説明

自動分析装置

【課題】簡易な構成で一層信頼性が高い分析結果を得ることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】試薬の分注位置P1で反応容器21cに、温度に依存して吸光度が変化するフェノールレッドを分注する試薬分注機構24と、反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度を測定する測光部26と、測光部26が測定したフェノールレッドの吸光度に基づいて検体および試薬の混合液の温度の推定値を算出する温度算出部36と、温度算出部36によって算出された検体および試薬の混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内であるか否かの判定に基づいて検体および試薬の混合液が所定の温度範囲内の温度で吸光度を測定されたか否かを判定する判定部37と、判定部37が判定した判定結果を出力する出力部34と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とをそれぞれ反応容器内に分注し、該検体と該試薬とを反応させて、検体を光学的に分析する自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、反応容器内に分注された検体および試薬の混合液の吸光度を測定することによって検体を分析している。この自動分析装置は、分析結果の信頼性を高めるため、恒温槽を設け、この恒温槽に反応容器を保持することでこの反応容器内の検体および試薬の混合液の温度を所定の温度範囲内に保つようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−83934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の自動分析装置では、恒温槽の温度を所定の温度範囲内に制御していれば、反応容器内の検体および試薬の混合液の温度が所定の温度範囲内に保たれていると推定しているため、混合液が所定の温度範囲内でない場合であっても所定の温度範囲内であると判定してしまう場合があった。この場合、混合液は、所定の温度範囲外となるため、信頼性の高い分析結果を得ることができないという問題点があった。
【0005】
なお、混合液の温度を直接測定することも考えられるが、この場合、直接温度を測定する温度測定部材を備える必要があるとともに、この温度測定部材によって持ち込まれるコンタミネーションの問題、あるいは温度測定部材による熱伝導の問題等があり、好ましくない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で、一層信頼性が高い分析結果を得ることができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる自動分析装置は、所定の温度範囲に保持された反応容器に試薬分注機構によって試薬を分注し、検体分注機構によって検体を分注し、測光部によって該反応容器内の該検体と該試薬の混合液の吸光度を測定して前記検体を分析する一連の分析処理を行う自動分析装置において、前記試薬の分注位置で前記反応容器に、温度に依存して吸光度が変化する色素液を分注する分注手段と、前記反応容器内の前記色素液の吸光度を測定する測定手段と、前記測定手段が測定した前記色素液の吸光度に基づいて前記混合液の温度の推定値を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した前記混合液の温度の推定値に基づいて前記混合液が所定の温度範囲内の温度で吸光度を測定されたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が判定した判定結果を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記算出手段は、前記測定手段によって測定された前記色素液の吸光度をもとに前記色素液の温度を求め、該色素液の温度に対して前記色素液と前記試薬との熱容量の差による温度差を補正して前記混合液の温度の推定値を算出することを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記測定手段は、前記測光部であることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記分注手段は、前記試薬分注機構であることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記分注手段は、前記試薬の分注位置および前記検体の分注位置で前記反応容器に前記色素液を分注することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる自動分析装置は、分注手段が、試薬の分注位置で反応容器に、温度に依存して吸光度が変化する色素液を分注し、測定手段が、前記反応容器内の前記色素液の吸光度を測定し、算出手段が、前記測定手段が測定した前記色素液の吸光度に基づいて検体および試薬の混合液の温度の推定値を算出し、判定手段が、前記算出手段が算出した前記混合液の温度の推定値に基づいて前記混合液が所定の温度範囲内の温度で吸光度を測定されたか否かを判定し、出力手段が、前記判定手段が判定した判定結果を出力しているので、出力された判定結果によって前記混合液が所定の温度範囲内の温度で吸光度を測定されたか否かを判断できるため、簡易な構成で一層信頼性が高い分析結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明にかかる自動分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。自動分析装置1は、図1に示すように、検体供給部10、測定部20、および制御装置30を有する。検体供給部10は、測定部20の側部に配置され、検体を収容する検体容器10bを複数保持するラック10aを検体吸引位置まで搬送する。測定部20は、検体および試薬を反応容器21c内にそれぞれ分注し、反応容器21cで生じる反応を光学的に測定する。制御装置30は、測定部20および検体供給部10を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定部20における測定データの分析を行う。自動分析装置1は、これら各部が連携することによって複数の検体の生化学分析を順次自動的に行う。
【0015】
検体供給部10は、上述したようにラック10aを搬送することによって、検体容器10bを検体吸引位置に移送する。検体吸引位置に移送された検体容器10b内の検体は、検体分注機構22によって、検体の分注位置P2に搬送された反応容器21c内に分注される。
【0016】
測定部20は、反応槽21、検体分注機構22、試薬庫23、試薬分注機構24、攪拌部25、測光部26および洗浄部27を有する。
【0017】
反応槽21は、保温部材21aおよびホイール21bを有する。保温部材21aは、ホイール21bの半径方向内側と外側に配置される。ホイール21bは、複数の反応容器21cを保持し、図示しない駆動機構によって回転して反応容器21cを周方向に移送する。反応槽21は、図示しない円盤状の蓋によって覆われており、保温部材21aとともに、内部の温度を体温程度の温度、例えば、37±0.2℃に保温する恒温槽として機能する。
【0018】
検体分注機構22は、検体の吸引および吐出を行うプローブ22bが先端部に取り付けられたアーム22aを有する。アーム22aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。検体分注機構22は、吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を有する。検体分注機構22は、検体吸引位置に搬送された検体容器10b内からプローブ22bによって検体を吸引し、アーム22aを図中反時計回りに旋回させ、反応槽21上の検体の分注位置P2に移送された反応容器21cに、検体を吐出して分注を行う。検体の分注終了後、プローブ22bは、洗浄槽22cで洗浄され、繰り返し検体の分注に使用される。
【0019】
試薬庫23は、反応容器21cに分注される試薬が収容された試薬容器23aを着脱自在に複数収納できる。試薬庫23は、図示しない円盤状の蓋により覆われており、内部の温度を所定の温度とする保冷庫として機能する。試薬庫23は、制御装置30の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫23の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器23aを試薬分注機構24による吸引位置まで移送する。複数の試薬容器23aの中には、温度に依存して吸光度が変化する色素液であるフェノールレッドを収容しているものがある。
【0020】
試薬分注機構24は、試薬の吸引および吐出を行うプローブ24bが先端部に取り付けられたアーム24aを有する。アーム24aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。試薬分注機構24は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を有する。試薬分注機構24は、試薬庫23上の試薬吸引位置に移送された試薬容器23a内の試薬をプローブ24bによって吸引し、アーム24aを図中時計回りに旋回させ、反応槽21上の試薬の分注位置P1に移送された反応容器21cに、試薬を吐出して分注を行う。試薬の分注終了後、プローブ24bは、洗浄槽24cで洗浄され、繰り返し試薬の分注に使用される。
【0021】
また、試薬分注機構24は、分注手段として、試薬庫23上の試薬吸引位置に移送された試薬容器23a内のフェノールレッドを試薬容器23a内の試薬と同様にプローブ24bによって吸引し、アーム24aを図中時計回りに旋回させ、反応槽21上の試薬の分注位置P1に移送された反応容器21cに、このフェノールレッドを吐出して分注を行う。フェノールレッドの分注終了後、プローブ24bは、洗浄槽24cで洗浄され、繰り返し試薬の分注に使用される。なお、フェノールレッドを分注する反応容器21cには、検体および試薬は分注されない。
【0022】
攪拌部25は、反応容器21cに分注された液体の攪拌を行い、反応を均一化させる。
【0023】
測光部26は、吸光度の測定位置P4に移送された反応容器21cに光源26aから測定光を照射し、反応容器21c内の検体および試薬の混合液を透過した光を分光し、受光素子26bによる各波長光の強度測定を行うことによって、分析対象である検体および試薬の混合液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0024】
また、測光部26は、測定手段として反応容器21c内の検体および試薬の混合液と同様に、吸光度の測定位置P4に移送された反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度を測定する。
【0025】
洗浄部27は、図示しないノズルによって、測光部26による測定が終了した反応容器21c内の検体および試薬の混合液あるいはフェノールレッドを吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行う。
【0026】
制御装置30は、制御部31、入力部32、分析部33、出力部34、記憶部35、温度算出部36および判定部37を有する。検体供給部10、測定部20および制御装置30内の上述した各部は、制御部31に接続されている。制御部31は、CPU等によって実現され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0027】
入力部32は、キーボードやマウス等によって実現され、検査項目等の各種情報の入力が可能である。また、分析部33は、測光部26によって測定された測定結果をもとに、検体内における検知対象物の濃度を求め、検体の成分分析等を行う。出力部34は、ディスプレイパネルやスピーカー等によって実現され、出力手段として分析結果を含む分析内容や警報等の各種情報を出力する。記憶部35は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にこの処理にかかわる各種プログラムをハードディスクから読み出して電気的に記憶するメモリとを有する。記憶部35は、演算処理された吸光度等を含む検体の情報を記憶する。
【0028】
温度算出部36は、算出手段として測光部26が測定したフェノールレッドの吸光度に基づいて検体および試薬の混合液の温度の推定値を算出する。判定部37は、判定手段として温度算出部36が算出した検体および試薬の混合液の温度の推定値に基づいて検体および試薬の混合液が所定の温度範囲内の温度で吸光度を測定されたか否かを判定する。
【0029】
以上のように構成された自動分析装置1では、順次移送される複数の反応容器21cに対して、試薬分注機構24が、試薬容器23aから反応容器21cに試薬を分注し、検体分注機構22が、検体容器10bから反応容器21cに所定量の検体を分注する。続いて、攪拌部25が、反応容器21c内の試薬と検体とを攪拌して反応させた後、測光部26が、検体および試薬の混合液の吸光度測定を行う。そして、分析部33が、測定結果を分析し、検体の成分分析等を自動的に行う。また、洗浄部27が、測光部26による測定が終了した反応容器21cの洗浄・乾燥を行い、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0030】
次に、図2および図3を参照して、自動分析装置1が実施する温度判定処理手順について説明する。図2は、自動分析装置1が実施する温度判定処理手順を示すフローチャートを示している。図3は図1に示した反応容器21cにフェノールレッドが分注されてから最後の吸光度を測定されるまでの反応容器の移送について説明する図である。図2に示すように、まず、制御部31は、ホイール21b上に保持された複数の反応容器21cのなかから、予め設定されたフェノールレッドを分注するための反応容器21cが試薬の分注位置P1に移送されたか否かを判断する(ステップS101)。フェノールレッドを分注するための反応容器21cが試薬の分注位置P1(図3(a))に移送された場合(ステップS101:Yes)、試薬分注機構24が、反応容器21cにフェノールレッドを分注する(ステップS102)。一方、フェノールレッドを分注するための反応容器21cが試薬の分注位置P1に移送されていない場合(ステップS101:No)、この判断を繰り返す。
【0031】
その後、ホイール21bが回転し、検体の分注位置P2(図3(b))にこのフェノールレッドが収容された反応容器21cを移送する(ステップS103)。検体の分注位置P2に移送されたこのフェノールレッドが収容された反応容器21cへの分注処理は行わない。その後、ホイール21bが回転し、このフェノールレッドが収容された反応容器21cを攪拌位置P3(図3(c))に移送し、攪拌部25が、この反応容器21c内のフェノールレッドを攪拌する(ステップS104)。
【0032】
その後、測光部26が、吸光度の測定位置P4(図3(d))を通過する反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度を測定する(ステップS105)。なお、測光部26が、判定に用いる最初の吸光度の測定を行うのは、フェノールレッドが反応容器21cに分注されてから時間tsが経過したときである。この時間tsは、一つの反応容器21cに試薬が分注されてからこの反応容器21c内の検体および試薬の混合液が最初に分析に用いる吸光度を測定されるまでの経過時間である。反応容器21c内のフェノールレッドに正常に熱が付加されていれば、反応容器21cに分注されてから時間tsが経過した後、検体および試薬の混合液の温度に補正したフェノールレッドの温度は、37℃±0.2℃に保温される。
【0033】
その後、温度算出部36は、検体および試薬の混合液の温度の推定値を算出する(ステップS106)。この混合液の温度の推定値は、温度に依存して吸光度が変化するフェノールレッドの特性から導かれたフェノールレッドの温度と吸光度との関係に基づいてフェノールレッドの吸光度からフェノールレッドの温度を求め、このフェノールレッドの温度に対してフェノールレッドと試薬との熱容量の差による温度の差を補正して算出する。なお、試薬の分注量に比して検体の分注量は微量であるので、試薬の分注量は検体および試薬の混合液の量と略同じである。従って、試薬の温度の推定値を算出すれば検体および試薬の混合液の温度の推定値を算出したことになる。
【0034】
その後、判定部37は、検体および試薬の混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内であるか否かを判定する(ステップS107)。この所定の温度範囲は、例えば、体温程度の温度、37±0.2℃である。検体および試薬の混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内であると判定した場合(ステップS107:Yes)、判定部37は、検体および試薬の混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内であることを示す情報と、このフェノールレッドが吸光度を測定された時刻の情報と、を記憶部35に記憶し(ステップS108)、ステップS110に移行する。
【0035】
一方、検体および試薬の混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内でないと判定した場合(ステップS107:No)、判定部37は、検体および試薬の混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内でないことを示す情報と、このフェノールレッドが吸光度を測定された時刻の情報と、を記憶部35に記憶し(ステップS109)、ステップS110に移行する。
【0036】
その後、制御部31は、この反応容器21c内のフェノールレッドの最後の吸光度の測定が終了したか否かを判断する(ステップS110)。なお、一つの反応容器21c内のフェノールレッドの最後の吸光度の測定は、反応容器21cが、フェノールレッドを分注されてから時間te経過した後に、測定位置P4(図3(e))を通過する際に行われる。この時間teは、一つの反応容器21cに試薬が分注されてから検体および試薬の混合液が最後の吸光度を測定されるまでの経過時間である。この反応容器21c内のフェノールレッドの最後の吸光度の測定が終了した場合(ステップS110:Yes)、ステップS111に移行する。一方、この反応容器21c内のフェノールレッドの最後の吸光度の測定が終了していない場合(ステップS110:No)、ステップS105に移行して、上述した処理を繰り返す。
【0037】
ここで、図4を参照してS105〜S110の繰り返しの処理の詳細について説明する。フェノールレッドは、時刻taに反応容器21cに分注されてから時間ts経過して、判定に用いる最初の吸光度の測定が行われ、時間軸上の黒丸で示した時刻に吸光度の測定位置P4を通過するたびに吸光度を測定され、分注されてから時間teが経過した後に最後の吸光度を測定される。このフェノールレッドの吸光度をもとに温度算出部36が、フェノールレッドの温度を求め、このフェノールレッドの温度に対してフェノールレッドと試薬との熱容量の差による温度の差を補正して検体および試薬の混合液の温度の推定値Tpを算出する(図4(a))。
【0038】
ここで、判定部37は、混合液の温度の推定値Tpが所定の温度範囲R内であるか(○)あるいは、所定の温度範囲R内でないか(×)を判定し、混合液の温度の推定値Tpが所定の温度範囲R内であるか(○)あるいは、所定の温度範囲R内でないか(×)を示す時系列情報を記憶部35に記憶する(図4(b))。
【0039】
一方、検体および試薬の混合液は、時間軸上の黒丸で示した時刻に吸光度を測定される(図4(c))。なお、検体および試薬の混合液は、測定光部26によって測定されるため、測定時刻は、フェノールレッドが吸光度を測定される時刻とずれている。
【0040】
記憶部35に記憶された時系列情報によって、判定部37は、検体および試薬の混合液の吸光度が測定されたときのこの混合液の温度が所定の温度範囲R内であるか(○)あるいは、所定の温度範囲R内でないか(×)を判定する(図4(d))。推定値Tpが所定の温度範囲R内である(○)連続した判定の間の時間に吸光度を測定された検体および試薬の混合液は、吸光度が測定されたときのこの混合液の温度が所定の温度範囲R内である(○)。また、推定値Tpが所定の温度範囲R内である(○)判定と所定の温度範囲R内でない(×)判定の連続した判定の間の時間に吸光度を測定された検体および試薬の混合液は、吸光度が測定されたときのこの混合液の温度が所定の温度範囲R内でない(×)。
【0041】
なお、一つの反応容器21c内のフェノールレッドの最後の吸光度の測定を終了し、次の反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度を測定する時刻tnには、この次の反応容器21c内のフェノールレッドは、分注されてから時間tsが経過している(図4(a))。これにより、一つの反応容器21cに分注されてから検体および試薬の混合液の温度に補正して37℃±0.2℃に保温される時間が経過したフェノールレッドの吸光度の測定が連続した時間で行える。なお、次の反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度を測定するときには、この次の反応容器21c内のフェノールレッドは、分注されてからの経過時間が時間tsであるものを例示したが、これに限らず、少なくとも分注されてから時間tsが経過していればよい。
【0042】
以下、ステップS111以降の処理を説明する。制御部31は、予約された分析処理が終了したか否かを判断する(ステップS111)。予約された分析処理とは、例えば、連続して検体の分析を行うために予約された複数の検体の分析処理である。予約された分析処理が終了した場合(ステップS111:Yes)、判定部37は、予約された分析処理で測定された検体および試薬の混合液の各吸光度について、検体および試薬の混合液の温度が所定の温度範囲内で測定されたか否かを判定する(ステップS112)。この判定は、上述したように記憶部35に記憶された、検体および試薬の混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内であるか否かを示す時系列情報および検体および試薬の混合液の吸光度が測定された時刻の情報をもとに行う。一方、予約された分析処理が終了していない場合(ステップS111:No)、ステップS101に移行し、上述した処理を繰り返す。
【0043】
その後、出力部34は、判定部37による判定結果を表示する(ステップS113)。この判定結果の表示は、例えば、図5に示すように、温度が所定の温度範囲内でないと判定された検体および試薬の混合液の吸光度にマーク(×)を付加させて、ディスプレイパネルの画面に表示する。その後、制御部31は、本処理を終了する。
【0044】
上述した実施の形態では、反応容器21cに分注されたフェノールレッドの吸光度からフェノールレッドの温度を求め、このフェノールレッドの温度に対してフェノールレッドと試薬との熱容量の差による温度の差を補正して検体および試薬の混合液の温度の推定値を算出し、この混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内であるか否かを示す情報と、このフェノールレッドが吸光度を測定された時刻の情報とをもとに、分析処理で測定された検体および試薬の混合液の各吸光度について、検体および試薬の混合液の温度が所定の温度範囲内で測定されたか否かを判定し、検体および試薬の混合液の温度が所定の温度範囲内でないと判定された吸光度にマークを付加して表示しているので、温度が所定の温度範囲内でない検体および試薬の混合液の吸光度を識別することができる。従って、簡易な構成で一層信頼性が高い分析結果を得ることができる。
【0045】
また、上述した実施の形態では、検体および試薬の混合液の吸光度を測定する測光部26を用いてフェノールレッドの吸光度を測定するようにしているので、このフェノールレッドの吸光度を測定するために測光部26と別体の装置を設ける必要がなく、一層簡易な装置構成とすることができる。
【0046】
なお、上述した実施の形態では、フェノールレッドが、試薬の分注位置P1で反応容器21cに分注され、検体の分注位置P2で反応容器21cに分注されないものを例示したが、これに限らず、試薬の分注位置で反応容器21cにフェノールレッドを分注できればよい。例えば、試薬の分注位置P1で反応容器21cにフェノールレッドを分注した後に、検体の分注位置P2でこの反応容器21cにフェノールレッドを分注する。この場合、試薬の分注位置P1および検体の分注位置P2で分注されるフェノールレッドの分注量の比率は、試薬と検体との分注量の比率と等しくし、かつ検体の分注位置P2で分注されるフェノールレッドの温度を検体の温度と等しくすることが好ましい。
【0047】
また、上述した実施の形態では、測光部26が一つ備えられるものを例示したが、これに限らず、検体および試薬の混合液の吸光度を測定する測光部26が備えられていればよい。例えば、この測光部26以外に、フェノールレッドの吸光度を測定する測光部を複数備えてもよい。この場合、各測光部を通過する反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度を測定することができるので、ホイール21bが回転する間に検体および試薬の混合液の温度の推定値をより多く取得することができる。
【0048】
また、上述した実施の形態では、フェノールレッドを用いるものを例示したが、これに限らず、温度に依存して吸光度が変化する色素液を用いればよい。
【0049】
また、上述した実施の形態では、フェノールレッドが一つの反応容器21cに分注されてから判定に用いる最初の吸光度を測定されるまでの経過時間が、試薬が一つの反応容器21cに分注されてからこの反応容器21c内の検体および試薬の混合液が分析に用いる最初の吸光度を測定されるまでの経過時間tsであるものを例示したが、これに限らず、フェノールレッドが一つの反応容器21cに分注されてから判定に用いる最初の吸光度を測定されるまでの経過時間は、反応容器21c内のフェノールレッドに正常に熱が付加される場合に、フェノールレッドが一つの反応容器21cに分注されてから検体および試薬の混合液の温度に補正して37℃±0.2℃に保温されるまでの時間であればよい。
【0050】
また、上述した実施の形態では、フェノールレッドが一つの反応容器21cに分注されてから最後の吸光度を測定されるまでの経過時間が、試薬が一つの反応容器21cに分注されてから検体および試薬の混合液が最後の吸光度を測定されるまでの経過時間teであるものを例示したが、これに限らず、フェノールレッドが一つの反応容器21cに分注されてから最後の吸光度を測定されるまでの経過時間は、反応容器21c内のフェノールレッドに正常に熱が付加される場合に、フェノールレッドが一つの反応容器21cに分注されてから検体および試薬の混合液の温度に補正して37℃±0.2℃に保温されるまでの時間が経過してればよい。また、この経過時間は、長時間になると、反応容器21c内のフェノールレッドの温度が実際の混合液の温度よりも安定するため、より混合液の温度に近づけるために試薬が一つの反応容器21cに分注されてから検体および試薬の混合液が最後の吸光度を測定されるまでの経過時間を越えないことが好ましい。
【0051】
(変形例1)
ここで、上述した実施の形態の変形例1について説明する。この変形例1は、一つの反応容器21c内のフェノールレッドの最後の吸光度の測定から時間を空けて、次の反応容器21c内にフェノールレッドを分注するものである。
【0052】
具体的には、図6に示すように、フェノールレッドは、時刻t1,t3,t5で反応容器21cに分注されてから、時間teが経過した後の時刻t2,t4,t6までに、時間軸上の黒丸で示した時刻に吸光度を測定される場合であって、時刻t2と時刻t3との間および時刻t4と時刻t5との間に時間が空いている場合である(図6(a))。
【0053】
この場合、フェノールレッドの吸光度から算出された検体および試薬の混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内であるか(○)あるいは、所定の温度範囲内でないか(×)によって(図6(b))、連続する時間で、検体および試薬の混合液の温度が、所定の温度範囲内であるか(○)あるいは、所定の温度範囲内でないか(×)かを判定することができる(図6(c))。なお、一つの反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度を複数回測定するものを例示したが、これに限らず、一つの反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度を少なくとも1回以上測定すればよい。
【0054】
(変形例2)
次に、上述した実施の形態の変形例2について説明する。この変形例2は、整列してホイール21b上に保持される反応容器21cの並び順で、反応容器21cに試薬の分注から洗浄・乾燥までの各処理を行う場合、検体および試薬の混合液の温度が所定の温度範囲内の温度で吸光度を測定されたか否かを、この混合液が収容された反応容器21cの近傍の位置の反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度を用いて判定するものである。なお、この近傍の位置とは、経験的に求められ、吸光度を測定したときの反応容器21c内の検体および試薬の混合液の温度が等しいとすることができる程度に近い位置である。
【0055】
具体的には、図7に示すように、ホイール21b上に保持された反応容器21cに反時計周りで試薬の分注から洗浄・乾燥までの各処理を行う場合、例えば、ホイール21bを周方向に8等分する位置の番号1〜8の反応容器21cをフェノールレッドを分注するための反応容器21cとして設定する。この番号1〜8の反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度から算出された検体および試薬の混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内であるか(○)あるいは、所定の温度範囲内でないか(×)によって(図7(a))、反応容器21c群G1〜G8ごとに、反応容器21c内の検体および試薬の混合液が所定の温度範囲内の温度で吸光度を測定されたか否かの判定をする(図7(b))。
【0056】
より具体的には、番号1の反応容器21c内のフェノールレッドの吸光度から算出された検体および試薬の混合液の温度の推定値が所定の温度範囲内である(○)場合、この番号1の反応容器21cと近傍の位置にある反応容器21c群G1内の検体および試薬の混合液が所定の温度範囲内の温度で吸光度を測定された(○)と判定する。なお、変形例2では、フェノールレッドを分注する反応容器21cが、各反応容器21c群G1〜G8の先頭の並び位置に配置されるものを例示したが、これに限らず、反応容器21c群G1〜G8ごとに、反応容器21c内の検体および試薬の混合液が所定の温度範囲内の温度で吸光度を測定されたか否かの判定ができればよい。例えば、フェノールレッドが分注される反応容器21cが各反応容器群G1〜G8の並びの中心位置に配置されるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示す摸式図である。
【図2】図1に示した自動分析装置1が実施する温度判定処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図1に示した反応容器にフェノールレッドが分注されてから最後の吸光度を測定されるまでの反応容器の移送について説明する図である。
【図4】図2に示したS105〜S110の繰り返しの処理の詳細について説明する図である。
【図5】図1に示した判定部による判定結果の表示画面を説明する図である。
【図6】図1に示した自動分析装置1が実施する温度判定処理の変形例1を説明する図である。
【図7】図1に示した自動分析装置1が実施する温度判定処理の変形例2を説明する図である。
【符号の説明】
【0058】
1 自動分析装置
10 検体供給部
10a ラック
10b 検体容器
20 測定部
21 反応槽
21a 保温部材
21b ホイール
21c 反応容器
22 検体分注機構
22a,24a アーム
22b,24b プローブ
22c,24c 洗浄槽
23 試薬庫
23a 試薬容器
24 試薬分注機構
25 攪拌部
26 測光部
26a 光源
26b 受光素子
27 洗浄部
30 制御装置
31 制御部
32 入力部
33 分析部
34 出力部
35 記憶部
36 温度算出部
37 判定部
P1〜P4 位置
ta,tb,tn,t1〜t6 時刻
t,ts,te 時間
T 温度
Tp 推定値
G 群
R 範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度範囲に保持された反応容器に試薬分注機構によって試薬を分注し、検体分注機構によって検体を分注し、測光部によって該反応容器内の該検体と該試薬の混合液の吸光度を測定して前記検体を分析する一連の分析処理を行う自動分析装置において、
前記試薬の分注位置で前記反応容器に、温度に依存して吸光度が変化する色素液を分注する分注手段と、
前記反応容器内の前記色素液の吸光度を測定する測定手段と、
前記測定手段が測定した前記色素液の吸光度に基づいて前記混合液の温度の推定値を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した前記混合液の温度の推定値に基づいて前記混合液が所定の温度範囲内の温度で吸光度を測定されたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が判定した判定結果を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記測定手段によって測定された前記色素液の吸光度をもとに前記色素液の温度を求め、該色素液の温度に対して前記色素液と前記試薬との熱容量の差による温度差を補正して前記混合液の温度の推定値を算出することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記測定手段は、前記測光部であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記分注手段は、前記試薬分注機構であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記分注手段は、前記試薬の分注位置および前記検体の分注位置で前記反応容器に前記色素液を分注することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−85275(P2010−85275A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255403(P2008−255403)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】