説明

自動周波数制御装置、受信システム及びそれらに用いる自動周波数制御方法

【課題】 受信器の周波数掃引範囲を狭くしても受信に失敗することを防ぐことが可能な自動周波数制御装置を提供する。
【解決手段】 自動周波数制御装置(制御装置2)は、マルチキャリア信号を受信するための複数の受信器(1−1〜1−n)を備えた受信システムにおいて用いられる。自動周波数制御装置(制御装置2)は、マルチキャリア信号に分布する各キャリアの周波数を監視する監視手段(発振器21及び周波数測定器22)と、監視手段(発振器21及び周波数測定器22)の監視結果を基に複数の受信器(1−1〜1−n)が受信するキャリアの正確な中心周波数を設定する設定手段(周波数測定器22)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動周波数制御装置、受信システム及びそれらに用いる自動周波数制御方法に関し、特にマルチキャリア信号を受信するための複数の受信器を備えた受信システムにおいて用いられる制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の受信システムにおいては、通常、予め決められた周波数で通信する場合、中継器や受信系において周波数変動が生じるため、受信器は周波数変動のあるマルチキャリア信号に対して同期する必要がある。このため、従来から受信器に自動周波数制御装置(AFC:Automatic Frequency Control)を具備している。
【0003】
このとき、正しい中心周波数にて同期するまでに要する時間は、できるだけ短い方が利便性が高いといえる。同期に要する時間の短縮を目的とする受信システムとしては、下記の特許文献1に記載のシステムがあり、その構成例を図2に示す。
【0004】
図2において、各受信器3−1〜3−nに入力されるマルチキャリア信号は、1つの信号帯域内に複数のキャリアを有している。図2において、受信器3−1は、位相検波器11と、搬送波再生回路12と、AFC(1)13と、識別器31とを備えており、他の受信器3−2〜3−nも受信器3−1と同様の構成となっている。
【0005】
特許文献1おいては、制御装置4からそれぞれの受信器3−1〜3−n毎に異なるキャリア周波数が通知され、それぞれの受信器3−1〜3−nでは通知されたキャリアに対して同期動作を開始する。
【0006】
いずれかの受信器(例えば、受信器3−1とする)が最初に同期した場合、他の受信器3−2〜3−nでは最初に同期した受信器3−1からAFC信号を受け取ることにより、同期に要する時間を短縮できることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−047837
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の受信システムでは、特許文献1に記載のように、同期に要する時間の短縮を目的とする場合、同期時間を短縮できる理由として、AFC信号をもらうことにより受信器の受信周波数発振源となるVCO(Voltage Controlled Oscillator)の掃引範囲を狭くすることが前提となっている。ここで、周波数の変動は、全てのキャリアで共通する成分の他に、キャリア毎に異なる固有の変動成分も含んでいることに注意する必要がある。つまり、キャリア毎の固有の周波数変動が受信器の掃引範囲を逸脱した場合には、受信器が同期に失敗してしまうという問題がある。
【0009】
受信器が具備するAFC機能は、その掃引範囲を狭くすることにより同期までに要する時間を短くすることができるが、一方で受信キャリアの実際の周波数が掃引範囲を逸脱した場合、全く同期できなくなるという問題がある。このため、受信器の掃引範囲を狭くしても受信器が確実に同期できる仕組みが必要となっている。
【0010】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、受信器の周波数掃引範囲を狭くしても受信に失敗することを防ぐことができる自動周波数制御装置、受信システム及びそれらに用いる自動周波数制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による自動周波数制御装置は、マルチキャリア信号を受信するための複数の受信器を備えた受信システムにおいて用いられる自動周波数制御装置であって、
前記マルチキャリア信号に分布する各キャリアの周波数を監視する監視手段と、前記監視手段の監視結果を基に前記複数の受信器が受信するキャリアの正確な中心周波数を設定する設定手段とを備えている。
【0012】
本発明による受信システムは、上記の自動周波数制御装置を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明による自動周波数制御方法は、マルチキャリア信号を受信するための複数の受信器を備えた受信システムにおいて用いる自動周波数制御方法であって、
制御装置が、前記マルチキャリア信号に分布する各キャリアの周波数を監視する監視処理と、前記監視処理の監視結果を基に前記複数の受信器が受信するキャリアの正確な中心周波数を設定する設定処理とを実行している。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、受信器の周波数掃引範囲を狭くしても受信に失敗することを防ぐことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態による受信システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明に関連する受信システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明による自動周波数制御装置の概要について説明する。本発明による自動周波数制御装置は、マルチキャリア信号を受信するための複数の受信器を備えた受信システムにおいて用いられる制御装置である。
【0017】
本発明による自動周波数制御装置は、特に正確なキャリア周波数が未知の不特定マルチキャリア信号を受信するために、マルチキャリア信号に分布する各キャリアの周波数を監視する機能と、各受信器が受信するキャリアの正確な中心周波数を設定する機能とを備えている。
【0018】
本発明は、受信器に入力されるマルチキャリア信号を自動周波数制御装置にも入力し、自動周波数制御装置において受信器が同期しようとするキャリアの実際の正確な周波数を監視する。自動周波数制御装置では、受信器が受信しようとするキャリアの実際の周波数を正確に測定して各受信器に対して測定された正確な周波数を通知することにより、キャリアの周波数が大きく変動した場合でも、受信器において受信キャリアの正確な周波数に同期することができるため、受信器が同期に失敗することを防ぐことができる。
【0019】
図1は本発明の実施の形態による受信システムの構成例を示すブロック図である。図1において、本発明の実施の形態による受信システムは、複数の受信器1−1〜1−nと、制御装置(自動周波数制御装置)2とから構成されている。
【0020】
受信器1−1は、位相検波器11と、搬送波再生回路12と、AFC(Automatic Frequency Control)(1)13とを備えており、他の受信器1−2〜1−nも受信器1−1と同様の構成となっている。制御装置2は、発振器21と、周波数測定器22とを備えている。
【0021】
各受信器1−1〜1−nと制御装置2とには、共通のマルチキャリア信号が入力される。制御装置2が具備する発振器21から出力されたローカル(Local)信号(基準クロック)が各受信器1−1〜1−nに入力される。
【0022】
また、制御装置2からは、各受信器1−1〜1−nが受信すべきキャリア周波数が出力され、そのキャリアを受信すべき受信器1−1〜1−nに入力される。マルチキャリア信号は、上記の背景技術で説明したシステムと同様に、ダウンコンバータ(図示せず)から送信される信号である。ローカル信号は、各受信器1−1〜1−nと制御装置2とが共通で参照する基準周波数発振源から出力された信号である。
【0023】
また、キャリア周波数は、各受信器1−1〜1−nに割り当てられるキャリアの実際の周波数を制御装置2がマルチキャリア信号から正確に測定した結果を各受信器1−1〜1−nに通知するための信号である。ここで用いられる制御装置2は、マルチキャリア信号を受信し、マルチキャリア信号に分布する各キャリアの正確な周波数を測定する機能を備えている。
【0024】
以上、本発明の実施の形態による受信システムの構成について述べたが、図1に示す受信器1−1〜1−nは当業者にとってよく知られており、高速で同期するようにAFCの引き込み範囲を各キャリアの帯域よりも狭くしてあることを除けば、特に詳細な構成や機能の指定はない。また、これらの詳細な機能は本発明と直接関係しないので、これらの詳細な説明を省略する。
【0025】
次に、本発明の実施の形態による受信システムの動作について説明する。まず、ローカルの役割に関して説明する。
【0026】
本実施の形態においては、制御装置2と各受信器1−1〜1−nとの間で基準とする周波数のずれをなくしておく必要がある。このため、制御装置2が基準とする周波数成分を、ローカル信号を用いて各受信器1−1〜1−nに通知している。
【0027】
本実施の形態においては、制御装置2が各受信器1−1〜1−nに対して周波数割当ての機能を担っている。まず、制御装置2が各受信器1−1〜1−nにキャリアを割当てる。このとき、各キャリアの実際の周波数は、割当て周波数と僅かに異なるが、制御装置2では受信したマルチキャリア信号から実際のキャリアの正確な周波数を測定することができる。
【0028】
ここで測定されたキャリアの周波数の値は、キャリアが割当てられる受信器1−1〜1−nに通知される。キャリアが割当てられた受信器1−1〜1−nでは、制御装置2と同じマルチキャリア信号を受信しており、割当てキャリアの正確な周波数を制御装置2から受け取ることができる。
【0029】
そのため、キャリアが割当てられた受信器1−1〜1−nでは、即座にキャリアに対して同期することができる。ここで説明した受信器は、図1に示す受信器1−1〜1−nのいずれにもあてはまる。
【0030】
このように、本実施の形態では、制御装置2が受信器1−1〜1−nにおいて受信しようとするキャリアの実際の周波数を正確に測定し、各受信器1−1〜1−nに対して測定された正確な周波数を通知することによって、受信器1−1〜1−nにおいて受信キャリアの正確な周波数に同期することができるため、受信器1−1〜1−nの周波数掃引範囲を狭くしても、受信に失敗することを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、衛星通信に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1−1〜1−n 受信器
2 制御装置
11 位相検波器
12 搬送波再生回路
13 AFC(1)
21 発振器
22 周波数測定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャリア信号を受信するための複数の受信器を備えた受信システムにおいて用いられる自動周波数制御装置であって、
前記マルチキャリア信号に分布する各キャリアの周波数を監視する監視手段と、前記監視手段の監視結果を基に前記複数の受信器が受信するキャリアの正確な中心周波数を設定する設定手段とを有することを特徴とする自動周波数制御装置。
【請求項2】
前記監視手段は、前記受信器に入力されるマルチキャリア信号から、前記受信器が同期しようとするキャリアの実際の正確な周波数を監視することを特徴とする請求項1記載の自動周波数制御装置。
【請求項3】
前記受信器との間で基準とする周波数のずれをなくしておくために、前記基準とする周波数成分をローカル信号を用いて前記受信器各々に通知することを特徴とする請求項1または請求項2記載の自動周波数制御装置。
【請求項4】
上記の請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動周波数制御装置を含むことを特徴とする受信システム。
【請求項5】
マルチキャリア信号を受信するための複数の受信器を備えた受信システムにおいて用いる自動周波数制御方法であって、
制御装置が、前記マルチキャリア信号に分布する各キャリアの周波数を監視する監視処理と、前記監視処理の監視結果を基に前記複数の受信器が受信するキャリアの正確な中心周波数を設定する設定処理とを実行することを特徴とする自動周波数制御方法。
【請求項6】
前記制御装置が、前記監視処理において、前記受信器に入力されるマルチキャリア信号から、前記受信器が同期しようとするキャリアの実際の正確な周波数を監視することを特徴とする請求項5記載の自動周波数制御方法。
【請求項7】
前記制御装置が、前記受信器との間で基準とする周波数のずれをなくしておくために、前記基準とする周波数成分をローカル信号を用いて前記受信器各々に通知することを特徴とする請求項5または請求項6記載の自動周波数制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−253474(P2012−253474A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123007(P2011−123007)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】