説明

自動分析装置

【課題】
試薬保冷庫内で結露した水滴が試薬ボトル内に滴下するのを防止できる試薬保冷庫を備えた自動分析装置を提供することにある。
【解決手段】
自動分析装置の試薬保冷庫内において、全ての試薬取り出し口から冷気が吹き出す構造をしている。試薬取り出し口では、冷気と外気との間に仕切りの壁を有している。試薬取出し用ドアでは、吸湿材を周囲に設置するとともに余剰の結露水を廃液するドレン孔を有している。
【効果】
試薬保冷庫内での結露の発生防止と結露水の流入を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿等の生体サンプル中に含まれる各種の成分の定性・定量分析する自動分析装置に係り、特に分析のための試薬を入れた試薬ボトルを収納する試薬保冷庫を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の試薬保冷庫は、試薬ボトルを出し入れするための開放部分をもち、その開放部分には冷気が庫外に逃げ出すのを防止するため、カバーが設けられている。そのカバーは一般に保冷庫の上壁部として用いられ、カバーには試薬分注プローブが試薬ボトルから必要量の試薬を分取するための通過部として必要な比較的小さな切り欠きや孔(試薬吸入口)が設けられている。
【0003】
しかし、その孔から高温多湿な外気が試薬保冷庫内に進入し、カバー裏に接触して露点以下になった場合、カバー裏に結露して生じた水滴が試薬ボトル内に滴下する可能性があった。このような滴下により、試薬の薄まりによる分析精度の低下、あるいは試薬の劣化の恐れがあった。特許文献1では、カバー裏面を傾斜させることにより結露を一箇所に集めることにより、結露が試薬容器に混入するのを防ぐ技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平08−262030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、カバーの構造が複雑,高価であり、かつ、結果的に高温多湿の外気が庫内に入ってくることを想定しているため、試薬保冷庫内の温度分布に差異が生じてしまう。従って、試薬は結露の影響は受けにくいが、温度による影響を受けやすいため安定性に欠けるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、試薬保冷庫の上壁内面に結露した水滴が試薬ボトル内に滴下するのを防止できる試薬保冷庫を備えた自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0008】
空冷式の保冷庫を用い、試薬ボトル口に対応している試薬取り出し口から冷気が全て吹き出し状態になる保冷庫構造を備えた試薬保冷庫を具備した自動分析装置。
【0009】
具体的には、複数の試薬容器を載置する試薬収容部と、該試薬収容部に隣接し、冷却器からの冷気を導入する冷気導入室と、該冷却器に冷気を戻す冷気排出室を備えた冷気循環部と、該冷気導入室から前記試薬収容部に冷気を導入する冷気導入口と、前記試薬収容部から前記冷気排出室に冷気を排出する冷気排出口と、前記冷気排出室の前記冷却器の近傍に、外気を該冷気排出室に導入する外気導入口と、を備えた試薬保冷庫を具備する自動分析装置である。
【0010】
取り出し口の周囲を壁で覆い外気と接触して発生する結露水が庫内に流れ込まない構造とし、試薬取出し用ドアに吸湿材の取付け部を有し、余剰結露水を廃液するドレン孔を有する構造を備えても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試薬保冷庫内への結露水の浸入を防止することができる。それゆえ、安定した信頼性の高いデータが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明により、試薬保冷庫内に高温多湿の外気が侵入しないため、試薬ボトルへの結露の滴下を防げる。試薬取り出し口の外で発生する結露水は壁の存在により、試薬庫内に流れ込むことは無い。試薬ボトル交換時に開閉する試薬取出し用ドアに吸湿材を収容しておけば、これが結露水を吸収するため、試薬取出し用ドアを開閉する際に試薬ボトル内に滴下することはない。また、吸収しきれない余剰の結露水が発生した場合は、近くにあけたドレン孔から廃液される。従って、試薬の薄まりや劣化による影響を受けることなく安定したデータが得られる。
【0013】
以下、本発明の実施例を図により説明する。
【0014】
通常、試薬保冷庫内は5〜15度に保冷されている。そこへ高温多湿の外気が試薬保冷庫カバーの試薬取り出し口1から侵入して冷えたカバー裏に接触すると、その外気の温度が下がり露点以下になると結露して水滴が生じる。図1のような、空冷式保冷庫の密閉された冷気循環では、試薬保冷庫カバー上に設けられた数個の試薬取り出し口1においては、保冷庫内の冷気循環が内周から外周に向けて流れているため、気圧差が生じ内周側と外周側で冷気吹出し側と外気導入側に分かれてしまう。図4に本発明の上面図を示す。上面図から見ると保冷庫は円形をしている。保冷庫は試薬容器を収容する試薬収容部とその下に設けられた内周と外周を隔絶する仕切り壁8を備えた冷気循環部を備える。冷気循環部では冷却器のIN側から導入した冷気が中央のリング外周部の角穴9と中段の仕切り板
10の丸穴11を通過し、仕切り板10の外周側の丸穴12を通過し最下段の外周側から冷気循環のOUT側へ引き込まれる構造になっている。試薬取り出し口1では保冷庫の中央付近では、吹き出しが強く、外周側では、OUT側の引き込みが強く吸込み状態になる。しかし、図2のような、空冷式保冷庫の冷気循環のOUT側の近傍、好ましくは試薬取り出し口1との間に外気導入孔2を設けることで、OUT側の引き込みが弱くなり、試薬取り出し口1での気圧差を軽減でき、冷気循環のIN側から試薬ボトル収納庫3に入ってきた冷気は試薬取り出し口1では、全ては吹き出し状態にできるため、外気侵入により生じる試薬ボトル収納庫3の結露を防止できる。
【0015】
試薬取り出し口1からの吹き出しを全吹き出しにする方法としては、保冷庫の仕切りを円の中央に設置し、OUT側をIN側の180度反対側に配置することでも実現できるが、装置のコンパクト化に影響するためあまり現実的ではない。
【0016】
試薬保冷庫カバーの試薬取り出し口1の上面では、外気と接触するために結露が生じる。その対応策として、図3に示す壁4を試薬取り出し口1の周囲に設け、冷気が壁を越えた所で外気と接触し、壁4の外側で結露させて、試薬取り出し口1からの流入を防止した。また、試薬ボトル交換時に試薬取出し用ドア5を開閉する際の結露水の滴下を防止するため、試薬取出し用ドア5の周囲の吸湿材6を設置し、且つ、吸湿材6の自然蒸発の範囲を超えた結露水に関しては、強制的に廃液するためのドレン孔7を設け保冷庫内全体での結露水の発生を防止できる。
【0017】
従来の試薬保冷庫を用いた場合は、結露水による試薬の薄まりや劣化の影響により、測定値が低下し正しいデータを得ることができない。それに対し、本発明の試薬保冷庫を用いた場合にはそのような影響を受けないため、常に安定したデータを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による試薬保冷庫の説明図。
【図2】本発明による実施例の説明図。
【図3】本発明による試薬取り出し口及び試薬取出し用ドアの説明図。
【図4】本発明による試薬保冷庫の上面図。
【符号の説明】
【0019】
1…試薬取り出し口、2…外気導入孔、3…試薬ボトル収納庫、4…壁、5…試薬取出し用ドア、6…吸湿材、7…ドレン孔、8…仕切り壁、9…中央のリング外周部の角穴、10…中段の仕切り板、11…丸穴、12…外周側の丸穴。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬容器を載置する試薬収容部と、
該試薬収容部に隣接し、冷却器からの冷気を導入する冷気導入室と、該冷却器に冷気を戻す冷気排出室を備えた冷気循環部と、
該冷気導入室から前記試薬収容部に冷気を導入する冷気導入口と、
前記試薬収容部から前記冷気排出室に冷気を排出する冷気排出口と、
前記冷気排出室の前記冷却器の近傍に、外気を該冷気排出室に導入する外気導入口と、
を備えた試薬保冷庫を具備することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記試薬収容部の上蓋部に設けられた試薬取り出し口の周囲を囲む壁部を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動分析装置において、
前記試薬収容部の上蓋の試薬取出し用ドアに吸湿材を有し、更に余剰結露水を廃液するドレン孔を有することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−84366(P2006−84366A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270659(P2004−270659)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【出願人】(000233550)株式会社日立サイエンスシステムズ (112)
【Fターム(参考)】