説明

自動取引装置

【課題】
本発明の課題は、カード+暗証番号入力による認証に代わる新しい認証デバイスを実装するに当たり、顧客が違和感、戸惑いなくスムーズ操作できるように実装することにある。
【解決手段】
新しい認証デバイスは、従来の操作範囲内の視認性の良い位置に配置することで、顧客に対して明確に実装位置を示すことができる。また、センタに配置することで、右手操作、左手操作に関わらず良好な操作性を確保できる。表示部の直下に配置することで、わかり易い操作方法の案内ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行、郵便局などの金融機関あるいはコンビ二等に設置されるATM(Automatic Teller's Machine)のような自動機において個人を認証するデバイスの実装に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関に設置されたATMでは、個人の認証方法として主に磁気カードを使用し、暗証番号入力との併用で使用者が正当な人であるかを認証していた。そして、近年、スキミングなどの行為により磁気カード+暗証番号による個人の認証ではセキュリティ性の低さが懸念され始めている。またセキュリティを強化した認証方法としては、ICカード化や指紋、指静脈と言った生体認証デバイスの採用が検討されている。例えば、特許文献1によれば、指紋情報を登録したICカードとATMに実装したスキャナで読み取った指紋データの照合で使用者の認証を行うシステムを開示している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−067523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば指紋スキャナは操作面の右端の最も手前部分に配置されており、認証デバイスの位置がわかりにくく、また左手操作の場合操作性が悪いといった課題がある。一般に暗証番号など他人に知られたくない情報を直接入力するような場合は、逆に操作状況が他人、又は背後から見られない位置に設置する必要があるため、操作面よりも視認性の悪い個所に設置されている。しかしながら、特許文献1は扱っている個人認証デバイス等は他人に認証操作を見られても問題無いものであるにもかかわらず、操作自体を見られたくない個人認証デバイス(例えば暗証番号等)と常に同じような位置に設けている。
【0005】
個人認証デバイスなど個人が適切に入力操作する入力装置等は、一般の成人の健常者のみを対象にしたものだけでなく、視覚障害者、車椅子対象者あるいは、座高の低い者、左利きの者、子供などあらゆる利用者にとって、利用し易い、視認し易い位置に設ける事が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、金融機関やコンビ二、公共施設等に設置されているATMにおいて、個人認証デバイスを設ける実装位置として、特に、装置のほぼ中央の位置に設けたことを特徴とする。また、その設置角度を水平に対して約10度の傾斜をもって配置する構造とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、認証デバイスを装置の中央に近い位置に配置することで、右手操作、左手操作どちらの場合も、同等の操作性を確保できる。また認証デバイスは水平に対して約10度の傾斜とすることで、高い視認性、操作性を確保することができる。またデバイスの周囲に平坦な面を確保することで、指あるいはICカード、携帯電話といった認証媒体のセット姿勢が安定し、また表示・入力部に近い位置に配置することで、デバイスに近い位置でわかり易い操作案内を出すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のATM(取引装置、取引処理装置とも言う)を説明する。
【実施例1】
【0009】
ATMは金融機関やコンビ二、公共施設等に設置され、顧客が目的とする現金の入金/出金取引等を自動的に行う自動取引装置である。図1はATMの顧客操作面の一実施形態を示す図面である。以下に、個人認証デバイスの視認性向上、操作性向上を目的とした自動機の顧客操作面について説明する。
【0010】
図1において、装置最上部に垂直に近い角度で、顧客に対する操作案内表示およびタッチパネル方式による入力機能を有する表示・入力部(操作部とも言う)1を配置する。表示面が垂直であることから、取引をしていない場合は、不特定の顧客に対する情報発信デバイスとしても使用可能である。操作部1の横には、顧客の顔情報を取得するためのカメラ2と、音声ガイダンスを行うためのスピーカ3を配置する。
【0011】
装置中段には、暗証番号、入出金金額等を入力するキーボード部4、顧客が保有するキャッシュカード、クレジットカード等のカードの取込み、返却を行うカード入出口5があり、装置内部はカード情報を読み取って入金/出金取引を行う。カード入出口5の横には取引内容を印字した明細票を放出する明細票放出口6を配置し、装置内部には明細票に印字する印字部を有する。その下には、入金紙幣の取込み、出金紙幣の放出を行う紙幣入出金口7、入金硬貨の取込み、出金硬貨の放出を行う硬貨入出金口8を配置し、紙幣/硬貨ユニットとして図示しない紙幣/硬貨を鑑別する鑑別部、紙幣/硬貨を搬送する搬送路、紙幣/硬貨を収納する収納部を有する。また各媒体の入出口の上側には、フリッカランプ9−1〜9−4を有し、顧客に対してそれぞれ操作箇所への誘導、具体的には紙幣が排出された、カードを挿入するタイミング等に合わせて点滅表示を行う。
【0012】
最下部の扉部10には、紙幣入出金口7に投入された紙幣以外の媒体を顧客に返却する異物返却口11、扉開閉用のハンドル12、扉のロック/解除を行うキーシリンダ13を配置する。この扉10の装置内部には上述の紙幣ユニット、硬貨ユニットを具備する。
【0013】
この自動取引装置において、顧客の生体情報の読み取りを行う認証デバイス14を図面の丸で囲った部分、即ち、装置の最上部に配置した操作部1の直下に配置する。そして装置の幅方向に対しても図示するように中央に認証デバイス14を配置する。これにより右手操作、左手操作どちらの場合も、同等の操作性を確保できるとの効果を奏する。なお、認証デバイス14は、操作部1自体に組み込ませていないので、認証デバイス14によって認証する際、操作部1から発せられる光の干渉を受けない。
【0014】
続いて、自動取引装置における取引を行う場合の操作開始から認証までの操作手順について説明する。顧客が操作部1より取引種別を入力する。取引種別としては入金、出金、振込取引等が項目として表示され、顧客が選択した(押下した)項目を検知することでフリッカランプ9−1を点滅してカード挿入を促す。顧客がカード入出口5よりカードを挿入するとカードに搭載している磁気ストライプの磁気情報から口座番号を読み取る。続いて、顧客がキーボード部4より暗証番号を入力するとこの入力情報を図示しないホストに送信する。次に、装置の幅方向に対して中央に配置された認証デバイス14に顧客が指を置くとCCDセンサにて指静脈の画像を読み取り、カードより読み出した登録指静脈パターンと照合して認証処理を行う。図1に図示するように、操作部1とカード挿入/排出口5又は紙幣/硬貨入出金口7,8との間に認証デバイスを配置し、また装置の幅方向で中心位置に配置することで、操作の流れが大きく変化することなく、操作を進めることが可能となり、操作者に違和感を与えない。もちろん、操作部1直下に配置することで、認証デバイスの操作案内を操作部に近い位置で表示でき、わかり易い案内が可能となる。
【0015】
認証デバイスとしては顧客の唯一無二の生体情報、指内部にある指静脈のパターンを読み取る指静脈ユニット、又は指表面の指紋パターンを読み取る指紋スキャナを用いている。このことから生体取得手段とも言う。図2および図3を用いて、指静脈デバイスあるいは指紋スキャナを実装した構成を説明する。なお、図3は図2の自動取引装置について垂直方向の線A−Aに沿ってみた場合の断面図である。図示するとおり操作部1の直下に水平に近い面を構成し、その面のほぼ中央位置に認証デバイス14を水平に対して約10度の傾斜で配置する。装置の幅方向に対してほぼ中央に認証デバイス14を配置することで、右手操作、左手操作どちらの場合でも同等の操作性を得ることができる。よって、左利きの人が操作しても、認証デバイス14の位置さえ認識できれば自然な向きで入力操作が可能である。さらに、認証デバイス14の実装部の周囲に平坦な面を確保することで、指静脈ユニット、指紋スキャナに対して安定した指のセット状態が確保できる。よって、視覚障害者にとっては、まず平坦な面を認知し、指、手のひらで指静脈ユニットを探り当てることが容易に出来る。このとき、認証デバイス14が指に光を照射するLED(照射部)と指の情報を読み取るCCDセンサ(撮像部)により構成される指静脈ユニットであれば、照射部を平坦な面より上方に突出させ、撮像部を撮像面が平坦な面とほぼ同じ高さとなるべく平坦な面の内部に埋めこんで設置する。
【0016】
さらに、認証デバイス14の実装位置が設置面から1000〜1100mm程度の高さに約10度の傾斜を有して実装されているため、無理のない姿勢での操作が可能である。成人の大人のみだけでなく、身障者など車椅子を利用されている人及び子供等が利用する場合であっても、無理無く操作が可能である。一方、これよりも低い位置に認証デバイス14を実装するとなれば、成人の大人が利用するときに手首を返して指を認証デバイス14に置く(かざす)構成となってしまい操作性が悪くなるので、本高さが適当である。また本高さでかつ約10度の傾斜を設けることにより上記の様な目線の低い顧客の操作時においても、本装置に凹凸が多少あったとしてもその上部に位置する顧客案内表示部の視認性に悪影響を与えることがない。
【0017】
顧客は図2,3に図示する認証デバイス14に指を置く(又はかざす)ことにより、装置は指内部の静脈又は指表面の指紋を、その内部に具備したCCD又はスキャナによって画像として読み取り、その画像を特定のアルゴリズムで特徴量を抽出し、カード機構部より読み出した登録パターンと照合して、認証処理を実行する。この認証結果がOKのときは顧客が操作部1にて選択した取引種目(入金、出金、暗証番号変更等)を図示しない制御部によって実行する。
【0018】
認証デバイス14は指に光を照射するLEDや指の情報を読み取るCCDセンサを有し、制御部はCCDセンサで読み取った画像から特定のアルゴリズムで特徴量を抽出し暗号化するプログラムを有している。このように、制御部は、読取、抽出、認証などのプログラムを記憶したメモリ、ICチップを搭載した基板(ボード)で構成する。よって基板としての制御部を装置の内部に配置し(例、操作部1の裏面に配置)、制御部と認証デバイス14を電気的に接続する構成にすることにより、認証デバイス14自体を小型化することが可能である。
【0019】
次に、認証デバイスとして非接触ICカードあるいは携帯電話との通信を行うリーダ/ライタを用いる場合を説明する。図4は、非接触ICカードあるいは携帯電話との通信を行うリーダ/ライタを実装した一構成図であり、図5は図4の自動取引装置について垂直方向の線B−Bに沿ってみた場合の断面図である。顧客案内表示・操作部1の直下に水平に近い面を構成し、その面のほぼ中央位置の内部にリーダ/ライタ15を実装する。本構成も上記実施例1と同様に装置の幅方向に対してほぼ中央に配置することで、右手操作、左手操作どちらの場合でも同等の操作性を得ることができる。更に、手前側に滑り落ち防止の突起16を設ける事で、カードあるいは携帯電話を約10度の傾斜面にセットした状態が維持でき、セット状態のままで暗証番号入力等の他の操作を行うことが可能となる。
【0020】
以上説明したとおり、操作部1の直下にある水平に近い面上で、かつ装置の幅方向に対してその中央位置に、図2、3では顧客の生体情報の読み取りを行う認証デバイス14を設置し、図4、5では非接触ICカードあるいは携帯電話との通信を行うリーダ/ライタ15を設置する例について説明した。以下では認証デバイス14とリーダ/ライタ15の両方を設置する例について説明する。第1の態様においては認証デバイス14とリーダ/ライタ15の両方を中央位置に設置し、第2の態様においては認証デバイス14を中央位置に、リーダ/ライタ15を顧客側から見て装置正面の左側に設置する。なお上述の通り、キーボード部4は顧客側からみて右側(図の右側)に設置している点は変わらない。
【0021】
第1の態様においては、認証デバイス14とリーダ/ライタ15を一体化させた装置(例、認証機能付きリーダ/ライタ)として設置しても良いし、認証デバイス14とリーダ/ライタ15を手前から奥へと向かう前後方向に並べて設置しても良い。これにより、上述したように左利きの人が操作しても、自然な向きで入力操作が可能となる。
【0022】
次に第2の態様について説明する。上述したとおり認証デバイス14は顧客又は利用者の生体情報を取得するものであり、その認証時において利用者が正しい姿勢、即ち当該デバイスに対して真っ直ぐ、または水平に該当する指を置くのが良い。登録されている静脈パターン等と精度の高い認証を得るためである。従って、図2の装置の幅方向に対して左側に認証デバイス14を配置した場合、そして登録されている静脈パターンが右手の指であったとき、右手を装置の左側に伸ばして認証デバイス14に指をかざさねばならばいので、認証が失敗してしまう可能性が高い。よって、認証デバイス14を装置の幅方向で中央位置に設置する構成が望ましい。一方、キーボード、リーダ/ライタ15は上述の影響を受けないことから、キーボード部4は装置正面に対して右側に配置し、リーダ/ライタ15を装置正面に対して左側に配置し、装置全体の操作性を最大限に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】自動取引装置の正面図
【図2】自動取引装置に指静脈ユニットあるいは指紋スキャナを実装した図
【図3】図2のA−A断面図
【図4】非接触ICカードあるいは携帯電話と通信を行うリーダ/ライタを実装した図
【図5】図4のB−B断面図
【符号の説明】
【0024】
1…表示・入力部、2…カメラ、3…スピーカ、4…キーボード部、5…カード入出口、6…明細票放出口、7…紙幣入出金口、8…硬貨入出金口、9−1…カード入出口フリッカランプ、9−2…明細票放出口フリッカランプ、9−3…紙幣入出金口フリッカランプ、9−4…硬貨入出金口フリッカランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引を自動的に行う自動取引装置において、
個人の生体情報を取得する生体情報取得手段と、取引に関する取引種別の表示または入力する操作手段とを有し、前記操作手段を前記装置の上部に垂直配置し、前記生体情報取得手段を前記装置の幅方向に対してほぼ中央部であって且つ前記操作手段の下側の位置に配置したことを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動取引装置において、
前記生体情報取得手段は個人の指内部の指静脈の画像を取得し、認証処理を実行することを特徴とする自動取引装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動取引装置において、
前記生体情報取得手段は前記操作部より装置前面に突出したほぼ水平面上に設置することを特徴とする自動取引装置。
【請求項4】
請求項3記載の自動取引装置において、
前記生体情報取得手段を前記装置の水平方向に対して略10度の傾きにて設置することを特徴とする自動取引装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動取引装置において、
カードに記憶された生体情報を読み取るカード読取手段を有し、
前記生体情報取得手段により取得した生体情報と、前記カード読取手段により取得した生体情報とを用いて認証処理を実行する制御部を該自動取引装置内部に設けることを特徴とする自動取引装置。
【請求項6】
請求項1記載の自動取引装置において、
非接触ICカードの情報を読み取るリーダライタを有し、
前記生体情報取得手段の左側に前記リーダライタを設けることを特徴とする自動取引装置。
【請求項7】
請求項1記載の自動取引装置において、
前記生体情報取得手段を当該装置の設置面から1000〜1100mmの高さに実装したことを特徴とする自動取引装置。
【請求項8】
請求項1記載の自動取引装置において、
前記生体情報取得手段の下方に、カードの取込み或いは返却を行うカード入出口、または明細票を放出する明細票放出口を配置することを特徴とする自動取引装置。
【請求項9】
請求項1記載の自動取引装置において、
前記生体情報取得手段の下方に、紙幣を入出金する紙幣入出金口、または硬貨を入出金する硬貨入出金口を配置することを特徴とする自動取引装置。
【請求項10】
請求項3記載の自動取引装置において、
前記生体情報取得手段を生体に光を照射する照射部及び生体を撮影する撮像部により構成し、
当該照射部を前記水平面から上方に突出させ、当該撮像部を前記水平面の内部に設置することを特徴とする自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−172582(P2007−172582A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291960(P2006−291960)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】