説明

自動分析装置

【課題】ラックの汚れや外乱の影響を緩和することで、サンプル吸引時のラックの位置を正確に検知し、サンプリング時における安定したラック移動の制御を可能とする。
【解決手段】複数のサンプル容器が並べられた方向の端部に位置基準部が設けられたラックと、前記ラックを搬送する搬送手段と、前記ラックを、搬送する搬送路と直交する方向に引込み、前記サンプル容器が並べられた方向に移動させることで前記サンプル容器それぞれを所定の吸引位置に遂次移動させ、吸引動作後に前記ラックを前記搬送路上に移動させるラック移動手段と、前記ラックを前記サンプル容器が並べられた方向に移動させるときに、前記位置基準部の位置を検出してラックの位置を特定するラック位置特定手段とを備え、前記ラック移動手段は、前記ラック位置特定手段が特定した前記ラックの位置を基に、前記ラックの前記サンプル容器が並べられた方向への移動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清等の試料を自動的に分析する自動分析装置に関し、特にサンプルを分注する際のラックの位置検知と移動の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動分析装置で血液の成分を測定する場合には、血液を遠心分離機にかけ、不要物質を沈殿させた上澄み液(血清)を試料として測定する。この測定では、測定する成分(測定項目)に反応する所定の試薬を試料に添加し、その発色状態等を光学的手段等により測定し、その濃度を求めることが行われている。
【0003】
自動分析装置では複数の試料の測定が一連の処理として行われることが多く、十数検体から数百検体に至る場合がある。そのため、一般にサンプラと呼ばれる試料設定テーブルに置かれた状態で測定される。
【0004】
かかる自動分析装置を使って試料の成分分析を行なう場合、自動分析装置内の決められた位置に設置されたサンプラに試料を並べる必要がある。このサンプラは種々の自動分析装置に固有の最適な形態が採用され、その形態は様々である。
【0005】
ところで、自動分析装置のオペレータが、最もアクセスする頻度の高い部分がサンプラである。そのため、該サンプラの使い勝手はオペレータの作業効率の面から見て重要である。特許文献1には、従来の自動分析装置におけるサンプラ及びラックの構成や、分注時に該サンプラから反応部にラックを引込む際の動作について例が示されている。
【0006】
従来の自動分析装置において、分注時に該サンプラから反応部にラックを引込む際の動作について図6を参照しながら説明する。図6は、従来の自動分析装置における反応部へのラックの引込みに係る動作を説明するための概念図である。
【0007】
自動分析装置は、反応部Hと、サンプラ部Sとで構成される。反応部Hは、血清等に試薬を加えて発色反応を行う領域である。またサンプラ部Sは、試料を順次搬送する領域である。
【0008】
前記サンプラ部Sは、搬送手段20と、搬送手段20に載置されて搬送されるトレイ(図示しない)およびトレイに載置されたラック30により構成されている。搬送手段20は、自動分析装置の手前側の左右方向(図6のX軸方向)に沿って配置され、正逆回転可能に構成されている。搬送手段20には、例えば、ベルトコンベアが用いられる。
【0009】
ラック30は自動分析装置の上方(図6の紙面に垂直な方向)から見て長尺状の形状をなしている。図6に示すように、搬送手段20には、ラック30の長手方向がY軸方向と平行になるように、X軸方向に沿ってラック30が複数台並べられている。各ラック30には、その長手方向(図6のY軸方向)手前から、5本のサンプリング容器31a〜31eが配置できるようになっている。
【0010】
自動分析装置の下面にはラック引込み装置251が配置されている。ラック引込み装置251の出力軸R1の先端は上方に折り曲げられ、引掛け部(図示せず)が形成されている。また、ラック30の底面には凹部が形成されている。この凹部に前記引掛け部が引掛けられ、ラック30をサンプラ部Sから反応部H側に移動させる。
【0011】
ラック横移動装置24は、ラック引込み装置251により引込まれたラック30を左方に移動させる。その後、ラック押戻し装置252が、そのラック30を後方から押し出し、サンプリングレーンR2に沿ってサンプラ部S側に戻す。このとき自動分析装置は、ラック押戻し装置252によりラック30を手前方向に1ピッチずつ移動させることで、サンプリング容器31a〜31eそれぞれをサンプリングポイントP1に遂次移動させながら、サンプリングアーム(図示しない)によりサンプリング容器31a〜31eそれぞれから試料を吸引する。
【0012】
サンプリングレーンR2の左方には、ラック検知センサ234、ピッチセンサ236、ラック検知センサ238が設けられている。ラック検知センサ234、ピッチセンサ236、及び、ラック検知センサ238には、例えば、反射型光センサ等が用いられる。前述した各センサは、ラック30の左側面に設けられた反射部を検知し、検知結果がラック押戻し装置252(もしくはラック押戻し装置252の動作を制御する制御部)に出力される。
【0013】
ラック押戻し装置252は、ラック検知センサ234、ピッチセンサ236、及び、ラック検知センサ238の出力の組み合わせにより、ラック30の位置を特定し、ラック30を手前方向に移動させる。ラック押戻し装置252は、サンプリング容器31a〜31eそれぞれが、サンプリングポイントP1に移動されるように、ラック30を手前方向に遂次移動させる。サンプリングポイントP1は、サンプリングアーム21(図6では図示しない)が、サンプリング容器31a〜31eそれぞれから試料を吸引する領域である。
【0014】
例えば、サンプリング容器31aがサンプリングポイントP1に位置しているとき、ラック検知センサ234及びピッチセンサ236がOFFであり、ラック検知センサ238がONとなる。また、サンプリング容器31bがサンプリングポイントP1に位置しているとき、ラック検知センサ234がOFFであり、ピッチセンサ236及びラック検知センサ238がONとなる。このように、複数のセンサのON/OFFの組み合わせとラック30の位置を対応付けることで、ラック30の位置を検知している。
【0015】
なお以降は、前述した、分注時にサンプリング容器31a〜31eそれぞれがサンプリングポイントP1に移動されるように、ラック30を遂次移動する動作を「ピッチ移動」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平9−196926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した分注時のラック30のピッチ移動を制御する場合、ラック30の位置の検知に用いられるラック検知センサ234、ピッチセンサ236、及び、ラック検知センサ238の感度や、各センサの物理的な位置が長期的に安定していることが要求される。
【0018】
しかしながら、ラック30の側面は、試験者が該ラックを持つ場合に触れたり、他の試料の飛沫等により汚れやすい。この汚れにより上述した各センサ(234、236、及び、238)がラックの左側面部に設けられた反射部を検知できず誤作動を起こす問題があった。
【0019】
また、上述した各センサ(234、236、及び、238)の検知対象となる反射部が、センサの検知領域に正確に位置する必要がある。そのため、ラック移動時の制動に伴う停止位置のばらつきや、ラックのガタつきやラック停止時の振動などの外乱の影響を受けやすく、これらもセンサの誤作動につながる。このようなセンサの誤作動により、本来は正常に動作している場合においてもエラーとして検知され測定動作を停止したり、検体を取り違える等の一因となる場合が想定された。
【0020】
本発明は上記問題を解決するものであり、ラックの汚れなどの状態変化や、ラックのガタつきやラックの動作に伴う外乱の影響を緩和することで、分注時においてラックの位置を正確に検知し、安定したラック移動を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、この発明の第1の形態は、複数のサンプル容器を直線状に並べて配置可能に構成され、前記サンプル容器が並べられた方向の端部に、位置の基準となる位置基準部が設けられたラックと、配列された複数の前記ラックを所定の搬送路上を搬送する搬送手段と、前記搬送手段に配置された前記ラックを前記搬送路と直交する方向に引込み、前記ラックを前記サンプル容器が並べられた方向に移動させることで、前記ラックに配置された前記サンプル容器それぞれを所定の吸引位置に遂次移動させ、吸引動作後に前記ラックを前記搬送路上に移動させるラック移動手段と、前記ラックを前記サンプル容器が並べられた方向に移動させるときに、前記位置基準部の位置を検出して前記ラックの位置を特定し前記ラック移動手段へ通知するラック位置特定手段とを備え、前記ラック移動手段が、前記ラック位置特定手段が特定した前記ラックの位置を基に、前記ラックを前記吸引位置に移動させるように制御することを特徴とする自動分析装置である。
【発明の効果】
【0022】
本願発明に係る自動分析装置では、ラックの位置を検出するための基準となる位置基準部を、該ラックのサンプル容器を並べた方向の端部、つまり、操作者がラックを直接操作する際に触れにくい位置に設けた。これにより、位置基準部の汚れなどに伴う状態変化の影響を受けにくくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明に係る自動分析装置の平面図である。
【図2】図1におけるII部の拡大平面図である。
【図3】ラックの構成を説明するための図2における矢印IIIの方向からの矢視図である。
【図4】特定のバーコードリーダーにより、サンプリングレーンにおけるラックの位置と、バーコードのスキャン範囲に対するラックID(バーコード)の幅との関係の計測結果の例である。
【図5】図1におけるII部において反射部材を設けた構成を説明するための拡大平面図である。
【図6】従来の自動分析装置における反応部へのラックの引込みに係る動作を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
本願発明に係る自動分析装置の構成について図1を参照して説明する。図1は、本願発明に係る自動分析装置の平面図である。なお以降では、自動分析装置の左右方向(図1の左右方向)をX軸方向、前後方向(図1の上下方向)をY軸方向(図1の上方を後方とし、下方を前方する)、高さ方向(図1の紙面に直交する方向)をZ軸方向として説明する。
【0025】
図1に示すように、自動分析装置Bは、反応部Hと、サンプラ部Sとで構成される。反応部Hは、血清等に試薬を加えて発色反応を行う領域である。またサンプラ部Sは、試料を順次搬送する領域である。
【0026】
前記反応部Hには、横長の長方形の台11の右方に試薬容器12aが同心円状に配列された第1試薬庫12が配置されている。該第1試薬庫12の左側面に沿って第1試薬アーム14が配置されている。第1試薬アーム14は、試薬容器12aを後述する反応ライン15に移動する。第1試薬庫12の左方には第2試薬庫13が配置されている。また、第2試薬庫13の右後方側面に沿って第2試薬アーム16が配置されている。さらに、第2試薬庫13と第2試薬アーム16を囲むように試料に試薬を添加して反応させる反応ライン15が配置されている。反応ライン15の左方には試薬が添加された試料の測定を行う測光部17が配置されている。また、反応ライン15の左後方には反応ライン15の試料と試薬を撹拌する撹拌器18が配置されている。さらに、反応ライン15の右後方には使用済みの反応ライン15を洗浄・乾燥を行う洗浄・乾燥ユニット19が配置されている。
【0027】
また、台11のサンプラ部S側には、サンプリングアーム21が配置されている。サンプリングアーム21により、サンプリング容器31から試料を反応ライン15に分注する(サンプリング容器31については後述する)。サンプリングアーム21の右方にはラックIDバーコードリーダー22が配置されている。ラックIDバーコードリーダー22により、ラック30の後端面(ラック背面)に形成されたラックIDを示すバーコード(以降は「ラック識別バーコード」と呼ぶ)301aを読み取る(ラック30等については後述する)。
【0028】
前記サンプラ部Sは、搬送手段20と、搬送手段20に載置されて搬送されるトレイ(図示しない)およびトレイに載置されたラック30により構成されている。搬送手段20は、前記台11の長手方向(図1におけるX軸方向)に沿って配置され正逆回転可能に構成されている。搬送手段20には、例えば、ベルトコンベアが用いられる。このとき搬送手段20により、前記トレイ及び該トレイに載置されたラック30が搬送される経路が搬送路に相当する。
【0029】
ラック30の構成及びII部の構成について、図2及び図3を参照しながらさらに詳しく説明する。II部は、サンプラ部Sから反応部Hにラック30を引込む部分を示している。図2は、図1におけるII部の拡大平面図である。また図3は、ラックの構成を説明するための図2における矢印IIIの方向からの矢視図である。なお、ラック引込み装置251、及び、ラック押戻し装置252は従来の自動分析装置と同様の構成であり、図2には図示していない。
【0030】
ラック30は、図2及び図3に示すように自動分析装置の上方(図3のZ軸方向)から見て長尺状の形状をなしている。ラック30は、5本のサンプリング容器31a〜31eがZ軸方向に挿入・自立されるように構成されている。ラック30の前面には当該ラックを識別するための識別符号を印刷したラベル(図示しない)が貼付されている。また、ラック30の背面301には該ラックを識別するためのラック識別バーコード301aが印刷されたラベルが貼付されている。
【0031】
ここで図2を参照する。ラック検知センサ231は、搬送手段20におけるラック30を反応部Hに引込む位置の手前側に位置している。ラック検知センサ231は、ラック30のY軸方向手前側の端部を検知する。これによりラック検知センサ231は、搬送手段20によりラック30が反応部Hに引込む位置に移動したことを検知する。ラック検知センサ231には、主に反射型光センサ等が用いられる。
【0032】
ラック検知センサ231によりラック30が検知されると、ラックIDバーコードリーダー22が該ラックの背面301に設けられたラック識別バーコード301aを読み出す。ラックIDバーコードリーダー22は、ラック識別バーコード301aから読み出した識別情報を自動分析装置Bの制御部(図示しない)に出力する(この識別情報により、自動分析装置Bは反応部Hに引込まれるラック30を特定する)。
【0033】
自動分析装置Bの下面には従来の自動分析装置(図6参照)と同様にラック引込み装置251が配置されている。なお、ラック引込み装置251の構成は従来と同様である。ラックIDバーコードリーダー22が、ラック識別バーコード301aを読み出すと、ラック引込み装置251により、ラック30が搬送手段20からY軸方向の後方に位置する反応部H内のあらかじめ決められた位置(所定の位置)H1に引込まれる。具体的には、ラック引込み装置251の出力軸R1の先端は上方に折り曲げられ、引掛け部(図示しない)が形成されている。また、ラック30の底面には凹部が形成されている。この凹部に前記引掛け部が引掛けられ、ラック30をサンプラ部Sから反応部H側に移動させる。
【0034】
このとき、ラック検知センサ233、ピッチセンサ235、及び、ラック検知センサ237と、ラック検知センサ239とを組み合わせ、ラック引込みの動作におけるラック30の位置を検知する。ラック検知センサ233、ピッチセンサ235、及び、ラック検知センサ237は、出力軸R1により引き出されるラック30の右側に位置する。また、ラック検知センサ239は、該ラックの後方に位置する。このラック30の位置の検知により、該ラック引込み装置251の動作、具体的には前記所定の位置H1への停止に係る動作、異常時の緊急停止の動作等が制御される。ラック検知センサ233、ピッチセンサ235、ラック検知センサ237、及び、ラック検知センサ239には、主に反射型光センサ等が用いられる。
【0035】
例えば、ラック引込み装置251によるラック30の引込みが開始されるとラック検知センサ233がONとなる。また、ラック30がラック検知センサ233の検知領域を通過するとラック検知センサ233がOFFとなり、ピッチセンサ235、ラック検知センサ237、及び、ラック検知センサ239がONとなる。これにより、ラック30が前記位置H1に移動したことを検知する。各センサからの通知を受け、前記ラック引込み装置251は、位置H1へラック30が移動されたことを検知しラック30の引込みに係る動作を停止する。なお、このラック30の引込みに係る制御については従来と同様であり具体的な説明は省略する。
【0036】
ラック横移動装置24は、該ラック引込み装置251により前記所定の位置H1に引込まれたラック30を左方のサンプリングレーンR2に移動させる。サンプリングレーンR2のY軸方向後方には位置センサ261が設けられている。ラック30は、ラック横移動装置24により位置センサ261の検知範囲に押出される。位置センサ261によりラック30の背面301が検知されると、ラック横移動装置24はラック30の左方への移動を完了(停止)する(位置センサ261については後述する)。また、このとき搬送手段20は、ラック30の左方への移動に連動して左方に移動する。これにより、搬送手段20上のラック30が載置されていた開口S1が、ラック30の左方への移動と連動して左方へ移動する。
【0037】
ラック30がサンプリングレーンR2に移動されると、ラック押戻し装置252が該ラック30を後方から押し出し、サンプリングレーンR2に沿ってサンプラ部S側の搬送手段20上に戻す。このとき自動分析装置Bは、各サンプリング容器31a〜31eがサンプリングポイントP1に順次移動されるように、該ラック押戻し装置252によりラック30を手前方向にピッチ移動させながら、サンプリングアーム21(図1に図示)により各サンプリング容器31a〜31eから試料を吸引する。
【0038】
ラック30のピッチ移動に係る制御について更に詳しく説明する。サンプリングレーンR2のY軸方向後方には位置センサ261が設けられている。この位置センサ261によりサンプリングレーンR2上におけるラック30の位置を特定する。
【0039】
このとき、位置センサ261は、該位置センサ261からラック30の背面301までの距離を測定することで、サンプリングレーンR2上におけるラック30の位置を特定する。この距離を正確に測定するために、位置センサ261が距離を測定するためのレーザーの光路が、Z軸方向から見てラック30をピッチ移動させる方向、つまり、サンプリング容器31a〜31eが並べられた方向に平行(サンプリングレーンR2に平行)となるように、位置センサ261を設置すると良い。
【0040】
位置センサ261の具体的な構成について、例をあげて説明する。位置センサ261には、例えば、バーコードの両端を検知することで、バーコードのスキャン範囲に対するスキャン対象となるバーコードの幅が占める割合(以降は「ラベル幅情報」と呼ぶ)を算出可能な、レーザーラスター式のバーコードリーダーを用いる。この場合、位置センサ261は、ラック30の背面301に設けられたラック識別バーコード301aをスキャンの対象とする。
【0041】
このとき、位置センサ261がバーコードのスキャンに用いるレーザーは、その光源を基点として略扇形に照射される。そのため、位置センサ261のスキャン範囲は、位置センサ261から遠ざかるほど広くなるように形成される。そのため、ラック押戻し装置252により、ラック30を位置センサ261から遠くに移動させるほど、位置センサ261のスキャン範囲に対するラック識別バーコード301aの幅の割合が狭くなる。よって、ラック30の移動において、サンプリングポイントP1に各サンプリング容器31a〜31eを移動したときの、ラベル幅情報をあらかじめ求めておくことで、サンプリングレーンR2上のラック30の位置を特定することが可能となる。
【0042】
図4は、位置センサ261による、サンプリングレーンR2におけるラック30の位置と、ラベル幅情報との関係の計測結果である。図4において、縦軸はバーコードリーダーのスキャン範囲を10000とした場合のラベル幅情報を示している。また、横軸はラック30の位置を示している。例えば、図4の横軸における「1」は、1ピッチ目を示している。つまり「1」は、サンプリングポイントP1にサンプリング容器31aが位置する場合を示している。同様に図4の横軸における「5」は、5ピッチ目を示している。つまり「5」は、サンプリングポイントP1にサンプリング容器31eが位置する場合を示している。
【0043】
例えば図4では、ラベル幅情報(縦軸の値)が1ピッチ目の4350であるとき、サンプリングポイントP1にはサンプリング容器31aが位置していることになる。ここからラック30をY軸手前方向に1ピッチ移動し、サンプリング容器31bをサンプリングポイントP1に移動する場合、ラベル幅情報が2ピッチ目の3200となる位置まで、ラック30を移動するようにラック押戻し装置252を制御すれば良い。
【0044】
このとき、位置センサ261がラック識別バーコード301aを正常値内で読み取れない場合は、エラーとしてラック押戻し装置252によるラック30の移動を停止するようにしても良い。
【0045】
なお、位置センサ261は、サンプリングレーンR2上におけるラック30の位置を検知できれば、上述したバーコードリーダーを用いる構成に限るものではない。例えば、位置センサ261として測距センサを用いても良い。この場合、位置センサ261からラック30の背面301までの距離を検知し、ラック30の位置を特定する。
【0046】
全てのサンプリング容器31a〜31eからの試料の分注が完了すると、ラック押戻し装置252はラック30をサンプリングレーンR2に沿ってY軸方向の手前方向に押し出し、搬送手段20上(搬送路上)の該ラック30が載置されていた開口S1に戻す。
【0047】
このとき、ラック検知センサ234と、ラック検知センサ232とを組み合わせて、搬送手段20上へ移動されるラック30の位置を検知する。このラック30の位置の検知により、ラック押戻し装置252の、搬送手段20上へのラック30の停止に係る動作や、異常時の緊急停止の動作等が制御される。ラック検知センサ232及び234には、主に反射型光センサ等が用いられる。
【0048】
例えば、ラック押戻し装置252が搬送手段20に向けてラック30を移動させ始めるとラック検知センサ234がONとなる。また、ラック30がラック検知センサ234の検知領域を通過すると、ラック検知センサ234がOFFとなり、ラック検知センサ232がONとなる。これにより、ラック30が搬送手段20上に移動したことを検知する。この各センサからの通知を受け、ラック押戻し装置252は、搬送手段20上へのラック30の押し出しに係る動作を停止する。
【0049】
なお、上述したラック引込み装置251、ラック横移動装置24、及び、ラック押戻し装置252がラック移動手段に相当する。
【0050】
また、位置センサ261は、サンプリングレーンR2に沿ったラック30の位置が検知できれば良く、必ずしもサンプリングレーンR2のY軸方向後方に配置される必要はない。例えば、図5に示すように、反射部材262を設けることで位置センサ261を図2とは異なる位置に配置することもできる。図2及び図5に示すように、位置センサ261が距離を測定するための光センサの光路のうち、該センサの検知対象に接する光路の一部が、Z軸方向から見てラック30をピッチ移動させる方向と平行になっていれば十分である。
【0051】
以上で説明したように、この実施形態に係る自動分析装置では、試料の吸引動作に伴うラックのピッチ移動において、ラックの位置を検出するための基準となる位置基準部(例えばラック識別バーコード301a)を、該ラックのサンプル容器を並べた方向の端部(ラックの背面301)に設けている。この端部は、操作者がラックを直接操作する際にも触れにくい位置である。そのため、位置基準部の汚れなどに伴う状態変化の影響を受けにくくすることが可能となる。
【0052】
また、単一のセンサ(位置センサ261)による特定の位置基準部(例えばラック識別バーコード301a)のセンシングにより、ラックの位置に関する複数の状態を検知する構成となる。複数の状態としては、例えば、サンプリングポイントP1にサンプリング容器31a〜31eそれぞれが位置する状態が該当する。これにより、複数のセンサを用いる従来の自動分析装置の構成のように、本来の状態を異なる状態として検知する等の誤作動を回避することが可能となる。なお前記誤作動とは、具体的には、サンプリングポイントP1にサンプリング容器31bが位置する状態を、サンプリング容器31cが位置する状態と誤って認識するといった誤認識等が該当する。これにより、正常に動作している場合においても、エラーとして検知されることで測定動作が停止したり、患者検体(試料)を取り違えるといった誤動作の発生を回避することが可能となる。また、ラック移動の誤動作を正しく認識することができ、異常動作を誤りなく停止することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
B 自動分析装置 H 反応部 S サンプラ部
11 台 12 第1試薬庫 13 第2試薬庫
14 第1試薬アーム 15 反応ライン 16 第2試薬アーム
17 測光部 18 撹拌器 19 洗浄・乾燥ユニット
20 搬送手段 21 サンプリングアーム
22 ラックIDバーコードリーダー
231、232、233、234、237、238、239 ラック検知センサ
235、236 ピッチセンサ 24 ラック横移動装置
251 ラック引込み装置 252 ラック押戻し装置
261 位置センサ
30 ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサンプル容器を直線状に並べて配置可能に構成され、前記サンプル容器が並べられた方向の端部に、位置の基準となる位置基準部が設けられたラックと、
配列された複数の前記ラックを所定の搬送路上を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に配置された前記ラックを前記搬送路と直交する方向に引込み、前記ラックを前記サンプル容器が並べられた方向に移動させることで、前記ラックに配置された前記サンプル容器それぞれを所定の吸引位置に遂次移動させ、吸引動作後に前記ラックを前記搬送路上に移動させるラック移動手段と、
前記ラックを前記サンプル容器が並べられた方向に移動させるときに、前記位置基準部の位置を検出して前記ラックの位置を特定し前記ラック移動手段へ通知するラック位置特定手段とを備え、
前記ラック移動手段が、前記ラック位置特定手段が特定した前記ラックの位置を基に、前記ラックを前記吸引位置に移動させるように制御することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記ラック位置特定手段が、前記位置基準部までの距離を測定し、前記距離を基に、前記ラックの前記サンプル容器が並べられた方向への移動における前記位置基準部の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記ラック位置特定手段が、バーコードリーダーであり、前記位置基準部がバーコードであって、
前記ラック位置特定手段が、バーコードのスキャン範囲において前記位置基準部が占める範囲の割合を基に、前記位置基準部までの距離を特定することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−237190(P2011−237190A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106440(P2010−106440)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】