説明

自動周波数制御装置、自動周波数制御方法、自動周波数制御プログラムおよび無線通信機

【課題】アナログ信号/デジタル信号のいずれにも適用でき、しかも簡単な回路で実現できる自動周波数制御装置を提供する。
【解決手段】本発明では、周波数検波回路3の出力信号(周波数検波信号Sd)の変動量を検出し、その値が、あらかじめ定めた閾値を超えるとき、安定した周波数制御が困難であると判断して、周波数制御を停止している。具体的には、まず、周波数検波信号Sdの変動成分Sp1を検出する。次に、検出した変動成分Sp1の絶対値信号Sp2を生成し、更に信号Sp2を平滑化した信号Sp3を閾値Stと比較する。そして信号Sp3が閾値Stを超えたときに停止信号Ssを出力して、制御回路5による局部発信信号Soの周波数制御を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジオ受信機等に用いられる自動周波数制御装置、ならびにこの装置を実現する自動周波数制御方法および自動周波数制御プログラムに関し、更にはこの装置を採用した無線通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動周波数制御(以降、「AFC」という)は受信周波数を安定化するための手法であり、受信周波数と送信周波数のずれを検出して、受信周波数を自動的に送信周波数に合わせるものである。AFCでは、通常、ミキサから出力された信号を周波数検波回路で周波数情報に変換し、その周波数情報信号を平滑化した出力で局部発振器の周波数を制御している。
【0003】
ところで、通信中に通信相手との距離が離れることや、障害物あるいはマルチパスフェージング等の影響により無線周波信号の信号強度が著しく低下することがある。受信する無線周波信号の信号強度が低下すると、周波数検波回路から出力される周波数情報にノイズ成分が現れて変動するようになる。そのため、AFCの基準となる周波数情報が変動することによって局部発信器の周波数を変動させ、正常な受信動作を妨げてしまう。
【0004】
このような事態の発生を防止するため、受信信号の強度が低下してAFC動作が不安定になった場合には、受信信号の強度が回復するまでAFC動作を停止させる必要がある。
【0005】
AFC動作を停止させる方法として、特許文献1や特許文献2には、受信信号の強度を所定の閾値と比較し、閾値より小さい場合にAFC動作を停止させる技術が開示されている。また特許文献3には、ビット誤り率を所定の閾値と比較し、閾値より小さい場合にAFC動作を停止させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−102906号公報
【特許文献2】特開2002−271305号公報
【特許文献3】特開平7−297779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に開示されるように、受信信号の強度を用いる方法では、無線通信機に信号強度を検出するための回路が必要となる。無線通信機のなかには、受信信号の強度を表示する、いわゆるSメータを備えるものがある。AFCを停止させる場合の適切な閾値を検出するためには、Sメータに用いられる信号強度検出回路より精度の高い信号検出回路が必要となるため、これらを兼用することはできず、別途、AFC用の信号検出回路を設ける必要がある。そのためコストアップを招くことになる。
【0008】
一方、特許文献3に記載された方法は、変調方式がデジタルの信号を受信する場合を対象としている。そのため、変調方式がアナログの信号を受信する無線通信機には適用できない。
【0009】
本発明は、正常な受信動作を妨げる状況下において、AFC動作を停止させる装置として、簡単な回路で実現でき、しかもアナログ方式/デジタル方式のいずれの信号を受信する場合にも適用できるAFC装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明にかかるAFC装置は、
局部発振信号を発生する局部発振器と、無線周波信号と前記局部発振信号とを乗算することで前記無線周波信号を周波数変換する第1のミキサと、前記周波数変換された信号を周波数検波する周波数検波回路と、前記周波数検波回路の出力に基づいて前記局部発信器の発振周波数を制御する制御回路と、前記制御回路による発振周波数制御動作を停止する周波数制御停止回路とを備えたAFC装置であって、
前記周波数制御停止回路は、
前記周波数検波回路の出力の変動量を検出する変動量検出手段と、
前記変動量を所定の閾値と比較する比較手段とを備え、
前記変動量が前記閾値を超えたとき前記制御回路による発振周波数制御動作を停止することを特徴とする。
【0011】
ここで、前記周波数検波回路と前記制御回路との間に、前記周波数検波回路の出力信号から変調成分を除去するローパスフィルタを接続することが好ましい。
【0012】
また前記変動量検出手段は、
前記周波数検波回路の出力を微分する微分回路と、
前記微分回路の出力の絶対値を出力する絶対値回路と、
前記絶対値回路の出力を平滑化する平滑回路と、を備えることが好ましい。
【0013】
もしくは前記変動量検出手段は、
前記周波数検波回路の出力の差分を検出する差分検出回路と、
前記差分検出回路の出力の絶対値を出力する絶対値回路と、
前記絶対値回路の出力を平滑化する平滑フィルタと、を備えることが好ましい。
【0014】
本発明にかかるAFC装置において、前記ミキサは、前記無線周波信号の周波数を、中間周波数に変換するものであってもよい。
【0015】
本発明にかかるAFC装置において、
前記局部発振器の出力を90度移相する90度移相器と、
前記無線周波信号と前記90度移相器から出力された発振信号とを乗算する第2のミキサと、を更に備え、
前記第1および第2のミキサは、前記無線周波信号を、位相が互いに直交する2つのベースバンド信号に周波数変換し、
前記周波数検波回路は、前記2つのベースバンド信号に基づいて周波数検波を行うものであってもよい。
【0016】
更に本発明にかかるAFC方法は、無線周波信号を周波数変換する局部発信器の発振周波数を、前記周波数変換信号を周波数検波した信号に基づいて制御するAFC方法であって、
前記周波数検波信号の変動量を検出し、
前記変動量を所定の閾値と比較し、
前記変動量が前記閾値を超えたとき前記局部発信器の発振周波数制御動作を停止することを特徴とする。
【0017】
本発明にかかるAFCプログラムは、無線周波信号を周波数変換する局部発信器の発振周波数を、前記周波数変換信号を周波数検波した信号に基づいて制御する際に用いるAFCプログラムであって、
情報処理装置に、
前記周波数検波信号の変動量を検出するステップと、
前記変動量を所定の閾値と比較するステップと、
前記変動量が前記閾値を超えたとき前記局部発信器の発振周波数制御動作を停止するステップと、を実行させることを特徴とする。
【0018】
本発明にかかる無線通信機は、上述したいずれかのAFC装置と、
アンテナで受信した電波から前記無線周波信号を抽出する受信回路と、
前記周波数変換された信号を音声周波信号に変換する復調回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるAFC装置は、正常な受信動作を妨げてしまうような状態において、AFC動作を停止させる際の目安となる信号を、AFCの制御動作の基準となる周波数検波回路の出力信号から直接求めているため、精度の高い停止動作が可能となる。
【0020】
また本発明にかかるAFC装置は、簡単な回路で実現できるため、携帯式の小型の無線機にも適用でき、コスト面で優れている。またアナログ方式/デジタル方式のいずれの信号を受信する場合にも適用できる。更にデジタル回路で実現する場合、少ない演算量で済む利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるAFC装置を採用したスーパーヘテロダイン方式の受信機の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態2にかかるAFC装置のうち周波数制御停止回路の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態3にかかるAFC装置を採用したダイレクトコンバージョン方式の受信機の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の各実施の形態にかかるAFC装置について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(実施の形態1)
第1の実施の形態として、スーパーヘテロダイン方式の受信機(無線通信機)に本発明にかかるAFC装置を適用した場合について説明する。図1に、本実施の形態にかかるAFC装置を含む受信機の構成を示す。AFC装置1は、ミキサ2、周波数検波回路3、ローパスフィルタ(以降、「LPF」という)4、制御回路5、局部発振器6および周波数制御停止回路7で構成されている。
【0024】
<AFC装置の構成と動作>
受信回路8は、図示しないアンテナで受信した電波から無線周波信号Srを抽出してミキサ2に伝送する。ミキサ2は、入力した無線周波信号Srを、局部発振器6から出力される局部発振信号Soと混合して中間周波信号Siに変換する。中間周波信号Siは、復調回路9で音声周波信号Saに変換された後、図示しないスピーカから音声として再生される。
【0025】
ミキサ2から出力された中間周波信号Siは、周波数検波回路3に入力される。周波数検波回路3は、検波出力として中間周波信号Siの周波数の高低に比例した電圧を出力する。
【0026】
周波数検波回路3から出力された周波数検波信号SdはLPF4に入力される。LPF4は、変調成分を除去するために、周波数検波信号Sdから高域周波数成分を取り除いた周波数情報信号Sxを出力する。
【0027】
無線周波信号Srの変調方式がAMの場合にはLPF4はなくても構わない。無線周波信号Srの変調方式がFMやFSKなどの場合には、周波数検波信号Sdから受信信号の変調成分を除去するために、遮断周波数が十分低いLPF4を介して周波数情報信号Sxを得る。なお、無線周波信号Srの変調方式がFMもしくはFSKなどの場合であっても、周波数検波信号Sdに受信信号の変調成分が現れないような周波数検波回路を用いた場合、LPF4は不要である。
【0028】
周波数情報信号Sxは、制御回路5に入力される。制御回路5は、入力された周波数情報信号Sxに基づいて周波数制御信号Scを生成し、その信号を局部発振器6に供給する。
【0029】
局部発振器6は、周波数制御信号Scに基づいて、受信した無線周波信号Srの周波数に追従した中間周波信号Siが出力されるように制御される。局部発振器6は、例えばPLL(Phase Lock loop)回路で構成される。
【0030】
受信信号が正常である場合、周波数検波信号Sd、および周波数検波信号Sdから変調成分を除去した周波数情報信号Sxは、ほぼ一定値を保っている。しかし、正常な受信を妨げるような場合、周波数検波信号Sdおよび周波数情報信号Sxは変動してしまう。周波数制御停止回路7は、LPF4から出力された周波数情報信号Sxの変動量から、周波数制御信号Scによる局部発振器6の制御によって、正常な受信動作を妨げる状態であるか否かを判断し、正常な受信動作を妨げると判断した場合、制御回路5に対して停止信号Ssを出力する。
【0031】
制御回路5は、周波数制御停止回路7から停止信号Ssを受信したとき、周波数制御信号Scの出力を停止する。なお、周波数制御停止回路7の構成と動作については、後に詳述する。
【0032】
次に、AFC装置1の動作を説明する。ミキサ2から出力された中間周波信号Siは、周波数検波回路3において、受信した無線周波信号Srの周波数に比例した電圧値に変換される(周波数検波信号Sd)。
【0033】
周波数検波信号Sdに無線周波信号Srの変調成分が含まれる場合は、LPF4で変調成分を除去して得られる周波数情報信号Sxが制御回路5に入力される。制御回路5は、周波数情報信号Sxの値に基づいた周波数制御信号Scを生成する。
【0034】
局部発振器6は、制御回路5から送信された周波数制御信号Scに基づいて局部発振信号Soの周波数を補正し、ミキサ2に出力する。
【0035】
発振周波数の補正された局部発振信号Soは、ミキサ2において無線周波信号Srと乗算され、受信した無線周波信号Srの周波数に追従した周波数の中間周波信号Siが出力される。
【0036】
<周波数制御停止回路の構成と動作>
次に、周波数制御停止回路7の構成と動作について説明する。最初に、周波数制御停止回路7の機能について説明する。
【0037】
通信中に通信相手との距離が離れることや、障害物あるいはマルチパスフェージング等の影響により、無線周波信号Srの信号強度が著しく低下する場合がある。受信した無線周波信号Srの信号強度が小さくなると、周波数制御信号Scを生成するための基である周波数検波回路3の出力にノイズ成分が含まれ、その変動量が大きくなる。
【0038】
このような場合、周波数検波回路3から出力される周波数検波信号Sdが不安定になる。またLPF4を介しても除去されるのは無線周波信号Srの変調成分であるため、周波数情報信号Sxも不安定になる。制御回路5において、この不安定な周波数検波信号Sdまたは周波数情報信号Sxを基に周波数制御信号Scを生成し、局部発振器6の発振周波数を制御すると、受信周波数が不安定に変動する。従って、このような事態が発生した場合には、AFC装置1による周波数制御を一時的に停止させる必要がある。
【0039】
本発明は、周波数検波回路3の出力信号である周波数検波信号Sd、または周波数検波信号Sdから無線周波信号Srの変調成分を除去して得られる周波数情報信号Sxの変動量が、受信信号の強度と反比例する形で増大する性質を利用して、AFC装置による周波数制御を一時的に停止するようにしたものである。すなわち本発明は、周波数検波信号Sdまたは周波数情報信号Sxの変動量を検出し、その値が、あらかじめ定めた閾値を超えたとき、安定した周波数制御が困難であると判断して、周波数制御を停止する。
【0040】
次に、図1のブロック図に基づき、周波数制御停止回路7の構成と動作を説明する。周波数制御停止回路7は、微分回路71、絶対値回路72、平滑回路73および比較回路74で構成されている。
【0041】
なお、周波数制御停止回路7の構成要素のうち、微分回路71(更に加えて、絶対値回路72および平滑回路73)は本発明の変動量検出手段を構成し、比較回路74は本発明の比較手段を構成する。
【0042】
LPF4から出力された周波数情報信号Sxは、微分回路71で微分される。周波数検波回路3で検出された周波数情報信号Sxが一定値を保っている場合は、微分回路71の出力はゼロになる。しかし、不安定に変動している場合は微分回路71の出力信号Sp1に変動成分が現れる。
【0043】
信号Sp1は絶対値回路72に入力され、信号Sp1の絶対値を表す信号Sp2が出力される。
【0044】
信号Sp2は平滑回路73に入力され、平滑回路73から周波数情報信号Sxの変動量に比例した値が信号Sp3として出力される。
【0045】
信号Sp3は比較回路74に入力され、あらかじめ設定された閾値電圧Stと電圧値が比較され、信号Sp3が閾値電圧Stを超えたときに停止信号Ssを出力する。
【0046】
停止信号Ssが制御回路5に送信されると、制御回路5は周波数制御を停止する。周波数制御を停止させる際の方法としては、局部発振器6から出力される局部発振信号Soの周波数を、周波数制御を停止する直前の周波数、すなわち停止信号Ssが出力される直前の周波数のまま保持する方法や、局部発振信号Soの周波数を、初期の周波数にゆっくりと戻す方法などがある。
【0047】
制御回路5は、周波数制御信号Scの代わりに、これらのいずれかの方法を実現するための信号を生成し、局部発振器6に出力する。なお、信号Sp3の値が閾値電圧Stより小さくなると、停止信号Ssは解除され、制御回路5による周波数制御が再開される。
【0048】
以上説明したように本発明のAFC装置は、AFCの制御信号を生成するための基である周波数検波回路3の出力信号(周波数検波信号Sdまたは周波数情報信号Sx)の変動量を直接判断して(換言すれば、周波数検波回路3の安定度を直接判断して)停止信号Ssを生成しているため、AFC動作を停止する基準が正確である。
【0049】
また周波数制御停止回路7は、簡単な回路の組み合わせによって実現できるため、コスト面で優れている。更に、本発明のAFC装置は、無線周波信号Srによって搬送される信号がアナログ信号またはデジタル信号のいずれであっても適用できる。
【0050】
なお、本実施の形態では、周波数制御停止回路7を、微分回路71、絶対値回路72、平滑回路73および比較回路74で構成したが、これに限定されない。例えば、絶対値回路72の代わりに、全波整流回路や半波整流回路、2乗回路を用いてもよい。
【0051】
(実施の形態2)
実施の形態1では、周波数制御停止回路7をアナログ回路で構成した場合について説明した。本実施の形態では、周波数制御停止回路7をデジタル回路で構成した場合について説明する。
【0052】
図2に、周波数制御停止回路7の構成を示す。周波数制御停止回路7は、差分検出回路75、絶対値回路76、平滑フィルタ77およびコンパレータ78で構成されている。
【0053】
なお、周波数制御停止回路7の構成要素のうち、差分検出回路75(更に加えて絶対値回路76および平滑フィルタ77)は本発明の変動量検出手段を構成し、コンパレータ78は本発明の比較手段を構成する。
【0054】
差分検出回路75は、図1の微分回路71と同様の機能を実現するもので、周波数情報信号Sxから、その変動成分を示す信号Sp1を出力する。例えば、周波数情報信号Sxと、一定時間だけ遅延させた周波数情報信号Sxとの差分を求めることにより、周波数情報信号Sxの変動成分を示す信号Sp1を得ることができる。
【0055】
絶対値回路76は、図1の絶対値回路72と同様の機能を実現するもので、差分検出回路75の出力信号Sp1の絶対値である信号Sp2を出力する。なお、差分検出回路75と絶対値回路76は、周波数情報信号Sxを遅延させる遅延回路と差分絶対値回路で構成することもできる。
【0056】
平滑フィルタ77は、図1の平滑回路73と同様に、絶対値回路76から出力された信号Sp2を平滑化した信号Sp3を出力する。平滑フィルタ77から出力される信号Sp3は、周波数情報信号Sxの変動量に比例した値である。
【0057】
コンパレータ78は、図1の比較回路74と同様の機能を実現するもので、平滑フィルタ77の出力信号Sp3の電圧値を、あらかじめ設定された閾値電圧Stと比較し、信号Sp3の値が閾値Stを超えたときに停止信号Ssを出力する。停止信号Ssが制御回路5に送信されると、制御回路5は周波数制御を停止する。
【0058】
上述したように、本実施の形態では、周波数制御停止回路7の機能をデジタル回路で構成している。無線周波信号Srがデジタル方式の場合には、復調回路9はデジタル回路で実現することになるので、周波数制御停止回路7を含むAFC回路1をデジタル回路で実現した方が、全体の構成としてまとまりがよい。
【0059】
なお、本実施の形態では、周波数制御停止回路7を、差分検出回路75、絶対値回路76、平滑フィルタ77およびコンパレータ78で構成したが、これに限定されない。例えば、絶対値回路76の代わりに2乗回路を用いることができる。
【0060】
また本実施の形態で説明したデジタル回路で構成される周波数制御停止回路7は、FPGA(Field Programmable Gate Array)を備えた受信機においては、FPGAを用いて実現することができる。また、周波数制御停止回路7を構成するそれぞれの回路を、マイクロプロセッサやDSP(Digital Signal Processor)などの情報処理装置で構成し、プログラムを実行することによって、その機能を実現させることも可能である。
【0061】
これらの場合、周波数制御停止回路7のために、別途のアナログ信号処理ハードウェアまたはデジタル信号処理ハードウェアが不要である。また、ソフトウェア処理によってその機能を実現させる場合、差分演算、絶対値演算、比較演算といった少ない演算量、かつ負荷が少ない演算処理のみで停止信号Ssを生成することができる。
【0062】
(実施の形態3)
実施の形態1および実施の形態2においては、本発明にかかるAFC装置をスーパーヘテロダイン方式の受信機に適用した場合について説明した。本実施の形態では、本発明にかかるAFC装置をダイレクトコンバージェン方式の受信機(無線通信機)に適用した場合について説明する。
【0063】
図3に、本実施の形態にかかるAFC装置1aを含む受信機の構成を示す。AFC回路1aは、ミキサ2aおよび2b、周波数検波回路3a、LPF4、制御回路5、局部発振器6、90度移相器10ならびに周波数制御停止回路7で構成される。
【0064】
図中、図1のブロックと同一機能を有するブロックには同一の符号を付している。またミキサ2aおよび2b、周波数検波回路3a、ならびに復調回路9aは、それぞれ図1のミキサ2、周波数検波回路3、ならびに復調回路9とほぼ同様の機能を有する。以下、AFC装置1aの構成と動作を説明する。
【0065】
90度移相器10は、局部発振器6から出力される局部発振信号Soを入力として、位相差0度の発振信号SoIと位相差90度の発振信号SoQとを出力する。
【0066】
ミキサ2aは、受信回路8から出力された無線周波信号Srを発振信号SoIと混合することでベースバンド信号Iに周波数変換する。ミキサ2bは、無線周波信号Srを発振信号SoQと混合することでベースバンド信号Qに周波数変換する。ベースバンド信号IおよびQは互いに直交する、すなわち位相が90度ずれている。
【0067】
ベースバンド信号IおよびQは、復調回路9で音声周波信号Saに変換された後、図示しないスピーカから音声として再生される。
【0068】
またミキサ2aおよび2bから出力されたベースバンド信号IおよびQは、周波数検波回路3aに入力される。周波数検波回路3aは、検波出力として無線周波信号Srと局部発振信号Soとの周波数の差に比例した電圧値(周波数検波信号Sd)を出力する。これに含まれる変調成分をLPF4で取り除き、周波数情報信号Sxを出力する。
【0069】
周波数情報信号Sxは、制御回路5に入力される。制御回路5は、入力された周波数情報信号Sxに基づいて周波数制御信号Scを生成し、その信号を局部発信器6に供給する。
【0070】
局部発振器6は、周波数制御信号Scに基づいて、受信した無線周波信号Srの周波数に追従したベースバンド信号IおよびQが出力されるように制御される。局部発振器6は、例えばPLL回路で構成される。
【0071】
周波数制御停止回路7は、LPF4から出力された周波数情報信号Sxの変動量から、周波数制御信号Scによる局部発振器6の制御によって、正常な受信動作を妨げる状態であるか否かを判断し、正常な受信動作を妨げると判断した場合、制御回路5に対して停止信号Ssを出力する。
【0072】
制御回路5は、周波数制御停止回路7から停止信号Ssを受信したとき、周波数制御信号Scの出力を停止する。なお、周波数制御停止回路7の構成と動作については、実施の形態1および2で詳細に説明したため、ここでは説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明にかかるAFC装置は、アナログ信号/デジタル信号の如何を問わず、無線周波信号を受信する無線通信機に広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0074】
1、1a AFC装置
2、2a、2b ミキサ
3、3a 周波数検波回路
4 LPF
5 制御回路
6 局部発振器
7 周波数制御停止回路
8 受信回路
9、9a 復調回路
71 微分回路
72、76 絶対値回路
73 平滑回路
74 比較回路
75 差分検出回路
77 平滑フィルタ
78 コンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部発振信号を発生する局部発振器と、無線周波信号と前記局部発振信号とを乗算することで前記無線周波信号を周波数変換する第1のミキサと、前記周波数変換された信号を周波数検波する周波数検波回路と、前記周波数検波回路の出力に基づいて前記局部発信器の発振周波数を制御する制御回路と、前記制御回路による発振周波数制御動作を停止する周波数制御停止回路とを備えた自動周波数制御装置であって、
前記周波数制御停止回路は、
前記周波数検波回路の出力の変動量を検出する変動量検出手段と、
前記変動量を所定の閾値と比較する比較手段とを備え、
前記変動量が前記閾値を超えたとき前記制御回路による発振周波数制御動作を停止することを特徴とする自動周波数制御装置。
【請求項2】
前記周波数検波回路と前記制御回路との間に、前記周波数検波回路の出力信号から変調成分を除去するローパスフィルタを接続することを特徴とする、請求項1に記載の自動周波数制御装置。
【請求項3】
前記変動量検出手段は、
前記周波数検波回路の出力を微分する微分回路と、
前記微分回路の出力の絶対値を出力する絶対値回路と、
前記絶対値回路の出力を平滑化する平滑回路と、
を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動周波数制御装置。
【請求項4】
前記変動量検出手段は、
前記周波数検波回路の出力の差分を検出する差分検出回路と、
前記差分検出回路の出力の絶対値を出力する絶対値回路と、
前記絶対値回路の出力を平滑化する平滑フィルタと、
を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動周波数制御装置。
【請求項5】
前記ミキサは、前記無線周波信号の周波数を、中間周波数に変換することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の自動周波数制御装置。
【請求項6】
前記局部発振器の出力を90度移相する90度移相器と、
前記無線周波信号と前記90度移相器から出力された発振信号とを乗算する第2のミキサと、を更に備え、
前記第1および第2のミキサは、前記無線周波信号を、位相が互いに直交する2つのベースバンド信号に周波数変換し、
前記周波数検波回路は、前記2つのベースバンド信号に基づいて周波数検波を行うことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の自動周波数制御装置。
【請求項7】
無線周波信号を周波数変換する局部発信器の発振周波数を、前記周波数変換信号を周波数検波した信号に基づいて制御する自動周波数制御方法であって、
前記周波数検波信号の変動量を検出し、
前記変動量を所定の閾値と比較し、
前記変動量が前記閾値を超えたとき前記局部発信器の発振周波数制御動作を停止することを特徴とする自動周波数制御方法。
【請求項8】
無線周波信号を周波数変換する局部発信器の発振周波数を、前記周波数変換信号を周波数検波した信号に基づいて制御する際に用いる自動周波数制御プログラムであって、
情報処理装置に、
前記周波数検波信号の変動量を検出するステップと、
前記変動量を所定の閾値と比較するステップと、
前記変動量が前記閾値を超えたとき前記局部発信器の発振周波数制御動作を停止するステップと、
を実行させることを特徴とする自動周波数制御プログラム。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれかに記載の自動周波数制御装置と、
アンテナで受信した電波から前記無線周波信号を抽出する受信回路と、
前記周波数変換された信号を音声周波信号に変換する復調回路と、を備えることを特徴とする無線通信機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−166462(P2011−166462A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27178(P2010−27178)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】