説明

自動変速機の変速操作装置

【課題】コントロール軸を利用してオイルレベルを検出できると共に、コントロール軸に対してディテントプレートを簡単に回り止めして装着できる自動変速機の変速操作装置を提供する。
【解決手段】コントロール軸10は中空構造とされ、コントロール軸の中空部に、下端を変速機ケース1内の油面に接触可能とされたレベルゲージ13が挿入されている。コントロール軸10の長さ方向中間部には、軸方向と平行な2面を持つ二面幅部11bが形成されている。ディテントプレート40には二面幅部が挿通される貫通穴41aを持つボス部41が設けられ、このボス部にディテントプレートを二面幅部11bに対して位相を合わせて回り止めするためのクリップ42が装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動変速機の変速操作装置、特に変速機ケースに対してコントロール軸が鉛直又は略鉛直方向に挿入された構造の変速操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、無段変速機の変速機ケースに対してコントロール軸が鉛直方向に挿入され、変速機ケースの外部に突出したコントロール軸の上端部にシフト装置と連結されたアウタレバーが取り付けられ、変速機ケースの内部に挿入されたコントロール軸の下端部にマニュアルバルブを操作するためのインナレバーが取り付けられた変速操作装置が知られている。変速機ケースの内部に挿入されたコントロール軸の長さ方向中間部には、ディテントプレートが連結ピンによってアウタレバー及びインナレバーと位相を揃えて取り付けられている。ディテントプレートは、コントロール軸の回転操作時の節度感を得るためのものであり、外周部には複数の溝が形成されている。変速機ケースの内部にはバネ部材が固定されており、このバネ部材の先端部がディテントプレートの溝に嵌合することにより、P、R、N、D等の各レンジ位置を設定できる。なお、ディテントプレートには、パーキングロック用のカムを操作するパーキングロッドも連結されている。
【0003】
一方、特許文献2には、自動変速機のオイルレベル検出装置が開示されている。このオイルレベル検出装置は、中空構造のコントロール軸を変速機ケースに対して鉛直方向に配設し、コントロール軸の中空部にレベルゲージを挿入し、その先端を変速機ケース内の油面に接触させた後、引き抜くことで、油の付着状態からオイル面を検出するものである。この場合には、コントロール軸をレベルゲージの挿入用チューブとして兼用できるので、挿入用チューブを別途設ける必要がなく、小型化とコスト低減とを達成できる利点がある。
【0004】
特許文献1に記載のような変速操作装置において、特許文献2と同様にコントロール軸を中空構造とすれば、コントロール軸をレベルゲージ挿入用チューブとして兼用できる。しかし、特許文献1では、ディテントプレートをコントロール軸に固定するために、直径方向に連結ピンを嵌入しているため、中空構造のコントロール軸には適用できない。なぜなら、連結ピンがレベルゲージの挿入の障害になるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−270978号公報
【特許文献2】実開平3−26864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、コントロール軸を利用してオイルレベルを検出できると共に、コントロール軸に対してディテントプレートを位相を揃えた状態で装着できる自動変速機の変速操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、変速機ケースに対してコントロール軸が鉛直又は略鉛直方向に挿入され、前記変速機ケースの外部に突出した前記コントロール軸の一端部にシフト装置と連結されたアウタレバーが取り付けられ、前記変速機ケースの内部に挿入された前記コントロール軸の他端部にマニュアルバルブを操作するためのインナレバーが取り付けられ、前記変速機ケースの内部に挿入された前記コントロール軸の長さ方向中間部にディテントプレートが取り付けられた、自動変速機の変速操作装置において、前記コントロール軸は中空構造とされ、前記コントロール軸の中空部に、下端を変速機ケース内の油面に接触可能とされたレベルゲージが挿入されており、前記ディテントプレートが取り付けられる前記コントロール軸の外周に、軸方向と平行な2面を持つ二面幅部が形成され、前記ディテントプレートに前記二面幅部が挿通される貫通穴を持つボス部が形成され、前記ディテントプレートのボス部に、前記ディテントプレートを前記二面幅部に対して位相を合わせて回り止めするためのクリップが装着されていることを特徴とする自動変速機の変速操作装置を提供する。
【0008】
本発明では、コントロール軸が中空構造とされているので、コントロール軸をレベルゲージ挿入用チューブとして兼用できる。しかし、コントロール軸が中空のため、ディテントプレートをコントロール軸に装着するために、直径方向に連結ピンを嵌入する方法では、連結ピンがレベルゲージの挿入の邪魔になる。そこで、本発明では、コントロール軸に軸方向と平行な2面を持つ二面幅部を形成し、ディテントプレートに二面幅部が挿通される貫通穴を持つボス部を形成し、ボス部の外周にディテントプレートを二面幅部に対して位相を合わせるためのクリップを装着したものである。このように連結ピンを使用せずにディテントプレートをコントロール軸に回り止めできるので、コントロール軸の中にレベルゲージを円滑に挿入できる。
【0009】
ボス部及びクリップの具体的構造は任意である。例えば、ボス部を一方側が開口した断面略コ字形又はU字形とし、ボス部の外周平面部に弾性的に係合する外側腕片と、ボス部の内部に挿入され二面幅部の平面に当接する内側腕片とを形成したクリップを使用してもよい。この場合には、クリップの外側腕片をボス部の外周平面部に係合させた段階で内側腕片が二面幅部に当接して回り止めするため、ボス部をコントロール軸に対して位相を揃えた状態で組み付けることができ、かつコントロール軸に作用する回転操作力をディテントプレートに確実に伝達できる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、コントロール軸が中空構造とされているので、コントロール軸を利用してオイルレベルを検出できると共に、コントロール軸の二面幅部にクリップを用いてディテントプレートを位相を合わせた状態で装着できる。また、クリップがコントロール軸を貫通しないので、コントロール軸の中に挿入されるレベルゲージの邪魔にならない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る変速操作装置を備えた自動変速機の一部の縦断面図である。
【図2】コントロール軸にレベルゲージを挿入した状態の縦断面図、B−B、C−C、D−D、E−E、F−Fの各断面図である。
【図3】キャップの装着構造の例を示す図である。
【図4】本発明に係る変速操作装置を構成する部品の分解図である。
【図5】変速機ケースの上側からみた変速操作装置の平面図である。
【図6】ディテントプレートの取付構造を示す斜視図である。
【図7】ディテントプレートのボス部材の正面図、左側面図、中央断面図である。
【図8】クリップの平面図、正面図、左側面図である。
【図9】ボス部材にクリップを装着した状態の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る変速操作装置を備えた無段変速機(CVT)の一例を示す。なお、ここではベルト式の無段変速機の変速操作装置を例にして説明するが、有段式の自動変速機(AT)の変速操作装置であってもよいことは勿論である。したがって、本発明における「自動変速機」とは、有段式のATのほかCVTも含むものである。
【0013】
変速操作装置のコントロール軸10は、図1に示すように、変速機ケース1に対して鉛直方向に挿入されている。ここで、鉛直方向とは厳密な鉛直である必要はなく、オイルレベルを検出でき、かつ変速操作に支障のない範囲であれば、傾いていてもよい。変速機ケース1には、複数の挿通穴2〜4が上方から順に間隔をあけて一列に形成されており、コントロール軸10はこれら挿通穴2〜4に回転自在に挿通されている。外側端の挿通穴2にはオイルシール5が装着され、外部からの水分やゴミ等の侵入を防止している。
【0014】
変速機ケース1の外部に突出したコントロール軸10の上端部には、シフト装置と連結されたアウタレバー20が固定されている。シフト装置は運転席に設けられたセレクトレバー(図示せず)を備えており、セレクトレバーをP、R、N、Dなどにシフト操作すると、コントロール軸10が追随して回転する。変速機ケース1の内部に挿入されたコントロール軸10の下端部には、マニュアルバルブ32を操作するためのインナレバー30が固定されている。変速機ケース1の内部に挿入されたコントロール軸10の長さ方向中間部には、後述するようにディテントプレート40がアウタレバー20及びインナレバー30と位相を合わせた状態で取り付けられている。
【0015】
図2の(a)に示すように、この実施例のコントロール軸10は、金属パイプ11の上端に金属製スリーブ12を溶接、ろう付け、カシメなどにより結合したものであり、コントロール軸10は全体として中空構造とされている。スリーブ12の上端には雄ねじ部12aが形成され、中間部に二面幅部12bが形成され(図2の(b)参照)、下端部12cがパイプ11の上端に嵌着固定されている(図2の(c)参照)。パイプ11の上端には円筒状の大径部11aが形成され、その下側には、所定長さL1に亘って長円形断面を持つ二面幅部11bが絞り加工されている(図2の(d)参照)。なお、二面幅部11bの断面形状は長円形に限るものではなく、2つの平行な平面があればよい。この二面幅部11bにディテントプレート40が装着される。二面幅部11bの平面部には、対向位置に位置決め穴11cが形成されている。二面幅部11bの下側には、二面幅部11bの短軸と同径の小径部11dが絞り加工されている(図2の(e)参照)。小径部11dは所定長さL2に亘って形成されており、その下端位置に大径部11eが形成されている。この大径部11eは上端の大径部11aと同一径に形成されており、この大径部11eには空気穴11fが形成されている。大径部11eを形成した理由は、変速機ケース1の挿通穴4との間のガタを抑制し、表面張力でコントロール軸10内の油面が上昇するのを抑制することである。空気穴11fを設けた理由は、コントロール軸10の内部を大気に開放し、内外の油面差を無くすためである。
【0016】
大径部11eの下端位置にインナレバー30が固定されている。ここでは、コントロール軸11の大径部11eの下部に二面幅部を形成し、この二面幅部をインナレバー30の長円形の挿通穴に挿通した後、カシメ固定したものであるが、インナーレバー30をコントロール軸10に対してロウ付け、溶接、ナット締結などの他の方法によって固定してもよく、インナーレバー30がコントロール軸10に対して所定の位相で固定できればよい。インナレバー30の先端部には、図2に示すようにピン31が下方に向けて突設されており、このピン31がマニュアルバルブ32の溝に係合し、コントロール軸10の回転に伴ってマニュアルバルブ32を軸方向に移動させることができる。コントロール軸10には、インナレバー30の固定位置からさらに下方へ延びるガイド部11gが形成されている。このガイド部11gの断面は二面幅形状とされているが、小径部11dと同様な円筒状であってもよい。なお、コントロール軸10の各部の断面形状は、図2(b)〜(f)のような形状に限るものではなく、ディテントプレート40が装着される長さ方向中間部に二面幅部11bが形成されておれば、他の部分の断面形状は任意である。
【0017】
コントロール軸10の中空部には、下端を変速機ケース1内の油面に接触可能とされたレベルゲージ13が挿入されている。レベルゲージ13は1本の金属棒で形成されており、上端には円弧状の把手部13aが形成されている。把手部13aの近傍位置には、ゴム製のキャップ14が回転可能に挿通されている。このキャップ14の内周には雌ねじ14aが形成され、キャップ14を回して雌ねじ14aをコントロール軸10の上端の雄ねじ部12aに螺合させることにより、コントロール軸10の上端開口を閉じることができる。なお、キャップ14を緩み止めするために、図3の(a)のように、板ばね15をナット21とアウタレバー20との間に介装し、この板ばね15のばね押え部15aでキャップ14の上面を押えるようにしてもよい。また、図3の(b)のように、レベルゲージ13の外周にOリング16を装着し、そのOリング16をスリーブ12の内面に圧接させることで、コントロール軸10の内部にゴミや水分が侵入するのを防止できる。その他、図3の(c)のように、キャップ14の内側にテーパ状の凸部14bを形成し、この凸部をスリーブ12の上端開口に押し込んで封止してもよいし、図3の(d)のように、キャップ14の内側に雌ねじに代えて周状突起14cを形成すると共に、テーパ状の凸部14bを形成し、周状突起14cをコントロール軸10の雄ねじ部12aに嵌め込み、凸部14bをスリーブ12の上端開口に押し込んで封止してもよい。
【0018】
コントロール軸10に挿入されるレベルゲージ13の挿入部分13bは、図2の(b)〜(f)のように断面が偏平に加工されている。レベルゲージ13はコントロール軸10の軸長より長く形成されており、その先端がコントロール軸10のガイド部11gから下方へ突出している。レベルゲージ13の先端部には、所定間隔置きにオイルレベル検出用の複数のマーカー13c〜13eが形成されている。オイルレベルは、図1にOL1、OL2、OL3として示されており、上端のマーカー13cがHOT−UPPER(温間時の上限オイルレベルOL1)、中間のマーカー13dがHOT−LOWER(温間時の下限オイルレベルOL2)、下端のマーカー13eがCOLD(冷間時の下限オイルレベルOL3)と対応している。レベルゲージ13の長さ方向中間部にはゴムブッシュ等の緩衝部材17が固着されている。この緩衝部材17をコントロール軸10の小径部11dに内接させることにより、レベルゲージ13の振れを抑制し、コントロール軸10との干渉音を防止できる。なお、緩衝部材17は必要に応じて設けられるものであり、省略可能である。緩衝部材17に対応してコントロール軸10の小径部11dに環状の膨出部11hを形成してもよい。この場合には、緩衝部材17が膨出部11hを乗り越える際の節度感によって挿入の停止位置を確認できる。
【0019】
この実施例では、コントロール軸10のガイド部11gが二面幅部11bと同一形状とされており、二面幅部11bの平面方向が、レベルゲージ13の偏平な挿入部分13bの平面方向と平行になるように設定されている(図2の(f)参照)。そのため、ガイド部11gの内壁とレベルゲージ13との隙間が小さく、レベルゲージ13の先端13bが走行中に振れても、干渉音を抑制できる。
【0020】
コントロール軸10は、図4に示すように、下方からディテントプレート40、オイルシール5、ニュートラルスタートスイッチ(NSS)、アウタレバー20に順次挿入され、上端にナット21が螺着される。ディテントプレート40は大径部11aを通過して二面幅部11bに挿通され、後述するクリップ42によって装着される。NSSは、コントロール軸10のスリーブ12に形成された二面幅部12bに位相合わせした状態で嵌合される。その後、図5のように、NSSを変速機ケース1の上面にボルト6によって締結することで、NSSは固定される。アウタレバー20はコントロール軸10の二面幅部12bに所定位相方向に向けて嵌合され、雄ねじ部12aにナット21を螺着することにより、コントロール軸10に固定される。
【0021】
ここで、コントロール軸10とディテントプレート40との取付構造を詳しく説明する。図6に示すように、ディテントプレート40の外周には複数の溝40aが形成されており、これら溝にディテントスプリング43(図1参照)が嵌合することで、P、R、N、D等の各レンジ位置で節度感を得ることができる。ディテントプレート40には、パーキングロッド44の一端部が枢着される穴40bが形成されている。パーキングロッド44の他端部には、パーキングロック装置46を操作するためのカム45(図1参照)が固定されている。パーキングロック装置46の構成は、特許文献1に記載の通りであるため、ここでは省略する。
【0022】
ディテントプレート40の回転中心部には、図7に示すボス部材41が固着されている。この実施例のボス部材41はディテントプレート40と別体に形成されたものであるが、ディテントプレート40と一体成形されたものでもよい。ボス部材41の中心には、コントロール軸10の最大径部でも挿通できる円形の貫通穴41aが形成されている。ボス部材41の上端と下端にそれぞれフランジ部41b,41cが設けられ、上側のフランジ部41bがディテントプレート40に固着されている。上下のフランジ部41b,41c間には、一側方へ開口した断面略コ字形又はU字形の胴部41dが形成されている。胴部41dの外周には2つの平行な平面部41eが形成されている。
【0023】
ボス部材41の胴部41dの外周には、その開口側からクリップ42が装着されている。クリップ42は金属、樹脂などにより一体成形されたものであり、図8に示すように、胴部41dの平面部41eに当接する一対の外側腕片42aと、胴部41dの中に挿入され、コントロール軸10の二面幅部11bの両平面に当接する一対の内側腕片42cとが一体に形成されている。なお、外側腕片42aは、自由状態において図8の(b)に示す状態よりも内側に傾斜していてもよい。外側腕片42aの先端には、胴部41dの背面側に係止される内爪42bが形成されている。外側腕片42aには、必要に応じて型抜き用の開口穴42eが形成されている。好適には、内側腕片42cの内面には二面幅部11bの位置決め穴11cに嵌合される小突起42dが形成されている。
【0024】
前述のように、コントロール軸10をディテントプレート40のボス部材41の貫通穴41aに挿通し、ディテントプレート40の向きをインナレバー30の向きと合わせた状態で、ボス部材41の開口部側からクリップ42を装着する。具体的には、コントロール軸10の二面幅部11bの平面部がボス部材41の平面部41eと平行になる状態で、クリップ42を装着する。そのため、図9に示すように、外側腕片42aが胴部41dの平面部41eに当接すると共に、内爪42bが胴部41dの背面側に係合する。同時に、内側腕片42cがコントロール軸10の二面幅部11bの両平面に当接し、小突起42dが位置決め穴11cに嵌合するので、コントロール軸10とボス部材41とクリップ42の3者が確実に回り止めされる。こうして、コントロール軸10とディテントプレート40との位相を合わせることができる。シフト操作に伴ってコントロール軸10が回転したとき、そのトルクは二面幅部11bからクリップ42の内側腕片42cへ伝えられ、さらに外側腕片42aを介してボス部材41へ伝えられる。そのため、コントロール軸10と一体にディテントプレート40を回転操作することができる。
【0025】
このように、外側腕片42aの内爪42bを胴部41dの背面側に係止し、小突起42dを位置決め穴11cに嵌合することで、クリップ42は二重に抜け止めされる。そのため、コントロール軸10から大きなトルクが作用しても、クリップ42の脱落を確実に防止でき、ディテントプレート40へそのトルクを伝達することができる。なお、外側腕片42aの強度及び内爪42bによる係止力が十分であれば、小突起42dは省略可能である。
【0026】
なお、内側腕片42cの内面の小突起42dと二面幅部11bの位置決め穴11cとを嵌合させることで、ディテントプレート40のコントロール軸10に対する軸方向のずれを抑制できるが、ディテントプレート40を、変速機ケース1の内部に形成された2つの壁部7、8(これら壁部に挿通穴2、3が形成されている)の間に配置した場合には、これら壁部によって上下方向のずれが防止される。
【0027】
次に、前記構成よりなる変速操作装置の組み立て方法を説明する。図4に示すように、下端部近傍にインナレバー30を所定の向きで固定したコントロール軸10を準備する。このコントロール軸10の上端部を、変速機ケース1の下方から挿通穴4、3、2へと順に挿入する。なお、挿入前に、ディテントプレート40を2つの壁部7、8の間に配置しておき、コントロール軸10を挿通穴4、3、2に挿入する際に同時にボス部材41の貫通穴41aにも挿通する。この段階では、ディテントプレート40の位相合わせは完了していない。ボス部材41の貫通穴41aにはコントロール軸10の二面幅部11bが挿通されている。ここで、コントロール軸10とディテントプレート40との位相を合わせた状態、つまり二面幅部11bの平面部がボス部材41の平面部41eと平行になる状態で、クリップ42をボス部材41に対して半径方向から装着する。このとき、クリップ42の外側腕片42aが胴部41dの平面部41eに圧接し、内側腕片42cがコントロール軸10の二面幅部11bの平面に当接するので、コントロール軸10とボス部材41とクリップ42の3者が回転方向に位置決め固定される。
【0028】
次に、変速機ケース1の挿通穴2から外部へ突出したコントロール軸10の部分に、オイルシール5とNSSとを順に嵌合する。この際、コントロール軸10の二面幅部12bに位相を合わせてNSSを嵌合し、NSSを変速機ケース1の上面に固定する。最後に、コントロール軸10の上端の二面幅部12bにアウタレバー20を嵌合し、雄ねじ部12aにナット21を螺着することにより、アウタレバー20がコントロール軸10に固定され、組立が完了する。
【0029】
ディテントプレート40のコントロール軸10に対する取付構造、つまりボス部41及びクリップ42の構造は図7〜図9に示す構造に限るものではなく、所定の位相合わせができ、かつコントロール軸10の操作トルクをディテントプレート40に確実に伝達できるものであればよい。したがって、クリップ42の形状は、外側腕片42aと内側腕片42cとを備えた構造に限らない。さらに、ボス部を間にして両側から一対のクリップを装着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 変速機ケース
2〜4 挿通穴
7、8 壁部
10 コントロール軸
11 金属パイプ
12 金属製スリーブ
11b 二面幅部
11c 位置決め穴
20 アウタレバー
30 インナレバー
31 ピン
32 マニュアルバルブ
40 ディテントプレート
41 ボス部材
41a 貫通穴
41d 胴部
41e 平面部
42 クリップ
42a 外側腕片
42c 内側腕片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケースに対してコントロール軸が鉛直又は略鉛直方向に挿入され、前記変速機ケースの外部に突出した前記コントロール軸の一端部にシフト装置と連結されたアウタレバーが取り付けられ、前記変速機ケースの内部に挿入された前記コントロール軸の他端部にマニュアルバルブを操作するためのインナレバーが取り付けられ、前記変速機ケースの内部に挿入された前記コントロール軸の長さ方向中間部にディテントプレートが取り付けられた、自動変速機の変速操作装置において、
前記コントロール軸は中空構造とされ、
前記コントロール軸の中空部に、下端を変速機ケース内の油面に接触可能とされたレベルゲージが挿入されており、
前記ディテントプレートが取り付けられる前記コントロール軸の外周に、軸方向と平行な2面を持つ二面幅部が形成され、
前記ディテントプレートに前記二面幅部が挿通される貫通穴を持つボス部が形成され、
前記ディテントプレートのボス部に、前記ディテントプレートを前記二面幅部に対して位相を合わせて回り止めするためのクリップが装着されていることを特徴とする自動変速機の変速操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−7467(P2013−7467A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141646(P2011−141646)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】