説明

自動分析装置

【課題】
試薬容器の穴明け用のスペースを不要とし、試薬分注ノズルと明けた穴の位置ズレが発生しない信頼性の高い、安価でかつ小形の自動分析装置を提供する。
【解決手段】
試薬ピペッティング機構1のノズル7に試薬容器への穴明け機能であるスティックツール6を装着、スティックツール自動脱着用のストリッパー2を設けることにより実現できる。
【効果】
試薬ピペッティング機構1のノズル7に試薬容器穴明け用のスティックツール6を装着することにより、試薬容器設置テーブル4上で試薬容器への穴明けが可能となる。従来の穴明け用のスペースが不要になり位置ズレの発生も無くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿等の生体試料中の成分の定性・定量分析を行う臨床検査用自動分析装置に係り、特に使用開始時に容器開口部のシールを破断して使用する試薬容器を使用する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置で使用される試薬容器は、大きく分けて、使用開始時に操作者が蓋を開けて装置にセットするタイプと、容器開口部にプラスチック等からなるシールが貼付されており操作者が該容器の使用前に該シールを破断して使用を開始する試薬蒸発劣化防止機能付きのタイプの2つのタイプがある。後者のタイプの試薬容器のシールは使用者が専用のカッターやパンチ等を用いて開口部を設けた後、装置にセットする方法が一般的であるが、試薬容器を装置にセットすると装置側で自動的にシールを破断する方法についても種々提案されている。下記特許文献1には試薬分注ノズルの先端に装着する使い捨てチップの先端をシール破断可能な形状にし、該チップでシールを破断する方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−183484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
専用のカッターやパンチ等を用いてシールを破断する場合は、シールの破断部分を試薬分注プローブが通るように破断位置を調整する必要がある。破断する大きさを大きくすると位置の調整は大まかで良くなるが、シールのもつ試薬蒸発劣化防止機能が低下する。
【0005】
一方、特開平11−183484号公報記載の方法では試薬分注プローブの先端とシール破断用のディスポーザブルチップの先端が一致するので、穴あけ位置の調整は不要となる。しかし、ディスポーザブルチップはプラスチック製であり、試薬容器のシール部材もプラスチック製であることからシールの破断は容易ではないと推測される。また、仮にシールが破断できたとしてもチップ先端部が変形して、試薬分注精度の低下等が懸念される。また穴あけを容易とするためチップを金属製にした場合は、コスト上昇の懸念がある。
【0006】
本発明の目的は、シールを確実に破断できるとともに、シール破断位置と試薬分注位置の調整が不要なシール破断/試薬分注機構を備えた自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0008】
液状試薬を収容する試薬容器であって、試薬を試薬容器の外部に取り出す開口部が試薬を外部雰囲気から遮断するためのシール部材で塞がれている試薬容器と、試薬容器中の液状試薬を開口部を通して外部に分注するための試薬分注プローブと、試料と試薬分注プローブで分注された試薬とを混合する反応容器と、試料と試薬の反応を測定するための測定手段とを備えた自動分析装置において、試薬分注プローブのノズル部に試薬容器のシール部材を破断するためのシール破断ツールを装着可能な構成とし、かつシール破断ツールは固定された収納部に収納され、更に、シール部材を破断する前にシール破断ツールを収納部から取り出して試薬分注プローブに装着し、シール破断が終了した後、収納部にシール破断ツールを戻す機構を備えた自動分析装置。
【0009】
更に試薬容器が複数の開口部を備え、その開口部,収納部,反応容器への試薬分注位置が直線上に配置され、試薬分注プローブがその直線上を移動するような試薬分注プローブ移動機構を備えても良い。
【0010】
シール部材は試薬と外部雰囲気が遮断されるようなものであれば何でも良いが、紙,プラスチック,金属箔のようなものが一般的である。試薬容器が複数の開口部を備えるとは同一試薬について複数の開口部があっても良いが、一般的には複数の試薬容器が一体成型されて一つの試薬ボトル形状を成しており、それぞれの試薬容器がそれぞれ開口部を備えていることを意味する。シール破断ツールは繰り返し使用されるものであるため、繰り返しの使用でもシール破断性能が低下しないよう、少なくともシールとの接触部は硬度の大きいもの、金属,セラミックス等で成型されていることが好ましい。またシールとの接触部はシール破断に適するよう先端が尖った構造であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試薬蒸発劣化防止機能が付いた試薬容器を使用する自動分析装置において、試薬ピペッティング機構1の試薬を分注するノズル7に試薬容器穴明け用のスティックツール6を被せるように装着することにより、試薬容器設置テーブル4上で試薬容器への穴明けが可能となり、従来の穴明け用のスペースが不要になり、明けた穴の位置とノズル7の位置ズレが発生しない信頼性の高い、安価でかつ小形の自動分析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例を図1〜図5により説明する。
【0013】
図1から図3に試薬ピペッティング機構1,試薬容器3,ストリッパー2の構成の概要を示す。各構成は直線上に配置されており、試薬ピペッティング機構1は、試薬容器設置テーブル4に設置される試薬容器3の中から試薬を吸引し、反応テーブル5の位置まで搬送,測定する検体の入った反応容器9の中に試薬を吐出する。
【0014】
図4はスティックツール6の取付け、図5は取外しのサイクルを示す。このスティックツール6を使用する時は、分析する前の段階であり、ユーザーが試薬容器3を試薬容器設置テーブル4に設置した時である。通常、スティックツール6はストリッパー2の中に設置されており、2枚のバネ8により位置が固定されている。ユーザーは分析を始める前に試薬容器3を決められた投入口から1セットずつ順番に試薬容器設置テーブル4に設置する。試薬容器3は識別する手段を有しており、設置する前に識別情報を読ませる事により装置に登録される。試薬容器3の設置が完了すると、試薬ピペッティング機構1はスタンバイ位置からストリッパー2の位置へ移動し、図4に示すようにノズル7にスティックツール6を取付ける。スティックツール6は中空になっていてその中にノズル7が挿入される。ノズル7がスティックツール6に挿入され、スティックツール6のレバー10にノズル7のボディ11が接触する。ボディ11のレバー10が接触する部分はテーパになっており、レバー10はテーパに沿って開く。ボディ11にはレバー10が引っかかる溝がついており、バネの力によってレバー10はボディ11の溝に引っかかる。これによりスティックツール6は、ノズル7に装着される。
【0015】
次にスティックツール6を取付けた試薬ピペッティング機構1は試薬容器設置テーブル4のピペッティング位置に移動する。次に試薬ピペッティング機構1は上下に動作して試薬容器に順番に穴を明けていく。一つの試薬容器3の穴明けが完了すると、試薬容器設置テーブル4が移動し次の穴明け作業に入る。
【0016】
全ての穴明け作業が終了すると試薬ピペッティング機構1は、ストリッパー2の位置へ移動し、図5に示す様にスティックツール6を取外す。ストリッパー2にはレバー10を逃げる穴が空いており、試薬ピペッティング機構1が横方向に移動しただけではスティックツール6のレバー10はノズル7のボディ11より解除されない。上方へ移動するとレバー10は穴の上端面に接触し開き始める。完全に開くとレバーはボディ11より解除され、スティックツール6はボディ11から取外される。外れたスティックツール6はバネ8によりガイドされながら下方へ移動し、元の設置場所に戻る。この時、スティックツール6の位置ずれが起こらないように、ストリッパー2にはレバーガイドが設けてある。
【0017】
スティックツール6が外れた試薬ピペッティング機構1はスタンバイ位置に移動し次の動作まで待機する。
【0018】
請求項8に対する実施例を図6に示す。スティックツール6の外側に摺動可能なガイド筒12を付加した。このガイド筒はバネ13で下方に押し付けられており、クッション性を持っている。また、試薬側には、プラスチックでできたテーパ状の凹み部14がついている。
【0019】
図6(A)はツールが下降している途中を示している。図6(B)は、ツールがさらに下降してガイド筒12とテーパ状の凹み部14は契合している。また、クッションが働きバネが縮んでいて、尖った針が穴あけを完了させている。このような、テーパ状の凹み部14を有する試薬容器の場合は、針と試薬容器双方の位置決めが大変重要である。もし、ガイド筒が無い場合は、位置ずれがあると、尖った針が鋭いため、穴が凹み部中央の最も凹んだ部分ではなくテーパ斜面部にあいてしまう。テーパ斜面部に穴があいてしまうと試薬を分注する際にプローブが僅かでもずれるとプローブがテーパ斜面をこすりながら下降していくが、中央の最も凹んだ部分(穴が開いていない)でひっかかりプローブが曲がってしまうことになる。しかし図6のようにガイド筒を追加することにより多少位置がずれても双方の位置決め可能なので凹み部中央のあけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による試薬容器穴明け機能を有する生化学自動分析装置の機構系の配置概略図。
【図2】図1の装置の試薬ピペッティング機構の部品構成図。
【図3】図1の装置のスティックツール,ストリッパーの位置及び部品構成図。
【図4】図1の装置のスティックツールの取付け時の動作説明図。
【図5】図1の装置のスティックツールの取外し時の動作説明図。
【図6】外側に摺動可能なガイド筒12を付加したスティックツールを示す図。
【符号の説明】
【0021】
1…試薬ピペッティング機構、2…ストリッパー、3…試薬容器、4…試薬容器設置テーブル、5…反応テーブル、6…スティックツール、7…ノズル、8…バネ、9…反応容器、10…レバー、11…ボディ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状試薬を収容する試薬容器であって、該試薬を該試薬容器の外部に取り出す開口部が該試薬を外部雰囲気から遮断するためのシール部材で塞がれている試薬容器と、
前記試薬容器中の液状試薬を前記開口部を通して外部に分注するための試薬分注プローブと、
試料と前記試薬分注プローブで分注された試薬とを混合する反応容器と、
前記試料と試薬の反応を測定するための測定手段と、
を備えた自動分析装置において、
前記試薬分注プローブのノズル部に前記試薬容器のシール部材を破断するためのシール破断ツールを装着可能な構成とし、
かつ該シール破断ツールは固定された収納部に収納され、
更に、前記シール部材を破断する前に前記シール破断ツールを前記収納部から取り出して前記試薬分注プローブに装着し、
前記シール破断が終了した後、前記収納部に前記シール破断ツールを戻す機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記シール破断ツールを装着する場合は、前記試薬分注プローブのノズル部を前記収納部に収納された該シール破断ツールの上方から挿入することにより該ノズル部に装着し、
前記シール破断ツールをはずす場合は、前記試薬分注プローブを前記収納部に挿入することによりはずす機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動分析装置において、
前記シール破断ツールは、前記試薬分注プローブからの脱落を防止するための、開閉可能なレバーを備えていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記反応容器はディスクの円周上に配置され、かつ該ディスクは回転動作可能であり、
前記シール破断ツールが装着された前記試薬分注プローブを試薬分注位置に移動させ、該試薬分注プローブを降下して初めの試薬容器のシール部材を破断した後、前記ディスクを回転させて次の試薬容器のシール部材を破断する、動作を繰り返す機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
液状試薬を収容する試薬容器であって、該試薬を該試薬容器の外部に取り出す複数の開口部を備え、かつ該開口部に該試薬を外部雰囲気から遮断するためのシール部材を有する試薬容器と、
前記試薬容器中の液状試薬を前記開口部を通して外部に分注するための試薬分注プローブと、
試料と前記試薬分注プローブで分注された試薬とを混合する反応容器と、
前記試料と試薬の反応を測定するための測定手段と、
を備えた自動分析装置において、
前記試薬分注プローブのノズル部に前記試薬容器のシール部材を破断するためのシール破断ツールを装着可能な構成とし、
かつ該シール破断ツールは固定された収納部に収納され、
更に、前記シール部材を破断する前に前記シール破断ツールを前記収納部から取り出して前記試薬分注プローブに装着し、
前記シール破断が終了した後、前記収納部に前記シール破断ツールを戻す機構を備え、
更に前記試薬容器の複数の開口部,前記収納部,前記反応容器への試薬分注位置は直線上に配置され、前記試薬分注プローブが該直線上を移動するような試薬分注プローブ移動機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項5記載の自動分析装置において、
前記シール破断ツールを装着する場合は、前記試薬分注プローブのノズル部を前記収納部に収納された該シール破断ツールの上方から挿入することにより該ノズル部に装着し、
前記シール破断ツールをはずす場合は、前記試薬分注プローブを前記収納部に挿入することによりはずす機構を備え、
かつ該機構は前記試薬分注プローブの直線上での移動及び上下方向への移動を組み合わせることにより前記シール破断ツールと前記試薬分注プローブを脱着させるものであることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記シール破断ツールを複数備え、シール部を破断する試薬容器の種類により使い分ける機構を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記シール破断ツールに摺動可能なガイド部を有し、また試薬容器にもツールをガイドする部分を有し、前記シール破断時に両方のガイド部が契合されて位置決めされることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−139800(P2007−139800A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50910(P2007−50910)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【分割の表示】特願2002−291800(P2002−291800)の分割
【原出願日】平成14年10月4日(2002.10.4)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【出願人】(000233550)株式会社日立ハイテクサイエンスシステムズ (112)
【Fターム(参考)】