説明

自動取引装置、カード読取方法およびプログラム

【課題】MSが破壊されても従来のカードの印刷デザインを損なうことなく取引情報を読取ることが可能な自動取引装置、カード読取方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】カードに記録された取引情報を読取り、前記取引情報に基づいて自動取引を実行する自動取引装置であって、前記カード表面の所定位置の色彩を読取る第1の読取部と、前記カードに記録された前記取引情報を読取る第2の読取部と、前記第2の読取部が前記取引情報を読取れるか否かを、前記所定位置の色彩に基づいて判定する判定部と、を有し、前記第2の読取部は、前記判定部により前記取引情報を読取れると判定された場合に前記取引情報を読取る自動取引装置により、上記課題の解決を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動取引装置、カード読取方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
銀行のATM(Automated Teller Machine)、CD(Cash dispenser)等の自動取引装置においては、磁気ストライプ(Magnetic Stripe:MS)と、IC(Integrated Circuit)チップとを備えたカードが用いられることがある。また、銀行取引を行うための情報を格納した銀行用MSおよび、クレジット取引を行うための情報を格納したクレジット用のMSに加え、少なくとも銀行取引を行うための情報を格納したICチップを備えた一体型カードも用いられている。
【0003】
このようなカードでは、MSやICチップの情報を検出する読取部の配置の関係から、自動取引装置に挿入する方向が決められている。このため、挿入方向を間違えないような工夫や、間違えた場合の対応方法が施されている例がある。
【0004】
例えば、カードに記載されている情報を読取って処理を行うカード処理装置において、挿入されたカードの表裏や方向を方向検出センサで読み取り、表裏や方向が誤りなく挿入されたか否かを判別するようにした例がある。挿入方向が間違っている場合には、装置内部で反転させることにより、カードの磁気処理を行うようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、挿入方向を示す図柄を蛍光塗料やざらざらした感触を持つ図柄とし、健常者のみならず目に障害のある人などにも判別しやすくした例がある(例えば、特許文献2参照)。さらに、2つのカード処理部を設け、カードの挿入方向に関わらず、情報の記録再生が可能なカードリーダの例もある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−134571号公報
【特許文献2】特開2000−57281号公報
【特許文献3】特開2009−266107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献1に記載のカード処理装置では、方向検出センサが具体的に何を検出しているのか、明確な記載がない。また、特許文献2に記載のカードは、現在のカードデザインを変える必要があるとともに、装置側で挿入方向を検出するものではない。特許文献3に記載のカードリーダは、2つのカード処理部といった追加の構成が必要となり、装置の大型化、コストの上昇などが懸念される。
【0008】
さらに、上記のようなカードでは、MSに、ICチップの搭載有無やカードの挿入方向に関係する情報を含むカード識別情報が含まれており、このカード識別情報により、ICチップの有無やカードの挿入方向を認識している場合がある。しかし、例えば持ち運びなどによりMSのデータが破壊されると、例え一体型カードでクレジット用MSのみが破壊され、銀行用MSおよび銀行ICチップのデータが正常な場合でも、カード識別情報が読取れなくなることがある。このため、自動取引装置にカードを挿入した際に、カード識別情報により識別されているカード挿入方向が不明となってしまい、ICチップにアクセスすることもできなくなる。よって、ICチップが正常であっても、取引に必要な情報が読取れず、銀行用カードとしての機能も使用できなくなり、カードが使えない状態となってしまう。
【0009】
このようにカードが使えない状態となった場合には、再発行が必要になるが、このとき、顧客および金融機関ともに、以下の負担が発生する。すなわち、顧客は、金融機関の平日の営業時間に支店に出向いて、窓口で手続きをしなければならないとともに、カード発行手数料が必要になる場合がある。金融機関は、窓口対応および事務作業が発生し、作業負担が増加する。
【0010】
そこで本発明は、MSが破壊されても、顧客、金融機関ともに負担が発生せず、従来のカードの印刷デザインを損なうことなくカードの識別情報を取得することにより、カードに記録された取引に関する情報を読取ることが可能な自動取引装置、カード読取方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る自動取引装置は、カードに記録された取引情報を読取り、前記取引情報に基づいて自動取引を実行する自動取引装置であって、前記カード表面の所定位置の色彩を読取る第1の読取部と、前記カードに記録された前記取引情報を読取る第2の読取部と、前記第2の読取部が前記取引情報を読取れるか否かを、前記所定位置の色彩に基づいて判定する判定部と、を有し、前記第2の読取部は、前記判定部により前記取引情報を読取れると判定された場合に前記取引情報を読取ることを特徴としている。
【0012】
本発明に係るカード読取方法は、カードに記録された取引情報を読取り、前記取引情報に基づいて自動取引を実行する自動取引装置におけるカード読取方法であって、前記カード表面の所定位置の色彩を読取り、前記カードに記録された前記取引情報を読取れるか否かを、前記所定位置の色彩に基づいて判定し、前記取引情報を読取れると判定された場合に前記取引情報を読取ることを特徴としている。
【0013】
なお、上述した本発明に係る方法をコンピュータに行わせるためのプログラムであっても、このプログラムを当該コンピュータによって実行させることにより、上述した本発明に係る方法と同様の作用・効果を奏するので、前述した課題が解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明による自動取引装置、カード読取方法およびプログラムによれば、MSが破壊されても従来のカードの印刷デザインを損なうことなく取引に必要な情報を読取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施の形態による自動取引装置の概観斜視図である。
【図2】一実施の形態による自動取引装置の構成を示すブロック図である。
【図3】一実施の形態によるカード処理部の構成を示す図である。
【図4】一実施の形態によるカードの例を示す図であり、(a)は、銀行専用カード、(b)、(c)は、一体型カードを示す。
【図5】一実施の形態による自動取引装置における取引情報読取り処理を示すフローチャートである。
【図6】一実施の形態による取引情報読取り処理におけるカードの動きを示す図である。
【図7】一実施の形態による図形の検出方法の例を示す図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例、(c)は第3の例を示す。
【図8】一実施の形態によるカード判別情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施の形態による自動取引装置について説明する。まず、図1および図2を参照しながら、本実施の形態による自動取引装置1の構成について説明する。図1は、自動取引装置1の概観斜視図、図2は、自動取引装置1の構成を示すブロック図である。
【0017】
自動取引装置1は、銀行などに備えられる現金自動預払機(ATM)や、キャッシュディスペンサ(CD)の一例であり、前面に操作、表示、入出金等を行うための各部を備えた装置である。図1に示すように、自動取引装置1前面には、カード入出部3、通帳入出部5、紙幣入出部7、硬貨入出部9、表示パネル11、通話部13などを備えている。
【0018】
カード入出部3は、後述する一体型ICカード等のカードを挿入または排出する開口部である。通帳入出部5は、通帳に取引履歴を記載するため入出を行う開口部である。紙幣入出部7は、必要に応じて開かれ、内部に紙幣を配置し、または内部から紙幣を取り出すことにより入出金を行うための開閉可能な開口部である。硬貨入出部9は、必要に応じて開かれ、内部に硬貨を投入し、または内部から硬貨を取り出すことにより硬貨の入出金を行うための開閉可能な開口部である。
【0019】
表示パネル11は、例えば液晶表示装置とタッチパネルとを備え、顧客に対する情報を表示するとともに、表面に触れることにより自動取引装置1に指示を入力する装置である。通話部13は、自動取引装置1における操作に不明点があった場合などに手にすることにより、行員と通話可能な受話器である。
【0020】
図2に示すように、自動取引装置1は、カード処理部30、カード搬送部32、通帳処理部34、操作表示部36、紙幣入出金部38、硬貨入出金部40、記憶部42、およびそれらを制御する制御部44を有している。
【0021】
カード処理部30は、カード入出口3を含んで構成され、カード入出部3に挿入されたカードに記録された情報の読出しを行う読取装置を有している。詳細は後述する。カード搬送部32は、カード入出口3に挿入されたカードを、自動取引装置1における入出金処理の状態に応じて搬送する搬送装置であり、例えば、ベルトやプーリなどにより構成される。
【0022】
通帳処理部34は、通帳入出口5を含み、通帳入出部5に挿入される通帳を自動取引装置1内部に取込むとともに、入出金処理に伴う履歴を印刷するなどの処理を行い、処理が終了すると通帳入出口5に排出する装置であり、通帳を搬送する機能と印刷等の処理を行なう機能を有している。操作表示部36は、表示パネル11を含んで構成され、表示パネル11を制御して顧客に操作を促すための表示等を行うとともに、表示パネル11を介して入力される指示を取得する。
【0023】
紙幣入出金部38は、紙幣入出部7を有し、表示パネル11を介して入力された指示に基づいて発生する取引に応じて、紙幣入出部7を介して紙幣の入出金を行う。硬貨入出金部40は、硬貨入出部9を有し、表示パネル11を介して入力された指示に基づいて発生する取引に応じて、硬貨入出部9を介して硬貨の入出金を行う。
【0024】
記憶部42は、例えばRAM(RANDOM Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶装置である。記憶部42は、自動取引装置1の動作を制御する制御プログラムを記憶する領域として用いられるとともに、制御プログラムを実行する際に、必要に応じて作業用記憶領域として使用される。また、記憶部42は、後述するカード処理部30で読取られる情報や、その情報に関連して参照される情報等を保持する記憶領域として用いられる。制御部44は、記憶部42に記憶された制御プログラムを読み込んで実行することにより、自動制御装置1における各構成要素の動作を制御する演算装置である。
【0025】
次に、図3および図4を参照しながら、本実施の形態によるカード処理部およびカードの構成について説明する。図3は、カード処理部の構成を示す図、図4は、カードの例を示す図であり、(a)は、銀行専用カード、(b)、(c)は、銀行およびクレジット両用のICチップ付き一体型カード(以下、単に一体型カードという)を示す。
【0026】
図3に示すように、カード処理部30は、磁気リーダ部52、イメージリーダ部54およびICチップリーダ部56を有している。なお、図3は、カード処理部30の上方から見た配置を概念的に示しており、矢印60は、カード挿入方向を示し、矢印62は、カード搬送方向を示している。
【0027】
すなわち、図3において、カード処理部30の右側のカード入出口3に近い側に磁気リーダ部56が設けられ、横方向中央付近にイメージリーダ部54が設けられ、左側にICチップリーダ部52が設けられている。磁気リーダ部52は、磁気ヘッドなどを備え、カードの磁気ストライプ(MS)に記録された情報を読出す装置である。イメージリーダ部54は、例えばCCDカメラなどを備え、カード処理部30に挿入されるカード表面の画像を取得する装置である。ICチップリーダ部56は、少なくとも一つの接点を備え、カードのICチップと接触することにより、ICチップ内部に記録された情報を読取る装置である。このような構成のカード処理部30により、矢印60の方向から挿入されたカードが矢印62の方向に搬送される際に、適宜情報の読取りが可能となっている。
【0028】
図4(a)に示すように、自動取引装置1において使用可能なカードの一例であるカード70は、銀行専用カードであり、例えばプラスティック製の板状部材に銀行名や用途など(不図示)を含む図柄が印刷されている。またカード70は、銀行取引に関する情報を記録した銀行MS72、ICチップ74を備えるとともに、挿入方向を示す三角形76が図柄の一部として所定の色で印刷されている。カード70は、銀行専用カードであるので、MSは一種類のみが備えられており、読取方向が一方向であるので、三角形76により示される矢印60の方向が正方向となる。なお、本明細書において、銀行MS72、ICチップ74などに記録される、自動取引装置1における取引を行うために必要な情報を取引情報ということにする。
【0029】
銀行MS72には、例えば、カード70が銀行用のカードであることやICチップ74を有しているという情報を含むカード識別情報が記録されている。カード識別情報としては、銀行専用またはクレジット併用などカードの種別や、カードがどの会社のものであるか、などの情報を含むようにしてもよい。また、予め記憶部42には、三角形76の形状、色、位置等(以下、印刷情報という)に関連付けて、少なくともカード70の挿入方向を示す情報とICチップ74を備えていることを示す情報とを含むカード識別情報を記録しておく。記憶部42に記録する、印刷情報とカード識別情報を互いに関連付けた情報を、以下カード判別情報ということにするが、詳細については後述する。
【0030】
ところで、三角形76の「色」とは、他の印刷の状態と光学的に識別可能な状態を示す情報であればよい。光学的に識別可能とは、例えば、同一色で異なる階調値を有する状態や、互いに色が異なる状態など、輝度または色を表す光学的な情報により互いに識別可能な状態をいう。以下、本明細書においては、これらの輝度または色を表す光学的な情報をまとめて「色彩」と表現することにする。
【0031】
図4(b)、(c)に示すように、カードの別の例である一体型カード80は、例えばプラスティック製の板状部材に銀行名や用途など(不図示)を含む図柄が印刷されている。一体型カード80は、クレジット取引に関する情報を記録したクレジットMS82と、銀行取引に関する情報を記録した銀行MS86およびICチップ90を有している。このとき、クレジットMS82には、例えば一体型カード80の挿入方向に関する情報、および一体型カード80がICチップ90を有しているという情報を含むカード識別情報が記録されている。また、一体型カード80には、挿入方向を示す三角形84と三角形88とが互いに異なる色彩で印刷されている。
【0032】
ここで、図4(b)に示した一体型カード80は、三角形84で示す挿入方向が、挿入方向60と一致した方向となっており、この方向に一体型カード80をカード入出口3に挿入すると、磁気リーダ部52は、クレジットMS82を読取る。この方向を正方向という。図4(c)に示した一体型カード80は、三角形88で示す挿入方向が、挿入方向60と一致した方向となっており、この方向に一体型カード80をカード入出口3に挿入すると、磁気リーダ部52は、銀行MS86を読取る。この方向を逆方向という。
【0033】
このとき、クレジットMS82には、一体型カード80がICチップ90を有しているという情報、および一体型カード80の挿入方向が、正方向であることを示す情報を含むカード識別情報を記録させることが好ましい。カード識別情報としては、銀行専用、またはクレジット併用などカードの種別や、カードがどの会社のものであるかを示す情報などを含むようにしてもよい。通常、一体型カード80は、三角形84で示される方向に挿入されると、磁気リーダ部52によりカード識別情報が読取られ、正方向であることと、ICチップ90が備えられていることが確認される。このとき、ICチップリーダ部56は、ICチップ90にアクセスすることが可能になる。
【0034】
本実施の形態においては、カード識別情報を三角形84、88の「色彩」「図形」の形状(以下、単に「図形」という)、「位置」を含む印刷情報と関連付けて、カード判別情報として予め記憶部42に記憶する。また、カードがクレジット併用であることを示すカード種別や、カードがどの銀行のカードであるか、あるいはどのクレジット会社のカードであるか等他のカード識別情報を同時に記憶部42に記憶するようにしてもよい。カード判別情報についての詳細は後述する。
【0035】
自動取引装置1は、一体型カード80について、通常クレジットMS82を読取って取得するカード識別情報を、所定位置に印刷された三角形84の色彩を読取ることにより取得する。これによりICチップリーダ部56はICチップ90にアクセスし、銀行取引に必要な取引情報を読み出す。
【0036】
以上のように構成される自動取引装置1における取引情報読取り動作について、図5〜図7を参照しながら説明する。図5は、自動取引装置における取引情報読取り処理を示すフローチャート、図6は、取引情報読取り処理におけるカードの動きを示す図、図7は、図形の検出方法の一例を示す図、図8は、カード判別情報の一例を示す図である。
【0037】
図5に示すように、まず、自動取引装置1は、操作表示部36により、表示パネル11に取引画面を表示させ(S201)、表示パネル11の所定の取引キーの押下を取得する(S202)。取引キーが押下されると、制御部44は、カード入出部3にカードが挿入されたことを検知する(S203)。
【0038】
図6は、一体型カード80が正方向に挿入される場合を例にして、各処理における一体型カード80の位置を示している。S203では、状態180のように、一体型カード80はカード搬送部32によりカード入出部3から自動取引装置1に挿入される。
【0039】
図5に戻って、制御部44が、カード入出部3にカードが挿入されたことを検知すると、磁気リーダ部52は、挿入されたカードのMSデータを読取り、イメージリーダ部54は、挿入されたカードのカードイメージを読取る(S204)。このとき、図6の状態182に示すように、一体型カード80は、カード搬送部32により磁気リーダ部52およびイメージリーダ部54を通過する。
【0040】
ここで、挿入されたカードが銀行専用のカード70のタイプであり、三角形76で示された方向に挿入された場合には、磁気リーダ部52は、銀行MS72を読取る。挿入されたカードが一体型カード80のタイプの場合、磁気リーダ部52は、三角形84で示された正方向であればクレジットMS82を読取り、三角形88で示された逆方向であれば銀行MS86を読取る。
【0041】
制御部44は、磁気リーダ部52がMSデータを読み取れたか否か、あるいは磁気リーダ部52が読取ったMSデータを解析したMSデータが正常であるか否か判別する(S205)。ここで、MSデータが正常であるとは、MSデータから、少なくとも挿入方向が正方向であるというカード識別情報が読取れることをいう。すなわち、カード70や一体型カード80が逆方向に挿入された場合には、MSデータは正常でないと判別される。また、カード70の銀行MS72、または一体型カード80のクレジットMS82のMSデータが破壊されている場合も、MSデータは正常でないと判別される。
【0042】
MSデータが正常であると判別されると(S205:YES)、磁気リーダ部52が読取った銀行MS72またはクレジットMS82のMSデータに含まれるカード識別情報から、制御部44は、挿入されたカードがICチップを有しているか否かを判別する(S206)。
【0043】
挿入されたカードがICチップを有していると判別されると(S206:YES)、イメージリーダ部54は、カードのICチップ74またはICチップ90に記録されている情報を読取る(S207)。そして、制御部44は、読取った情報に基づき自動取引装置1による取引処理を続行する。このとき、一体型カード80は、図6に示すようにカード搬送部32により位置186まで搬送される。
【0044】
挿入されたカードがICチップを有していないと判別されると(S206:NO)、制御部44は、クレジットMS82に記録された情報に基づき取引を続行する。この場合、クレジット取引となる。
【0045】
MSデータが正常でないと判別されると(S205:NO)、イメージリーダ部54が読取ったカードイメージに基づき、制御部44は、所定の色彩の所定の図形が所定位置にあるか否か判別する(S208)。すなわち、制御部44はイメージリーダ部54が読取ったカードイメージを解析し、「色彩」「図形」「位置」等の印刷情報を取得する。また、制御部44は記憶部42のカード判別情報を参照し、イメージリーダ部54が読取った「色彩」「図形」「位置」等の印刷情報に対応する、カード70や一体型カード80のカード識別情報である少なくとも「ICチップ有無」「挿入方向」を取得する。
【0046】
ここで、イメージリーダ部54が取得するカードイメージから「色彩」「図形」「位置」を取得する方法の一例を、図7を参照しながら説明する。図7は、所定の色彩の図形を検出する方法を示しており、(a)は第1の例、(b)は第2の例、(c)は第3の例を示す。図7では、破線の矢印で走査線192を表している。図7に示すように、イメージリーダ部54は、カードの所定の位置からカード搬送方向に一定間隔で、カラーイメージをスキャンする。
【0047】
図7の例では、特徴の色彩の切り替えポイント長により「色彩」「図形」「位置」を判別する。例えば、図7(a)では、所定の第1色が検出される部分がだんだん長くなった後、検出されない状態となることで、所定の色彩の図形190が所定位置に検出されたと判断する。図7(b)の例では、所定の第2色が検出される部分がだんだん長くなった後、一定幅となり、検出されない状態となることで、所定の色彩の図形194が所定位置に検出されたと判断する。図7(c)の例では、所定の第3色が検出される部分がだんだん長くなり、一定幅となった後再び長くなり、検出されない部分が間に挟まるようになる。続いて一定幅の部分が続き、さらに所定の第3色が検出される部分が増大し、減少に転じて検出されなくなるといった、図形196の形状にあったパターンが検出されると、所定の色彩の図形196が所定位置に検出されたと判断する。
【0048】
イメージリーダ部54により取得されたイメージの解析の結果、図5のS208において、記憶部42に記録されている自動取引装置1で利用可能なカードに対応する図形が検出できなかった場合は(S208:NO)、カード使用不可として返却する(S209)。このとき、図6に示すように、カード搬送部32は、一体型カード80をカード入出部3から状態184のように矢印66の方向に排出する。
【0049】
制御部44は、自動取引装置1で利用可能なカードに対応する図形が検出された場合、挿入されたカードの挿入方向を、記憶部42のカード判別情報を参照して取得し、正方向であれば処理をS207に進める(S210:YES)。挿入方向が逆方向であれば(S210:NO)、カードを反転させ(S211)、処理をS207に進める。このとき、カード搬送部32にカードを反転させる回転機構を有するカード反転部(図示せず)を設け、カードの表裏を反転させた後に改めてICチップリーダ部56にICチップ74またはICチップ90にアクセスさせることが好ましい。
【0050】
ここで、図8を参照しながら、カード判別情報について説明する。図8は、カード判別情報の一例を示す図である。図8に示すように、カード判別情報240として、例270〜例276について、カード識別情報244が印刷情報242に関連付けて記録されている。
【0051】
例えば、例270では、印刷情報242の「色彩」が「青1」、「図形」は「三角形」、「位置」は、「範囲A」である。この印刷情報242に関連付けて、カード識別情報244として「IC有無」が「有」、「挿入方向」は「正」方向、「カード種別」が「一体型」であることが記録されている。例えば、例272では、印刷情報242である「色彩」が「赤1」、「図形」は「矢印」、「位置」は、「範囲B」である。この印刷情報242に関連付けて、カード識別情報244として「IC有無」が「有」、「挿入方向」は「正」方向、「カード種別」が「銀行用」であることが記録されている。なお、「範囲A」「範囲B」とは、カードにおいて所定の点を原点とした座標で表されるようにしてもよい。
【0052】
例274、例276についても、同様に印刷情報242に関連付けてカード識別情報244が記憶される。このようなカード判別情報240により、自動取引装置1は、少なくとも「ICチップ有無」と「挿入方向」を取得する。
【0053】
このように制御部44が、三角形76または三角形84の色彩を検出し、記憶部42に記録されたカード判別情報240を参照することにより、ICチップ74またはICチップ90が備えられていることを判別したとする。このとき、S207でICチップリーダ部56は、ICチップ74またはICチップ90にアクセスし、内部の情報を読取ることにより、IC取引を続行する。このとき行われる取引は、銀行取引となる。
【0054】
なお、上記実施の形態において、イメージリーダ部54は、第1の読取部の一例であり、ICチップリーダ部56は、第2の読取部の一例であり、ICチップ74およびICチップ90は、本発明の第1の記録部の例である。銀行MS72、およびクレジットMS82は、第2の記録部の例であり、磁気リーダ部52は、第3の読取部の一例である。また、制御部44によるS208の処理は、本発明の判定部の処理の一例であり、制御部44によるS208、S210の処理は、本発明のカード識別情報取得部の処理の一例である。
【0055】
以上詳細に説明したように、本実施の形態による自動取引装置1は、ICチップの有無およびカードの挿入方向に関するカード識別情報244を、カードに印刷される「色彩」「図形」「位置」等の印刷情報242に関連付けてカード判別情報240として記憶部42に記憶している。そして、銀行MS72またはクレジットMS82が読取れない等、カード識別情報244が取得できない場合には、イメージリーダ部54によりイメージを取得し、「色彩」「図形」「位置」を解析し、記憶部42のカード判別情報240を参照する。読取った印刷情報242がカード判別情報240として記憶されているか否かを判別することにより、銀行MS72またはクレジットMS82が読取れない場合にも、自動取引装置1において利用可能なカードであるか否かが判別される。
【0056】
また、利用可能なカードである場合には、制御部44は、印刷情報242に基づき、記憶部42を参照することによりカード識別情報244を取得し、ICチップの有無および挿入方向を判別する。これにより、制御部44はICチップリーダ部56を介してICチップ74またはICチップ90にアクセスし、取引に必要な取引情報を取得することができる。
【0057】
例えば、カードの「色彩」「図形」「位置」によりICチップの有無と挿入方向を判定し、銀行MS86とICチップ90とを含む一体型カード80が正方向に挿入されていると判定できたとする。この場合は、制御部44は、ICチップ90にアクセスして情報を読取ることにより、銀行IC処理を実行させることができる。逆方向であると判別された場合には、カードを反転させるか、排出するか、磁気リーダ部52またはICチップリーダ部56の位置を調整する。
【0058】
以上のように、本実施の形態による自動取引装置1によれば、カード表面に施された印刷の所定位置の所定図形の「色彩」を取得するだけで、カード識別情報244を取得することが可能になる。よって、MSが破壊された状態でもICチップ74またはICチップ90にアクセスすることが可能となり、カード70、一体型カード80を利用可能な状態とすることができる。特に、一体型カード80では、クレジットMS82のみが破壊されても挿入方向が検出できずに一体型カード80自体が使用できなくなる事態が回避できる。
【0059】
このとき、所定の「図形」は、従来のものを利用することが可能であり、正方向と逆方向で「色彩」を異なるものにするのみで、カード識別情報244を取得できる。よって、従来の印刷デザインを損なうことがない。また、デザインを変更する必要がないので、顧客を混乱させることもなく、コストも必要としない。また、銀行MS72、ICチップ74、クレジットMS82、銀行MS86、またはICチップ90に特別な情報を付加する必要もない。
【0060】
さらに、MSが破壊されてもカードが利用不可能となることを防止できるので、顧客は、金融機関の平日の営業時間に支店に出向いて、窓口で手続きをする必要がないとともに、カード発行手数料も不要である。金融機関は、窓口対応および事務作業の発生や、作業負担の増加を避けることができる。
【0061】
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を採ることができる。例えば、所定の図柄の「位置」として、カードの搬送方向に対し「右から規定値」、または「前から規定値」内にあることを記録するようにしてもよい。また、「図形」として「三角」、または「矢印」、またはその他の「指定の図」について記録するようにしてもよい。さらに、「色彩」として「色」を決めるようにしてもよい。「図形」は、顧客が視認により方向が分かる例えば非対称な図柄であることが好ましい。
【0062】
また、所定の位置に所定の図形を所定の色彩でカードに印刷しておくが、記憶部42は、印刷情報242として全カード共通の所定位置の「色彩」のみを記録し、「色彩」に関連付けてカードの「ICチップの有無」および「挿入方向」を記録するようにしてもよい。ここで「挿入方向」とは、直接に「正方向」「逆方向」を示す必要はなく、例えばクレジットMSであること等、「挿入方向」と一意に対応する情報であればよい。
【0063】
制御部44が、一体型カード80の挿入方向を逆方向と判別した場合、不図示の位置調整部を備えるようにして、ICチップリーダ部56の位置を、所定位置の色彩に基づいてICチップ90にアクセス可能な位置に調整するようにしてもよい。例えば、「色彩」が「青2」であると判定された場合には、ICチップリーダ部56の位置を、予め決められた逆方向のカード用の位置に移動させるようにしてもよい。このとき、位置調整部は、必要に応じてICチップリーダ部56を平行移動または回転移動させることが好ましい。同様に、位置調整部は、磁気リーダ部52の位置を調整し、クレジットMS82の情報が読取れるようにしてもよい。このような構成により、逆方向に挿入された一体型カード80を排出することなく取引処理を行なうことができる。
【0064】
また、上記実施の形態においては、記憶部42にカード識別情報244として、ICチップの有無とカードの挿入方向に関する情報を記録するようにしたが、カードの挿入方向は、ICチップの位置がICチップリーダ部56で読み取り可能であることを確認するための情報である。よって、ICチップの位置に関する情報を記録あるいは取得するようにしてもよい。
【0065】
例えば、所定の図形の印刷が検出できないような場合、カード概観図を表示パネル11に表示し、ICチップ74またはICチップ90の位置を顧客に表示パネル11上でタッチにより指定してもらい、ICチップ74またはICチップ90の位置を取得してもよい。
カード反転部が設けられない場合には、矢印66の方向に排出するようにしてもよい。このとき表示パネル11にカードを反転させてほしい旨を表示することが好ましい。
【符号の説明】
【0066】
1 自動取引装置
3 カード入出部
5 通帳入出部
7 紙幣入出部
9 硬貨入出部
11 表示パネル
13 通話部
30 カード処理部
32 カード搬送部
34 通帳処理部
36 操作表示部
38 紙幣入出金部
40 硬貨入出金部
42 記憶部
44 制御部
52 磁気リーダ部
54 イメージリーダ部
56 ICチップリーダ部
60、62 矢印
70 カード
72 銀行MS
74 ICチップ
76 三角形
80 一体型カード
82 クレジットMS
84 三角形
86 銀行MS
88 三角形
90 ICチップ
240 カード判別情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに記録された取引情報を読取り、前記取引情報に基づいて自動取引を実行する自動取引装置であって、
前記カード表面の所定位置の色彩を読取る第1の読取部と、
前記カードに記録された前記取引情報を読取る第2の読取部と、
前記第2の読取部が前記取引情報を読取れるか否かを、前記所定位置の色彩に基づいて判定する判定部と、
を有し、
前記第2の読取部は、前記判定部により前記取引情報を読取れると判定された場合に前記取引情報を読取ることを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記色彩とは、輝度または色を表す光学的な情報であることを特徴とする請求項1に記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記第1の読取部は、前記カード表面の所定位置に配置された図形の色彩を読取ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動取引装置。
【請求項4】
前記取引情報を記録した第1の記録部の有無と前記カードの挿入方向に関する情報とを含むカード識別情報を、前記所定位置の色彩に関連付けて記憶する記憶部と、
前記所定位置の色彩に基づき、前記記憶部より前記第1の記録部の有無および前記カードの挿入方向を取得するカード識別情報取得部と、
をさらに有し、
前記判定部は、前記カード識別情報取得部により前記第1の記録部が有り、かつカードの挿入方向が所定の方向であると取得された場合に、前記取引情報が読めると判定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動取引装置。
【請求項5】
前記カードの前記第1の記録部とは別の第2の記録部に記録された前記カードのカード識別情報を読取る第3の読取部、
をさらに有し、
前記第3の読取部が前記カードのカード識別情報を読取ることができない場合に、前記カード識別情報取得部は、前記第1の読取部が読取った色彩に基づき前記記憶部から前記カード識別情報を取得することを特徴とする請求項4に記載の自動取引装置。
【請求項6】
前記カードを排出する排出部、
をさらに有し、
前記判定部が、前記取引情報が読取れないと判定すると、前記排出部は前記カードを排出することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の自動取引装置。
【請求項7】
前記第2の読取部の位置を調整する位置調整部、
をさらに有し、
前記判定部が、前記取引情報が読取れないと判定すると、前記位置調整部は、前記所定位置の色彩に基づいて前記取引情報を読み取れるように前記第2の読取部の位置を調整することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の自動取引装置。
【請求項8】
前記カードを前記自動取引装置内部で反転させる反転部、
をさらに有し、
前記判定部が、前記取引情報が読取れないと判定すると、前記反転部は、前記カードを反転させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の自動取引装置。
【請求項9】
カードに記録された取引情報を読取り、前記取引情報に基づいて自動取引を実行する自動取引装置におけるカード読取方法であって、
前記カード表面の所定位置の色彩を読取り、
前記カードに記録された前記取引情報を読取れるか否かを、前記所定位置の色彩に基づいて判定し、
前記取引情報を読取れると判定された場合に前記取引情報を読取ることを特徴とするカード読取方法。
【請求項10】
カードに記録された取引情報を読取り、前記取引情報に基づいて自動取引を実行する自動取引装置において、前記カード表面の所定位置の色彩を読取る処理と、
前記カードに記録された前記取引情報を読取れるか否かを、前記所定位置の色彩に基づいて判定する処理と、
前記取引情報を読取れると判定された場合に前記取引情報を読取る処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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