52を配置している。第二実施例の構成においても、図1の実施例同様、分析ユニット間にバッファを配置することで、図4に示す緊急ラックフローを実現できることは容易に推定可能であり説明するまでもない。このように、本第二実施例では、バッファ2個と分析ユニット4個とを配置している例を示しているが、分析ユニットの数とバッファの数は任意でよく、バッファと分析ユニットとの接続されている物理的な距離に関係無く、少なくとも1つのバッファが、分析ユニット間のラックを搬送する経路の間に配置されていれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明における自動分析システムのレイアウト図。
【図2】本発明における自動分析システムにおけるスロット割り当て画面。
【図3】本発明における自動分析システム中の分析ユニット概略構成図。
【図4】本発明における自動分析システムにおける緊急ラック処理フロー図。
【図5】第二実施例における自動分析システムのレイアウト図。
【符号の説明】
【0055】
1,51 第1バッファ
2,52 第2バッファ
3 一般検体投入部
4 ラックトレイ
5 緊急ラック投入口
6 供給収納ライン
7,8,9,53,54,55,56 分析ユニット
10 搬送ライン
11 接続ライン
12 ラック収納部
13,107 ラック
14 操作部
102 搬送部
108 試料容器
201 スロット数割り付け画面
202 精度管理用ラック常駐スロット数指定フィールド
203 精度管理用ラック通過スロット数指定フィールド
204 緊急検体用ラックスロット数指定フィールド
301 試薬ディスク
302 試薬分注ピペッタ
303 試料分注ピペッタ
304 反応容器
305 反応ディスク
306 多波長光度計
307 アナログ/デジタル(A/D)コンバータ
308 試料吸引位置
309 恒温槽
310 試薬容器
311 攪拌装置
312 コンピュータ
401−419 緊急ラック処理フローの各処理ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体サンプルを分析する複数個の分析ユニットと、
上記サンプルを有するラックを複数収納でき、かつ、少なくとも1つの前記分析ユニットに任意のラックを供給できる複数個のバッファを備え、
前記バッファの少なくとも1つを、少なくとも2つの前記分析ユニット間のラックを搬送する経路間に配置する構造であることを特徴とする自動分析システム。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析システムにおいて、
前記バッファ間でラックの移動が可能な搬送機構とを備えたことを特徴とする自動分析システム。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の自動分析システムにおいて、
前記バッファに収納されているラックを、当該バッファ以外の少なくとも1つの前記バッファを経由して、前記分析ユニットに供給できることを特徴とする自動分析システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の自動分析システムにおいて、
前記バッファが2つ以上の前記分析ユニットに任意のラックを供給できることを特徴とした自動分析システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の自動分析システムにおいて、
前記バッファ上で、緊急性を要するラックが専用に使用するスロット数を定義可能とし、定義したスロット数分を少なくとも2つの前記バッファに対して確保し、当該スロットに緊急以外のラックを搬入しないことを特徴とする自動分析システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の自動分析システムにおいて、
前記分析ユニットの間に配置された前記バッファ上で、精度管理用の試料を有するラックを通過させる専用のスロット数を定義可能とし、定義したスロット数分を前記バッファに対して確保し、当該スロットに精度管理用以外のラックを搬入しないことを特徴とする自動分析システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の自動分析システムにおいて、
少なくともひとつの前記バッファに規定のラック数を超えてラックを収納しようとした際、待機中のラックを前記搬送機構により、他の前記バッファに移動させることを特徴とする自動分析システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の自動分析システムにおいて、
再検査に備えるラックを前記バッファのいずれかに待機させる際、待機させる前記バッファ位置を少なくとも当該ラックに依頼された検査項目により決定する手段を有し、好ましくは、待機させる前記バッファ位置の当該決定手段の切り替えを可能としたことを特徴とする自動分析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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