自動分注装置
【課題】 分注チップの形状及び装着状態を判断することのできる自動分注装置を提供する。
【解決手段】 自動分注装置は、分注ヘッドと、移送部と、制御装置と、検出部と、検出波形表示部とを備えている。制御装置は、波形表示部と、記憶部とを備えている。波形表示部は、検出部からの信号に基づいて信号の波形を表示する。記憶部は、予めモデル波形を記憶しておくことができる。制御装置は、検出波形とモデル波形とを対比し、分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断する。
【解決手段】 自動分注装置は、分注ヘッドと、移送部と、制御装置と、検出部と、検出波形表示部とを備えている。制御装置は、波形表示部と、記憶部とを備えている。波形表示部は、検出部からの信号に基づいて信号の波形を表示する。記憶部は、予めモデル波形を記憶しておくことができる。制御装置は、検出波形とモデル波形とを対比し、分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動分注装置に関し、特に分注チップの形状及び装着状態を判断することのできる自動分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分野等で行われる試験や分析においては、検体や試薬等の液体を試料容器に小分けして移注する分注作業が行われる。分注作業は、分注チップを装着した分注ヘッドによって液体を吸収・吐出することにより行われる。分注チップは、通常、使い捨てタイプであり、使用毎に新しい分注チップと交換される。
【0003】
近年、分注作業の量は膨大傾向にあり、手動による分注作業では効率が悪い。また、手動では、分注チップの装着忘れや装着不良等の問題も生じる。そのため、近年では、分注作業が手動から自動へと移行している。
【0004】
従来の自動分注装置は、分注チップが複数配列されたチップラックと、分注チップを装着して分注を行う分注ヘッドと、チップラック上の分注チップの有無を判別するセンサとを備えている。センサは、チップラック上に残存する分注チップの有無を監視することにより、分注チップが分注ノズルに装着されたか否を判断する。例えば、装着されているはずの分注チップがチップラック上に残存している場合には、センサは、誤装着が生じたと判断する。このようにして、分注チップの分注ヘッドへの誤装着を減少させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−295323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の自動分注装置では、分注ヘッドに全ての分注チップが装着されているか否かしか検出することができない。そのため、分注ヘッドに分注チップが正確に装着されていない場合や、形状の異なる分注チップが装着された場合には、これらを異常と判断することができない。従って、例えば、ユーザが誤って異なる種類の分注チップを分注ラック上に配置した場合には、分注チップに所望の試薬量を吸引することができなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、分注チップの形状及び装着状態を判断することのできる自動分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、分注チップを装着して液体の吸引及び吐出を行う分注ヘッドと、分注ヘッドを移動させるための移送部と、分注ヘッドによる吸引及び吐出、並びに、移送部による分注ヘッドの移動を制御するための制御装置と、分注ヘッドの移動に伴って移動する分注チップを検出し、検出結果から検出信号を生成する検出部と、を備え、制御装置は、予めモデル波形を記憶しておくことができる記憶部を備え、検出信号とモデル波形とを対比し、分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御装置は、記分注チップの形状が所定の形状でない場合、又は、分注チップの装着状態が不完全である場合に、分注チップの再装着を促す分注チップ調整表示部を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、分注チップの複数箇所を検出できるように、検出部を複数個備え、制御装置は、複数個の検出手段が検出する分注チップについての複数個の信号に基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、複数の検出部が1個の分注チップの複数箇所を検出する。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、移送部は、検出部が分注チップの複数箇所を検出できるように移動し、制御装置は、検出手段が検出する分注チップについての複数箇所の信号に基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、移送部が移動することにより、移送部に装着された分注チップも移動する。分注チップの移動に伴い、検出部が検出する分注チップ上の検出点も移動するため、分注チップは、複数箇所で検出される。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、移送部は、検出部が分注チップの複数の異なる面を検出するように、分注ヘッドの向きを変化させることができ、検出手段が検出する分注チップについての複数面の信号に基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、分注ヘッドの向きが変化することにより、分注ヘッドに装着された分注チップの方向も変化する。分注チップの方向の変化に伴い、検出部が検出する分注チップ上の検出面も変化するため、分注チップは、複数面で検出される。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御装置は、検出信号に基づいて検出波形を生成し、検出波形を表示する波形表示部を更に備えたことを特徴としている。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、モデル波形は、各分注チップの予め決められた理想検出時間を示し、制御装置は、検出波形が示す検出時間と理想検出時間とを対比し、分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、分注チップが検出部に検出されるべき時間と、実際に分注チップが検出部に検出された時間とを対比する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載の自動分注装置によれば、制御装置が検出波形とモデル波形とを対比することにより分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断するため、容易かつ確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0019】
本発明の請求項2に記載の自動分注装置によれば、制御装置は、分注チップの形状が所定の形状でない場合、又は、分注チップの装着状態不完全である場合に、分注チップの再装着を促す分注チップ調整表示部を備えているため、ユーザは、エラーメッセージの表示に従って分注チップを装着し直すだけで、容易に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0020】
本発明の請求項3に記載の自動分注装置によれば、複数の検出部が1個の分注チップの複数箇所を検出し、制御装置は検出手段が検出する複数箇所でのデータに基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断するため、より確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0021】
本発明の請求項4に記載の自動分注装置によれば、分注チップの移動に伴い、分注チップが複数箇所で検出され、制御装置は検出手段が検出する複数箇所のデータに基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断するため、より確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0022】
本発明の請求項5に記載の自動分注装置によれば、分注チップが複数面で検出されることにより、分注チップの形状を立体的に認識することが可能となり、一方向からの検出では判断できない誤装着を発見することができるため、より確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0023】
本発明の請求項6に記載の自動分注装置によれば、波形表示部が検出信号に基づいて検出波形を生成し、検出波形を表示するため、視覚的に分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することができる。そのため、容易かつ確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0024】
本発明の請求項7に記載の自動分注装置によれば、制御装置は、検出波形が示す検出時間と理想検出時間とを対比し、分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断する。そのため、容易かつ確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第1の実施の形態による自動分注装置について図1から図8を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態による自動分注装置1の斜視図である。自動分注装置1は、自動分注装置本体2と、制御装置3と、通信ケーブル4とを備えている。
【0026】
自動分注装置本体2は、移送部5と、分注ヘッド6と、回路部7と、分注チップ容器8、9と、試薬容器10、11と、マイクロプレート12と、廃棄容器13とを備えている。自動分注装置本体2内では、分注チップ容器8、試薬容器10、マイクロプレート12が一列に並んでおり、これらと平行に分注チップ容器9、試薬容器11、廃棄容器13が一列に並んでいる。また、廃棄容器13−マイクロプレート12間の幅は、廃棄容器13−試薬容器11間の幅よりも広い。本実施の形態では、分注チップ容器8、試薬容器10、マイクロプレート12の順番に並ぶ方向をX軸のプラス方向とする。また、X軸と直交し、かつ、廃棄容器13からマイクロプレート12へ向かう方向をY軸のプラス方向とする。また、分注ヘッド6の移動に関しては、分注ヘッド6が上昇する方向をマイナス方向、下降する方向をプラス方向とする。
【0027】
移送部5は、図示しないステッピングモータにより、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ駆動される。分注ヘッド6は、移送部5の先端に配置されており、一列に並んで配置された12連のシリンジ1a〜12a(図示せず)を備えている。各シリンジは、分注チップ14を装着することができ、隣り合うシリンジ同士の間隔は、9mmとなっている。また、分注ヘッド6は、X軸−Y軸間で90度に旋回できるような構成となっているため、X軸方向、Y軸方向のどちら方向からでも分注動作を行うことができる。回路部7は、制御装置3に入力された条件に基づいて、自動分注装置本体2を駆動させるための回路である。
【0028】
分注チップ容器8、9は、分注チップ14を収納するための容器であり、9mm間隔で分注チップ収納ウェルが配置されている。分注チップ14は、試薬を一時的に蓄えるための容器で、分注ヘッド6に装着される。試薬容器10、11には、分注ヘッド6によって分注チップ14内に吸引される試薬が収容されている。マイクロプレート12には、縦8、横12の96ウェルが9mm間隔で格子状に配置されており、ウェルには、分注チップ14内に収容された試薬が吐出される。
【0029】
廃棄容器13は、使用済みの分注チップ14が廃棄されるための容器である。廃棄容器13は、分注チップ14の分注ヘッド6への装着状態を検出するための分注チップ検出センサ19を備えている。図2は、本実施の形態による分注チップ検出センサ19を配置した廃棄容器13の斜視図である。廃棄容器13はX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な辺から構成される直方体形状を有しており、分注チップ検出センサ19は、廃棄容器13の上部に設けられている。
【0030】
分注チップ検出センサ19は、発光受光部191a、192a、193aと反射板191b、192b、193bから構成されている。発光受光部191a、192a、193aは、廃棄容器13の一角部上方にZ軸プラス方向から順に並んでいる。反射板191b、192b、193bは、前記一角部の対角である他の一角部上方にZ軸プラス方向から順に並んでいる。また、発光受光部191aと反射板191b、発光受光部192aと反射板192b、発光受光部193aと反射板193bは、それぞれ対向して配置されている。そのため、発光受光部191aが発した光は反射板191bに反射され、再び発光受光部19aに入射することとなる。発光受光部192aと反射板192b、発光受光部193aと反射板193bに関しても同様である。分注チップ検出センサ19が検出したデータは、制御装置3に送信される。
【0031】
制御装置3は、汎用のパーソナル・コンピュータであり、LAN(Local Area Network)などの通信ケーブル4によって自動分注装置本体2と接続されている。制御装置3は、分注チップ14の装着状態を検出した結果を出力するための検出画面30を備えている。検出作業は、分注チップ14を分注チップ検出センサ19によって検出することにより行われる。図3に示すように、検出画面30は、XYZ座標入力欄31と、縦方向選択ボタン32aと、横方向選択ボタン32bと、検出開始ボタン33aと、検出停止ボタン33bと、波形表示画面34とを備えている。
【0032】
XYZ座標入力欄31では、分注チップ14の装着状態の検出を開始する座標が設定される。移送部5を制御して分注ヘッド6を所望の位置に移動させるためには、移動の開始点や終了点などのXYZ座標を予め制御装置3に登録しておく必要がある。そのため、座標入力欄31には、分注チップ14の検出を行うための検出開始座標を分注ヘッド6の向き毎に登録できるようになっている。座標入力欄31の数値は、XYZ各軸の原点からの絶対座標で表され、0.1mm単位で設定することができる。例えば、図3の縦方向のX座標に書き込まれている「2980」という数値は、検出開始座標がX軸の原点位置から298.0mmの位置であることを示している。なお、座標入力欄31に入力する数値の理論値は、移送部5、分注ヘッド6、検出センサ19等の寸法から予め分かっているため、制御装置3にはこの理論値を初期値として設定しておけば良い。
【0033】
縦方向選択ボタン32aは、分注ヘッド6の向きを縦方向に選択するためのボタンである。縦方向とは、Y軸方向のことを意味する。横方向選択ボタン32bは、分注ヘッド6の向きを横方向に選択するためのボタンである。横方向とは、X軸方向のことを意味する。検出開始ボタン33aは、分注チップ14の検出を開始させるためのボタンであり、検出開始ボタン33aが押されることにより、分注ヘッド6はXYZ座標入力欄31で入力された座標へ移動する。検出停止ボタン33bは、分注チップ14の検出を停止させるためのボタンであり、検出停止ボタンが押されることにより、分注ヘッド6は、移動を停止する。波形表示画面34には、分注チップ検出センサ19による検出結果が波形として表示される。
【0034】
また、図示しないが、制御装置3は、波形変換部と、分注チップ調整表示部と、記憶部と、分注工程入力部も備えている。波形変換部は、波形表示画面34に信号波形を表示するために分注チップ検出センサ19からの信号を波形に変換する。分注チップ調整表示部は、分注チップが正しく装着されていない場合や誤った分注チップが装着された場合に、再装着を促すメッセージを表示する。記憶部は、正規の分注チップ14が分注ヘッド6に正常に装着されたときの波形を予め記憶しておくことができる。分注工程入力部には、ユーザが所望の分注工程を入力することで、自動分注装置1が入力された分注工程を自動的に行う。
【0035】
次に、分注チップ14の形状及び装着状態を検出する検出作業について説明する。まず、分注ヘッド6のシリンジに分注チップ14を装着し、検出画面30で分注ヘッド6の向きを選択する。次に、座標入力欄31で、検出開始位置のXYZ座標をそれぞれ入力する。図4(a)は、分注ヘッド6の向きが縦方向の場合の検出開始位置を示した図であり、図4(b)は、分注ヘッド6の向きが縦方向の場合の検出終了位置を示した図である。この場合、分注ヘッド6のシリンジ1aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置が、分注ヘッド6が縦方向の場合の検出開始位置40となる。従って、座標入力欄31には、検出開始位置40のXYZ座標をそれぞれ入力する。
【0036】
また、図5(a)は、分注ヘッド6の向きが横方向の場合の検出開始位置を示した図であり、図5(b)は、分注ヘッド6の向きが横方向の場合の検出終了位置を示した図である。この場合には、分注ヘッド6のシリンジ1aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置が、分注ヘッド6が横方向の場合の検出開始位置50となる。従って、座標入力欄31には、検出開始位置50のXYZ座標をそれぞれ入力する。
【0037】
次に、検出開始ボタン33aを押して検出を開始させる。途中で検出を終了したい場合には、検出停止ボタン33bを押せば良い。検出開始ボタン33aが押されると、移送部5は、座標入力欄31の縦方向又は横方向の欄に入力されている座標へ分注ヘッド6の移動を開始させる。すなわち、図4(a)に示す縦方向の検出開始位置40、又は、図5(a)に示す横方向の検出開始位置50に分注ヘッド6を移動させる。
【0038】
分注ヘッド6の移動に伴い、分注ヘッド6に装着された分注チップ14も移動する。発光受光部191aと反射板191bによる検出を例に説明すると、分注チップ14が発光受光部191aと反射板191bを結ぶ光路19c上に位置している場合には、発光受光部191aから発光された光は、分注チップ14によって遮られて反射板191bには届かない。反射板191bによって光が反射されないので、発光受光部191aは光を受光しない。一方、各分注チップ14間の隙間が光路19c上に位置している場合には、発光受光部19aから発光された光は、反射板19bに到達して反射され、発光受光部19aによって再び受光される。発光受光部192aと反射板192b、発光受光部193aと反射板193bによる検出の場合も同様である。
【0039】
なお、発光受光部191aと反射板191b、発光受光部192aと反射板192b、発光受光部193aと反射板193bは、それぞれ廃棄容器13の対角付近上に設けられているため、分注ヘッド6が縦方向を向いている場合でも、横方向を向いている場合でも、分注ヘッド6と光路19cとは角度を有する。本実施の形態では、この角度を45度としている。そのため、分注ヘッド6がどちらの方向を向いている場合でも、各分注チップ14は光路19cと一本ずつ順次に交わることができる。
【0040】
分注ヘッド6が縦方向の場合、分注ヘッド6が検出開始位置40の位置に移動すると、分注チップ検出センサ19は、まず、シリンジ1aに装着された分注チップ14についての検出を行う。検出されたデータは、制御装置3に送信される。シリンジ1aに装着された分注チップ14についてのデータの制御装置3への送信が完了すると、続いて、分注ヘッド6は、シリンジ2aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19に検出される位置まで移動する。以下、同様にして、移送部5は、シリンジ12aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置まで分注ヘッド6を移動させる。すなわち、分注ヘッド6は、縦方向の検出終了位置41まで移動する。
【0041】
分注ヘッド6が横方向の場合にも同様に、分注ヘッド6が検出開始位置50の位置から検出終了位置51まで移動し、各分注チップ14が検出される。ここで、廃棄容器13−マイクロプレート12間の幅よりも廃棄容器13−試薬容器11間の幅の方が狭い。従って、分注ヘッド6が縦方向のときと同様に一直線に移動させると、分注ヘッド6に装着された分注チップ14が図1に示す試薬容器11に衝突してしまう。そのため、分注ヘッド6が横方向の場合には、分注ヘッド6を、X方向のみならずY方向へも移動させる。具体的には、XY座標ともに49.5mm移動する。なお、分注ヘッド6の移動方向において自動分注装置2内に障害物が無い場合には、縦方向と同様に一直線に移動させれば良い。
【0042】
制御装置3に送信された信号は、波形変換部によって波形に変換される。具体的には、波形変換部は、分注チップ検出センサ19からのON信号を基に、ON信号が検出された時間に等しい波形に信号を変換する。波形表示画面34は、その信号波形を表示する。図6(a)は、正規の分注チップ14が正常に装着された状態60での信号波形600を示した図である。信号波形600には、発光受光部191aが検出した信号波形600a、発光受光部192aが検出した信号波形600b、発光受光部193aが検出した信号波形600cの三つの信号波形が同時に表示される。この信号波形600は、制御装置3内の記憶部に予め記憶させておく。
【0043】
前記制御装置は、前記検出波形が示す検出時間と前記理想検出時間とを対比し、なお、最初から分注チップ14の装着を行わないシリンジに対しては、分注チップ14が装着されていない場合の波形を記憶部に記憶させておく。信号波形は、実際に装着された分注チップの三つの信号波形と比較され、一つでもその形状が異なる場合には、制御装置3の分注チップ調整表示部にエラーメッセージが表示される。エラーメッセージには、どのシリンジに装着された分注チップが異常であるかという情報がその波形と共に表示される。
【0044】
図6(b)は、形状の異なる分注チップ140が装着された状態61での信号波形610を示した図である。信号波形610には、発光受光部191aが検出した信号波形610a、発光受光部192aが検出した信号波形610b、発光受光部193aが検出した信号波形610cが同時に表示される。
【0045】
信号波形600と、信号波形610とを比較すると、各分注チップの先端付近の信号波形600cと610cの幅はほぼ同等であり、形状が異なると判断することは困難であるが、根元付近の信号波形600aと610aの幅は明らかに異なっている。この場合、制御装置3は、分注ヘッド6に形状の異なる分注チップ140が装着されていると判断し、その旨を示すエラーメッセージを表示する。
【0046】
図6(c)は、正規の分注チップ14が装着されてはいるが、正常に装着されていない(分注チップが分注ヘッド6にしっかりとささっていない)状態62での信号波形620を示した図である。信号波形600と、信号波形620とを比較すると、各分注チップの根元付近の600aと620a、中央付近の600bと620b、先端付近の600cと620cのいずれの位置においても、信号波形600よりも信号波形620の幅が広くなっている。この場合、制御装置3は、分注チップ14が分注ヘッド6にしっかりとささっていないと判断し、その旨を示すエラーメッセージを表示する。
【0047】
この検出動作は、分注チップを分注ヘッド6に装着した後の他に、分注作業後に分注チップを廃棄容器13に廃棄した後にも行うのが好ましい。これにより、分注チップが廃棄容器13に確実に廃棄されたか否かも検出することができ、次回の分注作業への移行をスムーズに行うことができる。
【0048】
以上では、各分注チップ毎の信号波形について説明したが、実際には、各信号波形は、波形表示画面34に全分注チップについて表示される。図7(a)〜図7(e)は、信号波形が表示された波形表示画面34を示した図である。図7(a)は、予め記憶部に記憶された正常波形を示した図である。各数字1〜12は、シリンジ1a〜12aに対応しているため、ここでは、シリンジ2a〜7aに分注チップ14が正常に装着されていることとなる。制御装置3は、図7(a)の正常波形と実際に検出した波形とを、各シリンジの中心位置67における分注チップの有無及び各シリンジにおける分注チップの上段、中段、下段の形状において比較する。例えば、図7(b)に示すような波形が検出された場合には、シリンジ7aの上段、中段、下段に波形が表示されていない。このような場合には、制御装置3は、シリンジ7aに分注チップ14が装着されていない旨を示すエラーメッセージを表示する。また、図7(c)に示すような波形が検出された場合、シリンジ7a下段に波形は表示されているが、中心位置67上には波形が表示されていない。このような場合には、異なるチップが装着されている又はチップが正常に装着されていない旨を示すエラーメッセージを表示する。また、図7(d)に示すような波形が検出された場合には、シリンジ7aの下段に波形が表示されていない。このような場合には、制御装置3は、異なるチップが装着されている又はチップが正常に装着されていない旨を示すエラーメッセージを表示する。一方、図7(e)に示すような波形が検出された場合には、シリンジ7aの各段に波形は表示されているが、中段と下段の波形が図7(a)の波形と異なる。このような場合にも、制御装置3は、異なるチップが装着されている又はチップが正常に装着されていない旨を示すエラーメッセージを表示する。
【0049】
このように、自動分注装置1は、検出した信号波形と予め制御装置3に記憶させた正規の分注チップの波形とを比較することにより、分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断する。従って、容易かつ確実に分注チップ14の分注ヘッド6への誤装着を発見し、防止することができる。誤装着があった場合には、制御装置3は、その旨を示すエラーメッセージを表示するので、ユーザは、エラーメッセージの表示に従って分注チップを装着し直すだけで、容易に分注チップの誤装着を防止することができる。また、分注チップが複数箇所で検出されるため、複数箇所での信号に基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断するため、より確実に分注チップの誤装着を発見することができる。
【0050】
また、制御装置3は分注工程入力部を備えているため、分注工程入力部に所望の工程を入力しておけば、自動分注装置1は制御装置3に入力された内容に従って、一連の分注作業を自動的に行う。通常、一連の分注作業としては、分注チップ14の装着、試薬容器10、11からの試薬の吸引、マイクロプレート12への試薬の吐出、分注チップ14の廃棄容器13への廃棄などが順に行われる。ここで、一連の分注作業に上記検出作業を組み込んでおけば、制御装置3は、分注作業中であっても、上記検出作業を行う。そして、形状の異なる分注チップが装着されていたり、分注チップが完全に装着されていない場合には、制御装置3は、エラーメッセージを表示する。
【0051】
検出作業が組み込まれた一連の自動分注工程について図8のフローチャートを用いて説明する。まず、分注ヘッド6に分注チップを装着する(ステップ1)。次に、分注チップの検出動作を開始させる(ステップ2)。ステップ2で検出されたデータは制御装置3に送信され、信号波形に変換される。制御装置3は、送信された信号波形に基づいて分注ヘッド6に分注チップが装着されているか否かを判断する(ステップ3)。
【0052】
分注ヘッド6に分注チップが装着されていると判断した場合(ステップ3:OK)には、続いて、分注チップの形状が正規の分注チップ14の形状と一致するか否かを判断する(ステップ4)。分注チップの形状が正規の分注チップ14の形状と一致する場合(ステップ4:OK)には、試薬の吸引・吐出などの分注作業を開始する(ステップ5)。
【0053】
一方、ステップ3で、分注ヘッド6に分注チップが装着されていないと判断した場合(ステップ3:NG)、及び、ステップ4で、分注チップの形状が正規の分注チップ14の形状と一致しないと判断した場合(ステップ4:NG)には、波形表示画面34に検出波形を表示する(ステップ6)。続いて、分注チップ調整表示部にエラー原因を示すエラーメッセージを表示する(ステップ7)。ユーザは、分注チップ調整表示部に表示されたエラーメッセージに従い、分注チップ14を装着し直す(ステップ8)。その後、再び分注チップの検出動作を開始させる(ステップ1)。
【0054】
このように、分注工程入力部に検出作業を組み込んでおけば、容易かつ確実に誤装着を発見することができ、装着不良のまま運転することを防止することができる。
【0055】
本発明による自動分注装置1は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、分注チップ検出センサ19の数をさらに増やし、より高精度に検出を行っても良い。また、図9に示すように、分注チップ検出センサ19を発光受光部191a及び反射板191bからなる一組だけとし、分注チップを検出位置においてZ軸方向に動かすことで、分注チップを複数箇所で検出しても良い。これにより、より確実に分注チップの誤装着を検出することができ、誤装着のまま運転することを防止することができる。この場合、Z軸上の各検出位置において分注チップをXY平面方向に複数回通過させても良い。これにより、より一層、確実に分注チップの誤装着を検出することができ、誤装着のまま運転することを防止することができる。
【0056】
また、分注チップを分注ヘッド6が縦方向の場合と横方向の場合の両方で検出しても良い。例えば、図10に示すように分注チップが分注ヘッド6に対して斜めに装着された状態90の場合、分注チップを一方向から検出するだけでは信号波形91に示すように、正規の分注チップ14が正常に装着された場合と区別することができない可能性がある。しかし、他方向からも検出を行うことにより、信号波形92のような波形も検出することができる。このように、分注チップが複数面で検出されることにより、分注チップの形状を立体的に認識することが可能となり、一方向からの検出では判断できない誤装着を発見することができるため、より確実に分注チップの誤装着を検出することができ、誤装着のまま運転することを防止することができる。
【0057】
更に、分注チップ検出センサ19は、分注チップの特定点を検出する代わりに、分注チップのZ軸方向の長さ、すなわち、分注チップ14が光路19c上に位置している時間を検出しても良い。この場合、図11に示すように、まず、分注ヘッド6に分注チップを装着した状態で分注チップの根元付近が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置100を検出開始位置とする。次に、分注ヘッド6のXY座標はそのままで、分注チップ14をZ軸マイナス方向へ移動させ、分注チップ14の先端が分注チップ検出センサ19の光路19cよりZ軸マイナスの位置101を検出終了位置とする。ここで、検出開始位置100及び検出終了位置101は、座標入力欄31で所定の値を入力することとしておけば良い。この場合、複数の分注チップ検出センサ19、例えば、分注ヘッド6に装着された分注チップ14の本数と同数の分注チップ検出センサ19を設けても良い。このような構成にすれば、検出速度が上がり、効率の良い検出を行うことができる。また、分注チップ14の長さの検出は、Z軸方向に限らず、X方向、Y方向において行っても良い。
【0058】
移送部5が分注ヘッド6を検出開始位置100から検出終了位置101まで移動させる間、分注チップ検出センサ19は分注チップの検出を続ける。この間の時間と検出信号の関係は、グラフ102に示すような関係となる。グラフ102では、分注チップの先端が時間Tで光路19cよりZ軸プラス方向へに移動したことが分かる。予め、正規の分注チップ14が正常に分注ヘッド6に装着された際の信号波形がONしている時間T0を制御装置3に記憶しておき、実際に検出された時間Tと比較する。時間Tは、分注チップの長さに比例するため、T0とTが異なる場合には分注チップの誤装着が生じていると判断することができる。
【0059】
また、分注チップ検出センサは、一方が発光し、他方が受光する構成でも良い。また、分注チップ検出センサは、エリアセンサにより検出を行う構成であっても良い。この場合、検出された結果を画像処理して表示しても良い。更に、分注チップ検出センサは、廃棄容器の対角付近に配置されていなくても良く、また、配置可能なら廃棄容器上以外の場所に配置されても良い。エラーメッセージは、LED等を点灯させることにより異常を知らせる構成であっても良い。分注チップの検出に当たっては、分注ヘッドに装着された分注チップは複数本ではなく、一本であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施の形態による自動分注装置の斜視図である。
【図2】本実施の形態による分注チップ検出センサを配置した廃棄容器の斜視図である。
【図3】本実施の形態による検出画面を示した図である。
【図4(a)】分注ヘッドの向きが縦方向の場合の検出開始位置を示した図である。
【図4(b)】分注ヘッドの向きが縦方向の場合の検出終了位置を示した図である。
【図5(a)】分注ヘッドの向きが横方向の場合の検出開始位置を示した図である。
【図5(b)】分注ヘッドの向きが横方向の場合の検出終了位置を示した図である。
【図6(a)】波形表示画面に表示される信号波形の一例を示した図である。
【図6(b)】波形表示画面に表示される信号波形の他の一例を示した図である。
【図6(c)】波形表示画面に表示される信号波形の他の一例を示した図である。
【図7(a)】信号波形が表示された波形表示画面を示した図である。
【図7(b)】信号波形が表示された波形表示画面を示した図である。
【図7(c)】信号波形が表示された波形表示画面を示した図である。
【図7(d)】信号波形が表示された波形表示画面を示した図である。
【図7(e)】信号波形が表示された波形表示画面を示した図である。
【図8】検出作業が組み込まれた一連の自動分注工程についてのフローチャートである。
【図9】分注チップを検出位置においてZ軸方向に動かし、一組の分注チップ検出センサで分注チップを複数箇所で検出する自動分注装置の一例を示した図である。
【図10】分注チップを複数方向から検出する自動分注装置の一例を示した図である。
【図11】分注チップの長さを検出する自動分注装置の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0061】
1 自動分注装置
2 自動分注装置本体
3 制御装置
5 移送部
6 分注ヘッド
8 ステップ
14 分注チップ
19 分注チップ検出センサ
30 検出画面
【技術分野】
【0001】
本発明は自動分注装置に関し、特に分注チップの形状及び装着状態を判断することのできる自動分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分野等で行われる試験や分析においては、検体や試薬等の液体を試料容器に小分けして移注する分注作業が行われる。分注作業は、分注チップを装着した分注ヘッドによって液体を吸収・吐出することにより行われる。分注チップは、通常、使い捨てタイプであり、使用毎に新しい分注チップと交換される。
【0003】
近年、分注作業の量は膨大傾向にあり、手動による分注作業では効率が悪い。また、手動では、分注チップの装着忘れや装着不良等の問題も生じる。そのため、近年では、分注作業が手動から自動へと移行している。
【0004】
従来の自動分注装置は、分注チップが複数配列されたチップラックと、分注チップを装着して分注を行う分注ヘッドと、チップラック上の分注チップの有無を判別するセンサとを備えている。センサは、チップラック上に残存する分注チップの有無を監視することにより、分注チップが分注ノズルに装着されたか否を判断する。例えば、装着されているはずの分注チップがチップラック上に残存している場合には、センサは、誤装着が生じたと判断する。このようにして、分注チップの分注ヘッドへの誤装着を減少させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−295323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の自動分注装置では、分注ヘッドに全ての分注チップが装着されているか否かしか検出することができない。そのため、分注ヘッドに分注チップが正確に装着されていない場合や、形状の異なる分注チップが装着された場合には、これらを異常と判断することができない。従って、例えば、ユーザが誤って異なる種類の分注チップを分注ラック上に配置した場合には、分注チップに所望の試薬量を吸引することができなくなる。
【0006】
そこで、本発明は、分注チップの形状及び装着状態を判断することのできる自動分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、分注チップを装着して液体の吸引及び吐出を行う分注ヘッドと、分注ヘッドを移動させるための移送部と、分注ヘッドによる吸引及び吐出、並びに、移送部による分注ヘッドの移動を制御するための制御装置と、分注ヘッドの移動に伴って移動する分注チップを検出し、検出結果から検出信号を生成する検出部と、を備え、制御装置は、予めモデル波形を記憶しておくことができる記憶部を備え、検出信号とモデル波形とを対比し、分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御装置は、記分注チップの形状が所定の形状でない場合、又は、分注チップの装着状態が不完全である場合に、分注チップの再装着を促す分注チップ調整表示部を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、分注チップの複数箇所を検出できるように、検出部を複数個備え、制御装置は、複数個の検出手段が検出する分注チップについての複数個の信号に基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、複数の検出部が1個の分注チップの複数箇所を検出する。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、移送部は、検出部が分注チップの複数箇所を検出できるように移動し、制御装置は、検出手段が検出する分注チップについての複数箇所の信号に基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、移送部が移動することにより、移送部に装着された分注チップも移動する。分注チップの移動に伴い、検出部が検出する分注チップ上の検出点も移動するため、分注チップは、複数箇所で検出される。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、移送部は、検出部が分注チップの複数の異なる面を検出するように、分注ヘッドの向きを変化させることができ、検出手段が検出する分注チップについての複数面の信号に基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、分注ヘッドの向きが変化することにより、分注ヘッドに装着された分注チップの方向も変化する。分注チップの方向の変化に伴い、検出部が検出する分注チップ上の検出面も変化するため、分注チップは、複数面で検出される。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御装置は、検出信号に基づいて検出波形を生成し、検出波形を表示する波形表示部を更に備えたことを特徴としている。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、モデル波形は、各分注チップの予め決められた理想検出時間を示し、制御装置は、検出波形が示す検出時間と理想検出時間とを対比し、分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、分注チップが検出部に検出されるべき時間と、実際に分注チップが検出部に検出された時間とを対比する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載の自動分注装置によれば、制御装置が検出波形とモデル波形とを対比することにより分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断するため、容易かつ確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0019】
本発明の請求項2に記載の自動分注装置によれば、制御装置は、分注チップの形状が所定の形状でない場合、又は、分注チップの装着状態不完全である場合に、分注チップの再装着を促す分注チップ調整表示部を備えているため、ユーザは、エラーメッセージの表示に従って分注チップを装着し直すだけで、容易に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0020】
本発明の請求項3に記載の自動分注装置によれば、複数の検出部が1個の分注チップの複数箇所を検出し、制御装置は検出手段が検出する複数箇所でのデータに基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断するため、より確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0021】
本発明の請求項4に記載の自動分注装置によれば、分注チップの移動に伴い、分注チップが複数箇所で検出され、制御装置は検出手段が検出する複数箇所のデータに基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断するため、より確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0022】
本発明の請求項5に記載の自動分注装置によれば、分注チップが複数面で検出されることにより、分注チップの形状を立体的に認識することが可能となり、一方向からの検出では判断できない誤装着を発見することができるため、より確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0023】
本発明の請求項6に記載の自動分注装置によれば、波形表示部が検出信号に基づいて検出波形を生成し、検出波形を表示するため、視覚的に分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断することができる。そのため、容易かつ確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【0024】
本発明の請求項7に記載の自動分注装置によれば、制御装置は、検出波形が示す検出時間と理想検出時間とを対比し、分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断する。そのため、容易かつ確実に分注チップの誤装着を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第1の実施の形態による自動分注装置について図1から図8を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態による自動分注装置1の斜視図である。自動分注装置1は、自動分注装置本体2と、制御装置3と、通信ケーブル4とを備えている。
【0026】
自動分注装置本体2は、移送部5と、分注ヘッド6と、回路部7と、分注チップ容器8、9と、試薬容器10、11と、マイクロプレート12と、廃棄容器13とを備えている。自動分注装置本体2内では、分注チップ容器8、試薬容器10、マイクロプレート12が一列に並んでおり、これらと平行に分注チップ容器9、試薬容器11、廃棄容器13が一列に並んでいる。また、廃棄容器13−マイクロプレート12間の幅は、廃棄容器13−試薬容器11間の幅よりも広い。本実施の形態では、分注チップ容器8、試薬容器10、マイクロプレート12の順番に並ぶ方向をX軸のプラス方向とする。また、X軸と直交し、かつ、廃棄容器13からマイクロプレート12へ向かう方向をY軸のプラス方向とする。また、分注ヘッド6の移動に関しては、分注ヘッド6が上昇する方向をマイナス方向、下降する方向をプラス方向とする。
【0027】
移送部5は、図示しないステッピングモータにより、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向にそれぞれ駆動される。分注ヘッド6は、移送部5の先端に配置されており、一列に並んで配置された12連のシリンジ1a〜12a(図示せず)を備えている。各シリンジは、分注チップ14を装着することができ、隣り合うシリンジ同士の間隔は、9mmとなっている。また、分注ヘッド6は、X軸−Y軸間で90度に旋回できるような構成となっているため、X軸方向、Y軸方向のどちら方向からでも分注動作を行うことができる。回路部7は、制御装置3に入力された条件に基づいて、自動分注装置本体2を駆動させるための回路である。
【0028】
分注チップ容器8、9は、分注チップ14を収納するための容器であり、9mm間隔で分注チップ収納ウェルが配置されている。分注チップ14は、試薬を一時的に蓄えるための容器で、分注ヘッド6に装着される。試薬容器10、11には、分注ヘッド6によって分注チップ14内に吸引される試薬が収容されている。マイクロプレート12には、縦8、横12の96ウェルが9mm間隔で格子状に配置されており、ウェルには、分注チップ14内に収容された試薬が吐出される。
【0029】
廃棄容器13は、使用済みの分注チップ14が廃棄されるための容器である。廃棄容器13は、分注チップ14の分注ヘッド6への装着状態を検出するための分注チップ検出センサ19を備えている。図2は、本実施の形態による分注チップ検出センサ19を配置した廃棄容器13の斜視図である。廃棄容器13はX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な辺から構成される直方体形状を有しており、分注チップ検出センサ19は、廃棄容器13の上部に設けられている。
【0030】
分注チップ検出センサ19は、発光受光部191a、192a、193aと反射板191b、192b、193bから構成されている。発光受光部191a、192a、193aは、廃棄容器13の一角部上方にZ軸プラス方向から順に並んでいる。反射板191b、192b、193bは、前記一角部の対角である他の一角部上方にZ軸プラス方向から順に並んでいる。また、発光受光部191aと反射板191b、発光受光部192aと反射板192b、発光受光部193aと反射板193bは、それぞれ対向して配置されている。そのため、発光受光部191aが発した光は反射板191bに反射され、再び発光受光部19aに入射することとなる。発光受光部192aと反射板192b、発光受光部193aと反射板193bに関しても同様である。分注チップ検出センサ19が検出したデータは、制御装置3に送信される。
【0031】
制御装置3は、汎用のパーソナル・コンピュータであり、LAN(Local Area Network)などの通信ケーブル4によって自動分注装置本体2と接続されている。制御装置3は、分注チップ14の装着状態を検出した結果を出力するための検出画面30を備えている。検出作業は、分注チップ14を分注チップ検出センサ19によって検出することにより行われる。図3に示すように、検出画面30は、XYZ座標入力欄31と、縦方向選択ボタン32aと、横方向選択ボタン32bと、検出開始ボタン33aと、検出停止ボタン33bと、波形表示画面34とを備えている。
【0032】
XYZ座標入力欄31では、分注チップ14の装着状態の検出を開始する座標が設定される。移送部5を制御して分注ヘッド6を所望の位置に移動させるためには、移動の開始点や終了点などのXYZ座標を予め制御装置3に登録しておく必要がある。そのため、座標入力欄31には、分注チップ14の検出を行うための検出開始座標を分注ヘッド6の向き毎に登録できるようになっている。座標入力欄31の数値は、XYZ各軸の原点からの絶対座標で表され、0.1mm単位で設定することができる。例えば、図3の縦方向のX座標に書き込まれている「2980」という数値は、検出開始座標がX軸の原点位置から298.0mmの位置であることを示している。なお、座標入力欄31に入力する数値の理論値は、移送部5、分注ヘッド6、検出センサ19等の寸法から予め分かっているため、制御装置3にはこの理論値を初期値として設定しておけば良い。
【0033】
縦方向選択ボタン32aは、分注ヘッド6の向きを縦方向に選択するためのボタンである。縦方向とは、Y軸方向のことを意味する。横方向選択ボタン32bは、分注ヘッド6の向きを横方向に選択するためのボタンである。横方向とは、X軸方向のことを意味する。検出開始ボタン33aは、分注チップ14の検出を開始させるためのボタンであり、検出開始ボタン33aが押されることにより、分注ヘッド6はXYZ座標入力欄31で入力された座標へ移動する。検出停止ボタン33bは、分注チップ14の検出を停止させるためのボタンであり、検出停止ボタンが押されることにより、分注ヘッド6は、移動を停止する。波形表示画面34には、分注チップ検出センサ19による検出結果が波形として表示される。
【0034】
また、図示しないが、制御装置3は、波形変換部と、分注チップ調整表示部と、記憶部と、分注工程入力部も備えている。波形変換部は、波形表示画面34に信号波形を表示するために分注チップ検出センサ19からの信号を波形に変換する。分注チップ調整表示部は、分注チップが正しく装着されていない場合や誤った分注チップが装着された場合に、再装着を促すメッセージを表示する。記憶部は、正規の分注チップ14が分注ヘッド6に正常に装着されたときの波形を予め記憶しておくことができる。分注工程入力部には、ユーザが所望の分注工程を入力することで、自動分注装置1が入力された分注工程を自動的に行う。
【0035】
次に、分注チップ14の形状及び装着状態を検出する検出作業について説明する。まず、分注ヘッド6のシリンジに分注チップ14を装着し、検出画面30で分注ヘッド6の向きを選択する。次に、座標入力欄31で、検出開始位置のXYZ座標をそれぞれ入力する。図4(a)は、分注ヘッド6の向きが縦方向の場合の検出開始位置を示した図であり、図4(b)は、分注ヘッド6の向きが縦方向の場合の検出終了位置を示した図である。この場合、分注ヘッド6のシリンジ1aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置が、分注ヘッド6が縦方向の場合の検出開始位置40となる。従って、座標入力欄31には、検出開始位置40のXYZ座標をそれぞれ入力する。
【0036】
また、図5(a)は、分注ヘッド6の向きが横方向の場合の検出開始位置を示した図であり、図5(b)は、分注ヘッド6の向きが横方向の場合の検出終了位置を示した図である。この場合には、分注ヘッド6のシリンジ1aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置が、分注ヘッド6が横方向の場合の検出開始位置50となる。従って、座標入力欄31には、検出開始位置50のXYZ座標をそれぞれ入力する。
【0037】
次に、検出開始ボタン33aを押して検出を開始させる。途中で検出を終了したい場合には、検出停止ボタン33bを押せば良い。検出開始ボタン33aが押されると、移送部5は、座標入力欄31の縦方向又は横方向の欄に入力されている座標へ分注ヘッド6の移動を開始させる。すなわち、図4(a)に示す縦方向の検出開始位置40、又は、図5(a)に示す横方向の検出開始位置50に分注ヘッド6を移動させる。
【0038】
分注ヘッド6の移動に伴い、分注ヘッド6に装着された分注チップ14も移動する。発光受光部191aと反射板191bによる検出を例に説明すると、分注チップ14が発光受光部191aと反射板191bを結ぶ光路19c上に位置している場合には、発光受光部191aから発光された光は、分注チップ14によって遮られて反射板191bには届かない。反射板191bによって光が反射されないので、発光受光部191aは光を受光しない。一方、各分注チップ14間の隙間が光路19c上に位置している場合には、発光受光部19aから発光された光は、反射板19bに到達して反射され、発光受光部19aによって再び受光される。発光受光部192aと反射板192b、発光受光部193aと反射板193bによる検出の場合も同様である。
【0039】
なお、発光受光部191aと反射板191b、発光受光部192aと反射板192b、発光受光部193aと反射板193bは、それぞれ廃棄容器13の対角付近上に設けられているため、分注ヘッド6が縦方向を向いている場合でも、横方向を向いている場合でも、分注ヘッド6と光路19cとは角度を有する。本実施の形態では、この角度を45度としている。そのため、分注ヘッド6がどちらの方向を向いている場合でも、各分注チップ14は光路19cと一本ずつ順次に交わることができる。
【0040】
分注ヘッド6が縦方向の場合、分注ヘッド6が検出開始位置40の位置に移動すると、分注チップ検出センサ19は、まず、シリンジ1aに装着された分注チップ14についての検出を行う。検出されたデータは、制御装置3に送信される。シリンジ1aに装着された分注チップ14についてのデータの制御装置3への送信が完了すると、続いて、分注ヘッド6は、シリンジ2aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19に検出される位置まで移動する。以下、同様にして、移送部5は、シリンジ12aに装着された分注チップ14が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置まで分注ヘッド6を移動させる。すなわち、分注ヘッド6は、縦方向の検出終了位置41まで移動する。
【0041】
分注ヘッド6が横方向の場合にも同様に、分注ヘッド6が検出開始位置50の位置から検出終了位置51まで移動し、各分注チップ14が検出される。ここで、廃棄容器13−マイクロプレート12間の幅よりも廃棄容器13−試薬容器11間の幅の方が狭い。従って、分注ヘッド6が縦方向のときと同様に一直線に移動させると、分注ヘッド6に装着された分注チップ14が図1に示す試薬容器11に衝突してしまう。そのため、分注ヘッド6が横方向の場合には、分注ヘッド6を、X方向のみならずY方向へも移動させる。具体的には、XY座標ともに49.5mm移動する。なお、分注ヘッド6の移動方向において自動分注装置2内に障害物が無い場合には、縦方向と同様に一直線に移動させれば良い。
【0042】
制御装置3に送信された信号は、波形変換部によって波形に変換される。具体的には、波形変換部は、分注チップ検出センサ19からのON信号を基に、ON信号が検出された時間に等しい波形に信号を変換する。波形表示画面34は、その信号波形を表示する。図6(a)は、正規の分注チップ14が正常に装着された状態60での信号波形600を示した図である。信号波形600には、発光受光部191aが検出した信号波形600a、発光受光部192aが検出した信号波形600b、発光受光部193aが検出した信号波形600cの三つの信号波形が同時に表示される。この信号波形600は、制御装置3内の記憶部に予め記憶させておく。
【0043】
前記制御装置は、前記検出波形が示す検出時間と前記理想検出時間とを対比し、なお、最初から分注チップ14の装着を行わないシリンジに対しては、分注チップ14が装着されていない場合の波形を記憶部に記憶させておく。信号波形は、実際に装着された分注チップの三つの信号波形と比較され、一つでもその形状が異なる場合には、制御装置3の分注チップ調整表示部にエラーメッセージが表示される。エラーメッセージには、どのシリンジに装着された分注チップが異常であるかという情報がその波形と共に表示される。
【0044】
図6(b)は、形状の異なる分注チップ140が装着された状態61での信号波形610を示した図である。信号波形610には、発光受光部191aが検出した信号波形610a、発光受光部192aが検出した信号波形610b、発光受光部193aが検出した信号波形610cが同時に表示される。
【0045】
信号波形600と、信号波形610とを比較すると、各分注チップの先端付近の信号波形600cと610cの幅はほぼ同等であり、形状が異なると判断することは困難であるが、根元付近の信号波形600aと610aの幅は明らかに異なっている。この場合、制御装置3は、分注ヘッド6に形状の異なる分注チップ140が装着されていると判断し、その旨を示すエラーメッセージを表示する。
【0046】
図6(c)は、正規の分注チップ14が装着されてはいるが、正常に装着されていない(分注チップが分注ヘッド6にしっかりとささっていない)状態62での信号波形620を示した図である。信号波形600と、信号波形620とを比較すると、各分注チップの根元付近の600aと620a、中央付近の600bと620b、先端付近の600cと620cのいずれの位置においても、信号波形600よりも信号波形620の幅が広くなっている。この場合、制御装置3は、分注チップ14が分注ヘッド6にしっかりとささっていないと判断し、その旨を示すエラーメッセージを表示する。
【0047】
この検出動作は、分注チップを分注ヘッド6に装着した後の他に、分注作業後に分注チップを廃棄容器13に廃棄した後にも行うのが好ましい。これにより、分注チップが廃棄容器13に確実に廃棄されたか否かも検出することができ、次回の分注作業への移行をスムーズに行うことができる。
【0048】
以上では、各分注チップ毎の信号波形について説明したが、実際には、各信号波形は、波形表示画面34に全分注チップについて表示される。図7(a)〜図7(e)は、信号波形が表示された波形表示画面34を示した図である。図7(a)は、予め記憶部に記憶された正常波形を示した図である。各数字1〜12は、シリンジ1a〜12aに対応しているため、ここでは、シリンジ2a〜7aに分注チップ14が正常に装着されていることとなる。制御装置3は、図7(a)の正常波形と実際に検出した波形とを、各シリンジの中心位置67における分注チップの有無及び各シリンジにおける分注チップの上段、中段、下段の形状において比較する。例えば、図7(b)に示すような波形が検出された場合には、シリンジ7aの上段、中段、下段に波形が表示されていない。このような場合には、制御装置3は、シリンジ7aに分注チップ14が装着されていない旨を示すエラーメッセージを表示する。また、図7(c)に示すような波形が検出された場合、シリンジ7a下段に波形は表示されているが、中心位置67上には波形が表示されていない。このような場合には、異なるチップが装着されている又はチップが正常に装着されていない旨を示すエラーメッセージを表示する。また、図7(d)に示すような波形が検出された場合には、シリンジ7aの下段に波形が表示されていない。このような場合には、制御装置3は、異なるチップが装着されている又はチップが正常に装着されていない旨を示すエラーメッセージを表示する。一方、図7(e)に示すような波形が検出された場合には、シリンジ7aの各段に波形は表示されているが、中段と下段の波形が図7(a)の波形と異なる。このような場合にも、制御装置3は、異なるチップが装着されている又はチップが正常に装着されていない旨を示すエラーメッセージを表示する。
【0049】
このように、自動分注装置1は、検出した信号波形と予め制御装置3に記憶させた正規の分注チップの波形とを比較することにより、分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断する。従って、容易かつ確実に分注チップ14の分注ヘッド6への誤装着を発見し、防止することができる。誤装着があった場合には、制御装置3は、その旨を示すエラーメッセージを表示するので、ユーザは、エラーメッセージの表示に従って分注チップを装着し直すだけで、容易に分注チップの誤装着を防止することができる。また、分注チップが複数箇所で検出されるため、複数箇所での信号に基づいて分注チップの形状及び分注チップの装着状態を判断するため、より確実に分注チップの誤装着を発見することができる。
【0050】
また、制御装置3は分注工程入力部を備えているため、分注工程入力部に所望の工程を入力しておけば、自動分注装置1は制御装置3に入力された内容に従って、一連の分注作業を自動的に行う。通常、一連の分注作業としては、分注チップ14の装着、試薬容器10、11からの試薬の吸引、マイクロプレート12への試薬の吐出、分注チップ14の廃棄容器13への廃棄などが順に行われる。ここで、一連の分注作業に上記検出作業を組み込んでおけば、制御装置3は、分注作業中であっても、上記検出作業を行う。そして、形状の異なる分注チップが装着されていたり、分注チップが完全に装着されていない場合には、制御装置3は、エラーメッセージを表示する。
【0051】
検出作業が組み込まれた一連の自動分注工程について図8のフローチャートを用いて説明する。まず、分注ヘッド6に分注チップを装着する(ステップ1)。次に、分注チップの検出動作を開始させる(ステップ2)。ステップ2で検出されたデータは制御装置3に送信され、信号波形に変換される。制御装置3は、送信された信号波形に基づいて分注ヘッド6に分注チップが装着されているか否かを判断する(ステップ3)。
【0052】
分注ヘッド6に分注チップが装着されていると判断した場合(ステップ3:OK)には、続いて、分注チップの形状が正規の分注チップ14の形状と一致するか否かを判断する(ステップ4)。分注チップの形状が正規の分注チップ14の形状と一致する場合(ステップ4:OK)には、試薬の吸引・吐出などの分注作業を開始する(ステップ5)。
【0053】
一方、ステップ3で、分注ヘッド6に分注チップが装着されていないと判断した場合(ステップ3:NG)、及び、ステップ4で、分注チップの形状が正規の分注チップ14の形状と一致しないと判断した場合(ステップ4:NG)には、波形表示画面34に検出波形を表示する(ステップ6)。続いて、分注チップ調整表示部にエラー原因を示すエラーメッセージを表示する(ステップ7)。ユーザは、分注チップ調整表示部に表示されたエラーメッセージに従い、分注チップ14を装着し直す(ステップ8)。その後、再び分注チップの検出動作を開始させる(ステップ1)。
【0054】
このように、分注工程入力部に検出作業を組み込んでおけば、容易かつ確実に誤装着を発見することができ、装着不良のまま運転することを防止することができる。
【0055】
本発明による自動分注装置1は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、分注チップ検出センサ19の数をさらに増やし、より高精度に検出を行っても良い。また、図9に示すように、分注チップ検出センサ19を発光受光部191a及び反射板191bからなる一組だけとし、分注チップを検出位置においてZ軸方向に動かすことで、分注チップを複数箇所で検出しても良い。これにより、より確実に分注チップの誤装着を検出することができ、誤装着のまま運転することを防止することができる。この場合、Z軸上の各検出位置において分注チップをXY平面方向に複数回通過させても良い。これにより、より一層、確実に分注チップの誤装着を検出することができ、誤装着のまま運転することを防止することができる。
【0056】
また、分注チップを分注ヘッド6が縦方向の場合と横方向の場合の両方で検出しても良い。例えば、図10に示すように分注チップが分注ヘッド6に対して斜めに装着された状態90の場合、分注チップを一方向から検出するだけでは信号波形91に示すように、正規の分注チップ14が正常に装着された場合と区別することができない可能性がある。しかし、他方向からも検出を行うことにより、信号波形92のような波形も検出することができる。このように、分注チップが複数面で検出されることにより、分注チップの形状を立体的に認識することが可能となり、一方向からの検出では判断できない誤装着を発見することができるため、より確実に分注チップの誤装着を検出することができ、誤装着のまま運転することを防止することができる。
【0057】
更に、分注チップ検出センサ19は、分注チップの特定点を検出する代わりに、分注チップのZ軸方向の長さ、すなわち、分注チップ14が光路19c上に位置している時間を検出しても良い。この場合、図11に示すように、まず、分注ヘッド6に分注チップを装着した状態で分注チップの根元付近が分注チップ検出センサ19の光路19cを遮光する位置100を検出開始位置とする。次に、分注ヘッド6のXY座標はそのままで、分注チップ14をZ軸マイナス方向へ移動させ、分注チップ14の先端が分注チップ検出センサ19の光路19cよりZ軸マイナスの位置101を検出終了位置とする。ここで、検出開始位置100及び検出終了位置101は、座標入力欄31で所定の値を入力することとしておけば良い。この場合、複数の分注チップ検出センサ19、例えば、分注ヘッド6に装着された分注チップ14の本数と同数の分注チップ検出センサ19を設けても良い。このような構成にすれば、検出速度が上がり、効率の良い検出を行うことができる。また、分注チップ14の長さの検出は、Z軸方向に限らず、X方向、Y方向において行っても良い。
【0058】
移送部5が分注ヘッド6を検出開始位置100から検出終了位置101まで移動させる間、分注チップ検出センサ19は分注チップの検出を続ける。この間の時間と検出信号の関係は、グラフ102に示すような関係となる。グラフ102では、分注チップの先端が時間Tで光路19cよりZ軸プラス方向へに移動したことが分かる。予め、正規の分注チップ14が正常に分注ヘッド6に装着された際の信号波形がONしている時間T0を制御装置3に記憶しておき、実際に検出された時間Tと比較する。時間Tは、分注チップの長さに比例するため、T0とTが異なる場合には分注チップの誤装着が生じていると判断することができる。
【0059】
また、分注チップ検出センサは、一方が発光し、他方が受光する構成でも良い。また、分注チップ検出センサは、エリアセンサにより検出を行う構成であっても良い。この場合、検出された結果を画像処理して表示しても良い。更に、分注チップ検出センサは、廃棄容器の対角付近に配置されていなくても良く、また、配置可能なら廃棄容器上以外の場所に配置されても良い。エラーメッセージは、LED等を点灯させることにより異常を知らせる構成であっても良い。分注チップの検出に当たっては、分注ヘッドに装着された分注チップは複数本ではなく、一本であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施の形態による自動分注装置の斜視図である。
【図2】本実施の形態による分注チップ検出センサを配置した廃棄容器の斜視図である。
【図3】本実施の形態による検出画面を示した図である。
【図4(a)】分注ヘッドの向きが縦方向の場合の検出開始位置を示した図である。
【図4(b)】分注ヘッドの向きが縦方向の場合の検出終了位置を示した図である。
【図5(a)】分注ヘッドの向きが横方向の場合の検出開始位置を示した図である。
【図5(b)】分注ヘッドの向きが横方向の場合の検出終了位置を示した図である。
【図6(a)】波形表示画面に表示される信号波形の一例を示した図である。
【図6(b)】波形表示画面に表示される信号波形の他の一例を示した図である。
【図6(c)】波形表示画面に表示される信号波形の他の一例を示した図である。
【図7(a)】信号波形が表示された波形表示画面を示した図である。
【図7(b)】信号波形が表示された波形表示画面を示した図である。
【図7(c)】信号波形が表示された波形表示画面を示した図である。
【図7(d)】信号波形が表示された波形表示画面を示した図である。
【図7(e)】信号波形が表示された波形表示画面を示した図である。
【図8】検出作業が組み込まれた一連の自動分注工程についてのフローチャートである。
【図9】分注チップを検出位置においてZ軸方向に動かし、一組の分注チップ検出センサで分注チップを複数箇所で検出する自動分注装置の一例を示した図である。
【図10】分注チップを複数方向から検出する自動分注装置の一例を示した図である。
【図11】分注チップの長さを検出する自動分注装置の一例を示した図である。
【符号の説明】
【0061】
1 自動分注装置
2 自動分注装置本体
3 制御装置
5 移送部
6 分注ヘッド
8 ステップ
14 分注チップ
19 分注チップ検出センサ
30 検出画面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注チップを装着して液体の吸引及び吐出を行う分注ヘッドと、
前記分注ヘッドを移動させるための移送部と、
前記分注ヘッドによる吸引及び吐出、並びに、前記移送部による前記分注ヘッドの移動を制御するための制御装置と、
前記分注ヘッドの移動に伴って移動する前記分注チップを検出し、検出結果から検出信号を生成する検出部と、を備えた自動分注装置において、
前記制御装置は、予めモデル波形を記憶しておくことができる記憶部を備え、前記検出信号と前記モデル波形とを対比し、前記分注チップの形状及び前記分注チップの装着状態を判断することを特徴とする自動分注装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記分注チップの形状が所定の形状でない場合、又は、前記分注チップの装着状態が不完全である場合に、前記分注チップの再装着を促す分注チップ調整表示部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項3】
前記分注チップの複数箇所を検出できるように、前記検出部を複数個備え、前記制御装置は、前記複数個の検出手段が検出する前記分注チップについての複数個の信号に基づいて前記分注チップの形状及び前記分注チップの装着状態を判断することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項4】
前記移送部は、前記検出部が前記分注チップの複数箇所を検出できるように移動し、前記制御装置は、前記検出手段が検出する前記分注チップについての複数箇所の信号に基づいて前記分注チップの形状及び前記分注チップの装着状態を判断することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項5】
前記移送部は、前記検出部が前記分注チップの複数の異なる面を検出するように、前記分注ヘッドの向きを変化させることができ、前記検出手段が検出する前記分注チップについての複数面の信号に基づいて前記分注チップの形状及び前記分注チップの装着状態を判断することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記検出信号に基づいて検出波形を生成し、前記検出波形を表示する波形表示部を更に備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項7】
前記モデル波形は、前記各分注チップの予め決められた理想検出時間を示し、
前記制御装置は、前記検出波形が示す検出時間と前記理想検出時間とを対比し、前記分注チップの形状及び前記分注チップの装着状態を判断することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項1】
分注チップを装着して液体の吸引及び吐出を行う分注ヘッドと、
前記分注ヘッドを移動させるための移送部と、
前記分注ヘッドによる吸引及び吐出、並びに、前記移送部による前記分注ヘッドの移動を制御するための制御装置と、
前記分注ヘッドの移動に伴って移動する前記分注チップを検出し、検出結果から検出信号を生成する検出部と、を備えた自動分注装置において、
前記制御装置は、予めモデル波形を記憶しておくことができる記憶部を備え、前記検出信号と前記モデル波形とを対比し、前記分注チップの形状及び前記分注チップの装着状態を判断することを特徴とする自動分注装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記分注チップの形状が所定の形状でない場合、又は、前記分注チップの装着状態が不完全である場合に、前記分注チップの再装着を促す分注チップ調整表示部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の自動分注装置。
【請求項3】
前記分注チップの複数箇所を検出できるように、前記検出部を複数個備え、前記制御装置は、前記複数個の検出手段が検出する前記分注チップについての複数個の信号に基づいて前記分注チップの形状及び前記分注チップの装着状態を判断することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項4】
前記移送部は、前記検出部が前記分注チップの複数箇所を検出できるように移動し、前記制御装置は、前記検出手段が検出する前記分注チップについての複数箇所の信号に基づいて前記分注チップの形状及び前記分注チップの装着状態を判断することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項5】
前記移送部は、前記検出部が前記分注チップの複数の異なる面を検出するように、前記分注ヘッドの向きを変化させることができ、前記検出手段が検出する前記分注チップについての複数面の信号に基づいて前記分注チップの形状及び前記分注チップの装着状態を判断することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記検出信号に基づいて検出波形を生成し、前記検出波形を表示する波形表示部を更に備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【請求項7】
前記モデル波形は、前記各分注チップの予め決められた理想検出時間を示し、
前記制御装置は、前記検出波形が示す検出時間と前記理想検出時間とを対比し、前記分注チップの形状及び前記分注チップの装着状態を判断することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の自動分注装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−78202(P2006−78202A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259490(P2004−259490)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
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