説明

自動包装機のエンボス充填シュート

【課題】薄い板厚の部材を用いた充填シュートにおいて、包装フィルム送りにおける摩擦抵抗が低く、且つ内容物投入における付着現象の起きにくい充填シュートを提供する。
【解決手段】薄い板厚の部材を用いた充填シュート21における製袋ガイド部23と投入筒27を構成する板材は、包装フィルムの接触する表面側が凸状エンボス加工となっており、内容物の接触する裏面側が平面加工となっている。このため、製袋ガイド部23と投入筒27では、従来発生していた摩擦抵抗より大幅に低い摩擦抵抗値状態で包装フィルムFXを垂直下方に引っ張ることが可能になると共に通過する内容物が付着する事態を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動包装機において包装袋を連続的に作るために包装フィルムを二つ折りして袋の形にする製袋ガイド機能を有する充填シュートに関し、特に包装フィルム送りにおける摩擦抵抗が低く、且つ内容物投入における付着現象の起きにくい充填シュートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のL型シール金具タイプ自動包装機は、特許文献1に記載されている。このような自動包装機における充填シュートの製袋ガイド機能は、例えばL型シール金具タイプ自動包装機においては包装フィルムを二つ折りする工程を担っている。即ち、この工程は巻回された原反ロールから引き出された長尺の包装フィルムを充填シュートに添わせながら二つ折り状態にする工程であり、二つ折りされたその後の包装フィルムは、L型シール金具による縦シール工程及び横シール工程に送られる。
【0003】
図6は、従来のL型シール金具タイプ自動包装機における充填シュートの正面図である。また、図7は、従来のL型シール金具タイプ自動包装機における充填シュートの側面図である。図6と図7に示すように、従来の充填シュートに関する構成は、以下のようになっている。包装フィルムFXは、充填シュート121の製袋ガイド部123の表側に添って下方に送られ、製袋ガイド部123の形状に導かれながら投入筒127付近で二つ折りされた包装フィルムFYとなる。
【0004】
なお、充填シュート121の裏側には、袋状になった包装フィルム内に内容物を充填するための投入部126が漏斗状になって投入筒127に連結されている。即ち内容物は投入部126に入れられて投入筒127に集められ、その後二つ折りされた包装袋内に充填される。
【0005】
このような充填シュート121全体を自動包装機に固定するために、右側取り付け部124と左側取り付け部125が投入部126に溶接されている。
【0006】
次に、L型シール金具タイプ自動包装機は、送りロールによって二つ折りされた包装フィルムFYを垂直下方に引っ張りながらL型シール金具による縦シールと横シールを施しているが、この時包装フィルムFXが接触している充填シュート121の製袋ガイド部123と投入筒127は、薄いステンレス板(例えば、厚さ0.6mm)で構成されている。
【0007】
図8は、従来の充填シュート121の製袋ガイド部123に用いられている板材の断面図である。図8に示すように、この板材の表面及び裏面は平面加工状態になっている。
【0008】
このような状態の製袋ガイド部123と投入筒127に接触している包装フィルムFXを垂直下方に引っ張ると、包装フィルムFXの送りに伴う大きな摩擦抵抗が発生する。
【特許文献1】実開昭50−31158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、包装フィルムFXを垂直下方に引っ張ると大きな摩擦抵抗が発生するため、薄板構造の製袋ガイド部123や投入部126、投入筒127には、この摩擦抵抗による歪みが生じて二つ折りされた包装フィルムの両端部の重なりがずれる事態(所謂、耳ズレ現象)が発生する。
【0010】
また、同じく製袋ガイド部123と投入筒127の表面における摩擦抵抗により、包装フィルムを正しい位置まで引っ張ることができなくなり、袋位置のズレが発生して製袋動作におけるフィルム送りが正確且つ安定に行うことが困難になる。
【0011】
このような課題に対して、充填シュートを構成する板材の厚さを厚くして強度を増加させる方法や、包装フィルム送りロールの駆動力を強化させる方法があるが、この方法は部材のコストアップを招き、充填シュートの加工の容易さも低下すると共に、包装機全体の価格上昇をもたらすことになる。
【0012】
一方、袋状になった包装フィルム内に内容物を導く役目を担う充填シュート121の製袋ガイド部123裏面と、投入筒127内面においては、通過する内容物が付着しないように平面加工が求められており、充填シュートを構成する板材の表面と裏面では相反する加工状態が求められていた。
【0013】
本発明は、従来の充填シュートの問題点に鑑み創作されたもので、このような薄い板厚の部材を用いた充填シュートにおいて、包装フィルム送りにおける摩擦抵抗が低く、且つ内容物投入における付着現象の起きにくい充填シュートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る充填シュートは、包装フィルムを二つ折りして袋の形にする製袋ガイド機能と、袋になった包装フィルム内に内容物を導く充填機能とを有する充填シュートであって、前記包装フィルムが接触する製袋ガイド機能を構成する部材には、凸状エンボス加工が施され、前記内容物が接触する充填機能を構成する部材には、平面加工が施されている。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る自動包装機の充填シュートは、長尺包装フィルムに対して略垂直下方向に移送しながらフィルム中央付近を二つ折りすると共に、シール装置によって包装袋になった袋内に内容物を導く充填シュートと、前記二つ折りされた包装フィルムに対してシール金具を用いて縦シールと横シールを施して包装袋にするシール装置と、前記充填シュートとシール装置によって作られた多数の包装袋を移送する送りロールとを備えた自動包装機であって、前記充填シュートは、包装フィルム中央付近を二つ折りする製袋ガイド部と、内容物を受け取る投入部と、受け取った内容物を包装袋内に導く投入筒と、充填シュートを自動包装機に固定する取り付け部で構成され、前記製袋ガイド部と投入筒を構成する板材には、包装フィルムの接触する表面側に対して凸状エンボス加工が施され、内容物の接触する裏面側に対して平面加工が施されている。
【0016】
本発明の請求項1及び請求項2に係る自動包装機の充填シュートによれば、包装フィルムの接触する表面側が凸状エンボス加工となっているため、包装フィルム送りにおける摩擦抵抗が低く、且つ内容物の接触する裏面側が平面加工となっているため、内容物投入における付着現象の起きにくい充填シュートを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る自動包装機の充填シュートによれば、従来の薄い板厚の部材を用いた場合においても、包装フィルム送りにおける摩擦抵抗が低く、且つ内容物投入における付着現象の起きにくい充填シュートを提供できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る自動包装機の実施の形態を図面と共に説明する。まず、図1及び図2を用いて、本発明のL型シール金具タイプ自動包装機の全体構成について説明する。図1は本発明に係るL型シール金具タイプ自動包装機を示す正面図であり、図2は本発明に係るL型シール金具タイプ自動包装機を示す側面図である。
【0019】
図1、図2において、符号1は本発明に係るL型シール金具タイプ自動包装機(以下自動包装機と略す)の全体を示している。また、符号10は包材ロール、11は包材供給モータ、12はホッパー、13は計量回転盤、14はステッピングモータ、15はメインモータ、16は減速機、17はベルトコンベア、18はカッター装置、19は送りロール、20はL型シール金具、21は充填シュート、22は配電盤を示している。
【0020】
また、包材ロール10は、同一軸の周りに包装フィルムを多重にコイル状に巻き取ったものである。包装フィルムは、透明又は半透明な材料から構成され、例えば、PET等のベースフィルム及びこのベースフィルムよりも融点の低いポリエチレン等のヒートシールフィルムから構成される。
【0021】
図1、図2に示すように、自動包装機1は包材ロール10から巻き戻した長尺の包装フィルムに対してバックテンションを掛けながら包材供給モータ11等を駆動して引き出し、引き出された包装フィルムは、図中垂直下方向に連続的に流れ、充填シュート21によって中央部でU字状に二つに折り曲げられる。この折り曲げられた包装フィルムは、充填シュート21の直下に設置されているL型シール金具20により挟み込んで縦ヒートシール及び横ヒートシールを同時に施すように作動し、包装袋が形成される。
【0022】
ホッパー12内には内容物(原料)が入っており、この内容物は計量回転盤13により一定量に桝きり計量され、その後計量された内容物は一定タイミングで充填シュート21の入口である投入部に落下されて充填シュート出口である投入筒が挿入された包装フィルムの袋内部に充填される。
【0023】
内容物が充填された袋部分を含む包装フィルムは、送りロール19により1袋分だけ下方向に移送され、その後再びL型シール金具20により挟み込んで縦ヒートシール及び横ヒートシールを施して内容物が充填された袋部分の上部が密閉される。なお、同時にこのL型シール金具20の挟み込みにより次の包装袋が形成され、内容物充填動作及び袋部分上部の密閉動作をくり返して連続した包装体が出来上がる。
【0024】
連続した包装体は直下のカッター装置18に送られ、横シール部分の中央付近に対して切断もしくはミシン目切れ込み等を行い、個別の包装袋形態となった包装体はベルトコンベア17上に落下し、搬送されて箱詰めされる。
【0025】
図3は、本発明に係るL型シール金具タイプ自動包装機における充填シュートの正面図である。図4は、本発明に係るL型シール金具タイプ自動包装機における充填シュートの側面図である。図3と図4に示すように、本発明に係る充填シュート21における製袋ガイド機能に関する構成は、以下のようになっている。包装フィルムFXは、充填シュート21の製袋ガイド部23の表側に添って下方に送られ、製袋ガイド部23の形状に導かれながら投入筒27付近で二つ折りされた包装フィルムFYとなる。
【0026】
なお、充填シュート21の裏側には、袋状になった包装フィルム内に内容物を充填するための投入部26が漏斗状になって投入筒27に連結されている。即ち内容物は投入部26に入れられて投入筒27に集められ、その後二つ折りされた包装袋内に充填される。
【0027】
このような充填シュート21全体を自動包装機に固定するために、右側取り付け部24と左側取り付け部25が製袋ガイド部23と投入部26に溶接されている。
【0028】
次に、上記充填シュート21における製袋ガイド機能に関する動作は、以下のようになっている。L型シール金具タイプ自動包装機は、送りロールによって二つ折りされた包装フィルムFYを垂直下方に引っ張りながらL型シール金具による縦シールと横シールを施しているが、この時包装フィルムFXが接触している充填シュート21の製袋ガイド部23と投入筒27は、表面側に対して凸状エンボス加工が施された薄いステンレス板(例えば、厚さ0.6mm)で構成されている。
【0029】
図5は、充填シュート21の製袋ガイド部23に用いられている板材の断面図である。図5に示すように、この板材の表面は凸面加工状態になっており、裏面は平面加工状態になっている。なお、この図5の板材表面に施された加工状態を本発明では凸状エンボス加工と説明しており、これは板材の表面側のみに凸状形状を付加し、板材の裏面側は平面加工とした片側エンボス加工のことである。そして、この凸状に出っ張った部分を真上から見た形状は、円形となっている。
【0030】
このような凸状エンボス加工状態の製袋ガイド部23と投入筒27に接触している包装フィルムFXを垂直下方に引っ張ると、従来発生していた包装フィルムFXの送りに伴う摩擦抵抗は、大幅に軽減されることになる。即ち、このような加工が施された充填シュート21の製袋ガイド部23と投入筒27に接触している包装フィルムは、凸状エンボス加工によって接触している部分が凸状エンボスの出っ張った部分に限定され、他の凹んでいる部分とは微小の隙間を保有する状態になっている。このため、従来発生していた摩擦抵抗より大幅に低い摩擦抵抗値状態で包装フィルムFXを垂直下方に引っ張ることが可能になる。
【0031】
一方、袋状になった包装フィルム内に内容物を導く役目を担う充填シュート21の製袋ガイド部23裏面と、投入筒27内面においては、平面加工状態になっているため、通過する内容物が付着する事態を回避することができる。
【0032】
このため、このような薄い板厚の部材を用いた充填シュートにおいて、包装フィルム送りにおける摩擦抵抗が低く、且つ内容物投入における付着現象の起きにくい充填シュートを提供できる。
【0033】
以上、上記実施例においては、L型シール金具タイプ自動包装機の例を用いて説明してきたが、このような充填シュートは、縦シールバーと横シールバーが一体化したL型シール金具に限定するものではなく、シール金具の形態は各種採用可能である。例えば、縦シールバーと横シールバーが別々に設置されていて、間歇動作を行う送りロールを用いて包装フィルムを搬送しているケースにも適用される。
【0034】
また、上記実施例においては、充填シュートの表面側に対して円形の凸状エンボス加工が施され、充填シュートの裏面側に対して平面加工が施された例で示したが、これに限定するものではなく、充填シュートの表面側に対して円形以外の形状(例えば、三角、四角等の多角形形状や楕円、雨だれ等の変形された円形形状若しくは波型形状、不規則な凸凹形状)が施され、充填シュートの裏面側に対して平面加工が施されたケースにも適用される。
【0035】
最後に、本発明の実施の形態は本発明を具現化するための一例を示したものであり、特許請求の範囲における発明特定事項とそれぞれ対応関係を有するが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るL型シール金具タイプ自動包装機を示す正面図である。
【図2】本発明に係るL型シール金具タイプ自動包装機を示す側面図である。
【図3】本発明に係るL型シール金具タイプ自動包装機における充填シュートの正面図である。
【図4】本発明に係るL型シール金具タイプ自動包装機における充填シュートの側面図である。
【図5】充填シュート21の製袋ガイド部23に用いられている板材の断面図である。
【図6】従来のL型シール金具タイプ自動包装機における充填シュートの正面図である。
【図7】従来のL型シール金具タイプ自動包装機における充填シュートの側面図である。
【図8】従来の充填シュート121の製袋ガイド部123に用いられている板材の断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 L型シール金具タイプ自動包装機
10 包材ロール
11 包材供給モータ
12 ホッパー
13 計量回転盤
14 ステッピングモータ
15 メインモータ
16 減速機
17 ベルトコンベア
18 カッター装置
19 送りロール
20 L型シール金具
21 充填シュート
22 配電盤
23、123 製袋ガイド部
24、124 右側取り付け部
25、125 左側取り付け部
26、126 投入部
27、127 投入筒
FX 包装フィルム
FY 二つ折りされた包装フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装フィルムを二つ折りして袋の形にする製袋ガイド機能と、袋になった包装フィルム内に内容物を導く充填機能とを有する充填シュートであって、
前記包装フィルムが接触する製袋ガイド機能を構成する部材には、凸状エンボス加工が施され、
前記内容物が接触する充填機能を構成する部材には、平面加工が施されていることを特徴とする充填シュート。
【請求項2】
長尺包装フィルムに対して略垂直下方向に移送しながらフィルム中央付近を二つ折りすると共に、シール装置によって包装袋になった袋内に内容物を導く充填シュートと、
前記二つ折りされた包装フィルムに対してシール金具を用いて縦シールと横シールを施して包装袋にするシール装置と、
前記充填シュートとシール装置によって作られた多数の包装袋を移送する送りロールとを備えた自動包装機であって、
前記充填シュートは、包装フィルム中央付近を二つ折りする製袋ガイド部と、内容物を受け取る投入部と、受け取った内容物を包装袋内に導く投入筒と、充填シュートを自動包装機に固定する取り付け部で構成され、
前記製袋ガイド部と投入筒を構成する板材には、包装フィルムの接触する表面側に対して凸状エンボス加工が施され、内容物の接触する裏面側に対して平面加工が施されていることを特徴とする自動包装機の充填シュート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−87845(P2008−87845A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273630(P2006−273630)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(596092595)三光機械株式会社 (102)
【Fターム(参考)】