自動列車制御の事前検証装置
【課題】列車走行の安全を司る自動列車制御の事前検証において、実際の走行状況に相当するATC地上システムからの信号を作成でき、ATC車載装置のソフトウェアの動作チェックを実際の走行に相当する条件下で行うことが可能な自動列車制御の事前検証装置を提供する。
【解決手段】複数列車走行シミュレーション手段11は、列車のダイヤデータを基に、各列車の位置及び速度、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を模擬する。ATC地上信号シミュレーション手段12は、該複数列車走行シミュレーション手段11にて模擬された各列車の位置、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を基に、ATC地上装置からATC車載装置へ送信されるATC地上信号を模擬する。
【解決手段】複数列車走行シミュレーション手段11は、列車のダイヤデータを基に、各列車の位置及び速度、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を模擬する。ATC地上信号シミュレーション手段12は、該複数列車走行シミュレーション手段11にて模擬された各列車の位置、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を基に、ATC地上装置からATC車載装置へ送信されるATC地上信号を模擬する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば列車鉄道システム、あるいは新交通システム等、走行路上を走行する車両の安全走行を担う自動列車制御装置(以下、ATCと略す)に係り、特に該ATCの車載装置を実際の車両に搭載する前に、実際の走行に相当するシミュレーション条件の下でATC車載装置のソフトウェア動作チェック及びソフトウェア開発を行なうことを可能にした自動列車制御の事前検証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の鉄道においては、列車走行の安全性向上のため、列車が制限速度と列車速度とを常に比較しながら走行し,速度超過の場合には自動的にブレーキをかけるというシステムが採用されるケースが多く見られる。このようなシステムはATCと呼ばれている。
【0003】
特に最近では、ATC地上システムから軌道回路を経由して、制御対象となる列車に対し、該列車の在線位置に関する情報、該列車と前方の列車との間隔に関する情報、該列車が走行する予定の経路上に存在する転てつ器の転換状態・鎖錠状態に関する情報、臨時速度制限に関する情報が送られている。
【0004】
該列車に搭載されたATC車載装置では、これらの情報をもとに、前方の列車に衝突しないように、また、該列車の走行経路上に存在する転てつ器が該列車のために転換・鎖錠される前に、該列車が転てつ器に到達することのないように、また、該列車の走行経路上に設定されている臨時速度制限を越えることのないように、ATC車載装置が制限速度のパターンを演算し、該制限速度と該列車の走行速度とを常に比較しながら走行し、速度超過の場合には自動的にブレーキをかける方式が採用されている。
【0005】
上述のATC車載装置は、実際の車両に搭載される前に、種々の方法で動作チェックを行い、信頼性の向上が図られている。
【0006】
しかしながら、ATC車載装置が実際の車両に搭載される前の動作チェックを、実際のダイヤに従って複数の列車が走行するという条件下で行なうことは難しく、またダイヤに遅延が発生した場合のような状態での動作チェックを行うことも難しい。このことから、現状では、ATC車載装置に送信されるATC地上システムからの信号を模擬的及び人為的に作成し、動作チェックを行っている。特許文献1では、列車ATC地上システムからの信号の模擬信号を、キーボード等を介してオペレータが入力するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−310397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような模擬信号を実際の走行状況(何十本もの列車が、ダイヤに従って、あるいは遅延発生下で走行している状況)に合わせて作成することは困難であり、打開案が求められて来た。
【0009】
本発明の目的は、列車走行の安全を司る自動列車制御の事前検証において、実際の走行状況に相当するATC地上システムからの信号を作成でき、ATC車載装置のソフトウェアの動作チェックを実際の走行に相当する条件下で行うことが可能な自動列車制御の事前検証装置を提供することにある。
【0010】
さらに、もう一つの課題として、以下のようなものがある。
【0011】
上述の事前検証装置を実現する方策として、実際に複数の列車が走っている状況に関するシミュレータを活用することが考えられる。複数の列車が走行する状況をシミュレーションし、各列車の速度・位置等を出力する手段は公知の技術となっている。また、ATCに必要な制限速度のパターンも公知となっており、これら公知の技術を組み込んだシミュレータを構築することは既存のシミュレータの改造で可能となる。
【0012】
従って、このようなシミュレータがあれば、実際に複数の列車がATCによる制限速度に従って走っている状況のシミュレーション(列車位置・速度、転てつ器の動きなどのシミュレーション)は可能となる。
【0013】
しかしながら、ATC地上システムが軌道回路という伝送手段を用いて、ATC車載装置にどのような信号を送信するかは、ATCの方式によって多岐に亘る。この多様なATCの方式を上述のシミュレータに組み込むことは、シミュレータの改造が非常に複雑となり現実的ではない。
【0014】
従って本発明のもう一つの目的は、上記のような自動列車制御の事前検証装置を提供するに際して、現実的に構築可能なシミュレータ構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の実施形態は、地上設備データ、列車特性データ、路線データ(路線形状データ)、連動条件データなどの基礎データと、計画ダイヤ及び列車を走行させるための制御ダイヤなどのダイヤデータとを入力として、複数列車の走行挙動をシミュレーションし、列車位置・速度など列車の時系列的な挙動に関するシミュレーションデータと、各転てつ器の転換方向及び鎖錠・解錠の状態に関する時系列的なシミュレーションデータを出力する複数列車走行シミュレーション手段と、該複数列車走行シミュレーション手段の出力である上記シミュレーションデータを入力として、ATC地上システムの動作をシミュレーションし、軌道回路を経由して各列車に送信される以下の各信号情報を出力するATC地上信号シミュレーション手段とを備えている。
【0016】
(1)走行路上(軌道回路上)に設定される「列車間隔に関する信号情報」
(2)走行路上(軌道回路上)に設定される「列車の走行経路に相当する進路の成立状況を表す信号情報」
(3)走行路上(軌道回路上)に設定される「臨時速度制限に相当する信号情報」
このような構成とすることの最大のメリットは以下のようなものである。
【0017】
すでに述べたように、実際に複数の列車が走っている状況に関するシミュレーション(列車位置・速度、転てつ器の動きなどのシミュレーション)は公知技術として存在するが、ATC地上システムが軌道回路という伝送手段を用いてどのような信号をATC車載装置に送信するかは、ATCの方式によって多岐に亘る。この多様なATCの方式を上述のシミュレータに組み込むことは、シミュレータの改造が非常に複雑となり、また、シミュレーションに要する時間の増大も招くため現実的ではない。
【0018】
しかしながら、ATCの方式がどのようなものであっても、列車位置・速度の時系列データ及び転てつ器の動きに関するデータさえあれば、これらを入力としてATC地上システムの動作を上記シミュレータとは独立した形で模擬することは可能である。例えば、上記(1)の信号情報は、列車位置の時系列データ及び軌道回路始端・終端位置データさえあればシミュレーション可能である。上記(2)の信号情報は、転てつ器の転換方向及び鎖錠・解錠の状態に関する時系列的なデータと列車位置の時系列データ及び各進路が成立するための転てつ器の転換条件データさえあれば、シミュレーション可能である。更に、上記(3)の信号情報は、列車位置の時系列データ、軌道回路始端・終端位置データ、及び各軌道回路に予め設定される臨時速度制限情報さえあれば、シミュレーション可能である。
【0019】
以上述べた理由により、本発明の一実施形態に係る自動列車制御の事前検証装置においては、複数列車の走行挙動をシミュレーションする複数列車走行シミュレーション手段とATC地上システムの動作をシミュレーションするATC地上信号シミュレーション手段とを分離することにより、それぞれのシミュレーション手段のプログラムが複雑になることを避け、効率的にATC地上信号のシミュレーションを行うことが出来る構成にすると共に、ATC地上信号の内容が変わった際のプログラム変更量を最小限に抑えられる構成としている。
【0020】
また、本発明の第2の実施形態では、上記第1の実施形態に加えて、
(a)実際の路線を走行中の列車に搭載されている車載装置から取得した「車載装置が検知した列車位置・速度データの時系列データ」、
(b)実際の路線を走行中の列車に搭載されている車載装置から取得した「ATC車載装置がATC地上システムより受信したATC地上信号データの時系列データ」、
(c)請求項1に記載の複数列車走行シミュレーション手段から出力される「列車位置・速度など列車の時系列的な挙動に関するシミュレーションデータ」、
(d)請求項1に記載のATC地上信号シミュレーション手段から出力される「ATC地上信号シミュレーションデータ」、
を入力として、上記(a)と(c)との比較、及び上記(b)と(d)との比較を行う複数列車走行シミュレーション精度評価手段を備えている。
【0021】
従って、第2の実施形態に係る自動列車制御の事前検証装置においては、実際のデータとシミュレーションデータとの比較により、請求項1に記載の複数列車走行シミュレーション手段に使われているシミュレーションモデルの修正に有用なシミュレーション精度評価データを得ることが出来る。
【0022】
また、本発明の第3の実施形態では、上記第1実施形態に加えて、前記ATC地上信号シミュレーション手段の出力であるATC地上信号シミュレーションデータを入力として、車両に搭載されるATC車載装置の動作を模擬するための手段として、特定の列車の走行シミュレーションを行なう単一列車走行シミュレーション手段と、実路線ATCシステムの車両に搭載されるATC車載ハードウェアと、該ATC車載ハードウェアに組み込まれるATC車載ソフトウェアと、速度発電機など該ATC車載ハードウェアと該ATC車載ソフトウェアの動作に必要となるATC周辺装置と、から成るATC車載装置検証装置を備えている。
【0023】
従って、第3実施形態に係る自動列車制御の事前検証装置においては、車両に搭載されるATC車載装置の動作を模擬するのに必要なATC地上信号シミュレーションデータを前記ATC地上信号シミュレーション手段より得ることにより、ATC車載ソフトウェアの動作評価を行うことが可能となる。また、この動作評価結果からATC車載ソフトウェアの修正に有用なデータを得ることが出来る。
【発明の効果】
【0024】
複数列車走行シミュレーション手段とATC地上信号シミュレーション手段とを分離することにより、それぞれのシミュレーション手段のプログラムが複雑になることを避け、効率的にATC地上信号のシミュレーションを行うことが出来ると共に、ATC地上信号の内容が変わった際のプログラム変更量を最小限に抑えられる構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第1の実施形態を示す機能ブロック図。
【図2】複数列車走行シミュレーション手段の内部構成例を説明するための補足説明図。
【図3】(a)は列車位置・速度シミュレーションデータのデータ構成を示し、(b)は転てつ器・転換方向鎖錠状態シミュレーションデータのデータ構成を示す図。
【図4】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第3の実施形態を示す機能ブロック図。
【図5】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第2の実施形態を示す機能ブロック図。
【図6】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第4の実施形態を示す機能ブロック図。
【図7】複数列車走行シミュレーション手段の内部構成例を説明するための補足説明図。
【図8】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第5の実施形態を示す機能ブロック図。
【図9】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第6の実施形態を示す機能ブロック図。
【図10】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第7の実施形態を示す機能ブロック図。
【図11】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第8の実施形態を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
[実施例1]
図1は、本発明の第1の実施形態による自動列車制御の事前検証装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【0028】
すなわち、本実施形態による自動列車制御の事前検証装置は、図1に示すように、複数列車走行シミュレーション手段11と、ATC地上信号シミュレーション手段12と、基礎データ3を格納する基礎データ格納部13、ダイヤデータ4を格納するダイヤデータ格納部14、列車位置・速度シミュレーションデータ5を格納するシミュレーションデータ格納部15、転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ6を格納するシミュレーションデータ格納部16、ATC地上信号シミュレーションデータ7を格納するシミュレーションデータ格納部17とから構成されている。
【0029】
基礎データ3及びダイヤデータ4は複数列車走行シミュレーション手段11に入力される。複数列車走行シミュレーション手段11は、列車位置・速度シミュレーションデータ5をデータ格納部15に供給し、このデータは適宜ATC地上信号シミュレーション手段12に入力される。また複数列車走行シミュレーション手段11は、転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ6をデータ格納部16に供給し、このデータは適宜ATC地上信号シミュレーション手段12に入力される。ATC地上信号シミュレーション手段12はATC地上信号シミュレーションデータ7をデータ格納部17に供給する。
【0030】
基礎データ3は、地上設備データ(ATC地上信号を車両に伝送する手段としての軌道回路の配置位置、トランスポンダ設置位置など)、列車特性データ(列車の加減速特性、列車長、列車重量など)、路線データ(走行路線の形状、勾配、曲率など)、連動条件(進路の鎖錠・解錠、転てつ器の鎖錠・解錠などに関する条件など)の各種データより構成される。
【0031】
ダイヤデータ4は、列車運行の計画を示す計画ダイヤ、実際の運行制御に関わるダイヤを示す制御ダイヤなどの各データより構成される。計画ダイヤとは、例えば4月〜9月あるいは10月〜3月のように、定期的に決められた列車ダイヤ(時刻表)を示す。この列車ダイヤは、列車が何時何分にどの駅を発着するかを示すデータであって、列車毎に異なり例えば数十列車分のデータである。制御ダイヤとは実際に運用されるダイヤであり、臨時列車の運行あるいは天候条件などにより、計画ダイヤに多少の変更を加えたダイヤである。
【0032】
これら基礎データ3とダイヤデータ4を入力として、複数列車走行シミュレーション手段11は、ダイヤに定められた各列車を予定された走行経路に沿って走行させるシミュレーションを実施する。
【0033】
また、複数列車走行シミュレーション手段11は、列車走行とともに各転てつ器がどのようなタイミングで転換され、鎖錠・解錠されるのかもシミュレーションする。転てつ器の設定には、定位及び反位があり、定位は列車が直進する設定、反位は列車が進路変更する設定である。この転換とは、転てつ器を定位から反位へまたは反位から定位へ設定を変更することを示す。鎖錠とは転てつ器の例えば電源をOFFして転てつ器が固定された状態を示す。解錠とは転てつ器の例えば電源をONして転てつ器が可動状態になっていることを示す。
【0034】
ダイヤデータに列車出発時間の遅れを設定すれば、ダイヤが乱れた状況下でのシミュレーションも可能となる。
【0035】
図2(a)は複数列車走行シミュレーション手段11の内部構成例を示す機能ブロック図である。複数列車走行シミュレーション手段11は、ダイヤ管理部101、列車走行処理部102、列車追跡処理部103、信号処理部104、軌道回路処理部105、連動処理部106、転てつ器処理部107、進路制御処理部108を含む。図1の基礎データ3は、各部101〜108に適宜供給され利用される。
【0036】
列車のダイヤを管理するダイヤ管理部101からはシミュレーション用ダイヤデータが、列車走行処理部102及び列車追跡処理部103に出力される。このシミュレーション用ダイヤデータは図1のダイヤデータ格納部14から適宜読み出したダイヤデータである。
【0037】
列車走行処理部102は、このシミュレーション用ダイヤデータ及び信号処理部104からの信号制御情報(各列車の停止位置に関する情報及び臨時速度制限情報等)を受けて、各列車の列車位置・速度を計算し、列車位置・速度シミュレーションデータ5としてシミュレーションデータ格納部15に格納する。
【0038】
軌道回路処理部105では、列車位置・速度シミュレーションデータ5より得られる列車位置を基に、軌道回路の在線状態(各列車がどの軌道回路上を走行中かを示す情報)を信号処理部104及び連動処理部106に出力する。
【0039】
連動処理部106では、軌道回路在線状態、転てつ器状態(転てつ器の転換後状態(定位/反位)及び鎖錠状態に関する情報)及び進路制御情報(どの転てつ器をどの方向に転換すべきかを示す情報)を入力し、進路制御情報において要求されている転てつ器の転換が可能か否か判断する。転換が可能であれば、転てつ器処理部107に対し転てつ器制御情報(各転てつ器に対する転換指令・鎖錠指令)を出力すると共に、進路設定状態(進路の設定結果及び鎖錠制御結果等)を信号処理部104及び列車追跡処理部103に出力する。
【0040】
転てつ器処理部107では、連動処理部106からの転てつ器制御情報を受け、必要に応じて転てつ器の転換・鎖錠を行い、転てつ器状態及び鎖錠状態(転てつ器がロックされているか否かを示す情報)をシミュレーションデータ6としてシミュレーションデータ格納部16に格納する。
【0041】
信号処理部104では、軌道回路在線状態及び進路設定状態を基に、信号制御情報(各列車の停止位置に関する情報、臨時速度制限情報等)を列車走行処理部102に出力する。
【0042】
列車追跡処理部103では、シミュレーション用ダイヤデータ4、列車位置及び進路設定状態を基に、列車追跡情報(駅発着などダイヤとの関係を含めた列車位置の追跡情報)を進路制御処理部108に出力する。
【0043】
進路制御処理部108では、列車追跡情報をもとに、各列車の転てつ器通過順序がダイヤと矛盾しないように、列車が予定している走行路上に存在する転てつ器の転換を要求するタイミングを判断し、適切なタイミングに進路制御情報(どの転てつ器をどの方向に転換すべきかを示す情報)を連動処理部106に出力する。
【0044】
図3(a)は列車位置・速度シミュレーションデータ5のデータ構成を示す図である。図1で示した複数列車走行シミュレーション手段11による列車走行ダイナミックシミュレーションにより、所定時刻毎の列車位置、列車速度、軌道回路順列通番、開通区間数に関する時系列データが、左端のデータ識別Noと共にシミュレーションデータ格納部15に記録される。
【0045】
図3(b)は転てつ器・転換方向鎖錠状態シミュレーションデータ6のデータ構成を示す図である。図1で示した複数列車走行シミュレーション手段11による列車走行ダイナミックシミュレーションにより、所定時刻毎の各転てつ器の状態(定位/反位、転換中)に関する時系列データが、左端のデータ識別Noと共にシミュレーションデータ格納部16に記録される。
【0046】
図2(b)に記された路線図は、列車Aに続いて列車B、列車C、列車D、列車Eが走行する様子を模式的に表したものである。図2(a)に示したような複数列車走行シミュレーション手段11によれば、例えば列車Dが駅の側線側に進入・停車し、列車Cが駅の本線側を破線矢印の方向に通過した後で、列車Dが駅を出発する際の、転てつ器X、転てつ器Yの動きや、進路設定状態及び軌道回路在線状態を模擬することが可能となる。複数列車走行シミュレーション手段11によれば、このような模擬をダイヤ全体、対象路線全体に対して行うことが可能となる。
【0047】
次に、ATC地上信号シミュレーション手段12の動作を説明する。
【0048】
ATC地上信号シミュレーション手段12は、複数列車走行シミュレーション手段11により生成され、シミュレーションデータ格納部15,16に格納された列車位置・速度シミュレーションデータ5及び転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ6に基づいて、ATC地上システムの動作をシミュレーションする。
【0049】
ATC地上信号シミュレーション手段12は、ATC地上信号に相当する時系列データとして、以下の(1)〜(3)の情報を列車毎に作成する。これらの情報は、軌道回路から各列車に対して送信される情報である。
【0050】
(1)列車が通過中の軌道回路(図2(b)の路線図に関する上記説明を参照)を示す情報。
【0051】
(2)列車が予定している走行路上の分岐器の向き(転てつ器の定位/反位)の情報。
【0052】
(3)列車の前方を走行中の先行列車との間にどの程度の間隔が空いているかを示す情報。
【0053】
上記(1)の軌道回路情報は、前述の図3(a)のようにシミュレーションデータ格納部15において、各列車位置の時系列データが得られているので、対象路線上に各軌道回路がどのように割り付けられているか(各軌道回路の始端・終端の位置データ)を基に作成する。
【0054】
上記(2)の分岐器の向き情報は、前述の図3(b)のようにシミュレーションデータ格納部16において、転てつ器の転換状態として得られているので、それを利用する。
【0055】
上記(3)の先行列車との間隔情報は、前述の図3(a)のように、各列車位置の時系列データが得られているので、これらのデータから各列車の前方を走行中の先行列車との間にどの程度の間隔が空いているかを計算して作成する。
【0056】
またATC地上信号シミュレーション手段12は、走行路上(軌道回路上)に設定される臨時速度制限に相当する信号情報も生成する。臨時速度制限とは、気象条件等の理由により、通常の制限速度とは違う値に速度を制限することを示す。
【0057】
上述したように、本実施形態の自動列車制御の事前検証装置では、複数列車の走行挙動をシミュレーションする複数列車走行シミュレーション手段11と、ATC地上システムの動作をシミュレーションするATC地上信号シミュレーション手段12とを分離することにより、それぞれのシミュレーション手段のプログラムが複雑になることを避け、効率的にATC地上信号のシミュレーションを行うことが出来る構成としている。
【0058】
複数列車走行シミュレーション手段11は従来からある装置であって、この複数列車走行シミュレーション手段11がシミュレーション中に生成する信号のうち、列車位置・速度シミュレーションデータ5及び転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ6を抽出し、抽出したデータを基に、ATC地上信号シミュレーション手段12がATC地上システムをシミュレーションし、ATC地上システムが各列車に対して送信するデータ(ATC地上信号シミュレーションデータ7)を生成する。従って、複数列車走行シミュレーション手段11にATC地上信号シミュレーション手段12を組み込む場合に比べ、開発費を大幅に削減することができる。
【0059】
[実施例1の変形例]
ATC地上信号シミュレーションデータ7に含まれるものとして、上述の説明では、軌道回路に関する情報、列車間隔に関する情報、列車の走行経路に相当する進路の成立状況(転てつ器の定位/反位)を表す信号情報、臨時速度制限に相当する情報を挙げたが、ATCの方式の違いにより、必ずしも上記の情報に限られるものではなく、他の情報も考えられる。ただし、ATCの方式がどのようなものであろうとも、ATC地上信号を構築するのに必要な情報として、列車位置・速度シミュレーションデータ5及び転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ6が複数列車走行シミュレーション手段1から得られるので、これらのデータからATCの方式に合わせた信号情報を構築することが可能となる。つまり、ATC地上システムには様々な方式あるいは機能を有するものがあるが、信号シミュレーション手段12を各ATC地上システムの方式あるいは機能に合わせて設計することにより、様々なATC地上システムを容易にシミュレーションすることが可能となる。
【0060】
[実施例2]
図4は、本実施形態による自動列車制御の事前検証装置の第2の実施形態の構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一の部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0061】
すなわち、本実施形態の自動列車制御の事前検証装置は、図4に示すように図1に対して、実路線のATCシステムより得られる実路線列車位置・速度データ8を格納する位置・速度データ格納部18と、実路線ATC地上信号データ9を格納する地上信号データ格納部19と、複数列車走行シミュレーション精度評価手段20と、シミュレーション精度評価データ格納部21とを付加した構成としている。
【0062】
基礎データ格納部13は、実路線で実際に用いられている基礎データを格納し、ダイヤデータ格納部14は、実際に運用されているダイヤデータを格納する。このように、実路線で実際に用いられている基礎データ3及びダイヤデータ4に基づいて、複数列車走行シミュレーション手段11は、走行シミュレーションを行う。
【0063】
位置・速度データ格納部18は、実路線のATCシステム31で、実際に得られた列車位置・速度データ8を格納する。地上信号データ格納部19は実路線のATCシステムで実際に軌道回路から送信されたATC地上信号を格納する。
【0064】
複数列車走行シミュレーション精度評価手段20は、列車位置・速度シミュレーションデータ5と実路線列車位置・速度データ8との比較、及びATC地上信号シミュレーションデータ7と実路線ATC地上信号データ9との比較により、シミュレーション精度評価データ11を出力する構成となっている。例えば精度評価手段20は、列車位置・速度シミュレーションデータ5をグラフ化し、実路線列車位置・速度データ8をグラフ化し、2つのグラフを重ね合わせて得られるデータを出力する。ATC地上信号シミュレーションデータ7と実路線ATC地上信号データ9についても同様に、2つのグラフを重ね合わせて得られるデータを出力する。
【0065】
このように2つのグラフを重ね合わせて得られるデータは、シミュレーション精度評価データとしてデータ格納部21に格納される。ユーザはシミュレーション精度評価データ10を例えば表示部にグラフとして表示し、重ね合わせたグラフの値が一致するように、複数列車走行シミュレーション手段11を修正する。
【0066】
以上のように本実施形態によれば、実路線列車位置・速度データ8及び実路線ATC地上信号データ9に基づいて、複数列車走行シミュレーション手段11のシミュレーション精度を高めることができる。
【0067】
[実施例2の変形例]
シミュレーション精度評価データ10は上記したように、複数列車走行シミュレーション手段1の中のシミュレーションモデルを実際のシステムに近付けるための修正に使用され、この修正作業は人間が介在して行われる。しかし、運転士の運転操作による加速度及び減速度を実路線列車位置・速度データ8より統計的に算出し、駅発車時・駅間走行時の加速度、駅停止時の減速度に関するモデルを学習し、学習結果を複数列車走行シミュレーション手段11に組み込むプロセスを自動的に行なう構成としてもよい。
【0068】
[実施例3]
図5は、本発明による自動列車制御の事前検証装置の第3の実施形態の構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一の部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0069】
すなわち、第3の実施形態に係る自動列車制御の事前検証装置は、図5に示すように図1に対して、ATC地上信号シミュレーション手段12より出力されるATC地上信号シミュレーションデータ7を用いて、実路線ATCシステムの車両に搭載されるATC車載装置の事前検証を行うATC車載装置検証装置22が追加されている。
【0070】
ATC車載装置検証装置22は、特定列車の走行シミュレーションを行なう単一列車走行シミュレーション手段23と、実路線ATCシステムの車両に搭載されるATC車載ハードウェア24と、該ATC車載ハードウェア24に組み込まれるATC車載ソフトウェア25と、該ATC車載ハードウェア24と該ATC車載ソフトウェア25の動作に必要となるATC周辺装置26とを含む。ATC車載装置検証装置22からは、ATC車載ソフトウェア25の内容修正のためのATC車載ソフトウェア動作評価データ32が得られ、この評価データ32はデータ格納部27に格納される。
【0071】
ATC地上信号シミュレーションデータ格納部17からは、このシミュレーションデータ格納部17において指定された1列車についてのATC地上信号シミュレーションデータ7が検証装置22に出力される。ATC周辺装置26からATC車載ハードウエア25へは、例えばTG信号が模擬的に出力される。このTG信号は車輪の回転に応じて出力されるパルス状信号で、車両速度、車両位置等を演算するときに用いられる信号である。ATC車載ハードウエア24は、ATC地上信号シミュレーションデータ7及びTG信号に基づいてATCの演算処理を行い、例えばブレーキ指令BKを単一列車走行シミュレーション手段23に出力する。単一列車走行シミュレーション手段23は、このブレーキ指令BKに基づいて列車の走行シミュレーションを行う。
【0072】
データ格納部27には、例えばTG信号、ATC地上信号シミュレーションデータ7、ブレーキ指令BKが、ATC車載ソフトウエア動作評価データ32として時系列で記録される。この評価データ32を例えば表示部に表示して、ATC車載ソフトウエアの動作が評価される。このとき、必要に応じてATC車載ソフトウエアの修正が行われる。
【0073】
以上のように本発明の第3の実施形態は第1の実施形態に比べ、ATC車載ハードウエア24及びATC車載ソフトウエア25の事前検証及び修正を容易に行うことができる。
【0074】
[実施例4]
図6は、本発明による自動列車制御の事前検証装置の第4の実施形態の構成例を示す機能ブロック図である。この第4の実施形態は、図4の第2の実施形態と図5の第3の実施形態を組み合わせた構成を有している。
【0075】
すなわち、第4の実施形態に係る自動列車制御の事前検証装置は、図6に示すように図1の第1の実施形態に対して、実路線列車位置・速度データ格納部18と、実路線ATC地上信号データ格納部19と、複数列車走行シミュレーション精度評価手段20と、シミュレーション精度評価データ格納部21と、ATC車載装置検証装置22が追加されている。
【0076】
従って第4の実施形態は第1の実施形態に比べ、複数列車走行シミュレーション手段11のシミュレーション精度を高めることができると共に、ATC車載ハードウエア24及びATC車載ソフトウエア25の事前検証及び修正を容易に行うことができる。
【0077】
[実施例5]
図1〜図6では、軌道回路の存在を前提としていた。これは、各列車の位置を地上側で把握する手段として軌道回路を用いているためである。しかしながら、無線を応用した列車位置検知システムがあれば、必ずしも軌道回路は必要とされない。例えば、以下のような手段により、軌道回路よりも精度よく地上側が列車位置を検知することが可能となる。
【0078】
・GPSを応用した列車位置検知システム。
【0079】
・列車が速度発電機からのTG信号を積算する等の手段により、自列車の位置を検知し、その検知情報を無線により地上ATCシステムに送信する形の列車位置検知システム。
【0080】
軌道回路の替わりに上述の列車位置検知システムを採用する場合、ATCの方式は無線応用ATCに替わる。これは次のようなものである。
【0081】
従来のATCでは、ATC地上システムから軌道回路を経由して制御対象となる列車に対し、該列車の在線位置に関する情報、該列車と前方の列車との間隔に関する情報、該列車が走行する予定の経路上に存在する転てつ器の転換状態・鎖錠状態に関する情報、臨時速度制限に関する情報が送られていた。
【0082】
これに対し無線応用ATCでは、上記したように、GPSを応用した列車位置検知システム、あるいは列車が速度発電機からのTG信号を積算する等の手段により自列車の位置を検知する列車位置検知システム等により得られる位置検知情報を、無線により地上に送信することで、地上システム側が各列車の在線位置に関する情報を把握することが出来る。
【0083】
従って、無線応用ATC地上システムから無線伝送経由で制御対象となる列車に対し、該列車の在線位置に関する情報、該列車と前方の列車との間隔に関する情報、該列車が走行する予定の経路上に存在する転てつ器の転換状態・鎖錠状態に関する情報、臨時速度制限に関する情報等を含むATC情報を送ることができる。
【0084】
該列車に搭載された無線応用ATC車載装置では、これらの情報をもとに、前方の列車に衝突しないように、また、該列車の走行経路上に存在する転てつ器が該列車のために転換・鎖錠される前に、該列車が転てつ器に到達することのないように、また、該列車の走行経路上に設定されている臨時速度制限を越えることのないように、無線応用ATC車載装置が制限速度のパターンを演算し、該制限速度と該列車の走行速度とを常に比較しながら走行し、速度超過の場合には自動的にブレーキをかける方式が採用される。
【0085】
図7は、図2に示した軌道回路の替わりに、上述の自列車位置検知システム及び無線応用ATCを採用した場合の複数列車走行シミュレーション手段11の一例及びその路線図である。
【0086】
図2(a)の軌道回路処理部105では、列車が軌道回路に在線しているか否かの情報をもとに各列車の在線状態を把握していたが、上述のような軌道回路に依存しない列車位置検知システムがあれば、図2(a)の軌道回路処理部105の替わりに、より細かい単位で精度よく在線状況を把握できる列車在線状況把握処理(上述の列車位置検知システムにより各列車の在線状況を把握する処理のシミュレーション)を適用することが出来る。この処理は、在線状況把握処理部109により実施される。
【0087】
図8は、図1に対して上述の無線応用ATCを採用した自動列車制御の事前検証装置の構成例を示す機能ブロック図であり、第1の実施形態の変形例となる。
【0088】
図1と同一の部分には同一符号を付し、無線応用ATCの採用により内容が一部変更となる部分には、図1と同一符号の末尾にAを付している。全体の処理の流れは、第1の実施形態と同様のため説明を省略する。
【0089】
[実施例6]
図9は、図4に対して上述の無線応用ATCを採用した自動列車制御の事前検証装置の構成例を示す機能ブロック図であり、第2の実施形態の変形例となる。
【0090】
図4と同一の部分には同一符号を付し、無線応用ATCの採用により内容が一部変更となる部分には、図4と同一符号の末尾にAを付している。全体の処理の流れは、第2の実施形態と同様のため説明を省略する。
【0091】
[実施例7]
図10は、図8に示した事前検証装置に対して、無線応用ATC車載装置検証装置22A及び無線応用ATC車載ソフトウェア動作評価データ格納部27Aが追加されている。無線応用ATC車載装置検証装置22Aは、無線応用ATC地上信号シミュレーション手段12Aより出力される無線応用ATC地上信号シミュレーションデータ7Aを用いて、実路線無線応用ATCシステムの車両に搭載される無線応用ATC車載装置の事前検証を行う。この無線応用ATC車載装置検証装置22Aは、特定の列車の走行シミュレーションを行なう単一列車走行シミュレーション手段23Aと、実路線無線応用ATCシステムの車両に搭載される無線応用ATC車載ハードウェア24Aと、該無線応用ATC車載ハードウェア24Aに組み込まれる無線応用ATC車載ソフトウェア25Aと、該無線応用ATC車載ハードウェア24Aと該無線応用ATC車載ソフトウェア25Aの動作に必要となる無線応用ATC周辺装置26Aとを含む。また無線応用ATC車載装置検証装置22Aは、該無線応用ATC車載ソフトウェア25Aの内容修正のために使用される無線応用ATC車載ソフトウェア動作評価データ32Aを生成し、この評価データ32Aは評価データ格納部27Aに格納される。
【0092】
第7の実施形態の自動列車制御の事前検証装置においては、車両に搭載される無線応用ATC車載装置の動作を模擬するのに必要な無線応用ATC地上信号シミュレーションデータを、前記無線応用ATC地上信号シミュレーション手段12Aより得ることにより、無線応用ATC車載ソフトウェアの動作評価を行うことが可能となる。また、この動作評価結果から無線応用ATC車載ソフトウェア25Aの修正に有用なデータを得ることが出来る。
【0093】
[実施例8]
図11は、図8〜図10を包含した実施形態を表す機能ブロック図となっており、第5〜第7の実施形態の特徴を併せ持つ。
【0094】
(発明の効果)
以上説明したように、本発明の自動列車制御の事前検証装置によれば、走行中の列車に対し、地上からの信号により自動的にブレーキを掛けたり、制限速度以下になればブレーキを緩めたりする自動列車制御装置(ATC)の事前検証において、実際の走行状況に相当するATC地上システムからの信号を作成でき、ATC車載装置のソフトウェアの動作チェックを実際の走行に相当する条件下で行うことが可能となる。
【0095】
以上の説明はこの発明の実施形態であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができるものである。
【符号の説明】
【0096】
11…複数列車走行シミュレーション手段、12… ATC地上信号シミュレーション手段、13…基礎データ格納部、14…ダイヤデータ格納部、15…列車位置・速度シミュレーションデータ格納部、16…転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ格納部、17…ATC地上信号シミュレーションデータ格納部、18…実路線列車位置・速度データ格納部、19…実路線ATC地上信号データ格納部、20…複数列車走行シミュレーション精度評価手段、21…シミュレーション精度評価データ格納部、22…ATC車載装置検証装置、23…単一列車走行シミュレーション手段、24…ATC車載ハードウェア、25…ATC車載ソフトウェア格納部、26…ATC周辺装置、27…ATC車載ソフトウェア動作評価データ格納部、11A…複数列車走行シミュレーション手段、12A…無線応用ATC地上信号シミュレーション手段、13A…基礎データ格納部、17A…無線応用ATC地上信号シミュレーションデータ格納部、19A…実路線無線応用ATC地上信号データ格納部、20A…複数列車走行シミュレーション精度評価手段、21A…シミュレーション精度評価データ格納部、22A…無線応用ATC車載装置検証装置、23A…単一列車走行シミュレーション手段、24A…無線応用ATC車載ハードウェア、25A…無線応用ATC車載ソフトウェア格納部、26A… 無線応用ATC周辺装置、27A… 無線応用ATC車載ソフトウェア動作評価データ格納部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば列車鉄道システム、あるいは新交通システム等、走行路上を走行する車両の安全走行を担う自動列車制御装置(以下、ATCと略す)に係り、特に該ATCの車載装置を実際の車両に搭載する前に、実際の走行に相当するシミュレーション条件の下でATC車載装置のソフトウェア動作チェック及びソフトウェア開発を行なうことを可能にした自動列車制御の事前検証装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の鉄道においては、列車走行の安全性向上のため、列車が制限速度と列車速度とを常に比較しながら走行し,速度超過の場合には自動的にブレーキをかけるというシステムが採用されるケースが多く見られる。このようなシステムはATCと呼ばれている。
【0003】
特に最近では、ATC地上システムから軌道回路を経由して、制御対象となる列車に対し、該列車の在線位置に関する情報、該列車と前方の列車との間隔に関する情報、該列車が走行する予定の経路上に存在する転てつ器の転換状態・鎖錠状態に関する情報、臨時速度制限に関する情報が送られている。
【0004】
該列車に搭載されたATC車載装置では、これらの情報をもとに、前方の列車に衝突しないように、また、該列車の走行経路上に存在する転てつ器が該列車のために転換・鎖錠される前に、該列車が転てつ器に到達することのないように、また、該列車の走行経路上に設定されている臨時速度制限を越えることのないように、ATC車載装置が制限速度のパターンを演算し、該制限速度と該列車の走行速度とを常に比較しながら走行し、速度超過の場合には自動的にブレーキをかける方式が採用されている。
【0005】
上述のATC車載装置は、実際の車両に搭載される前に、種々の方法で動作チェックを行い、信頼性の向上が図られている。
【0006】
しかしながら、ATC車載装置が実際の車両に搭載される前の動作チェックを、実際のダイヤに従って複数の列車が走行するという条件下で行なうことは難しく、またダイヤに遅延が発生した場合のような状態での動作チェックを行うことも難しい。このことから、現状では、ATC車載装置に送信されるATC地上システムからの信号を模擬的及び人為的に作成し、動作チェックを行っている。特許文献1では、列車ATC地上システムからの信号の模擬信号を、キーボード等を介してオペレータが入力するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−310397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような模擬信号を実際の走行状況(何十本もの列車が、ダイヤに従って、あるいは遅延発生下で走行している状況)に合わせて作成することは困難であり、打開案が求められて来た。
【0009】
本発明の目的は、列車走行の安全を司る自動列車制御の事前検証において、実際の走行状況に相当するATC地上システムからの信号を作成でき、ATC車載装置のソフトウェアの動作チェックを実際の走行に相当する条件下で行うことが可能な自動列車制御の事前検証装置を提供することにある。
【0010】
さらに、もう一つの課題として、以下のようなものがある。
【0011】
上述の事前検証装置を実現する方策として、実際に複数の列車が走っている状況に関するシミュレータを活用することが考えられる。複数の列車が走行する状況をシミュレーションし、各列車の速度・位置等を出力する手段は公知の技術となっている。また、ATCに必要な制限速度のパターンも公知となっており、これら公知の技術を組み込んだシミュレータを構築することは既存のシミュレータの改造で可能となる。
【0012】
従って、このようなシミュレータがあれば、実際に複数の列車がATCによる制限速度に従って走っている状況のシミュレーション(列車位置・速度、転てつ器の動きなどのシミュレーション)は可能となる。
【0013】
しかしながら、ATC地上システムが軌道回路という伝送手段を用いて、ATC車載装置にどのような信号を送信するかは、ATCの方式によって多岐に亘る。この多様なATCの方式を上述のシミュレータに組み込むことは、シミュレータの改造が非常に複雑となり現実的ではない。
【0014】
従って本発明のもう一つの目的は、上記のような自動列車制御の事前検証装置を提供するに際して、現実的に構築可能なシミュレータ構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の実施形態は、地上設備データ、列車特性データ、路線データ(路線形状データ)、連動条件データなどの基礎データと、計画ダイヤ及び列車を走行させるための制御ダイヤなどのダイヤデータとを入力として、複数列車の走行挙動をシミュレーションし、列車位置・速度など列車の時系列的な挙動に関するシミュレーションデータと、各転てつ器の転換方向及び鎖錠・解錠の状態に関する時系列的なシミュレーションデータを出力する複数列車走行シミュレーション手段と、該複数列車走行シミュレーション手段の出力である上記シミュレーションデータを入力として、ATC地上システムの動作をシミュレーションし、軌道回路を経由して各列車に送信される以下の各信号情報を出力するATC地上信号シミュレーション手段とを備えている。
【0016】
(1)走行路上(軌道回路上)に設定される「列車間隔に関する信号情報」
(2)走行路上(軌道回路上)に設定される「列車の走行経路に相当する進路の成立状況を表す信号情報」
(3)走行路上(軌道回路上)に設定される「臨時速度制限に相当する信号情報」
このような構成とすることの最大のメリットは以下のようなものである。
【0017】
すでに述べたように、実際に複数の列車が走っている状況に関するシミュレーション(列車位置・速度、転てつ器の動きなどのシミュレーション)は公知技術として存在するが、ATC地上システムが軌道回路という伝送手段を用いてどのような信号をATC車載装置に送信するかは、ATCの方式によって多岐に亘る。この多様なATCの方式を上述のシミュレータに組み込むことは、シミュレータの改造が非常に複雑となり、また、シミュレーションに要する時間の増大も招くため現実的ではない。
【0018】
しかしながら、ATCの方式がどのようなものであっても、列車位置・速度の時系列データ及び転てつ器の動きに関するデータさえあれば、これらを入力としてATC地上システムの動作を上記シミュレータとは独立した形で模擬することは可能である。例えば、上記(1)の信号情報は、列車位置の時系列データ及び軌道回路始端・終端位置データさえあればシミュレーション可能である。上記(2)の信号情報は、転てつ器の転換方向及び鎖錠・解錠の状態に関する時系列的なデータと列車位置の時系列データ及び各進路が成立するための転てつ器の転換条件データさえあれば、シミュレーション可能である。更に、上記(3)の信号情報は、列車位置の時系列データ、軌道回路始端・終端位置データ、及び各軌道回路に予め設定される臨時速度制限情報さえあれば、シミュレーション可能である。
【0019】
以上述べた理由により、本発明の一実施形態に係る自動列車制御の事前検証装置においては、複数列車の走行挙動をシミュレーションする複数列車走行シミュレーション手段とATC地上システムの動作をシミュレーションするATC地上信号シミュレーション手段とを分離することにより、それぞれのシミュレーション手段のプログラムが複雑になることを避け、効率的にATC地上信号のシミュレーションを行うことが出来る構成にすると共に、ATC地上信号の内容が変わった際のプログラム変更量を最小限に抑えられる構成としている。
【0020】
また、本発明の第2の実施形態では、上記第1の実施形態に加えて、
(a)実際の路線を走行中の列車に搭載されている車載装置から取得した「車載装置が検知した列車位置・速度データの時系列データ」、
(b)実際の路線を走行中の列車に搭載されている車載装置から取得した「ATC車載装置がATC地上システムより受信したATC地上信号データの時系列データ」、
(c)請求項1に記載の複数列車走行シミュレーション手段から出力される「列車位置・速度など列車の時系列的な挙動に関するシミュレーションデータ」、
(d)請求項1に記載のATC地上信号シミュレーション手段から出力される「ATC地上信号シミュレーションデータ」、
を入力として、上記(a)と(c)との比較、及び上記(b)と(d)との比較を行う複数列車走行シミュレーション精度評価手段を備えている。
【0021】
従って、第2の実施形態に係る自動列車制御の事前検証装置においては、実際のデータとシミュレーションデータとの比較により、請求項1に記載の複数列車走行シミュレーション手段に使われているシミュレーションモデルの修正に有用なシミュレーション精度評価データを得ることが出来る。
【0022】
また、本発明の第3の実施形態では、上記第1実施形態に加えて、前記ATC地上信号シミュレーション手段の出力であるATC地上信号シミュレーションデータを入力として、車両に搭載されるATC車載装置の動作を模擬するための手段として、特定の列車の走行シミュレーションを行なう単一列車走行シミュレーション手段と、実路線ATCシステムの車両に搭載されるATC車載ハードウェアと、該ATC車載ハードウェアに組み込まれるATC車載ソフトウェアと、速度発電機など該ATC車載ハードウェアと該ATC車載ソフトウェアの動作に必要となるATC周辺装置と、から成るATC車載装置検証装置を備えている。
【0023】
従って、第3実施形態に係る自動列車制御の事前検証装置においては、車両に搭載されるATC車載装置の動作を模擬するのに必要なATC地上信号シミュレーションデータを前記ATC地上信号シミュレーション手段より得ることにより、ATC車載ソフトウェアの動作評価を行うことが可能となる。また、この動作評価結果からATC車載ソフトウェアの修正に有用なデータを得ることが出来る。
【発明の効果】
【0024】
複数列車走行シミュレーション手段とATC地上信号シミュレーション手段とを分離することにより、それぞれのシミュレーション手段のプログラムが複雑になることを避け、効率的にATC地上信号のシミュレーションを行うことが出来ると共に、ATC地上信号の内容が変わった際のプログラム変更量を最小限に抑えられる構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第1の実施形態を示す機能ブロック図。
【図2】複数列車走行シミュレーション手段の内部構成例を説明するための補足説明図。
【図3】(a)は列車位置・速度シミュレーションデータのデータ構成を示し、(b)は転てつ器・転換方向鎖錠状態シミュレーションデータのデータ構成を示す図。
【図4】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第3の実施形態を示す機能ブロック図。
【図5】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第2の実施形態を示す機能ブロック図。
【図6】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第4の実施形態を示す機能ブロック図。
【図7】複数列車走行シミュレーション手段の内部構成例を説明するための補足説明図。
【図8】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第5の実施形態を示す機能ブロック図。
【図9】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第6の実施形態を示す機能ブロック図。
【図10】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第7の実施形態を示す機能ブロック図。
【図11】本発明による自動列車制御の事前検証装置の第8の実施形態を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
[実施例1]
図1は、本発明の第1の実施形態による自動列車制御の事前検証装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【0028】
すなわち、本実施形態による自動列車制御の事前検証装置は、図1に示すように、複数列車走行シミュレーション手段11と、ATC地上信号シミュレーション手段12と、基礎データ3を格納する基礎データ格納部13、ダイヤデータ4を格納するダイヤデータ格納部14、列車位置・速度シミュレーションデータ5を格納するシミュレーションデータ格納部15、転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ6を格納するシミュレーションデータ格納部16、ATC地上信号シミュレーションデータ7を格納するシミュレーションデータ格納部17とから構成されている。
【0029】
基礎データ3及びダイヤデータ4は複数列車走行シミュレーション手段11に入力される。複数列車走行シミュレーション手段11は、列車位置・速度シミュレーションデータ5をデータ格納部15に供給し、このデータは適宜ATC地上信号シミュレーション手段12に入力される。また複数列車走行シミュレーション手段11は、転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ6をデータ格納部16に供給し、このデータは適宜ATC地上信号シミュレーション手段12に入力される。ATC地上信号シミュレーション手段12はATC地上信号シミュレーションデータ7をデータ格納部17に供給する。
【0030】
基礎データ3は、地上設備データ(ATC地上信号を車両に伝送する手段としての軌道回路の配置位置、トランスポンダ設置位置など)、列車特性データ(列車の加減速特性、列車長、列車重量など)、路線データ(走行路線の形状、勾配、曲率など)、連動条件(進路の鎖錠・解錠、転てつ器の鎖錠・解錠などに関する条件など)の各種データより構成される。
【0031】
ダイヤデータ4は、列車運行の計画を示す計画ダイヤ、実際の運行制御に関わるダイヤを示す制御ダイヤなどの各データより構成される。計画ダイヤとは、例えば4月〜9月あるいは10月〜3月のように、定期的に決められた列車ダイヤ(時刻表)を示す。この列車ダイヤは、列車が何時何分にどの駅を発着するかを示すデータであって、列車毎に異なり例えば数十列車分のデータである。制御ダイヤとは実際に運用されるダイヤであり、臨時列車の運行あるいは天候条件などにより、計画ダイヤに多少の変更を加えたダイヤである。
【0032】
これら基礎データ3とダイヤデータ4を入力として、複数列車走行シミュレーション手段11は、ダイヤに定められた各列車を予定された走行経路に沿って走行させるシミュレーションを実施する。
【0033】
また、複数列車走行シミュレーション手段11は、列車走行とともに各転てつ器がどのようなタイミングで転換され、鎖錠・解錠されるのかもシミュレーションする。転てつ器の設定には、定位及び反位があり、定位は列車が直進する設定、反位は列車が進路変更する設定である。この転換とは、転てつ器を定位から反位へまたは反位から定位へ設定を変更することを示す。鎖錠とは転てつ器の例えば電源をOFFして転てつ器が固定された状態を示す。解錠とは転てつ器の例えば電源をONして転てつ器が可動状態になっていることを示す。
【0034】
ダイヤデータに列車出発時間の遅れを設定すれば、ダイヤが乱れた状況下でのシミュレーションも可能となる。
【0035】
図2(a)は複数列車走行シミュレーション手段11の内部構成例を示す機能ブロック図である。複数列車走行シミュレーション手段11は、ダイヤ管理部101、列車走行処理部102、列車追跡処理部103、信号処理部104、軌道回路処理部105、連動処理部106、転てつ器処理部107、進路制御処理部108を含む。図1の基礎データ3は、各部101〜108に適宜供給され利用される。
【0036】
列車のダイヤを管理するダイヤ管理部101からはシミュレーション用ダイヤデータが、列車走行処理部102及び列車追跡処理部103に出力される。このシミュレーション用ダイヤデータは図1のダイヤデータ格納部14から適宜読み出したダイヤデータである。
【0037】
列車走行処理部102は、このシミュレーション用ダイヤデータ及び信号処理部104からの信号制御情報(各列車の停止位置に関する情報及び臨時速度制限情報等)を受けて、各列車の列車位置・速度を計算し、列車位置・速度シミュレーションデータ5としてシミュレーションデータ格納部15に格納する。
【0038】
軌道回路処理部105では、列車位置・速度シミュレーションデータ5より得られる列車位置を基に、軌道回路の在線状態(各列車がどの軌道回路上を走行中かを示す情報)を信号処理部104及び連動処理部106に出力する。
【0039】
連動処理部106では、軌道回路在線状態、転てつ器状態(転てつ器の転換後状態(定位/反位)及び鎖錠状態に関する情報)及び進路制御情報(どの転てつ器をどの方向に転換すべきかを示す情報)を入力し、進路制御情報において要求されている転てつ器の転換が可能か否か判断する。転換が可能であれば、転てつ器処理部107に対し転てつ器制御情報(各転てつ器に対する転換指令・鎖錠指令)を出力すると共に、進路設定状態(進路の設定結果及び鎖錠制御結果等)を信号処理部104及び列車追跡処理部103に出力する。
【0040】
転てつ器処理部107では、連動処理部106からの転てつ器制御情報を受け、必要に応じて転てつ器の転換・鎖錠を行い、転てつ器状態及び鎖錠状態(転てつ器がロックされているか否かを示す情報)をシミュレーションデータ6としてシミュレーションデータ格納部16に格納する。
【0041】
信号処理部104では、軌道回路在線状態及び進路設定状態を基に、信号制御情報(各列車の停止位置に関する情報、臨時速度制限情報等)を列車走行処理部102に出力する。
【0042】
列車追跡処理部103では、シミュレーション用ダイヤデータ4、列車位置及び進路設定状態を基に、列車追跡情報(駅発着などダイヤとの関係を含めた列車位置の追跡情報)を進路制御処理部108に出力する。
【0043】
進路制御処理部108では、列車追跡情報をもとに、各列車の転てつ器通過順序がダイヤと矛盾しないように、列車が予定している走行路上に存在する転てつ器の転換を要求するタイミングを判断し、適切なタイミングに進路制御情報(どの転てつ器をどの方向に転換すべきかを示す情報)を連動処理部106に出力する。
【0044】
図3(a)は列車位置・速度シミュレーションデータ5のデータ構成を示す図である。図1で示した複数列車走行シミュレーション手段11による列車走行ダイナミックシミュレーションにより、所定時刻毎の列車位置、列車速度、軌道回路順列通番、開通区間数に関する時系列データが、左端のデータ識別Noと共にシミュレーションデータ格納部15に記録される。
【0045】
図3(b)は転てつ器・転換方向鎖錠状態シミュレーションデータ6のデータ構成を示す図である。図1で示した複数列車走行シミュレーション手段11による列車走行ダイナミックシミュレーションにより、所定時刻毎の各転てつ器の状態(定位/反位、転換中)に関する時系列データが、左端のデータ識別Noと共にシミュレーションデータ格納部16に記録される。
【0046】
図2(b)に記された路線図は、列車Aに続いて列車B、列車C、列車D、列車Eが走行する様子を模式的に表したものである。図2(a)に示したような複数列車走行シミュレーション手段11によれば、例えば列車Dが駅の側線側に進入・停車し、列車Cが駅の本線側を破線矢印の方向に通過した後で、列車Dが駅を出発する際の、転てつ器X、転てつ器Yの動きや、進路設定状態及び軌道回路在線状態を模擬することが可能となる。複数列車走行シミュレーション手段11によれば、このような模擬をダイヤ全体、対象路線全体に対して行うことが可能となる。
【0047】
次に、ATC地上信号シミュレーション手段12の動作を説明する。
【0048】
ATC地上信号シミュレーション手段12は、複数列車走行シミュレーション手段11により生成され、シミュレーションデータ格納部15,16に格納された列車位置・速度シミュレーションデータ5及び転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ6に基づいて、ATC地上システムの動作をシミュレーションする。
【0049】
ATC地上信号シミュレーション手段12は、ATC地上信号に相当する時系列データとして、以下の(1)〜(3)の情報を列車毎に作成する。これらの情報は、軌道回路から各列車に対して送信される情報である。
【0050】
(1)列車が通過中の軌道回路(図2(b)の路線図に関する上記説明を参照)を示す情報。
【0051】
(2)列車が予定している走行路上の分岐器の向き(転てつ器の定位/反位)の情報。
【0052】
(3)列車の前方を走行中の先行列車との間にどの程度の間隔が空いているかを示す情報。
【0053】
上記(1)の軌道回路情報は、前述の図3(a)のようにシミュレーションデータ格納部15において、各列車位置の時系列データが得られているので、対象路線上に各軌道回路がどのように割り付けられているか(各軌道回路の始端・終端の位置データ)を基に作成する。
【0054】
上記(2)の分岐器の向き情報は、前述の図3(b)のようにシミュレーションデータ格納部16において、転てつ器の転換状態として得られているので、それを利用する。
【0055】
上記(3)の先行列車との間隔情報は、前述の図3(a)のように、各列車位置の時系列データが得られているので、これらのデータから各列車の前方を走行中の先行列車との間にどの程度の間隔が空いているかを計算して作成する。
【0056】
またATC地上信号シミュレーション手段12は、走行路上(軌道回路上)に設定される臨時速度制限に相当する信号情報も生成する。臨時速度制限とは、気象条件等の理由により、通常の制限速度とは違う値に速度を制限することを示す。
【0057】
上述したように、本実施形態の自動列車制御の事前検証装置では、複数列車の走行挙動をシミュレーションする複数列車走行シミュレーション手段11と、ATC地上システムの動作をシミュレーションするATC地上信号シミュレーション手段12とを分離することにより、それぞれのシミュレーション手段のプログラムが複雑になることを避け、効率的にATC地上信号のシミュレーションを行うことが出来る構成としている。
【0058】
複数列車走行シミュレーション手段11は従来からある装置であって、この複数列車走行シミュレーション手段11がシミュレーション中に生成する信号のうち、列車位置・速度シミュレーションデータ5及び転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ6を抽出し、抽出したデータを基に、ATC地上信号シミュレーション手段12がATC地上システムをシミュレーションし、ATC地上システムが各列車に対して送信するデータ(ATC地上信号シミュレーションデータ7)を生成する。従って、複数列車走行シミュレーション手段11にATC地上信号シミュレーション手段12を組み込む場合に比べ、開発費を大幅に削減することができる。
【0059】
[実施例1の変形例]
ATC地上信号シミュレーションデータ7に含まれるものとして、上述の説明では、軌道回路に関する情報、列車間隔に関する情報、列車の走行経路に相当する進路の成立状況(転てつ器の定位/反位)を表す信号情報、臨時速度制限に相当する情報を挙げたが、ATCの方式の違いにより、必ずしも上記の情報に限られるものではなく、他の情報も考えられる。ただし、ATCの方式がどのようなものであろうとも、ATC地上信号を構築するのに必要な情報として、列車位置・速度シミュレーションデータ5及び転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ6が複数列車走行シミュレーション手段1から得られるので、これらのデータからATCの方式に合わせた信号情報を構築することが可能となる。つまり、ATC地上システムには様々な方式あるいは機能を有するものがあるが、信号シミュレーション手段12を各ATC地上システムの方式あるいは機能に合わせて設計することにより、様々なATC地上システムを容易にシミュレーションすることが可能となる。
【0060】
[実施例2]
図4は、本実施形態による自動列車制御の事前検証装置の第2の実施形態の構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一の部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0061】
すなわち、本実施形態の自動列車制御の事前検証装置は、図4に示すように図1に対して、実路線のATCシステムより得られる実路線列車位置・速度データ8を格納する位置・速度データ格納部18と、実路線ATC地上信号データ9を格納する地上信号データ格納部19と、複数列車走行シミュレーション精度評価手段20と、シミュレーション精度評価データ格納部21とを付加した構成としている。
【0062】
基礎データ格納部13は、実路線で実際に用いられている基礎データを格納し、ダイヤデータ格納部14は、実際に運用されているダイヤデータを格納する。このように、実路線で実際に用いられている基礎データ3及びダイヤデータ4に基づいて、複数列車走行シミュレーション手段11は、走行シミュレーションを行う。
【0063】
位置・速度データ格納部18は、実路線のATCシステム31で、実際に得られた列車位置・速度データ8を格納する。地上信号データ格納部19は実路線のATCシステムで実際に軌道回路から送信されたATC地上信号を格納する。
【0064】
複数列車走行シミュレーション精度評価手段20は、列車位置・速度シミュレーションデータ5と実路線列車位置・速度データ8との比較、及びATC地上信号シミュレーションデータ7と実路線ATC地上信号データ9との比較により、シミュレーション精度評価データ11を出力する構成となっている。例えば精度評価手段20は、列車位置・速度シミュレーションデータ5をグラフ化し、実路線列車位置・速度データ8をグラフ化し、2つのグラフを重ね合わせて得られるデータを出力する。ATC地上信号シミュレーションデータ7と実路線ATC地上信号データ9についても同様に、2つのグラフを重ね合わせて得られるデータを出力する。
【0065】
このように2つのグラフを重ね合わせて得られるデータは、シミュレーション精度評価データとしてデータ格納部21に格納される。ユーザはシミュレーション精度評価データ10を例えば表示部にグラフとして表示し、重ね合わせたグラフの値が一致するように、複数列車走行シミュレーション手段11を修正する。
【0066】
以上のように本実施形態によれば、実路線列車位置・速度データ8及び実路線ATC地上信号データ9に基づいて、複数列車走行シミュレーション手段11のシミュレーション精度を高めることができる。
【0067】
[実施例2の変形例]
シミュレーション精度評価データ10は上記したように、複数列車走行シミュレーション手段1の中のシミュレーションモデルを実際のシステムに近付けるための修正に使用され、この修正作業は人間が介在して行われる。しかし、運転士の運転操作による加速度及び減速度を実路線列車位置・速度データ8より統計的に算出し、駅発車時・駅間走行時の加速度、駅停止時の減速度に関するモデルを学習し、学習結果を複数列車走行シミュレーション手段11に組み込むプロセスを自動的に行なう構成としてもよい。
【0068】
[実施例3]
図5は、本発明による自動列車制御の事前検証装置の第3の実施形態の構成例を示す機能ブロック図であり、図1と同一の部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0069】
すなわち、第3の実施形態に係る自動列車制御の事前検証装置は、図5に示すように図1に対して、ATC地上信号シミュレーション手段12より出力されるATC地上信号シミュレーションデータ7を用いて、実路線ATCシステムの車両に搭載されるATC車載装置の事前検証を行うATC車載装置検証装置22が追加されている。
【0070】
ATC車載装置検証装置22は、特定列車の走行シミュレーションを行なう単一列車走行シミュレーション手段23と、実路線ATCシステムの車両に搭載されるATC車載ハードウェア24と、該ATC車載ハードウェア24に組み込まれるATC車載ソフトウェア25と、該ATC車載ハードウェア24と該ATC車載ソフトウェア25の動作に必要となるATC周辺装置26とを含む。ATC車載装置検証装置22からは、ATC車載ソフトウェア25の内容修正のためのATC車載ソフトウェア動作評価データ32が得られ、この評価データ32はデータ格納部27に格納される。
【0071】
ATC地上信号シミュレーションデータ格納部17からは、このシミュレーションデータ格納部17において指定された1列車についてのATC地上信号シミュレーションデータ7が検証装置22に出力される。ATC周辺装置26からATC車載ハードウエア25へは、例えばTG信号が模擬的に出力される。このTG信号は車輪の回転に応じて出力されるパルス状信号で、車両速度、車両位置等を演算するときに用いられる信号である。ATC車載ハードウエア24は、ATC地上信号シミュレーションデータ7及びTG信号に基づいてATCの演算処理を行い、例えばブレーキ指令BKを単一列車走行シミュレーション手段23に出力する。単一列車走行シミュレーション手段23は、このブレーキ指令BKに基づいて列車の走行シミュレーションを行う。
【0072】
データ格納部27には、例えばTG信号、ATC地上信号シミュレーションデータ7、ブレーキ指令BKが、ATC車載ソフトウエア動作評価データ32として時系列で記録される。この評価データ32を例えば表示部に表示して、ATC車載ソフトウエアの動作が評価される。このとき、必要に応じてATC車載ソフトウエアの修正が行われる。
【0073】
以上のように本発明の第3の実施形態は第1の実施形態に比べ、ATC車載ハードウエア24及びATC車載ソフトウエア25の事前検証及び修正を容易に行うことができる。
【0074】
[実施例4]
図6は、本発明による自動列車制御の事前検証装置の第4の実施形態の構成例を示す機能ブロック図である。この第4の実施形態は、図4の第2の実施形態と図5の第3の実施形態を組み合わせた構成を有している。
【0075】
すなわち、第4の実施形態に係る自動列車制御の事前検証装置は、図6に示すように図1の第1の実施形態に対して、実路線列車位置・速度データ格納部18と、実路線ATC地上信号データ格納部19と、複数列車走行シミュレーション精度評価手段20と、シミュレーション精度評価データ格納部21と、ATC車載装置検証装置22が追加されている。
【0076】
従って第4の実施形態は第1の実施形態に比べ、複数列車走行シミュレーション手段11のシミュレーション精度を高めることができると共に、ATC車載ハードウエア24及びATC車載ソフトウエア25の事前検証及び修正を容易に行うことができる。
【0077】
[実施例5]
図1〜図6では、軌道回路の存在を前提としていた。これは、各列車の位置を地上側で把握する手段として軌道回路を用いているためである。しかしながら、無線を応用した列車位置検知システムがあれば、必ずしも軌道回路は必要とされない。例えば、以下のような手段により、軌道回路よりも精度よく地上側が列車位置を検知することが可能となる。
【0078】
・GPSを応用した列車位置検知システム。
【0079】
・列車が速度発電機からのTG信号を積算する等の手段により、自列車の位置を検知し、その検知情報を無線により地上ATCシステムに送信する形の列車位置検知システム。
【0080】
軌道回路の替わりに上述の列車位置検知システムを採用する場合、ATCの方式は無線応用ATCに替わる。これは次のようなものである。
【0081】
従来のATCでは、ATC地上システムから軌道回路を経由して制御対象となる列車に対し、該列車の在線位置に関する情報、該列車と前方の列車との間隔に関する情報、該列車が走行する予定の経路上に存在する転てつ器の転換状態・鎖錠状態に関する情報、臨時速度制限に関する情報が送られていた。
【0082】
これに対し無線応用ATCでは、上記したように、GPSを応用した列車位置検知システム、あるいは列車が速度発電機からのTG信号を積算する等の手段により自列車の位置を検知する列車位置検知システム等により得られる位置検知情報を、無線により地上に送信することで、地上システム側が各列車の在線位置に関する情報を把握することが出来る。
【0083】
従って、無線応用ATC地上システムから無線伝送経由で制御対象となる列車に対し、該列車の在線位置に関する情報、該列車と前方の列車との間隔に関する情報、該列車が走行する予定の経路上に存在する転てつ器の転換状態・鎖錠状態に関する情報、臨時速度制限に関する情報等を含むATC情報を送ることができる。
【0084】
該列車に搭載された無線応用ATC車載装置では、これらの情報をもとに、前方の列車に衝突しないように、また、該列車の走行経路上に存在する転てつ器が該列車のために転換・鎖錠される前に、該列車が転てつ器に到達することのないように、また、該列車の走行経路上に設定されている臨時速度制限を越えることのないように、無線応用ATC車載装置が制限速度のパターンを演算し、該制限速度と該列車の走行速度とを常に比較しながら走行し、速度超過の場合には自動的にブレーキをかける方式が採用される。
【0085】
図7は、図2に示した軌道回路の替わりに、上述の自列車位置検知システム及び無線応用ATCを採用した場合の複数列車走行シミュレーション手段11の一例及びその路線図である。
【0086】
図2(a)の軌道回路処理部105では、列車が軌道回路に在線しているか否かの情報をもとに各列車の在線状態を把握していたが、上述のような軌道回路に依存しない列車位置検知システムがあれば、図2(a)の軌道回路処理部105の替わりに、より細かい単位で精度よく在線状況を把握できる列車在線状況把握処理(上述の列車位置検知システムにより各列車の在線状況を把握する処理のシミュレーション)を適用することが出来る。この処理は、在線状況把握処理部109により実施される。
【0087】
図8は、図1に対して上述の無線応用ATCを採用した自動列車制御の事前検証装置の構成例を示す機能ブロック図であり、第1の実施形態の変形例となる。
【0088】
図1と同一の部分には同一符号を付し、無線応用ATCの採用により内容が一部変更となる部分には、図1と同一符号の末尾にAを付している。全体の処理の流れは、第1の実施形態と同様のため説明を省略する。
【0089】
[実施例6]
図9は、図4に対して上述の無線応用ATCを採用した自動列車制御の事前検証装置の構成例を示す機能ブロック図であり、第2の実施形態の変形例となる。
【0090】
図4と同一の部分には同一符号を付し、無線応用ATCの採用により内容が一部変更となる部分には、図4と同一符号の末尾にAを付している。全体の処理の流れは、第2の実施形態と同様のため説明を省略する。
【0091】
[実施例7]
図10は、図8に示した事前検証装置に対して、無線応用ATC車載装置検証装置22A及び無線応用ATC車載ソフトウェア動作評価データ格納部27Aが追加されている。無線応用ATC車載装置検証装置22Aは、無線応用ATC地上信号シミュレーション手段12Aより出力される無線応用ATC地上信号シミュレーションデータ7Aを用いて、実路線無線応用ATCシステムの車両に搭載される無線応用ATC車載装置の事前検証を行う。この無線応用ATC車載装置検証装置22Aは、特定の列車の走行シミュレーションを行なう単一列車走行シミュレーション手段23Aと、実路線無線応用ATCシステムの車両に搭載される無線応用ATC車載ハードウェア24Aと、該無線応用ATC車載ハードウェア24Aに組み込まれる無線応用ATC車載ソフトウェア25Aと、該無線応用ATC車載ハードウェア24Aと該無線応用ATC車載ソフトウェア25Aの動作に必要となる無線応用ATC周辺装置26Aとを含む。また無線応用ATC車載装置検証装置22Aは、該無線応用ATC車載ソフトウェア25Aの内容修正のために使用される無線応用ATC車載ソフトウェア動作評価データ32Aを生成し、この評価データ32Aは評価データ格納部27Aに格納される。
【0092】
第7の実施形態の自動列車制御の事前検証装置においては、車両に搭載される無線応用ATC車載装置の動作を模擬するのに必要な無線応用ATC地上信号シミュレーションデータを、前記無線応用ATC地上信号シミュレーション手段12Aより得ることにより、無線応用ATC車載ソフトウェアの動作評価を行うことが可能となる。また、この動作評価結果から無線応用ATC車載ソフトウェア25Aの修正に有用なデータを得ることが出来る。
【0093】
[実施例8]
図11は、図8〜図10を包含した実施形態を表す機能ブロック図となっており、第5〜第7の実施形態の特徴を併せ持つ。
【0094】
(発明の効果)
以上説明したように、本発明の自動列車制御の事前検証装置によれば、走行中の列車に対し、地上からの信号により自動的にブレーキを掛けたり、制限速度以下になればブレーキを緩めたりする自動列車制御装置(ATC)の事前検証において、実際の走行状況に相当するATC地上システムからの信号を作成でき、ATC車載装置のソフトウェアの動作チェックを実際の走行に相当する条件下で行うことが可能となる。
【0095】
以上の説明はこの発明の実施形態であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができるものである。
【符号の説明】
【0096】
11…複数列車走行シミュレーション手段、12… ATC地上信号シミュレーション手段、13…基礎データ格納部、14…ダイヤデータ格納部、15…列車位置・速度シミュレーションデータ格納部、16…転てつ器転換方向・鎖錠状態シミュレーションデータ格納部、17…ATC地上信号シミュレーションデータ格納部、18…実路線列車位置・速度データ格納部、19…実路線ATC地上信号データ格納部、20…複数列車走行シミュレーション精度評価手段、21…シミュレーション精度評価データ格納部、22…ATC車載装置検証装置、23…単一列車走行シミュレーション手段、24…ATC車載ハードウェア、25…ATC車載ソフトウェア格納部、26…ATC周辺装置、27…ATC車載ソフトウェア動作評価データ格納部、11A…複数列車走行シミュレーション手段、12A…無線応用ATC地上信号シミュレーション手段、13A…基礎データ格納部、17A…無線応用ATC地上信号シミュレーションデータ格納部、19A…実路線無線応用ATC地上信号データ格納部、20A…複数列車走行シミュレーション精度評価手段、21A…シミュレーション精度評価データ格納部、22A…無線応用ATC車載装置検証装置、23A…単一列車走行シミュレーション手段、24A…無線応用ATC車載ハードウェア、25A…無線応用ATC車載ソフトウェア格納部、26A… 無線応用ATC周辺装置、27A… 無線応用ATC車載ソフトウェア動作評価データ格納部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上装置から受信される信号に基づいて列車を制御する自動列車制御装置(ATC)の事前検証を行なうための自動列車制御の事前検証装置において、
列車のダイヤデータを基に、各列車の位置及び速度、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を模擬する複数列車走行シミュレーション手段と、
該複数列車走行シミュレーション手段にて模擬された各列車の位置、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を基に、ATC地上装置からATC車載装置へ送信されるATC地上信号を模擬するATC地上信号シミュレーション手段と、
を備えて成ることを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項2】
前記請求項1記載の自動列車制御の事前検証装置において、
前記複数列車走行シミュレーション手段より出力される列車位置及び速度シミュレーションデータと、実路線のATCシステムより取得した列車位置及び速度データとの比較、及び前記ATC地上信号シミュレーション手段より出力されるATC地上信号シミュレーションデータと、実路線のATCシステムより取得したATC地上信号データとの比較に基づいて、
前記複数列車走行シミュレーションの模擬精度の評価を行い、前記複数列車走行シミュレーション手段のシミュレーションモデル修正のためのシミュレーション精度評価データを提供する複数列車走行シミュレーション精度評価手段を具備することを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の自動列車制御の事前検証装置において、
該ATC地上信号シミュレーション手段より出力されるATC地上信号シミュレーションデータを用いて、実路線ATCシステムの車両に搭載されるATC車載装置の事前検証を行うATC車載装置検証装置として、
特定列車の走行シミュレーションを行なう単一列車走行シミュレーション手段と、
実路線ATCシステムの車両に搭載されるATC車載ハードウェアと、
該ATC車載ハードウェアに組み込まれるATC車載ソフトウェアを格納する格納部と、
該ATC車載ハードウェアと該ATC車載ソフトウェアの動作に必要となるATC周辺装置とから成り、
該ATC車載ソフトウェアの修正のためのATC車載ソフトウェア動作評価データを提供するATC車載装置検証装置を具備することを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項4】
地上装置から無線伝送手段により無線伝送される信号に基づいて列車を制御する無線応用自動列車制御装置(ATC)の事前検証を行なうための自動列車制御の事前検証装置において、
列車のダイヤデータを基に、各列車の位置及び速度、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を模擬する複数列車走行シミュレーション手段と、
該複数列車走行シミュレーション手段にて模擬された各列車の位置、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を基に、無線応用ATC地上装置から無線応用ATC車載装置へ送信される無線応用ATC地上信号を模擬する無線応用ATC地上信号シミュレーション手段と、
を備えて成ることを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の自動列車制御の事前検証装置において、
前記複数列車走行シミュレーション手段より出力される列車位置及び速度シミュレーションデータと、実路線の無線応用ATCシステムより取得した列車位置及び速度データとの比較、及び前記無線応用ATC地上信号シミュレーション手段より出力される無線応用ATC地上信号シミュレーションデータと、実路線の無線応用ATCシステムより取得した無線応用ATC地上信号データとの比較に基づいて、
前記複数列車走行シミュレーションの模擬精度の評価を行い、前記複数列車走行シミュレーション手段のシミュレーションモデル修正のためのシミュレーション精度評価データを提供する複数列車走行シミュレーション精度評価手段を具備することを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項6】
前記請求項4又は5に記載の自動列車制御の事前検証装置において、
前記無線応用ATC地上信号シミュレーション手段より出力される無線応用ATC地上信号シミュレーションデータを用いて、実路線無線応用ATCシステムの車両に搭載される無線応用ATC車載装置の事前検証を行う無線応用ATC車載装置検証装置として、
特定列車の走行シミュレーションを行なう単一列車走行シミュレーション手段と、
実路線無線応用ATCシステムの車両に搭載される無線応用ATC車載ハードウェアと、
該無線応用ATC車載ハードウェアに組み込まれる無線応用ATC車載ソフトウェアを格納する格納部と、
該無線応用ATC車載ハードウェアと該無線応用ATC車載ソフトウェアの動作に必要となる無線応用ATC周辺装置とから成り、
該無線応用ATC車載ソフトウェアの修正のための無線応用ATC車載ソフトウェア動作評価データを提供する無線応用ATC車載装置検証装置を具備することを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項1】
地上装置から受信される信号に基づいて列車を制御する自動列車制御装置(ATC)の事前検証を行なうための自動列車制御の事前検証装置において、
列車のダイヤデータを基に、各列車の位置及び速度、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を模擬する複数列車走行シミュレーション手段と、
該複数列車走行シミュレーション手段にて模擬された各列車の位置、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を基に、ATC地上装置からATC車載装置へ送信されるATC地上信号を模擬するATC地上信号シミュレーション手段と、
を備えて成ることを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項2】
前記請求項1記載の自動列車制御の事前検証装置において、
前記複数列車走行シミュレーション手段より出力される列車位置及び速度シミュレーションデータと、実路線のATCシステムより取得した列車位置及び速度データとの比較、及び前記ATC地上信号シミュレーション手段より出力されるATC地上信号シミュレーションデータと、実路線のATCシステムより取得したATC地上信号データとの比較に基づいて、
前記複数列車走行シミュレーションの模擬精度の評価を行い、前記複数列車走行シミュレーション手段のシミュレーションモデル修正のためのシミュレーション精度評価データを提供する複数列車走行シミュレーション精度評価手段を具備することを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の自動列車制御の事前検証装置において、
該ATC地上信号シミュレーション手段より出力されるATC地上信号シミュレーションデータを用いて、実路線ATCシステムの車両に搭載されるATC車載装置の事前検証を行うATC車載装置検証装置として、
特定列車の走行シミュレーションを行なう単一列車走行シミュレーション手段と、
実路線ATCシステムの車両に搭載されるATC車載ハードウェアと、
該ATC車載ハードウェアに組み込まれるATC車載ソフトウェアを格納する格納部と、
該ATC車載ハードウェアと該ATC車載ソフトウェアの動作に必要となるATC周辺装置とから成り、
該ATC車載ソフトウェアの修正のためのATC車載ソフトウェア動作評価データを提供するATC車載装置検証装置を具備することを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項4】
地上装置から無線伝送手段により無線伝送される信号に基づいて列車を制御する無線応用自動列車制御装置(ATC)の事前検証を行なうための自動列車制御の事前検証装置において、
列車のダイヤデータを基に、各列車の位置及び速度、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を模擬する複数列車走行シミュレーション手段と、
該複数列車走行シミュレーション手段にて模擬された各列車の位置、各転てつ器の転換状態及び鎖錠状態を基に、無線応用ATC地上装置から無線応用ATC車載装置へ送信される無線応用ATC地上信号を模擬する無線応用ATC地上信号シミュレーション手段と、
を備えて成ることを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の自動列車制御の事前検証装置において、
前記複数列車走行シミュレーション手段より出力される列車位置及び速度シミュレーションデータと、実路線の無線応用ATCシステムより取得した列車位置及び速度データとの比較、及び前記無線応用ATC地上信号シミュレーション手段より出力される無線応用ATC地上信号シミュレーションデータと、実路線の無線応用ATCシステムより取得した無線応用ATC地上信号データとの比較に基づいて、
前記複数列車走行シミュレーションの模擬精度の評価を行い、前記複数列車走行シミュレーション手段のシミュレーションモデル修正のためのシミュレーション精度評価データを提供する複数列車走行シミュレーション精度評価手段を具備することを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【請求項6】
前記請求項4又は5に記載の自動列車制御の事前検証装置において、
前記無線応用ATC地上信号シミュレーション手段より出力される無線応用ATC地上信号シミュレーションデータを用いて、実路線無線応用ATCシステムの車両に搭載される無線応用ATC車載装置の事前検証を行う無線応用ATC車載装置検証装置として、
特定列車の走行シミュレーションを行なう単一列車走行シミュレーション手段と、
実路線無線応用ATCシステムの車両に搭載される無線応用ATC車載ハードウェアと、
該無線応用ATC車載ハードウェアに組み込まれる無線応用ATC車載ソフトウェアを格納する格納部と、
該無線応用ATC車載ハードウェアと該無線応用ATC車載ソフトウェアの動作に必要となる無線応用ATC周辺装置とから成り、
該無線応用ATC車載ソフトウェアの修正のための無線応用ATC車載ソフトウェア動作評価データを提供する無線応用ATC車載装置検証装置を具備することを特徴とする自動列車制御の事前検証装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−215158(P2010−215158A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66142(P2009−66142)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】
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