自動分注装置
【課題】 分注ヘッドの位置調整を行うことのできる自動分注装置を提供する。
【解決手段】 自動分注装置は、分注ヘッドと、移送部と、制御装置と、検出部と、調整部とを備えている。分注ヘッドは、複数の分注チップを装着して液体の吸引及び吐出を行う。移送部は、分注ヘッドをXYZ空間において移動させる。制御装置は、分注ヘッドによる吸引及び吐出、並びに、移送部による分注ヘッドの移動を制御する。検出部は、分注ヘッドに分注チップが装着されているか否かを検出する。調整部は、分注ヘッドのXY平面における基準位置を検出部のXY平面における基準位置に一致させる調整を行う。
【解決手段】 自動分注装置は、分注ヘッドと、移送部と、制御装置と、検出部と、調整部とを備えている。分注ヘッドは、複数の分注チップを装着して液体の吸引及び吐出を行う。移送部は、分注ヘッドをXYZ空間において移動させる。制御装置は、分注ヘッドによる吸引及び吐出、並びに、移送部による分注ヘッドの移動を制御する。検出部は、分注ヘッドに分注チップが装着されているか否かを検出する。調整部は、分注ヘッドのXY平面における基準位置を検出部のXY平面における基準位置に一致させる調整を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動分注装置に関し、特に分注ヘッドの位置調整を行うことのできる自動分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分野等で行われる試験や分析においては、検体や試薬等の液体を試料容器に小分けして移注する分注作業が行われる。分注作業は、分注チップを装着した分注ヘッドによって液体を吸収・吐出することにより行われる。分注チップは、通常、使い捨てタイプであり、使用毎に新しい分注チップと交換される。
【0003】
近年、分注作業の量は膨大傾向にあり、手動による分注作業では効率が悪い。また、手動では、分注チップの装着忘れや装着不良等の問題も生じる。そのため、近年では、分注作業が手動から自動へと移行している。
【0004】
従来の自動分注装置は、分注チップが複数配列されたチップラックと、分注チップを装着して分注を行う分注ヘッドと、チップラック上の分注チップの有無を判別するセンサとを備えている。センサは、チップラック上に残存する分注チップの有無を監視することにより、分注チップが分注ノズルに装着されたか否を判断する。例えば、装着されているはずの分注チップがチップラック上に残存している場合には、センサは、誤装着が生じたと判断する。このようにして、分注チップの分注ヘッドへの誤装着を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−295323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の自動分注装置では、自動分注装置内でのチップラックやセンサが所定の位置からずれていると、センサは、検出すべき位置で検出を行うことができない。例えば、センサが所定の位置からずれ、分注チップ間を監視することになっていたならば、残存する分注チップは無し、すなわち、全てのチップが装着済みと判断されてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、分注ヘッドの位置調整を行うことのできる自動分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の分注チップを装着して液体の吸引及び吐出を行う分注ヘッドと、分注ヘッドをXYZ空間において移動させるための移送部と、分注ヘッドによる吸引及び吐出、並びに、移送部による分注ヘッドの移動を制御するための制御装置と、分注ヘッドに分注チップが装着されているか否かを検出する検出部と、分注ヘッドのXY平面における基準位置を検出部のXY平面における基準位置に一致させる調整を行うための調整部を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような構成によると、分注ヘッドのXY平面における基準位置と検出部のXY平面における基準位置とがずれてしまった場合でも、分注ヘッドと検出部の基準位置を一致させる調整を行うため、分注ヘッドに装着された分注チップを確実に検出することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御装置は、検出部からの信号に基づいて信号の波形を表示する波形表示部を備えたことを特徴としている。
【0010】
このような構成によると、波形表示部には、分注チップの位置を示す波形が表示される。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御装置は、検出部からの信号に基づいて分注ヘッドの基準位置調整を自動的に行うことを特徴としている。
【0012】
このような構成によると、分注ヘッドのXY平面における基準位置と検出部のXY平面における基準位置とがずれてしまった場合に、制御装置は、分注ヘッドと検出部の基準位置を一致させる調整を自動的に行う。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御装置は、検出部からの信号に基づいて、検出部が所望の検出対象を検出できるように検出部の調整を促す検出部調整表示部を備えたことを特徴としている。
【0014】
このような構成によると、検出部が所定の位置からずれている場合、制御装置は、検出部がずれている旨を検出部調整表示部に表示する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の自動分注装置によれば、分注ヘッドと検出部の基準位置を一致させる調整により、分注ヘッドが正確な位置に配置されるため、分注チップを正確に検出することができる。
【0016】
本発明の請求項2に記載の自動分注装置によれば、波形表示部に分注チップの位置を示す波形が表示されるため、分注ヘッドがどれだけ所定の位置からずれているかを容易に知ることができ、これにより、分注ヘッドの位置ずれを容易に調整することができる。
【0017】
本発明の請求項3に記載の自動分注装置によれば、制御装置が分注ヘッドのXY平面における基準位置と検出部のXY平面における基準位置との調整を自動的に行うため、ユーザが調整を行う場合と比べて手間及び時間を節約することができる。
【0018】
本発明の請求項4に記載の自動分注装置によれば、検出部が所定の位置からずれている場合、検出部調整表示部は、検出部がずれている旨を表示してユーザに調整を促すため、検出部自体の位置ずれによる検出ミスを防止することができ、これにより、分注ヘッドのより正確な位置調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の実施の形態による自動分注装置について図1から図6を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態による自動分注装置1の斜視図である。自動分注装置1は、自動分注装置本体2と、制御装置3と、通信ケーブル4とを備えている。
【0020】
自動分注装置本体2は、移送部5と、分注ヘッド6と、回路部7と、分注チップ容器8、9と、試薬容器10、11と、マイクロプレート12と、廃棄容器13とを備えている。自動分注装置本体2内では、分注チップ容器8、試薬容器10、マイクロプレート12が一列に並んでおり、これらと平行に分注チップ容器9、試薬容器11、廃棄容器13が一列に並んでいる。また、廃棄容器13−マイクロプレート12間の幅は、廃棄容器13−試薬容器11間の幅よりも広い。本実施の形態では、分注チップ容器8、試薬容器10、マイクロプレート12の順番に並ぶ方向をX軸のプラス方向とする。また、X軸と直交し、かつ、廃棄容器13からマイクロプレート12へ向かう方向をY軸のプラス方向とする。また、分注ヘッド6の移動に関しては、分注ヘッド6が上昇する方向をマイナス方向、下降する方向をプラス方向とする。
【0021】
移送部5は、図示しないステッピングモータにより、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ駆動される。分注ヘッド6は、移送部5の先端に配置されており、一列に並んで配置された12連のシリンジ1a〜12a(図示せず)を備えている。各シリンジは、分注チップ14を装着することができ、隣り合うシリンジ同士の間隔は、9mmとなっている。また、分注ヘッド6は、X軸−Y軸間で90度に旋回できるような構成となっているため、X軸方向、Y軸方向のどちら方向からでも分注動作を行うことができる。回路部7は、制御装置3に入力された条件に基づいて、自動分注装置本体2を駆動させるための回路であり、移送部5をX、Y、Z方向に移動させるための駆動回路、各種センサからの信号を入力する回路、及びマイクロプロセッサ(CPU)などから構成されている。
【0022】
分注チップ容器8、9は、分注チップ14を収納するための容器であり、9mm間隔で分注チップ収納ウェルが配置されている。分注チップ14は、試薬を一時的に蓄えるための容器で、分注ヘッド6に装着される。試薬容器10、11には、分注ヘッド6によって分注チップ14内に吸引される試薬が収容されている。マイクロプレート12には、縦8、横12の96ウェルが9mm間隔で格子状に配置されており、ウェルには、分注チップ14内に収容された試薬が吐出される。
【0023】
廃棄容器13は、使用済みの分注チップ14が廃棄されるための容器である。廃棄容器13は、分注ヘッド6に分注チップ14が装着されているか否かを検出するための分注チップ検出センサ19を備えている。図2は、本実施の形態による分注チップ検出センサ19を配置した廃棄容器13の斜視図である。廃棄容器13はX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な辺から構成される直方体形状を有しており、分注チップ検出センサ19は、廃棄容器13の上部に設けられている。
【0024】
分注チップ検出センサ19は、一対の発光受光部19aと反射板19bから構成されており、発光受光部19aと反射板19bは、廃棄容器13の上部であって直方体の対角付近に対向して配置されている。そのため、発光受光部19aが発した光は反射板19bに反射され、再び発光受光部19aに入射することとなる。分注チップ検出センサ19が検出したデータは、制御装置3に送信される。
【0025】
制御装置3は、汎用のパーソナル・コンピュータであり、LAN(Local Area Network)などの通信ケーブル4によって自動分注装置本体2と接続されている。制御装置3は、分注ヘッド6のXY平面における基準位置を調整するための調整画面30を備えている。調整作業は、分注チップ14を分注チップ検出センサ19によって検出することにより行われる。図3に示すように、調整画面30は、XYZ座標入力欄31と、縦方向選択ボタン32aと、横方向選択ボタン32bと、検出開始ボタン33aと、検出停止ボタン33bと、波形表示画面34とを備えている。
【0026】
XYZ座標入力欄31では、分注ヘッド6の基準位置調整のための分注チップ14の検出開始位置が設定される。移送部5を制御して分注ヘッド6を所望の位置に移動させるためには、移動の開始点や終了点などのXYZ座標を予め制御装置3に登録しておく必要がある。そのため、座標入力欄31には、分注チップ14の検出を行うための検出開始位置を分注ヘッド6の向き毎に登録できるようになっている。座標入力欄31の数値は、XYZ各軸の原点からの絶対座標で表され、0.1mm単位で設定することができる。例えば、図3の縦方向のX座標に書き込まれている「2980」という数値は、検出開始位置がX軸の原点位置から298.0mmの位置であることを示している。なお、座標入力欄31に入力する数値の理論値は、移送部5、分注ヘッド6、検出センサ19等の寸法から予め分かっているため、制御装置3にはこの理論値を初期値として設定しておけば良い。
【0027】
縦方向選択ボタン32aは、分注ヘッド6の向きを縦方向に選択するためのボタンである。縦方向とは、Y軸方向のことを意味する。横方向選択ボタン32bは、分注ヘッド6の向きを横方向に選択するためのボタンである。横方向とは、X軸方向のことを意味する。検出開始ボタン33aは、分注チップ14の検出の開始をするためのボタンであり、検出開始ボタン33aが押されることにより、分注ヘッド6はXYZ座標入力欄31で入力された座標へ移動する。検出停止ボタン33bは、分注ヘッド14の検出の停止をするためのボタンであり、検出停止ボタンが押されることにより、分注ヘッド6は、移動を停止する。波形表示画面34には、分注チップ検出センサ19による検出結果が波形として表示される。
【0028】
また、図示しないが、制御装置3は、波形変換部と、補正部と、分注チップ検出センサ調整表示部と、分注工程入力部も備えている。波形変換部は、波形表示画面34に信号波形を表示するために、分注チップ検出センサ19からのデータを波形に変換する。補正部は、座標入力欄31に設定されている座標データを調整後の座標データに自動的に書き換える。分注チップ検出センサ調整表示部は、分注チップ検出センサ19の調整を促すメッセージを表示する。分注工程入力部には、ユーザが所望の分注工程を入力することで、自動分注装置1が入力された分注工程を自動的に行う。
【0029】
次に、分注チップ14の検出開始位置の調整、すなわち、分注ヘッド6の基準位置調整をする調整作業について説明する。まず、分注ヘッド6のシリンジに分注チップ14を装着し、調整画面30で分注ヘッド6の向きを選択する。次に、座標入力欄31には、制御装置3に予め記憶されている検出開始位置の理論値が表示される。図4(a)は、分注ヘッド6の向きが縦方向の場合の検出開始位置を示した図であり、図4(b)は、分注ヘッド6の向きが縦方向の場合の検出終了位置を示した図である。この場合、分注ヘッド6のシリンジ1aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置が、分注ヘッド6が縦方向の場合の検出開始位置40となる。従って、座標入力欄31には、制御装置3に予め記憶されている検出開始位置40のXYZ座標の理論値が表示される。
【0030】
また、図5(a)は、分注ヘッド6の向きが横方向の場合の検出開始位置を示した図であり、図5(b)は、分注ヘッド6の向きが横方向の場合の検出終了位置を示した図である。この場合には、分注ヘッド6のシリンジ1aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置が、分注ヘッド6が横方向の場合の検出開始位置50となる。従って、座標入力欄31には、制御装置3に予め記憶されている検出開始位置50のXYZ座標の理論値が表示される。なお、各検出開始位置のXYZ座標の理論値は手動で入力しても良い。
【0031】
次に、検出開始ボタン33aを押して検出を開始させる。途中で検出を終了したい場合には、検出停止ボタン33bを押せば良い。検出開始ボタン33aが押されると、移送部5は、座標入力欄31の縦方向又は横方向の欄に入力されている座標へ分注ヘッド6の移動を開始させる。すなわち、図4(a)に示す縦方向の検出開始位置40、又は、図5(b)に示す横方向の検出開始位置50に分注ヘッド6を移動させる。
【0032】
分注ヘッド6の移動に伴い、分注ヘッド6に装着された分注チップ14も移動する。分注チップ14が発光受光部19aと反射板19bを結ぶ光路19c上に位置している場合には、発光受光部19aから発光された光は、分注チップ14によって遮られて反射板19bには届かない。一方、各分注チップ14間の隙間が光路19c上に位置している場合には、発光受光部19aから発光された光は、反射板19bに到達して反射され、発光受光部19aによって再び受光される。
【0033】
なお、発光受光部19aと反射板19bとは廃棄容器13の対角付近上に設けられているため、分注ヘッド6が縦方向を向いている場合でも、横方向を向いている場合でも、分注ヘッド6と光路19cとは角度を有する。本実施の形態では、この角度を45度としている。そのため、分注ヘッド6がどちらの方向を向いている場合でも、各分注チップ14は光路19cと一本ずつ順次に交わることとなる。
【0034】
分注ヘッド6が縦方向の場合、分注ヘッド6が検出開始位置40の位置に移動すると、分注チップ検出センサ19は、まず、シリンジ1aに装着された分注チップ14についての検出を行う。検出されたデータは、制御装置3に送信される。シリンジ1aに装着された分注チップ14についてのデータの制御装置3への送信が完了すると、続いて、分注ヘッド6は、シリンジ2aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19に検出される位置まで移動する。以下、同様にして、移送部5は、シリンジ12aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置まで分注ヘッド6を移動させる。すなわち、分注ヘッド6は、縦方向の検出終了位置41まで移動する。
【0035】
分注ヘッド6が横方向の場合にも同様に、分注ヘッド6が検出開始位置50の位置から検出終了位置51まで移動し、各分注チップ14が検出される。ここで、廃棄容器13−マイクロプレート12間の幅よりも廃棄容器13−試薬容器11間の幅の方が狭い。従って、分注ヘッド6が縦方向のときと同様に分注ヘッドを一直線に移動させると、分注ヘッド6に装着された分注チップ14が図1に示す試薬容器11に衝突してしまう。そのため、分注ヘッド6が横方向の場合には、分注ヘッド6を、X方向のみならずY方向へも移動させる。具体的には、XY座標ともに49.5mm移動する。なお、分注ヘッド6の移動方向において自動分注装置2内に障害物が無い場合には、縦方向と同様に一直線に移動させれば良い。
【0036】
制御装置3に入力されたデータは、波形変換部によって波形に変換される。波形表示画面34は、その信号波形を表示する。図3に示す波形表示画面34中の数値1から数値12は、分注ヘッド6の基準位置と分注チップ検出センサ19の基準位置とがずれていない場合に、分注チップ14の中心が表示される検出中心位置67に対応している。例えば、図4では、分注ヘッドのシリンジ1aに装着された分注チップ14が数値1に対応し、シリンジ12aに装着された分注チップ14が数値12に対応している。分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光しているときには、波形表示画面34はONとなり、遮光していないときには、波形表示画面34はOFFとなる。
【0037】
次に、制御装置3は、座標入力欄31に設定されている座標データを自動的に調整する補正を行う。図6(a)〜(d)は、波形表示画面34に表示される信号波形の例を示した図である。分注ヘッド6が縦方向の場合で説明すると、図6(a)に示すように、12個のON信号66の位置が検出中心位置67に対して右側にずれている状態60のときには、検出開始位置40がY軸マイナス側にずれていることを意味している。従って、この場合には、検出開始位置40をY軸プラス側にずらす必要がある。ここで、検出中心位置67間の間隔は9mmであるため、ON信号66が検出中心位置67に対してどれだけずれているかは容易に計算することができる。制御装置3がこのずれている分を座標入力欄31のY座標にプラスすることで分注チップ検出位置の調整は終了する。
【0038】
一方、図6(b)に示すように、12個のON信号66の位置が検出中心位置67に対して左側にずれている状態61のときには、検出開始位置40がY軸プラス側にずれていることを意味している。従って、この場合には、制御装置3がこのずれている分を座標入力欄31のY座標からマイナスすることで分注チップ検出位置の調整を終了する。なお、分注チップ14の製造精度により、分注チップ14と検出中心位置67とのずれが、分注チップ14毎に異なる場合がある。この場合は、各分注チップ14と検出中心位置67とのずれの平均値を用いて調整を行えば良い。
【0039】
このように、分注ヘッド14がどれだけ所定の位置からずれているかを容易に知ることができるため、分注ヘッド14の位置ずれを容易に調整することができる。また、制御装置3が分注ヘッドのXY平面における基準位置と検出部のXY平面における基準位置との調整を自動的に行うことにより、人が調整する場合と比べて手間及び時間を節約することができる。なお、波形表示画面34に表示された分注チップ14の位置を示す波形を基に、人が座標入力欄31に数値を入力することにより基準位置の微調整を行うこともできる。
【0040】
一方で、横方向における分注チップ14の検出の場合には、数値1から数値12に向かうに連れて、ON信号66の位置が、検出中心位置67に対して徐々に右側にずれていく状態62(図6(c))や左側にずれていく状態63(図6(d))となる場合がある。横方向における分注チップ14の検出の場合、図5から分かるように、分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置が一定ではなく、検出開始位置50から検出終了位置51に移動するに連れて発光受光部19aから遠ざかって行く。状態62や状態63は、分注チップ検出センサ19の光路19cとX軸とのなす角が正確に45度となっていないことを示す。従って、この場合には、発光受光部19a及び反射板19bの取り付け状態を調整する必要がある。
【0041】
図6(c)に示すように、右側にずれていく状態62の場合には、図5において、発光受光部19aを反時計回りの方向に角度調整すれば良い。図6(d)に示すように、左側にずれていく状態63の場合には、図5において、発光受光部19aを時計回りの方向に調整すれば良い。
【0042】
また、制御装置3は、分注チップ検出センサ19が所定の位置からずれている場合に、分注チップ検出センサ19の位置がずれている旨を表示してユーザに調整を促す検出部調整表示部を備えている。従って、検出部調整表示部の内容に従うことにより、分注チップ検出センサ19自体の位置ずれによる検出ミスを防止することができる。さらに、分注チップ検出センサ19が正確な位置に配置されているため、分注ヘッドのより正確な位置調整を行うことができる。以上のような手順で、自動分注装置1は、分注ヘッド6の基準位置調整作業を行う。
【0043】
また、制御装置3は分注工程入力部を備えているため、分注工程入力部に所望の工程を入力しておけば、自動分注装置1は制御装置3に入力された内容に従って、一連の分注作業を自動的に行う。通常、一連の分注作業としては、分注チップ14の装着、試薬容器10、11からの試薬の吸引、マイクロプレート12への試薬の吐出、分注チップ14の廃棄容器13への廃棄などが順に行われる。ここで、一連の分注作業に上記調整作業を組み込んでおけば、制御装置3は、分注作業中であっても、上記調整作業を行う。そして、検出開始位置40や50の座標がずれていると判断した場合には、自動的に検出開始位置40や50などの座標を補正する。
【0044】
このようにして、本実施の形態による自動分注装置1では、分注チップ14の検出開始位置の調整、すなわち、分注ヘッド6の基準位置の調整を行うことにより、分注ヘッド6が正確な位置に配置されるため、分注チップ14の装着不良を検出することができる。
【0045】
本発明による自動分注装置1は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、分注チップ検出センサは、一方が発光し、他方が受光する構成でも良い。また、分注チップ検出センサは、超音波やエリアセンサにより検出を行う構成であっても良い。更に、分注チップ検出センサは、廃棄容器の対角付近に配置されていなくても良く、また、配置可能なら廃棄容器上以外の場所に配置されても良い。分注チップの検出に当たっては、分注ヘッドに装着された分注チップは複数本ではなく、一本であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施の形態による自動分注装置の斜視図である。
【図2】本実施の形態による分注チップ検出センサを配置した廃棄容器の斜視図である。
【図3】本実施の形態による調整画面を示した図である。
【図4(a)】分注ヘッドの向きが縦方向の場合の検出開始位置を示した図である。
【図4(b)】分注ヘッドの向きが縦方向の場合の検出終了位置を示した図である。
【図5(a)】分注ヘッドの向きが横方向の場合の検出開始位置を示した図である。
【図5(b)】分注ヘッドの向きが横方向の場合の検出終了位置を示した図である。
【図6(a)】波形表示画面に表示される信号波形の一例を示した図である。
【図6(b)】波形表示画面に表示される信号波形の他の一例を示した図である。
【図6(c)】波形表示画面に表示される信号波形の他の一例を示した図である。
【図6(d)】波形表示画面に表示される信号波形の他の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動分注装置
2 自動分注装置本体
3 制御装置
5 移送部
6 分注ヘッド
7 回路部
14 分注チップ
19 分注チップ検出センサ
30 調整画面
34 波形表示画面
【技術分野】
【0001】
本発明は自動分注装置に関し、特に分注ヘッドの位置調整を行うことのできる自動分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分野等で行われる試験や分析においては、検体や試薬等の液体を試料容器に小分けして移注する分注作業が行われる。分注作業は、分注チップを装着した分注ヘッドによって液体を吸収・吐出することにより行われる。分注チップは、通常、使い捨てタイプであり、使用毎に新しい分注チップと交換される。
【0003】
近年、分注作業の量は膨大傾向にあり、手動による分注作業では効率が悪い。また、手動では、分注チップの装着忘れや装着不良等の問題も生じる。そのため、近年では、分注作業が手動から自動へと移行している。
【0004】
従来の自動分注装置は、分注チップが複数配列されたチップラックと、分注チップを装着して分注を行う分注ヘッドと、チップラック上の分注チップの有無を判別するセンサとを備えている。センサは、チップラック上に残存する分注チップの有無を監視することにより、分注チップが分注ノズルに装着されたか否を判断する。例えば、装着されているはずの分注チップがチップラック上に残存している場合には、センサは、誤装着が生じたと判断する。このようにして、分注チップの分注ヘッドへの誤装着を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−295323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の自動分注装置では、自動分注装置内でのチップラックやセンサが所定の位置からずれていると、センサは、検出すべき位置で検出を行うことができない。例えば、センサが所定の位置からずれ、分注チップ間を監視することになっていたならば、残存する分注チップは無し、すなわち、全てのチップが装着済みと判断されてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、分注ヘッドの位置調整を行うことのできる自動分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の分注チップを装着して液体の吸引及び吐出を行う分注ヘッドと、分注ヘッドをXYZ空間において移動させるための移送部と、分注ヘッドによる吸引及び吐出、並びに、移送部による分注ヘッドの移動を制御するための制御装置と、分注ヘッドに分注チップが装着されているか否かを検出する検出部と、分注ヘッドのXY平面における基準位置を検出部のXY平面における基準位置に一致させる調整を行うための調整部を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような構成によると、分注ヘッドのXY平面における基準位置と検出部のXY平面における基準位置とがずれてしまった場合でも、分注ヘッドと検出部の基準位置を一致させる調整を行うため、分注ヘッドに装着された分注チップを確実に検出することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御装置は、検出部からの信号に基づいて信号の波形を表示する波形表示部を備えたことを特徴としている。
【0010】
このような構成によると、波形表示部には、分注チップの位置を示す波形が表示される。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御装置は、検出部からの信号に基づいて分注ヘッドの基準位置調整を自動的に行うことを特徴としている。
【0012】
このような構成によると、分注ヘッドのXY平面における基準位置と検出部のXY平面における基準位置とがずれてしまった場合に、制御装置は、分注ヘッドと検出部の基準位置を一致させる調整を自動的に行う。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御装置は、検出部からの信号に基づいて、検出部が所望の検出対象を検出できるように検出部の調整を促す検出部調整表示部を備えたことを特徴としている。
【0014】
このような構成によると、検出部が所定の位置からずれている場合、制御装置は、検出部がずれている旨を検出部調整表示部に表示する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の自動分注装置によれば、分注ヘッドと検出部の基準位置を一致させる調整により、分注ヘッドが正確な位置に配置されるため、分注チップを正確に検出することができる。
【0016】
本発明の請求項2に記載の自動分注装置によれば、波形表示部に分注チップの位置を示す波形が表示されるため、分注ヘッドがどれだけ所定の位置からずれているかを容易に知ることができ、これにより、分注ヘッドの位置ずれを容易に調整することができる。
【0017】
本発明の請求項3に記載の自動分注装置によれば、制御装置が分注ヘッドのXY平面における基準位置と検出部のXY平面における基準位置との調整を自動的に行うため、ユーザが調整を行う場合と比べて手間及び時間を節約することができる。
【0018】
本発明の請求項4に記載の自動分注装置によれば、検出部が所定の位置からずれている場合、検出部調整表示部は、検出部がずれている旨を表示してユーザに調整を促すため、検出部自体の位置ずれによる検出ミスを防止することができ、これにより、分注ヘッドのより正確な位置調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の実施の形態による自動分注装置について図1から図6を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態による自動分注装置1の斜視図である。自動分注装置1は、自動分注装置本体2と、制御装置3と、通信ケーブル4とを備えている。
【0020】
自動分注装置本体2は、移送部5と、分注ヘッド6と、回路部7と、分注チップ容器8、9と、試薬容器10、11と、マイクロプレート12と、廃棄容器13とを備えている。自動分注装置本体2内では、分注チップ容器8、試薬容器10、マイクロプレート12が一列に並んでおり、これらと平行に分注チップ容器9、試薬容器11、廃棄容器13が一列に並んでいる。また、廃棄容器13−マイクロプレート12間の幅は、廃棄容器13−試薬容器11間の幅よりも広い。本実施の形態では、分注チップ容器8、試薬容器10、マイクロプレート12の順番に並ぶ方向をX軸のプラス方向とする。また、X軸と直交し、かつ、廃棄容器13からマイクロプレート12へ向かう方向をY軸のプラス方向とする。また、分注ヘッド6の移動に関しては、分注ヘッド6が上昇する方向をマイナス方向、下降する方向をプラス方向とする。
【0021】
移送部5は、図示しないステッピングモータにより、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ駆動される。分注ヘッド6は、移送部5の先端に配置されており、一列に並んで配置された12連のシリンジ1a〜12a(図示せず)を備えている。各シリンジは、分注チップ14を装着することができ、隣り合うシリンジ同士の間隔は、9mmとなっている。また、分注ヘッド6は、X軸−Y軸間で90度に旋回できるような構成となっているため、X軸方向、Y軸方向のどちら方向からでも分注動作を行うことができる。回路部7は、制御装置3に入力された条件に基づいて、自動分注装置本体2を駆動させるための回路であり、移送部5をX、Y、Z方向に移動させるための駆動回路、各種センサからの信号を入力する回路、及びマイクロプロセッサ(CPU)などから構成されている。
【0022】
分注チップ容器8、9は、分注チップ14を収納するための容器であり、9mm間隔で分注チップ収納ウェルが配置されている。分注チップ14は、試薬を一時的に蓄えるための容器で、分注ヘッド6に装着される。試薬容器10、11には、分注ヘッド6によって分注チップ14内に吸引される試薬が収容されている。マイクロプレート12には、縦8、横12の96ウェルが9mm間隔で格子状に配置されており、ウェルには、分注チップ14内に収容された試薬が吐出される。
【0023】
廃棄容器13は、使用済みの分注チップ14が廃棄されるための容器である。廃棄容器13は、分注ヘッド6に分注チップ14が装着されているか否かを検出するための分注チップ検出センサ19を備えている。図2は、本実施の形態による分注チップ検出センサ19を配置した廃棄容器13の斜視図である。廃棄容器13はX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な辺から構成される直方体形状を有しており、分注チップ検出センサ19は、廃棄容器13の上部に設けられている。
【0024】
分注チップ検出センサ19は、一対の発光受光部19aと反射板19bから構成されており、発光受光部19aと反射板19bは、廃棄容器13の上部であって直方体の対角付近に対向して配置されている。そのため、発光受光部19aが発した光は反射板19bに反射され、再び発光受光部19aに入射することとなる。分注チップ検出センサ19が検出したデータは、制御装置3に送信される。
【0025】
制御装置3は、汎用のパーソナル・コンピュータであり、LAN(Local Area Network)などの通信ケーブル4によって自動分注装置本体2と接続されている。制御装置3は、分注ヘッド6のXY平面における基準位置を調整するための調整画面30を備えている。調整作業は、分注チップ14を分注チップ検出センサ19によって検出することにより行われる。図3に示すように、調整画面30は、XYZ座標入力欄31と、縦方向選択ボタン32aと、横方向選択ボタン32bと、検出開始ボタン33aと、検出停止ボタン33bと、波形表示画面34とを備えている。
【0026】
XYZ座標入力欄31では、分注ヘッド6の基準位置調整のための分注チップ14の検出開始位置が設定される。移送部5を制御して分注ヘッド6を所望の位置に移動させるためには、移動の開始点や終了点などのXYZ座標を予め制御装置3に登録しておく必要がある。そのため、座標入力欄31には、分注チップ14の検出を行うための検出開始位置を分注ヘッド6の向き毎に登録できるようになっている。座標入力欄31の数値は、XYZ各軸の原点からの絶対座標で表され、0.1mm単位で設定することができる。例えば、図3の縦方向のX座標に書き込まれている「2980」という数値は、検出開始位置がX軸の原点位置から298.0mmの位置であることを示している。なお、座標入力欄31に入力する数値の理論値は、移送部5、分注ヘッド6、検出センサ19等の寸法から予め分かっているため、制御装置3にはこの理論値を初期値として設定しておけば良い。
【0027】
縦方向選択ボタン32aは、分注ヘッド6の向きを縦方向に選択するためのボタンである。縦方向とは、Y軸方向のことを意味する。横方向選択ボタン32bは、分注ヘッド6の向きを横方向に選択するためのボタンである。横方向とは、X軸方向のことを意味する。検出開始ボタン33aは、分注チップ14の検出の開始をするためのボタンであり、検出開始ボタン33aが押されることにより、分注ヘッド6はXYZ座標入力欄31で入力された座標へ移動する。検出停止ボタン33bは、分注ヘッド14の検出の停止をするためのボタンであり、検出停止ボタンが押されることにより、分注ヘッド6は、移動を停止する。波形表示画面34には、分注チップ検出センサ19による検出結果が波形として表示される。
【0028】
また、図示しないが、制御装置3は、波形変換部と、補正部と、分注チップ検出センサ調整表示部と、分注工程入力部も備えている。波形変換部は、波形表示画面34に信号波形を表示するために、分注チップ検出センサ19からのデータを波形に変換する。補正部は、座標入力欄31に設定されている座標データを調整後の座標データに自動的に書き換える。分注チップ検出センサ調整表示部は、分注チップ検出センサ19の調整を促すメッセージを表示する。分注工程入力部には、ユーザが所望の分注工程を入力することで、自動分注装置1が入力された分注工程を自動的に行う。
【0029】
次に、分注チップ14の検出開始位置の調整、すなわち、分注ヘッド6の基準位置調整をする調整作業について説明する。まず、分注ヘッド6のシリンジに分注チップ14を装着し、調整画面30で分注ヘッド6の向きを選択する。次に、座標入力欄31には、制御装置3に予め記憶されている検出開始位置の理論値が表示される。図4(a)は、分注ヘッド6の向きが縦方向の場合の検出開始位置を示した図であり、図4(b)は、分注ヘッド6の向きが縦方向の場合の検出終了位置を示した図である。この場合、分注ヘッド6のシリンジ1aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置が、分注ヘッド6が縦方向の場合の検出開始位置40となる。従って、座標入力欄31には、制御装置3に予め記憶されている検出開始位置40のXYZ座標の理論値が表示される。
【0030】
また、図5(a)は、分注ヘッド6の向きが横方向の場合の検出開始位置を示した図であり、図5(b)は、分注ヘッド6の向きが横方向の場合の検出終了位置を示した図である。この場合には、分注ヘッド6のシリンジ1aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置が、分注ヘッド6が横方向の場合の検出開始位置50となる。従って、座標入力欄31には、制御装置3に予め記憶されている検出開始位置50のXYZ座標の理論値が表示される。なお、各検出開始位置のXYZ座標の理論値は手動で入力しても良い。
【0031】
次に、検出開始ボタン33aを押して検出を開始させる。途中で検出を終了したい場合には、検出停止ボタン33bを押せば良い。検出開始ボタン33aが押されると、移送部5は、座標入力欄31の縦方向又は横方向の欄に入力されている座標へ分注ヘッド6の移動を開始させる。すなわち、図4(a)に示す縦方向の検出開始位置40、又は、図5(b)に示す横方向の検出開始位置50に分注ヘッド6を移動させる。
【0032】
分注ヘッド6の移動に伴い、分注ヘッド6に装着された分注チップ14も移動する。分注チップ14が発光受光部19aと反射板19bを結ぶ光路19c上に位置している場合には、発光受光部19aから発光された光は、分注チップ14によって遮られて反射板19bには届かない。一方、各分注チップ14間の隙間が光路19c上に位置している場合には、発光受光部19aから発光された光は、反射板19bに到達して反射され、発光受光部19aによって再び受光される。
【0033】
なお、発光受光部19aと反射板19bとは廃棄容器13の対角付近上に設けられているため、分注ヘッド6が縦方向を向いている場合でも、横方向を向いている場合でも、分注ヘッド6と光路19cとは角度を有する。本実施の形態では、この角度を45度としている。そのため、分注ヘッド6がどちらの方向を向いている場合でも、各分注チップ14は光路19cと一本ずつ順次に交わることとなる。
【0034】
分注ヘッド6が縦方向の場合、分注ヘッド6が検出開始位置40の位置に移動すると、分注チップ検出センサ19は、まず、シリンジ1aに装着された分注チップ14についての検出を行う。検出されたデータは、制御装置3に送信される。シリンジ1aに装着された分注チップ14についてのデータの制御装置3への送信が完了すると、続いて、分注ヘッド6は、シリンジ2aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19に検出される位置まで移動する。以下、同様にして、移送部5は、シリンジ12aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置まで分注ヘッド6を移動させる。すなわち、分注ヘッド6は、縦方向の検出終了位置41まで移動する。
【0035】
分注ヘッド6が横方向の場合にも同様に、分注ヘッド6が検出開始位置50の位置から検出終了位置51まで移動し、各分注チップ14が検出される。ここで、廃棄容器13−マイクロプレート12間の幅よりも廃棄容器13−試薬容器11間の幅の方が狭い。従って、分注ヘッド6が縦方向のときと同様に分注ヘッドを一直線に移動させると、分注ヘッド6に装着された分注チップ14が図1に示す試薬容器11に衝突してしまう。そのため、分注ヘッド6が横方向の場合には、分注ヘッド6を、X方向のみならずY方向へも移動させる。具体的には、XY座標ともに49.5mm移動する。なお、分注ヘッド6の移動方向において自動分注装置2内に障害物が無い場合には、縦方向と同様に一直線に移動させれば良い。
【0036】
制御装置3に入力されたデータは、波形変換部によって波形に変換される。波形表示画面34は、その信号波形を表示する。図3に示す波形表示画面34中の数値1から数値12は、分注ヘッド6の基準位置と分注チップ検出センサ19の基準位置とがずれていない場合に、分注チップ14の中心が表示される検出中心位置67に対応している。例えば、図4では、分注ヘッドのシリンジ1aに装着された分注チップ14が数値1に対応し、シリンジ12aに装着された分注チップ14が数値12に対応している。分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光しているときには、波形表示画面34はONとなり、遮光していないときには、波形表示画面34はOFFとなる。
【0037】
次に、制御装置3は、座標入力欄31に設定されている座標データを自動的に調整する補正を行う。図6(a)〜(d)は、波形表示画面34に表示される信号波形の例を示した図である。分注ヘッド6が縦方向の場合で説明すると、図6(a)に示すように、12個のON信号66の位置が検出中心位置67に対して右側にずれている状態60のときには、検出開始位置40がY軸マイナス側にずれていることを意味している。従って、この場合には、検出開始位置40をY軸プラス側にずらす必要がある。ここで、検出中心位置67間の間隔は9mmであるため、ON信号66が検出中心位置67に対してどれだけずれているかは容易に計算することができる。制御装置3がこのずれている分を座標入力欄31のY座標にプラスすることで分注チップ検出位置の調整は終了する。
【0038】
一方、図6(b)に示すように、12個のON信号66の位置が検出中心位置67に対して左側にずれている状態61のときには、検出開始位置40がY軸プラス側にずれていることを意味している。従って、この場合には、制御装置3がこのずれている分を座標入力欄31のY座標からマイナスすることで分注チップ検出位置の調整を終了する。なお、分注チップ14の製造精度により、分注チップ14と検出中心位置67とのずれが、分注チップ14毎に異なる場合がある。この場合は、各分注チップ14と検出中心位置67とのずれの平均値を用いて調整を行えば良い。
【0039】
このように、分注ヘッド14がどれだけ所定の位置からずれているかを容易に知ることができるため、分注ヘッド14の位置ずれを容易に調整することができる。また、制御装置3が分注ヘッドのXY平面における基準位置と検出部のXY平面における基準位置との調整を自動的に行うことにより、人が調整する場合と比べて手間及び時間を節約することができる。なお、波形表示画面34に表示された分注チップ14の位置を示す波形を基に、人が座標入力欄31に数値を入力することにより基準位置の微調整を行うこともできる。
【0040】
一方で、横方向における分注チップ14の検出の場合には、数値1から数値12に向かうに連れて、ON信号66の位置が、検出中心位置67に対して徐々に右側にずれていく状態62(図6(c))や左側にずれていく状態63(図6(d))となる場合がある。横方向における分注チップ14の検出の場合、図5から分かるように、分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置が一定ではなく、検出開始位置50から検出終了位置51に移動するに連れて発光受光部19aから遠ざかって行く。状態62や状態63は、分注チップ検出センサ19の光路19cとX軸とのなす角が正確に45度となっていないことを示す。従って、この場合には、発光受光部19a及び反射板19bの取り付け状態を調整する必要がある。
【0041】
図6(c)に示すように、右側にずれていく状態62の場合には、図5において、発光受光部19aを反時計回りの方向に角度調整すれば良い。図6(d)に示すように、左側にずれていく状態63の場合には、図5において、発光受光部19aを時計回りの方向に調整すれば良い。
【0042】
また、制御装置3は、分注チップ検出センサ19が所定の位置からずれている場合に、分注チップ検出センサ19の位置がずれている旨を表示してユーザに調整を促す検出部調整表示部を備えている。従って、検出部調整表示部の内容に従うことにより、分注チップ検出センサ19自体の位置ずれによる検出ミスを防止することができる。さらに、分注チップ検出センサ19が正確な位置に配置されているため、分注ヘッドのより正確な位置調整を行うことができる。以上のような手順で、自動分注装置1は、分注ヘッド6の基準位置調整作業を行う。
【0043】
また、制御装置3は分注工程入力部を備えているため、分注工程入力部に所望の工程を入力しておけば、自動分注装置1は制御装置3に入力された内容に従って、一連の分注作業を自動的に行う。通常、一連の分注作業としては、分注チップ14の装着、試薬容器10、11からの試薬の吸引、マイクロプレート12への試薬の吐出、分注チップ14の廃棄容器13への廃棄などが順に行われる。ここで、一連の分注作業に上記調整作業を組み込んでおけば、制御装置3は、分注作業中であっても、上記調整作業を行う。そして、検出開始位置40や50の座標がずれていると判断した場合には、自動的に検出開始位置40や50などの座標を補正する。
【0044】
このようにして、本実施の形態による自動分注装置1では、分注チップ14の検出開始位置の調整、すなわち、分注ヘッド6の基準位置の調整を行うことにより、分注ヘッド6が正確な位置に配置されるため、分注チップ14の装着不良を検出することができる。
【0045】
本発明による自動分注装置1は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、分注チップ検出センサは、一方が発光し、他方が受光する構成でも良い。また、分注チップ検出センサは、超音波やエリアセンサにより検出を行う構成であっても良い。更に、分注チップ検出センサは、廃棄容器の対角付近に配置されていなくても良く、また、配置可能なら廃棄容器上以外の場所に配置されても良い。分注チップの検出に当たっては、分注ヘッドに装着された分注チップは複数本ではなく、一本であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施の形態による自動分注装置の斜視図である。
【図2】本実施の形態による分注チップ検出センサを配置した廃棄容器の斜視図である。
【図3】本実施の形態による調整画面を示した図である。
【図4(a)】分注ヘッドの向きが縦方向の場合の検出開始位置を示した図である。
【図4(b)】分注ヘッドの向きが縦方向の場合の検出終了位置を示した図である。
【図5(a)】分注ヘッドの向きが横方向の場合の検出開始位置を示した図である。
【図5(b)】分注ヘッドの向きが横方向の場合の検出終了位置を示した図である。
【図6(a)】波形表示画面に表示される信号波形の一例を示した図である。
【図6(b)】波形表示画面に表示される信号波形の他の一例を示した図である。
【図6(c)】波形表示画面に表示される信号波形の他の一例を示した図である。
【図6(d)】波形表示画面に表示される信号波形の他の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動分注装置
2 自動分注装置本体
3 制御装置
5 移送部
6 分注ヘッド
7 回路部
14 分注チップ
19 分注チップ検出センサ
30 調整画面
34 波形表示画面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分注チップを装着して液体の吸引及び吐出を行う分注ヘッドと、
前記分注ヘッドをXYZ空間において移動させるための移送部と、
前記分注ヘッドによる吸引及び吐出、並びに、前記移送部による前記分注ヘッドの移動を制御するための制御装置と、
前記分注ヘッドに前記分注チップが装着されているか否かを検出する検出部と、を備えた自動分注装置において、
さらに、前記分注ヘッドのXY平面における基準位置を前記検出部のXY平面における基準位置に一致させる調整を行うための調整部を備えたことを特徴とする自動分注装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記検出部からの信号に基づいて前記信号の波形を表示する波形表示部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記検出部からの信号に基づいて前記分注ヘッドの基準位置調整を自動的に行うことを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記検出部からの信号に基づいて、前記検出部が所望の検出対象を検出できるように前記検出部の調整を促す検出部調整表示部を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項1】
複数の分注チップを装着して液体の吸引及び吐出を行う分注ヘッドと、
前記分注ヘッドをXYZ空間において移動させるための移送部と、
前記分注ヘッドによる吸引及び吐出、並びに、前記移送部による前記分注ヘッドの移動を制御するための制御装置と、
前記分注ヘッドに前記分注チップが装着されているか否かを検出する検出部と、を備えた自動分注装置において、
さらに、前記分注ヘッドのXY平面における基準位置を前記検出部のXY平面における基準位置に一致させる調整を行うための調整部を備えたことを特徴とする自動分注装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記検出部からの信号に基づいて前記信号の波形を表示する波形表示部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記検出部からの信号に基づいて前記分注ヘッドの基準位置調整を自動的に行うことを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記検出部からの信号に基づいて、前記検出部が所望の検出対象を検出できるように前記検出部の調整を促す検出部調整表示部を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【図2】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図6(d)】
【公開番号】特開2006−78201(P2006−78201A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259489(P2004−259489)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
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