説明

自動分析装置

【課題】ラックの形状が異なっても検体の吸引に使用することが可能な自動分析装置を提供すること。
【解決手段】検体容器の配置情報を含むラック3の形状情報を取得する形状情報取得装置21と、ラックを搬送し、検体容器3cを検体の吸引位置に位置決めする位置決め装置と、ラックの形状情報をもとに位置決め装置によるラックの形状に応じたラックの搬送を制御する制御部とを備えた自動分析装置。更に、自動分析装置は、ラックに保持された検体容器の有無を、検体容器の搬送経路上の位置を調整基準位置として検出する容器検出装置23を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、検体と試薬とを反応させ、反応した反応液の光学的特性を測定することによって前記検体を分析している。このとき、自動分析装置で使用する分注装置は、検体を収容した検体容器を所定形状のラックに保持させた状態で検体をハンドリングしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−85962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動分析装置は、検体を分析する際、検体を収容した検体容器を所定形状のラックに保持させている。この場合、ラックは、メーカーごとに形状が異なり、分注装置による検体の分注作用に支障があることから異なるメーカー相互間での互換使用ができなかった。従って、メーカーの異なる複数の自動分析装置に亘って検体を分析する場合には、その都度、検体容器をメーカーごとのラックに移し替える必要があり、手間がかかるうえ、手作業で行う場合にはヒューマンエラーが発生する虞があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ラックの形状が異なっても検体の吸引に使用することが可能な自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、搬送経路に沿って搬送されるラックに保持された検体容器から検体を吸引して反応容器へ分注し、当該反応容器内で反応した試薬と前記検体との反応液の光学的特性を測定することにより前記検体を分析する自動分析装置であって、前記検体容器の配置情報を含む前記ラックの形状情報を取得する形状情報取得手段と、前記ラックを搬送し、前記検体容器を前記検体の吸引位置に位置決めする位置決め手段と、前記ラックの形状情報をもとに前記位置決め手段による前記ラックの形状に応じた当該ラックの搬送を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記ラックに保持された前記検体容器の有無を、当該検体容器の前記搬送経路上の位置を調整基準位置として検出する容器検出手段を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記形状情報取得手段は、前記ラックに貼付され、予め前記ラックの形状情報が記録された情報記録媒体から前記ラックの形状情報を読み取ることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記容器検出手段は、前記ラックの形状情報をもとに前記ラックに保持された前記検体容器の有無を光又は超音波によって検出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記位置決め手段は、少なくとも前記ラックを把持する把持手段と、前記把持手段を前記ラックの搬送方向及び搬送方向に直交する方向へ移動させるX−Yステージとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動分析装置は、ラックの形状情報をもとに位置決め手段によるラックの形状に応じた搬送を制御手段が制御するので、ラックの形状が異なっても検体の吸引に使用することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の自動分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の自動分析装置の概略構成図である。図2は、ラックの一例とラック情報を示すラックの斜視図である。図3は、他のラックとラック情報を示すラックの斜視図である。図4は、更に他のラックとラック情報を示すラックの斜視図である。
【0013】
自動分析装置1は、図1に示すように、ラック搬送装置2、反応テーブル5、第一試薬保冷庫8及び第二試薬保冷庫9、第一撹拌装置11、第二撹拌装置12、光学測定系14、制御部16及び位置調整機構20を備えている。また、自動分析装置1は、ラック搬送装置2と反応テーブル5との間に検体分注装置4が設けられ、反応テーブル5と第一試薬保冷庫8との間に第一試薬分注装置6が、反応テーブル5と第二試薬保冷庫9との間に第二試薬分注装置7が、それぞれ設けられている。
【0014】
ラック搬送装置2は、図1に示すように、搬入レーン2a、搬送レーン2b、回収レーン2c及び再検レーン2dを有しており、搬入レーン2a右端のラックセット部にセットされる種々の形状のラックを搬送する。ラック搬送装置2は、搬送レーン2bに沿って後述する位置調整機構20が配置されている(図5参照)。
【0015】
搬入レーン2aは、キャタピラによって右端のラックセット部にセットされる保持凹部3aの数が異なる種々の形状のラック3(図5参照)を搬送レーン2bへ搬入する。搬送レーン2bは、搬入レーン2aに対して直交配置され、搬入レーン2aから送り込まれるラック3をベルトコンベアによって回収レーン2cへ搬送する。このとき、ラック3は、搬送レーン2bを矢印で示す経路に沿って回収レーン2cへ搬送される間に、ラック情報,検体情報及び保持した検体容器3cの位置が読み取られると共に、検体分注装置4のプローブ4aによって各検体容器3cに保持された検体が反応テーブル5のキュベットCに分注される。
【0016】
回収レーン2cは、搬送レーン2bから送り込まれるラック3のうち、再検用のラック3をキャタピラによって搬送し、再検レーン2dへ送り込む。再検レーン2dは、回収レーン2cから送り込まれたラック3をベルトコンベアによって搬入レーン2aへ搬送する。
【0017】
ラック3は、図2に示すように、複数の保持凹部3aが長手方向に沿って所定ピッチで配列され、長手方向に沿った各側壁3bには検体容器3cの配置情報を含むラック3の形状及び識別番号等に関するラック情報を記録したバーコードラベルやRFID等の情報記録媒体Mが予め貼付されている。保持凹部3aには、検体容器3c(図1,図5参照)が保持される。
【0018】
ここで、ラック3は、前後を入れ替えてラック搬送装置2にセットしてもラック情報を読み取ることが出来るように、2つの側壁3bのそれぞれに情報記録媒体Mが貼付されている。情報記録媒体Mに記録するラック情報としては、例えば、各保持凹部3aの中心位置と直径、複数の保持凹部3aの数の他、図2に示す長さL,幅W,高さH,隣り合う保持凹部3a間のピッチP及び長手方向における前後の端面から最初の保持凹部3aの中心までの距離である端面距離Le等がある。一方、検体容器3cは、収容した検体を識別するための個人ID,性別,年齢,検体番号等の検体情報を記録したバーコードラベルやRFID等の情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。
【0019】
一方、ラック搬送装置2が搬送するラックは、ラック3に対して、保持凹部3aの数Nが異なるものや幅Wが異なるラックの他、例えば、図3に示すラック3Aや図4に示すラック3B等、種々の形状のものがある。
【0020】
ラック3Aは、長手方向に沿って1列5個の保持凹部3aを2列形成することでラック3と同数(N=10)の検体容器3cを保持している。このとき、情報記録媒体Mに記録するラック情報には、前記ラック情報に加えて、列ピッチPL及び側壁3bから保持凹部3aの中心までの距離である側壁距離Ls等がある。
【0021】
ラック3Bは、中央に検体容器3cを保持する保持凹部3aが1つ形成された円筒状のラックであり、情報記録媒体Mには、外直径Dや保持凹部3aの内直径Diがラック情報として記録される。
【0022】
反応テーブル5は、図1に示すように、保温部材5aとキュベットホイール5bとを有している。保温部材5aは、キュベットホイール5bの半径方向内側及び外側に配置され、光学測定系14と対応する位置に測光用の開口5cが形成されている。キュベットホイール5bは、複数のキュベットCを体温程度の温度に保持して回転し、例えば、一周期で時計方向に(1周−1キュベット)/4分回転し、四周期では時計方向に1キュベット分回転する。
【0023】
第一試薬保冷庫8及び第二試薬保冷庫9は、構成が同じなので第一試薬保冷庫8について説明し、第二試薬保冷庫9については対応する構成部分に対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0024】
第一試薬保冷庫8は、図1に示すように、第一試薬を保持した複数の試薬ボトル8aが配置され、第一試薬分注装置6のプローブ6aによって所定の試薬がキュベットCに分注される。複数の試薬ボトル8aは、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、収容した試薬のロットや有効期限等に関する試薬情報を記録したバーコードラベルやRFID等の情報記録媒体(図示せず)が外面に貼付されている。第一試薬が分注されたキュベットCは、第一撹拌装置11によって検体と第一試薬とが撹拌される。
【0025】
また、第一試薬保冷庫8の外周には、各試薬ボトル8aに貼付された前記情報記録媒体から情報を読み取り、制御部16へ出力する試薬情報読取装置8cが設置されている。なお、試薬情報読取装置9cは、第二試薬保冷庫9内の各試薬ボトル9aに貼付された前記情報記録媒体から情報を読み取る。
【0026】
第一撹拌装置11及び第二撹拌装置12は、キュベットC分注された検体や試薬を撹拌棒11a,11bや撹拌棒12aによって撹拌し、検体と試薬を反応させる。ここで、検体分注装置4及び試薬分注装置5,6の各プローブ4a,5a,6a及び撹拌棒11a,11bや撹拌棒12aは、分注や撹拌の終了後、洗浄水タンクから供給される洗浄水によって流水洗浄される。
【0027】
光学測定系14は、図1に示すように、光源14aと測光センサ14bとを有している。光源14aは、試薬と検体とが反応したキュベットC内の反応液を分析するための分析光を出射する。測光センサ14bは、光源14aが出射し、開口5cを通ってキュベットC内の反応液を透過した光束を測光する。このようにして反応液が測光されたキュベットCは、洗浄・乾燥ユニット15において内部の反応液が吸引されて廃棄されると共に、洗浄液タンクから供給される洗剤や洗浄水によって内部が洗浄された後、加圧空気を吹き込んで乾燥される。そして、キュベットCは、再び検体分注装置4のプローブ4aによって新たな検体が分注され、分析に使用される。
【0028】
制御部16は、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用され、自動分析装置1の各部と接続されている。制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体から読み取った試薬情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を規制するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。特に、制御部16は、形状情報取得装置21が取得したラック3の形状情報をもとに位置決め装置24によるラック3の搬送を制御し、検体の吸引位置へ検体容器3cを位置決めする。
【0029】
入力部17は、制御部16へ検体数や検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部18は、分析結果を含む分析内容や撹拌の良否を含む警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0030】
分析部19は、測光センサ14bが測光した光量の信号に基づいて求められるキュベットC内の検体と試薬の反応液の吸光度(光学的特性)から検体の成分濃度等を分析し、記憶しておく。
【0031】
位置調整機構20は、図5〜図7に示すように、形状情報取得装置21、検体情報読取装置22、容器検出装置23及び位置決め装置24を備えている。位置調整機構20は、検体容器3aを保持するラック3の形状情報又はラック3の形状もとにラック3を移動させ、検体分注装置4のプローブ4aによる検体の吸引位置へ検体容器3cを位置決めする。
【0032】
形状情報取得装置21は、搬入レーン2a上を搬送されてくるラック3に貼付された情報記録媒体Mから検体容器3cの配置情報を含むラック3の形状情報を取得する。形状情報取得装置21は、図5に示すように、搬入レーン2aと搬送レーン2bとの交差部近傍に配置されている。形状情報取得装置21は、読み取ったラック3の形状情報を制御部16へ出力するが、制御部16からの制御信号によっても出力する。
【0033】
検体情報読取装置22は、ラック3に保持された複数の検体容器3cのそれぞれに貼付された前記情報記録媒体から検体情報を光学的に読み取る検体情報読取手段であり、図5に示すように、形状情報取得装置21と容器検出装置23との間に配置されている。検体情報読取装置22は、取得した検体情報を制御部16へ出力する他、制御部16からの制御信号によっても出力する。
【0034】
容器検出装置23は、形状情報取得装置21が取得したラック3の形状情報をもとにラック3に保持された検体容器3cの有無を、その検体容器3cの位置を調整基準位置として光によって検出する容器検出手段であり、図5に示すように、装置本体23aとプリズム23bを有している。搬送レーン2bは、制御部16の制御の下に、容器検出装置23によってラック3の有無を検出する調整基準位置にラック3が到達すると一度停止する。容器検出装置23は、このときに検体容器3cの位置を調整基準位置として検出すると共に、検出した調整基準位置をもとに位置決め装置24がラック3を検体の吸引位置へ移動させる際に残る他の検体容器3cの有無を光学的に検出する。装置本体23aは、検体容器3cの検出光束を出射し、プリズム23bで屈折させて検体容器3cに照射する。このとき、容器検出装置23は、形状情報取得装置21が読み取ったラック3,3A,3B等の形状情報をもとに検体容器3cの有無を適切に検出することができるように、搬送レーン2bの搬送方向と直交する方向(X方向)へ移動する移動手段を備えている。容器検出装置23は、取得した検体容器3cの有無情報を制御部16へ出力する他、制御部16からの制御信号によっても出力する。
【0035】
このとき、検体を保持した検体容器3cが存在すると、検体表面から検出光が反射し、空容器や検体容器3cが存在しない場合には検出光の反射がないか殆どない。このため、容器検出装置23は、反射光の光量によって検体容器3cの有無を、検体情報読取装置22が読み取ったラック3の形状情報をもとに保持凹部3aの位置と対応付けて検出することができる。
【0036】
ここで、容器検出装置23のプリズム23bから検体容器3cに照射される検出光の水平面内におけるY方向の位置及びラック3等の形状情報をもとに前記移動手段によってX方向へ移動する際の移動速度に基づくX方向の位置は、予め制御部16に入力されている。このため、制御部16は、検出光の位置、従って検出した検体容器3cの位置を調整基準位置とし、容器検出装置23が検出した検体容器3cの有無情報及び検体情報読取装置22が読み取ったラック3の形状情報から決まる複数の保持凹部3aの水平面内における2次元方向の配置をもとに、検体容器3cと検体の吸引位置との2次元方向(X方向,Y方向)の調整量を演算し、この調整量が解消されるように位置決め装置24によるラック3の搬送を制御する。
【0037】
位置決め装置24は、形状情報取得装置21が取得したラック3の形状情報をもとに、制御部16による制御の下に、ラック3を搬送し、検体分注装置4のプローブ4aによる検体の吸引位置へ検体容器3cを位置決めする位置決め手段である。位置決め装置24は、図6に示すように、検体情報読取装置22と容器検出装置23との間に配置されている。位置決め装置24は、ラック3が検体情報読取装置22の位置を通過後、動作を開始し、ラック3を把持し、搬送による位置決め動作を開始する。
【0038】
位置決め装置24は、図7に示すように、X−Yステージ24aの上に把持装置25と押圧装置26が設けられている。把持装置25は、搬送レーン2b上のラック3を長手方向両側から把持する。押圧装置26は、ラック3を幅方向から押圧して把持装置25の1組のチャックアーム25eとの間に把持する押圧装置26が設けられている。ここで、X−Yステージ24aは、搬送レーン2bと並行するY方向及び搬送レーン2bに直交するX方向に水平面内を移動し、図7には、これらの方向及びX方向とY方向に直交するZ方向が矢印で示されている。
【0039】
把持装置25は、図7及び図8に示すように、駆動モータ25a、ボールねじ25c及び1組のチャックアーム25eを有している。ボールねじ25cは、先端側が右ねじ、駆動モータ25aが位置する基部側が左ねじに加工されておりフランジ25bを介して駆動モータ25aと連結されている。1組のチャックアーム25eは、それぞれナット25dを介して一方がボールねじ25cの右ねじに、他方がボールねじ25cの左ねじに取り付けられ、ボールねじ25cの正逆回転によって開閉し、搬送レーン2b上のラック3を長手方向両側から把持する。ここで、チャックアーム25eは、ラック3を把持する部分にゴム等の摩擦係数の大きい滑り防止材を貼付或いは塗布しておくと、把持したラック3の落下を防止することができる。
【0040】
押圧装置26は、図7及び図9に示すように、流体圧シリンダ26aと押圧板26cを有している。流体圧シリンダ26aは、油圧や空気圧等の流体圧によって出没されるロッド26bの先端に押圧板26cが取り付けられている。押圧装置26は、把持装置25によるラック3の把持動作と同期して作動し、ラック3を幅方向から押圧して把持装置25の1組のチャックアーム25eとの間に把持する。
【0041】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部16の制御の下に作動し、キュベットホイール5bによって周方向に沿って搬送されてくる複数のキュベットCのそれぞれに第一試薬分注装置6によって試薬容器8aから第一試薬が順次分注された後、検体分注装置4によってラック3に保持された各検体容器3cから検体が順次分注される。検体が分注されたキュベットCには、第二試薬分注装置7が試薬容器9aから第二試薬が順次分注される。
【0042】
この間、試薬や検体が分注されたキュベットCは、キュベットホイール5bが停止する都度、第一撹拌装置11や第二撹拌装置12によって試薬や検体が撹拌され、キュベットホイール5bが再び回転したときに光学測定系14を通過する。このとき、キュベットC内の試薬や試薬と検体とが反応した反応液は、光学測定系14において光学的特性が測定され、光学測定系14から入力される光信号をもとに分析部19によって成分濃度等が分析される。そして、反応液の測定が終了したキュベットCは、洗浄・乾燥ユニット15に移送されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0043】
このとき、自動分析装置1は、位置調整機構20を備えており、以下に説明する手順の下にラック3の形状情報及びラック3に保持された検体容器3cの位置情報をもとにラック3を搬送し、検体分注装置4のプローブ4aによる検体の吸引位置へ検体容器3cを位置決めする。このとき、ラック3の形状情報の取得から検体の吸引を終えてラック3を回収するまでの1つのラック3に関する制御フローを、図10に示すフローチャートを使用して説明する。
【0044】
先ず、制御部16は、搬入レーン2a上に存在するラック3の形状情報を取得する(ステップS100)。ラック3の形状情報は、形状情報取得装置21から取得する。次に、制御部16は、検体情報を取得する(ステップS102)。検体情報は、検体情報読取装置22から取得する。検体情報読取装置22による検体情報の取得が終了すると、位置決め動作の準備として位置決め装置24によってラック3が把持される。
【0045】
次いで、制御部16は、検体容器3cの有無情報を容器検出装置23から取得する(ステップS104)。その後、制御部16は、検体容器3cの位置を調整基準位置とし、調整基準位置と検体の吸引位置とのX,Y二次元方向の調整量を演算する(ステップS106)。
【0046】
次に、制御部16は、位置決め装置24に制御信号を出力し、検体容器3cの検体吸引位置への位置決めを指示する(ステップS108)。この指示により、位置決め装置24が、制御部16による制御の下に、二次元方向の調整量分だけラック3を二次元方向へ移動し、検体の吸引位置へ検体容器3cを位置決めする。
【0047】
次いで、制御部16は、検体分注装置4に検体の分注を指示する(ステップS110)。これにより、検体分注装置4は、プローブ4aを検体の吸引位置へ水平方向に移動した後、吸引位置でプローブ4aを下降させ、検体容器3cに保持された検体を吸引する。そして、検体吸引後、検体分注装置4は、プローブ4aを上昇させ、水平方向に移動させて反応テーブル5上のキュベットCに検体を吐出(分注)する。
【0048】
その後、制御部16は、検体を吸引すべき次の検体容器3cがあるか否かを判定する(ステップS112)。このとき、制御部16は、形状情報取得装置21から入力されたラック3の形状情報と容器検出装置23から取得した検体容器3cの有無情報をもとに判定する。判定の結果、次の検体容器3cがある場合(ステップS112,Yes)、制御部16は、ステップS108に戻って、引き続くステップを繰り返す。
【0049】
一方、次の検体容器3cがない場合(ステップS112,No)、制御部16は、位置決め装置24に制御信号を出力し、検体容器3cの検体吸引位置への位置決め指示を解除する(ステップS114)。これにより、位置決め装置24は、ラック3の把持を解放する。その後、制御部16は、ラック3の回収をラック搬送装置2に指示して、1つのラック3に対する制御フローを終了する。
【0050】
ここで、検体容器3cの調整量、即ち、調整基準位置と検体の吸引位置との調整量を演算する際、制御部16は、ラック3が複数の検体容器3cを保持している場合、保持する各検体容器3cについて調整量を演算する。例えば、ラック3Aの場合、容器検出装置23は、先ず、図11に示すように、搬送方向に見て前部左側の保持凹部3aに保持された検体容器3c(中心C1)を検出し、中心C1の水平面内におけるX方向及びY方向の位置(X1,Y1)を調整基準位置とする。
【0051】
次に、制御部16は、図11に示すように、検体容器3cの中心C1を調整基準位置として検体の吸引位置PsとのX,Y二次元方向の調整量ΔX1,ΔY1(図11左上図参照)を演算する。そして、制御部16は、位置決め装置24を駆動してラック3Aを調整量ΔX1,ΔY1分だけX,Y二次元方向へ移動し、検体の吸引位置Psへ検体容器3c(中心C1)を位置決めする(図11右上図参照)。
【0052】
この位置決めに際し、制御部16は、検体容器3cの中心C1を吸引位置Psに一致させる必要はない。制御部16は、少なくとも検体分注装置4のプローブ4aが検体容器3cと干渉することなく検体を吸引できる位置に検体容器3cの中心を位置決め装置24によって位置決めすればよい。
【0053】
次に、制御部16は、検体容器3cの中心C2を調整基準位置として検体の吸引位置PsとのX軸方向の調整量ΔX2(図11右上図参照)を演算する。調整量ΔX2は、容器検出装置23が検出したラック3Aにおける検体容器3cの有無情報及びラック3の形状情報又はラック3の形状から決まる複数の保持凹部3aの水平面内における2次元方向の配置をもとに演算する。そして、制御部16は、位置決め装置24を駆動してラック3Aを調整量ΔX2だけX軸方向へ移動し、検体の吸引位置Psへ検体容器3c(中心C2)を位置決めする(図11右下図参照)。
【0054】
次いで、制御部16は、検体容器3cの中心C3を調整基準位置として検体の吸引位置PsとのX,Y二次元方向の調整量ΔX3,ΔY3(図11右下図参照)を演算する。そして、制御部16は、位置決め装置24を駆動して調整量ΔX3,ΔY3分だけラック3AをX,Y二次元方向へ移動し、検体の吸引位置Psへ検体容器3c(中心C3)を位置決めする(図11左下図参照)。
【0055】
その後、制御部16は、検体容器3cの中心C5を調整基準位置として検体の吸引位置PsとのY軸方向の調整量ΔY5(図11左下図参照)を演算する。そして、制御部16は、位置決め装置24を駆動してラック3Aを調整量ΔY5分だけY軸方向へ移動し、検体の吸引位置Psへ検体容器3c(中心C5)を位置決めする。
【0056】
以下、同様にして、制御部16は、検体容器3cの各中心を調整基準位置として検体の吸引位置PsとのX,Y二次元方向の調整量ΔXn,ΔYn(n=N)を演算し、位置決め装置24を駆動してラック3Aを調整量ΔXn,ΔYn分だけX,Y二次元方向へ移動し、検体の吸引位置Psへ検体容器3c(中心Cn)を位置決めしてゆく。
【0057】
このように、本発明の自動分析装置1は、ラックの形状に応じて検体の吸引位置Psへ検体容器3cを位置決めする位置調整機構20を備えているので、ラックの形状が異なっても検体の吸引に使用することができる。
【0058】
尚、ラック搬送装置2は、ラックを搬送するのにキャタピラやベルトコンベアの他に、パレットコンベアを使用してもよい。
【0059】
また、形状情報取得装置21は、ラック3に貼付された情報記録媒体Mからラック3の形状情報を読み取ったが、例えば、図12に示すように、形状情報取得装置としてラック3の外観を撮像するCCDカメラ28を使用してもよい。このとき、CCDカメラ28は、撮像したラック3の外観の画像信号を制御部16へ出力する。制御部16は、CCDカメラ28から入力されるラック3の外観の画像信号を処理することによってラック3の形状を把握する。
【0060】
また、ラック3及び検体容器3cは、バーコードラベル等の情報記録媒体を貼付したが、ラックの形状情報や検体情報を取得することができれば、RFID等の電磁的に情報を記録する情報記録媒体を貼付してもよい。この場合、形状情報取得装置21や検体情報読取装置22は、電磁的に情報を取得するリーダライタを使用する。
【0061】
また、容器検出手段は、検体容器3cの有無を光によって検出する容器検出装置23に代えて、検体容器3cの有無を超音波によって検出する容器検出装置28を使用してもよい。このような容器検出装置28は、例えば、図13に示すように、装置本体28aと超音波を送受波する送受波素子28bを有している。装置本体28aは、検体容器3cを検出するための制御信号を送受波素子28bに出力する。送受波素子28bは、装置本体28aから入力される制御信号をもとに検体容器3cに超音波を照射し、検体容器3cから反射してくる超音波の強度や時間から装置本体28aが検体容器3cの有無を判定する。このとき、容器検出装置28は、容器検出装置23と同様に、形状情報取得装置21が読み取ったラック3,3A,3B等の形状情報をもとに検体容器3cの有無を適切に検出することができるように、搬送レーン2bの搬送方向と直交する方向(X方向)へ移動する移動手段を備えている。
【0062】
更に、位置決め装置24は、1組のチャックアームによってラックを長手方向両側から把持する構成としたが、配置上可能であれば、ラックを幅方向量側からプッシャ等によって把持することでX軸方向に位置決めし、搬送レーンによって移動させることでY軸方向に位置決めしてもよい。位置決め装置24は、1組のチャックアーム25eによってラックを把持することができれば把持装置25だけでよいので、押圧装置26は必須ではない。
【0063】
また、本発明の自動分析装置が備える位置調整機構20は、自動分析装置を複数連結配置する際、隣接する自動分析装置間でラックを搬送する搬送部に配置して使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の自動分析装置の概略構成図である。
【図2】ラックの一例とラック情報を示すラックの斜視図である。
【図3】他のラックとラック情報を示すラックの斜視図である。
【図4】更に他のラックとラック情報を示すラックの斜視図である。
【図5】自動分析装置に設ける位置調整機構の配置を示す斜視図である。
【図6】図5においてラック搬送装置の搬入レーンを削除して位置調整機構の配置を示した斜視図である。
【図7】位置調整機構で使用する位置決め装置の模式図である。
【図8】図7に示す位置決め装置の把持装置の具体的構成を示す平面図である。
【図9】図7に示す位置決め装置の押圧装置の具体的構成を示す平面図である。
【図10】ラックの形状情報の取得から検体の吸引を終えてラックを回収するまでの1つのラックに関する制御フローを示すフローチャートである。
【図11】調整基準位置と検体の吸引位置とのX,Y二次元方向の調整量の演算と、調整量に基づく検体の吸引位置への検体容器の位置決めを説明する図である。
【図12】形状情報取得手段としてラックの外観を撮像するCCDカメラを示す斜視図である。
【図13】検体容器の有無を超音波によって検出する容器検出装置を備えた位置調整機構の配置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0065】
1 自動分析装置
2 ラック搬送装置
3 ラック
3c 検体容器
3A,3B ラック
4 検体分注装置
5 反応テーブル
C キュベット
6 第一試薬分注装置
7 第二試薬分注装置
8 第一試薬保冷庫
9 第二試薬保冷庫
11 第一撹拌装置
12 第二撹拌装置
14 光学測定系
16 制御部
17 入力部
18 表示部
19 分析部
20 位置調整機構
21 形状情報取得装置
22 検体情報読取装置
23,28 容器検出装置
24 位置決め装置
25 把持装置
26 押圧装置
28 CCDカメラ
M 情報記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って搬送されるラックに保持された検体容器から検体を吸引して反応容器へ分注し、当該反応容器内で反応した試薬と前記検体との反応液の光学的特性を測定することにより前記検体を分析する自動分析装置であって、
前記検体容器の配置情報を含む前記ラックの形状情報を取得する形状情報取得手段と、
前記ラックを搬送し、前記検体容器を前記検体の吸引位置に位置決めする位置決め手段と、
前記ラックの形状情報をもとに前記位置決め手段による前記ラックの形状に応じた当該ラックの搬送を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記形状情報取得手段が取得した前記ラックの形状情報をもとに、前記ラックに保持された前記検体容器の有無を、当該検体容器の前記搬送経路上の位置を調整基準位置として検出する容器検出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記形状情報取得手段は、前記ラックに貼付され、予め前記ラックの形状情報が記録された情報記録媒体から前記ラックの形状情報を読み取ることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記容器検出手段は、前記ラックの形状情報をもとに前記ラックに保持された前記検体容器の有無を光又は超音波によって検出することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記位置決め手段は、少なくとも前記ラックを把持する把持手段と、前記把持手段を前記ラックの搬送方向及び搬送方向に直交する方向へ移動させるX−Yステージとを有することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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